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高摩擦ゴム表面パターンの開発と応用

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Academic year: 2021

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粗面と平滑面の複合化による

高摩擦ゴム表面パターンの開発と応用

1. はじめに

 国内の 2009 年度の死亡および休業 4 日以上の労働死傷災害において,転 倒による死傷者は 23 000 人を超え,

全死傷者のおよそ 20%を占めている.

衛生環境が重視される食品加工工場や 厨房の床面は水や食用油で濡れた場 合,非常にすべりやすく転倒の危険性 が高い.歩行中のすべりの発生および 転倒を抑制するためには,靴底と床面 間には高い静摩擦係数(最大静止摩擦 係数)と高い動摩擦係数が必要(すべ りが発生しにくく,たとえすべったと しても止まりやすく姿勢の回復が容 易)であり,静摩擦係数,動摩擦係数 ともに 0.4 以上の値が必要であると考 えられている(1)(2).しかしながら,従 来市販されている安全靴や厨房用靴の 靴底は,水や油で濡れた面に対して静 摩擦係数,動摩擦係数が 0.4 以下のも のがほとんどであり,安全性が十分と

は言いがたい.本稿では,水や油で濡 れた面に対しても 0.4 以上の静摩擦係 数および動摩擦係数を示すゴム表面パ ターンの開発と耐滑靴底への応用につ いて紹介する.

2. 粗面と平滑面の複合化による 高摩擦ゴム表面パターンの開発

 グリセリン水溶液を塗布した平滑な ステンレス板に対する摩擦において,

表面粗さの大きいゴムブロック(Ra

= 30.4μm)では,静摩擦係数は 1.0 付近の高い値を示すものの,動摩擦係 数は 0.2 付近あるいはそれ以下の低い 値を示す.一方,表面粗さの小さいゴ ムブロック(Ra = 0.98μm)では,静 摩擦係数は 0.2 以下の低い値を示すが,

動摩擦係数は 1.0 付近の高い値を示す.

これらに対して,粗面と平滑面を組み 合わせたゴム表面パターン(複合ゴム 表面パターン,図 1)は,図 2に示さ れるように,グリセリン水溶液による

潤滑下においても,静摩擦係数,動摩 擦係数ともに 0.4 以上の値を示す(3). これは,光の全反射特性を用いた接触 面の動的観察の結果,ゴム表面の粗面 部分と平滑面部分において,それぞれ すべり出しと定常的すべり時のゴムと 相手面の接触面積が十分に確保される ためであることがわかっている.

3. 複合ゴム表面パターンを用い た超耐滑靴底パターンの開発

 上述の基礎的摩擦試験の結果を受け て,粗面と平滑面を組み合わせた複合 ゴム表面パターンを用いた靴底が開発 されている(図 3)(4)表 1は,健常 成人を被験者として,グリセリン水溶 液が塗布されたステンレス製床面で行 われた歩行実験に基づく,同靴底の耐 滑性および転倒危険性の評価結果であ る.現在市販されている厨房用・食品 加工用靴の靴底に対して,複合ゴム表 面パターンを用いたゴム靴底は,静摩 擦係数が高いため,すべりの発生率を 低減できる.また,たとえすべりが生 じても動摩擦係数が高く,すべり速度,

すべり距離を大幅に低減できるため,

転倒発生率を飛躍的に低減できる.以 上の結果を踏まえ,この複合ゴム表面 パターンを用いた靴底は,厨房用・食 品加工用の超耐滑靴底としての実用化 に向けた取り組みがなされている.

4. おわりに

 今回紹介した複合ゴム表面パターン を用いた超耐滑靴底の開発は,従来経 験的に行われてきた靴底意匠の耐滑設 計に,トライボロジーの視点から新た な指針を与えるものといえる.また,

開発された靴底パターンは,水あるい は油で濡れた床面に対しても極めて優 れた耐滑性を示しており,すべりを原 因とする転倒事故などの労働災害事故 の減少に大きく貢献することが期待さ れる.

(原稿受付 2011 年 11 月 25 日)

〔山口 健,東北大学大学院工学研究科〕

●文 献

( 1 )Yamaguchi, T. and Hokkirigawa, K., ‘Walking- mode Maps’ Based on Slip/non Slip Criteria, Industrial Health, 46(1)(2008),23-31.

( 2 )SLIP AND FALL PREVENTION:A Practi- cal Handbook, Edited by S. D. Pilla, Lewis Publishers,(2003).

( 3 )Yamaguchi, T., ほか,Development of Anti- skid Shoe Sole on Lubricated Smooth Sur- face by Use of Hybrid Tread Pattern, Pro- ceedings of the 17th World Congress on Ergonomics(IEA2009),(2009-8)(CD-ROM)

( 4 )山口 健・ほか,すべり転倒防止のための 耐滑靴底パターンに関する研究,日本トラ イボロジー学会トライボロジー会議予稿集

(2010-9),33-34.

粗面(Ra=30.4 μm)

平滑面(Ra=0.98 μm)

図 1 複合ゴム表面パターン

0.4 0.4

(Ra=0.98μm) 平滑面

0 0.2 0.6 0.8 1 1.2

0 0.2 0.6 0.8 1

粗面

(Ra=30.4μm)

動摩擦係数μk

静摩擦係数μs 平滑面 平滑面

粗面

複合表面パターン

μk>0.4 μs>0.4

図 2 静摩擦係数と動摩擦係数の関係

平滑面 粗面

図 3 複合ゴム表面パターンを用いた靴底 表 1 開発された靴底の耐滑性及び転倒危険性の評価結果

0%

0.17 m / s 9.6 mm

67%

複合表面パター ンを用いた靴底

55%

1.85 m / s 320 mm

従来の厨房用・

食品加工用靴底

転倒発生率 すべり速度

すべり距離 すべり発生率

98%

31 pt. 低減 97% 低減 90%低減 55 pt. 低減

104 日本機械学会誌 2012. 2 Vol. 115 No.1119

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