一 801 一
東医大誌 53(6):801,1995
医療のなかの人間学
京都府立医科大学学長
栗 山 欣 弥
ハ.鯵 ,
藁 傷
医学教育を担当する我々の分野にも,大学改革の新しい息吹が押し寄せている.その中核をなす のは,もちろんカリキュラム改革を含む教育・研究・診療態勢の自己点検・評価と改善策の確立で ある.また,これらの一連の動きに平行して,医療現場においても多くの問題が提起され,種々の 論議がなされている.研修医の義務化の動き,在宅医療の推進,脳死移植問題の論議などはその例 である.更にインフォームド・コンセント,がん告知,あるいは患者さんのクオリティオブライ フ(QOL)への配慮なども,活発な論議を呼んでいる問題といえよう.
これらの問題に対応していくためには,医学部教育や丸丸教育の段階において,単に医療に関す る知識と技術を与えることの外に,従来にも増して医の倫理や医療従事者に求められる人間性の問 題を論じ,考えさせる機会を与えることが重要になってきていると考えられる.これは単に一般教 養科目を多くし,またその時間数を削減しないというような方策で解決する問題ではない.「医療 のなかの人間学」ともいうべき教育分野である.
私共の大学では,本学付属病院に入院した経験を持っておられる篤志家の寄付を得て, 「人間学 フォーラムー医療のなかの人間性を考える会」を発足させ,上記の諸問題に対処する試みを最近開 始した.医師,看護婦を中心に,他のコーメディカル分野の人達,学生,そしてまた患者さんやそ の家族,これらの問題に関心を持っておられる一般市民が一堂に会して,経験と本音を語る会であ る.「がん告知一あなたはどう思う?」「医療のなかの人間性を考える」などが,現在までに取り 上げられたトピックスである.その成果を現在論じるのは時期尚早ではあるが,多くの参加者があ
り,活発な論議が行われたことは間違いない事実である.
Patient−oriented の医療の重要性が叫ばれるようになってから久しい.ややもすると Doctor
−oriented の医療に傾き,また医学的知識と技能の教育に熱心になりがちな医学部のカリキュラム 改革のなかで,このような 医療のなかの人間学 ともいうべき分野の導入も真剣に考えていくべ
きではないかと考えている昨今である.
(1)