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学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨 氏 名

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Academic year: 2021

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(別紙様式第7号)

学 位 論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨

氏 名

土屋 竜太

審 査 委 員

主 査 古川 郁夫 ◯印 副 査 山本 福寿 ◯印 副 査 片桐 成夫 ◯印 副 査 佐野 淳之 ◯印 副 査 日置 佳之 ◯印

題 目 落葉広葉樹材における材質指標の経年変動と樹幹の成長段階との関連性 審査結果の要旨(2,000字以内)

本論文は落葉広葉樹の成長(樹高成長と肥大成長)パターンと樹幹の木部構成要素の寸法や分布数 の変動パターンとの関連性について検討したものである。特に木材の材料としての性質(材質)の指 標となる木部構成要素の寸法に注目し, それらの樹幹内変動と肥大成長の成長段階との関連性につい て調べ, 新知見を得た。以下に本論文の概要を示す。

第 1 章では本論文の背景となる木材科学の基礎的知識ならびに既往の研究を示し, 本論文の構成お よび位置付けを概説した。

第 2 章では樹高成長に伴う樹幹先端から形成層までの距離の変動と木部構成要素の寸法や分布数の 変動との関連性を調べるために, コシアブラの単一樹幹から地上高別(断面高別)に 1m 間隔で 13 枚 の円板を採取し, 樹高成長曲線式を作成して各年輪形成時の樹幹先端から形成層までの距離を算出し た。さらに 13 枚中 7 枚の円板を用いて, 各年輪の道管要素長, 孔圏部および年輪中央部の道管内腔径, 横断面における単位面積あたりの道管数, 放射組織の接線断面寸法, 放射組織の接線断面における単 位面積あたりの数,について単一樹幹内における経年変動を調べ, 各年輪形成時の樹幹先端から形成 層までの距離とそれらとの関連性を調べた。その結果, 軸方向要素の寸法(道管要素長と年輪中央部 の道管内腔径)と樹幹先端から形成層までの距離との間に比例関係が認められた(この成果をまとめ た論文が第 1 回日本木材学会論文賞(2008)に選ばれた)。

第 3 章ではクリ 4 個体の地上高別 4 箇所, 合計 16 枚の円板を用いて, それぞれの円板において累積 年輪幅(樹幹半径), 木部繊維長, 孔圏道管内腔径の水平変動を調べ, 樹幹肥大成長の成長段階(幼 齢期,壮齢期,老齢期)ごとに木部構成要素寸法の変動傾向を比較した。その結果, 肥大成長の幼齢期 では木部繊維長と孔圏道管内腔径は共に増大する傾向を示したが, 壮齢期と老齢期の変動傾向は両者

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で異なっていた。また, 木部繊維長と孔圏道管内腔径から算出した成熟齢は異なっていたことから, 未 成熟材の樹幹内における範囲は指標とする構成要素によって異なることが示唆された。

第 4 章ではコナラ 2 個体から地上高別に 10 枚と胸高部位からの 2 枚の合計 12 枚の円板を用いて, 広 葉樹の代表的材質指標である木部繊維長, 道管内腔径, 道管要素長と累積年輪幅(樹幹半径)の水平 変動を調べ, 肥大成長の成長段階と材質区分との関連性を検討した。その結果, 肥大成長の幼齢期に 形成された木部は未成熟材の範囲と, また壮齢期に形成された木部は未成熟材から成熟材への移行材 の範囲と, さらに老齢期に形成された木部は成熟材の範囲とほぼ一致した。

第 5 章では広葉樹 18 種の各種 1 個体の胸高部位より採取した円板を用いて, 接線断面における放射 組織の面積, 高さ, 幅と単位面積当たりの数(分布数), 年輪幅の水平変動を調べ, 面積に分布数を かけた値を放射組織の占有面積率として放射組織占有面積率と肥大成長速度(連年肥大成長速度と平 均肥大成長速度)との関連性を検討した。その結果, 放射組織占有面積率の変動は平均成長速度の変 動と同調する傾向があり, 多列放射組織の占有面積の変動が放射組織占有面積率の変動に大きな影響 を及ぼすことが示された。多くの樹種において多列放射組織の幅は飽和曲線的な変動傾向を示し, 樹 幹の平均肥大成長速度が最大時となる形成層齢で安定する傾向が認められた。

第 6 章ではセンダンの胸高部位から採取した円板を用い, 放射方向に連続接線断面切片を作製して 発生直後の二次放射組織の形態と放射組織占有面積率を調べ, 放射組織占有面積率の変動と肥大成長 の成長速度との関連性について検討した。その結果, 放射組織占有面積率の変動は平均肥大成長速度 の変動と同調し, 放射組織の幅は平均肥大成長速度が最大時となる形成層齢で安定する傾向を示し た。二次放射組織は樹幹内側で頻繁に発生するが放射組織占有面積率の変動には大きな影響を与えず, 平均肥大成長速度が最大に達して以降の年輪では発生しないことから, 放射組織占有面積率の変動は 個々の放射組織面積の増大に依存していることが示された。また, 孔圏道管内腔径を材質指標とした 材質区分の境界齢はこれまでの結果と同様に, 平均肥大成長速度最大時の形成層齢に近似し, 平均成 長肥大速度最大時以降の年輪では木部構成要素寸法の変動は緩やかになる傾向があった。

以上の結果, ①樹幹先端から形成層までの距離と軸方向要素の寸法(道管要素長と年輪中央部の道 管内腔径)との間には比例関係が存在すること、②樹幹肥大成長の各成長段階と材質の成熟材形成 層齢との間には関連性のあること(すなわち,樹幹肥大成長の幼齢期と未成熟材形成期,壮齢期と 成熟材への移行期, 老齢期と成熟材形成期がそれぞれほぼ対応している)ことを明らかにした。

これまでは樹幹内部の材質の成熟度を推定するには,樹幹内から小試験片とか特定の構成要素を 取り出して計測する以外に適当な方法がなかったが,本研究によって初めて非破壊的に樹幹内部 の材質の成熟程度を知ることが可能となった。この点において,本研究は木材科学分野における 画期的な研究であり,本成果の広葉樹材質育種研究への貢献は極めて大きく,これが日本木材学会 第 1 回学術論文賞受賞の理由でもある。このように非常に有益で有意義な研究成果を世界に先駆 けて得た点を高く評価し,審査員一同はここに博士(農学)の学位論文に十分値すると判定した。

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