学 位 論 文 題 名
農 学 博 士 石 栗 敏 機
牧 草 の 消 化 ・ 採 食 特 性 の 生 育 時 期 別 変 動
学 位 論 文 内 容 の 要 旨
北 海道の 土地 利用型 の酪農 や肉牛 経営 の安定 には, 牧草を 主体と した 自給飼 料の高度に利用し た 飼養技 術に負 うと ころが 大きい 。牧草 の品種 改良 や栽培 調製利 用技術 の改 善には ,これまで多 く の研究 が行わ れて きたが ,牧草 自体の 消化や 採食 特性は ,その 生育の 進行 に伴う 変化が多様な こ とから ,これ まで 十分な 研究が なされ ていな い。 特に, 牧草の 有効利 用の 場面に 必要な生育期 間 の春か ら秋ま で, また草 地造成 後数か 年にわ たる 連続し た利用 期間中 の栄 養価や 採食量を継続 し て調べ た報告 は見 当たら ない。
そ こで, 北海 道で栽 培利用 されて いる 主要な 牧草で あるオ ーチャ ード グラス ,チモシー,ペレ ニ ア ル ラ イグ ラス, アルフ ァルフ ァ, アカク ローバ および シ口 ク口ー バの6草種 にっい て,10か 年 間 で 合 計212点の 牧草を ,慣行 の消 化試験 方法と は異な り,延 べ1266の めん 羊に自 由採食 させ た 消化試 験を行 い, 生育時 期別の 消化率 および採食量を調べた。また,これらの成績を基にデター ジ ェント 分析法 によ る分画 から栄 養価や 採食量 の変 動要因 を検討 し,牧 草の 合理的 な利用技術を 検 索した 。
1. オー チ ャード グラス ,チモ シ− ,ペレ ニアル ライグ ラス, アル ファル ファ, アカク 口ー バ お よ び シ 口ク ロ ― バ の6草 種 に っ いて, 春の1番草 では生 育期別 に, その後 の再生 草では 夏か ら 秋 までの 生育季 節別 に,ま た,草 地の造 成年か らオ ーチャ ードグラスでは9年間,アルファルファ で は10年間 の化 学成分 の含有 率,消 化率 ,栄養 価,推 定正味 工ネル ギー ,自由 採食量,栄養価指 数 (NVI)等 を示し た。
2. 春の1番草で は, 生育に ともな い,消 化率 ,栄養 価,自 由採食 量,可 消化 工ネル ギー(DE) 摂 取 量 が 低 下 す る が , そ の 低 下 の 速 度 に は 草 種 間 に 大 き な 違 い は な か っ た 。 乾 物 中可 消 化 養 分 総量 (TDN)含 有 率 の1日 当 た り の 低下 は各草 種共に 約O.5%であ った。 生 育 の 進 行 に 伴 い 自 由 採 食 量 も 大 き く 低 下 す る た めNVIやDE摂 取 量 の低 下 度 合 は 更 に大 き く な った。
3. 夏期 間 に 再 生 する 牧 草 で は ,粗 蛋 白 質 以 外の 成 分 の 消 化 率お よ びTDN,DE含量 が低く ,
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TDN650/以上の牧草の収穫は困難であった。
ア ル フ ァ ル フ ァ の2番 草 の 自 由 採 食 量 の 低 下 速 度 は 年 間 で 最 も 速 か っ た 。 4.秋の再生草は細胞内容物(CC)含有率が高く,その消化率,可消化含量も高く,他の成 分の消化率も高く,栄養価が優れていた。また,それらの低下の速度は年間で最も遅かった。
5.生育季節 で見ると,イネ科牧草,マ メ科牧草ともに,TDNおよびDE含量は春から夏に かけて低下し,秋には高くなる凹型の変化をした。
6.オーチャードグラスおよびアルファルファの草地を経年的に調べたが,9年から10年を経 て も , 生 産 さ れ た 牧 草 の 栄 養 価 や 自 由 採 食 量 に は 変 化 が 少 な か っ た 。 7.オ ー チャ ―ド グラ スで 年 間3,4,5,6,7回刈取りでTDN収量を 乾物収量で除して 求めた乾物中TDN含有率は,それぞれ,57,59,63,64,64%で,また,同様にして求めた乾 物中DCP含有率は,それぞれ,8,7,10,13,14%であった。
アル ファ ルフ ァ で年 間3,4回刈取った 場合には,同様にTDN含有率 は,58,62%,DCP 含有率は15,18%であった。
8.オーチャードグラス,ペレニアルライグラスで年間7番草まで収穫した場合でも,番草間 の乾物,細胞 壁物質(CW),CCの消化率,DE摂取量ともに変動が大きく,多回刈りを行って も高力口リーの牧草を安定的に収穫することは困難であった。
9.牧草の蛋 白質含有率を乾物中13%,TDN含有率を乾物中65%およびめん羊のDE摂取量 を200kcal/kg ¨と,それぞれ設定した基準値を充足させるための刈取ルスケジュールを提示 した。しかし,春から秋までこの三っの条件を全て満たす刈取ルスケジュールの設定は困難なこ とが分かった。
夏の再生草では高工ネルギーの牧草の収穫は困難であるが,高蛋白質の牧草の収穫は可能で あった。生育季節による牧草の飼料としての質的な違いを考慮した年間の利用を行うことが重要 なことを明らかにした。
10.各草種の 生育時期の違いによる可消 化乾物含量の差は,牧草中の不消化CW含有率の多 少 に よ る も の で , こ の 含 有 率 で 可 消 乾 物 含 量 の 変 動 の90% が 説 明 で き た 。 オーチャー ドグラスおよびアルファルファともに白由採食量とCW排泄量の間には強い相関 がなく,牧草 の生育時期が変わって自由採 食量が変化しても1日当たりのCW排泄量は,それ は,13,17g /kg0・了5とほぼ一定していた。この量を牧草中の不消化CW含有率で除すと自由 採食量に近似した。
両草種とも に生育時期が変わっても1日 当たりのCW摂取量は329 7kgo.7゜前後でほば一定
し て い た 。1日 当 た り32g /kg¨7 前 後 のCW摂 取 量 にな る ま で , めん 羊 は 牧 草 を摂 取 す るこ と が可 能で,CW含有率 の低 い牧草 ほど自 由採食 量は 多くな った。
こ の よ うに 牧 草 中 の 不消 化CWは 消化 率 や 自 由 採食 量 を 規 制 す る最も 重要な 成分で あるこ と を 明ら かにし た。
11.オ ーチャ ードグ ラス ,アル ファル ファと もに夏 の再 生草で 可消化CCのエ ネルギ 一含量 が低 下 し ,DE含量 に 対 し て可消 化CWの相 対重 要度が 高くな った。 また ,これ ら草種 にっい て,自 由 採 食量 が変わ っても 乾物排 泄量はほぼ一定し,乾物排泄量の平均はオーチャードグラス22.3,アル フ ァ ル フ ァ29.897kg°7゜ であ っ た 。 こ の値 を 用 い 自 由採 食 量(VI:g7kgo.7゜ ) からDE摂取 量 (DEI:kcal/kg075)が 高 い 精 度 で 推 定 で き る 簡 単 な 式 を 以 下 に 示 し た 。 オーチ ャ― ドグラ ス:DEI=4. 3ix (VI一22.3)
アルフ ァル ファ:DEI=4.45x (VIー29.8)
12.以 上の結 果より ,牧 草を飼 料とし て栽培 利用す る際 には, 年間を 通じて の利 用計画 作成の 留 意点 として ,草地 の肥培 管理 や利用 方式と ともに ,牧草 の生 育季節 毎の可消化養分の変動やこ れ にと もなう ,採食 特性の 変化 が重要 である ことを 明らか にし た。
学位論文審査の要旨 主査
副査 副査
教授 教授 助教授
朝 日 田 上 山 大 久 保
康司 英一 正彦
この論 文は, 表35, 図24,引 用文献150,総ペ ージ117の和 文論文 であ り,7章に 分けて 論述さ れ てい る。
北海道 の土地 利用型 の酪 農や肉 牛経営 の安定 には, 牧草 を主体 とした 自給飼料の高度に利用し た 飼養 技術に 負うと ころが 大きい 。牧 草の品 種改良 や栽培 調製 利用技 術の改善には,これまで多 く の研 究が行 われて きたが ,牧草 自体 の消化 や採食 特性は ,そ の生育 の行進に伴う変化が多様な こ とか ら,こ れまで 十分ナ ょ研究 がな されて いない 。
そこで 北海道 で栽培 利用 されて いる主 要な牧 草であ るオ ーチャ ードグ ラス,チモシー,ペレニ ア ルラ イグラ ス,ア ルファ ルファ ,ア カク口 ーバお よびシ 口ク ローバ の6草種に っいて ,10か 年
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間 で 合計212点 の牧 草を, 慣行の 消化試 験方法 とは 異なり ,延ベ1266頭の めん羊 に自由 採食 させ た消 化試験 を行い ,生 育時期 別の消 化率お よび 採食量を調べた。また,これらの成績を基にデ夕一 ジェ ント分 析法に よる 分画か ら栄養 価や採 食量 の変動 要因を 検討し ,牧草 の合 理的な 利用技術を 検索 した。
1. 春 の1番 草で は 生 育 期 別に , そ の 後の再 生草で は夏か ら秋ま での 生育季 節別に ,また ,草 地の 造成年 からオ ーチ ャード グラス では9年間 ,アル ファ ルファ で結10年間の化学成分の含有率,
消 化 率 , 栄 養 価 , 推 定 正 味 工 ネ ル ギ − , 自 由 採 食 量 , 栄 養 価 指 数 (NVI) 等 を 示 し た 。 2. 春 の1番 草で は,生 育に ともな い,消 化率, 栄養価 ,自 由採食 量,可 消化工 ネル ギー(DE) 摂 取 量 が 低 下 す る が , そ の 低 下 の 速 度 に は 草 種 間 に 大 き な 違 い が な か っ た 。 3. 夏 期 間 に 再生 す る 牧 草 では , 粗 蛋白 質以外 の成分 の消 化率お よび可 消化養 分総 量(TDN), DE含量 が低 く,TDN65%以 上の牧 草の 収穫は 困難で あった 。
ア ル フ ァ ル フ ァ の2番 草 の 自 由 採 食 量 の 低 下 速 度 撒 年 間 で 最 も 速 か っ た 。 4, 秋 の 再 生 草は 細 胞 内 容 物(CC)含 有率 が 高 く , その 消 化 率 , 可消 化 合 量 も 高く ,他 の成 分 の 消化 率 も 高 く , 栄養 価 が 優 れ てい た。 また, それ らの低 下の速 度は年 間で最 も遅 かった 。 5. 生 育 季 節 で 見 る と , イ ネ 科 牧 草 ,マ メ 科 牧 草 と もに ,TDNお よ びDE含量 は 春 か ら 夏に かけ て低下 し,秋 には 高くな る凹型 の変化 をし た。
6. オ ー チ ャ ―ド グ ラ ス お よび ア ル ファ ルファ の草地 を経 年的に 調べた が,9から10年を 経て も, 生産さ れた牧 草の 栄養価 や自由 採食量 には 変化が 少なか った。
7. オ ー チ ャ ー ド グ ラ ス で 年 間3,4,5,6,7回 刈 取 り でTDN収 量 を 乾 物 収 量 で 除 し て 求 め た乾 物 中TDN含 有 率 は , それ ぞ れ ,57,59,63,64,6406で ,また ,同様 にし て求め た乾 物中DCP含 有率は ,そ れぞれ ,8,7,10,13,14%で あった 。
ア ル フ ァ ル フ ァ で 年 間3,4回 刈 取 っ た 場 合 は , 同 様 にTDN含 有 率 は ,58,6200, DCP含 有率 は15,18%であ った。
8. オ ー チ ャ ード グラス ,ペレ ニアル ライグ ラス で年間 了番草 まで収 穫し た場合 でも, 番草間 の 乾 物, 細 胞 壁 物 質 (CW) ,CCの 消 化 率 ,DE摂 取 量 とも に 変 動 が 大き く , 多 回 刈り を行 って も高 カロリ ―の牧 草を 安定的 に収穫 するこ とは 困難で あった 。
9. 牧 草 の 蛋 白 質 含 有 率 乾 物 中13% ,TDN含 有 率 乾 物 中65% お よ び め ん羊 のDE摂取 量200 kcalZ kg°7゜ の,そ れぞ れ,設定した基準値を充足させるための刈取ルスケジュールを提示した。
10.各 草 種 の 生 育 時 期 の違 い に よ る 可消 化 乾 物 含 量の 差 は , 牧 草 中の 不 消 化CW含 有 率 の 多 少 に よ る も の で , こ の 含 有 率 で 可 消 乾 物 含 量 の 変 動 の 90% が 説 明 で き た 。
11.自由採食 量(VI:g/kg°75)からDE摂取量(DEI: kca17kg0.T。 )が高い精度で推 定できる簡単な式を以下に示した。
オーチャードグラス: DEI=4. 3ix (VI―22.3) アルファルファ:DEI=4.45X (VI―29.8)
以上のように,本研究は,わが国における主要な寒地型牧草にっいて,生育期間を通して草地 の利用実態に則した各生育季節毎の可消化養分含量や採食特性の推移とこれらの相互関係を究明 したもので学術的に高く評価される。本研究での成果は,牧草の栽培期間を通して,飼料として の効率的な利用を計る上で有益な情報を提示したものであり,実用面においても裨益するところ が大きい。
よって審査員一同は,別に実施した学力確認の成績と合わせて,石栗敏機は農学博士の学位を 受ける資格十分なものと判定した。
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