• 検索結果がありません。

学位論文内容の要旨

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "学位論文内容の要旨"

Copied!
4
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

博 士 ( 情 報 科 学 ) 佐々 木    豊

学 位 論 文 題 名

分散型エネルギー源の導入・運用における経済性 ならびに供給信頼度に関する研究

学位論文内容の要旨

  太陽光発電等の新エネルギーをはじめとする分散型エネルギー源の導入は,エネルギー供給力分 散による系統安定化や過剰な送配電設備投資を抑制するなど多くの技術的,経済的なメリットをも たらす可能性があると考えられている。一方で,現状の電カシステムの電圧や周波数に対して何ら かの悪影響を与える要因となることや,石油を燃料とするマイクロガスタービンなどでは燃料価格 の変動が大きなりスクとなることが懸念されており,今後の分散型エネルギー源の導入促進のため にも分散型発電の優位性を引き出していくことが必要である。このような背景から,分散型エネル ギー源の導入促進対策の一環として,需要地近傍に小規模の電力供給センターを設け,さまざま付加 価値を備えた電源として活用する,あるいは多数の新エネルギーを統合させて大規模電力供給シス テムとして活用するなどの研究開発が実証研究段階で動き始めている。例えば,一様な信頼度レベ ルで電力供給を行う従来の供給方式に対し,標準品質や高品質といった信頼度レベルに差をっけて 供給する品質別供給システムが検討されている。このような新エネルギー供給システムでは,技術 的 制約の 克服はもちろんのこと,システムの経済性や信頼性のさらなる改善が要求される。

本論文では,分散型エネルギー源の電カシステムヘの導入に関して,経済効率性ならぴに供給信頼性 の観点から,分散型エネルギー源の導入可能性と望ましい導入形態およぴ導入方策の定量的な評価 を 行 う こ と を 目 的 と し て い る 。 本 論 文 の 評 価 は , 以 下 の よ う な 構 成 か ら な る 。 (1)分散型エネルギー源と電カシステムの協調的な経済運用

分散型エネルギー源と現状の大規模電源が共存可能かという問題に対し,経済性の観点から評価を 行った。まず,大規模電源が担うべき供給予備カは維持される,っまり現状の電カシステムの供給信 頼度は変化しなぃという状況の下で,需要家ニーズを反映させた分散型エネルギー源の5つの導入 モデルを設計した。分散型エネルギー源の導入量は需要家のもつ高品質負荷をべースにして決定 し,さらにェそれを電力供給用あるいは予備力用として用いることができるものとした。また,電力 供給用に割り当てられたエネルギーの供給時間帯を考慮し,電カシステム全体のコストが最小とな るような分散型エネルギー源の運用量および運用パターンを決定する手法を開発した。数値シミュ レーションにより,広域な電力融通が可能なモデルにおいて,電カシステム全体のコストが最小とな り,分散型エネルギー源については系統負荷をピークカットするような運用が望ましいことが示さ れた。

(2)分散型エネルギー源の供給信頼度解析

次に,経済性と信頼性の調和がとれた電カシステムのあり方を検討するために,分散型エネルギー     ―1142―

(2)

源 の運 用 が 供 給信頼 度を向 上させ 得ると いう観 点から ,分散 型エネ ルギー源 の運用 を考慮 した供 給信頼 度解析 を行っ た。配 電系統 モデル として ,現行シ ステム に加え,新しい供給システムである FRIENDS (Flexi・ble,Reliable and Intelligent ENergy Delivery System)とMicro gridを想定した。本 論文で はこれ らのモ デルを 対象に した供 給信頼 度をモン テカル ロシミュレーションにより評価する 手法を 開発し た。こ の手法 では, 分散型 エネル ギー源の 状態遷 移を考慮した解析を行えるという特 徴があ る。解 析結果から,運用コストおよぴ事故時に発生する停電コストの和(社会コスト)を最小 に する よ う な 信頼 度 の 値 を導 い た 。 特に ,事 故時の 全域的 な電力融 通が可 能なFRIENDSモデル が 他のモ デルに 比べ,分散型エネルギー源によって,経済的かつ信頼度の高い電力供給を行えるという ことが明らかになった。

(3)分散型エネルギー源の導入促進プログラム

経済性 と信頼 性を同 時に満 足する 分散型 エネル ギー源の 導入量 が(2)の 結果より 示され た。このと き,分 散型エ ネルギー源をさらに導入促進させるための方策はいかなるものかという問題に対して,

本論文 では負 荷削減 契約と 呼ばれ る一般 電気事 業者と需 要家間 に特別な契約を導入することを提案 した。 ここで いう負 荷削減 契約と は,一 般電気 事業者が 行う先 行投資を繰り延べすることを念頭に おき, この繰 り延べ価値を報酬という形で需要家へ提供するものである。すなわち,負荷削減契約に より需 要家が 報酬を 基に分 散型エ ネルギ ー源を 導入し, 系統負 荷削減に活用することを期待してい る。こ のよう な一般 電気事 業者と 需要家 間の契 約サイク ルが成 立すれば,分散型エネルギー源の導 入促進 が図れ る可能 性があ る。本 論文で はこの 可能性を 数値シ ミュレーションにより評価し,各経 済主体 にメリ ットを もたら す関係 を築き つつ, 分散型エ ネルギ ー源の導入拡大が可能であるとの知 見を得た。

  以上 より,本 論文で は分散 型エネ ルギー 源が導 入され た電カ システムにおける経済性ならびに供 給信頼 度の面 の有効性について考察し,分散型エネルギー源の導入による経済性の改善,信頼度の向 上そして、負荷削減契約による導入可能性を示した。

1143

(3)

学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査 副査

教 授 教 授 教 授 教 授 准教 授

北 本 間 五 十 嵐 小 笠 原 原

学 位 論 文 題 名

裕幸 利久 悟司 兄一

分散 型エネ ルギー源 の導入・運用における経済性 な らびに供給信頼度に関する研究

  近年,電カコストの低減 や停電時の対策,環境面への 配慮詮どから,新エネルギーやコジェネレー ションなど,多種多様の分 散電源が電力系統内に導入さ れてきている.将来の電力系統は,こうした 数多 くの分散電源と. 従来型の大規模集中電源と が共存した集中・分散ハイブ リッド型の電力系統 に移 行していくものと 予想される.このため,分 散電源群が電力系統に対し悪 影響を及ぼすことな く,むしろ需要ピーク時の 電力供給やアンシラリーサー ビスの提供等,電力供給・系統運用へ貢献す ることを可能とするための 技術開発が望まれている.こ れまで,既存の電カシステムに対する影響を 抑制するため,分散電源の 電力出力変動を,パワーエレ クトロニクス装置や電力貯蔵装置などを用い て抑 制す る技 術(FRIENDS)や ,電力系統と一点で 連系したコミュニティレベル のミニ系統を考え,

内部の分散電源,電力貯蔵装置等を適切に制御する技術(マイクログリッド)などが開発されており,

すでにその詳細設計や実証 試験も行われてきている.一 方,分散電源群を系統電源と協調して積極的 に活用することで,電カシ ステム全体としての経済性や 供給信頼性が向上し,分散電源の導入価値が 向上 することが予想さ れる.しかしながら,その 具体的な解析手法の開発や定 量的な評価について は, ほと んど 行わ れ てい なぃ .本論文では,上記 のFRIENDSやマイクログリッ ドの下で,系統電源 と出力調整可能な分散電源 の具体的な協調形態(分散電 源の望ましい導入量や運用方策)を,経済性 及び 供給信頼性の面か ら評価するためのソフト的 な手法を開発することを目的 としており,学術的 に価値がある.また,分散 電源の導入量をさらに増加さ せるための制度的な方策として,大規模電源 所有者(一般電気事業者) と需要家との間に負荷削減契 約という新しい契約形態を導入し,これによ り,一般電気事業者と需要 家の両者がwin‑winの関係と なるような料金体系について模索している.

この考え方は,世界的にも 全く新しい独創的な考え方で ある.

  本論文で得られた主たる 成果は以下のようにまとめら れる.

(1)分散型エネルギー源と現 状の大規模電源が共存可能 かという問題に対し,経済性の観点から評価 を行っている.まず,大規 模電源が担うべき供給予備カ は維持される,っまり現状の電カシステムの

1144

(4)

供給信 頼度は 変化し ないと いう状 況の下 で,需 要家ニー ズを反 映させ た分散 型エネ ルギー源の5つ の導入 モデル が設計 されて いる. 分散型 エネル ギー源の 導入量 は需要家のもつ高品質負荷をべース にして 決定し ,さらに,それを電力供給用あるいは予備力用として用いることができるものとしてい る.また,電力供給用に割り当てられたエネルギ丶・一の供給時間帯を考慮し,電カシステム全体のコス トが最 小とぬ るよう な分散 型エネ ルギー 源の運 用量およ び運用 パターンを決定する手法を開発して いる. 数値シ ミュレーションにより,広域な電力融通が可能なモデルにおいて,電カシステム全体の コスト が最小 となり ,分散 型エネ ルギー 源につ いては系 統負荷 をピークカットするような運用が望 ましいことが示されている.

(2)次に ,経済 性と信頼 性の調 和がと れた電 カシス テムの あり方 を検討 するため に,分 散型エネル ギー源 の運用 が供給 信頼度 を向上 させ得 るとい う観点か ら,分 散型エネルギー源の運用を考慮した 供給信 頼度解 析を行っている.配電系統モデルとして,現行システムに加え,新しい供給システムで あ るFRIENDSと マ イ ク ログ リ ッ ド を想 定 して いる. 本論文 ではこれ らのモ デルを 対象に した供 給 信頼度 をモン テカルロシミュレーションにより評価する手法が開発されている.この手法では,分散 型エネ ルギー 源の状態遷移を考慮した解析を行えるという特徴がある.解析結果から,運用コストお よび事 故時に 発生す る停電 コスト の和( 社会コ スト)を 最小に するような信頼度の値が導かれてい る.特 に,事 故時の 全域的 な電力 融通が 可能なFRIENDSモデル が他の モデル に比べ ,分散型エネル ギ ー源 に よ っ て,経 済的か っ信頼 度の高 い電力 供給を 行える という ことが明 らかに なって いる.

(3)分散 型エネ ルギー源 をさら に導入 促進させるために,本論文では負荷削減契約と呼ばれる一般電 気事業 者と需 要家間に特別な契約を導入することを提案している.すなわち,負荷削減契約により需 要家が 報酬を 基に分散型エネルギー源を導入し,系統負荷削減に活用することを期待している.この ような 一般電 気事業 者と需 要家間 の契約 サイク ルが成立 すれば ,分散型エネルギー源の導入促進が 図れる 可能性 がある .本論 文では この可 能性を 数値シミ ュレー ションにより評価し,各経済主体に メリッ トをも たらす 関係を 築きつ つ,分 散型エ ネルギー 源の導 入拡大が可能であるとの知見を得て いる.

  これ を要する に,著 者は分 散型エ ネルギ ー源が 導入さ れた電 カシステムにおける経済性ならびに 供給信 頼度の 面の有 効性を 評価す る手法 を開発 すると共 に,分 散型エネルギー源の導入による経済 性の改 善,信 頼度の向上そして,負荷削減契約による導入可能性を定量的に示したものであり,電カ システ ム工学 の発展に寄与するところ大なるものがある.よって著者は北海道大学博士(情報科学)

の学位を授与される資格あるものと認める.

1145

参照

関連したドキュメント

自分は超能力を持っていて他人の行動を左右で きると信じている。そして、例えば、たまたま

システムであって、当該管理監督のための資源配分がなされ、適切に運用されるものをいう。ただ し、第 82 条において読み替えて準用する第 2 章から第

話者の発表態度 がプレゼンテー ションの内容を 説得的にしてお り、聴衆の反応 を見ながら自信 をもって伝えて

需要動向に対応して,長期にわたる効率的な安定供給を確保するため, 500kV 基 幹系統を拠点とし,地域的な需要動向,既設系統の状況などを勘案のうえ,需要

対策等の実施に際し、物資供給事業者等の協力を得ること を必要とする事態に備え、

○田辺座長 有村委員から丸の内熱供給のほうに御質問があったと思います。お願いしま す。. ○佐々木氏(丸の内熱供給)

①配慮義務の内容として︑どの程度の措置をとる必要があるかについては︑粘り強い議論が行なわれた︒メンガー

2012 年度時点では、我が国は年間約 13.6 億トンの天然資源を消費しているが、その