博 士 ( 歯 学 ) 逸 見 優
学位論文題名
Effect of calcium carbonate on bone fOrmationon 4 ―META/MMA ーTBBresin
(炭酸カルシウムが4 ― META/MMA ―TBB レジン上への骨形成に与える影響)
学位論文内容の要旨
【緒言】
4̲ME'I、A爪心4A_TBBレジンは歯質に対する優れた接着性を有し,生体親和性もきわめて高いことから,歯根端切除 術や再 植術時 のroot―endsealing,垂直歯根破折の接着治療,髄床底穿孔部の封鎖などに応用され,良好な成績が報 告されている.しかし,その治癒形態は硬化したレジン上を軟組織が被覆するものであり,セメント質の形成は認められ ていな い.一方,ラット頭蓋骨に4−MElA′MMA‐TBBレジンを接着させた研究では,長期的には硬化したレジン表面に も周囲から新生骨が増生し,直接硬組織が接していたことから、セメント質が形成できる可能性が示唆されている,そ こで,硬化した4 ̄ME1、A爪心壇A−TBBレジン表面にセメント質や骨などの硬組織を形成させ,強く結合をさせるために,
炭 酸 カ ル シ ウ ム を 添 加 す る こ と が 有 効 で は な い か と 考 え た . 本 研 究で は , 炭 酸カ ル シ ウ ムの 濃 度 を 変え て 4−MElA/MMA‐TBBレジ ンに添 加し, 大腿骨 骨髄腔内 に移植 して骨 増生へ の影響 や新生 骨との 結合状 態などを評価 した,
【材料・方法】
移植試料の作製:4‑META/MMA―TBBレジン(スーパーボンドC&B@クリア,サンメディカル社)のポリマーに粒子サイズ 5〜10岬の炭酸カルシウム(和光純薬)を0,30,60%の重量比で混和し,O%群,30%群,60%群とした.炭酸カルシウムを 混和したポリマー粉末を3/4カップ,モノマー4滴,キャタリスト1滴の割合で混和し,内径1mmのポリプロピレンチュー ブに填入,24時間硬化させた後に取り出し,長さ5mmに破断して円柱形試料とした.
移 植試 料 のSEM観察 : 各 炭 酸カ ル シ ウ ム濃 度 の 円柱形 試料を ,乾燥 ,白金パ ラジウ ム蒸着 後,走 査型電 子顕微 鏡
(SEM:S一4000,日立ハイテクフイールディング)で試料破断面を観察した.
移植方法:10週齢Wistar系雄性ラット13匹を使用し,ジエチルエーテルおよびペントバルビタールナトリウム(ソムノペ ンチル 注射液 °,共 立製薬 )を用 いて全 身麻酔 を施し た後,左 右の大腿骨中央部を露出して,直径1mmで皮質骨穿孔 を 2か 所 行 な っ た . 試 料 破 断 面 が 骨 髄 腔 内 に 位 置 す る よ う に 移 植 し , 切 開 部 を 縫 合 し た . 光学顕 微鏡観 察およ び組織 学的計 測:観 察期間 は2週,8週とし ,10%中 性緩衝 ホルマ リン溶液にて浸漬固定を行つ た.アセトンに浸漬してスーパーボンドC&B@を溶解し,5%ギ酸で脱灰,通法に従いパラフイン包埋して薄切標本を作 製した.計測は試料破断面を評価部位として,試料破断面の長さL(いm),新生骨基質の長さBL(岬),破断面と新生 骨基質 問の面 積ST(um2),破 断面と 新生骨基質が直接接している長さC(um)を計測し,骨基質形成率(BL几x100)
(%),破断面と新生骨基質問の平均距離(ST凪L)(岬),試料と新生骨基質の接触率(C凡x100)(%)を求めた,計測 ―584−
結 果 は 二 元 配 置 分 散 分 析 お よ びScheffeの 多 重 比 較 検 討 を 行 っ た ,
走 査 型 電 子 顕 微 鏡 観 察 :60% 群 の 一 部 は ,8週 後 に10% 中 性 緩 衝 ホ ル マ リ ン 溶液 で 浸 漬 固 定 後, 試 料 中 央 部で 割 断 , 脱 水 , 乾 燥 , 白 金 パ ラ ジ ウ ム 蒸 着 後 , SEMで 試 料 破 断 面 と 新 生 骨 と の 界 面 を 観 察 し た ,
【 結果】
試 料 破 断 面 のSEM観 察 結 果 : 試 料 破 断 面 は3群 と も 粗 造 で , 炭 酸 カ ル シ ウ ム を 添 加 し た 試 料 で は 立 方 体 の 炭 酸 カ ル シ ウ ム 粒 子 が 露 出 し て お り ,60% 群 は30% 群 と 比 較 し て , 破 断 面 に 露 出 し て い る 炭 酸 カ ル シ ウ ム が 多 か っ た , 術 後2週 光 学 顕 微 鏡 観 察 結 果 :0% 群 で は 移 植 試 料 は 軟 組 織 に 被 包 さ れ , 軟 組 織 の 外 側に 新 生 骨 の 形 成が み ら れ た ・ 新 生 骨 は 薄 く 梁 状 で , 骨 の 周 囲 に は 類 円 形 の 細 胞 が 認 め ら れ た . 30% 群 で は0% 群 と 同 様 に 移 植試 料 は 軟 組 織で 被 包 さ れ , その 外 側 に 新 生 骨が み ら れ た .新 生 骨 の 構 造は0% 群 と 同様 に , 薄 く 幼弱 な 梁 状 構 造 をし て い た . 60% 群で は 移 植 試 料 に 近 接 し た 部 位 に 新 生 骨 が 形 成 さ れ て お り , 緻 密 な 構 造 で あ っ た , 破 断 面 と 新 生骨 基 質 問 に は数 層 の 扁 平 な 細胞が 介在し てい た.
術 後8週 光 学 顕 微 鏡 観 察 結 果 : す べ て の 群 に お い て 炎 症 性 細 胞 の 浸 潤 は 認 め ら れ な か っ た.0% 群 は , 術 後2週 と 比 べ る と 新 生 骨 が 緻 密 化 し て 破 断 面 と 近 接 し て い た が , 破 断 面 と 新 生 骨 基 質 の 間 に は 数 層 の扁 平 な 細 胞 が介 在 し て い た . 30% 群 も 術 後2週 と 比 べ る と 新 生 骨 は緻 密 化 し て 破断 面 と 近 接 し てい た . 破 断 面と 新 生 骨 基 質の 問 に は 数 層の 細 胞 が 介 在 し て い た が , 破断 面 と 骨 基 質が 直 接 接 し てい る 部 分 も わ ずか に 認 め ら れた . 60% 群 で は , 破 断面 と 新 生 骨 基 質 が 直 接 接 し て い る 部 分 が 多 く 観 察 さ れ , 接 し て い な ぃ 部 分 で も わ ず か に 細 胞 が 散 在 し て い る の み で あ っ た . 組 織 学 的 計 測 結 果 :2週後 の 骨 基 質 形成 率 は0% 群が69.7土24.1% (n〓8),30% 群 が72.1土31.6%( 舮7) ,60% 群 が 78.9土20.4%(nニ7) ,8週後は それぞ れ86.7土7.6%(舮8),75.0土14.6%(舮7),92.7土5.2%(nニ7)であった.いずれの 観 察期間 も3群間に 有意差 は認 められ ず,各 群の2週後 と8週後の 間にも 有意差 はな かった .
2週 後 の 破 断 面 と 新 生 骨 基 質 問 の 平 均 距 離 は ,0% 群 が40.5土27.Oym,30% 群 が19.2土5.OLun,60% 群 が10.2土 6.lymで ,60%群 は0% 群 に比 較 し て 有 意に 小 さ か っ た.8週 後 は それ ぞ れ10.8土8.5ym,5.2土2.3 Wn,313土0.9punで , 3群 間 に 有 意 差 は な か っ た.2週 後 と 8週 後 を 比 較 す る と ,0% 群 と30% 群 で は 有 意 に 減 少 し て い た . 2週 後 の 試 料 と 新 生 骨 基 質 の 接 触 率 は0% 群 ,30% 群 で は0% ,60% 群 で は0.6土1.5% で あ っ た ,8週 後 は0% 群 が 0% ,30% 群 が6.6土6.5%,60% 群カ ミ18.3土8.9%で ,60% 群は0% 群 に 対し て 有 意 に 高か っ た.2週後 と8週 後を比 較す る と60%群 は有 意に増 加して いた,
試 料 と 骨 基 質 の 接 合 部 位 のSEM観 察 結 果 :8週60% 群 の 試 料 と 新 生 骨 基 質 の 接 合 部 位 で は , レ ジ ン 表 面 は 凹 凸 状 を 呈 し て お り , そ の 表 面 に 新 生 骨 が 増 生 し て い た . レ ジ ン と 新 生 骨 の 間 に は 間 隙 を 認 め な か っ た .
【 考 察 】
炭 酸 カ ル シ ウ ム を 添 加 し た 移 植 試 料 で は , 周囲 組 織 に カ ル シウ ム イ オ ン が溶 出 し , と くに 炭 酸 カ ル シウ ム の 混 和 濃 度 が 高 く な ると 溶 出 量 も 多く な り , 試 料 近傍 に 高 濃 度 で存 在 す る こ とに よ っ て , 新生 骨 の 形 成 が 促進 さ れ 、 早期 から骨 が 試 料 に 近 接 , 直 接 試料 に 接 す る 範囲 も 増 加 し た と考 え ら れ た .ま た ,SEM観 察 で , 露 出し た 炭 酸 カ ルシ ウ ム 表 面 だけ で な く , レ ジン 表 面 に も 間隙 な く 新 生 骨 が形 成 さ れ て いる 部 分 が み られ , レ ジ ン の陥 凹 部 に も 骨 基質 が 増 生 して 間隙な く レ ジ ン と 嵌 合 し て い た こ と か ら , レ ジ ン と 新 生 骨 の 強 固 な 結 合 が 得 ら れ る 可 能 性 が あ る と 考 え ら れ た .
【 結 論 】
4‑METAf MMA‑TBBレ ジ ン に 炭 酸 カ ル シ ウ ム を 添 加 す る と , レ ジ ン と 骨 の 直 接 接 触 を 高 め , 硬 組 織 と の 結 合を 促 進 さ せ る 可 能 性 が 示 唆 さ れ た .
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学 位論文審査の要旨
学位論文題名
Effect of calcium carbonate on bone formation on 4 ―META/IVIIVIA ―TBB resin
(炭酸カルシウムが4 ― META/MMA ーTBB レジン上への骨形成に与える影響)
4̲ME'I、A/MMA‐TBBレジ ンは歯 質に対する優れた接着性を有し,生体親和性もきわめて高いことが知られ,歯根端 切除術 や再植 術時のroot一endsealing, 垂直歯 根破折 の接着 治療,髄床底穿孔部の封鎖に応用されてきたが,その治 癒形態はレジンが軟組織で被覆されており,硬化したレジン上にセメント質の形成は認められていなぃ.一方,ラット頭 蓋骨に4‐MErrA/MMA‐TBBレジ ンを接 着させ た研究 では,硬 化した レジン 表面へ の硬組 織形成 の可能 性が示 されて いる.そこで,4‐MElA瓜皿dA_TBBレジン表面にセメント質を形成させ強い結合をさせるために,硬組織形成を促進し、
直接硬 組織と 結合する 材料を 添加す ることが有効ではなぃかと考えた.本研究では炭酸カルシウムの濃度を変えて4‐ ME1、A/MMA― TBBレ ジ ン に 添 加 し , 骨 増 生 へ の 影 響 や 新 生 骨 と の 結 合 状 態 な ど を 評 価 し た . 4‐MElA/MMA‐TBBレジ ンに炭 酸カル シウム を0,30,60%の重量比で混和させ,移植試料を作製し,10週齢Wistar 系雄性 ラット の大腿骨 骨髄腔 に試料 破断面 が骨髄 腔内に 位置す るように移植した.炭酸カルシウムを混和した濃度に より,0%群(n216),30%群(nニ14),60%群(舮16)とした.観察期間は2週と8週として薄切標本を作製し,HE染色を 行い、 組織学 的観察お よび, 骨基質 形成率 ,破断 面と新 生骨基 質問の 平均距離 ,試料 と新生 骨基質 の接触 率にっい て組織学的計測およぴ統計学的処理を行った.
術後2週 では,0%群は 移植試 料は厚 い軟組 織に被包 され, その外 側に新 生骨が 形成が された .新生 骨は薄く 梁状 であった.30%群でも移植試料は厚い軟組織で被包され,その外側に新生骨カミ形成された,新生骨の構造も,0%群と 同様に 幼弱な 梁状構造 をして いた. 破断面 と新生 骨基質 問の軟 組織は0%群と 比べると やや薄かった,60%群では移 植試料 に近接 した部位 で新生 骨が形 成され ており ,緻密 な構造 が観察 された. 術後8週 では,0%群は,術後2週と比 べると ,新生 骨は緻密 化し, 破断面 と近接 した部 位で観 察され た.破断面と新生骨基質問には数層の細胞が介在して いた,30%群も 術後2週 と比べ ると, 新生骨は緻密化しており,破断面と近接した部位で観察された.破断面と骨基質 が直接 接して いる部分 もわず かに認 められ た.60% 群では ,破断面と新生骨基質が直接接している部分が多く観察さ た.
骨基質形成率は2週後0%群は69.7土24.1%,30%群は72.1土31.6%,60%群は78.9土20.4%であった.8週後は それぞれ86.7土7.6%,75.0土14.6%,92.7土5,2%であった.どちらの観察期間も,3群間に有意差は認めず,2週後と 8週後の 同じ群 を比較 しても有 意差は 認めな かった .破断 面と新 生骨基 質問の 平均距離 は,2週 後,0% 群は40.5土
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光
文
生
雅
卓
憲
浪
門
塚
川
土
網
授
授
授
教
教
教
査
査
査
主
副
副
27.Oym,30% 群 は19.2土5.Oym,60%群は10.2土6.1Lunで あった,60%群はO%群に比 較して有意に小さい値であっ た.8週 後は それ ぞれ10.8土8.5 ym,5.2土2.3 pm,313土0.9bunであった.3群問に有意 差は認めなかった.2週後と8 週後を比較すると,0%群 ,30%群では有意に減少し ていた.試料と新生骨基質の 接触率は,2週後では,すべての群 で直接接している部分は 見られなかったが,8週後では,30%群では6.6土6.5%,60%群では18.3土8.9%で,60%群は 0%群 に 対し て有 意に 高 かっ た.2週 後と8週 後を 比較 する と60% 群で は有 意に 増 加し てい た.8週60%群をSEMで 観察すると,新生骨が, 間隙なくレジンと嵌合してい る部分が観察された.
4‑ME1、A爪皿4A‐TBBレ ジンに炭酸カルシウムを添 加すると,レジンと骨の直接接触を高め,硬組織との結合を促進 させる可能性が示唆され た.
引 き 続 き 審 査 担 当 者 と 申 請 者 の 間 で , 論 文 内 容 及 び 関 連 事 項 に っ い て 質 疑 応 答 が な さ れ た 。 主 な 質 問 内 容 は 以 下 の と お り で あ る .
(1) 炭 酸 カ ル シ ウ ム を 選 択 し た 理 由
(2)皮 質 骨 表 面 に 4― META/MMA‑TBBレ ジ ン は 長 期 に わ た っ て 接 着 す る の か (3)新 生 骨 が 移 植 試 料 に 経 時 的 に 近 接 す る 現 象 に っ い て ど う 考 え る か
(4)移 植 後 初 期 の 観 察 を す る 必 要 性 に つ い て
(5)移 植 試 料 と 新 生 骨 間 に 介 在 す る 細 胞 に っ い て ど う 考 え る か (6)連 続 切 片 に し て 観 察 し た 場 合 に 考 え ら れ る 組 織 所 見 に っ い て (7)今 後 の 研 究 の 展 開 と 将 来 の 展 望
こ れら の質 問に 対 して ,申 請者 は いず れに も適 切か つ 明快 な説 明に よっ て回答 し,本研究の内容を中心とし た専 門 分野 はも とよ り 関連 分野 につ い ても 十分 な理 解と 学 識を 有し てい るこ と が確 認さ れた . 本研 究は4‑META/MMA‑
TBBレジンに 炭酸カルシウムを添加する と,レジンと骨の直接接触を 高め,硬組織との結合を促進させる可能性を示唆 し,レジン のさらなる臨床応用への可能 性を示したことが高く評価 された.本研究の内容は,歯科医学の発展に十分 貢 献す るも ので あ り, 審査 担当者全員は,学位申請者 が博士(歯学)の学位を授 与するのに値するものと認め た.
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