博 士 ( 生 命 科 学 ) 坂 田 啓 司
学位論文題名
CharacterizationofS01uble01igomerSOf PrionProteinbyFluoreSCenCeCOrrelationSpeCtrOSCOpy
(プリオンタンパク質の可溶性オリゴマーの螢光相関分光法による評価)
学位論文内容の要旨
プリオン病は、伝播可能な致死性の神経変性疾患である。弧発性クロイツフェルト・
ヤコブ病(Creutzfeldt‑Jakob disease)に代表されるように、ヒトのプリオン病の大半は孤 発性 である。 孤発性 プリオン 病では、 正常型プリオン蛋白質(Pr Pc)から偶発的に異 常型 プリオン 蛋白質(Pr Ps。)オリゴマーが形成されることが病気の始まりと考えら れ て いる が 、Pr Pc‑+PrPs。 オリ ゴ マー の形成 機序は明 らかで ない。こ れまで 、組 換 えPrP(recPrP) を 用 い た 試 験 管 内 の 実 験 系 に よ りPr Ps。 形 成 機 構 の 解 析 が 試 みら れ て いる が 、 その ほ と んど が、 高濃度 のre cPrP (yMオーダー )を出 発材 料 と して いる 、あるい は、高 濃度の変 ´陸剤 で処理し たrecPrPが出 発物質と して用 い ら れ て お り 、 非 変 性 条 件 で 保 持 さ れ て いる 低 濃 度のrecPrP(nMオ ー ダー ) を 出発 材料とし てPr Ps。オリゴマーの形成機構を解析した例は殆どなぃ。本研究では、
非 変 性 条 件 で 保 持 さ れ た 低 濃 度 のrecPrPに 、低 濃 度 のド デ シ ル硫 酸 ナ ト リウ ム (sodium dodecyl sulphate、 以 下SDS) を添 加 す る こと に よ りrecPrPの オリ ゴ マ ー化 を誘導し 、そのオリゴマー形成過程を螢光相関分光法(fluorescence correlation spectroscopy)により解析した。
改変した緑色螢光蛋白質(enhanced green fluorescent protein、以下EGFP)を付加し た プ リオ ン 蛋 白融 合 体(EGFP‑tagged prion protein、以 下EGFP―PrP)を発 現する N2aマ ウ ス 神経 芽 腫 細 胞(Neur02a mouse neuroblastoma)の 培 養 上清 か らEGFPーP rPを 精 製 し た 。 精 製 EGFP― PrPは り ン 酸 緩 衝 液 ( 80mM、 pH7.3) 中 で 保 存 し た 。 添 加 す るSDS濃 度 を 検 討 し た と こ ろ 、 低 濃 度 (10nM)のEGFPーP rPを 含 む 溶 液 に 、SDSを 終 濃 度0.0075〜 0. 01% と な る よ う に 加 え る こ と で 、 可溶 性PrPオ リ ゴマ ー が 形成 さ れ るこ と を 見出 し た 。 可溶 性PrPオリゴ マーの 性 質 をFCSに よ り 詳 細 に 解 析 し た と こ ろ 、EGFP―PrP分 子 が 溶 液 中 で3、6、 9量 体 と し て 安 定 に 存 在 す る こ と が 示 唆 され た 。 次に 、EGFP―PrPの オ リゴ マ ー 形成 に伴う立 体構造 変化を、 蛍光相互 相関分 光法(fluorescence cross‑correlation spectroscopy)と抗PrP抗体パ ネルを 組み合わせて解析した。オリゴマー化に先立って
PrP分子のN末端領域部分に構造変化が、またオリゴマー化に伴ってC末端領域部分 に構造変化が生じることが分かった。さらに、抗PrP抗体パネルを用いたオリゴマー 形成の阻害実験では、N末端領域部分を認識する抗体がオリゴマー形成を著しく阻害す る一方で、C末端領域部分を認識する抗体はオリゴマー形成を阻害しなかった。この結 果から、PrPのN末端部分が可溶性PrPオリゴマー形成の初期段階に関与すること が示唆された。
結果として、PrPオリゴマー基本ユニットが3量体のPrPでありうること、およ びPrPのN末端 とC末端に 構造変化が 生じるこ とを見出 した。さらに、PrPのN末 端が、オリゴマー形成に関与する可能性を見出した。
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学位論文審査の要旨
学 位 論 文 題 名
Characterization of Soluble Oligomers of
Prion Protein by Fluorescence Correlation Spectroscopy
( プ リ オ ン タ ン パ ク 質 の 可 溶 性 オ リゴ マ ーの 螢 光 相関 分 光 法に よ る評 価 )
プリオン病は、蛋白質だけで伝播可能な致死性の神経変性疾患である。弧発性クロイツフ ェルト・ヤコブ病(Creutzfeldt‑Jakob disease)に代表されるように、ヒトのプリオン病 の大半は孤発性である。孤発性プリオン病では、正常型プリオン蛋白質(PrPC)から 偶発的に異常型プリオン蛋白質(PrPSc)オリゴマーが形成されることが病気の始ま りと考えら れている が、Pr PC‑+PrPScオリ ゴマーの形成機序は明らかでない。こ れ ま で 、 組 換 えPrP(recPrP) を 用 い た 試 験 管 内 の 実 験 系 に よ りPrPSc形成 機構の解析が試みられているが、そのほとんどが、高濃度のr ecPrP (?Mオーダー)
を出発材料としている、あるいは、高濃度の変性剤で処理したrecPrPが出発物質と して用いられており、非変性条件で保持されている低濃度のrecPrP(nMオーダー)
を 出 発 材 料 と し てPrPScオ リ ゴ マ ー の 形 成 機 構 を 解 析 し た 例 は 殆 ど な ぃ 。 本研究では、非変性条件で保持された低濃度のrecPrPに、低濃度のドデシル硫酸ナ トリウム(sodium dodecyl sulphate、 以下SDS)を 添加する ことによ りrecPrPの オリゴマー化を誘導し、そのオリゴマー形成過程を蛍光相関分光法(fluorescence correlation spectroscopy)により解析した。
改変した緑色螢光蛋白質(enhanced green fluorescent protein、以下EGFP)を付加し たプリオン 蛋白融合体(EGFP‑tagged prion protein、以下EGFP―PrP)を発現する N2aマ ウ ス神 経 芽 腫細 胞(Neur02a mouse neuroblastoma)の培 養上清か らEGFP− PrPを 精 製 し た 。 精 製EGFP−PrPは り ン 酸 緩 衝 液 (80mM、pH7.3) 中 で 保 存 し た 。 添 加 す るSDS濃 度 を 検 討 し た と こ ろ 、 低 濃 度 (10nM)のEGFPーPr Pを 含 む 溶 液 に 、SDSを 終 濃 度0.0075〜0. 01% とな る よ うに 加 える こ と で、
可溶性PrPオリゴマーが形成されることを見出した。可溶性PrPオリゴマーの性質を FCSに よ り詳 細 に 解析 し たと こ ろ 、.EGFP―PrP分 子 が溶液中 で3、6、9量 体と して安定に存在することが示唆された。
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孝 誠
明
政
敏
城 村
田
金 出
幸
授 授
授
教 教
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査 査
査
主 副
副
次に、EGFPーPrPのオリゴ マー形成に 伴う立体 構造変化 を、螢光 相互相関分光法 (fluorescence cross‑correlation spectroscopy)と抗PrP抗体パネルを組み合わせて解析 した。オリゴマー化に先立ってPrP分子のN末端領域部分に構造変化が、またオリゴマ ー化に伴ってC末端領域部分に構造変化が生じることが分かった。さらに、抗PrP抗体 パネルを用いたオリゴマー形成の阻害実験では、N末端領域部分を認識する抗体がオリゴ マー形成を著しく阻害する一方で、C末端領域部分を認識する抗体はオリゴマー形成を阻 害しなかった。
この結果 から、PrPのN末端部分が可溶性PrPオリゴマー形成の初期段階に関与する ことが示唆された。
結果とし て、PrPオリ ゴマー基本 ユニット が3量体のPrPでありうること、およぴP rPのN末端とC末端に構 造変化が生 じること を見出した。さらに、PrPのN末端が、
オリゴマー形成に関与する可能性を見出した。
よって著者は,北海道大学博士(生命科学)の学位を授与される資格あるものと認める。
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