Title
島尻マージにおける土壌蓄積リンの利用に関する基礎的
研究
Author(s)
前里, 和洋
Citation
沖縄農業, 33(2): 2-8
Issue Date
1999-06
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12001/1416
Rights
沖縄農業研究会
島尻マージにおける土壌蓄積リンの利用に関する基礎的研究
前里和洋
(宮古農林高校)
KazuhiroMaesato:StudiesontheutilizationoftheaccumulatedphosphateinsoilinShimajiri-mahji
中に存在する土壌蓄積リンを効率的に作物へ吸収さ せ,リンの利用率向上を目指し一連の実験を試みたの で,その概要を報告する. 本研究を行うに当たり,土壌採取および分析に協力 していただいた沖縄県農業試験場宮古支場,座喜味利 将研究員,または沖縄県立宮古農林高等学校の職員お よび農業クラブ・プロジェクト研究専攻の生徒の各位 に対し感謝の意を表する. はじめに 沖縄県は亜熱帯地域に属し年間降水量も多いため, このような土壌では養分の流亡が激しく,耕地土壌で は無機成分組成の不均衝をきたしている可能性があ る.宮古島には暗赤色士の島尻マージと呼ばれる土壌 群が多く分布しており(大屋,1976;大屋,1978),有 効士層が浅く保水力の小さい土壌が多い(大城ら, 1980).化学肥料が普及した近年,多量のリン肥料が 施用されているものの施用したリン酸の80~95%が 固定化によって,不可給態になってしまうのは無駄が 大きいばかりでなく土壌中のリン酸の蓄積量を増大 させる原因となっている(Katznelsonら,1959).リン 酸は土壌粒子に吸着されやすく,且つ難溶性リン酸塩 として沈殿しやすい成分であり一般に土壌溶液中で の溶解度はきわめて低いそのため多くの土壌におい てリン酸が作物生産の制限因子となっていることが 推定される. 著者は,肥料として多量に施用されるリン酸が宮古 島の島尻マージに含有されているカルシウムと反応 し,作物に利用されにくい形態の難溶性リンとして土 壌に固定しているのではないかと推察した.ところで, 土壌リンの動態には土壌微生物が関与することが知 られているもののその実態については不明な点が多 く,土壌蓄積リンの利用のために微生物を利用するに は至っていない(Alexander,1977;Sperber,1958). そこで本報では,土壌微生物の機能を活用し,島尻マ ージに含有される難溶性リン化合物を可溶化し土壌 材料および方法 1供試土壌 土壌分析に供試した土壌は,農耕地のO~30cmの作 土層および林地の作物無栽培土壌を採取した.採取し た土壌は風乾した後,粉砕機を用いて粉砕後,ふるい (2mm)にかけて風乾採士として分析に用いた.pHは 土と水が1:2.5の割合のサスペンジョンを作りガラス 電極法によって測定した.ECは士と水が1:5の割合の サスペンジョンを作りECメーターによって測定した. 有効態リン酸はトリオーグ法によって測定した.全リ ン酸は過塩素酸で分解抽出した液をバナドモリブデ ン酸により発色後,吸光度を求めリン濃度を定量した. 2.リン溶解菌の分離 リン溶解菌の分離は土壌希釈平板法,分離源は島尻 マージを用いた.供試士壌109を秤量し200mlの三角 フラスコに蒸留水90mlを入れオートクレープした滅 菌水中へ添加し,往復振とう機で10分間振とうした. 上澄み液1mlをメスピペットを用いてヒドロキシアパ前里:島尻マージにおける土壌蓄積リンの利用に関する基礎的研究 3 タイトを含有した滅菌シャーレ中へ接種した(Kucey, 1983).28℃暗条件下にて10日間培養し,クリアゾー ンを形成したコロニーについて調査し,乾士g当りに 換算した(Sperber,1958). 3.高性能リン溶解菌の選抜 土壌より分離したリン溶解菌100株のリン溶解能を, 寒天透明帯直径測定法および寒天透明域深度測定法 を用いて測定した.寒天透明帯直径測定法では, 7.5,MのCa3(PO4)2,FePO4・H20およびMgb(PO4)2. 8H20を分散させたグルコース・イーストエキス培地 (1.0%グルコース,0.05%酵母エキス,005%MgSO4, 0.01%KC1および0.01%NaCl)20mlを直径90mmの滅 菌シャーレに分注し,1白金耳の分離株を寒天表面に 接種した.寒天透明域深度測定法では,7.5,MのCa3 (PO4)2,FePOI・H20およびMg3(PO1M8H20を分 散させたグルコース・イーストエキス培地10mlを直径 16.5mmの試験管に分注し,1白金耳の分離株を寒天 表面に接種した.28℃暗条件下にて14日間培養し,シ ャーレではコロニーの周囲に形成された透明帯,また 試験管ではコロニーの下に形成された深度を測定し, 溶解したリン酸の量を計算した(Nishio,1985). 4.有機酸の生成およびリン溶解能 土壌より分離したリン溶解菌100株より高性能リン 溶解菌としてStrain22の菌株を22株として選抜し供 試菌とした.22株を滅菌した酸生成試験用液体培地 (0.02%MgSO4,0.02%KC1,0.1%(NH4)3P04,0.02% 酵母エキスおよび05%グルコース,pH7.0)およびVP 試験用(J_ブロス)培地(0.5%トリプトン,1.5%酵母エキ スおよび0.5%グルコース,pH6.8)に接種し,30℃で 14日間培養した.得られた22株の培養液をメンブラン フィルターでろ過除菌した後,25ml容量のフラスコに ろ液2.5mlを分取し,5%過塩素酸2.5mlを加え,蒸留 水で定容とした.この液を再度メンブランフィルター でろ過し,ろ液中の有機酸をHPLCで測定した.同定 には,有機酸標準品として6種類のコハク酸,乳酸, 酢酸,ギ酸,プロピオン酸および酪酸を用いた (Sperber,1958). 1/2NutrientBroth(0.03%NaCl,0.01%酵母エキス および003%ペプトン,pH7.0)培地にグルコース, バカスおよび糖蜜(糖分35%)を炭素源として添加し22 株を培養した.炭素源の処理濃度は,培養液100ml当 たり乾物として0.019,0.059,0.19および0.59を添加 した.22株の接種方法は,ヒドロキシアパタイト含 有平板を用いて純粋培養しクリアゾーンを形成した コロニーより1白金耳をとり滅菌水10mlに懸濁し,そ の懸濁液1mlを培養液250m'中へ接種した(下地ら, 1998).培養条件は25℃,100rpm,暗条件下で10日間 培養し,培養液中のpHを経時的に測定し,pH低下を 有機酸生成の指標とした. 5.栽培試験 表7に示した暗赤色士を供試土壌として用い,8号ポ ットに3kg充填した.難溶性リンとして土壌19当たり l00qUgP(P-1000区)または5000,ugP(P-5000区)相 当量のリン酸三カルシウムを添加した.基肥について は,リン酸三カルシウムの添加と同時に窒素(硫安)お よびカリウム(硫酸カリ)を土壌19当たりそれぞれ成分 として160ノug全区共通に施用した. 1/2NutrientBrothの基本培地で大量培養した22株 をバカスに加えよく混合した.22株添加量は供試有機 物19当たり1×108個であった.このリン溶解菌22株 含有バカスを先の土壌に風乾土1009当たり0.19お よびLog添加した.肥料およびバカス添加後,潅水 し2週間ガラス室に放置した.この調製した土壌をよ く混合した後,供試作物であるナス(品種:黒陽)の3~5 葉期の苗を定植し,以降常法によって栽培管理した. 30日間栽培をした後生育調査を行った.試験区の構成 は表8に示したように設定した. 結果および考察 1.土壌の性質とリン溶解菌数 供試土壌の性質は表1に示すように,pHは酸性か らアルカリ性まで幅広い値を示した.また,耕地土壌 では作物に利用可能な可給態リン酸は含有されてい るものの(新田ら,1991),作物に利用されにくい
沖縄農業第33巻第2号(1999) 4 表1.宮古島における採取土壇の化学的性質 EC可給態リン酸全リン酸 (mS/c、)(P205mg/1009)(P205mg/1009) pH 栽植 採取地区土壌統 H20KCl 平良市・’ 平良市 平良市 平良市 平良市・2 平良市.2 林地 サトウキビ 獺m・サトウキビ 鰄・サトウキビ 果樹 野菜 糸州-1 糸州-1 糸州-1 糸州-1 摩文仁 魔文仁 13.5 422.6 628.0 564.8 900.8 666.7 919556 708379 ●●●●●● 587757 024122 379204 ●●●●●● 000000 597405 .53972 111255 343673 503073 ●●⑥●●● 688858 .’林地の作物無栽培土壌. ・2施設畑の土壌. 不溶性のリン酸が顕著に高い濃度で土壌に蓄積され ていることが推測された.また,土壌採取区分間では サトウキビ栽培畑の全リン酸が4226mg(P205/
,oog)含まれるのに比べ果樹または野菜畑の施設土壌
の全リン酸は果樹畑で9008mg(P205/1009)および
野菜畑で666.7mg(P205/1009)含有され高いリン酸
濃度の値を示した.林地の作物無栽培土壌に含有され るリン酸濃度は他の土壌に比べ低い値であった.この ように林地の土壌に比べ農耕地の土壌に高濃度のリ ン酸が認められたことは,施用されたリン酸の大部分 が島尻マージに含有されるカルシウムと反応し,リン 酸カルシウムの形態で土壌に蓄積されていることが 推察された.表2に示すようにヒドロキシアパタイト を含有した寒天平板にコロニーの形成を認めた.採取 土壌のリン溶解菌数は林地の土壌で最も多く乾土19 当たり3×105個であり,採草地・サトウキビ畑は2× 102個,野菜.サトウキビ畑は7×102個,果樹畑は5×102個および野菜畑は3×102個であった(Kucey,
1983).しかし,サトウキビの連作畑ではクリアゾー ンを形成したコロニーを認めなかった.その詳細な原 因は不明であるが,採取したサトウキビ連作土壌では, サトウキビの収穫直後その残査を燃焼させており著 しく有機物投入量の少ない土壌であった.Nishio (1985)は,土壌中の全炭素量とリン溶解菌数の関係に 表2.宮古島における採取土壇のリン溶解菌数 栽植菌数(数/g乾土) 採取地区土壌統 3×105 平良市・’ 平良市 平良市 平良市 平良市・2 糸州-1 糸州-1 糸州-1 糸州-1 魔文仁 林地 サトウキビ 採草地・サトウキビ 野菜・サトウキビ 果樹 2×102 7×102 5×102 .’林地の作物無栽培士壊. ・2施設畑の土壌. ついて調査した結果,その両者問には高い相関がある ことを認めており,土壌中の可給態炭素量がリン溶解 菌数を規定する最も大きな要因と推定している.また, 土壌は作物残査および堆肥等が多く投入され熟畑化 した土壌では,多様な微生物層を形成し量的にも増加 する(鈴木ら,1965).そのことは,一般の微生物およ びリン溶解菌が土壌中で定着し生息するためには,可 給態炭素化合物として多量の有機物が土壌に投入さ れることが重要と考えられた. 2.高性能リン溶解菌の選抜 供試株100株のうちからリン溶解能を示した株は, リン酸三カルシウムに対して81株,リン酸マグネシウ ムに対して64株であったが,リン酸鉄に対しては極め て少なく2株にすぎなかった(表3).これらのリン溶解前里:島尻マージにおける土壌蓄積リンの利用に関する基礎的研究 5 表3.分離リン酸溶解菌の難溶性リン酸塩の溶解能 表5.供試菌22株の生成した培養液中の有機酸
使用培地有機酸標準品培養中の有機酸濃度
Oug/ml) 難溶性リン酸塩 リン溶解量(m殿) Ca Fe Mg.肌刎Ⅲ、、、
1 コハク酸 乳酸 酢酸 ギ酸 プロピオン酸 酪酸 0 <0.1 0.1-0.5 0.5-1.0 >1.5 四Ⅲ艇5 82妃9 36 12 酸生成試験用液 体培地 4 コハク酸 乳酸 酢酸 ギ酸 プロピオン酸 酪酸羽剛釧佃、Ⅲ
全分離株数 100 ルブロス (VP試験用) 菌の中から,リン溶解能が高く有望と思われる1株を 選抜した.島尻マージにおける土壌中でのリン酸塩の 形態は主としてカルシウムおよび鉄塩と推定される ので,土壌蓄積リンを有効利用するためには,リン酸 三カルシウム,リン酸鉄およびリン酸マグネシウムの いずれのリン酸塩にも溶解能を示した22株が最も有 望と考えられた(表4).また,本菌は80℃15分の熱処 理をした結果,芽胞の形成を認めた. ・IND:検出せず(検出限界:10qug/ml). 異なる炭素源を添加した培養液で22株を培養した 場合のpHの経時的変化を表6に示した.炭素源添加によって,いずれの場合も培養液のpH低下が認めら
れ,しかもその低下は添加濃度の増加とともに促進さ れる傾向が得られた.炭素源間の比較では,易分解性 のグルコース添加区で最もpH低下度合いが大きく, 次に糖蜜が続き,バカスではやや劣るpH低下を示し た.培養液のpH低下が有機酸生成量に関連している と想定すれば,易分解性の炭素源が有機酸生成に有利 と考えられる.しかし,バカスや糖蜜のように比較的 容易に,しかも安価で入手できる炭素資材でも22株は 炭素基質として利用し,有機酸を生成する能力を持っ ていることは興味深い.リン溶解菌である22株による 有機酸生成には,かなり多量の可給態の有機物の存在, そして供給の必要性が示唆された. 表4.分離株の難溶性リン酸塩の溶解能 難溶性リン酸塩 分離菌 Ca Fe Mg 22株 0.90.10.5*単位はme空.
3.有機酸の生成およびリン溶解能 供試菌22株の生成する有機酸を表5に示した.用い た2種類の培地で主に乳酸と酢酸が検出された.また, コハク酸はルブロス(VP試験)培地で検出された. Sperber(1958)は,リン溶解菌の生成する有機酸につ いて調査した結果,乳酸,グリコール酸およびクエン 酸等の生成を認めた.そのことより,供試菌22株は有 機酸生成型のリン溶解菌と推定された.本菌は可給態 炭素化合物を取り込み,乳酸,酢酸およびコハク酸等 の有機酸を生成し,生成した有機酸でリン酸三カルシ ウム,リン酸マグネシウムおよびリン酸鉄を可溶化す ると考えられた.沖縄農業第33巻第2号(1999) 6 表6.供試菌22株を接種した培養液のpH変化に及ぼす各種炭素源添加の影響 添加量 各種炭素源 (g/1009) 培養日数 0
。Ⅲ一過畑伽皿一Wu四M一切妬、皿
2 4 6 8 10乢》却却却却一切却却却一却却却却
5-5588-0099-0853 6-6666-7766-7666 無添加 -15 -15 -15 0-0015-0015-0015 0-0000-0000-0000 1》0111》0000-0010 3-7501》7797-7519 □S●●●●⑤●●■巳の●●巳● 0》0000-0000》0000 士一士士十一十一一土十一土十烹土土十一土 8》5500》0990-0872 ●⑤●●●●凸●●●①●●●①① 6》6666幸7667》7666 0-0110-1021-0101 7-7847-1840-7171 ●や●●●●一●●●●。●●●● 0-0000-0000-0000 土一士土十一十一一土士十一土一士十一十一士 7-0000-3061-0666 ●一℃●●●。●■●●』●●●● 6-5445-6655-6544 狸一切、”w-uwWm-wwuw ●。①●●●一●●●●。●●●● 0-0000-0000-0000 土一士十一十一十一一土士士士一十一十一士十一 8-3085-0088-9750 ●⑤●●●●一●●●●▲●●●● 6-6544-7766-6666 7-8762-1729》9137 士一士士十一十一一土十一十一士一士土十一十一 0-0000{0000-0000 u-nu込姐》的WmW-nmww ●⑤●●●●凸●●①●ロ●●●ロ 6-4333-6554一5543 0-0111-0010-0000 7》9041-7809-7797 ●●●B●●●●●●●。●●●● 0-0000-0000-0000 士一十一士土十一一土十一士士一士士士土 7-7652-0606-5695 ●●●●●●の■●●●●■●●● 6》4333》6554》5433 グルコース バカス 糖蜜 、平均値士SE. 表7.供試土壌の化学的性質 EC可給態リン酸全リン酸 (mS/c、)(P205mg/1009)(P205mg/1009) pH 採取地区土壌統土壌の種類 H20KC1 平良市糸州-1暗赤色土6.535.790.03 1.5 13.5 4.栽培試験 収穫時のナスの乾物重の調査結果を表8にとりまと め示した.その結果,バカス無施用の対照区に比べ, 施用区の収量が勝っている傾向が認められた.また, 22株接種区の収量は無接種区に比べ,優れた乾物重が 得られた.ナス最大の収量増はバカス0.1%接種区で 得られ,P-1000区で対照区に対して35%の増となって おり,同無接種区のその値は5%を示した.P-5000区 では,対照区に対して26%の増となっており,同無接 種区のその値は4%を示した.ナスの生育が促進され 表8.リン酸三カルシウム添加土壌における供試菌22株含有パカス処理がナスの生育に 及ぼす影響 供試菌.’ (22株)有機物源醐鰐
乾物重(g/本) P-1000区P-5000区 3.9±0.28.2 4.1±0.17 5.3±0.18 3.9±0.31 5.1±0.27 ・3 無添加 0.0 0.1 38875 22322 ●■●●● 00000 +|+一十一土土 13221 ●●●●● 44545 aaUDa⑪、 a曲b曲b + バカス 1.0 +、1-:無接種,+:接種(菌数:1×l08CellS/バカス19).
、2平均値土SE. 、6ダンカンの新多重範囲検定(P<001).前里:島尻マージにおける士壌蓄積リンの利用に関する基礎的研究 7 た要因として使用した土壌がリン肥沃土の低い暗赤 色土で,しかも難溶性リン酸塩を施用したためと考え られた.すなわち,リンの供給がナスの生育を支配し ていたと推察した. 以上述べた結果から,22株含有バカスによって難溶 性リン酸塩が可溶化し,ナスがそのリン酸を吸収利用 したことが推測された.ナスの生育促進は,この過程 を通じたリン供給増に起因すると推定された.その要 因としては,バカス施用に伴う土壌の理化学性および 微生物性の改善など多くの要因が想定された.しかし, バカス1.0%の多量施用区で窒素欠乏に起因すると考 えられる窒素飢餓の症状を認めており,今後バカスを 土壌に施用する場合の量およびその時期の問題を検 討する必要がある.また,本試験はポット栽培による 制限された土壌中において作物の生長に及ぼす影響 をリン酸を制限要因として検討したものであり,リン 溶解菌の機能をいかにしたら作物根圏で発現させる かなど,畑土壌において今後検討しなければならない 問題もある. 本報は,土壌蓄積リンの利用率向上を目指し一連の 基礎的な実験を試みたものであり,その方法は土壌よ り分離したリン溶解菌のリン溶解能を指標として試 験検討した.本研究の基本的な考えは,人工的に培養 した微生物を外部より接種するのではなく,表2に示 したように土着菌株としてのリン溶解菌の存在を認 めている.そして、バカスや糖蜜等の有機物を有効に 活用することにより,施肥リンの難溶化の防止および 蓄積リンの再利用に土着菌であるリン溶解菌の機能 をいかに発現させるかにある. 6種類の土壌から100株のリン溶解菌を分離し,それら 分離菌のリン溶解能を難溶性リン酸塩を含む培地で 検討し,リン酸三カルシウム,リン酸マグネシウムお よびリン酸鉄に対してリン溶解能が高く有望と思わ れるl株を選抜した.いずれのリン酸塩に対しても溶 解能を示した供試菌22株は,添加炭素源を利用して乳 酸,酢酸およびコハク酸等を生成し,これら有機酸の 作用でリン酸塩を可溶化すると考えられた22株は, バカスおよび糖蜜の有機資材を添加した培養液で培 養した結果,培地のpHを低下させた.土壌中におい てリン溶解菌である22株に有機酸を生成させるため には,可給態の有機物が土壌に投入されることが重要 と考えられた.リン酸三カルシウムおよび土壌に22 株含有バカスを施用した土壌でナスの生育は促進さ れた.したがってバカスなどの有機資材とともに22 株のようなリン溶解菌を土壌に施用すると施用難溶 性リン酸または土壌蓄積リンの可溶化を促進し,作物 によるリン利用が高まることが示唆された. 引用文献 1.Alexander,M1977.Introductiontosonmicro‐ biology2nded.,JohnWUey&Sons:338-339. 2.Katznelson,H、andBBosel959、Metabohc activityandphosphate-dissolvmgcapabilityof bacterialisolatedfromwheatroots,rhizosphere andnon-rhizospereson.CanJ・MicrObioL5: 79-85. 3.Kucey,R、M・N、1983.Phosphate-solubⅢzmg bacteriaandfUngimvariouscultivatedandvir‐ ginAlbertasonsCan.』・SonSci、63:671-678. 4.Nishio,M1985.Someecologicalfbaturesof phosphate-solubilizmgmicroorganlsmslngrass‐ landsonsProceedingsofthel5thlnternational GrasslandCongr:483-485. 5.新田孝子・森山高広・池田正治1991.沖縄県に おける主要土壌群草地のミネラル分布.沖畜試験 摘要 島尻マージに含有される土壌蓄積リンの作物への 再利用を目途に,土壌分析およびリン溶解菌の分離を 試み,その分離株のリン溶解能について検討を加えた. 耕地土壌では作物に利用可能なリン酸は含有されて いるものの,作物に利用されにくい不溶性のリン酸が 高い濃度で土壌に蓄積されていることが推測された.
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