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<追悼記>宮田洋先生追悼記

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<追悼記>宮田洋先生追悼記

著者 山田 冨美雄

雑誌名 関西学院大学心理科学研究

巻 48

ページ 81‑82

発行年 2022‑03‑25

URL http://hdl.handle.net/10236/00030150

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追悼記

宮田 洋 先生 追悼記

関西福祉科学大学 教授 山田冨美雄

関西学院大学名誉教授の宮田 洋先生が,2021年8 月25日午前,ご自宅にて逝去されました。享年93(満 92歳)でした。ご家族の話によると,5月連休付近から 体調を崩されて以来,お嬢様と同居されていましたが,

当日様子を見に行かれたときには既に意識を失い,救急 措置の甲斐なく逝去されたとのことでした。ここに生前 のお仕事と人となりを偲び,ご冥福をお祈りしたいと思 います。

御略歴

宮田先生は関西学院大学が上ヶ原にキャンパスを移し た1929年のお生まれです(7月27日)。大阪府堺市浜 寺のご自宅兼産婦人科医院での御誕生でした。浜寺水練 学校で古式泳法を伝授されるなど,活発な幼少期を過ご されたようですが,太平洋戦争の勃発により思春期は平 坦ではなかったようです。大阪府堺中学校(後の三国ヶ 丘高校)では英語がお得意であったようですが,家業で ある医院を継ぐために医学部を受験されるも叶わず2年 の期間を経て1949年4月に関西学院大学経済学部に入 学されました。ところが簿記の授業が性に合わず,1951 年4月に古武弥正教授率いる文学部心理学科に転科され ました。実験動物の世話や実験にのめり込み,実験実習 のレポートを英文で書いて指導教員を驚かせたと生前楽 しそうにおっしゃっていました。1954年3月卒業後,

大学院文学研究科心理学専攻修士課程に進み,当時米国

で主流であった動物実験に基づく新行動主義心理学の世 界にのめり込むことになります。1956年3月に同課程 を修了されますが,それに先立つ1955年に専任助手に 就任されています。ちなみにこの年,心理学科はハミル 館 に 移 転 し て い ま す。1959年 専 任 講 師 に 昇 進 さ れ,

1963年助教授,1971年教授に就任され,1998年の定年 によるご退職までの43年間にわたって第一線で研究指 導にあたられました。1971年からゼミ生の研究指導を 開始され,さらに1973年から大学院修士,1975年から は博士課程の研究指導者となって以後27年で研究指導 された学士論文349篇,修士論文42篇,博士論文は8 篇にのぼります。

御研究分野

1965年に「条件反射における個人差の研究」で関西 学院大学より文学博士の学位を取得されました。古武先 生との共同研究として,人間の条件反射に関する研究を 推進されるとともに,血管運動反射を指標とした定位反 射とその慣れに関する研究,心拍や血圧などの自律神経 系の反応をオペラント条件づけの手法でコントロールす る研究は後にバイオフィードバック学会の成立に繋がる 最先端の研究分野でした。パブロフ型条件づけと道具的 条件づけの相互作用に関する研究はポーランドに留学さ れた折の共同研究で,2編の英文論文が公にされていま す。視覚障害者の睡眠に関する生理心理学的研究は臨床 分野に生理心理学の視点を導入する画期的なものでし た。私も研究に関わらせていただいた脳波Fmθと性格 特性との関係に関する研究は,臨床医学の研究者とも連 携した大掛かりなものでした。このように宮田先生は生 理心理学・精神生理学の幅広い分野をカバーする先駆的 研究者であったと言えるでしょう。

学界活動

学界での活動としては,1954年に東京教育大学で開 催された第19回日本心理学会で,同期の三宅 進先生,

古武先生との連名で口頭発表されたのが最初のようで す。それ以降,毎年のように日本心理学会,関西心理学 会,条件反射学会に参加・発表され,東西の多くの若き 心理学者たちと口角泡を飛ばす議論をされていました。

日本心理学会では1965年から評議員・代議員,1986年 から1995年までは理事として学会運営に携わってこら れ,1997年には関西学院大学で第61回日本心理学会を 大会長として開催されました。また宮田先生のご専門で ある生理心理学および精神生理学の分野では,1983年 に日本生理心理学会の創設に加わって初代運営委員長

(理事長)を1989年まで務められ,1996年には関西学 院大学で第14回大会を大会長として開催されました。

日本バイオフィードバック学会の創立メンバーとして 宮田 洋先生の近影

(2017年5月 ご自宅書斎にて,山田撮影)

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1983年から運営委員,1992年から1996年まで副会長を 務 め ら れ ま し た。国 際 学 会 の1つNorth American Pavlovian Societyの会員として1987年の広島大会時に は名誉あるGandtメダルを受賞され,1993年の大会を,

米国ロサンゼルスで大会長として主催されました。その 他,日本ストレス学会,日本睡眠学会,日本脳波・筋電 図学会,日本鑑識科学技術学会,日本社会心理学会,関 西心理学会などの各会員として活躍されました。

語学が堪能であった宮田先生は,ロシアの生理学者I.

P. Pavlovの弟子E. N. Sokolovから送られてきたロシア 語の研究書「知覚と条件反射」を,ロシア語を独学で勉 強して読み解き,自ら追試実験を実施し英論文2篇を仕 上げておられます。

また,1964年から1966年にかけて,ユネスコIBRO

(International Brain Research Organization)基金によって ポーランド科学アカデミー・ネンツキー実験生物学研究

所のKonorsky教授が主宰する神経生理学教室に留学

し,古典的条件づけと道具的条件づけの相互作用に関す る実験に携わり,研究者仲間とは英語で,実験助手とは ポーランド語やロシア語でコミュニケーションを行なっ たと伺っています。

お人柄

筆者が宮田先生のゼミ生であった頃,指導はとても厳 格なものでした。ゼミ発表前に関連文献を読みこんで,

発表時間内に終わるよう段取りよく発表のシナリオを作 り,練習しておくよう指導されました。大学院生になっ てからは,学会発表の事前準備に時間をかけ,10分で

研究の目的と方法をしっかり説明し,わかりやすく綺麗 な図版を作って結果を説明し,時間内にきっちり終われ るように繰り返し練習をさせられたものでした。おかげ で,人前でプレゼンすることに慣れ,想定質問を事前に 考えて質疑応答ができるようになりました。

一方,他大学からの来客やゼミ以外の他学科の学生に 対しては,とても物腰柔らで丁寧な解説をしておられた のを見て,羨ましい思いをしたものでした。ワンゲル部 の部長を務められ,合宿でキナバル登山をされたことも ありました。学生たちとテニスやアメフトで汗を流し,

冬はスキー,夏は海水浴を楽しんでおられました。

若い頃はお酒が強く,乾杯の音頭は決まって「ストー ラ・ストーラ・・」のコーラスを要求されました。これ はポーランド語の乾杯の歌なのだと,長い歌詞を覚えさ せられました。ポーランド留学から帰国した後も,近く のポーランド人の方と親交を深め,新しく覚えた用語は 単語帳を作って発音の練習も続けておられたと伺ってい ます。

お亡くなりになった後,書斎の机上のノートパソコン を開けて,書きかけの原稿を見せていただきました。何 か新しい着想をお持ちだったようで,臨床と生理心理学 を繋げるようなテーマのようでした。教え子の私たちの 仕事を暗示されているのかもしれません。

最後まで三日月が大好きで,俺の血は顕微鏡で見ると 三日月の形の赤血球が混じっているなどとおっしゃって いた宮田先生,多くの学びを頂きありがとうございまし た。

合掌。

関西学院大学心理科学研究 82

参照

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