原子の結合について理解するには、まずは原子の種類(=元素)による性質の違いを知る必要がある。 原子の性質は、次の 3 つによって理解することができる。
イオン化エネルギー = 原子から電子 1 個を取り除くのに必要なエネルギー
(イメージ) 原子 「いやだ!!」の強さ電子親和力 = 原子が電子 1 個を受け取ったときに放出するエネルギー
(イメージ) 原子 「やった!!」の強さ電気陰性度 = 原子間で共有結合しているとき、原子が共有電子対を引きつける強さ
(イメージ) 原子 原子原子の性質を周期表で理解する
解法 1
電子 電子 「こっちに来て!!」の強さこの 3 つはすべて電子を求める強さを表しており、電子を求める強さは周期表の右上の元素ほど 強い傾向にある。 よって、3 つの値はいずれも、周期表の右上ほど大きくなる傾向がある。 周期表 ※ 右へ行くほど陽子の数が増えるため、電子に対して強い引力が働くようになり、 上へ行くほど最外殻電子と原子核の距離が小さくなるので、引力が強くなる。 ※ 一番右側の希ガスについては、イオン化エネルギーは最も大きいが、電子親和力は小さい。 また、希ガス元素が共有結合することは普通ないので、電気陰性度は定義されない。
イオン化エネルギー
電子親和力
電気陰性度
大
小
電子が欲しい
電子はいらない
イオン結晶にはいくつもの構造がある。 例えば、陽イオン:陰イオン=1:1 で結合しているイオン結晶には、次の 3 種類がある。 (図は、それぞれの単位格子(=結晶の最小単位。これを繰り返せば結晶を再現できるもの)である) CsCl 型 NaCl 型 ZnS 型 配位数 8 配位数 6 配位数 4 (配位数 = 1 つのイオンに接するイオンの数) 大切なのは、これらの構造を覚えることではなく、次のポイントを理解することである。 最も近接している反対符号のイオンは接触しているが、 最も近接している同符号のイオンは接触しているとは限らない。 格子内に含まれるイオンの数は 格子内部=1 個 面上= 𝟏𝟏 𝟐𝟐 個 辺上= 𝟏𝟏 𝟒𝟒 個 頂点上= 𝟏𝟏 𝟖𝟖 個 と数える。
イオンの接触の仕方と数え方を理解する
解法 4
CsCl 型 NaCl 型 ZnS 型 <CsCl の結晶> イオン半径を求めるときには、次のような断面を考える。 このとき、最も近接している反対符号のイオンは接触していることに注意する。 Cs+ の半径を 𝑥𝑥 とすると、図から 2( 𝑟𝑟 + 𝑥𝑥 ) = √3𝑎𝑎 という関係が分かるので、これを解いて 𝑥𝑥 = √3 2 𝑎𝑎 - 𝑟𝑟 と求められる。 図 1 は塩化セシウム CsCl の結晶の単位格子を、図 2 は塩化ナトリウム NaCl の結晶の 単位格子をそれぞれ表している。それぞれ塩化物イオン Cl− は、黄色で示している。 図から、セシウムイオン Cs+ とナトリウムイオン Na+ の半径をそれぞれ求めよ。 塩化物イオン Cl− の半径は 𝑟𝑟 であるとする。 図 1 図 2
例題 1
𝑎𝑎 𝑏𝑏 𝑎𝑎 𝒂𝒂 √𝟐𝟐𝒂𝒂 𝒓𝒓 𝒙𝒙<NaCl の結晶> 単位格子の 1 つの面を考えればよい。 Na+ の半径を 𝑥𝑥 とすると、図から 2( 𝑟𝑟 + 𝑥𝑥 ) = 𝑏𝑏 という関係が分かるので、これを解いて 𝑥𝑥 = 1 2 𝑏𝑏 - 𝑟𝑟 と求められる。 𝒓𝒓 𝑏𝑏 𝒙𝒙
金属の結晶には、次の 3 種類がある。 六方最密構造 体心立方格子 面心立方格子 これらの結晶構造について、次のポイントを理解しておく必要がある。 ※ 配位数の数え方 体心立方格子:図から、1 つの金属原子(正確にはイオン)が接する原子は 8 個と分かる 面心立方格子:上側の層の 4 個、同じ層の 4 個、下側の層の 4 個の合計 12 個と接する 六方最密構造:上側の層の 3 個、同じ層の 6 個、下側の層の 3 個の合計 12 個と接する 体心立方格子 面心立方格子 六方最密構造 配位数 8 12 12 単位格子内の原子数 2 4 2 充填率 約 68% 約 74% 約 74%
3 種類の金属結晶を理解する
解法 6
※ 単位格子内の原子数は、イオン結晶の場合と同じように 格子内部=1 個 面上= 1 2 個 辺上= 1 4 個 頂点上= 1 8 個 と数えることで求められる。 六方最密構造については、六角形の頂点上= 1 6 個と数える。また、図の六角柱の 1 3 の部分が 単位格子(最小単位)となるので、含まれる原子数が 2 となる。 ※ 充填率(=単位格子の体積の中で、原子が占める体積の割合) 充填率の求め方は例題 3,4 で説明する。 重要なのは、面心立方格子と六方最密構造の充填率が最大であり、この 2 つが最密構造である ということ。そのため、面心立方格子をとる結晶は、立方最密構造ともいわれる。 これらのポイントに加え、最も近接している原子同士は接触していることも知っておく必要がある。 この部分が最小単位
次のような断面を考えると、原子の半径を求めることができる。 ナトリウム原子の半径を 𝑟𝑟 とすると、図から 4 𝑟𝑟 = √3𝑎𝑎 という関係が分かるので、これを解いて 𝑟𝑟 = √3 4 𝑎𝑎 と求められる。 単体のナトリウムは、体心立方格子をとる結晶である。単位格子の一辺の長さを 𝑎𝑎 と して、ナトリウム原子の半径を求めよ。
例題 1
𝒓𝒓 𝒂𝒂 √𝟐𝟐𝒂𝒂 𝒂𝒂 𝒓𝒓 𝒓𝒓 𝒓𝒓金属元素と非金属元素の結合、金属元素どうしの結合について学習してきたので、最後に非金属 元素どうしの結合について学習する。 電子を求める力が強い非金属元素どうしが結合するときには、お互いに電子を出しあって共有する。 これが共有結合であり、共有結合すると各原子の電子配置が希ガス型になって安定する。 例:酸素原子 O どうしの結合 酸素原子 O の最外殻電子は 6 個なので、あと 2 個電子があれば最外殻電子が 8 個の ネオン Ne 原子(希ガス)と同じ電子配置になり、安定する。 そこで、酸素原子 O どうしが結合するときは、お互いに 2 個の電子を出しあって共 有する。
O + O → O O
( は最外殻電子) 原子どうしが共有結合したのが分子である。 分子には多くの種類があるが、各分子の形を問われることも多いので、推測できるようにしておく ことが必要である(数が多いので、すべてを覚えるわけにはいかない)。 このとき、電子対どうしは反発する(-どうしなので)
という原則を使えば、分子の形を推測 することができる。分子の形を推測できるようにする
解法 7
共有する電子(共有電子対)例 1:水 H2O 分子の形 H2O 分子は
H O H
電子対どうしが反発してなるべく離れようとするので、H2O 分子は折れ線形になる。 例 2:二酸化炭素 CO2 分子の形 CO2 分子はO C O
共有電子対どうしが反発してなるべく離れようとするので、CO2 分子は直線形になる。O
H
H
例 3:アンモニア NH3 分子の形 NH3 分子は
H N H
電子対どうしが反発してなるべく離れようとするので、NH3 分子は正三角錐形になる。 例 4:メタン CH4 分子の形 CH4 分子はH C H
電子対どうしが反発してなるべく離れようとするので、CH4 分子は正四面体形になる。N
H
H
H
H
C
H
H
H
H
H
H
(1)、(2) 二原子分子は、すべて直線形である(他の形は取りようがない)。 (3) 正四面体形になる。 CCl4 分子は
Cl C Cl
共有電子対どうしが反発してなるべく離れようとするので、正四面体形になる。 (4) 折れ線形になる。 H2S 分子はH
S H
電子対どうしが反発してなるべく離れようとするので、折れ線形になる。 次の各分子の形を答えよ。 (1) N2 (2) HCl (3) CCl4 (4) H2S例題 1
C
Cl
Cl
Cl
Cl
Cl
Cl
S
H
H
原子によって電気陰性度が異なるので、異なる原子が結合した分子の中では、電気的な偏りが生じる。 例:HCl
H
Cl
H と Cl とでは、Cl の方が電気陰性度が大きいので、共有電子対は Cl の方に引き寄せられる。H
Cl
その結果、H は少し+の電気を持ち、Cl は少し-の電気を持つようになる。H
Cl
このようにして、分子内で電気的な偏りが生じる。 この電気的な偏りのことを極性という。 注意しなければならないのは、異なる原子が結合した分子だからといって、必ず極性を持つわけでは ないということである。 例:CO2O C O
C と O とでは、O の方が電気陰性度が大きいので、共有電子対は O の方に引き寄せられる。O C O
分子の極性の有無を判断できるようにする
解法 8
+ -その結果、C は少し+の電気を持ち、O は少し-の電気を持つようになる。
O
C
O
しかし、CO2 分子は直線形なので、電気的な偏りは全体として打ち消されてしまうので、 分子全体は無極性分子となる。 例:H2OH O H
H と O とでは、O の方が電気陰性度が大きいので、共有電子対は O の方に引き寄せられる。H O H
その結果、H は少し+の電気を持ち、O は少し-の電気を持つようになる。H O H
ここで、H2O 分子は折れ線形なので、CO2 分子のように極性が打ち消されることはない。 つまり、H2O 分子は極性分子となる。 整理すると、 +の中心と-の中心が一致しない分子 = 極性分子 +の中心と-の中心が一致する分子 = 無極性分子 であり、分子の形をもとに分子がこの 2 つのどちらになるかを判断する必要がある。 + + +O
H
+ +H
+ - - - - -非金属元素どうしが集まるとき、ほとんどの場合はまず共有結合によって分子を作り、 その分子がファンデルワールス力(または水素結合)によって結びついて規則正しく並ぶ。 これを分子結晶という。 しかし、中には分子という単位を作らず、連続的に共有結合することで結晶を作るものもある。 これを共有結合結晶という。 まずは、この 2 つの違いを理解する必要がある。 分子結晶の例 共有結合結晶の例 結晶構造の違いが理解できると、以下のような性質の違いも理解できる。 <分子結晶の性質> ファンデルワールス力は共有結合に比べて非常に弱いので、分子結晶は一般に砕けやすく、 融点が低い。 また、昇華するものもある(ドライアイス( CO2 分子の結晶)、ヨウ素( I2 分子の結晶)、ナフタレン ( C10H8 分子の結晶)の 3 つが代表例)。
分子結晶と共有結合結晶の違いを理解する
解法 10
分子 原子 ファンデルワールス力 共有結合<共有結合結晶の性質> 共有結合結晶を作る物質は少ない。 C(ダイヤモンドと黒鉛とがある)、Si、SiO2、SiC が共有結合結晶することを知っていればよい。 例えば、ダイヤモンドと黒鉛は同じ炭素 C 原子だけからできているのに、全く性質が違う。 これは、次のように結晶構造が異なることが原因なので、共有結合結晶の性質の違いを理解 するには結晶構造の違いを知る必要がある。 ダイヤモンドの結晶 黒鉛の結晶 ダイヤモンドの結晶では、結合力の強い共有結合が連続している。そのため、ダイヤモンドは 非常に硬く、融点も高い。 黒鉛の結晶では、共有結合による網目状の平面構造がたくさん作られる。そして、平面構造どう しはファンデルワールス力によって結びついている。 ファンデルワールス力は共有結合よりずっと弱いため、平面構造どうしは離れやすい。 黒鉛は鉛筆の芯に使われているが、紙に何かを書くことができるのは、平面構造がはがれていく からである。 また、炭素原子の価電子は 4 個であるが、黒鉛の結晶では 1 つの炭素原子は 3 つの炭素原子としか 共有結合していない。そのため、価電子が 1 つ余り、これが平面の向きに動くことで電気を通す。 しかし、ダイヤモンドの結晶では 1 つの炭素原子が 4 つの炭素原子と共有結合しているので、価電子 が余らない。そのため、ダイヤモンドは電気を通さない。 共有結合 ファンデルワールス力 共有結合
単体のケイ素 Si は、ダイヤモンドと同じ形の結晶構造をとる。
また、二酸化ケイ素 SiO2 はいろいろな結晶構造をとる。次の結晶構造はその一例である。
は Si 原子。ダイヤモンドと同じ構造で並んでいる は O 原子。Si 原子の間に並んでいる