九州地方における大学進学移動の時系列的推移
川田 力
本研究では,九州地方における大学進学移動の時系列的推移を分析した。その結果,1980 年代以降,県別に程度の差はあるものの,自県内進学が増加していることが判明した。また,
九州地方各県間の進学移動は全体としては増加傾向にあるが,県ごとに傾向が異なること,
広域的には沖縄県を除いては南関東への進学移動が大幅に減少していることも明らかとなっ た。さらに,九州地方では,福岡県と熊本県が大学進学者を吸引する中心となっているが,
福岡県の吸引力が圧倒的に大きく,1980 年以降,この傾向は大きく変わっていないことも 確認された。これらの結果には,大学新設等による各県の入学定員増にともなう収容率の増 加が影響していると考えられるが,佐賀,長崎,大分,宮崎の4県では,収容率の増加に伴 い残留率と占有率がともに増加し,収容率の増加が自県内進学に寄与していること,福岡県 と熊本県では,収容率は減少したものの残留率と占有率がともに増加し自県内進学が維持さ れていること,鹿児島と沖縄県では,収容率が減少し他県への進学が不可避となっているこ とが想定されることが判明した。
Keywords:人口移動,大学,進学,九州地方
Ⅰ.はじめに
我が国における大学等1)の高等教育機関への進学 移動に関する研究は,高等教育機関の立地とも関連 し,教育の機会均等という教育政策的側面と国土の 均衡ある発展という国土政策・地域政策的側面から 様々な研究領域で検討されてきた2)(猪股,2006)。
こうした進学移動の研究における分析単位は,大 都市圏−非大都市圏別(清水,2013,谷,2000),地 域ブロック別(村山,2007,山口・松山,2015,小林,
2018),都道府県別(川田,1992,田村,2017)など があるが,これらの研究の多くは,大局的には大都 市圏と非大都市圏の地域格差を想定しており,全国 レベルでの分析が多い。
しかしながら,実際の進学移動は地方レベルで一 定のまとまりがあり,地方内の地域格差と直結する 問題であることが考えられる。地方レベルで進学移 動に関する従来の研究は,管見の限り,道州制の導 入に関わる地域区分の妥当性を議論する前提として 中四国地方の進学移動を分析した内田・北川ほか
(2009),大学進学率の地域分布の変容要因を解明す
るために関東地方における進学移動を分析した上山
(2012)などわずかである。
こうしたことから,川田(2022)は,中四国地方 を対象として大学進学移動の推移を分析し,中四国 地方においては,広域的には南関東への進学移動が 大幅に減少するとともに,中四国地方各県間進学お よび自県内進学が増加したこと,および,大学新設 等による各県の入学定員増にともなう収容率の増加 の進学移動への影響はどの県も一律ではないことを 明らかにした。しかし,川田(2022)では,こうし た傾向の一般性は確認できていない。
そこで,本研究では,中四国地方との比較を念頭 におき,九州地方を対象として,大学進学移動の実 態を時系列的に確認することを目的とする。
対象時期は 18 歳人口が増加から減少に転じると ともに,大学設置に関わる規制緩和など高等教育政 策の変化がみられる1980 ~ 2020年とする。分析の 手順としては,まず,大学立地および大学進学率の 変化から九州地方の大学進学環境の時系列推移を確 認する。その後,九州地方における大学進学時の県
岡山大学大学院教育学研究科 社会・言語教育学系 700−8530 岡山市北区津島中3−1−1
The Transition of Inter-Prefectural Migration of University Entrants in Kyusyu Region Tsutomu KAWADADivision of Social Studies and Language Education, Graduate School of Education, Okayama University,
3
-1
-1
Tsushima-naka, Kita-ku, Okayama700
-8530
間移動を時系列的に検討する。主たる分析データは 学校基本調査のデータを用いる。
Ⅱ.九州地方における大学進学移動の時系列的推移 1.大学進学環境の時系列的推移
(1)大学立地の変化
2020 年現在,九州地方には 81 大学3)が立地して いるが,そのうち 1980 年代以降に設立された大学 が33校と約4割を占める(第1表)。
九州地方には 1980 年時点で 51 校4)が立地してい た。その内訳は,福岡県 24 校,佐賀県3校,長崎 県3校,熊本県6校,大分県4校,宮崎県3校,鹿
児島県5校,沖縄県3校であり,福岡県に顕著な集 中がみられた。
1980 年以降の大学の新設状況は時期的に差異が みられる。1980 ~ 1989年に新設された大学は福岡,
長崎,宮崎,鹿児島の各県1校の計4校であったが,
その後,1990 ~ 1999 年の新設大学は 14 校,2000
~ 2009 年の新設大学は 13 校と急増した。これは,
1980 年代中頃から国の経済構造改革の一環として 規制緩和が進み,1991 年に大学設置基準が大綱化 されたこと,および,第2次ベビーブーム世代の影 響などによる 18 歳人口増加への対応が求められた ことによる。当該期間の大学設立数の県別内訳は,
第1表 九州地方における大学設置状況
-1979 1980-84 1985-89 1990-94 1995-99 2000-04 2005-09 2010-14 2016-19 計
福岡
1911 九州 88 筑紫女学園 90 福岡女学院 98 九州情報 01 九州栄養福祉 05 帝京(福岡医療技術) 17 福岡看護
36
49 九州工業 92 福岡県立 01日本赤十字九州国際看護 06 聖マリア学院 19 福岡国際医療福祉
49 九州歯科 08 福岡女学院看護
49 西南学院 08 保健医療経営
49 福岡 49 福岡教育 50 久留米 50 九州国際 50 西南女学院 50 福岡女子 50 北九州市立 60 九州産業 60 第一薬科 62 九州女子 63 福岡工業 65 九州共立 65 中村学園 66 近畿(産業理工)
67純真学園[11東和]
67 西日本工業 68 日本経済 73 福岡歯科 76 久留米工業 78 産業医科 佐賀 49 佐賀
2 68 西九州
(76 佐賀医科)
長崎 49 長崎 81 活水女子 94 長崎純心 00 長崎国際
8
65 長崎総合科学 01 長崎外国語
67 長崎県立 02 鎮西学院
熊本
49 熊本 97 九州ルーテル学院 01 平成音楽
10
49 熊本県立 99 九州看護福祉 03 熊本保健科学
54 熊本学園 67 崇城 73 東海(熊本 C)
75 尚絅
大分
49 大分 98 大分県立看護科学 00 立命館アジア太平洋
50 別府 5 67 日本文理
(76 大分医科)
宮崎 49 宮崎 87 宮崎産業経営 93 宮崎公立 97 宮崎県立看護
7
67 南九州 94 宮崎国際 99 九州保健福祉
(74 宮崎医科)
鹿児島
49 鹿児島 81 鹿屋体育
6 60 鹿児島国際
60 鹿児島純心女子 68 第一工科 79 志學館
沖縄 49 琉球 94 名桜 97 沖縄県立芸術 03 沖縄キリスト教学院
7
61 沖縄 99 沖縄県立看護
72 沖縄国際
総数 51(48) 2 2 6 8 9 4 0 2 81
注:大学名の前の数字は設立年を示す
福岡県9校,佐賀県0校,長崎県4校,熊本県4校,
大分県2校,宮崎県4校,鹿児島県0校,沖縄県4 校であった。さらにその後の2010 ~ 2019年の新設 大学は,福岡県の2校のみであった。
以上のように 1980 年~ 2020 年の期間に,大学数 自体は1
.
59倍となったが,大学が最も多く立地する 福岡県の大学数の九州地方全体の大学数に占める割 合は,1980 年の 47.
1%から 2020 年の 44.
4%と微減 にとどまり,九州地方における県別の大学立地割合 には大きな変化がみられなかった。ただし,当該期 間に長崎県で3校(5.
9%)から8校(9.
9%),宮崎 県で3校(5.
9%)から7校(8.
6%),沖縄県で3校(5
.
9%)から7校(8.
6%)へと大学数と九州地方全 体の大学数に占める割合が増加していることが注目 される。(2)大学進学率の変化
第1図が示すとおり,全国の大学進学率5)は,
1990 年以降,急増している。これは,18 歳人口の 推移および大学入学定員の推移と関係がある。
全国の 18 歳人口は 1980 年の約 158 万人から,第
2次ベビーブーム世代が 18 歳に達する 1990 年代初 頭にかけて急増し,1990年には201万人となったが,
その後は急速な少子化の進行により2020年には117 万人にまで減少した6)。
1980 年代のこうした 18 歳人口の増加に対して,
大学設置審議会は臨時定員も含め入学定員を拡大さ せ対応する方針をとったが,18 歳人口が急増した 1980 ~ 1990 年には入学定員拡大が遅れ,1990 年の 全国の大学進学者は約 49
.
2 万人と 1980 年の約 41.
2 万人から約8万人増に留まった。上述のとおり当該 期間の 18 歳人口は約 43 万人増であったため,全国 では大学進学率が低下した。その後,1990年代に18歳人口が減少に転ずると,
大学設置審議会は臨時定員の解消を原則とするなど 入学定員抑制方針を打ち出していたが,行政改革の 一環として規制緩和が進み 1991 年に大学設置基準 が緩和されたことにより大学の新設が進んだ。これ には,1985 年の男女雇用機会均等法の成立を契機 とする女子の四年制大学志向の強まりと,それに伴 う短期大学の四年制大学への改組が相次いだことが 大きく影響しているとされる7)。この結果,18歳人
0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 60.00
全国 福岡 佐賀
長崎 熊本 大分
宮崎 鹿児島 沖繩
0.00 10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 60.00
全国 福岡 佐賀
長崎 熊本 大分
宮崎 鹿児島 沖繩 0.00
10.00 20.00 30.00 40.00 50.00 60.00
全国 福岡 佐賀
長崎 熊本 大分
宮崎 鹿児島 沖繩
[総数] [男子] [女子]
第1図 九州地方における大学進学率の推移(
1980
~2020
年)[単位:%]資料:学校基本調査報告(各年度版)
間移動を時系列的に検討する。主たる分析データは 学校基本調査のデータを用いる。
Ⅱ.九州地方における大学進学移動の時系列的推移 1.大学進学環境の時系列的推移
(1)大学立地の変化
2020 年現在,九州地方には 81 大学3)が立地して いるが,そのうち 1980 年代以降に設立された大学 が33校と約4割を占める(第1表)。
九州地方には 1980 年時点で 51 校4)が立地してい た。その内訳は,福岡県 24 校,佐賀県3校,長崎 県3校,熊本県6校,大分県4校,宮崎県3校,鹿
児島県5校,沖縄県3校であり,福岡県に顕著な集 中がみられた。
1980 年以降の大学の新設状況は時期的に差異が みられる。1980 ~ 1989年に新設された大学は福岡,
長崎,宮崎,鹿児島の各県1校の計4校であったが,
その後,1990 ~ 1999 年の新設大学は 14 校,2000
~ 2009 年の新設大学は 13 校と急増した。これは,
1980 年代中頃から国の経済構造改革の一環として 規制緩和が進み,1991 年に大学設置基準が大綱化 されたこと,および,第2次ベビーブーム世代の影 響などによる 18 歳人口増加への対応が求められた ことによる。当該期間の大学設立数の県別内訳は,
第1表 九州地方における大学設置状況
-1979 1980-84 1985-89 1990-94 1995-99 2000-04 2005-09 2010-14 2016-19 計
福岡
1911 九州 88 筑紫女学園 90 福岡女学院 98 九州情報 01 九州栄養福祉 05 帝京(福岡医療技術) 17 福岡看護
36
49 九州工業 92 福岡県立 01日本赤十字九州国際看護 06 聖マリア学院 19 福岡国際医療福祉
49 九州歯科 08 福岡女学院看護
49 西南学院 08 保健医療経営
49 福岡 49 福岡教育 50 久留米 50 九州国際 50 西南女学院 50 福岡女子 50 北九州市立 60 九州産業 60 第一薬科 62 九州女子 63 福岡工業 65 九州共立 65 中村学園 66 近畿(産業理工)
67純真学園[11東和]
67 西日本工業 68 日本経済 73 福岡歯科 76 久留米工業 78 産業医科 佐賀 49 佐賀
2 68 西九州
(76 佐賀医科)
長崎 49 長崎 81 活水女子 94 長崎純心 00 長崎国際
8
65 長崎総合科学 01 長崎外国語
67 長崎県立 02 鎮西学院
熊本
49 熊本 97 九州ルーテル学院 01 平成音楽
10
49 熊本県立 99 九州看護福祉 03 熊本保健科学
54 熊本学園 67 崇城 73 東海(熊本 C)
75 尚絅
大分
49 大分 98 大分県立看護科学 00 立命館アジア太平洋
50 別府 5 67 日本文理
(76 大分医科)
宮崎 49 宮崎 87 宮崎産業経営 93 宮崎公立 97 宮崎県立看護
7
67 南九州 94 宮崎国際 99 九州保健福祉
(74 宮崎医科)
鹿児島
49 鹿児島 81 鹿屋体育
6 60 鹿児島国際
60 鹿児島純心女子 68 第一工科 79 志學館
沖縄 49 琉球 94 名桜 97 沖縄県立芸術 03 沖縄キリスト教学院
7
61 沖縄 99 沖縄県立看護
72 沖縄国際
総数 51(48) 2 2 6 8 9 4 0 2 81
注:大学名の前の数字は設立年を示す
口減少期でも大学進学者は増加し,2000 年には約 60 万人,2020 年には約 63
.
5 万人となり,大学進学 率 の 全 国 平 均 も 1990 年 の 24.
6 % か ら 2020 年 の 54.
4%と29.
8ポイントもの大幅な上昇がみられた。九州地方においても,各県の大学進学率の平均は 1980 年の 19
.
5%から 2020 年の 41.
2%へと大幅に上 昇した。ただし,当該期間の全国の大学進学率の延 びに比べると九州地方の大学進学率の伸びは 6.
6 ポ イントも低くなっている。九州地方の 18 歳人口は,1980 年の約 22
.
2 万人か ら1990年には23.
0万人と1980 ~ 90年にかけて全国 に比べるとさほど増加しなかったが,その後の減少 は顕著で 2020 年には約 14.
1 万人となっている。九 州地方においては,1980 ~ 90 年にかけて大学進学 者も,1980 年の約 4.
5 万人から 1990 年の約 5.
0 万人 と約5千人増に留まり,結果として当該期間は全国 では大学進学率が低下したが,九州地方では,福岡 県で 1.
1 ポイント低下したほかは,大学進学率は低 下しなかった。1990 年代以降は,九州地方でも,大学進学者が 増加し,2000 年に約 6
.
4 万人となったが,それ以降 横ばいから減少傾向に転じ,2020 年には約 6.
1 万人 となっている。しかしながら,大学進学者の減少率 を 18 歳人口の減少率が大幅に上回ったことから,1990 年以降,九州各県の大学進学率も大幅に上昇 している。
第1図より九州地方各県の大学進学率の変化はほ ぼ類似したパターンとなっていることが確認でき る。九州地方各県の大学進学率の県間格差をみると,
1980 年には大学進学率が最も高かった福岡県と,
最も低かった沖縄県とで 12
.
9 ポイント差があった が,1990年には大学進学率が最も高かった福岡県と,最も低かった沖縄県とで9
.
7ポイント差に縮まった。しかし,その後は県間格差は概ね拡大し,2015 年 には大学進学率が最も高かった福岡県と,最も低 かった鹿児島県とでは12
.
3ポイント差となった8)。 大学進学率の男女間格差については,我が国では 一般に男子のほうが女子より高いという男女間格差 があることは知られているが,九州地方でも大学進 学率に男女間格差がみられる。しかし,この男女間 格差は急速に縮小している。例えば,1980 年に大 学進学率の男女間格差が九州地方で最も大きかった 福岡県では男女の大学進学率に29.
5ポイントもの差 があったが,2020 年には 3.
6 ポイントの差となって いる。また,九州地方における大学進学率の男女間 格差の県間格差も縮小傾向にあり,1980 年には男 女間格差が最も大きかった福岡県と,男女間格差が 最も小さかった沖縄県とで12.
4ポイントの差があったが,2020 年には男女間格差が最も大きかった鹿 児島県と,男女間格差が最も小さかった長崎県とで 6
.
6ポイントの差となっている9)。このように各県内での大学進学率の男女間格差が 縮小してきたことにより,男女を合計した大学進学 率の県間格差に対する,各県の女子の大学進学率の 影響度が高まっている。換言すると,1990 年代以 降の九州地方における大学進学率の県間格差の拡大 に,女子の大学進学率の県間格差が拡大傾向にある ことが影響がしているとみられる。
2.大学進学移動の時系列的推移
(1)大学進学先の推移
以上のように,1980 ~ 2020 年にかけて九州地方 では,各県とも大学の新設が進み,大学の入学定員 が増加した。また,1990 年以降の 18 歳人口減少期 において,九州地方の 18 歳人口が約 40%減,実数 で計約8万人減と大幅に減少するなか,大学進学者 数はピーク時10)の6
.
4%減,実数で計約4000人減に 留まったことから,各県の大学進学率は大幅な伸び をみせた。九州各県からの大学進学先は,自県内,九州,南 関東が多い11)。第2図から分かるように,九州各県 の自県内進学者数は 1980 ~ 2020 年の間に,長崎,
宮崎が2倍以上,沖縄が約1
.
8倍,福岡,佐賀,熊本,大分が約1
.
4 ~ 1.
5倍に増加した。一方,鹿児島県は1.
2 倍の増加に留まっている。九州各県からの自県を除く九州各県への進学者 は,いずれの県においても 1995 年までに急増して いる。これは1980 ~ 1995年の間に大学入学定員増 加により九州の大学への入学者数が約 3
.
6 万人から 5.
4万人と1.
5倍となった影響が大きい。しかし,そ の後の傾向は県ごとに異なり,沖縄県では増加傾向 にあるのに対し,福岡,熊本,鹿児島の各県は横ば い,佐賀,長崎,大分,宮崎の4県では減少傾向に あり,とくに,長崎,大分の減少数が大きい。1980 ~ 2020年の九州各県から南関東への進学者は 沖縄県からは大幅に増えた一方,その他の県では減 少傾向にあり,長崎,大分,鹿児島の各県では1980 年の2分の1程度まで,熊本,宮崎の両県では3分 の1程度まで減少している12)。
(2)九州地方における大学進学移動
九州地方の大学進学者収容率は,1980年以降の大 学の新設や既存の大学の大学入学定員増によって九 州地方全体でみれば 1980 年の 78
.
7%から 2020 年 85.
6%に増加し,この期間の収容率の増加は平均 10.
4ポイントであった。しかし,2020年時点での収容率にも差異があり,福岡県で117%,熊本県で81%
と高い値となっているのに対し,佐賀県は52%,宮 崎県は55%と低い値に留まっている。また,1980 ~ 2020 年にかけての収容率の増加の程度は県ごとに 異なり,大分県が34
.
8ポイント増,長崎県が28.
7ポ イント増,宮崎県が24.
3ポイント増と比較的高い伸 びをみせたのに対し,佐賀県は 5.
8 ポイント増,熊 本県は 4.
5 ポイント増と低い伸びに留まっている。一方,沖縄県と福岡県の収容率は当該期間に 10 ポ イント以上減少している。
こうした収容率の動向が進学移動に与えた影響も 各県で異なっている(第3図)。1980 ~ 1990 年の 18 歳人口急増期には,佐賀県を除く九州地方のい ずれの県においても収容率自体は増加したものの,
福岡県と沖縄県を除いて残留率は減少し,占有率は 九州地方のいずれの県においても減少した。これは,
進学移動の流動性が高まったとみることができ,18 歳人口の増加率に比して収容率の増加が小さかった ことで進学時の競争的環境が高まったことによると 推察される。
18 歳人口減少期となる 1990 年以降の動向は,県 ごとに異なり,収容率の増加に伴い残留率と占有率 がともに増加した佐賀13),長崎,大分,宮崎の4県,
収容率は減少したものの残留率と占有率がともに増 加した福岡,熊本の2県,収容率が減少し残留率が 減少した一方,占有率が増加した鹿児島,沖縄県の 2県の3類型に大別できる。このうち,佐賀,長崎,
大分,宮崎の4県では収容率の増加が自県内進学を 促進しているといえる。福岡と熊本の両県は,収容 率が減少したものの収容率の値は 2020 年時点でそ れぞれ,福岡県が 117
.
3%,熊本県が 80.
9%と九州 地方の平均値71.
7%を上回っており自県内進学が維 持されていると考えられる。3番目の類型の鹿児島県と沖縄県では,収容率の 減少が他県への進学を余儀なくさせていることが想 定される。とくに,沖縄県では大学進学者が一貫し て増加しており,収容率の低下が残留率の低下に直 接影響している。
九州地方各県間の大学進学移動を純移動でみてみ ると,1980年には,福岡県のみが転入超過となって おり,その数も5344人と大きい。とくに長崎,鹿児 島の2県からは,それぞれ約1000人程度の純流入が あった(第4図)。逆に,転出超過が大きい県は長 崎県の 1297 人,大分県の 1078 人,宮崎県の 1076 人 などでいずれも福岡県への純流出が大きい。
1990 年になると,熊本県が転入超過に転じた。
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000 16000
福岡 佐賀 長崎
熊本 大分 宮崎
鹿児島 沖縄
0 500 1000 1500 2000 2500 3000
福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
0 500 1000 1500 2000 2500 3000
福岡 佐賀 長崎 熊本 大分 宮崎 鹿児島 沖縄
[自県] [九州] [南関東]
第2図 九州地方各県からの大学進学者数の推移(
1980
~2020
年)[単位:人]注)九州地方への進学者数は自県進学者数を含まない 資料:学校基本調査報告(各年度版)
口減少期でも大学進学者は増加し,2000 年には約 60 万人,2020 年には約 63
.
5 万人となり,大学進学 率 の 全 国 平 均 も 1990 年 の 24.
6 % か ら 2020 年 の 54.
4%と29.
8ポイントもの大幅な上昇がみられた。九州地方においても,各県の大学進学率の平均は 1980 年の 19
.
5%から 2020 年の 41.
2%へと大幅に上 昇した。ただし,当該期間の全国の大学進学率の延 びに比べると九州地方の大学進学率の伸びは 6.
6 ポ イントも低くなっている。九州地方の 18 歳人口は,1980 年の約 22
.
2 万人か ら1990年には23.
0万人と1980 ~ 90年にかけて全国 に比べるとさほど増加しなかったが,その後の減少 は顕著で 2020 年には約 14.
1 万人となっている。九 州地方においては,1980 ~ 90 年にかけて大学進学 者も,1980 年の約 4.
5 万人から 1990 年の約 5.
0 万人 と約5千人増に留まり,結果として当該期間は全国 では大学進学率が低下したが,九州地方では,福岡 県で 1.
1 ポイント低下したほかは,大学進学率は低 下しなかった。1990 年代以降は,九州地方でも,大学進学者が 増加し,2000 年に約 6
.
4 万人となったが,それ以降 横ばいから減少傾向に転じ,2020 年には約 6.
1 万人 となっている。しかしながら,大学進学者の減少率 を 18 歳人口の減少率が大幅に上回ったことから,1990 年以降,九州各県の大学進学率も大幅に上昇 している。
第1図より九州地方各県の大学進学率の変化はほ ぼ類似したパターンとなっていることが確認でき る。九州地方各県の大学進学率の県間格差をみると,
1980 年には大学進学率が最も高かった福岡県と,
最も低かった沖縄県とで 12
.
9 ポイント差があった が,1990年には大学進学率が最も高かった福岡県と,最も低かった沖縄県とで9
.
7ポイント差に縮まった。しかし,その後は県間格差は概ね拡大し,2015 年 には大学進学率が最も高かった福岡県と,最も低 かった鹿児島県とでは12
.
3ポイント差となった8)。 大学進学率の男女間格差については,我が国では 一般に男子のほうが女子より高いという男女間格差 があることは知られているが,九州地方でも大学進 学率に男女間格差がみられる。しかし,この男女間 格差は急速に縮小している。例えば,1980 年に大 学進学率の男女間格差が九州地方で最も大きかった 福岡県では男女の大学進学率に29.
5ポイントもの差 があったが,2020 年には 3.
6 ポイントの差となって いる。また,九州地方における大学進学率の男女間 格差の県間格差も縮小傾向にあり,1980 年には男 女間格差が最も大きかった福岡県と,男女間格差が 最も小さかった沖縄県とで12.
4ポイントの差があったが,2020 年には男女間格差が最も大きかった鹿 児島県と,男女間格差が最も小さかった長崎県とで 6
.
6ポイントの差となっている9)。このように各県内での大学進学率の男女間格差が 縮小してきたことにより,男女を合計した大学進学 率の県間格差に対する,各県の女子の大学進学率の 影響度が高まっている。換言すると,1990 年代以 降の九州地方における大学進学率の県間格差の拡大 に,女子の大学進学率の県間格差が拡大傾向にある ことが影響がしているとみられる。
2.大学進学移動の時系列的推移
(1)大学進学先の推移
以上のように,1980 ~ 2020 年にかけて九州地方 では,各県とも大学の新設が進み,大学の入学定員 が増加した。また,1990 年以降の 18 歳人口減少期 において,九州地方の 18 歳人口が約 40%減,実数 で計約8万人減と大幅に減少するなか,大学進学者 数はピーク時10)の6
.
4%減,実数で計約4000人減に 留まったことから,各県の大学進学率は大幅な伸び をみせた。九州各県からの大学進学先は,自県内,九州,南 関東が多い11)。第2図から分かるように,九州各県 の自県内進学者数は 1980 ~ 2020 年の間に,長崎,
宮崎が2倍以上,沖縄が約1
.
8倍,福岡,佐賀,熊本,大分が約1
.
4 ~ 1.
5倍に増加した。一方,鹿児島県は1.
2 倍の増加に留まっている。九州各県からの自県を除く九州各県への進学者 は,いずれの県においても 1995 年までに急増して いる。これは1980 ~ 1995年の間に大学入学定員増 加により九州の大学への入学者数が約 3
.
6 万人から 5.
4万人と1.
5倍となった影響が大きい。しかし,そ の後の傾向は県ごとに異なり,沖縄県では増加傾向 にあるのに対し,福岡,熊本,鹿児島の各県は横ば い,佐賀,長崎,大分,宮崎の4県では減少傾向に あり,とくに,長崎,大分の減少数が大きい。1980 ~ 2020年の九州各県から南関東への進学者は 沖縄県からは大幅に増えた一方,その他の県では減 少傾向にあり,長崎,大分,鹿児島の各県では1980 年の2分の1程度まで,熊本,宮崎の両県では3分 の1程度まで減少している12)。
(2)九州地方における大学進学移動
九州地方の大学進学者収容率は,1980年以降の大 学の新設や既存の大学の大学入学定員増によって九 州地方全体でみれば 1980 年の 78
.
7%から 2020 年 85.
6%に増加し,この期間の収容率の増加は平均 10.
4ポイントであった。しかし,2020年時点での収− 50 −
0 100
km0 100
km0 100
km5,000(人)
2,500 1,000 純増純減
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000 5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満
純増純減
0 100
km第4図 九州地方の大学進学純移動(
1980
年)資料:学校基本調査報告(昭和55年版)
0 100
km0 100
km0 100
km5,000(人)
2,500 1,000 純増純減
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000 5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満
純増純減
0 100
km第5図 九州地方の大学進学純移動(
1990
年)資料:学校基本調査報告(平成2年版)
第3図 九州各県の大学進学者の残留率・占有率の推移(
1980
~2020
年)注)始点(丸印)1980年,終点(矢印)2020
占有率:当該県内高校出身者数
/当該県の大学入学者数 残留率:県内大学へ進学者数
/当該県の大学進学者数 収容率:当該県の大学入学者数
/当該県の大学進学者数 資料:学校基本調査報告(各年度版)
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0
福岡
佐賀
長崎
鹿児島 大分
熊本 沖縄
宮崎
残留率
(%)
占有率(%)
− 50 −
九州地方における大学進学移動の時系列的推移
− 51 −
熊本県は長崎,大分の両県から 200 人以上,佐賀,
宮崎の両県からも 100 人以上の純流入となる一方,
福岡県への純流出が 200 人減となった。これには,
当該期間に熊本県の収容率が14
.
1ポイント増加した ことが大きいとみることができる。2000 年も 1990 年と同様,福岡県と熊本県のみが転入超過となって おり,熊本県の転入超過数が微増する一方,福岡県 の転入超過数は微減した。転出超過の県においては,長崎,大分,宮崎の3県では転出超過数が減少する 一方,佐賀,鹿児島,沖縄では転出超過数が増加し た。2010 年においても,2000 年とほぼ同傾向であ るが,長崎,大分両県の転出超過数はさらに減少し た。2020 年には,熊本県が 99 人とわずかながら転 出超過に転じ,福岡県のみが転入超過となった。
以上の結果をまとめると,九州地方各県間の大学 進学移動においては,福岡県が九州地方のその他の 県から進学者を吸引する最大の中心となっており,
熊本県が福岡県に比べると極めて規模が小さいもの の副次的中心を形成している。この傾向は 1980 年
~ 2020 年の間に大きくは変わっていないが,長崎 県と大分県では転出超過の減少傾向が続くととも に,福岡県の吸引力はわずかながら弱まる傾向にあ る。
0 100
km0 100
km5,000(人)
2,500 1,000 純増純減
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000 5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
純増純減 純増
純減 純増純減
第7図 九州地方の大学進学純移動(
2010
年)資料:学校基本調査報告(平成22年版)
0 100
km0 100
km5,000(人)
2,500 1,000 純増純減
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000 5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
純増純減 純増
純減 純増純減
第6図 九州地方の大学進学純移動(
2000
年)資料:学校基本調査報告(平成12年版)
純増 純減
5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
0 100
km第8図 九州地方の大学進学純移動(
2020
年)資料:学校基本調査報告(令和2年版)
川田 力
− 50 −
0 100
km0 100
km0 100
km5,000(人)
2,500 1,000 純増純減
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000 5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満
純増純減
0 100
km第4図 九州地方の大学進学純移動(
1980
年)資料:学校基本調査報告(昭和55年版)
0 100
km0 100
km0 100
km5,000(人)
2,500 1,000 純増純減
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満 1〜 10未満
5,000(人)
2,500 1,000 5,000(人)
2,500 1,000
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満
(人)1,000以上 500〜1,000未満 100〜 500未満 10〜 100未満
純増純減
0 100
km第5図 九州地方の大学進学純移動(
1990
年)資料:学校基本調査報告(平成2年版)
第3図 九州各県の大学進学者の残留率・占有率の推移(
1980
~2020
年)注)始点(丸印)1980年,終点(矢印)2020
占有率:当該県内高校出身者数
/当該県の大学入学者数 残留率:県内大学へ進学者数
/当該県の大学進学者数 収容率:当該県の大学入学者数
/当該県の大学進学者数 資料:学校基本調査報告(各年度版)
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0
0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0
福岡
佐賀
長崎
鹿児島 大分
熊本 沖縄
宮崎
残留率
(%)
占有率(%)
− 51 −
Ⅲ.おわりに
本研究では,九州地方における大学進学移動の時 系列的推移を分析した。その結果,1980 年代以降,
県別に程度の差はあるものの,自県内進学が増加し ていることが判明した。また,九州地方各県間の進 学移動は全体としては増加傾向にあるが,県ごとに 傾向が異なること,広域的には沖縄県を除いては南 関東への進学移動が大幅に減少していることも明ら かとなった。さらに,九州地方では,福岡県と熊本 県が大学進学者を吸引する中心となっているが,福 岡県の吸引力が圧倒的に大きく,1980 年以降,こ の傾向は大きく変わっていないことも確認された。
これらの結果には,大学新設等による各県の入学 定員増にともなう収容率の増加が影響していると考 えられるが,佐賀,長崎,大分,宮崎の4県では,
収容率の増加に伴い残留率と占有率がともに増加 し,収容率の増加が自県内進学に寄与していること,
福岡県と熊本県では,収容率は減少したものの残留 率と占有率がともに増加し自県内進学が維持されて いること,鹿児島と沖縄県では,収容率が減少し他 県への進学が不可避となっていることが想定される ことが判明した。
本稿では,進学移動の実態を把握するにとどまっ ているが,今後は,これらの要因分析を進めること が求められる。
本稿の結果を,中四国地方を対象として同様の手 法で大学進学移動の時系列的推移を分析した川田
(2022)の研究結果と比較すると,1980 年代以降,
自県内進学と地方内県間進学移動が増加傾向にあ り,広域的には南関東への進学移動が大幅に減少し ているという共通点がみられた14)。また,各県の収 容率の増加の進学移動への影響は一律ではないこと も共通していた。
一方,進学者を吸引する中心地域については,九 州地方では,福岡県の吸引力が圧倒的に大きく,
1980 年以降,この傾向は大きく変化していないが,
中国地方では 2000 年以降,広島県が吸引力を弱め る一方,岡山県が吸引力を強めているという変化が 確認されているという差異がみられた。
こうした結果もふまえ,今後は地方内の地域格差 に進学移動がいかなる影響を及ぼしているのかとい う観点の実証研究,および,高等教育の機会均等と いう側面で地方という地域的範囲やその地域構造が いかなる影響を及ぼしているのかを解明する研究が 必要だと思われる。
注
1)本稿ではとくに断らない場合,大学とは四年制
大学のことを指す。本稿で四年制大学を対象とし た理由は,九州地方全体でみた短期大学への進学 率が2020年時点で8
.
7%と四年制大学への進学率に 比して大幅に低くなっていること,および,九州 地方における短期大学進学時の県間移動は,大学 進学時の県間移動に比して大幅に少ないことによ る。2)高等教育機関の地方分散化政策の成否を検討し た研究としては,秋永・島(1995),佐々木(2006),
朴澤(2017)の研究などがある。進学移動の地域 的差異の発生要因を分析した研究としては,川田
(1992),谷(2000),中澤(2011)朴澤(2012),
上山(2012),遠藤(2017),日下田(2017)の研 究などがある。
3)福岡県の近畿大学産業理工学部,帝京大学福岡 医療技術学部,熊本県の東海大学経営学部基礎工 学部農学部を算入している。また,沖縄県の沖縄 科学技術大学院大学およびサイバー大学は,それ ぞれ大学院大学であることと通信課程大学である ことから参入していない。
4)佐賀医科大学(2003 年に佐賀大学と統合),大 分医科大学(2003 年に大分大学と統合),宮崎医 科大学(2003年に宮崎大学と統合)を含む。
5)本稿での大学進学率は,当該年の大学進学者数
/
3年前の中学校卒業者数を用いている。6)1980 年以降の 18 歳人口のピークは 1992 年の約 205万人である。
7)齋藤(2001)は,性別役割規範の変容や四年制 大学の入学難易度の易化も一因と指摘している。
8)その後,2020 年に向けて県間格差はやや縮小 傾向にある。
9)2020 年の沖縄県の男女間格差は 2
.
2 ポイント女 子が高くなっている。10)大学進学者数のピーク年は県によって異なって いる。
11)南関東は東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の 4都県をさす。
12)九州地方各県から,高等教育機関が集積する大 都市圏である京阪神(京都府・大阪府・兵庫県)
や愛知県への進学は,それぞれ数%程度と大きく ない。
13)佐賀県は1990 ~ 95年間には収容率が減少して いる。
14)例外として,沖縄県では南関東への進学者が増 加傾向にある。
文 献
秋永雄一・島 一則(1995).進学にともなう地域
間移動の時系列分析.東北大学教育学部研究年報,
43,59
-
76.
猪俣歳之(2006).日本における高等教育関連施設 の展開−高等教育機関の地方立地に関する政策を 中心に−.東北大学大学院教育学研究科研究年報,
54(2),137
-
165.
上山浩次郎(2012).「大学立地政策」の「規制緩和」
のインパクト.北海道大学大学院教育学研究院紀 要,117,55
-
82.
内田和子・北川博史・田畑祐介・原 史子・猪原和 也(2009).進学移動からみた中・四国地方にお ける地域間結合.文化共生学研究,8,29
-
40.遠藤 健(2017).大学進学にともなう地域移動の 時系列分析−地理的要因に注目して.早稲田大学 大学院文学研究科紀要,62,113
-
127.
川田 力(1992).わが国における教育水準の地域 格差−大学卒業者を中心として.人文地理,44(1),
25
-
46.
川田 力(2022).中四国地方における大学進学移 動の時系列的推移− 1980 年代以降の四年制大学 進学者について−.岡山大学創立 70 周年記念地 理学論文集編集委員会編『地域と生活Ⅲ』岡山大 学出版会(印刷中)
小林雅之(2018).高等教育の地方分散化政策と地 域間教育機会格差の検証.深堀聰子『学生の成長 を支える教育学習環境に関する調査研究』国立教 育政策研究所,239
-
258.
佐々木洋成(2006).教育機会の地域間格差−高度 成長期以降の趨勢に関する基礎的検討−.教育社 会学研究,78,303
-
319.
齋藤英之(2001).短大という制度,短大卒という 学歴.上智短期大学紀要,21,11
-
30.
清水昌人(2013).大都市圏における転出入と大学 への進学移動.人口問題研究,69(2),74
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87.谷 謙二(2000).就職・進学移動と国内人口移動 の変化に関する分析.埼玉大学教育学部地理学研 究報告,20,1
-
18.
田村一軌(2017).県外大学進学率のパネル分析.
公益財団法人アジア成長研究所
Working Paper
Series
,2017(02),1-
23.中澤 渉(2011).出身地域による高卒後進学機会の 不平等.東京大学社会科学研究所パネル調査プロ ジェクトディスカッションペーパーシリーズ,43,
1
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23.
日下田岳史(2017).大学進学機会の地域格差に関 する仮説生成型研究.大正大學研究紀要,102,
290
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318.
朴澤泰男(2012).大学進学率の地域格差の再検討
−男子の大学教育投資の都道府県別便益に着目し て.教育社会学研究,91,51
-
71.
朴澤泰男(2017).18 歳人口減少期の高等教育機会
−大学進学行動の地域的差異から見た地域配置政 策の含意−.高等教育研究,20,51
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70.
村山詩帆(2007).大学教育機会の地域間格差の再 検討−進学移動の構造と過程に照準して−.大学 教育年報,3,62
-
74.山口泰史・松山 薫(2015).戦後日本の人口移動 と若年人口移動の動向.東北公益文科大学総合研 究論集,27,91
-
114.Ⅲ.おわりに
本研究では,九州地方における大学進学移動の時 系列的推移を分析した。その結果,1980 年代以降,
県別に程度の差はあるものの,自県内進学が増加し ていることが判明した。また,九州地方各県間の進 学移動は全体としては増加傾向にあるが,県ごとに 傾向が異なること,広域的には沖縄県を除いては南 関東への進学移動が大幅に減少していることも明ら かとなった。さらに,九州地方では,福岡県と熊本 県が大学進学者を吸引する中心となっているが,福 岡県の吸引力が圧倒的に大きく,1980 年以降,こ の傾向は大きく変わっていないことも確認された。
これらの結果には,大学新設等による各県の入学 定員増にともなう収容率の増加が影響していると考 えられるが,佐賀,長崎,大分,宮崎の4県では,
収容率の増加に伴い残留率と占有率がともに増加 し,収容率の増加が自県内進学に寄与していること,
福岡県と熊本県では,収容率は減少したものの残留 率と占有率がともに増加し自県内進学が維持されて いること,鹿児島と沖縄県では,収容率が減少し他 県への進学が不可避となっていることが想定される ことが判明した。
本稿では,進学移動の実態を把握するにとどまっ ているが,今後は,これらの要因分析を進めること が求められる。
本稿の結果を,中四国地方を対象として同様の手 法で大学進学移動の時系列的推移を分析した川田
(2022)の研究結果と比較すると,1980 年代以降,
自県内進学と地方内県間進学移動が増加傾向にあ り,広域的には南関東への進学移動が大幅に減少し ているという共通点がみられた14)。また,各県の収 容率の増加の進学移動への影響は一律ではないこと も共通していた。
一方,進学者を吸引する中心地域については,九 州地方では,福岡県の吸引力が圧倒的に大きく,
1980 年以降,この傾向は大きく変化していないが,
中国地方では 2000 年以降,広島県が吸引力を弱め る一方,岡山県が吸引力を強めているという変化が 確認されているという差異がみられた。
こうした結果もふまえ,今後は地方内の地域格差 に進学移動がいかなる影響を及ぼしているのかとい う観点の実証研究,および,高等教育の機会均等と いう側面で地方という地域的範囲やその地域構造が いかなる影響を及ぼしているのかを解明する研究が 必要だと思われる。
注
1)本稿ではとくに断らない場合,大学とは四年制
大学のことを指す。本稿で四年制大学を対象とし た理由は,九州地方全体でみた短期大学への進学 率が2020年時点で8
.
7%と四年制大学への進学率に 比して大幅に低くなっていること,および,九州 地方における短期大学進学時の県間移動は,大学 進学時の県間移動に比して大幅に少ないことによ る。2)高等教育機関の地方分散化政策の成否を検討し た研究としては,秋永・島(1995),佐々木(2006),
朴澤(2017)の研究などがある。進学移動の地域 的差異の発生要因を分析した研究としては,川田
(1992),谷(2000),中澤(2011)朴澤(2012),
上山(2012),遠藤(2017),日下田(2017)の研 究などがある。
3)福岡県の近畿大学産業理工学部,帝京大学福岡 医療技術学部,熊本県の東海大学経営学部基礎工 学部農学部を算入している。また,沖縄県の沖縄 科学技術大学院大学およびサイバー大学は,それ ぞれ大学院大学であることと通信課程大学である ことから参入していない。
4)佐賀医科大学(2003 年に佐賀大学と統合),大 分医科大学(2003 年に大分大学と統合),宮崎医 科大学(2003年に宮崎大学と統合)を含む。
5)本稿での大学進学率は,当該年の大学進学者数
/
3年前の中学校卒業者数を用いている。6)1980 年以降の 18 歳人口のピークは 1992 年の約 205万人である。
7)齋藤(2001)は,性別役割規範の変容や四年制 大学の入学難易度の易化も一因と指摘している。
8)その後,2020 年に向けて県間格差はやや縮小 傾向にある。
9)2020 年の沖縄県の男女間格差は 2
.
2 ポイント女 子が高くなっている。10)大学進学者数のピーク年は県によって異なって いる。
11)南関東は東京都,神奈川県,千葉県,埼玉県の 4都県をさす。
12)九州地方各県から,高等教育機関が集積する大 都市圏である京阪神(京都府・大阪府・兵庫県)
や愛知県への進学は,それぞれ数%程度と大きく ない。
13)佐賀県は1990 ~ 95年間には収容率が減少して いる。
14)例外として,沖縄県では南関東への進学者が増 加傾向にある。
文 献
秋永雄一・島 一則(1995).進学にともなう地域