基 地 補 償 問 題 の 社 会 的 構 造
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(2) 論 説︵畑︶. ければならないと思っていた︒. 一八○︵三五〇︶. わたくしはすでに︑三沢基地について︑このような問題関心から︑いわゆる条件闘争としての規定をうけながら. も︑なおかつ周辺住民の直接的な生活要求が集中しやすい基地補償問題を︑補償要求の基底となっている人間的生存. それじたいとしてとらえ︑基地による物的被害と︑問題の最も象徴的な基地における人間疎外の両要素が︑補償要求. の過程のなかでどのように結合し︑克服されようとしているか︑不十分ながら検討しようと試みたことがある︒本稿. は︑右の拙稿﹁基地補償問題の実態﹂︵法律時報三六巻一号︶のうち︑十分はたしえなかった補償要求の性格と運動. との関係の部分を︑山梨県北富士演習場の資料を加えつつ︑少しく補足しようとしたものにすぎない︒. ここでは︑物的貧困と人間疎外の統一的克服という実践的課題が︑はたして現平和・民主憲法秩序特に民主主義的. 権利を守り︑真に人間的な生存と生産を擁護しうる一般的に有効なものであるかどうか︑あらためて考えなおす余裕. はない︒ただ︑自民党が現在﹁基地対策特別委員会﹂を中心に︑同党の﹁安全保障調査会﹂︑﹁政調国防部会﹂および. ﹁治安対策特別委員会﹂の合同会議でまとめた﹁基地周辺対策特別措置法﹂案の骨子が︑基地問題をいわゆる国土防. 衛の基本線にたちながら︑民生安定と住民福祉のコースで解決しようとする基本対策をうちだしている以上︑人間疎. 外の克服すなわち反体制的階級運動の視点を欠く物的被害の解消運動だけでは︑たち向えなくなるのではなかろう か︒. 軍事基地はいうまでもなく安保体制の必然的な帰結である︒安保体制は︑法的には安保条約・地位協定にもとづく. 反平和・反民主憲法法体制としての基地法秩序を作り上げ︑わが国を社会主義国家群に対する核全面戦略と核限定戦.
(3) 略の前進基地たらしめてしまった︒多くのなまなましい資料が端的に物語るように︑基地は︑対社会主義軍事権力に. よって︑特殊旺一般的に憲法と憲法にもとづく諸規範原理が全く否定された社会である︒したがって︑すべての財産 ︵一︶. や権利を守ることは︑基地を設定・拡張し︑維持し保護するあらゆる条件を排除することにおいてのみ可能となる法. 構造をもっている︒もし法律学が︑全体として憲法および民主主義的諸権利の擁護と実現をになっているのだとした. ら︑反憲法的基地法体系を強制装置として形成された基地社会の法現象をとりあげることは︑それが問題を集中的か. 拙稿﹁基地の諸問題﹂︵長谷川・宮内・渡辺編﹁新法学講座﹂第五巻月﹁安保体制と法﹂一六七頁以下参照︶︒. つ具体的に現象させているだけに︑決して意味がないことではない︒ ︵一︶. 一 基地被害の態様. 三沢市には︑地位協定上の施設・区域として︑在日米軍のために提供せられた三沢飛行場︵閃︾089〜9︶と天ケ. ﹁極東最大の空軍基地﹂といわれ︑三八○○メートルと壬二〇〇メートルの. 森射爆撃場︵国︾08εならびに浜三沢通信施設がある︒︵図−参照︶. 三沢飛行場は︑面積約一五〇〇町歩︑. マッハ数. 滑走路を有し︑第五空軍の中核たる第三九戦闘爆撃隊が駐留し︑F一〇〇Dスーパーセーバー︑F一〇二Aデルタ・. ダガー等︑全天侯迎撃戦闘機と戦闘爆撃機が配置され︑現在では︑約六トンにおよぶ兵器ペイロードと︑. 二︑航続距離三〇〇〇キp以上︵戦闘行動半径一四〇〇キロ︶の性能をもつF一〇五Dサソダーチーフが︑スーパー. 一八一︵三五一︶. セーバーに代っていわゆる﹁輸番制戦術飛行隊﹂として駐留することが予定されている︵三九・一・一毎日新聞矛︑の 基地補償問題の社会的構造.
(4) 瞥. 一. 太. 平. 洋. 至八戸市. 至十和田市. 三川目 涙. 説︵畑︶. 至青森. (古間木) みさわ. 林藤. 線. ︒謬広沢牧場 小田原湖. 綿馨、一 東\. 天. 論. 徽. 他︶︒. 一八二︵三五二︶. 天ケ森射爆撃演習場は︑地上面積約五五〇町歩とそ. れを要として海上に扇状にひろがった区域である︒演. 習は機銃による対地射撃︑ナパーム弾等の投下の他︑. 超低空で目標に接近すると急上昇で高度をとりなが. ら︑核爆弾を前上方に投げ︑垂直上昇反転で離脱する. げ︾劇ω︵超低空特殊爆撃法︶とよばれる対地核攻撃法. も見られるといわれている︒. この軍事基地が︑地元三沢市民にあたえる被害は︑. いうまでもなく深刻かつ多様である︒別稿ですでに述. べたように︑まず物的な被害としては︑飛行場ないし. 演習場としての土地の提供それじたいをはじめ. 演習場の立入制限水域の漁業被害. ω基地の設置・拡張によるもの ω. @ 飛行場の汚水の周辺農地への流入による農業 被害.
(5) ←う. 飛行場拡張による水源池枯渇のための農業用水・飲料水の被害 飛行場拡張による農道迂回にともなう被害. 乳牛の搾乳量の減少と家畜に与える被害. 海中への入射音による回遊魚の方向転移のための漁業被害 住民と く に 乳 幼 児 に 与 え る 神 経 障 害 学校教 育 に お よ ぽ す 諸 被 害. 駐留米軍人・軍属による公務上・公務外の損害. 交通事故による損害. 航空機の墜落︑補助タンクの落下による被害. @. その他の刑事犯罪. 北寄貝︑. たこ等の漁拶地であった︒ 基地補償間題の社会的構造. 一八三︵三五三︶. る高瀬川以南︑ 三川目以北の漁場は︑昭和二三年には︑いわし一二五万貫︑いさざ五〇万貫︑その他鮭︑鱒︑さば︑. 被害は最高に達し︑ 年間約二億八千万円の損失をみていたといわれている︒現在︑三沢漁業協同組合が漁業権を有す. 右のうち︑ 漁業被害については︑四川目︑砂森にそれぞれ高射砲実弾射撃演習場がおかれていた昭和二四年頃には. の. ↑D. 農業労働の阻害・農耕馬の暴走による被害. 爆音︵進入表面下においては一三〇ホーンにおよぶ︶によるもの. (二) (イ/ (1コノ (〆う 1二) k淘. (2/ (3).
(6) 論碑 説︵畑︶. 一八四︵三五四︶. ﹁全くわれわれの死活問題だ︒あまりの貧困の. 昭和二七年に当時の大三沢漁業協同組合を通じて二五・六年度分として七九五万円の補償金が交附されたが︑この金 額は︑組合員約三〇〇〇人として一人当り二八○○円の計算である︒. ため若い娘が売られて行く話も聞いている︒組合の預金は一銭もない︒漁民救済資金は組合役員の保証で銀行から無. 理に借りている︒この世の中で一戸一日一〇円の補償がなんの役に立つと言うのか﹂︒また﹁出漁中︑船のまわりに. 機関銃の弾が落ち命からがら逃げたことがある︒夜になると米兵がきて﹃ビールとオジョーさんはいないか﹄と踏み. 込んできたり︑井戸に樽を投げ込み︑ひどい時にはコヤシ︵下肥︶桶をひっくり返したりする︒今の補償じゃ話にな. 共同漁業権であり︑定着性のある北寄貝︑タコ等︑その漁法は投. らない﹂ ︵清水幾太郎・木村禧八郎・猪俣浩三編﹁基地日本﹂二三頁︶という状態だった︒. 現在三沢漁業協同組合がもつ漁業権は︑自由. 網︑タコ漁法︑回遊性のあるいわし︑さば︑鮭︑鱒等︑その漁法は︑いわし地引網︑鮭・鱒小型定置︑いわしさし網. 等である︒それ以外に︑許可︵ただし青森県知事許可︶漁業として︑うたせ網によるいさざ漁業がある︒. 基地から流出する汚水による被害は︑農耕地については稲作に影響を与え︑いわゆる窒素分過多による不稔部分を. 多くすることと︑飲用水に混入する被害となって表われている︒排水路工事や飲料水用ポンプの設置工事等が必要で. ある︒またジェット機対応の滑走路拡張にともなう水源池枯渇による被害は︑新しい溜池設置工事や灌瀧用ポンプの. 敷設等を要求する︒さらに︑拡張によって農道を閉鎖されたため︑立入禁止区域外の道路を迂回しなければならない 労力・費用も見のがせない損失である︒. 次に︑爆音iというよりも金属的なジェット音の与える影響は︑ここで説明するまでもなく広汎である︒農業に.
(7) 関する農耕労働の阻害︑農耕馬の暴走による労働力の増加︵馬の口とりが一人余分にいる︶はいうまでもなく︑家畜. におよぼす例えば搾乳量の減退等は︑ほんの一例にすぎないが︑漁業に対しても︑海中へのジェヅトの入射音によ. り︑いわしその他の回遊魚が方向を転ずるため︑不測の被害を与えている︒一昨年漁業組合の委嘱によって末広恭雄 氏の行なった調査によっても︑被害のあることが証明されている︒. とくに著しいのは︑何といっても学校教育におよぼす影響である︒ジェット機の進入面下にあり︑滑走路の先端か. ら約一・五キロの地点にある三沢小学校について︑市教育委員会が昭和三六年に行なった調査により飛行回数の多い. 二四七回という日を例にとると︑授業が全く中断されざるをえない強度が総授業時間三〇〇分中八○回︑したがって. 四分弱に一回授業が中断されることになる︒なお現在補償申請の手続上︑防衛施設庁で公認されている飛行回数は︑. 一日平均二二〇回であるから︑右の調査は離着陸の比較的少ない期間のものである︒また右の回数を︑授業態度の回. ﹁キャアーという声ととも. 復・調査に要する時間等を勘案して計算すれば︑授業時間の損失は︑きわめて甚大である︒ほぼ同じ位置にある三沢 第二中学校三年A君の﹁正味三十分﹂と題する作文は︑この間の事情をよく示している︒. に︑教室中が急にざわめきだした︒ものすごい爆音である︒今授業が始まったばかりである︒ようやく教室が静かに. なったと思ったら︑飛行機の音ですぐざわめきだす︒私たちは授業をうけている時間は五十五分の中︑多くて四十分. 少なくて三十分位である︒静かで︑何のじゃまもされないで勉強できる学校では︑私たちの学校よりは十五分から二. 十分は多く勉強ができる﹂と︒また﹁どの勉強をしているとき一番じゃまになるか﹂との質問に対しては︑算数と答. 一八五︵三五五︶. えたものが最も多く四六パーセソト︑ついで国語二三パーセント︑社会一四パーセントの順である︒聴覚教育の不徹 基地補償問題の社会的構造.
(8) 昭和37年度. 18. 51. 0. 公務外. 4. 1. 35 35. 公務上. 26. 54. 公務外. 50. 17. 計. 2 0. 0 公務上. 説︵畑︶. 公務上. へ冊. 航空機事故. 一三R. 15. 0. その他. 31. 0 1 15. 刑事犯. 23. 30. 公務外. 慰籍料 支払件獣 支払件数. 申請件数. 発生件数. 10. 5 3 8 公務上 交通事故. 事故補償(地位協定18条)関係 表1. 公務外. 三沢防衛施設事務所での聞きこみにより作成した。. 一八六︵三五六︶. 底はもとより︑学習の中断による繰り返しのため興味が半減. し︑学習非能率ないし学習雰囲気の破壊︑疲労の増加︑注意集. 中力の減退︑思考の浅さ等が顕著な現象となっている︒なおホ. ーン数九〇以上の位置にある小・中学校は︑あわせて六校ある︒. その他︑騒音が住民一般に与える影響としては︑乳幼児の午. 睡ができないこと︑夜間の睡眠が妨げられること︵夜間もエン. ジン・テストを行なう︶︑学童の勉強ができないことの他︑気. がいらいらして短気になりやすい︑病気の自宅療養もできない. 等︑被害は大きい︒二〇ホーンからニニ○ホーンの音がどん. なであるか︑わたくしじしん体験した︒Bさんの御好意によっ. て自動車で現地をまわり︑丁度滑走路の先端から一キロ近くの. 地点を通過していた時のことである︒すぐ前を走っている自転. 車の郵便配達人に︑いくらクラクションをならしても不思議に. 反応がない︒Bさんに注意されて窓ごしに空を見上げたら︑F. 一〇〇の黒い影がジェットの轟音とともにすぎ去った︒ほんの. 二・三メートル離れているだけでも︑聞こえないのである︒.
(9) さらに︑駐留米軍の公務上・公務外の事故による被害としては︑昭和三七年度は表1のとおりである︒ただしこの. 衣には︑後の記述の関係から事故の発生件数の他︑補償ないし賠償申請件数と支払件数までふくめたが︑航空概の事. 故について︑発生件数より申請件数が多くなっているのは︑同一事故に対して補償の原因が複数なりたつからであ. る︒ジェット機の墜落は︑三六年にも例があり︑家屋を焼きニワトリ一〇〇〇羽と花卉に被害をおよぼし︑五〇〇万. 円以上の損害を与えた︒補助燃料タンクが農耕地に落ちた場合は︑特殊な油性分のしみついた土壌をとり除かなけれ ばならなくなる︒. 米軍人の刑事犯罪は︑最近の著名な事例に放課後ピアノの練習としていた女子中学生に対する暴行事件があり︑わ. たくしが三沢市に滞在中︵九月二五日︶にも︑帰宅途中の女店員︵一九才︶を送ってやると乗用車にのせ︑乱暴しよ. うとして一週間のけがをさせたが︑通りかかった農民に助けられたという事件があった︒なかには︑はっきりした非. 一九三〇年生れの﹁未成年者﹂であったりするらしい︒表1のうち﹁その他﹂の事故. 行グループがあり︑世論におされて検察側が動きはじめるとすぐさま沖縄へ転属させるとか︑少年だから特別扱いせ よといわれて調べてみると︑. は︑米軍人の子弟が︑西部劇ごっこではでに田畑を荒らした事例である︒. このような被害に対して︑当初は補償金︵見舞金︶のでることすら知らなかった漁民も︑昭和二六年には︑三沢漁. 業協同組合を通じて四川目地区の演習停止を主張し︑もし止められない場合は︑射撃方向角度を海岸線に直角にする. こと︑着弾地点を沖合三万ヤード以上にすること︑射撃期間を一月から四月までとし︑もしできない際は漁業の最盛. 一八七︵三五七︶. 期である七月より一二月まで中止すること︑なおそれもできぬ場合ぱ︑射撃期間を一月から四月までは午前一〇時か 基地補償問題の社会的構造.
(10) 論. 説︵畑︶. 一八八︵三五八︶. ら午後五時まで︑五月から一〇月は中止すること︑また魚類が回遊してきた場合は四時間中止してほしい等の要求を. だしている︒しかし︑漁業補償のほか農業経営および生活全般におよぼす被害に関し︑その救済措置を組織的に要求. するようになったのは︑昭和三六年八月︑飛行場の東側︵B地区︶浜三沢など四部落七〇〇世帯の関係住民によって. 結成された﹁基地被害対策協議会﹂と︑同九月︑西側︵A地区︶平畑など三部落一五〇世帯の住民によって作られた ﹁基地周辺被害対策協議会﹂の活動にまつ︒. 被害対策協議会は︑ωエンジン調整のための騒音防止︑午後八時以降午前五時までの騒音停止︑⑭騒音による漁獲. 量減少︑農耕支障︑養鶏養畜の損失︑電話・有線放送・テレビの送受話・受信の被害に相当の補償を行なうこと︑⑥. 滑走路延長線の﹁航空機進入面下﹂補償の範囲を実情にあわせて拡大すること︑㈲汚水・土砂流失による農耕地︑貯 水池等の被害防止のための適切な措置をとることを︑三沢調達事務所長に提示した︒. これに対し︑周辺被害対策協議会では︑基地撤去を基軸として︑ω基地による被害の全額補償︑⑭基地のため農道. を迂回する補償︑基地内農業の復活︑⑥夜問エンジン調整の中止︑㈲飛行回数と時間の制限︑㈲B52の飛来阻止︑㈲. 一般民家への防音施設の立法化︑Gリラジオ・テレピ・電話等被害の補償︑㈲航空機進入面下の被害と汚水による被害. の科学的調査の要請︑㈲土地借上料の適正化︵坪二〇〇円︶︑⑩被害農民に対する税の減免措置︑⑪航空法違反飛行の 取締強化等が決議せられ︑調達庁︑市長︑市議会に申し入ている︒. この二つの対策協議会は︑要求それじたいが︑したがってすでに何を被害とみるかが相違しているだけでなく︑要. 求の仕方においてもまた対蹄的な差異を示している︒では︑両者をわかつものは一体何か︑次にこの点の検討に移る.
(11) に. 剛. 補償要求と基地反対運動. 若干基地補償の体系について考察することにしよう︒. 二. 基地補償問題の社会的構造. 防衛施設庁の説明によると︑. ﹁駐留軍の用に供する土地等の損失補償等要綱﹂︵昭和二七年閣議了解︶. 一八九︵三五九︶. ﹁米軍が軍事上決定している進入表面を︑そのまま踏襲しているまでのこと﹂らしい. 内の範囲とされている︒したがって進入表面下投影補償の対象は︑半分となる︒. が︑ここでの進入表面は︑航空法第二条七号にいう滑走路の先端より三〇〇〇メートルに対し︑一五〇〇メートル以. って︑航空法第二条の進入表面︑転移表面に準じて調達庁長官の定める区域内で行なわれる場合による﹂としている. 補償として行なわれている︒しかし︑同施行令第五条は︑補償原因となる行為を﹁航空機の離着陸のための飛行であ. る特別損失の補償に関する法律﹂︵昭和二八年法律第二四六号︶第一条一項二によるいわゆる航空機進入表面投影下. ㈲爆音による被害のうち︑農業労働の阻害に対する補償は﹁目本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊等の行為によ. 条例の賃貸料が改正されなかったから﹂ということである︒. し︑農地一坪当り五円ないし二五円である︒市有地については坪八五銭であった︒その理由は︑ ﹁市の市有財産管理. る旨定めているが︑実際の処理は︑固定資産の評価額︑毎年の固定資産税登録価格︑都市計画税等を基礎にして決定. によってとり扱われ︑第七条はその提供土地が農地である場合には︑農地の農業所得額の八○パーセントを賃料とす. ⑥提供土地の賃料ならびに損失補償は︑. このような被害・損失に対して︑防衛施設庁の基地補償体系は︑おおよそ次の通りである︒. 山ム.
(12) 8 0 C Blo lo C 1 5ヨ. 巳. t魅. 鳳量. も. 11. 皇●監臨 9111巴 ﹂匹911量. ︑豊. ・監. ︐JJJ. 讐. 1. I 書. oooヨ. lB10. 、1 覧一 1. け. 暫﹄. l一. 、 星 私 I. l0 l 5. l 融 巳. 1 』. i. 、. ; 亀 恥 巳 量. 8 6 1. 1 1 1. 置. I I. 巳. ω ﹇量レ. ノノノー. ︐9ノノ5. l l. 晶 5. I. l. も 馳. 1 」. I l. 、 l l. 、. 1 1. , 且. i. 1. 夏. ︐窟JJ. 5. 陰. 耳 I I I. I I. 、. 1. 量. 一. 、. 1. 、 蒐. ド300m→1 1 1 1. 、. o. 5 陰 8. 1 1. 3. 説︵畑︶. IlI量1 llIII. D. 玉. 監. 1 1 1 1 8. D 3 1. 論. 世田. 8iA 1. iヨ. 8 σ11. 一. 9. 一九〇︵三六〇︶. が︑現在一五〇〇メートルの数値をとっているのは︑. 三沢一個所だけである︒またこの補償額は︑爆音の強. 弱にともなってA・B・C・Dの四段階に分れてお. り︑Aを一〇〇パーセントとして︑Bはその八○パー. セント︑Cは六〇パーセソト︑Dは四〇パーセントと. 汚水による農業被害に対する補償は︑進入表面. なっている︵図H参照︶︒. ⑥. 水源池の枯渇にともなう溜池補償は︑同じく特. 下補償と同じく︑特損法による︒. ⑥. 爆音による学校教育上の被害に対する補償は︑やはり特損法によって規制されるが︑この場合は︑教育施設に. め︑実際には二〇パーセントの地元負担になる︒. 鉄筋コンクリート建とす惹際には︑調達庁補助金国庫負担率に関する規則第五条の三によって有益費を控除するた. の三沢中学校がそれぞれ防音工事を施して新築されている︒しかしこの補償金は︑耐用年数を残す既存の木造施設を. 対する防音工事費の補助金として支出される︒滑走路から一・五キロの地点にある三沢小学校と︑同じく一・八キロ. @. を実施する必要がある場合に該当するとし︑原因たる行為と関係する限度で工事費として支払っている︒. 損法の補償であるが︑ここでは第一条一項二の損失補償を︑被害軽減措置または原状回復のためのいわゆる防災工事. 漸.
(13) ㈹. 演習地域の設定による漁業被害の補償は︑防衛施設事務所の説明では︑特損法による補償として分類されてい. たが︑天ケ森地区漁民の漁業は漁業権漁業であり︑また演習地は提供区域として権利行使の制限を行なっているので. あるから︑米軍の適法行為を前提とする特損法を適用するのはおかしい︒国と漁業権者の合意によって漁業権の行使. 右の他︑演習地について︑天森牧野農協の提供土地二三二町歩のわらび・山菜等の損失が︑林野雑産物補償と. 制限を行ない︑前記駐留軍の用に供する土地等の損失補償等要綱および漁業補償処理要領によるべきであろう.. ⑧. して約二〇万円支払われている︵この規定については後述﹁忍草﹂の説明にゆずる︶︒. GD 現在支払われてはいないが︑補償措置を構ずべく準備されているものに︑爆音による搾乳被害と︑爆音の入射. 音による漁業上の損失の問題がある︒前者については︑すでに三〇年から三四年までの分一九五〇万円を申請してい るが︑当局は︑三九年度に調査を行ない被害が認められれば補償すると答えている︒. 基地補償法体系およびその法理については︑通常の補償理論との関係で別に分析する予定であるが︑以上に概観し. た三沢基地に適用されている補償体系が︑基地被害の全部をカバーしえないものであることは︑明らかであろう︒政. 府は︑特損法に規定する﹁多種多様な補償事案の発生は︑米駐留軍が近代的な装備で︑大規模に集団的行動をとるこ. とに起因しているものであり︑戦前︑旧陸海軍時代にはほとんどその例がみられないものである﹂と説明している. が︑補償額算定の基礎数値をおさえ︑完全な補償としない当局も︑補償原因を拡大し駐留米軍の適法行為を広げ︑補. 償対象を拡張する態度を示し︑さらには︑民生安定等基地補償と行政政策の連関を遂げようとさえしている︒. 一九一︵三六一︶. ところで︑三沢における補償交渉のうち︑補償法規の適用をめぐって問題とされている第一の点は︑潮見俊隆教授 基地補償問題の社会的構造.
(14) 論 説︵畑︶. 一九二︵三六二︶. も指摘されているが︵前掲﹁法律時報﹂一四頁︶︑進入表面下補償に関する﹁従来適法に農業を営んでいた者﹂︵特損. 法第一条︶の解釈である︒すなわち︑例えば進入表面下の農地を基地設定以後新たに買いうけて農業を営む場合︑. ﹁爆音で仕事も十分できない土地であることをよく知って買ったのだから﹂補償はやらないというような事例がそれ. である︒第二の点は︑いうまでもなく︑いかなる数値を基準として補償額を算定するかの問題である︒進入表面下補. 償について︑当局が採用している方式は︑一機一回離・着陸する場合の農耕労働阻害時間を一分とみて︑それに一目. の飛行回数平均二二〇回と年平均投下労働量︑ならびに労賃単価を乗ずる仕方であるが︑それぞれの数値のとり方に. 差異がある︒例えば当局が労賃をP・W︵一般職種別賃金︶の土工のそれ︵三七年度は四八五円︶をとるのに対し︑. 地元は︑県の統計にもとづく六五〇円を主張するなどがそれである︒これはまた︑作物別の単位面積当りの所要労働. 量のとり方にも表われ︑補償額の算定に大きく作用する︒この点は︑漁業補償︑汚水補償についてもいえる︒. 第三は︑基地補償規定は︑多くの場合︑被害によって生じた減収を中心に︑それから制限下の収益を差し引き︑そ. の八○パーセントの補償する原則をとっているが︑何れも減収額を決める基準を米軍の使用前平均三ケ年の収益に求. めている︒しかし︑これでは占領進駐ないしP・D接収によって比較的早い時期に提供した提供施設・区域の場合. は︑昭和二〇年前後の収益を基礎に現在の損失が決定される結果となる︒ために︑特損法による汚水補償の場合に. も︑補償額算定の基礎が︑汚水被害のなかった昭和二五年当時の反当収量に求められ︑今日では反当三石もとれるの. に二五年当時の一石八斗を基準に損失額が出されるという甚だしい不合理を生んでいる︒ では︑基地補償要求はどのようになされているのであろうか︒.
(15) すでにみたように︑基地被害の救済を組織的に要求している団体のうち︑B地区を中心とする前記被害対策協議会. と︑A地区を中心とする周辺被害対策協議会は︑そもそもその要求内容じたいにおいて異なっていた︒要するにB地. 区 協議会は︑基地が存結することを肯定した上で︑騒音による諸被害に対する相当な補償︑進入表面下の範囲の拡. 協議会は︑基地反対を基底として︑立法化問題をふくむ基地被害の総てのかつそ. 張ならびに汚水・土砂流出による被害防止のための適切な措置等︑当局の補償体系の枠内で解決しうる限りでの救済 措置を要求したのに対し︑A地区. 協議会では︑溜池補償として防災工事費二四〇〇万円を申請したところ︑仙台防衛施設局が四〇〇万円に. の全額補償を要求しているのである︒そしてこの違いは︑また要求の仕方にまでおよんでいる︒. B地区. けずった時︑資料的に申請額を主張することができず︑ただ﹁ここまでわざわざやってきた費用だけでもまけてく. れ﹂と頼みこみ︑結局四四〇万円で手をうったということであった︒主としていわゆる陳情方式による補償要求が支. 配的である︒このような方式を規定する条件の一つは︑A地区と同じ農村地域であるとはいえ︑地理的な利便から米. 軍用の貸ハウスを供給しうる位置にあることであろう︒つまり︑それだけ基地経済に依存しうる条件をもっているこ. とは否定できない︒かりに一町八反の農地の平均農業収入五〇万円とすれば︑これを坪二〇〇円でハウス業者に貸せ. ば一〇八万円の収入となり︑基地サマサマである︒しかしそれにもまして構造的な要因は︑もともとこの地域が旧三. 沢村の中核をなし︑地主・網元等の支配クラスを擁し︑現在もなおその事情が基本的には変っていないだけでなく︑. このクラスを介して︑基地経済の主体とともに基地米軍に従属的な市権力の基底をなしていることである︒. 一九三︵三六三︶. 市当局と駐留米軍の関係がどんなものであるかは︑次のような笑い話を一つあげるだけで十分であろう︒昨年の 基地補償問題の社会的構造.
(16) 論. 説︵畑︶. 一九四︵三六四︶. 秋︑市民会館の落成に際し︑市長は米一将校に感謝状贈呈の式まで挙げた︒彼がピアノを寄贈したからである︒だ. が︑そのピアノたるや調律に当った音楽担当の女教師をして﹁こんなピアノ見たことございません﹂といわせる程. の︑大変なしろものだったというのである︒人口三八○○○の三沢市は︑基地によって形成され︑その拡張とともに. 発展したまちである︒昭和十六年︑旧海軍航空基地として設定された飛行場は︑昭和二〇年九月占領進駐した米工兵. 隊によって復旧され︑翌二一年より米空軍基地︑二五年六月以降には朝鮮戦争にともなう拡張︑さらに二八年から二. 九年にかけてジェット対応の拡張・整備が行なわれ現在にいたっている︒基地建設工事とともに流れこんできた人口. は︑その後外部から移住し基地経済に寄生する人々とあわせて︑急速に現在の三沢市街を作り上げた︒. しかし三沢市における基地経済が︑ドルの円交換高月二億︵ある人は三億︶ともいう米軍人・軍属およびその家族. の消費︑駐留軍労務者約三四〇〇人に対する月約九〇〇〇万円の支払い︑ならびに基地維持費のうち地元土建業者に. 出る部分の三つのルートで循環しているとはいうものの︑A・B両地区をふくむ農村地域は︑稲︑なたね︑馬鈴薯等. を中心に︑畑単作地帯として伝統的な農業経営を営み︑全体として基地消費需要には極めて低い対応しか示していな. い︒したがって︑基地は農民の生産と生活に︑もっぱらマイナスの効果しか与えていない︒基地経済の循環は市街地 域と農村地域とでは︑全く相反するのである︒. しかしそれにもかかわらず︑B地区と同じ農村地域に属するA地区では︑B地区H協議会とは違った要求を提示 し︑補償闘争を行なっている︒. A地区U協議会は︑陳情方式をとっていない︒例えば進入表面下補償の場合でも︑正確につけられた農家日誌をも.
(17) とに︑作付種別と時季的な労働のピークを測定して年問投下労働量を検出し︑さらにこれを農林統計にてらして検討. し︑資料的に裏付けて要求する方法をとり︑また汚水補償についても︑汚水による被害を坪刈りまたは生育調査等の. 手段を構じて不稔部分のパーセンティジを出して行くなど︑ここでは何よりも農業生産に対する意欲と誇りによって はじめて創意され実現しうる方式がとられている︒. ではいかなる要因が︑A地区h協議会の実践を決定づけているのであろうか︒それは結局A地区の中心的な農民. が︑安保闘争の過程で生れた民主グループに所属し︑米軍事基地のもつ意義とその役割りを︑真劔に考えはじめてい. 協議会の運動を容易ならしめる要素と. たことにあるのだと思われる︒確かにA地区の中心平畑が開拓者部落であること︑基地経済の積極的利益をうけない ことも︑B地区との差を大きくする要因ではあろう︒しかしそれは︑A地区 はなりえても︑基本的に規定する原因ではない︒. 三沢市における民主グループは︑労働組合運動中心主義の欠陥を批判し︑いわゆる勤評︑警職法︑安保の諸闘争の. 過程で︑その中心的な人びと七〇名によって組織された﹁平和と生活を守る会﹂に結集されていた︒そして︑三六年. 一〇月以降三回にわたる三沢米軍基地の調査が行なわれ︑翌三七年二月には︑三沢市平和委員会が結成された︒平和. と生活を守る会は︑会員の転勤による脱退等により︑現在ではその活動を主として平和委員会に移している︒. ﹁三沢は基地のま. 昭和三六年一〇月の大衆的基地調査は︑三沢の基地反対運動に画期的な役割りを果している︒それまで三沢基地は. 岩国とならんで︑全国的に反対運動のない基地として知られていた︒施設事務所の説明によれば︑. 一九五︵三六五︶. ちであり基地への依存度が高い︑占領当時すでに広くとっていたため︑その後特に新しく拡張していない︑救済措置 基地補償問題の社会的構造.
(18) 論 説︵畑︶. ハ九六︵三六六︶. を構じ常に先手をうって農民層をいじめていない︑耕作面積が多いから少しぐらい接収してもひびかない︑買収する. 場合も︑農地改革では一反歩四五円で強制的に買い上げられたが︑現在では坪一〇〇〇円も出して買っている︑した. がって︑外部が騒いでも地元民はついて行けない﹂ということであった︒だがそれにもかかわらず︑青森・岩手両県. の原水協︑平和委員会︑労組︑民青など五三名によって行なわれた前記第一回の基地調査は︑三沢基地の実体を明ら. かにすると同時に︑基地周辺農漁民の要求を組織化し︑基地反対闘争の口火をきることに成功した︒三七年二月に開. かれたA地区U協議会の総会は︑はっきりと基地撤去の基本路線を決定し︑地元農民の間から︑基地反対の叫びが公. 然と上ることになった︒ついで三月には︑平和委員会東北協議会の﹁軍備全廃・軍事基地撤去・東北北海道決起大. 会﹂が︑東北六県ならびに北海道代表約三五〇〇名を集めて行なわれ︑さらに五月には︑軍事基地反対東北ブロック 会議主催の基地反対集会がもたれるにいたったのである︒. A地区 協議会の補償要求に︑一定の方向づけを与えた平和委員会の立場は︑三六年一〇月のいわゆる舞鶴大会の. 決議に示されているが︑要するに︑軍事基地闘争を平和運動の内部に位置づけ︑軍備全廃︑安保体制打破︑憲法改悪. ・軍国主義反対の闘争として意義づけ︑内容の﹁第一は︑もちろんアメリカの侵略的軍事戦略と対決し︑米軍基地の. 撤去と米軍の撤退を要求してたたかうこと︑米軍と一体化した自衛隊の解散を要求して闘うことである︒第二に︑米. 軍および米軍基地︑自衛隊および自衛隊基地の拡大強化に反対し︑それを阻止することである︒第三に重要なこと. は︑米軍自衛隊とそれらの基地の機能をおさえ︑その出動を困難にし︑目米共同作戦骨制に打撃を与え︑新安保条約. の軍事的発動を封殺することであるしとし︑この視点からの現地闘争の重要性を強調している︒いわく﹁十数年にわ.
(19) たるわれわれの基地闘争の経験は︑軍事基地における現地住民のたたかいとその強固なねばり強い闘争が︑基地闘争. をささえ発展させる最大の︑そして不可欠の力となっていることを教えている︒⁝⁝この現地の闘争は︑まず基地周. 辺住民の要求から出発し︑たたかいの中でその人びとが平和擁護運動のすぐれた組織者として生長していく︒われわ. れは︑いまたたかわれている基地闘争を全力をあげて守り︑発展させることとともに︑すべての基地周辺住民の要求. をとりあげて︑全国の基地に反対闘争の組織を民主的に結果しなければならない︒これらの基地闘争とその組織が県. でまとまり︑地方ブロックでまとまり︑互に連けいし助けあって闘う体制を確立し︑これを全平和運動がつつみ︑結. 合して行くとき︑はじめて︑現地闘争を核とする国民運動となり︑たたかう基地闘争の組織が下から民主的に組織さ れるであろう﹂と︒. このような方針にそって三沢市平和委員会の行なった基地調査は︑まず︑米軍基地の役割を正確につかむことから. はじめられている︒ ﹁どちらかというと︑基地が新しく拡張されるとか︑新設されるというときには︑非常に重大視. して騒ぐわけですが︑基地のなかでどういう変化がおきているかという点については見落してきた﹂と批判し︑三沢. 基地の最近の動向と︑基地が構造的に与える農漁民への影響を詳細に調査している︒この調査活動は︑したがって︑. 新しい基地闘争の型態ともいえよう︒すなわち﹁すでに設置が完成してしまったあとであろうと︑地元住民がそれに. 対する反対の動きをとっていなかろうと︑およそ基地がそこにある限り︑存続する基地闘争であり︑また平和運動と. ︸九七︵三六七︶. して存続させてゆかねばならぬ闘争なのである﹂︒﹁基地の現状を大衆的に認識し︑さらに軍事基地の性格と役割を明 らかにする︑その行動そのものが大衆的基地反対闘争の第一歩である﹂︒ 基地補償間題の社会的構造.
(20) 論. 説︵畑︶. 一九八︵三六八︶. A地区U協議会の要求が︑前に述べたように︑基地による被害を生産と生活の角度から農民的にとらえ︑その全面. ﹁三沢の労働者は基地によって生活している﹂と. 的全額補償を要請し︑手続においても科学的態度をとりえた基底には︑平和委員会のはたした一定の役割があること を見のがすことはできないのである︒. これに対し︑三沢市における指導的な労働者の組織・全駐労は︑. の基本認識から出発し︑現在その中心目標を﹁雇用の安定と離職対策の拡充﹂においている︒この目的は︑全駐労中. 執委員長より三八年七月一九日付で大蔵大臣に提出された﹁駐留軍労働者の雇用安定に関する法律案﹂となって具体. 化されているが︑これは︑米軍の撤退等にともない解雇される場合︑安定した職業への再就職を容易にするための必. 要な措置︵労働大臣は︑転職が確実な場合でなければ解雇の同意を与えてはならない等︶を講ずることをねらいとし ている︒. 全駐労三沢支部の発想は︑つまり︑基地反対は基地によって生活している市民・労働者の生活をうばうことだ︑基. 地に代る生活の本拠を与えずにただ反対を主張することはできないという点にある︒三七年五月の反対集会に全駐労. 青森地区本部が作成した﹁雇用の安定と離職対策拡充をかちとるため︑基地反対三沢一万人集会に参加しよう﹂とい. う呼びかけには︑次のように記されている︒﹁私たちは基地に生活の場を求めている﹂︑﹁しかし基地を安定した職場. とは考えていない﹂︑﹁なるほど平和のため︑真の独立をかちとるためには基地は反対だが︑しかし現実には基地が存. 在し︑そこに働く場所があり生活している限り私たちは生活を守るため首切り反対のため闘っている﹂︑﹁首切り反対. と基地反対の闘いとは全然別なものと割切っても︑基地反対が自らの生活の場を否定するものである限り︑私たちは.
(21) 単に基地反対を叫んでいるのではない﹂︒﹁基地に頼らない自らの生活の場を創造開拓するという意欲的な闘いを進め. ると共に︑雇用の安定︑離職対策の拡充等を基地反対の国民運動の中から政府に施策せしめる強力な運動に発展させ. なければならない﹂︑﹁三沢を基地依存から脱却させ平和産業都市へ転換させよう﹂︒全駐労を中心とする地区労は︑. いわゆる新産業都市の指定へ︑全力をあげることになった︒ただし︑指定獲得運動は︑労働者の階級的な基地反対の. 契機を欠く斡部の上からのピジョン獲得運動たるに了っている︒この点は運動論として︑民主グループが︑基地反. 対︑平和と民主主義を守りぬく運動の内部からこそ︑労働者・農民・市民じたいの生産と生活の積極的なプランがう ち樹てられるのだという立場に︑はっきりと対立している︒. 全駐労を中核とする地区労の運動は︑このようにして﹁政策転換﹂闘争に集中している︒その方針は︑﹁補償要求. をとり上げること﹂と︑﹁基地がなくなった時の具体的な青写真を作ること﹂におかれているという︒. まず第一の補償問題について︑地区労出身の市会議員は︑他の保守系議員に働きかけ︑A・B両地区の二つの被害. 対策協議会とは別に︑市段階での三沢市基地対策特別委員会の設置に努力した︒その経過は︑次のようである︒三六. 年秋︑大衆ベースの両協議会に対して︑公の機関としての対策機関がある方が動かしやすいとの判断から︑千歳の事. 例にならい︑市に特別委員会を設置することとした︒二つの協議会で個々に要求されたら困るという配慮も働き︑市. で統一しようとしたのだともいわれている︒この市の基地対特別委は︑農業協同組合長︑漁業協同組合長︑農・漁民. 代表︑両協議会代表︑教育委員長および市会議員若千名から構成され︑主として調査活動等を行なう一般部会と農林. 一九九︵三六九V. 部会および水産部会に分れ︑現在までに︑三八年度以降に着工予定の岡三沢小学校の防音工事を三七年度に実行させ 基地補償問題の社会的構造.
(22) 論 説︵畑︶. 二〇〇︵三七〇︶. たこと︑貸ハウス業者の要請をうけて東京周辺基地の賃料調査を行なったことなどが︑主要な活動となっている︒. 第二の政策は︑いうまでもなくさきにふれた新産業都市の指定である︒三八年度県労大会では︑ ﹁独占の企図する. 旭域開発には反対﹂の姿勢をとりながら︑ ﹁地元負担のない限りで新産業都市政策を推進する﹂との態度を決めた︒. ﹁多くの問題があることは否定できないが︑夢をもたせる意味で﹂︑そのような態度をとったということであった︒. 三沢地区は︑八戸地域新産業都市にふくまれ︑その指定をみたが︑新産にともなう必要経費は︑一〇二九億で︑計画. 内九市町村が負担する金額は二六一億となっている︒しかし現在行なわれている農業構造改善事業との関係︑はたし. て有望な企業を誘致できるかなど︑はらんでいる問題は極めて深刻である︒新産の工業用地として計画されている地. 民主グループと︑全駐労. 社会党の二つの組織ならびに運. 域は︑谷地頭を中心とする広沢牧場地域二一〇〇町歩であり︑現に土地改良事業が実施されつつある地域である︒. このようにみて行くと︑三沢基地における平和委員会. 動のいずれが︑権利としての補償要求したがってまた民主・平和憲法の擁護により有効でありうるかを問題としなけ. ればならなくなってくる︒わたくしは今ここで︑確定的な判断を下すだけの余裕はない︒ただ︑法律論が︑それを実. 現しうるに足る組織ないし運動論との結合または少なくともそれへの法則的な展望をふまえて提示されなければなら. ないのではないか︑という点を指摘できればと思っているだけである︒どんなに農民の利益に仕える法律論といえど. も︑農民的土地要求︑農民的生産意欲にもとづく農民的生産の積極的展開と権力への階級的対決を契機としないなら. ば︑不発に終る可能性は多い︒そこで最後に︑国有地入会にもとづく補償闘争を行なっている北富士演習場の例を少 しく紹介し︑この問題に対する資料を提供しよう︒.
(23) 三. 補償法理と基地闘争. 演習地の草こそわが命−安保闘争の余波がまださめやらぬ昭和三五年七月二八目︑沖縄米軍の演習に反対して︑. 山梨県南都留郡忍草部落三〇〇の農民は立ち上っていた︒米軍キャンプの前を﹁富士を返せ﹂と呼号しつつ︑演習阻 止のデモがくり返され︑生命を賭した着弾地点への坐りこみが決定された︒. 富士の北麓富士吉田市から山中湖へぬける国道にそった忍草は︑いわゆるトゥモロコシの村である︒開田作業の結. 果︑ようやく稲作が拡大したとはいうものの︑収獲は︑山梨県平均の半分に近い︒酸性火山灰土質のため︑化学肥料. の効果を期待することができないためである︒生草だけがまさに命であった︒つまり︑演習場として提供された旧入 会地梨ケ原一五〇〇町歩︵国有地︶が︑村の農業をようやく維持してきたのである︒. 梨ケ原が条約・協定上の施設・区域として提供されたのは︑昭和二〇年一〇月の占領進駐からであり︑p・D接収 をへて現在まで︑一八年間に及んでいる︒. 北富士演習場問題は︑忍草が梨ケ原入会地に有入会権にもとづいて起こされたものである︒したがってその特質. は︑第一に︑演習地として提供された入会地の回復にある︒しかし入会地は農業経営の補充物であって︑農地それじ. たいではない︒農地じたいが接収された場合とは︑利害の質を異にする条件をもっている︒この点に北富士闘争の形. 態が︑反対闘争から条件闘争まで政治的社会的諸条件の変移によって移動しうる理由があるのであろう︒第二の特色. 二〇㎝︵三七一︶. は︑現に接収されている地域であるという点である︒ここに︑新設・拡張の場合に比し一時的な闘争としてよりも︑ 基地補償問題の社会的構造.
(24) 論. 説︵畑︶. 持続的な長期の闘争となりうる理由がある︒. 二〇二︵三七︸じ. 忍草部落が︑現在までに組んだ闘争とそこでの法論理を︑全体に通じてここで説明することはできないが︑二度に. わたる着弾地坐りこみの結果として︑防衛庁長官江崎真澄︵昭和三五年度︶および同藤枝真介︵三六年度︶両国務大. 臣からとった政府回答にもとづき︑入会補償の適正化交渉の過程における部落側の主張と︑運動の関連を簡単に要約 する︒. 入会補償の地位. 部落側の主張は︑三八年四月一日付上申書によれば次のとおりである︒. ω. 忍草区民は︑北富士演習地の提供にともなう入会地の接収に際し︑いわゆる林雑補償をうけてきた︒ところで︑駐. 留軍関係の補償骨系のうち︑土地等を米駐留軍の用に供するための賃借料︑買収価額および損失補償の算定について. は︑御承知のごとく﹁駐留軍の用に供する土地等の損失補償等要綱﹂︵以下要綱という︶がある︒しかしこの﹁要綱﹂. が規制対象とする土地等とは︑土地並びに建物︑および土地収用法第五条にふくまれる権利をいい︑これに該当しな. ヤ. いものは要綱第四条の本庁協議事項となし︑別にいわゆる﹁林野特産物損失補償額算定基準﹂︵以下林雑基準という︶. ヤ. ﹁林雑基準﹂は︑補償の原因を生草・ソダ等同基準上の林野特産物の採取の権利︑または入会慣行におい. を設けるという 体 裁 を と っ て い る ︒. しかし︑. ているから︑権利を問題とすれば要綱と林雑基準は部分的に重複し︑両者の区別は極めてあいまいである︒それにも. かかわらず﹁林雑基準﹂の立法目的ないし実際の適用事情から採草・採薪行為を中心に強いて区別すれば﹁要綱﹂.
(25) ヤ. ヤ. で. ゆ. ヤ. ヤ. は︑当該土地について所有権︑地上権︑賃借権等の権利が存する場合︵土地の立毛に対し権利者の人為的・積極的な. ヤ. ヤ. ﹁林雑基準﹂か︑肥培管理したものを適用除外. 管理が行なわれている場合が多い︶に限定され︑これにたいし﹁林雑基準﹂は︑山野草その他自然生の立毛を採取す ヤ. る権利または入会慣行を有する場合に適用されると解する他はない︒ しているのは︑明らかにこの意味である︒. そして︑両者の差違は︑補償額算定の方式にもおよび︑右の権利補償を中核とする﹁要綱﹂が︑私有地の賃借料な. いし中間補償額を︑土地または立木等の客観的評価価格を基準にして算定するに対し︑﹁林雑基準﹂は使用によって. 生じた減収額を基準にその八○パーセントを補償する方式をとる︒すなわち︑﹁林雑基準﹂によれば︑﹁減収額は︑平. 年の林野雑産物所得額から当該年度の林野雑産物所得額を差し引いた額﹂︵第四条一項一号︶であり︑平年の林野雑. 産物所得額は︑﹁平年の採草量に林野雑産物の価格を乗じて得た額から採取必要経費を控除した額﹂︵同二号︶であ. ﹁林雑基準﹂の採用するいわば実損主義の差異は︑しかしながら前述. り︑平年の採取量とは︑林野の使用により林野雑産物の採取阻害がない場合の採取量﹂をいう︵同上︶︑とされてい るのである︒. このような﹁要綱﹂のとる権利補償主義と︑. の補償の原因たる権利ないし利益のおのおのの差にもとづくものであって︑権利内容が明白で︑損失が確定しうる場. 合の補償額算定方式と︑確定しえない︵あるいは確定し難い︶場合の算定方式−実損主義の違いを生んでいると解 する他はない︒. 二〇三︵三て三︶. では︑忍草区民が︑当該演習場に対して有する入会慣習上の利益は︑補償骨系の上ではたして右にみた﹁林雑基 基地補償問題の社会的構造.
(26) 論. 説︵畑︶. 入会慣習上の利益の性格. 準﹂によりなじむものであるかどうか︒. ω. 二〇四︵三七四︶. 北富士演習場として提供せられた梨ケ原入会地に対して︑忍草区民は︑地盤名義のいかんを問わず何人に対しても. 対抗しうる入会権をもっていると確信する︒これに対して防衛施設庁当局︵調達庁もふくめて︶は︑もっぱら大正四. 年三月十六日付大審院判決を援用し︑国有地入会権の存在を一般的・形式的に否認するに止まるだけであり︑すすん. で現在わが国民法学界の通説︑および新憲法下における新たな判例の形成事情を顧りみようとはしていない︒. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. しかし仮りに百歩譲って︑国有地上に入会権なしとするも︑それは単に国有地における入会慣習上の利益を民法上. の実定的権利とみないというだけにすぎず︑それだけでは︑補償法理の上で︑入会慣習上の利益が法的にいかなる保. 護の対象とさるべきか︑考慮しなくてもよいという理由にはならない︒民法上の問題としてみても︑入会権そのもの. 準要綱﹂︵閣議決定︶は︑その第二条第五項において﹁この要綱において権利とは︑社会通念上権利と認められる程. して規定したのはもとより︑最近にいたって右要綱等の基準を統一しようとした﹁公共用地の取得に伴う損失補償基. ︵閣議了解︶第二条が︑所有権︑地上権︑賃借権等とならんで﹁慣習上認められた利益の滅失︑般損﹂を補償対象と. また︑損失補償法理の趨勢も︑例えばその典型的な基準である﹁電源開発に伴う水没その他による損失補償要綱﹂. 歩的でかつ通説的な理解だからである︒. の要件を規定した民法第七〇九条が︑形式的な権利侵害のみならず︑いわゆる﹁慣習上の利益﹂をふくむことは︑初. の存否に関係なく︑入会慣習上の利益それじたいが法的保護の客体たりうることは︑むしろ常識であって︑不法行為. ヤ.
(27) 度にまで成熟した慣習上の利益をふくむものとする﹂と定義し︑逆にあいまいな補償原因をとり除き︑いわゆる過重. 補償の弊害となった生活補償を否定しようとする態度をとっている︒もっともこの要綱は︑附則として駐留軍関係に. は当分適用しない旨を定めているが︑しかし要綱の法理は一般的妥当性をもち︑できるだけ早目に適用されるとみて 間違いないであ ろ う ︒. ところで︑忍草区民が本件梨ケ原に対して有する入会慣習上の利益が︑右にいう社会通念上の権利に該当すること. は︑その実態から︑どうしても否定できないところである︒福島調達庁長官も︑すでに昭和三十年六月二十四日の参. ︵第二二回国会参院内閣委会議録第一七号二〇頁︶︑. 院内閣委員会の席上︑﹁先般の衆議院の内閣委員会でもその意味で申し上げたのでありますが︑︵忍草区の︶入会権は われわれは認めていると申し上げて差しつかえない﹂と言明し. 少なくとも調達庁︵現在の防衛施設庁をふくむ︶に対する補償の関係においては︑機関人格の法理から入会権の存在. を対抗しうる効力があると解して︑何ら差しつかえはない︒この意味で︑本件入会慣習上の利益は︑少なくとも補償. に関する限り権利であり︑本件補償が梨ケ原入会地の草・ソダに対する損失補償でなければならないことは︑極めて 明らかだと考える︒. この点を︑何よりも政府みずから明白にしたのが︑本件入会慣習の確認とその尊重を約した昭和三十五年八月の江. 崎防衛庁長官の回答書であり︑翌三十六年九月の藤枝防衛庁長官の覚書に他ならないのである︒. しかも特に留意さるべきは︑右の藤枝長官の覚書であって︑同書はその第一項に﹁政府は貴区民が旧来の慣習に基. 二〇五︵三七五︶. づき︑梨ケ原入会地に立入り使用収益して来た慣習を確認するとともに︑この慣習を将来にわたって尊重する﹂と明 基地補償問題の社会的構造.
(28) 論. 説︵畑︶. 二〇六︵三七六︶. 記し︑その文脈において政府はすみやかに現行の林野雑産物補償に関する問題点を再検討し︑その適正化をはかる﹂ ︵第三項︶ことを公約している点である︒. すなわち藤枝文書は︑ただ単に忍草区民が梨ケ原に対して有する慣習上の利益の存在を確認したに止まることな く︑さらにその利益の内容をも確定しているものだからである︒. 申すまでもなく入会慣習上の利益の内容は︑民法における入会権がその法的効力ないし性格の差によって︑所有権. に全く等しいものから︑他物権的なもの︑さらには債権的なものにまで類型化されると同じく︑段階的に分けられる. のが普通である︒具体的にいえば︑草・ソダ等を採取する権能はもとより︑土地の支配・進退をもふくむ強力な物権. 的なもの︑草・ソダまたは一定範囲の立木を採取することを地盤所有者に請求するに止まる弱い債権的なもの等々︑. 慣習と利益の実態によっておのおの区別せられるわけである︒したがって︑名称は入会慣習上の利益として一つであ. るとしても︑その内容は慣習に応じてそれぞれ質的に異なり︑同列に論ずべきものでは決してない︒そして︑この差 異は︑補償法理の適用についても︑大きな影響を与えずにはいない︒. 例えば︑仮定の問題として国有地入会に例をとれば︑某入会団体の有する慣習上の利益内容が︑国に対して草・ソ. ダ等を採取することを請求する債権的利益にすぎない場合は︑入会慣習の存在を確認することはできたとしても︑慣. 習上の利益の内容したがって損失を具体的に確定することは物的に不可能である︒これに反し︑藤枝文書が認めてい. るように︑われわれが木件目的地に対して有する入会慣習上の利益は︑土地に立入り使用収益しうる程度にまで強力. な︑草・ソダに対する物権的な支配権能である︒この場合︑われわれは︑草・ソダに対し直接的・対物的な支配の権.
(29) 能をもつのであって︑忍草区民の利益は草・ソダそれじたいに他ならず︑損失は明白に確定できるのである︒何故な. ら本件入会地は︑慣習上定期的に行なわれる肥培管理行為としてのいわゆる火入れ︵線︶によって画され︑地域的に. 確定できるからであり︑当該入会地における草・ソダの総生成量は︑数量的把握が可能だからである︒. 生草補償 の 特 殊 性. そこで次に︑右の立場から﹁林雑基準﹂の適用のうち最も重要な林雑補償額算定方式について述べてみる︒. ⑬. ﹁林雑基準﹂は︑前述の如く草・ソダ採取の阻害によって生じた減収を中心に︑この減収額を平年の採取量から当. そこで問題は︑第一にこの基礎的数値である平年採取量をいかにして算出するか︑にかかってくるわけである. 該年度に採取した量を差し引いて算定する方式をとっている︒. ω. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. ヤ. が︑当局は︑忍草区民の批判によって従来の反当堆肥施用量から算出する非科学的にしてかつ生活補償的方式を修正. ﹁林雑基準﹂は︑生草に価. ところで︑依存度方式によって平年採取量を算定するとしても︑平年採取量から減収額を出し︑減収額から補. し︑いわゆる権利補償の原理により近い依存度方式にかえた︒問題は︑適正化に向って一歩前進したというべきであ ろう︒. @. 償額を算出するためには︑当然損失の対象たる草じたいに市場価格がなければならない︒. ヤ. ヤ. ヤ. 格がない場合の措置として︑生草の代替物を擬制し︑それによって価格を算出する方法をとり︑当局は︑従来から一. 定の換算率によ.て生草を稲わらに代替し︑稲わらの価格をもって補償してきた︒そこで忍草区民は︑生草補償の適. 二〇七︵三七七︶. 正化をはかるため︑当局が実際に適用してきた稲わら換算率と代替物たる稲わらの価格を問題としたのである︒ 基地補償問題の社会的構造.
(30) 論 説︵畑︶. 二〇八︵三七八︶. 本来︑損失補償の原理として︑損失の客観的評価価格ないし社会的評価価格による補償が論ぜられるのは︑補償の. 対象たる損失に︑市場価格すなわち交換価値が存することを一般に予定していると思われる︒しかるに︑本件補償の. 対象たる生草には︑交換価値がない︒生草は︑それじたい使用価値しかもちえず︑しかもこの使用価値は︑生産手段. たる農地が酸性火山灰土質という生草に代る有効な化学肥料を期待できない特殊な条件下にある忍草区民にとって︑. 一率に. 予想以上に大きい︒ではこの場合︑生草を何に代替するのが最も妥当であろうか︒当局は︑従来より慣例的に︑性質. ならびに効用において生草に近い稲わらを︑堆肥用生草と飼料用生草の別なく︵極めて非科学的であるが︶︑. 代替物とし︑一定の換算率によっておき換え︑その量の稲わらの価格によって補償額を算定する方式をとってきた︒. 忍草区民は︑堆肥用生草について稲わらを代替物とすることには︑反対しない︒また飼料用生草についても︑稲わ. らよりは適切なものがあると考えられるが︑強いて反対するつもりはない︒問題は︑その換算率にある︒代替物がい. かに適切でも︑その換算率が非合理的であれば︑生草の適正な価格が出せないのは︑火を見るより明らかである︒当. 局は︑慣例的に堆肥用生草については︑生草の完熟堆肥換算率を○・四︑風乾稲わらの完熟堆肥換算率を一・五と. し︑飼料用生草については︑ただ単に澱粉価から計算する方式をとり︑換算率を○・四五としてきた︒しかるに忍草. 区民の直感ならびに体験によれば︑この換算率は誤ったものであり︑全く別個の換算率を定めねばならないと思って. いた︒よって過去数年にたり︑多数専門家の意見を糺したところ︑当局の採用する数値は︑科学的に十分再検討され. ねばならぬ不完全な基数であることが明らかな科学的裏付けをもつこと︑明白となった︒忍草区民は︑ただちにこの 換算率が科学的な正確さをもった数値に改められることを希望するという︒.
(31) の 次に問題となるのは︑代替物たる稲わらの価格ならびに購入地についてである︒稲わらの価格は︑稲わらが生. 産され販売される限り︑その生産地・販売地ごとに無数に成立する︒しかし本件補償において問題とされる稲わら価. 格は︑使用価値支配の財産たる当該生草の価格を擬制するためであるから︑損失補償の法理たる﹁近傍類地の取引価. 格﹂の原理にもとづき︑現実に稲わらの取引市場が成立し︑取引可能な土地における︑現実の客観的な取引価格でな ければならない︒. したがって︑いかに水田があっても稲わらが市場性をもたず︑また逆に稲わらの価格が形成されていたとしても︑. 当該補償をうける者を中心とする社会的・地縁的取引可能性をもたなければ︑その価格は︑本件補償の要素たる稲わ. らの価格とはなりえないはずである︒この意味で︑本件に適用さるべき稲わらの価格は︑谷村地区ないし甲府平のそ. れではなくして︑忍草区民が通常取引している静岡県田方地方区における稲わら価格でなければならない︒. ⑭ ところで︑代替物たる稲わらの価格が決定したとしても︑それによってはただちに完全な生草の補償がなされ. るとはいえない︒忍草区民が︑さらに問題としなければならなかったのは︑右の田方地区において購入された稲わら. を︑当該忍草地区まで運転する運賃をどう扱うか︑という点である︒従来︑当局は右の運賃を本件補償の対象とし. て︑不完全ながら継続的に支払ってきた︒忍草区民もまた︑補償の対象たる生草が︑前述の如きもっぱら使用価値支. 配の財産たる性格をもつ事実に着眼し︑補償は生草る使用価値ー損失の完全な復元であるから︑通常生ずる損失と して当然右の運賃がふくまれるものと解している︒. 二〇九︵三七九︶. しかも︑この場合の運賃は︑日本通運等現実に存在する輸送機関によって︑具体的に運搬されうる︑約款に定めら 基地補償間題の社会的構造.
(32) 論. 説︵畑︶. 二一C︵三八○︶. れた運賃でなければならないこと︑いいかえれば︑社会的に妥当な︑一般常態としての経路を通じて︑当該運送者が. 損失の完全な填補とはなりえ. 法規上許された輸送方法で運送するに要する運賃でなければならない︒もし本件補償に右の運賃が含まれないか︑ま たは不完全な運賃しかふくまれないとしたら︑それは使用価値として現われる生草. ず︑適正化作業の名において一体何をなし︑また何をなうとしたのか︑なお疑念を残す間題であろう︒. 以上要するに本件補償の原因たる入会慣習上の利益の権利性を中心に︑入会補償が決して恩恵的・生活補償的な実. 損補償たりえてはならない理由と︑この観点からする現行林雑基準適用上の問題点を摘示し︑基本的な考え方を明ら かにした︑というものである︒. 以上︑引用した忍草の主張は︑法的理論問題としてとらえる限り︑大筋においては別に異論はないであろう︒この. 論理を基礎に︑忍草と防衛施設当局との間の交渉は︑忍草に有利に進められている︒すなわち︑損失補償量算定に関. する平年採草量︑家畜数︑家畜の年闇飼料量︑昭和三五年度の立入日数︑一日の野草搬出量︑農家戸数︑可食日等の. 基礎事項︑野草損失量の稲わら換算の係数︑および稲わら価格の算出に関する購入地と購入量︑単価︑運賃等々が︑. 一つ一つ着実に確定・合意されていった︒しかしそれにもかかわらず︑当局は︑約束された期限がきても︑補償金を. 支払わなかった︒そこで部落は︑伊達秋雄弁護士を代理人として国を相手どり︑補償金請求の訴訟を提起することに なったのである︒. 訴状によれば︑右請求の原因はほぼ次のとおりである︒原告︵入会組合長︶は組合員全員を代理して︑昭和三七年. 二一月二〇日︑被告︵国︶の機関たる横浜防衛施設局長との間に︑三五年度野草補償として︑前記基礎数値ならびに.
(33) 算定方式を適用し︑調達規第三七号﹁林野特産物損失補償額算定基準﹂にしたがって算出された金額を支払う旨の契. 約を締結した︒この契約によって該年度の補償額をだすと二六一〇二七三〇円となる︒しかも︑防衛庁施設部長は同. 月二六目︑横浜防衛施設局施設部長は同月二七目︑いずれも昭和三八年一月末目までに全金額を支払う旨約定した︒. しかるに被告は︑右履行期をすぎても支払いをしない︒よって本訴におよぶというものである︒. しかしそれにもかかわらず︑ここでの運動の中心が︑農民の直接的な要求を疎外したところで︑主として部落上層. 部で進められている点に︑問題があるのである︒北富士闘争の指導者cさんのやり方は︑まず要求の根拠に常に法律. 論をおき︑合理的に構成された事由の範囲内で運動と戦術をくみ立てるという方式をとっている︒したがって︑法律. 的な理由を設定することがそもそも運動の前提なのである︒そこでは︑いわゆる解釈論だけが求められており︑法的. 論理の構成に破綻のない限りで闘争の根拠とされている︒そしてこの基底には︑忍草農民の主張が運動に直接表出し. ているというよりは︑法律論としての主張を︑逆に運動がバック・アップするという運動論がある︒cさんは確かに. ビジョンをもっている︒ ﹁わたしは自分が生れたこの貧しいみじめな村を︑何とかしてふつうの村のレベルにまでも. っていきたいのです︒まず経済的な基盤をつくり︑近代農業を発展させたい︒医者のかわりに富山の売薬︑お産はと. りあげ婆さんにまかせているような村に︑医療・社会保障を拡充したい︒その次には頭の革命です︒これはたいへん. な仕事だ︒民度の低い村びとたちに︑ ﹃人間というものは尊いものだ﹄ということがわかるような文化的活動をすす. めてゆきたいーこれがわたしの夢です﹂と︒. 二一一︵三八一︶. 訴訟の進展によっては︑Cさんの夢はあるいは実現するかも知れない.三九年度政府予算案は︑防衛施設関係費と 基地補償間題の社会的構造.
(34) 論. 説︵畑︶. 二一二︵三八二︶. して︑航空機の騒音対策費を重点的に配慮しながらも︑前年度対比四二・五パーセント増︑二八億五千万円を計上し. ている︒いずれの途が権利の実現により適合的であろうか︑法社会学の課題として︑今後追求すべきであると考えて いる︒. 追記 三沢基地調査に際しては︑関係各位の多大の御協力をうけた︒紙上をかりて厚く感謝する︒.
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