キーワード 老朽化フィルダム,堤体改修,補強,嵩上げ,ゾーニングパターン
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老朽化フィルダムの堤体嵩上げ事例におけるゾーニングパターン
株 式 会 社 フ ジ タ ○福島伸二・五ノ井 淳・北島 明・和気輝幸 (独)農研機構 農村工学研究所 谷 茂
§1.まえがき
築造年代の古いフィルダムは全国に約1700~1800箇所あるとされており,その多くは堤体が老朽化して断面不足 や漏水により安定性が不足して早急な堤体の補強や漏水防止が必要とされている。また,新規ダムの建設が抑制さ れている現状から,既設ダムの有効利用としての貯水容量拡大のための堤体嵩上げが求められている事例もある。
そこで,本稿はフィルダム堤体の補強や漏水防止,あるいは嵩上げの事例を調べ,各事例で採用されたゾーニング パターンを既設堤体の堤高HOに対する嵩上げ高HRの大・小によりおおおよそ分類し,各事例で採用された堤体ゾ ーニングの特徴について報告する。
§2.嵩上げが小規模な場合
小規模な堤体改修は,図 1に概念的に示すように,嵩 上げ高HRが既設堤体の堤高Hに比較して余裕高を確保 する程度と小さい場合(HR≪H)で,既設堤体の補強や 漏水防止を目的としたコア・シェルゾーンを既設堤体の 上流側に腹付けるゾーニングパターンである。
典型的な事例として図 2に示す大正池があり,ゾーニ ングは堤体軸を上流側に移動させて堤体上流側に遮水 のためのコアゾーン,堤体安定化のためのシェルゾーン を築造するのが一般的である。これは堤体上流側が侵食 等による断面不足が生じているなどして補強が必要な 場合が多いこと,漏水防止を堤体上流側で行うことが有 効であることなどが主な理由であろう。
§3. 改修が中規模な場合
中規模な堤体改修は嵩上げ高 HRが既設堤体の堤高に 比較して小さい場合(HR<H)で,図 3に概念的に示す ように,既設堤体の強度や遮水性をかなり期待し,表層 部を一部掘削することがあってもほぼそのまま活用し て嵩上げ部を既設堤体の下流側に載せた腹付け型のゾ ーニングパターンが採用されている。
典型的なものとして図 4に示す雨煙内ダムがある。こ の事例のように,嵩上げ規模が中位の場合には堤体軸を 下流側に移動させる形式が一般的となる。理由として,
既設堤体を仮締切り堤として活用できることから貯水 しながらの改修が可能,池内に堆積した底泥土などの築
堤土に流用不能な不良土が発生しないなどが考えられ る。また,嵩上げ部は嵩上げ高がある程度大きい場合,
図 1 嵩上げが小規模な場合の形式(HR≪H )
図 2 大正池の嵩上げ後の標準堤体断面
図 3 嵩上げが中規模な場合の形式(HR<H )
図 4 雨煙内ダムの嵩上げ後の標準堤体断面
あるいは強度に優れた築堤土と遮水性に優れた築堤土 のそれぞれを確保できた場合にはコアゾーンとシェル ゾーンのように分けてゾーニングしている。一方,嵩上
3-207 土木学会第63回年次学術講演会(平成20年9月)
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図 5 嵩上げが大規模な場合の形式(HR≧H )
図 6 永池ダムの嵩上げ後の標準堤体断面
げ高が小さい場合や,強度に優れた築堤土を確保できな い場合には,嵩上げ部を均一型として法面勾配を緩くす るかは押え盛土を築造するのが普通のようである。
§4. 改修が大規模な場合
規模の大きい改修は嵩上げ高HRが既設堤体Hと同程 度かこれよりより大きい場合(HR≧H)で,嵩上げによ り既設堤体や基礎地盤に新たに加わる土圧や浸透水圧 が大きくなることから,図 5に概念的に示すように,既 設堤体の強度や遮水性を全く期待せずに仮締切り堤程 度に活用するだけにとどめ,嵩上げ部を独立した中央コ ア型堤体として築造するゾーニングパターンとなる。
典型的な事例として,図 6 に示す永池ダムがある。独 立型の堤体築造のゾーニングは下流側に新たな新設堤 体のための広い用地や,コアゾーンとシェルゾーンのよ うに各ゾーンの機能に応じた遮水性,あるいは強度に優 れた大量の築堤土が必要となってくる。
§5.嵩上げ規模と堤体軸移動による改修形式の分類 堤体嵩上げ事例におけるゾーニングパターンを嵩上 げ規模だけでなく,堤体軸移動量ΔCL(既設堤体を中心 に上流側への移動を正とする)により,移動なし(ΔLC=0),
上流側への移動(ΔLC>0),下流側への移動(ΔLC<0)
を考慮して細かく分類した結果を図7に示す。
堤体軸を移動させない堤体嵩上げは既設堤体を積極 的に活用して,上流側にコアゾーンとシェルゾーンを,
下流側にシェルゾーンを腹付けるゾーニングパターン であり,嵩上げ規模がI1→I2→I3へと大きくなる。
堤体軸を上流側に移動させるゾーニングパターン II は既設堤体上流側に嵩上げ部を築造することを基本と
図 7 堤体の嵩上げ規模と堤体軸移動量によるゾーニングの分類
(OE:既設堤体,C:コアゾーン,S:シェルゾーン)
するもので,堤体腹付けのようなII1から,独立した堤 体築造のII3まで,II1→II2→II3へと規模が大きくなる。
堤体軸の移動が下流側のゾーニングパターンIIIはパ ターン II の対極にあるもので,既設堤体下流側に嵩上 げ部を腹付けて載せる小規模なIII1から,独立した堤体 を築造する大規模なIII3まであり,III1→III2→III3へと規 模が大きくなる。
図から,堤体嵩上げ規模と以上の細かく分類したゾ ーニングパターンのうち,小規模な嵩上げはパターン I2,あるいはII1が多く,中規模な嵩上げはパターンIII2
が多く,そして大規模な嵩上げはパターンIII3が多い。
§6. あとがき
我が国におけるフィルダム堤体の嵩上げ事例でのゾ ーニングパターンは以下のような特徴がある。(1)小規模 な堤体嵩上げは堤体補強や漏水防止のために,上流側に コア・シェルゾーン,下流側にシェルゾーンを築造する もので,堤体軸を移動させないか,上流側に移動させた ゾーニング形式が一般的である。 (2)貯水容量拡大のた めの堤体嵩上げのゾーニング形式は堤体軸を下流側に 移動させたものが一般的である。また,嵩上げ規模が大 きいほど,既設堤体や基礎地盤に新たに加わる土圧や水 圧が高いため,既設堤体の活用程度が低くなり,嵩上げ 時のゾーニングが上・下流の両側への腹付け型,下流側 だけの腹付け型から独立した堤体型へと移行するパタ ーンとなる(図 2→図 4→図 6)。
【参考文献】1)谷 茂,福島伸二:老朽化フィルダムの堤体改修
(補強・漏水防止・嵩上げ)の事例調査, ダム工学, Vol.17, No.1, 2007.
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