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送電鉄塔の地震時挙動に及ぼす鉄塔形式・幾何学的非線形の影響評価

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Academic year: 2022

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送電鉄塔の地震時挙動に及ぼす鉄塔形式・幾何学的非線形の影響評価

熊本大学大学院 自然科学研究科 学生会員 ○松本 将之 熊本大学大学院 自然科学研究科 正会員 松田 泰治 日本鉄塔工業株式会社 技術部 正会員 岡 延夫 日本鉄塔工業株式会社 技術部 石田 伸幸

1.はじめに

わが国の送電鉄塔の設計では,支配的な荷重が風荷重で あるとされている.しかし,1999年には台湾で集集地震が 発生し,送電鉄塔の倒壊が多数報告された.既往研究では,

とりわけ対象鉄塔の形式が片継脚であったことに着目し,

耐震性評価の重要性を指摘している.わが国においても,

送電鉄塔は山間部に建設されることが多く,従って多種多 数の片継脚鉄塔が採用されている.また,今後は高電圧で 大容量の電力を送電する必要性から架渉線の重量が増大化 し,ますますトップヘビーの構造物となることが勘案され る.このような背景を踏まえると,今後は架渉線の影響を 考慮した片継脚鉄塔の地震時挙動を把握する必要がある.

また,片継脚の幾何学的非線形(以下,幾何非線形と称す)

の影響は明らかではない.

本研究では,わが国で一般的に採用されている送電鉄塔 を対象に,耐震性能向上を図るための基礎的検討として,

鉄塔形式の違い(平脚及び片継脚)による動的応答特性の 差異を明らかにした.また,幾何非線形の考慮による影響 を比較・把握した.

2.解析モデルと解析条件

2.1.対象構造物と解析モデルの構築

本研究は,わが国で一般的に採用されている送電鉄塔の 構造図を基にモデル化を行った.対象構造物となる送電鉄 塔は平脚,及び片継脚(継脚長4.0〔m〕)の220〔kV〕懸垂 型山形鋼鉄塔であり,解析モデルとして片継脚鉄塔の構造 図を図1に示す.また,同様の懸垂型鉄塔がほぼ直線状に 配置された状態を想定し,鉄塔間の径間長は若番側,老番

側ともに350〔m〕と仮定した.また,主柱材等の全部材を

3次元線形はり要素としてモデル化を行った.更に,本研究 では,架渉線の影響を考慮した鉄塔単体モデルを構築した.

架渉線のモデル化は,既往研究1)を参考にした.なお,架

渉線置換バネのバネ定数は,弦 の振動方程式から 1 次固有周 期を求め(式(1)),1 質点系の 固有周期に関する方程式(式 (2))から算出した.架渉線の諸 元を表1に示す.

L S

T ρ

1=2 (1)

T m k ⎟⎟

⎜⎜

=

2

1

2π (2)

ここに,T:1次固有周期,

L:径間長(L=(若番側の径 間長+老番側の径間長)÷2),

ρ:架渉線の単位長さ質量,S:初期の想定張力,k:架 渉線置換バネのバネ定数,m:架渉線+(金具・碍子)の 質量である.

地 線 電力線

条 数 2〔条/基〕 導体数 1〔条/相〕

単位質量 1.015〔kg/m〕 単位質量 2.678〔kg/m〕

想定張力 26500〔N/条〕 想定張力 49000〔N/条〕

金具質量 50〔kg/支持点〕 碍子質量 250〔kg/支持点〕

2.2.解析条件の概要

鉄塔基部の境界条件は,鉄塔と基礎は剛性差や質量差が 大きいことから,鉄塔基部は完全固定支持とし,地震動を 鉄塔基部へ直接入力した.

動的解析の方法は,Newmark β法(β=0.25)による直接積 分法を適用し,積分時間間隔は0.002〔sec〕とした.また,

鉄塔の減衰は,固有値解析による卓越モードよりレイリー 減衰を定義した.入力地震動は,兵庫県南部地震時に観測 された実地震動を使用し,架渉線方向に単一で入力した.

キーワード:送電鉄塔,動的応答解析,片継脚鉄塔,幾何学的非線形,曲げモーメント

連絡先:〒860-8555 熊本県熊本市黒髪2丁目391号 熊本大学大学院自然科学研究科 TEL 096-344-2111(代表)

図1 220〔kV〕片継脚鉄塔

表1 架渉線の諸元 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

‑1335‑

Ⅰ‑668

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3.解析結果の比較

ここでは,JR西日本鷹取駅構内地盤上EW成分波(Ⅱ種 地盤・最大加速度666〔gal〕)を架渉線方向に単一入力した 場合の動的解析の結果を示す.

まず,図1に示す主柱材Aの塔頂節点に代表して,鉄塔 頂部の最大応答加速度を比較すると,平脚モデルの場合は 2013〔gal〕,片継脚モデルでは 2336〔gal〕であり,鉄塔形 式が片継脚となることで約16〔%〕増大する結果となった.

更に,片継脚モデルにおいて幾何非線形を考慮した場合は 2343〔gal〕と幾何非線形の考慮による影響は1〔%〕以下で あることが明らかとなった.また,同様の節点に代表され る鉄塔頂部の応答変位の時刻歴結果を図2に示す.鉄塔頂 部の応答変位を比較すると,最大応答変位は平脚モデルで 27.8〔cm〕,片継脚モデルで29.7〔cm〕であり,片継脚モデ ルとなることで約7〔%〕増大することが確認された.また,

片継脚モデルにおいて幾何非線形を考慮すると29.8〔cm〕 を示すことから幾何非線形の影響は1〔%〕以下の変化にと どまっている.

更に,図1に示す主柱材Dに発生した最大圧縮軸力の結 果を比較する.最大圧縮軸力の解析結果を図3に示す.最 下パネルの構成部材に着目すると,平脚モデルの場合は413

〔kN〕であり,片継脚モデルの場合は447〔kN〕と約8〔%〕

増大する結果となった.更に,片継脚モデルにおいて幾何 非線形を考慮すると 451〔kN〕を示し,幾何非線形の影響 は1〔%〕以下と小さいことが確認された.

最後に,主柱材Aの最下パネルの構成部材に作用する曲 げモーメントの結果を鉄塔形式の違い,幾何非線形の考慮 の有無で比較する(図4参照).図2及び図4より,いずれ のケースにおいても,最大変位が生じた時刻で鉄塔基部の 曲げモーメントは最大値を示すことが確認される.鉄塔基 部(最下パネルの構成部材)に発生する部材z軸(弱軸)

回りの最大曲げモーメントは,平脚モデルの場合が 3.03

〔kN・m〕であるのに対して,片継脚モデルの場合は 9.82

〔kN・m〕を示す結果となった.更に,片継脚モデルにおい て幾何非線形を考慮した場合は 10.68〔kN・m〕であり,幾 何非線形の考慮により,最大曲げモーメントが約9〔%〕増 加することが確認された.

4.おわりに

本研究では,架渉線の影響を考慮した鉄塔単体モデルを 構築し,鉄塔形式の違い(平脚及び片継脚),また幾何非線 形の考慮の有無による動的応答特性の差異を比較すること で,鉄塔形式と幾何学的非線形性が及ぼす鉄塔の地震時挙 動への影響を検討した.

その結果,鉄塔形式が片継脚となることは,地震時の鉄 塔の健全性に大きな影響を及ぼすことが示された.また,

幾何非線形の影響を考慮することにより,安全側の評価が 可能となることが明らかとなった.

参考文献

1)松田泰治,大塚久哲,池田征司,宇野州彦:台湾集集地震により倒壊し

た超高圧送電鉄塔の被害原因の解明と耐震性向上に関する研究,土木学 会論文集,No.801/I-73,pp.51-68,2005.10.

図2 鉄塔頂部の時刻歴応答変位 -40

-30 -20 -10 0 10 20 30 40

0 5 10 15 20

時刻 〔sec〕

応答変位 cm〕

平脚(幾何なし)

片継脚(幾何なし)

片継脚(幾何あり)

図4 鉄塔基部の曲げモーメント時刻歴 -15

-10 -5 0 5 10 15

0 5 10 15 20

時刻 〔sec〕

曲げメン 〔kN・m

平脚(幾何なし)

片継脚(幾何なし)

片継脚(幾何あり)

0 5 10 15 20 25 30 35 40

0 100 200 300 400 500

最大圧縮軸力 〔kN〕

鉛直座標 m

平脚(幾何なし)

片継脚(幾何なし)

片継脚(幾何あり)

図3 最大圧縮軸力の鉛直分布 土木学会第65回年次学術講演会(平成22年9月)

‑1336‑

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参照

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