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第3章1節 P3 事例1

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(企業の先進事例に関する詳細説明)

第3章第1節

【事例1】成果主義型制度の導入代表例ともいえる、担う仕事(職務)の価値に依拠した 職務等級制度とその運用だけでは処遇面で激変が伴い、人事異動の自由度が低くなること から、処遇にはソフトランディングの必要性を認識し、職能資格制度との併用方式を採用 した企業もある。(TOTOなど) TOTO ハイブリッド方式による役割等級制度の導入 TOTOの人事制度革新は1998年の業績悪化が引き金となり、従来の職能資格制度 から「やった人が報われる」処遇への転換を目指した。成果主義を意識させるために会社 業績を連動させる「業績目標管理制度」と仕事基準の考え方である「役割等級」の導入を おこなった。 会社業績を意識させる「業績目標管理制度」の導入に際しては半期毎に、組織の上位か ら順に、部門長→部長→管理職と導入していった。社員の業績評価の集約が会社業績の売 上や利益に連動する考えで、社長から担当役員、担当役員から部門長というように方針の 確実な展開と連鎖を徹底した。自分の果たさなければならない成果を書かせることで「成 果責任」を意識させている。 また従来の「職能給」に加え、現在担当している職務の責任の重さをもとに「役割給」 を組み入れた。役割等級によって、従来、右肩上がりの昇給しかないところに初めて「下 がる」という概念が導入されることとなった。ベンチマークした武田薬品工業では職務等 級だけで運用しているが、役割等級一本にすると処遇面での激変が伴うため、人事異動に 際して自由度が低くなる。また、人事制度は継続性があり処遇のことを考えればソフトラ ンディングが必要であると判断し、職能資格制度との併用方式(同社でハイブリッド方式 と表現)にすることにした。導入後、徐々に社員資格と役割が相関してきており、今後は 社員資格と役割を一本化することも検討している。 【事例2】 求める人材像をベースとしてコンピテンシー基準(辞書)に要件を整理し、企業側が求 める職務・役割の個別要件を定義するとともに、イントラネットなどを通じ社員に公開し ている企業がある。それによって、社員は自らのコンピテンシー・レベルと現職で求めら れるレベルとのGAPを認識するとともに、将来的に就きたい職務・役割の要件も理解し対 比できるため、主体的なキャリアデザインを行うように動機付けることへと繋がっている。 結果、このような企業では実際に要件に見合う人材が任用・登用され、あるいは要件に見 合わない人材がしかるべきプロセスを経て降任されるなど、人材マネジメントの透明性・

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納得性の拡大が進行途上にある。 (富士ゼロックス、NECなど) 富士ゼロックスにおける「組織と個の新たな関係を目指した」役割グレード制度 個を生かした施策、組織と個の新たな関係構築を目指す同社では、評価・処遇面では役 割グレード制度を導入している。これは役割を機軸として、会社と社員がより対等な関係 を目指すことを目的としたもので、1999 年に管理職層、2002 年に組合員層に導入された。 役割グレード制度によって目指す個と組織の関係を表したのが図1である。以前は職能資 格等級制度が導入されていたが、役割グレード制度導入によって、M(マネジャー)区分、 S(スタッフ)区分、SP(スペシャル)区分という3つの社員区分を導入、区分ごとに役割 を基にグレードが設定されるという等級構造に変化した。 (図1)

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役割グレード制度のもうひとつの狙いは、年功的な昇格を廃止するということである。 年功的な等級構造を廃して現在の役割・責任・貢献度などに基づく等級構造に変えていこ うというのが、等級構造改定の大きな目的である。そして、現在の役割・責任・貢献度に 基づく等級決定が、個と組織の対等な関係構築には不可欠というのが同社の姿勢である。 (図2) 出典:労政時報 3607 号 40p 新しい等級構造で基本となる役割は、図2で示したように経営戦略に連動させた形で設 定された。つまり全体の経営戦略から事業部さらに事業部内の各組織単位の戦略へブレー クダウンし、最終的には個人の役割が設定された。さらに各役割に応じた責任・権限を基 に役割を果たすために必要な任用要件が特定され、この任用要件の重要度・困難度などに 応じて役割価値が評価され、これに応じてグレードが決定する。基本的な使命、責任・権

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限と共に、任用要件で用いられるのがコンピテンシーである。各役割が要求するコンピテ ンシーを有する個人が該当する役割につくというのが、このグレード制度の特色である。 役割グレードと役割給の構造を示したのが図3である。 (図3) 出典:労政時報 3607 号 42p 役割グレードは全部で 10 段階からなり、S 区分の社員が G1 から G7 までのグレードに、M 区分の社員が G4 から G10 までの役割グレードに配置された。ここで注目されるのは、G4 か ら G7 までのグレードでは S 区分と M 区分の両者が存在することである。これは、M 区分の 社員が必ず S 区分の社員よりも上位グレードに任用されるとは限らないことを示す。役割 グレードはあくまでその時々の役割に応じて変化するものであり、これが従来の職能等級 にみられた積み上げ式の等級決定とは異なり、現在価値あるいは現在の貢献度にも基づい て変化するグレードである。

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【事例3】経営改革を進めるに当たって経営トップがリーダーシップを発揮し、社員との対 話を進めていった企業がある。その過程では人事制度改定についても人事担当役員がワー クショップを主催、社員と議論を重ねながら、情報共有や理念の浸透を図るという手法が とられた。また、経営会議の議案を事前に公開して社員の参加を促し、現場社員とのコミ ュニケーションを図るとともに、会議の席上で価値ある発言をした若手人材を抜擢するな ど、その会議を同時に人材評価の場としている企業もある。さらに、新人事制度の導入に 際し、旧制度の満足度調査をベースに委員会を結成、その委員会を中心に議論を重ねると ともに、早い段階で組合との協議、あるいは共同設計活動を実施した企業も少なくなく、 制度に関して現場の理解を得ながら進めるプロセスは、組織全体に新制度の受容度を高め る方向に確実に働いている。(伊藤忠、ベネッセ、小林製薬など) 伊藤忠商事における制度定着に向けたトップの行動 1997年から3期連続して赤字という危機的な状況にあった伊藤忠商事1998年に 社長に就任した丹羽氏が1999年から①収益構造の改革、②財務体質の改革、③意識・ 経営体制の改革の3つの経営改革を断行していった。改革の一環として、経営層は社員と の対話、勉強会を徹底して実施した。経営のコアとなる考え方、明確なメッセージを打ち 出し、社員との対話を繰り返すことによってトップの経営方針を浸透させていった。また、 年功的な人事体系の弊害、仕事とPAYのアンバランス、人件費の固定化の問題を解決す べく人事制度改革も同時に進めていった。 同社の事例から得る重要なメッセージは、改革の先頭に全役員が立ち、全ての社員に現 状説明(悪さ加減)をすると共に、その先に明るい展望(ビジョン)があることも同時に 共有したプロセスにある。ハードランディングをしなければならない状況での改革におけ る基本原則と考える。 経営改革を進めるにあたっては経営トップがリーダーシップを発揮して、社員との対話を 強力に進めていった。全社社員集会を年2回開催して経営トップと社員とが直接対話する 場を設けたり、現場レベルでは毎週部会・課会を開くことでコミュニケーションを深めて いった。社員との対話を通して、今後の経営のあり方や丹羽社長のプリンシプル「清く、 正しく、美しく」の社員への浸透を図っていった。 その一環として、人事担当役員がリーダーシップを取り、部長等を集めたワークショッ プを行い、会社の経営課題への取組みについて議論を重ね認識の共有化を行うと供に、人 事制度改定の狙いや必要性について、今後のビジョンなどを議論した。このワークショッ プは部門長層から導入して、部長、課長、入社7∼8年目の層まで実施していった。週末 土日を使って1回3時間、参加者100名の勉強会を14週連続して実施した。

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べネッセコーポレーションにおける社員参加型の経営会議改革 ベネッセコーポレーションの人事の基本思想は①個人のチャレンジ・成果が、組織の成 果になっていくことを追求する、②社員の多様性を尊重し、フェアネスを旨とする、③主 体的に成長することを奨励し、挑戦する意欲を支援する、④意欲と能力ある人に機会を提 供する、である。 2003年に森本社長が就任し、経営改革が進められ、会議体のあり方など意思決定の 透明性を高める取組みが行われた。その一つがHMC(ヘッドクオーター・マネジメント・ コミッティ=経営会議)の導入である。 HMCには、取締役、執行役員常務以上は必ず参加するが、議案を事前にイントラで公 開し、議案に関係のあるものは誰でも参加できる。議事録も公開している。さらに、この カンパニー版としてCMC(カンパニー・マネジメント・コミッティ)も実施している。 HMCの議長は社長であり、HMCは意思決定機関ではなく、社長の意思決定をサポート する会議体として位置づけている。誰でも自由に参加でき、意見も述べることもできる(意 見を聞かれ・宿題を出されることもある)が、その意見を踏まえて最終的な意思決定は社 長が行うというスタイルをとっている。 CMCの議長は、各カンパニーのプレジデント(執行役員)である。必須参加メンバー はプレジデント、バイスプレジデント、部長といったカンパニー幹部である。カンパニー のメンバーはもちろん、「他のカンパニーに口出し(支援)せよ」が社長方針であり、他の カンパニーの幹部が参加することも多い。 開催はHMC、CMCそれぞれ2ヶ月に3回程度である。出席者数はカンパニー、テー マにより異なるが、多い会議では100名、少ない会議でも20∼30名が参加している。 HMC、CMCによって、社長と中堅・若手との距離感が縮まった。GAMBA(組織活 性度診断調査)では、HMC、CMCの導入以降、意思決定に関する項目のポイントは明 らかにアップしてきている。 副次的な効果として、意思決定に関わる議論に若手も参画することで、「あの人は発想が ある」というように人材を評価する場ともなっている。それによって、ポジション的にも 引き上げられた人材もでてきている。 小林製薬における制度導入プロセスの改善 2005年に職種を大括りにした「一般社員職群人事制度」の導入にあたって、現場と 経営陣を巻き込みながら新人事制度の構築を行った。以前の制度改定時では、社長と人事 の合意で作った、ほぼ完成された制度を「決まったから守れ」というような押し付け方の 導入になってしまった。社員の意見は反映されず、また経営陣(特にカンパニーの担当役 員)にも、真の理解を得られないままの制度導入になった反省があったからである。 新人事制度構築の進め方としては、以下のようなステップを踏んだ。

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・旧制度の満足度調査から「小林製薬新人事制度のありたい姿」を人事が作成。 ・それをもとに、企画段階から社員代表による委員会を組織し、意見や指摘をもらいなが ら詳細化していった。 ・課題と方向性を経営陣にも提示し、経営陣とのディスカッションを、合宿を含めて4∼ 5回実施し、十分な理解と運用支援を取り付けた。 以上の手順を踏まえることで、旧制度では納得度の低かった役員からの理解を得ることが できた。例えば製造カンパニーからは、被評価者研修の申し出があり、人事部が支援して 実施し効果を上げた。 さらに、組合に早い段階で協議を行った。旧制度では、会社と人事の決定事項を後から 組合に提示していたために、組合は一歩ひいた立場で旧人事制度を受け入れざるを得なか ったが、今回はその反省から、仮格付けの段階から組合に発表し、制度構築の議論に積極 的に参加を促した。 このような「現場の社員・管理者層」「事業を担当する役員層」「組合」との議論を十分に こなした結果、納得感が高い制度導入となり、運用面でも着実に成果を上げている。 【事例4】 年間・半期単位と日常との2種類(2WAY)のマネジメントサイクルを回しつつ、 同時に部下との双方向(2WAY)のマネジメントをも実施している企業がある。そこでは上 司だけでなく被評価者である社員にも2WAYコミュニケーション研修を実施、情報公開や管 理者支援ツールの提供など、総合的な人材マネジメントに取り組んでいる。(NECなど) 管理者の評価能力向上については、部下側からのマネジャー評価制度をはじめ、一次考 課者と二次考課者とによる考課者会議、マネジャーを対象とした組合によるアンケートな ど、評価する立場の上司に緊張感を与える仕掛けを効果的に回している事例、あるいはま た、部門内に複数の課がある場合など、各課の評価者同士が相対評価を行なう会議を実施 し、評価の信頼性を高めるとともにマネジャーのマネジメント力向上に効果を上げている 事例もある。一方、評価者のみならず被評価者に対する施策として、一般社員に役割給を 導入する際、12,000人を対象とする大規模な被評価者研修を行なったケースもある。いず れも、納得感の醸成を目指した施策といえよう。また、研究開発・技術部門では成果主義 的評価が困難であるという課題を抱えている。そうした技術系企業では、塾の形をとった 教育形態やマイスター制度の設置などにより、組織として技能の伝承に努めるだけでなく、 若手技術者の意欲を高め、また育成にも重点を置いた取り組みを展開している例もある。 (NEC、サントリー、ダイキン工業、キヤノン、セイコーエプソンなど)

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NEC コミュニケーションを重視した施策・・2WAYマネジメント制度 この制度のねらいは「個人の目標と組織の目標」の統合にある。そのために上司と部下 が双方向(2WAY)のコミュニケーションを活発に行うように施策を集中している。こ こで上司が求められることは、部下に対して「2WAY(種類)」の「マネジメントサイク ル」を回し続けることにある。一つ目は、年間・半期単位の「目標設定→観察→評価→育 成」のマネジメントサイクルで、二つ目は、日常行う「観察→コーチ」のマネジメントサ イクルである。この日常のマネジメントサイクルは、プロセス評価にも繋がり「評価の公 平・納得性」を担保するうえで大変重要であると位置づけられている。 これを機能させるために4つの支援策を実施している。 ①2WAYの研修:管理者への研修に加えて、入社2年目の社員にも「2WAYコミュ ニケーション研修」(1日)を実施している点にある。上司サイドだけを教育してもコ ミュニケーションが成立しないケースが増えてきているためである。上司や周囲との コミュニケーションの大切さを理解し、伝え方・訊き方・質問等の基本的スキルを教 える。新任役割グレード適用者(管理職)にも2WAYマネジメント研修(2日間) は必須で、考え方の理解に加え、「コーチングスキル」や「チーム内でのコミュニケー ションスキル」を習得する。 ②全社への告知/イベント化:各職場では評価面談実施期間にあたる時期を「2WAY コミュニケーションウィーク」として設定する。人事部では「2WAYコミュニケー ションウィーク」の実施を、DASHBOARD(社内向けHP)、人事ポータル、ビ ジネスユニット(BU)の人事部門を通じて全社に徹底通知する。また先の2WAY 研修の修了者(管理者1300名、一般社員700名)にEメールで呼びかけている。 ③情報公開 面接期間中は能力・キャリアレビューの本人と上司記入状況について、BU単位で数値 化して人事ポータルに掲示しており、全員が閲覧可能である。併せて、面談の実施につ いても個人単位で管理し、進捗状況のおもわしくない者については、BUの人事が上長 に対して面接励行を促している。 ④管理者を支援するマネジメントポータル 人事ポータルの中に管理者が利用できる「マネジメントポータル」を新設した。人事管 理、就業管理、健康管理、職場風紀、トラブル対応などの情報、FAQを掲載している。 ねらいは、管理者に対する情報提供(部下のマネジメント支援ツール)である。いざと いうとき、まず何をすればよいのか(初動対応)を項目ごとにまとめたものである。

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© NEC Corporation 2005 24

2WAYマネジメントサイクル

2WAYマネジメントサイクル

目標設定  観 察   コーチ   評 価   育 成  2WAYマネジメントは、年間・半期単位の人事制度の時期だけではなく、日常から、 部下からの報告・連絡・相談と上司からの観察・コーチングがあってはじめて機能する。 2WAYマネジメントは、年間・半期単位の人事制度の時期だけではなく、日常から、 部下からの報告・連絡・相談と上司からの観察・コーチングがあってはじめて機能する。 能力・キャリアレビュー 業績レビュー 日常の報告・連絡・相談 観察・コーチング 年間・半期単位の マネジメントサイクル 日常の マネジメント サイクル サントリーにおける管理者評価の向上策 1)マネジャー評価制度 マネジャーの役割を果たしているか否かを、部下側が評価する。「役割評価項目」と同一 項目で、部下は上司について5段階評価を行う。さらに「尊敬できる点・改善して欲しい 点」について自由記入欄を設けている。マネジャーの上司(ex.部長)は、その結果を 人事考課時の役割評価の参考とする。部下からの評価を課長自身が見ることはない。部 長はデータに基づき、その内容を自分の言葉に翻訳して課長に伝える。上司に対するネ ガティブなことを記入したとしても、記入した本人が責められることはない。この制度に より年4回の面接実施率を100%に近づけている。マネジャーに対し、部下と真剣に向 き合い、人を評価することへの勇気と責任を持たせると同時に、マネジャー自身の行動に 自己変革を促している。1998年の導入当初は、部下に気をつかう人ばかり増えないか との危惧があったが、導入後7年経過して批判は出ていない。考課結果の納得度は約80% とその効果が証明されている。 2)考課者会議 二次考課での評価修正について、一次考課者が責任逃れをし、部下に対する査定プロセ スと最終決定に対して説明ができないことは、フィードバックプロセスを重視する同社で は重要な問題であり、その対策として「考課者会議」が生まれた。 各部門の考課者会議には、一次考課者と二次考課者が全員参加し、議論により評価結果 のすり合わせを行う。そこでの議論を通じて一次考課者は自分の評価の妥当さを主張し あう。その結果得られた部門による考課案は全社での調整にかけられるが、標準的な分

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布に納まっている限り結果が覆ることはほとんどない。目標管理による成果確認とコン ピテンシーによる役割行動を検討項目とし、考課者会議での議論によって、それぞれの判 断基準が平準化していく。 運用面におけるポイントとしては人事部が現場の判断を尊重することにある。考課は人 事部が行うものではなく、現場がルールにそって決めるスタンスを貫いている。また会議 は、マネジャー間の評価結果のすり合わせが主となるため、半日から1日と十分な時間を かけている部門が多い。 これらのプロセスの中で、一次考課者の評価能力が鍛えられ、標準化される機能も併せ 持つ。 3)組合による面接チェック 年間を通じ4回(目標設定、中間、振返り、フィードバック)の面接をさらに確実にす るため、毎回その実施状況について、組合側がアンケートを実施している。この「面接チ ェック」は、マネジャーに緊張感を与え、部下と真剣に向き合うことを後押している。 設問例は以下のとおりである。 ・上司より所属部署の方針・目標、あなたに期待する役割について、事前に提示を受けま したか。(書面又は口頭) ・面接前日までに業務計画書を提出しましたか。 ・あなたのマネジャーはしっかりと、事前準備をしていましたか。 ・目標そのものだけでなく、それを達成していく方策・スケジュールについても納得でき るまで十分に話し合いましたか。 このように、面接当日のことだけでなく、事前準備や十分な情報提供を評価の対象として いる点は重要である。 このアンケートの実施と集計は組合が行い、その結果は人事部と労使協議会に報告される。 アンケート記入については、面談実施のお願いと共に、人事と組合の両者からイントラで 流れる。人事側のマネジャー評価制度とともに、ダブルチェックの体制がとられている。 ダイキン工業における評価の信頼性向上施策・・寄り寄り会議 「寄り寄り会議」とは、評価のプロセスの中で、評価者同士がお互いの被評価者考課を 持ち合って、相互に相対評価を行い最終決定を下す仕組みのことを指す。同社では、評価 において人事考課表や昇格試験がなく、「総合的な人の能力を直属の上司、その上の上司、 さらに他のマネジャーとも協議する複数の目による評価」に基づいた、完全な「相対評価」 を行っている。例えば1つの部に3つの課があれば、この3人の課長と部長が会議に参加 して、部内の社員の評価を全員で行う。目立つ人材だけでなく、目立たずとも着実に成果 を上げる人材を組織の中に埋もれさせないようにするためである。また、目立つ人材は高 い評価をつけがちになるので、同年代の他部門の人材と比較して「本当はどっちが上か」 ということを議論して決めている。その議論は、時に「自分の部下が一番優秀」となって

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互いに譲らぬ状態を招くが、「差がつけられないのであれば全員上げずに据え置く」という 考え方に基づき、全員が納得できるまで議論を闘わせている。 人事考課表を使わない理由は3つある。第一に、「考課表を作成する時間があれば、日頃 の部下の個別支援にあて、対話に振り向けるなどして業績向上をはかるべし」、という合理 的な理由。第二に、評価制度の本来の目的は人材育成であるにもかかわらず、「評価」自体 が目的化してしまうという懸念から。そして第三にして最大の理由は、複数の目で評価す るこの「寄り寄り会議」が機能しているからである。 「寄り寄り会議」は、評価会議の位置づけと同時に、ラインマネージャーのマネジメン ト力育成の場面ともなる。上司が、自分の部下の評価を持って順番をつけるのだが、自分 の部下に「何をさせたくて」「何をやらせて」「何ができた」のかが説明できなければなら ない。年3回(賞与評価を年2回、昇格評価を年1回)行われる「寄り寄り会議」は、管 理者にとって相当のプレッシャーになり、マネジメント力向上の役割を果たしている。 セイコーエプソンにおける現場リーダーの育成塾 セイコーエプソンでは、2002 年 11 月にものづくり塾と先端技術塾を創設して、製造現 場の「ものづくりのノウハウと遺伝子」を見えざる資産として継承する取り組みを始めた。 ものづくり塾は効率化道場、設備保全道場、技能道場の3つからなる。ここでは、匠の技 の伝承とともに、人材育成にも重点を置いた取り組みが成されている。2003 年からは技能 五輪へ再参戦しているが、この特別合宿では 30km のマラソンによる体力づくり、般若心 経の写経、座禅修行なども行われる。この特別研修を経て技能五輪を経験した若手技術者 には、エプソンのものづくり魂の伝道師としての期待がかけられており、長期的な精密加 工技術・技能の競争力強化の基盤となっている。また、エプソンにおいても、技能伝承に 動画を含めた技の形式知化が進んでおり、e-マスター化と名づけている。

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【事例5】 一生懸命頑張ってくれた人材にどう報いるか、「ほめる」ことを基本としてほとんど費用 をかけずに社員のモラールアップにつながるさまざまな施策を展開している企業がある。 社長からのメールなど、大企業では現実的に困難な方法もあるが、その発想自体は各社の 参考になると思われる。(小林製薬など) 小林製薬 非金銭的な手法の併用によるモチベーション向上 同社が実施するトータルリワードの施策のひとつは提案制度である。同社では新製品に 対する「アイデア提案」、日常の業務に関する改善・製品等の改善に関する「改善提案」、 ベストプラクティスを共有する「青い鳥カード」などさまざまな「提案制度」があり、年 間に3万件もの提案が寄せられている。さらに優秀者は社内ネットワークで全員に紹介さ れるほか、社長との夕食会出席、本社ロビーでの表彰者プレートの掲示などが実施されて いる。提案された内容に対しては、回答・評価がフィードバックされており、決して提出 されっぱなしにしていないことも重要な点である。 また「ホメホメメール」というユニークな取組みも実施されている。これは優れた業績 や行動に対して社長から直接メールが届くというものである。同社では「提案制度」・「ホ メホメメール」を総称して「信賞必誉(しんしょうひつよ)制度」と呼んでいる。 経営トップとのコミュニケーション施策も同社が力を入れているトータルリワード施策 である。具体的には、「LA&LA(Looking around & Listening around)」として実施されて いる会長・社長の現場訪問と社員とのフリーディスカッション、カンパニー方針の徹底と 現場とのディスカッションを目的に実施される「カンパニープレジデントワークショップ」、 グループ管理職が参加して年に1回開催される「グループ経営方針発表会」などがある。 たとえば「LA&LA」では会長・社長は3年間で延べ120 箇所を訪問し、2000 人がフリ ーディスカッションに参加するなど、社内に浸透した施策となっている。 別の取組みとしては、全員参加でコーポレートブランドを強化しようという「コーポレ ートチャンピオン大会」も注目される。「コーポレートチャンピオン大会」とは、小林製薬 グループ全企業の約 270 部署がコーポレートブランド向上のための一年間のアクションプ ランをエントリーし、期末にカンパニー単位で予選会を実施して成果に対する評価を行い、 予選会を通過した部署が経営方針発表会で行なわれる本選でプレゼンテーションを行なう というものである。

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第3章第Ⅱ節

【事例1】 個人の成長が会社の成長に不可欠であるとして、人材育成に注力している企業 事例がある。ベースには企業独自の価値観・行動規範が据えられ、その達成度合と業績の 両面で人材の評価が行われる。評価はマネジャー個人による属人的なものではなく、評価 システムとして構築された機能を通じて実践され、その評価結果が処遇や教育につながる 仕組みである。特に、ビジョンを示し、それを実現するリーダー、また変革を起こし、変 革を担うリーダーの育成に重点を置くことにより、変革を促進し、学習する組織の創造を 目指していることも特筆に値する。ポイントとしては、トップの強力なリーダーシップの もと、企業独自の価値観・行動規範を徹底的に浸透させていること、またそれに基づき評 価・処遇・育成という一連の人材マネジメントを展開していること、そしてこうした基盤 に他社との差別化要因である特性を加えることにより、企業としてのビジネスの成長と個 人の成長双方を目指していることなどを挙げることができる。(GEなど) GEにおけるバリューを組み込んだ評価体系 GEでは、人事評価を業績(パフォーマンス)と、高業績を持続的に実現するためにG E社員に求められる行動様式をまとめた「バリュー」という2つの観点から行っている。 1年間の業績を「期待以上」「期待通り」「期待以下」の3段階、バリューについても「高 い」「普通」「低い」の3段階で評価、このマトリックスからなる9ブロックで評価を行っ ている(最高評価=A1:図表参照)。

最終的に9ブロックによる評価は、Top Talent、Highly Valued、Less Effective の3段階 評価に分類される。Top Talent に分類された社員は、プロモーションの対象となり、積極 的に活躍の場、キャリアアップの機会が提供されていく。Less Effective と評価された社員 は、業績やバリューが目標もしくは期待を下回り、評価が厳しかった旨が本人にはっきり と伝えられる。その後、業績向上のためにOJTでのコーチングや定期的な業績のレビュ ーなど、詳細な改善策が図られる。その後の改善状況が望ましくない場合には、当該社員 の能力がより発揮されるような仕事への配置換えがなされたり、場合によっては退職の対 象となるケースもある。Less Effective 社員に対して、このようなアクションをとっていな いマネジャーは、マネジャーとしての仕事を果たしていないとみなされる。

3段階評価は、おおむね、Top Talent(20∼30%)、Highly Valued(70%)、Less Effective(0∼10%)の割合で推移している。

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B2

A2

B1

A1

9ブロック:実績/バリューでの総合評価 バリュー パ フ ォ ー マ ン ス 期 待 以 上 期 待 通 り 期 待 以 下 高い 普通 低い

Top Talent Highly Valued Less Effective

【事例 2】 一部の経営リーダーの育成に偏らない、「どこでもリーダー」育成を果たしていく には、現場レベルでそれぞれ責任を担う個々人の意識改革がまず求められる。その取組みにおい て、職務役割給などの制度導入に伴い、それぞれに期待される役割に対する強い自覚を促し、結 果として「自立型の人材」育成を目指す企業、あるいは一律の人材像ではなく、事業に直結した 職種の特性に応じた多様な人材育成に取り組む企業、等が研究先として挙げられる。 個人の望むキャリアと企業の求める戦略的部門の要員強化とをマッチさせる支援センタ ーを設置し、社内公募制度等の運用を通じて、現場レベルでの人材確保をきめ細かくサポ ートしている企業がある。その背景として、実力主義をベースとした長期雇用を掲げてい ることも、日本企業としての文化を堅持した、納得感を大切にした運用という意味で特徴 的な企業事例であると云える。又、次代を担うポテンシャルの高い人材を、ある時期に機 能横断的に異動させる取り組みをベースとして、マネジメント志向の人材と、各機能スペ シャリスト志向の人材の見極めと育成を並行して行うことを目指す企業も増加している。 かつては日の目をみなかった複線型人事を本格的に具現化しようという流れの中で、経営 的なコアリーダーだけに留まらない「どこでもリーダー」育成を果そうという経営方針が 見て取れる。(キヤノン、日産など)

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日産自動車におけるトップタレントの発掘・評価・配置・育成

NAC は 2000 年にスタートしたもので、CEO、EVP(Executive Vice President)、人事 担当役員から構成されており、月に 1 回開催され、グローバル規模で特定された主要ポス トに対する後継者のプラニング、有能人材の特定などが行われている。NAC で行うグロー バル主要ポストに対する後継者プラニングでは、現在約 150 の主要ポストがグローバルに 特定されており(主要ポストも適宜見直しが行われている)、ストレッチした任用を行って いる。

なお、NAC には前述の CEO をメンバーに含めたコーポレート NAC の他にリージョナル NAC とファンクション NAC がマトリックス上に設定されており、上位のコーポレート NAC とともに人材の発掘を行っている(図1)。

(図1)

2 番目の GET(Global Executive Training)は次世代リーダー育成を目指した2年間のコ ースであり、2000 年にスタートしている。このコースは集合研修と仕事における実践の両 者を組合せたもので、1年目を気づき(awareness)、2年目を適用(application)のステ ージとして設定している。GET の全体プロセスは 4 つのステージからなっている。それぞ れのステージの目的は、①アセスメント=ビジネスシミュレーションを通じた強み・弱み の把握、②コンピテンシーの開発→経営者としての必須の知識・見識の習得、③アクショ ンラーニング→実践を通じたコンピテンシーの開発、④コンピテンシーの適用→日産のビ

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ジネスシミュレーションを通じてコンピテンシーの開発状況を確認、である。GET には毎 年50 人が選抜され、これまでの GET 受講者のうち 20 人がコーポレートオフィサーのポジ ションについており(全コーポレートオフィサーの約40%)、また GET 受講者の約 12%が グローバル主要ポストとして認定された 150 のポジションに任命されている(全グローバ ル主要ポストの26%が GET 受講者)。 3 番目のキャリアコーチは 2003 年にスタートしたもので、キャリアコーチの役割は大き く分けると、①Executive Resource Management=キーポジション(グローバル)の最適 人材配置をトップに提案すること、②Coaching=管理職層のコーチングおよび能力開発を 支援すること、③Advisor=組織・マネジメント・教育プログラムおよび HR システムの改 善に関する提言をすることの3つがある。事業部長クラスから選ばれ5名で構成され担当 する人財が異なる(エクゼクティブ担当、管理部門担当、R&D担当、マニュファクチャ リング担当、マーケティング担当)。その使命を達成するため、CEO直属でグローバル全 ての会議体に自由に参加できる権限を有している。 【キャリア形成に係る先進事例(富士ゼロックス、NEC、花王、日産、キャノン等)】 花王「職群に応じた評価・処遇制度の設計・・・フィールド人事」 個人の役割や成果、コンピテンシーの発揮状況を正確に評価するためには、評価項目、 評価プロセス、評価結果などに関わる決定をより現場に近い場所で行うことが重要という のが、フィールド人事導入の目的である。一般職に対するフィールド別の役割等級「職群 制度」の導入と同時にライン人事による人材マネジメント体制が作り上げられた。役割等 級導入時に部門の人事機能をさらに拡充・発展を目指してフィールド人事の体制が確立さ れた。 14 のフィールドに人事担当を配置し、一般職への役割等級導入時には各フィールドの担 当者が中心となって職種・職群、各職群に対しるコンピテンシー要件などを設定した。さ らに役割等級導入以後も、より適応した制度・運用を目指してフィールド内の職種・職群・ コンピテンシー要件等の見直しを継続している。さらに研究開発、生産、販売などの主要 部門には複数の人事担当者が配置され、より部門の独自性をもった人事施策を展開してい る。またフィールドごとに配置された人事担当部長・人事担当者と本社人事部は、月1回 人事会議を開催し、全体の人事方針のすり合わせや、フィールド相互の情報交流などを行 っている。

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役 義 た の 割主義・成果主 を実現していく めには、個々人 役割や成果の実 態を知る人たちが決定していくことが必要であり、その点で花王のフィールド人事の取り 組みは役割主義・成果主義を標榜する他の企業にとっても、重要な示唆を与える取り組み といえるだろう。激しく変化する環境の中で効果的な能力開発を実現していくためには、 人事のライン化・分権化が必要というのが、花王の認識であり、それを実現したのがフィ ールド人事といえる。 基幹層 リーダー層 担当層 Field A Field B Field C

∼ P1 P2 P3 P5 P4 全社共通の役割制度 フィールド別役割等級制度 (職群制度) 職務(役割)/成果に基づく処遇 職 務 ( 役 割 の 大 き さ ︶ ※花王からの提供を引用 基幹層 リーダー層 担当層 Field A Field B Field C

∼ P1 P2 P3 P5 P4 全社共通の役割制度 フィールド別役割等級制度 (職群制度) 職務(役割)/成果に基づく処遇 職 務 ( 役 割 の 大 き さ ︶ ※花王からの提供を引用 日産自動車におけるコーチング研修の効果測定 同社ではミドルマネジメントの開発を進めるにあたり、3つの研修を必須とした。そのう ちの一つが「コーチング研修」である。その狙いは管理職が個人の自発的な行動を促進し、 個々の成長と目標達成を支援するコミュニケーションスキルを学ぶことにある。同社では コーチング研修の考課測定が以下のとおり実施されている。カークパトリックモデルを活 用して、上司の研修前後の「行動変化」について、3 名の部下が 20 項目からなるWEB上 のアンケートで7 段階評価をおこなっている。20 項目のうち 19 問が研修による行動変化 の期待項目を聞き、1 問は総合評価「上司は部下の自発的な行動を引き出しているか?」と いう構成である。別紙の表にあるように研修前と比較して行動変容を定量的に把握するこ とに成功している。さらに総合評価に大きく影響する行動(19 の設問項目)を相関によっ て特定し、さらなる改善に結びつける努力を続けている。 NECにおけるキャリア開発支援・・ライフタイムキャリア・サポート ねらいは「個人と組織の依存的な関係を見直し、社内外の様々な場で生涯にわたり専門 性を発揮するためのキャリア支援」にある。 これを機能させるために3つの支援策を実施している。 ・直属上司が解決できないキャリアの問題などに関しては、個々に相談できるキャリア アドバイザーを置いている。キャリアアドバイザーは現在8名おり、希望者を公募し

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て専門教育を施して育成した。 ・キャリアに関する情報提供や研修を内定時からスタートしている。内定時から入社2 年までに3度のキャリアに関する研修が用意されている。内定者にキャリア形成の重 要性を、新入社員にはキャリア理論とキャリア開発の重要性(1H)を、2年目の上 期には1日研修を行い、キャリアデザインを日常に落とし込んでいる。2年目研修は 先に紹介した2WAYコミュニケーション研修(1日)とセットし2日間の通学コー スになっている。その他30歳、40歳、50歳の節目にはキャリア研修を行ってい る。 ・キャリア小包は家族と共に考えて欲しいという意味であえて自宅に送付していること が特長的である。2005年4月からの試みで、35歳、45歳、55歳の誕生月に、 各ステージに有効な情報(バースデーカード、キャリアレター、推薦図書、研修案内 等)をセットして自宅に小包を送っている。

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第3章第Ⅲ節

【事例】 求める人材像を定義し、それに基づく総合的な人材マネジメントを実践しよう とする企業は着実に増加の途上にある。例えば、人事制度改革を行う前に、経営理念に立 ち返って人材育成の経営方針を、社外ステークホルダーの視点も広く交えながら明確化し、 その方針に叶う昇進・昇格基準や成果行動的な評価基準を設計する、というような取組み方 の企業例が当てはまる。 加えて、その基準をただ明文化されたものにするだけでなく、その人材像と要件を満た すこと、体現することによる効果に着眼し、現場マネジメントに対してさまざまな機会を 捉えて“刷り込み”を試みようとする企業も出てきている。(富士ゼロックス、NEC、花王、 日産など。外資ではGE、IBMなど)】 花王ウェイと人材マネジメント 同社は「花王の基本理念」(1995 年策定)をベースに、新たに「花王ウェイ」を制定した。 「花王ウェイ」は使命、ビジョン、基本となる価値観、行動原則から構成される。使命に 書かれているように「心をこめた“よきモノづくり”」を基本とし、価値ある商品とブラン ドの提供を目指している。そのために、「全員、全部門の創造性と力を結集」することが基 本となる価値観として位置づけられている。これは花王の人材マネジメントにも反映され ており、行動原則にある「現場主義」「個の尊重とチームワーク」の実現を人事制度、人材 開発制度が強力に支援している。 「現場主義」から抜粋 ・ 私たちは、互いの仕事の現場を知ることで、組織力の強化およびグループの一体感の 醸成を図ります。・・・現場からの一体感 ・ 私たちは、生活の現場と、日々の仕事の現場から生まれる発想を大切にして、商品と 仕事の改善、革新につなげます。・・・現場からの発想 「個の尊重とチームワーク」から抜粋 ・ 私たちは、日々の仕事の熱意ある実践を通して自己の能力を高め、高い成果を追求 します。・・・個の能力の発揮 ・ 私たちは、自由闊達に意見を交わし、情報を共有し、チームとして力を合わせます。 ・・・自由闊達なコミュニケーション 花王の文化・風土として、社員は個々に役割の大小はあっても、人間として平等である という価値観と、社員の自由闊達な雰囲気が尊ばれていた。そのためトップからは「おご らない姿勢」と「組織間の壁を作らないこと」が繰り返しメッセージとして伝えられてい

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る。トップは「花王ウェイ」の伝道者として、研修や現場の会合を積極的に活用し、花王 の文化、風土を語り伝えている。 また花王の人材マネジメントは人材育成を最大の使命としている。3 つのトレーニングポ リシーが以下のように定められている。 1)意欲と能力のある人材に質の高い教育機会を提供する 2)個人のキャリアステージに応じた基本教育をタイムリーに実施する 3)自ら学ぶ姿勢を大切にし、自己啓発を支援する バブル崩壊時にも業績が順調に推移するという環境にも恵まれたが、人材育成への継続的 な投資は同社のポリシーを裏付けている。 花王では2 年に一度、グループ全体で社員意識調査「Find」を実施し、「組織の機能状況」 「諸施策の浸透度」「基盤となる強み」「満足度」を測定すると共に、人事部門、人材開発 部門が現場に足を運び、絶えず人材マネジメントの施策の検証、改定に繋げている。 現場を重視する同社の最大の特徴は部門人事への人事・人材開発機能の移管である。詳 細は本文に記述されているが、14のフィールドに配置された部門人事の機能発揮が同社 の成果主義人事制度の定着や現場人材の育成に果たした効果は大きい。 総括として、「花王ウェイ」という軸がトップから現場を貫き、これを「トップの行動」、 「本社人事と部門人事の協調」「継続的な人材開発」の3つの柱がこれを支え、定着し、経 営目的を実現している。 GEにおける人材の選抜・任用・情報管理 同社ではM&Aは成長の有力なドライバーである。GEの文化を早急に浸透させること、 求める人材像を明確にしてGE全社での人材交流・活用を図るといった戦略に対応するた めバリュー(高業績を持続的に実現するためにGE社員に求められる行動様式)は重要な 役目を果たす。バリューの理解と具現化が昇進の重要な用件として認識され、巨大な組織 に軸を通している。同社では人材の評価を「業績」と「バリュー」の2 軸で行う。 1)人と組織を徹底レビューするセッションC 同社では、毎年セッションCという人と組織のレビューを行っている。セッションCの 対象社員は、Professional バンド以上(≒総合職以上)である。同社は2005年7月、事 業区分を11事業から6事業に変更したが、この6つの事業の中に合計40のサブビジネ スがあり、このサブビジネス単位でセッションCを行う。 セッションCは通常、部門長やビジネスリーダー(事業会社の社長など)とHRリーダ ーがその上部組織のビジネスリーダーへプレゼンテーションを行うという方法で実施され ている。 ローカルのビジネスリーダーとHRリーダーは、アジアのビジネスリーダーとHRに対 してプレゼンテーションを行う。アジアのビジネスリーダーとHRは、グローバルに対し

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てプレゼンテーションを行う。ロールアップと呼ばれるこのプロセスは、最終的にはCE Oのイメルト氏までつながっており、セッションCの資料のテンプレートにはイメルト氏 が問いたい強化テーマ(シックスシグマ、ダイバーシティなど)が毎年反映されている。 なお、セッションCのプロセスは1月下旬にはじまり、最終的にCEOのイメルト氏に まで到達するのは4月になる。 2)セッションCにおけるビジネスリーダーの役割 セッションCに時間を割いて質の高いプレゼン、説明責任を果たすことは、同社では部 門長やビジネスリーダーとして当然のコミットメントである。部門長やビジネスリーダー は人事制度も熟知している。

プレゼンテーションでは、とくにTop Talent について「(Top Talent の)A氏について どう思うか」というレベルの質問もなされ、部門長やビジネスリーダーは、これ対して説 明責任を果たさなければならない。セッションCのプロセスの中で、昇進や本社の研修に 誰を参加させるかも決まる。セッションCの場を使って、優良な人材の昇進や本社研修へ の派遣についての承認をいかに得ていくかが組織長の大きな役割である。同社では、教育 研修も実力主義、成果主義の発想で行われており、教育は投資価値を判断して行われる。 社員の評価やセッションCなどHR関連の取組みに関して、各部門長に対しては部門サ ポートHR(レップ)が、ローカルのビジネスリーダーに対してはローカルのHRリーダ ーが支援を行う。説明責任は事業サイドにあり、HRは人事制度・評価制度の理解促進や 適正な評価を行うためのアドバイス等プロセスのファシリテーションを行う。レップはH Rリーダーの部下であるが、部門長に対してサービスを行う(部門長=クライアント)。 3)人事考課資料−EMS セッションCの基礎資料にもなるEMSは、社員個人が年間成績をまとめるための社内 レジュメであり、自分の希望するキャリア、実績、長所・短所等を記入する。EMSは1 2月から1月にかけて本人が作成して直接上司に提出する。直接上司は自分の評価を書き 加え、それを自分の上司(社員から見てOne-over-one manager)に提出する。One-over-one manager がレビュー、承認した評価が最終評価となる。One-over-one manager が承認で きない評価の場合はレジュメを直接上司に差し戻してアセスメントのやり直しを行わせる。 EMSは、WEBで入力する仕組みになっている。 EMSにより本人の自己申告、直接上司のアセスメントがなされ、評価が完了した後、 本人に対して2月末∼3月にフィードバックが行われる。フィードバックは全員必須であ り、1人1時間の面談を行うことをガイドラインとして定めている。 同社はフラットな組織体制をとっているので、ビジネスリーダーの直属の部下は20名 程度である。しかし、One-over-one manager のルールに従って評価を行うために、事業に よってバラツキはあるがビジネスリーダーは3月末に100名∼200名のEMSを読む

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ことになる。同社では、これもビジネスリーダーとしての当然の役割である。 EMSの作成に合わせて360度評価を行って、実績や長所、短所について他者からの インプット(コメント)を受けるようにしている。360度評価の結果については、直接 評価に反映するのではなく本人、上司の参考資料として位置づけている。 IBMにおけるバリュー(組織ビジョン)の決定プロセス・・バリューズジャム IBMは、社員のうち約半数が最近5年間で入社した者となっており、近年はPwCC などの大型買収もあり、価値観の再統合を行うことが緊急の課題となっていた。価値観を 再発見するために、同社では、2003年7月にバリューズジャムというイントラネット フォーラムをワールドワイドで実施した。バリューズジャムは3日間行われ、CEOのパ ルミサーノ氏を含めて5万人の社員がディスカッションを閲覧し、1万件以上の意見が寄 せられた。初日は現状に対する批判的な意見が大半であったが、これが一段落すると建設 的な議論へと変わり、IBMが価値観として継続的に重視すべきものは何であり、改める べきものは何であるかが議論された。 バリューズジャムを通じて出された膨大な意見を集約し、パルミサーノ氏は、「お客様の成 功」、「イノベーション」、「信頼と責任」からなるIBMers Valueを提示した。 IBMにおけるトップ主導によるスキルコミッティー キャリアパスに沿って社員自らがスキルを高めていくとともに、会社として人材育成の仕 組みを整備していくために、人材育成に関する最高機関である全社スキルコミッティーと いう委員会(議長:大歳社長)が設けられている。 全社スキルコミッティーの下部組織として営業系スキルコミッティー、技術系スキルコ ミッティーを設けている。ICP(プロフッショナル認定制度:IBM Certified Profession) は職種ごとで運営されており、複数のプロフェッションにまたがる問題の解消を図る横断 的な機能として、営業系スキルコミッティー、技術系スキルコミッティーを位置づけてい る。技術系スキルコミッティー (議長:宇田執行役員)は月に2回開催され、プロジェ クトマネジメント、ITアーキテクト、ITスペシャリスト、コンサルタント、研究開発 職など技術系職種のプロフェッショナル・リーダー、人事、研修、経営企画、若手エンジ ニアを代表して Japan Technical Council の事務局が参画している。

同社では、キャリアパスを育てる経路は、1つは所属長であり、もうひとつはコミッティ ーであると捉えている。同社は基本的に縦の機能が強い組織であり、それゆえ横同士のコ ミッティーを意識的に重視している。スキルコミッティー以外にも、職種単位、事業部単 位などさまざまなコミッティーが設けられている。例えば、ITスペシャリストのコミッ ティー、キャリアを考えるコミッティーなどがあり、そういったコミッティーという場自 体を育成機会としているのである。

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日産自動車における能力評価体系の導入 同社では2004 年に一般社員にも役割等級制度を導入した。評価に関しては、コンピテン シーと業績の2つの面から行われることになった。コンピテンシー評価は月次給に、業績 評価は賞与に反映される。一般層では特にコンピテンシーが重視されており、図 1 に示し たように個々の人材マネジメント機能を統合する尺度として用いられており、コンピテン シー評価に基づいて、採用、異動・配置、昇進、教育などの個々の人材マネジメント機能 が実行されている。 (図1)

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一般層のコンピテンシープロファイルは「共通コンピテンシー」「役割等級別コンピテン シー」「専門スキルコンピテンシー」の3 つの領域から構成されており、共通コンピテンシ ーは全社共通で設定された「尊重すべき価値や行動の基準」を具体化したもので、部課長 層の貢献価値項目をベースに「利益志向・顧客重視・ビジョンの共有&グローバル思考・ 革新性&柔軟性・チームワーク」の5つが設定されている。役割等級別コンピテンシーは 各部門・職群ごとの各役割等級で必要とされる「成果に結びつく能力や行動の基準」とし て分析力、課題設定力、判断力など全24 個のコンピテンシーの中から各部門に重要度の高 いものを選択して設定される。専門スキルコンピテンシーは、各部門・職群・職種ごとに 必要とされる「成果に結びつく専門スキル(知識・技術・ノウハウ)の基準」が設定され ている。このように3つの領域から構成されているコンピテンシーを組み合わせて、最終 的には職種ごとに 150 種類のコンピテンシープロファイルが策定され、このコンピテンシ ー評価基準に基づいて月次給が決定する。

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総合的な人材マネジメントの実践の先進事例

【富士ゼロックス株式会社】

1.企業理念

活力ある人材・組織を実現するために、社員が面白さを感じる仕事・環境作り、チャレ ンジを促す風土の形成を重視している。「おもしろい」こそが会社の成長エンジンである と認識。そこで次の2つの軸を設定。

①私たちが目指すもの=New Work Way という考え方 ・知の創造と活用を進める環境の構築 ・世界の相互信頼と文化の発展への貢献 ・一人ひとりの成長の実感と喜びの実現 ②私たちが大切にすること=「強い」・「やさしい」・「面白い」 お客様の満足 環境 高い倫理観 科学的思考 プロフェッショナリズム 連携 多様性の尊重 信頼と思いやり 楽しむ心 冒険心

2.人材マネジメントの基本的スタンス

(1)現状認識(出発点) 職能資格制度を廃止し、役割等級制度を導入したのは99年。その背景としては、①安 定的な経済成長が望めないことから、強固な利益構造の再構築・構造転換が必要になって きたこと、②IT(情報技術)産業を取り巻く技術や市場の変化が激しく、より独創的な 発想やこれまでとは違った知識・スキルが求められること、③中高年層の増大が続くこと により、世代を問わない人材活性化策が必要となり、仕事を通じた「おもしろさ」を醸成 することが必要になったこと、が挙げられる。 こうした背景をもとに、適材適所を進める一方で、やりたいことができるように仕事・ 役割を明確にし、成果に応じて時価主義で処遇を決める、あるいはやったことが報われる ような制度の構築を目指した。 (2)スタンス 経営理念・哲学の中にもあるように、知の創造と活用を勧める働き方の提案こそが同社 の目指すところであり、New Work Way 活動によって自社にも個の尊重やダイバーシティ(多 様な人材の活用)などのあり方を問い続けている。これらの取り組みは他社と比較しても 群を抜いて早く、その実効を証明するように数々の公的な賞が贈られている。同社も成果 主義人事制度を導入したが、早期退職制度などの人員削減を実施することなく、かつ人材 育成を重視したものになっている。労使という対立ではなく、相互の信頼感に基づいた制 度導入、運用が行なわれているのは、まさに経営理念・哲学・ビジョンの共有化によるも

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のであろう。特に現在同社が取り組んでいる 50 歳代社員の活性化を目指す先進的な施策は、 そのスリム化しか眼中にない企業にとっては一考すべきものがある。人にやさしいだけで なく、同時に強い会社でなければならず、その両立は一朝一夕に成るものではない。 そのために同社の人材マネジメントも常に改善を目指し努力を続けている。

3.求める人材像

新人事制度導入に併せて、「将来に向けて富士ゼロックスが求める人材像」を以下のとお り提示した(99年)。 ①高い専門能力と価値創造力 −高い専門能力を通じて、経営戦略の具現化を担う、価値創造に貢献できる人材 ②キャリアコンピテンシー −目指すコンピテンシーを見極めることができ、更に伸ばすために自ら手を打てる 人材 ③エンプリアビリティの向上 −社内だけでなく、広く世間一般で通用する能力を持つ人材

4.総合的な人材マネジメントの実践

(1)個を生かす人事の実現を目指す 同社では企業ビジョンとして「よい会社構想」を掲げている。「よい会社構想」とは、株 主利益とお客様満足によって「強い会社」を実現し、同時に社会貢献を通じて「やさしい 会社」を、従業員満足を通じて「おもしろい会社」を実現するというものである。つまり よい会社であるためには、強いだけでは不十分であり、やさしい会社であり、おもしろい 会社でなければならないというのがこの「よい会社構想」の意味するところである。 このように強い会社であると同時に社員にとっておもしろい会社であることを追求する 同社では、人事面では従来から社員個人に注目し、個を生かすための施策を追求している。 たとえば同社では評価に関連する面談を年に 4 回、人材開発に関連する面談を年に 1 回義 務づけており、最低でも年に 5 回の面談が上司と部下の間で行われている。個を生かす人 事の実現には、まず十分なコミュニケーションが必要というのが面談重視の姿勢につなが っている。 4 回の評価に関する面談については、半年のサイクルで目標管理に連動した役割遂行評価 が実施されており、このために目標設定面談と評価面談が年に 2 回ずつ行われている。こ れに人材開発のための面談を含めて年 5 回の面談が、各 1 時間程度で確実に実施されてい るのは、日本の企業では少数派といえるのではないか。当然ながら面談の実施のみならず、 内容やプロセスについても、人事部や組合が実施するモラルサーベイなどの種々のアンケ ートや日常のコミュニケーションなどを通して情報が収集されており、不十分な面談内容

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や部下の納得度が低い管理者に対しては、改善が指導される。 モラルサーベイについても同社の取り組みは特筆すべきものがある。同社では 1978 年か ら実施しており、1978 年から 1996 年までは 2 年に 1 回、1999 年からは毎年実施されてい る。その目的は「社員1人ひとりの会社や仕事への意識・価値観をとらえ、今後の経営目 標・施策に反映させる」ことにあり、企業の成長は個人のチャレンジを可能にする風土に よって可能となるという同社の理念に基づく施策である。 モラルサーベイは、「コア・モラール」、「総合満足度」、「会社としての共有価値」、「キャ リアと働く意欲」、「制度・施策に関する設問」、「自由記入」などの項目からなっている。 各項目の内容についてみると、たとえば「コア・モラール」では、仕事のやりがい、職場 の働きがい、上司のマネジメントへの支持、人事制度・運営への支持、経営組織への支持 など5つのカテゴリーについて質問がなされ、「総合満足度」では会社および所属組織に対 する満足度、上司・同僚からの視点、お客様からの視点の 4 項目について質問される。ま た同社では重視する考え方・行動の指針として「わたしたちが大切にすること」という 10 の価値を設定しており、「会社としての共有価値」は、この 10 の価値の実践度を測るもの である。モラルサーベイの結果は、結果報告書としてまとめられ、社内報やイントラネッ トで社員にフィードバックされるとともに、サーベイ結果を基に具体的に実現した改善策 に関する情報も公開されている。

(2)個に応じた働き方を実現する New Work Way

同社では個に応じた働き方を目指して 1988 年より New Work Way を提案し、新しい働き 方に関するさまざまな施策を導入してきた。New Work Way の背景となっている考え方は、 人間は企業人である一方、市民あるいは家庭人という多様な側面を持つものであり、社員 が企業人だけでなく、市民・家庭人としても充実した人生を送ることが、企業の発展にと って重要となる、というものだ。この考え方の下に組織と個の関係を見直し、市民・家庭 人の面も含めて多角的・総合的に社員個々人の状況に即した働き方や能力開発を実現して いこうという試みがなされている。 具体的な施策としては、1988 年に育児休職制度、育児退職者再雇用制度、半日有給休暇 制度、1990 年に家族介護休職制度、リフレッシュ休暇、ソーシャルサービス制度、1992 年 に育児のための勤務時間短縮制度、フレックスサマーホリデー、1993 年に家族介護のため の勤務時間短縮制度、1 日介護休暇制度などが導入されており、2002 年には育児関連制度 の改定が行われている。個々の社員がおかれたさまざまな状況に対応した働き方に関する 施策、社会貢献のための施策、キャリア開発・能力開発に関する施策などを、しかも先駆 的に導入してきていることがみてとれる。 一連の施策導入も一因となって、同社は 1996 年と 1997 年に連続して企業ゆとり度診断 通産大臣賞を受賞、2001 年には企業の社会貢献大賞を受賞、2002 年にはファミリーフレン ドリー企業厚生労働大臣賞を受賞している。

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(3)50 代社員に新たなキャリア開発機会を提供する New Work 支援プログラム 50 代の社員に対する多様なキャリア開発機会の提供を目的に 2002 年から New Work 支援 プログラムをスタートした。早期退職プログロムなどを実施しなかった経緯もあり 50 代社 員の比率は高い。社員の 30%以上が 50 代という年代構成となっており、同社にとってその 活性化は非常に重要な問題である。さらに 40 代社員の比率も高く、50 代社員の活性化問題 は現在だけの問題ではなく、将来にわたる継続的な課題となっている。 実際に 2003 年に行った 50 歳代社員対象の意識調査からは、「達成感ややりがいを感じて いる」、「人生設計にも興味がある」という回答が多かったが、同時に「人生設計のために 具体的に何をしているか」との質問には、「具体的には動いていない」や「検討中」という 回答が多かった。この結果から、同社では日々の仕事に追われ、先のことを考えなくては ならないと思いながら、実行に移せていないのが社員の現実という認識を強くし、具体的 に彼らを後押しする施策が必要であるとして New Work 支援プログラムの開発に至った。 具体的な施策としては、恒久施策として活き活き公募、ダブルジョブ・プログラム、フ レックス・ワーク制度、活き活き匠 FA(フリーエージェント)制度、シニアテーマ制度、 期間限定施策として独立支援制度がある(各施策の内容は表1を参照)。 (表1) 出典:人材教育 May 2004 26p さらにこれらの制度を円滑に運用するためにさまざまなサポート施策が展開されている。 ひとつはイントラネットを通じての夢支援と名づけられた情報提供である。たとえばお仕 事紹介コーナーでは、ダブルジョブ・プログラムに活用してもらおうという意図で、教育 トレーナーやネットワーク管理者などの募集が掲載されている。またサポート体制として、 ドキュメントカレッジ、エコカレッジなど各種カレッジが開校されている。ドキュメント カレッジは同社の戦略事業であるドキュメントサービスに関するカレッジで、ドキュメン

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トスペシャリストになるための知識・ノウハウの提供を行うものである。エコカレッジは 経営環境評価・支援システムである「エコステージ」の評価員育成を目指したものだ。エ コステージとは、環境マネジメントシステムの国際規格である ISO14001 の内容を取り入れ ながら、簡易レベルから高度なレベルまで、順次ステージアップが可能な日本独自の環境 経営評価・支援システムである。 人生 80 年の時代、定年後の長い人生も視野に入れた第二のキャリアを開発に加え、退職 後もロイヤリティを持ち続けるという元社員と企業との関係は大きな財産である。早期退 職や希望退職といった形で、単にシニア社員の退出策を探るのではなく、個々の社員に充 実した人生を歩んでもらうという同社の長期的な人材マネジメント戦略が読み取れる施策 である。 (4)組織と個の新たな関係を目指して役割グレード制度を導入 個を生かした施策、組織と個の新たな関係構築を目指す同社では、評価・処遇面では役 割グレード制度を導入している。これは役割を機軸として、会社と社員がより対等な関係 を目指すことを目的としたもので、1999 年に管理職層、2002 年に組合員層に導入された。 役割グレード制度によって目指す個と組織の関係を表したのが図1である。以前は職能資 格等級制度が導入されていたが、役割グレード制度導入によって、M(マネジャー)区分、 S(スタッフ)区分、SP(スペシャル)区分という3つの社員区分を導入、区分ごとに役割 を基にグレードが設定されるという等級構造に変化した。 (図1)

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