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Academic year: 2022

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氏 名 小平 尚輝 授 与 し た 学 位 博士 専攻分野の名称 薬学

学位記授与番号 博甲第4105号

学位授与の日付 平成22年3月25日 学位授与の要件 博士の学位論文提出者

(学位規則第5条第1項該当)

学位論文の題目 緑膿菌の多剤排出ポンプ遺伝子muxABC-opmB及びemrEPaeの発現上 昇メカニズムの解析

論 文 審 査 委 員 教授 土屋 友房 教授 岡本 敬の介 教授 森山 芳則

学位論文内容の要旨

近年、多剤排出ポンプが、臨床現場における抗菌薬耐性だけではなく、細菌の生存戦略つまり 抗菌薬や重金属などを含めた環境からのストレスに対抗するシステムの 1 つとしても認識され てきている。緑膿菌における例として、抗菌薬などによって生じた酸化ストレスに repressor で あるMexRが反応することで、多剤排出ポンプMexAB-OprMの発現を上昇させ、酸化ストレス の原因物質を菌体外に排出することが報告されている。また、多剤排出ポンプMexXYがリボソ ームに作用する抗菌薬により誘導され、それらを排出することでリボソームを守ることも報告さ れている。しかしながら、緑膿菌の染色体上には多数の多剤排出ポンプ遺伝子が存在しているも のの、それらがどの様にして発現上昇し、そしてどの様にストレスに対抗するのかは明らかにさ れていない。以上のことを踏まえ、本研究では緑膿菌を抗菌物質に曝し、多剤排出ポンプ遺伝子 の発現上昇株を分離し、その変異株の解析を行うことでその発現上昇のメカニズムを解析するこ とを目指した。

まず、数種類の抗菌物質を用いて抗菌物質のMICが上昇した株を複数分離した。それらの中 で、novobiocin 又は ethidium bromide を用いて分離した変異株において複数の抗菌物質の MIC (minimum inhibitory concentration)が上昇していた。そこで、それらについて解析を進めた。

Novobiocinを用いて分離した株の内、2株のaztreonam、macrolides、novobiocinのMICが上昇 し て い た 。 こ の 基 質 特 異 性 よ り 、 そ の 2 株 に お け る MIC の 上 昇 に は 多 剤 排 出 ポ ン プ

MuxABC-OpmBが関与していることが考えられた。そこで、muxA遺伝子の発現を測定したとこ

ろ2株ともその発現が上昇していた。そして、変異部位の同定を試みたことでpromoter領域付 近のTの挿入によりその発現が上昇することを明らかにした。また、未知のregulatorが存在す る可能性を示唆した。

Ethidium bromideを用いて分離した株ではacriflavien、ethidium bromide、tetraphenylphosphonium chloride (TPPCl)のMICが上昇していた。そして、解析を進めたところ12株中11株において多 剤排出ポンプ遺伝子emrEPaeの発現が上昇しており、これが変異株における抗菌物質のMICの上 昇 の 原 因 で あ る こ と を 明 ら か に し た 。 更 に 、emrEPae 遺 伝 子 の 発 現 に は activator で あ る EmrT(emrEPae Transcriptional regulator)が関与していることを明らかにした。そして、EmrTはアミ ノ酸残基の置換により立体構造が変化し、activatorとしての活性が上昇することが分かった。こ のことより、通常でも EmrT は何らかの因子が関わることで立体構造が変化し、emrEPae遺伝子 の発現を制御していることが示唆された。

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論文審査結果の要旨

緑膿菌は院内感染の主要な原因菌の一つである。この菌は元々多くの抗菌薬に耐性(多 剤耐性)を示す上に、治療に用いられる抗菌薬に曝されることによりさらなる耐性(多剤 高度耐性)を獲得しやすい。そしてこの性質が緑膿菌による感染症の治療を難渋化させて いる。この菌の多剤高度耐性化には多剤排出ポンプの発現上昇が関わっている例が知られ ている。ゲノム情報の解析によりこの菌には約35個の多剤排出ポンプ遺伝子が存在する ことがわかっているが、その多くは未解析である。この論文の筆者は、緑膿菌を抗菌物質 に曝すことにより多剤耐性化した変異株をたくさん分離し解析した。結局二つのグループ の多剤耐性変異株が取れた。1)一つのグループのものは観察された多剤耐性に多剤排出

ポンプMuxABC-OpmBとEmrEが関与していることがわかった。特に耐性度の高い株につ

いて調べたところ、muxABC遺伝子の発現が上昇していた。遺伝子をクローニングしシーケ ンスを調べたところ、推定プロモータ領域の―10領域にTの挿入があることがわかった。

この挿入によりプロモータ活性が上昇したことがわかった。2)もう一つのグループでは 多剤排出ポンプEmrEが関与していることがわかった。やはり遺伝子レベルで発現が上昇し ていることがわかった。しかしそのプロモータ領域に変異は無かった。emrE遺伝子の上流 にレギュレーター様のタンパク質をコードする遺伝子があり、その遺伝子中に変異が見つ かった。遺伝子破壊等によりこの遺伝子の産物(EmrT)が emrE のアクチベータとして働 くことを明らかにした。このように、この論文は緑膿菌の多剤高度耐性化に係る多剤排出 ポンプの発現上昇機構を明らかにしたものであり、大変興味深い結果である。この論文の 内容は博士論文の審査基準に照らし学位に相応しいものであると判断した。

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