監査の目的による内部監査の意義 二〇 、
監査の目的による内部監査の意義
一−−−業務監査論の基礎概念として
可 児 島 俊 雄
一 内部監査の理念
日本内部監査協会は、内部監査基準委員会を設けて、内部監査の基準について研究を重ねて来た。そして昭和三五年六 月に、内部監査について一般的に理解を深め、その実施運営を円滑ならしめるために、 ﹁内部監査基準﹂を発表した。こ のステートメントは概して言えば、先にアメリカ内部監査人協会の本部から発表された二つのステートメント、すなわち 一九四七年版と一九五七年版の﹁内部監査人の責任﹂︵菊①娼。匿一三Φ。。。=7。H三①遷巴ぎαぎ邑における基本的思考に相通 ずるものであり、内部監査の基本的性格ならびにその実施上の要点について述べたものである。 本基準ではその始めに、内部監査の意義と目的と題して、次のように明確に内部監査の本質が理解されている。すなわ ち﹁内部監査は、経営組織内に設置された監査担当者によって、最高経営者、部門管理者の経営管理に奉仕するために行 なわれるものである。内部監査は、会計および業務のコントロールが適正、妥当であるかどうかを評定するものである。﹂ したがって、内部監査担当者は、このような内部監査の本質的機能を通して経営管理者のスタッフたるべきものである。 ここに内部監査の目的、機能そしてその本質が必然的に明確にされるのである。 かくして、内部監査のこのような本質から、その関連諸活動との相違も判然と理解されなければならない。先ず本基準が明確に述べているように、﹁内部監査は、外部監壷との関係から必要とされることもあるが、内部監査と外部監査とは その本質を異にするのである。したがって、両者は二者択一的な性質のものではない。⋮⋮﹂このような明確な理解は、 続いて、内部監査と監査役監査との間にも、また内部監査担当者の監査活動と経営管理者が行なう日常の執行活動につい ての指揮、監督、チェックとの間にも十分に深められていなければならない。 このような内部監査に関する基本的思考の基盤について、本小稿では、一般的に監査の機能あるいは監査の目的の発展 ⑥ 過程に着目しながら、更に内部監査の意義を整理しようと試みるものである。すなわち、第一に内部監査は、如何なる理 念に照らして会計および業務のコントロールが適正、妥当であると評定するべきか。第二に内部監査は、外部監査など関 連諸活動とは本質的に相違するものであるが、その相違点あるいは類似点は如何なる理念に基づいてより一層明確に理解 されるものであるか。つまり、﹁内部監査基準﹂にもられたる内部監査の理念について若干考察するものである。先ず一 般的に監査の機能あるいは監査の目的に関する理解から始めたい。 ① 一九四一年に設立された内部監査入協会︵アメリカ内部監査人協会︶︵↓冨ぎω轟轟Φohぎ︻Φ毎艶︾巳津。﹃ρぎρ︶は、ニューヨークにその本部 を持ち、世界各国にその支部を設けている。我が国においては﹁九五七年︵昭和三二年遅に﹁日本内部監査協会﹂︵ぎ9旨巴>q象8誘︾ωωoo冨鉱。口 。h智嚇コ︶に﹁内部監査人協会東京支部﹂が置かれている。日本内部監査協会は、機関紙を年四回発行するほかに、数多くの﹁監査資料﹂や﹁特別資 料﹂を当協会員に配付して、この研究を進めている。 我が国には、内部監査に関する研究クループとしてほかに、﹁内部監査研究会﹂が活躍している。内部監査研究会は一九五三年︵昭和二八年︶五月 に、各会社の内部監査業務担当者相互の研究機関として、社団法人企業経営協会内に設置されたものである。当研究会は一九五八年︵昭和三三年︶六 月から機関紙として﹁内部監査月報﹂を発行している。 ・ ② 日本会計学会誌﹁会計﹂第七八巻、第二号、一〇三1 〇六頁。内部監査基準は、まえがき、内部監査について、ω内部監査の意義と目的、②内部 監査の必要性、③内部監査の領域、内部監査基準、ω内部監査の組織、②内部監査担当者の独立性、③内部監査担当者の適格性、㈲内部監査対象の選 択、㈲内部監査の実施計画、⑥内部監査の実施手続、⑦内部監査報告書、㈲フォロー・アップ、の各部分から成っている。 ③目冨ぎω葺⊆80h目葺。彗蝉﹁︾猛津。冨−ぎp2Φ≦磯。爵・ なお当協会について詳しくは、拙稿、管理会計の発展と業務監査の意義、内部監査の本質と業務監査機能について、彦根論叢、第五五号、五二頁、 監査の目的による内部監査の意義 一二
監査の目的による内部監査の意義 ニニ ならびに拙稿、イギリスにおける最近の内部監査事惰、内部監査の機能的意義を中心にして、彦根論叢、第六八号、三一−三二頁など参照願いたい。 ④二つのステートメントについて詳細には別の機会に考察しなければならないが、例えば前掲拙稿、第五五号、五二一五三頁、ならびに第六八号、三 三一三四頁、および拙稿、管理会計と内部監査の発展、中部経済学界、第一〇号、六五−六六頁なと参照願いたい。 ⑤ 本基準における﹁外部監査﹂の意味は、専門職業的会計士による企業財務諸表監査の典型的形態を指摘している。したがって、本基準における﹁内 部監査﹂の用語は、企業経.営内における内部監査部課による経営の会計および業務の監査の典型的形態として使用されている。すなわち、本基準の用 語は、何れも監査の主体および目的、機能の両面からみて、最も近代的な発展形態の愚臣を指摘しているのである。 ⑥ 私はすでに内部監査に関して若干考察した。すなわち、管理会計の発展段階における内部監査の意義については、拙稿、管理会計の本質的性格に関 する一考察、﹁着水三十五年記念論文集﹂二五六f二六九頁、管理会計の発展と業務監査、彦根論叢、第五五号、四一−五七頁、および管理会計と内 部監査の発展、中部経済学界、第一〇号、五五一六八頁。そして内部監査の定義から諸概念については、ブリンク︵く.N.じ百﹃一口匠︶の所説を中心にし て、拙稿、内部監査の.基礎概念、﹁滋賀大学経済学部開学十周年記念論文集﹂二一七1こご=頁。更に一般的に監査の概念における内部監査の意義に ついては、拙稿、監査の概念と内部監査、東海大学論叢、昭和三五年一月刊、七五−八二頁。また内部監査の目的を中心にして一般的に監査の目的的 機能的要件による発展類型を考察した拙稿、経営目的監査としての内部監査について、彦根論叢、第六四号、三一−四八頁、および内部監査に関する 実態調査資料に基づいて考察した拙稿、イギリスにおける最近の内部監査事情、彦根論叢、第六八号、三一1四〇頁など参照輪唱れぽ幸いである。 二 会計機能と監査機能 監査機能の生成発展に関する歴史的考察はすでに古く、会計記録の存するところ監査ありとして、監査と会計との両概 念は極めて密接に関連づけられて来た。そしてその結論は、監査は必然的に会計から生まれたものであると言うのが通説 と成っている。簿記は会計の母体であり、﹁会計を簿記から明確に区別すべき一つの規範は監査︵帥&三コσq︶である﹂とり ① トルトン︵︾﹁O■ピ一門二Φ帥Ob︶がすでに指摘しているように、会計は主として建設的活動であり、経営管理者の業務領域に属 するのに対して、監査は根本的には分析的、批判的活動であって、経営管理者の活動成果を判断するために管理者から独 立して行なわれるものである。つまり、経営活動取引を描写的にキャッチした会計には、そこに常に会計責任︵国。8毎学 ② 国窪ξ︶が存在し、この会計責任の検証評価こそ、まさに監査にほかならないのである。
③ 会計と監査の機能的関連を今少し歴史的に考察しよう。リトルトンが指摘しているように、会計監査が最も早く現われ たのはイギリスであり、また会計士会計が十九世紀中葉に至って職業化の軌道に乗り出したのもイギリスであったから、 先ずイギリスの初期の会計・監査事情から概観しなければならない。イギリスにおいても後述のドイツにおけると同様に 監査の発展事情は、全く会計の展開過程を物語るものである。すなわち、会計機能の歴史的発展過程こそまさに監査機能 の発展事情である。たとえば、十四世紀における官庁会計では、政府官吏の財務的行為の記録が会計の機能であり、その 財務的責任の誠実性の検証が監査の目的であった。また十六世紀の荘園会計においては、会計の機能をもつ﹁総輿入役﹂ ︵﹁①8貯①〒σQgΦ邑︶と監査の機能をもつ﹁監査人﹂︵窪山ぎ同︶とは、荘園世帯の中の三吏員に上げられて、重要な責任が課さ れていた。前者は主として牧入の源泉を整理する会計記録にあたり、後者は主として領主への小作帳と総則入役の牧入支 出勘定、つまり財務的責任の検査および意見の表明にあった。すなわち、その後の企業経営における監査役監査の機能が 推察されるのである。とにかく、当時の会計の機能は勘定記録にあり、監査の機能はこの勘定記録の聴取にあったのであ る。 もちろん十六世紀以前にも私的事業の会計監査は若干見られたであろうけれども、当時多くは公会計的監査の様相であ った。十七世紀以後は企業の出現にしたがって、やがて荘園の吏員としての﹁監査人﹂から﹁監査業﹂へと徐々に展開し ていった。先ずその過程は会計事務が法律家の手に依頼されたことから始まる。当時多くの法律事件の中には財務的問題 に関係があり、その解明には会計知識が必要とされた。つまり、他人の依頼をうけて、専門家の資格においてそのサーヴ ィスを提供したことにある。たとえば弁護士たる人が、勘定計算に精通している場合に、財産管理人や破産管理人として 仕事をするのである。リトルトンはこれを副業的に監査事務を行なった時代として、今日の﹁勅許会計士﹂︵o訂H聾巴 ︾82三8け︶時代への前二階と見るのである。かくして十九世紀も進むにつれて会計職業が明確となった。たとえば、イギ 監査の目的による内部監査の意義 二三
監査の目的による内部監査の意義 、 二四
⑨ リス最古の一八五二年のエジンバラ会計士協会︵円冨冒。。巨益①。︷︾∩8毎け⊆・葺ωぎ臣暮ξσqげ︶の設立はその例である。かくし て、専門職業的会計士制度の生成事情として、ω企業の工業化、②破産法の制定、㈹会社法の改正、の三要因は、そのま まにイギリスにおける会計ならびに監査業の発展事情となったのである。たとえば、法律規定によって監査役や清算人に 専門会計士を起用したことなどその一例と成るであろう。 ドイツにおいても大勢はイギリスと様相を同じくし、十六世紀以前には主として記録計算にあたる会計機能とその帳簿 の検査にあたる監査機能が理解される。十七世紀以後もやはりイギリスと同様に破産事件についての会計上の監査から始 まったのである。そして、十九世紀末葉に株式会社の監査制度の欠陥を補うために会計士制度が認められ、いわゆる帳簿 監査人︵しd口OげΦ﹁同①<一uoOH①コ︶として職業化されて来た。かくしてドイツにおいても、監査の生成過程については、会計士制度 つまり帳簿監査入協会の生成事情が極めて重要な要因となって来る。したがって、監査の生成発展に関しては、一般的に ﹁簿記一会計−監査﹂の一連の理解が重要と成る訳である。 ① ︾.O.=註Φ8p、.﹀。8ロロニ贔国<。ぎユ自け。一89..一Φωρ戸b。切⑩■片野一郎訳﹁リトルトソ会計発達史﹂三七一頁。 ②︾●芝.国。一ヨ①ω層=﹀巳三口oq、唱二膏昼一$印己實89霞ρ.、一〇朝9毛﹂ード ③ ﹀﹁O.ピ律菖簿。ジ。℃・o騨..b戸卜。㎝り1霧9上掲訳書、三七一−三七二頁。 ④﹀.O・ピ詳二Φ仲。昌18.o律●噛やb。09上掲訳書、三七二頁。 ⑤﹀●ρご叶二Φ890唱。6拝ーウト。①い上掲訳書、三七四頁。 ⑥ 監査の語義についてば既に多く解説されている。たとえば、リトルトンの上掲書、 ︵原書二六二頁、訳書三七五頁︶および野本悌之助教授著、 ﹁監 査通論﹂一二一五頁など文献は多いQ ⑦ 久保田音二郎著、 ﹁会計監査﹂一二頁。 ⑨ ﹀.ρピ答菖①8口讐。唱■o律こoP卜。①⑪Ib。①刈・上掲訳書、三八︻頁。 ⑨神馬新七郎著、﹁監査役制度﹂六一頁。 ⑩ 久保田音二郎著、上掲書、二六頁。三監査機能の分化
一般的に監査の発展事情を明確にするためには、先ずその主体と客体とによる類型から理解しなければならない。たと えば、ω﹁何時に﹂、②﹁何処で﹂、㈹﹁誰が﹂、㈲﹁何を﹂、㈲﹁如何なる目的で﹂監査したかということが問われる。こ のような分析から、必然的に監査の種類や類型が理解され、それに基づいて監査の概念も規定されるであろう。たとえば 上述の各質問群についてそれぞれ一例を摘出すれば、ω期中監査、期末監査、②帳簿監査、現場︵実地︶監査、⑧会計士 監査、経営内部監査部課監査、ω財務諸表監査、経営業務監査、一部監査、全部監査、㈲投資監査、経営監査、税務監査、 などが上げられるであろう。これらの分析のうち、少くとも監査の発展類型を整理するためには、すでに別の機会に考察 した如く、監査の目的が最も重要な要件と成るであろう。すなわち、監査の概念規定や監査類型の説明には、一般的に二 つの方向、すなわち監査の組織的・主体的条件と監査の目的的・機能的条件とによって二様の考察にわかれる。前者が監 査の主体的類型を主とするのに対して、後者は監査の目的的類型を重要視する。本小稿における問題提起としての﹁簿記 一会計−監査﹂の一貫的、本質的理解のためには、就中、監査の目的に注目しなければならないのである。 監査の機能や目的は、上に見た如く、本来会計の機能および目的を継承して来る訳であるが、その発展段階的には、検 視目的、清算目的、保全目的、信用目的、投資目的および経営管理課的などが指摘される。これらの監査の目的は、それ ぞれ各時代に主流的に重要視されたものであって、いわば監査機能の分化として考えられるものである。青木茂男教授に ③ ’ よれば、これら監査機能の分化が行なわれる以前にあっては、すべて一体として本来的監査の機能を発揮して来た訳であ る。すなわち、 ﹁監査は古くは資本と経営の分離も行なわれていなかった当時にあっては、それは資本家すなわち経営者 のために行なわれた監査であるという意味で、この点では全く内部監査的な性質を強く持っていたと言えるのである。﹂ 監査の目的による内部監査の意義 二五監査の目的による内部監査の意義. 二六 つまり、監査の目的も会計監査を中心とする会計上の不正・誤謬の発見、摘出にあったのであり、まさに検視目的をもっ た監査であるが、とにかくその目的は、当時の経営者のために存在意義があったことは明確である。そして、監査の目的 は経営者的であったが、監査の担当者は多く外部の会計士などへの依頼が行なわれていた。ブリンク︵≦Nじd附︷爵︶ がす でに指摘しているように、当時は経営外部者たる会計士が、監査のみならず、企業の会計全般に亘って極めて直接的且つ 有力な役割を演じていたのである。 今日多く内部監査と外部監査の区分は、監査人あるいは監査担当者が同﹁組織内にあるか否かによって類型されるけれ ども、本来的には、この当時の監査の如く、たとえ監査入が依頼された経営外部者であっても、その監査の目的が企業内 部的であれば、まさしく内部監査として類型されなければならない。すなわち、監査の主体的条件による区分ではなく、 本質的には監査の目的的、機能的区分による類型でなければならない。更にこの点は岩田巌教授がすでに早く明確に述べ ておられる。すなわち、﹁アメリカでは一九三三年の証券法や一九三四年の取引所法以前には、イギリスと違って、会計 士は株主のために監査を行なうことは極めて稀であって、信用目的を.除けば、経営者のために行なうことが多く、これが むしろ普通のことであった。⋮⋮﹂ このような思考は存続して、その後の投資目的の強制監査制度下でも、経営管理のために経営者に奉仕する監査は、会 計士業務の重要な部分であった。つまり、経営外部の会計士が経営者に対する有力な助言者であったのである。かような 事情から、岩田教授は更に次のように説述されている。すなわち、 ﹁内部監査は内面的には、会計士の外部監査とは密接 な関係にあるのであって、内部監査はいわば、会計士監査の分身である。かつては会計士業務の中に混在していた諸任務 が次第に分離し、独立して、内部監査を形成したと言っても過言ではあるまい。⋮⋮﹂つまり、本来の会計士監査は多く は経営目的、経営内部目的をもった監査であり、たとえ経営外部者たる専門職業的会計士による監査であっても、その監
査の機能は常に経営者のため、経営のために存在意義があったのである。 ①監査の種類については多くの観点が存し、たとえば近沢弘治教授著﹁外部監査と内部監査﹂全書および同著﹁会計監査入門﹂ 願いたい。 ② 拙稿、経営目的監査としての内部監査について、監査機能の発展過程を通じて、彦根論叢、第六四号、四七頁。 ⑤ 青木茂男著、﹁近代内部監査﹂四九頁。 ④<●N●bdニロぎ.、ゴ8ヨ巴︾仁象ニコσqり、.お蒔ご℃.心綬’青木茂男著、上掲書、五〇頁。 ⑤ 青木萬男著、上掲書、五〇1五一頁。 一三一二九頁など参照
四財務会計監査
しかしながら、やがて時代が進み、経済社会的諸情勢が一期と高度化するにつれて、会計士による監査は、当初のよう に経営者のためにではなく、逆に経営者に対する監査、あるいは企業に対する監査という要請が次第に生じて来た。青木 教授の指摘される通り、イギリスにおいて見られた経営者に対する詐欺や破産の処理とか予防を目的とした監査の如ぎ、 またアメリカにおいて行なわれた銀行業の貸付に当っての会計士による監査証明や、一般投資家のための強制監査制度な どその例である。つまり以前と異なって、企業や経営のためという監査目的ではなく、まして経営管理のため︵直接的ある いは間接的︶に経営者に奉仕し、助言すると言う機能は、殆んど見られなくなったのである。 このような監査事情の変遷は、特徴的には、イギリスにおいて最も早く認識され、十九世紀後半から二十世紀初めにか けて、幾度かの会社法の改正を重ねて進展して来たのである。特に一九〇八年の会社法では、監査役のうち少くとも一名 は専門職業的会計士、すなわち勅許会計士の起用を強制した。つまり監査の機能は株主から経営管理者に対して、経営管 理の巧拙の評定として行使され、まさに監査の目的も企業財産の保全にあったのである。 続いて、イギリスの会計および監査事情の影響を早く受けたと考えられるドイツでは、一九三一年の株式法により、資 監査の目的による内部監査の意義 二七監査の目的による内部監査の意義 二八 本金一定額以上の会社には義務的に専門職業的検査士あるいは監査人による監査を規定した。やがて一九三七年の株式法 からは、全くすべての株式会社および株式合資会社に対して、文字通り受検義務、すなわち強制監査制度を確立したので
ある。ただ形式的にはドイツでは強制監査であるけれども、年来の会社相談役と監査役監査制度とによって、アメリカな どにみられる強制監査制度とは自ら若干性格を異にするところがあったと言わなければならない。すなわち、形式的には 株主の利益保護という建前であるけれども、そこには企業経営のためという監査目的が潜在的に意義づけられていたこと は、或種の監査役監査の特徴とも言えるのである。つまり監査役監査制度において、経営目的に応ずる内部監査機能が果 たされていた訳である。 更にアメリカにおいては、︸九三三年の証券法により、証券上場会社について強制監査が確立された。ただアメリカで は、イギリスやドイツと異なり、会社法や株式法のような商法規定ではない。特にアメリカでは、投資家保護という目的 が強く、監査機能、とりわけ公認会計士監査の機能によって達成されたことである。イギリスやドイツの企業破産と等し く、アメリカにおいても大きな会社経営者の着服不正事件を契機として、投資家保護の目的が強く前面に押出されて来た のである。これらの事情は、ただ監査の目的や機能についてのみ影響したのではなく、本来的に会計それ自体の機能や目 的にも強く作用して、いわゆる﹁投資家のための会計﹂︵。。8。巷ぎσqh。二暑①段。邑を強く提唱する基盤と成ったのである。 我が国においては、このような事情は堅く新しく、一九四八年︵昭和二一二年︶の﹁公認会計士法﹂の公布により、資本金 一定額︵現在は一億円︶以⊥の会社に限り、一九五一年︵昭和二六年︶の公認会計士監査から強制監査が施行される運びと成 ったのである。しかし我が国の場合は、他国と違った幾多の事情が存在していたことは、決、して忘れることが出来ないと ⑦ ころである。 以上のような監査事情の変遷によって、監査の目的は企業財産の保全目的、信用目的、そして投資家のための監査へと
進展していった。一般に強制監査と称されるこのような投資目的のための監査は、監査人として、権威ある専門職業的会 計士たる公認会計士︵OΦ洋ヨ陣払に三μo︾08¢口9三︶、勅許会計士︵○冨籍邑︾。8§§叶︶あるいは経済監査士︵芝三8ゲ聾。。箕母8 を起用し、監査の結果は全く外部に公表されるのが通例である。そしてこのようないわゆる会計士監査は一般に決算監査 であるために、必然的に精細監査から貸借対照表監査あるいは財務諸表監査へと自ら移行していった。すなわち、財務会 計を継承する財務会計監査としての特徴を持つものであると言うことが出来る。ここに﹁投資家のための会計﹂から展開 して、まさに﹁投資家のための監査﹂︵窪ユ三コσqh。﹁索く①ω8﹁。。︶が出来上ったのである。
①青木茂男著、上掲書、五一頁。 .
②﹀.O●=け二①叶opoサ息﹃署。邸。。。。1ω9.上掲訳書、四〇一一四一六頁σ ③久保田音二郎著、上掲書、ゴ=1三三頁。 ④oQΦ8ユ鉱①ωp。韓国属。冨bひqΦOo巨三ω甑。戸GQロヨヨ9qo由聞一巳ぎ鵯p民086ε獣8ω坤昌穿Φ護帥#臼ohζゆ内。。・の。昌卸男。びびぎpぎP ..ω①冨99国①巴貯伽qωぎ︾08=馨冒ゆq帥コ匹︾=吊目口σq、..]≦’国.]≦﹂愚ず鴇aこOや一一刈1一ト。P ⑤アメリカにおける投資家保護の目的をもった監査の発展事情については、久保田音二郎教授によれば、以下の如く極めて明確に整理される。第一に は、 ﹁今世紀に入って購売力の投資への余力の増大と投資者数の激増、証券発行額の増加の傾向にあったとぎ、たまたま一九二九年の株式恐慌に見舞 われ、世界的不況と成った。このため、アメリカの一般投資家の株式恐慌による影響が如何に甚大であったかは言うまでもない。⋮⋮ここに国家とし ても証券投資家に対する保護政策を講ぜざるを得なくなったのである。⋮⋮﹂第二には、 ﹁当初各州において証券投資家に対する詐欺的被害を防止す る政策を採っていたが、これでは州外でたくらんだ詐欺的発行と州際間の証券取引によって受ける被害については、十分に取締りが出来ず、そのため より積極的に、連邦法を制定して投資家を保護する必要に迫られた。⋮⋮﹂これらの具体化として、株式社債などの証券発行を取締り、投資家を保護 することを主たる目的にした﹁有価証券法﹂および取引所に上場する証券の円滑な流通を図り、もって投資家を保護することを主目的にした﹁証券取 引所法﹂が制定されたのである。 ︵久保田音二郎著、 ﹁財務諸表監査﹂五五−五九頁。︶ ⑥たとえば山桝忠恕教授によれば、﹁アメリカの財務会計は、ここ二十数年来﹃投資家のための会計﹄をスロ⋮ガソとしている⋮⋮﹂として、アメリ カの財務会計の性格が明確に理解されている。 ︵山岨忠恕著、﹁アメリカ財務会計﹂二一九頁。︶ ⑦我が国における強制監査制度の背景については極めて興味があるので、何れ別の機会に詳しく考察しなければならないが、私はすでにそこにおける 若干の問題点は整理した。 ︵拙稿、経営目的監査としての内部監査について、彦根論叢、第六四号、四四一四六頁など参照願いたい。︶ 監査の目的による内部監査の意義 二九監査の目的による内部監査の意義 三〇
五監査の本質的闘機能
先に理解した如く、監査の機能は本来的に会計の機能を継承しており、したがって、監査機能の分化は、すなわち会計 の機能の分化を受け継いでいるのである。それ故に、会計が資本主主体理論に基づいていた当時は、監査の機能も全く検 視目的で、資本主主体的であった。それがやがて監査機能の分化にしたがって、会計について見る如く、監査についても 幾多の監査目的が時代の要請、環境の順応として理解されて来た。上述の投資目的をもった監査は特にその顕著なる例で ある。たとえば会計士による監査でも、最初は経営者のための経営管理目的をもった監査であったが、それが今世紀に入 ってから各国とも、全く逆の経営外部者のための監査と成って変転した。これらの事情から、本来的に監査の目的および 機能は、経営目的に適応したところに存在意義があったものと理解することが出来るのである。 会計の機能と監査の機能とを更に密接に関連づけて理解される見解は、青木倫太郎教授によって一層明確に提唱されて いる。すなわち、 ﹁監査とは、経営の実体の計数的把握に関する組織、およびその結果の正当性判断と、経営目的の実現 性批判とによって、経営政策樹立の参考資料を提供すること、つまり﹃監査の機能﹄を経営目的実現のために発揮せしめ んとする経営管理の一手段である。⋮⋮﹂したがって、この見解から監査の目的についても同様に理解し、監査の真の目 的は会計の目的に合致して、経営管理の手段であると結論されるのである。更に青木教授によれば、 ﹁簿記・会計の結果 に信頼性を与えるのは監査であり、簿記と監査とは全く表裏の関係にある﹂と指摘されている。つまり青木教授の見解に よれば、﹁監査﹂の概念と﹁会計﹂の概念とを極めて密接に関連づけて、いわば、監査機能は会計機能を離れては全く存在 意義がないかの如くに解釈されるのである。すなわち、会計の目的および機能と監査の目的および機能とを余りに密接に 直接的に関連づけられる結果として、ややもすれば、監査の概念が狭義に理解されて、監査の目的および機能は会計の目的および機能の中において包絡的に整理されているのである。したがって、監査の本質的機能についても、会計の本質的 機能であるところの﹁本来的に経営目的のための経営管理手段﹂として第一義的に理解されて来る訳である。監査の概念 の広狭については更に別の機会に詳しく考察しなければならないが、ここでは監査の本質的機能を理解するために必要な 限りにおいて、他に二、三の見解をそれぞれ特徴的に採り上げて整理しておこう。 監査の概念を広義に解釈して、経営監査概念を打ち立て、そこにおいて経営指導と経営批判の機能を果たすべき監査機 能、つまり経営診断の機能において監査の本質的機能を理解しようとする立場がある。たとえば、 ﹁経営分析論﹂の先駆 者であるドイツの経営経済学者シュマルッツ︵函.殉.ω67ヨ巴δN︶の見解を採られる西野嘉一郎博士の所説に見られるところ である。したがって、この見解によれば、 ﹁監査﹂の概念は単に﹁会計﹂の概念を越えて、広く﹁経営﹂概念のうちにお いて理解されているものである。 同様にして、監査の概念を広義に解釈して、監査の本質的機能は﹁経営管理﹂あるいは﹁経営分析﹂の概ム’5のうちにお いて理解されるとするものに、最近の例として、アメリカ経営者協会︵目冨﹀巳窪8ロ周ロω仲旨器。︷ζ鋤葛σQ①ヨ。三︶ の会長マi ティンデル氏︵冒。雰8ζp3巳①=︶の見解がある。この見解によれば、﹁経営比較﹂﹁経営分析﹂そして﹁経営診断﹂など一 連の経営管理手録のうちにおいて﹁監査の機能﹂は理解され、監査の本質的機能は経営目的のための管理手段にあると言 うことが出来るのである。 更に別の考えとして、監査の本質的機能は全く﹁会計の機能﹂とはその場を異にして、 ﹁第三者的機能﹂のうちに存在 するという見解がある。この見解は、監査の概念規定における﹁第三者的﹂要素を極度に強く提唱して、全く直接的なら びに間接的に企業経営に関係する利害関係者集団すべてに亘って、その相互の利害調整の任務のうちに監査の本質的機能 はあると言うのである。すなわち、上述の財務会計機能から﹁投資家のための監査﹂を更に一歩押し進めて、企業経営の 監査の目的による内部監査の意義 ==
監査の目的による内部監査の意義 三二 ﹁社会的責任に対する監査﹂、つまり﹁公共のための監査﹂︵。・邑三農︷。﹁雇匪。︶としての監査機能を第一義的に重要視する 見解である。たとえば税務会計理論をその理念とする税務監査の見解であって、国民経済的あるいは国家の財政需要と負 担の公平を眼目とするものである。 監査の機能に関する諸見解の吟味については、更に他日を待つことにして、上述のところを要約するに、たとえば第一 の青木教授の見解は﹁会計監査﹂あるいは﹁監査会計﹂の立論であり、第二、第三の西野博士ならびにマーチィンデル氏 の見解は何れも﹁経営監査﹂あるいは﹁業務監査﹂の立論である。これらの三つの見解は、共に監査の本質的機能は経 営管理目的にありとして、本来的に会計の目的ならびに機能を直系的に継承しているものと理解できるのである。すなわ ち、監査の目的および機能は本来的に経営のための経営目的に直接適応することと成るのである。これら三つの見解に対 して第四の税務監査の見解は、いわば企業経営の﹁社会的監査﹂あるいは﹁経済的監査﹂の立論であると考えられる。 以上の考察によって、監査の機能に関する問題点を先ず以下の二点に整理することが出来るであろう。第一には、すで に指摘したように、監査の真の目的は会計の目的に合致するのであるから、たとえば会計士監査は、およそ今日では財務 会計目的に合致する訳である。しかしながら、一般的に近代の財務諸表監査は、概ね経営管理の手段に主流が存するとは 考えられない。つまり会計士監査はおよそ今日では経営目的のための監査ではないのである。したがって、一般に会計の 機能から建設された計数結果や経営目的の実現について、その正当性判断と実現性批判において、監査の機能は存するの である。それ故に監査は、会計の目的および機能から直系的に継承されたものでなければならない。 第二には、本質的にいわゆる内部監査と外部監査の区分は、監査入あるいは監査担当者が同一経営組織内のものか否か によるのではない。たとえば、歴史・的に監査の生成初期において見た如く、全く経営のために、経営管理の手段として一 般に経営外部の会計士が企業の会計および監査に当ったと言う場合、果たして今日の外部監査概念に属せしめ得るであろ
うか。このような経営外部会計士による経営目的のための監査は、およそ今日でも企業経営本来の成長のために必要であ り、 経営組織内にいわゆる十分なる内部監査部課が整備されていない時は、多く外部会計士に依存するであろう。また逆 に、たとえ経営組織内の人が監査に当ったとしても、その監査の目的や効果が全く外部会計士監査のための下準備にある とすれば、このとき監査の組織的条件のみによれば内部監査概念に属するけれども、その実質的には全く外部監査、外部 目的監査の下請けに過ぎないものと言わなければならないであろう。つまり監査の本質的理解に際しては、監査の組織的 主体的条件は第二義的であり、補佐的要件として意義を持つものであるから、必然的に監査の目的的、機能的条件が第一 義的に重要視されなければならないのである。 ① ﹀・O.い穽二①890や。詳。℃℃サω①一iG。Φ。。■上掲訳書、四九〇i四九︸頁。 ② 青木倫太郎稿、監査会計総論、 ﹁商学論究﹂創立六五周年記念号、関西学院大学商学研究会編、三三九−三四〇頁。 ⑤ 青木倫太郎教授は、従来の意味の﹁監査﹂用語についてこれを新しく﹁監査会計﹂として意義づけ、会計学の中の一分科として明確に理解されてい る。 ④・⑤青木倫太郎稿、上掲論文、三四一⊥二四三頁Q ⑥ この見解については西野嘉一郎博士著、﹁経営監査﹂の序文など、その他多くの文献において明確に理解されている。 ⑦ 拙稿、管理会計と内部的会計情報、管理会計制度と経営管理老の要請について、彦根論叢、第五七号、一九頁。 ⑧冒O吋ωO昌竃舞寓己亀L≦勉葛αq①ヨΦ暮︾信巳什ω帥彗豆塚目①皇、.日ぴoOO弓O茜器U冒Φ∩8﹃層二ω℃Φα巴︻ω盟ρZO﹂㎝−U㊦ρ一⑩盟讐℃℃﹂一⑰.この見 解について詳細なる考察は他日を待つこととする。この見解は、最近の経営管理者の実務的経験による理解として、実際経営者の要請と共に、監査機 能の将来的展望方向を暗示しているものとして見ることが出来るであろう。同様の見解は、アメリカにおいて、 ..日動ロ勇。mq①ヨ①口け器村く︸8び︽ρ℃・ ︾■.も・..として多くの文献がある。これらの詳細な考察は別の機会を待つこととするが、もちろんこれらの見解に対する反論もないではない。 ︵富山 忠三稿、監査概念拡大化への反抗、﹁会計﹂第七五巻、第六号、九七−一〇八頁。︶ ⑨ 陶山誠太郎稿、税務監査、﹁会計学辞典﹂神戸大学会計学研究室編、五三六1六三七頁。 ⑩これらの見解の吟味、ならびに監査論の体系については、詳細には別の機会にゆずらねぽならない。もともと私は、企業監査論は本質的に企業会計 の機能分化にもとづいて、財務会計監査、管理会計監査、および税務会計監査の三体系から構成されるものと考えている。 ︵拙稿、経営目的監査とし ての内部監査について、監査機能の発展過程を通じて、彦根論叢、第六四号、四六一四八頁。︶ 監査の目的による内部監査の意義 三三
監査の目的による内部監査の意義 三四
六管理会計監査
以上に見た如く、監査の目的は監査の本質規定において極めて重要であるが、この監査の目的には今日通常三つの類型 が指摘されている。たとえばホルムズ︵︾.毛●=o一ヨ①ω︶によれば、 ω 不正および誤謬の摘発、 ② 財務的ならびに業務的活動に関する適正なる報告、 ⑧ 投資家および経営者に対する相談役としての役割、 の三類型を指摘して、検視目的、投資目的および経営管理目的が理解されている。このうち、検視目的のための監査は殆 んど常時機能しているから、一般に近代の監査類型は、投資目的のための監査と経営管理目的に役立つ監査とが重要な意 義をもって来るのである。今日近代的な典型的監査類型としては、前者にはたとえば経営外部目的の監査類型として、公 認会計士による財務諸表監査があり、後者にはたとえば経営内部目的の監査類型として、経営内部監査部課による業務監 査を指摘することが出来るのである。 このような監査機能あるいは監査目的のうちでも、丁度一九三〇年代においては投資目的のための監査、つまり上述の 財務会計監査が第一義的に重要視されたと同様に、あるいは今日の全般的な企業経営合理化思考に基づく管理会計思潮に 乗っては、特に監査の経営管理目的、つまり経営本来の目的に順応せる監査機能が⋮段と高く提唱されて来る訳である。 たとえば、ホルムズによれば、経営外部会計士による経営者への経営管理サーヴィスにおいて、つまり経営のための監査 機能において、監査の本義が存するものと強く理解されているのである。 かくして監査の本来の目的は、会計の本来の目的たる経営目的を受け継ぎ、会計が管理会計として本質的に機能するとき、そこにおいて監査もまた、管理会計監査として十分に機能することが出来るのである。この点はたとえば、経営目的 の内部監査が、管理会計の発展炭階において極めて重要な地位を占め、また特に管理会計の限界領域においてその使命を 遂行することを考えるとき、十分に理解されるところである。 およそ等しく投資家のための監査と言っても、その時代、その国々により、財務会計機能の発展過程にしたがって、そ れを受け継ぐ監査機能にも各種の段階類型と特質が理解されることは当然である。同様のことは管理会計機能についても 認められ、等しく経営目的のための内部監査と言えども、その類型にはまさに管理会計のそれを受け継いで各種各様に類 別され、特質もそれぞれについて理解されることに成るであろう。しかしとにかく、本来的姿においては、そしてまた近 代的発展形態の典型としては、まさに経営の、経営による、経営のための会計︵四。8巨霊αq︷。同び鼠器。。ω①ヨ蔓︶ が管理会計 であり、したがって、経営の、経営による、経営のための監査︵。・&三コσq♂H宮。。羅。。。。㊦富ユ¢︶ がまさに本来的な管理会計監 査であって、特に近代的内部監査の特質たるところのものである。 最後に監査役監査と内部監査について、要点的に整理しておこう。先ずアメリカにおいては、いわゆる監査役監査なる ものはなく、本来的な監査役監査に相当するものは、公認会計士制度と強制監査制度の確立により、経営目的のための経 営内部監査部課の監査として早くから名乗りを上げて来た。たとえば一九四一年の内部監査人協会の設立は、’それ以前か らの研究熱の結集として考えられる一例であろう。 次にイギリスにおいては、最初は経営目的的監査が進展したが、やがて勅許会計士制度.の確立と会社法の改正により、 本来的意味の監査役監査は長続きしなかった。加うるに、当時の経営経済的事情においては、アメリカと異なって、経営 目的の内部監査が顕在的に成るまでには至らなかった。すなわち、時代的に管理会計思潮は可成りおくれており、アメリ 力内部監査人協会の支部が設けられたり、また管理会計の研究についても、管理会計研究委員会が最近にアメリカにその 監査の目的による内部監査の意義 三五
監査の目的による内部監査の意義 三六 使節団を派遣したりして、当該研究の後進性が覆い得ないことなどから老えても、イギリスにおける内部監査はその発展 過程が可成りおくれているものと言わなければならない。 これに対してドイツにおいては、株式法の規定通り監査役監査が厳然と存在し、経済監査士制度と併用的に意義を有し ており、したがって、経営目的のための内部監査も直接間接に効果を上げているのである。ドイツの事情と類似している のは我が国であって、一九二七年︵昭和二年︶の計理士法により職業的監査が期待されたけれども、殆んどその実益はなく、 したがってこの計理士制度が、経営目的のための内部監査機能を遂げて来た例は極めて多いのである。かような事情から 旧商法の時代には監査役監査は、本来的活動として経営業務監査を中心にして機能し、いわゆる経営目的のための内部監 査であったが、商法の改正により、いわゆる狭義の会計監査のみに制限されたた.めに、また今大戦後は公認会計士制度に よる強制監査の確立によって、従来の内部監査的機能は極めて稀薄に成ってしまった。特に強制監査施行のための準備期 間には、公認会計士監査のための下準備として、経営内で内部監査らしぎものが作用した例は多くあるが、これらは全く 本来の内部監査の機能あるいは意義が認識され得ないものであると言わなければならない。 ① 監査の目的については既に諸家の見解が指摘されているが、主として三目的の整理が一般的であると思う。たとえば青木倫太郎教授によれぽ、信用 目的、投資目的および経営目的が指摘されている。 ︵同稿、上掲論文、三四三頁。︶ ②﹀●≦邑自。︸ヨΦω18.島一二唱℃.這1=●鼻r内〇三Φぴ.、﹀巳丘諮σ蔓噛磐ぎ窪。身9一〇づ83Φ≦o島oh序①℃二三一〇>08畠訴雪叶︾、、お置層 b∂昌ユ①象二〇ジ唱唱.一一1一Q。. ⑨ ﹀■を●閏9ヨΦ伊oO■息陣こ℃O■一もQI置. ④ たとえぽアメリカの管理会計論者クロスマソの所説においても明確である。︵℃■↓.90誘8鋤ジ↓︸62彗⊆﹁Φoh竃p⊃御国ゆq①ヨ①艮>060毒二5ぴq噌嘗① ︾。8§ユコ騎菊Φ三①≦、﹀冒目一繊。。四℃やト。b。卜。Ib。N刈・上掲拙稿、彦根論叢、第四八、四九、五五号参照。︶ ⑤たとえば久保田音二郎教授によれば、管理会計の機能の限界に対する克服、あるいは管理会計の前提をなすところに、本来的に経営目的に指向する 内部監査の機能は存するのであると指摘される。 ︵同稿、内部監査任務論への批判、﹁会計﹂第七五巻、第二号、七四−七六頁。︶ ⑥ 上述.の財務会計が﹁投資家のための会計﹂として特色づけられるから、管理会計はまさに﹁経営者・管理者のための会計﹂ ︵>ooo茸鉱轟h霞
ヨ9。葛αq①9①⇒¢として指摘される。したがって、前者は﹁会計士会計﹂ ︵>80毒賦馨>68ロ隔心昌ぴq︶として、また後者は﹁経営者会計﹂ ︵ヨ。。口国、 瞬㊦ヨΦ暮鷲8鱈ロ凱コ頓︶として意義づけられるであろう。しかしながら、時々の主体の変化にまどわされず、本質的には﹁企業経営実体のための会計﹂ そして﹁経営実体のための監査﹂として吟味されなければならないものと思う。 ⑦監査役監査に関する体系的考察は未だ文献は少ない。神馬新七郎博士の著書﹁監査役監査﹂は唯一の体系的交献である。監査役監査については何れ 別の機会において、更に詳細に考察しなければならない。 ⑧ 拙稿、イギリスにおける最近の内部監査事情、内部監査の機能的意義を中心にして、彦根論叢、第六八号、三一一四〇頁。 ⑨ ↓冨﹀口αq一﹃﹀巳。ユ6きOo口づ。目。口中。ユニ〇二5身菊①喝。﹁﹃..言碧叫σq①B¢馨︾80口ロユ轟−..お凱O■英米生産性協議会は一九五〇年四月から六 月に亘って、アメリカ合衆国の産業全般を見学するために経営会計使節団を派遣した。本書はイギリス使節団の報告書である。その中で内部監査につ いても若干触れている。 ︵江村稔訳、 ﹁マネジメント・アカウンティング﹂一七ニー一七七頁。︶ イギリスにおいては、内部監査に関する体系的文献 も極めて少ない。暴く最近の書︵≧Φ養邑Φ﹁Ω餌鱒ω巨登、、H9Φ二巴﹀邑三品℃二い。巳8﹂Φ8.︶はその意味でも重要である。 ⑩神馬新七郎著、﹁監査役監査﹂七四一八六頁。 ⑪ 神馬新七郎著、上掲書、一三〇頁。 ⑫ 我が国の商法は、明治二三年︵更に三二年中のドイツ的商法の制定に始まり、その後若干の修正を重ねて来たが、戦後の昭和二六年に至って会社法 特に株式会社法が従来までのドイツ法的性格から飛躍して、全く英米法に倣い相当広汎な範囲に亘り改正されたので、通常この改正前を旧商法と呼び 改正後を新商法と称している。つまり、たとえば旧商法のドイツ的性格から新商法の英米的性格に変転するに応じて、会計・監査事情についても、と くに監査役監査の事情については、監査役監査を厳然と認めるドイツ法的立場から、その認識の薄い英米法、中でもアメリカ的性格の会計・監査事情 の導入によって、幾多の矛盾が露呈されて来たことはまぬがれ得ない次第である。 ⑬ 神馬新七郎著、上掲書、一四ニー一四三頁。 七 結 論 以上要するに、会計の本質的機能ならびに目的に滑って監査の機能ならびに目的を考察するとき、そこには管理会計機 能に通ずる管理会計監査が立論され、これこそまさに監査の目的から理解されることの出来る内部監査の意義である。 こ こに内部監査とは、経営内部目的による監査類型として、監査の本質的機能であるところの経営管理機能サーヴィスの達 成において理解することの出来るものである。換言すれば、監査の本源心機能あるいは使命において到達され得るところ 監査の目的による内部監査の意義 三七
監査の目的による内部監査の意義 三八 である。 一般的に企業経営に関して、決算監査としての財務諸表監査と、継続監査としての経営業務監査との類型は今日およそ 通説であるが、この両者の類型に関して、監査手続などに亘る異同は不問にしても、少くとも前者は企業会計の外部目的 に相通じ、そして後者は同様に企業会計の経営内部目的にその理念を持つものである。かくしてここでは財務会計と管理 会計という企業会計の二大類型に帰依しつつ、財務会計監査と管理会計監査を理解した訳である。すなわち、 ﹃企業監査 論﹄として、その近代的発展形態においては、前者は﹁財務監査論﹂であり、後者はまさにここに言う﹁業務監査論﹂で ある。以上をもって業務監査論の基礎概念とする訳である。 ︵附記、本小稿は、関西産業経理協会、監査研究会の例会における報告の要旨である。︶ ︵㎜九六〇・﹁○・二〇︶