I
微分方程式
第 1 章 微分方程式
§1 微分方程式
独立変数
x,未知の関数 y = y(x)
とその導関数y′, y", ⋯
を含む方程式を微 分方程式という.たとえば(a)
dy
dx + 3y + 2 = 0
(b)d
y dx
+ 3 dy
dx + 5y = x
(c)
d
y
dx
+ 2 d dx
y
+ dx dy + 3y
= cos x
などはその例である.未知の関数
y = y(x)
を未知関数という.また,2
つの独 立変数x, y
の未知関数z = z(x, y)
についての微分方程式もある.たとえば(d)
∂z
∂x + ∂z
∂y + z = 0
(e)∂
z
∂x
+ ∂
z
∂y
= 0
がその例である.上の(d),(e)のような微分方程式を偏微分方程式という.
これに対して,(a),(b),(c)のような微分方程式を常微分方程式という.この 本では,主として常微分方程式だけを扱うので,単に微分方程式といったら,
常微分方程式を意味するとする.
さて,微分方程式(a),(b),(c)をそれぞれ1階,2階,3階微分方程式とい う.つまり,微分方程式の中に現れる未知関数の導関数のうちで,n階導関数
y
が最も階数の高いものであるならば,これをn階微分方程式という.微分方程式の発生源は,数学の各分野はもちろん物理学,化学等の自然科学 や工学などに止まらず社会科学の各分野にも広く分布している.まず,平面上 の曲線の集まり,つまり曲線群と微分方程式の関係について述べる.
平面上で,x軸上に中心をもち,半径が一定の長さ
r
である円群を考える(I-
1
図参照).この円群に属する円を任意にとり,その中心を,A(c, 0)
とすれ ば,この円の方程式はI - 1 図
X φ
O T Q
Y
P(x,y)
A(c,0)
r r
−r
θ
y=−r y=r
(1)
(x − c)
+ y
= r
である.ここで,定数
c
に種々の値を与えることによって,この円群に属する すべての円の方程式が得られる.そこで,この(1)をいま考えている円群の方 程式という.また,定数c
には任意の値を与えることができるから,cを任意 定数という.さて,この円群に属するすべての円が共通にもっている性質を求 めるために,方程式(1)から出発して任意定数c
を含まない関係を求めよう.そのために,(1)の両辺を
x
で微分すれば(2)
(x − c) + yy′ = 0
が得られる.そこで,(1)と(2)から文字
c
を消去すれば(3)
y
dy dx
+ y
= r
が得られる.これが求めている共通性質であって,これは
1
階微分方程式であ る.さて,I
-1
図のように,点A(c, 0)
を中心とする円群に属する円を考え,そ の上に任意の点P(x, y)
をとり,点P
における接線をPT
とすればPQ
+ AQ
= AP
= r
である.ところが,PAと
PT
は直交するから,I-1
図からわかるように I- 第1章 微分方程式2
PQ = y, AQ = PQ cot φ = −PQ tan θ = −yy′ ∵ φ = θ + π 2
である.これを上式に代入すれば,上の微分方程式(3)が得られる.したがっ て,微分方程式(3)はこの円群(1)に属するすべての円が共通にもっている 性質であることが,幾何学的に確かめられた.
一般に,座標
(x, y)
と任意定数c
を含む方程式(4)
F (x, y, c) = 0
は平面上で曲線の集まり,つまり曲線群を表す.上の(4)で
c
の値を固定する たびにこの曲線群に属する曲線が1
つずつ得られる.さて,この曲線群に属す るすべての曲線が共通にもっている性質を求めるために,上の円群の例になら って,(4)の両辺をx
で微分すれば(yをx
の関数y(x)
とみなして,(4)の両 辺をx
で微分すれば)(5)
F
(x, y, c) + F
(x, y, c)y′ = 0
が得られる.そこで,(4)と(5)から文字
c
を消去すれば,x,y, y′
を含む方程 式(6)
f (x, y, y′) = 0
が得られるはずである.これは
1
階微分方程式であり,これが求める共通性質 である.このとき,(6)を曲線群(4)から導かれた微分方程式,または簡単に(4)で与えられた曲線群の微分方程式という.まとめて
1
つの任意定数を含む曲線群は1
階微分方程式を導く.例題 1 次の曲線群が導く微分方程式を求めよ.
y
= 4cx
(cは任意定数)【解答】与えられた方程式
y= 4cx と,その両辺をxで微分して得られる
yy′ = 2c から文字cを消去すれば,求める1階微分方程式
2xy′ −y= 0
が得られる. ■
§1 微分方程式 3
例題 2
2
つの任意定数A, B
を含む曲線群y = Ae
+ Be
が導く微分方程式を求めよ.【解答】与えられた方程式
y=Ae+Be の両辺をxで2回微分して
y′ = 2Ae+Be, y" = 4Ae+Be この2つの方程式からAeとBeを求めれば
Ae= 1
2 (y" −y'), Be= −y" + 2y' これを最初の方程式に代入すれば,AとBが消去されて
y" − 3y' + 2y= 0
これが求める微分方程式である. ■
例題
2
からわかるように,一般に2
つの任意定数を含む曲線群は2
階微分方程式を導く.さらに一般に,次のことが推察される.
n
個の任意定数を含む曲線群はn
階微分方程式を導く.問 1 次の曲線群が導く微分方程式を求めよ.ただし,A,B,cは任意定数である.
(1) y=ce (2) x+y− 2cx= 0
(3) y=x+Ax+B (4) x+y+ 2Ax+ 2By= 0
注意 任意定数A,Bを含む方程式y=Aeは,これを書き換えて,y=Ceと することができる.ここで,C=Aeである.このy=Ceは1つの任意定数Cし か含まない.すなわち,y=Aeには見かけ上は,2つの任意定数A,Bがあるが,
実は本質的には,1つの任意定数C(=Ae)しか含まない.今後は,方程式に含まれ ている任意定数は本質的であるものだけを考える.
例題 3 曲線
y = y(x)
の各点における法線が常に原点を通るとする.関数y(x)
はどんな微分方程式を満足するか.【解答】 流通座標を(X,Y)とすれば,この曲線上の任意の点(x,y)における法線 の方程式は
I- 第1章 微分方程式 4
Y−y= 1
y′ (X−x)
この法線が原点(0, 0)を通るから,上式にX=Y=0を代入すれば,求める微分方程 式が次のように得られる.
yy′ +x= 0 ■
例題 4
1
直線上を運動する質量m
の質点が,座標がx
である点では外力f (x)
を受けるという.この質点が時刻t
において座標x = x(t )
の位置にある として,右辺の関数x(t)
が満足する微分方程式を求めよ.【解答】ニュートン(Newton)の運動方程式
(質量) × (加速度) = (外力) を利用する.さて,この質点の加速度は dx
dt であるから,上の運動方程式から,求め る微分方程式が次のように得られる.
mdx
dt =f(x) ■
§2 微分方程式の解 まず,1階微分方程式
(1)
y dy
dx + x = 0
を満足する関数
y = y(x)
を求めてみよう.(1)の左辺を変形すれば,次のよう になる.2y dy
dx + 2x = 0 ∴ d
dx (y
+ x
) = 0
これは
x
+y
が一定であることを意味している.ところが,x+y
は負にな らないから,この定数をc
とすることができて(2)
x
+ y
= c
またはx
+ y
− c
= 0
が得られる.ここで,
c
は任意定数である.すなわち,1
階微分方程式(1)を満 足する関数y = y(x)
は上の方程式(2)で表される.すなわち,このy = y(x)
はy = ± c
− x
§2 微分方程式の解 5
I - 2 図 O
(x0,c)
F(x,y,c)=0 Y
x=x0 X となる.
このように,微分方程式を満足する関数
y = y(x)
またはy = y(x)
を陰関数 的に表示する方程式F (x, y) = 0
を与えられた微分方程式の解という.上で述べたように,
1
階微分方程式の解で最も一般的なものは,1
つの任意定 数c
を含むF (x, y, c) = 0
またはy = y(x, c)
であることが予想される.このこ とに関して,次の定理1
が知られているが,その証明を省略する.なお,その 証明については,V付録,§1(p. 295)を参照されたい.定理 1
1
階微分方程式(3)
y′ = f (x, y)
の右辺の関数
f (x, y)
が,xy平面上の点(x
, y
)
の付近で偏微分すること ができて,その偏導関数f
(x, y), f
(x, y)
が連続であるとする.このとき,条件
y(x
) = y
を満足する,微分方程式(3)の解y = y(x)
がx = x
の付 近で1
つそしてただ1
つ存在する.1
階微分方程式(3)の右辺の関数f (x, y)
が定理1
の条件を満足していると する.ここで,点(x
, y
)
は点(x
, c)
であ るとする.さて,x
を固定し,xy
平面上の 直線x = x
上に,任意の定数c
をy
座標 にもつ点(x
, c)
をとる.このとき,定理1
によって,条件y(x
) = c
を満足する,微 分方程式(3)の解がただ1
つ存在する.こ の解をF (x, y, c) = 0
で表すことにする.このように,1階微分方程式は
1
つの任意 定数を含む解をもつことがわかった.この ような解を1
階微分方程式(3)の一般解という.一般解F (x, y, c) = 0
に含ま れている任意定数c
に特定な値c
, c
, ⋯
を代入して得られる解F (x, y, c
) = 0,
F (x, y, c
) = 0, ⋯
を1
階微分方程式(3)の特殊解という.さて,§1の(3)(p. 2)で得られた微分方程式 I- 第1章 微分方程式 6
となる.ここで,右辺の極限は,曲面
S
の分割を任意の仕方で限りなく細かく したときの極限を表す.例題 3 原点を中心とし,任意の半径の球面を考え,これを
S
とする.また,r
= xi + yj + z, r =
r
とする.次式を証明せよ.ただし,球面S
の法単 位ベクトルnはS
の外側に向くようにとる.∫
r
r∙
ndS = 4π
【解答】球面Sの半径をaとする.球面上の任意の点Pの位置ベクトルをrとすれ ば,この点Pでn= r
a である.また,r= r =aである.ゆえに
∫
rr∙ndS=∫
ar∙ra dS=
∫
radS= 1
a
∫
dS= a14πa= 4π ■§14 発散定理
発散定理とよばれる基本定理を証明するために,まず準備をする.空間で定 義された関数
f = f (x, y, z)
と空間の有界な領域V
が与えられたとする.領 域V
の境界面である閉じた曲面をS
とし,曲面S
の法単位ベクトルnをS
の 外側に向くようにとる.nの成分を(cos α, cos β, cos γ)
とすれば(nとx
軸,y
軸,z軸 と の 作 る 角 を そ れ ぞ れα, β, γ
と す れ ば),n= cos α
i+ cos β
j+ cos γ
である.このとき,次の公式が成り立つ.(1)
∫∫∫
∂f ∂x dxdydz = ∫
f cos α dS
∫∫∫
∂f ∂y dxdydz = ∫
f cos β dS
∫∫∫
∂f ∂z dxdydz = ∫
f cos γ dS
[証明]まず,第
3
式を証明する.与えられた領域V
がII
-34
図のような形 状をしているとする.すなわち,z軸に平行な直線と境界面S
とは多くとも2
点で交わるとする.領域V
をxy
平面上に平射影して得られる領域をD
とす る.境界面S
にz
軸の正の向きから平行光線を当てたとき,Sの上半分S
はII- 第4章 スカラー場・ベクトル場 120
II - 34 図 n2
O
X
ΔS1
Y Z
V S
D S1 S2
ΔxΔD ΔyP
γ1 ΔS2
γ2
n1
明るく,下半分
S
は暗くなる.xy 平面上の領域D
をx
軸に平行な直 線群とy
軸に平行な直線群とで分割 する.このとき得られる微小長方形 の1
つをとり,これをΔD
とする.この長方形
ΔD
の2
辺の長さを,II
-34
図のように,ΔxとΔy
とする.長方形
ΔD
を底面とし,z軸に平行 な母線をもつ柱体を作り,これとS
および
S
の交わりである微小面分 をそれぞれΔS
およびΔS
とする.また,長方形
ΔD
の中心をP
とし,P
を通りz
軸に平行な直線とΔS
お よびΔS
の交点をそれぞれP
およ びP
とする.さらに,微小面分ΔS
とΔS
をそれぞれ上底と下底とし,z
軸に 平行な母線をもつ細長い柱体をΔV
とする.さて,点P
の座標を(x, y, 0)
とす れば,点P
とP
の座標はそれぞれ(x, y, z
)
と(x, y, z
)
であって,zとz
は(x, y)
の関数である(曲面S
とS
の方程式はそれぞれz = z
(x, y)
とz = z
(x, y)
である).さて,細長い柱体
ΔV
にわたって,次の三重積分を考え,これを近似的に変 形すれば,次のようになる.(2)
∫∫∫
∂f ∂z dxdydz
≒∫
∂f ∂z dx ΔxΔy = f (x, y, z)
ΔxΔy
= (f (x, y, z
) − f (x, y, z
)) ΔxΔy
= (f (P
) − f (P
)) ΔxΔy
次に,微小面分
ΔS
とΔS
の面積をそれぞれ同じ記号ΔS
とΔS
で表せば,これらの面積ベクトルはそれぞれ
ΔS
nとΔS
nで近似される.ただし,nとnはそれぞれ
P
とP
における境界面S
の法単位ベクトルnである.また,微小面分
ΔS
とΔS
のxy
平面上への正射影は同一であって,底面ΔD
である.§14 発散定理 121
ところが,底面
ΔD
の面積はΔxΔy
であって,その法単位ベクトルはである.ゆえに,II,第
1
章§3の公式(11)(p. 81)によって,次式が成り立つ.(3)
ΔxΔy = −(ΔS
) ∙
= −ΔS
n∙
,ΔxΔy = (ΔS
) ∙
= ΔS
n∙
= −cos γ
ΔS
, = cos γ
ΔS
ここで
n
= cos α
i+ cos β
j+ cos γ
, n= cos α
i+ cos β
j+ cos γ
とした.また,(3)の左側の式の右辺に負号が付いているのは,ΔxΔy> 0, ΔS
> 0
であり,II
-34
図からわかるように,nが下に向いていて,cos γ
≦ 0
であるからである.(3)の2
つの式を利用して(2)を変形すれば(4)
∫∫∫
∂f ∂z dxdydz
≒f (P
) cos γ
ΔS
+ f (P
) cos γ
ΔS
ところが
∫∫∫
∂f ∂z dxdydz = ∑ ∫∫∫
∂f ∂z dxdydz
である.ここで,右辺の総和は
xy
平面上の領域D
の分割にともなって現れた すべてのΔV
についての和を作ることを意味する.したがって.(4)を利用し て,次の近似式が得られる.∫∫∫
∂f ∂z dxdydz
≒∑ f (P
) cos γ
ΔS
+ ∑ f (P
) cos γ
ΔS
ゆえに,xy平面上の領域
D
の分割を限りなく細かくした極限において∫∫∫
∂f ∂z dxdydz = ∫
f cos γ dS + ∫
f cos γ dS = ∫
f cos γ dS
が成り立つ.これが証明しようとした,(1)の第
3
式である.領域V
が複雑な 形状をしているときには,これをいくつかの簡単な領域に分割して,公式を証 明する.なお,(1)の第1,第 2
式も同様に証明される. □ 空間の領域V
にわたっての関数f = f (x, y, z)
の三重積分を次のように簡 単に表すことがある.∫∫∫
f dxdydz = ∫
f dV, dV = dxdydz
II- 第4章 スカラー場・ベクトル場 122
ここで,dV
= dxdydz
を体積要素という.定理 3(発散定理) ベクトル場A内にある有界な領域
V
について,V の境界である閉じた曲面をS
とし,Sの法単位ベクトルnをS
の外側に向 けてとれば∫
∇∙
AdV= ∫
A∙
ndS
[証明]A
= A
i+ A
j+ A
とする.上で証明した公式(1)の第1,第 2
および第3
式において,それぞれf = A
, f = A
およびf = A
とおけば,それぞれ次式が得られる.
∫
∂A ∂x dV
= ∫
A
cos α dS, ∫
∂A ∂y dV
= ∫
A
cos β dS
∫
∂A ∂z dV
= ∫
A
cos γ dS
この
3
つの式を辺々加え合わせれば∫
∂A ∂x
+ ∂A ∂y
+ ∂A ∂z
dV = ∫
(A
cos α + A
cos β + A
cos γ)dS
ところが,n
= cos α
i+ cos β
j+ cos γ
であるから A∙
n= A
cos α + A
cos β + A
cos γ
である.ゆえに,上式は証明しようとした等式である. □ 例題 1 r
= xi + yj + z, r =
r
とする.有界な領域V
の境界面をS
とする.次式を証明せよ.(1) 原点
O
が境界面S
の外部にあれば∫
r
r∙
ndS = 0
(2) 原点
O
が境界面S
の内部にあれば∫
r
r∙
ndS = 4π
【解答】(1) 原点OがSの外部にあれば,Sの内部Vの各点ではr 0である.
ゆえに,§11問題3(p. 113)によって
∇∙ r
r = 0
(r 0)
§14 発散定理 123
II - 35 図
n n
n n
n n̅ V
S S′
ここで,発散定理を利用すれば,
∫
rr∙ndS=∫
∇∙
rr
dV=∫
0dV= 0(2) 原点OがSの内部Vにあれば,Oを中 心とした十分小さい半径の球面S'をかけば,球 面S'と そ の 内 部V'はVに 含 ま れ る.Vか ら V'を除去して得られる領域をV"とすれば,原 点OはV"の外部にある.V"の境界面S"はS とS'の2つの部分から成り立っている.さて,
曲面S"の法単位ベクトルnをS"の外側に向く ようにとれば,球面S'上でnはn= −nとなる.
ここで,nは球面S'の法単位ベクトルで,球面 S'の外側に向いている.さて,V"について問
(1)が成り立つから
∫
″rr∙ndS= 0∴
∫
rr∙ndS+∫
′rr∙ndS= 0∫
rr∙ndS= −∫
′rr∙ndS=∫
′rr∙ dSn (∵ n= −n)ところが,§13,例題3(p. 120)によって
∫
′rr∙n dS= 4π ∴∫
rr∙ndS= 4π ■ 例題 2 次のことを証明せよ.(1)スカラー場
f
内の任意の有界領域V
について∫
f dV = 0
ならば,f
= 0
である.(2) 同じ定義域をもつベクトル場Aとスカラー場
σ
内の任意の有界領域V
の境界面S
について∫
A∙
ndS = ∫
σ dV
II- 第4章 スカラー場・ベクトル場 124
ならば,∇∙A
= σ
である.【解答】(1) 任意に1点Pをとる.Pを中心として微小な半径εの球面とその内部 をVとする.仮定によって
∫
f dV= 0ところが,左辺の積分は近似的に 4π
3 εf(P)に等しい.ゆえに 4π3 εf(P) +ο(ε) = 0, lim
ο(ε) ε = 0
ここで,上式の両辺をεで割って,ε 0とすれば,f(P) = 0となることがわかる.
ゆえに,点Pを任意にとったから,f= 0.
(2) 任意の有界領域Vとその境界面Sについて,仮定によって,発散定理を利用 すれば,次式が得られる.
∫
A∙ndS=∫
σ dV ∴∫
∇∙AdV=∫
σ dV ∴∫
(∇∙A−σ)dV= 0したがって,領域Vを任意にとれるから,問(1)によって
∇∙A−σ= 0
∴∇∙A=σ ■
上の例題
2
での推論は,電気磁気学や流体力学などの各分野で,しばしば利 用される.発散定理において,ベクトル場Aが完全流体の定常流の速度ベクトルを表 すとすれば,右辺
∫
A∙ndS
は単位時間内に境界面S
を通過して,Sの内部から外部に流出する流体の体積を表す.したがって,左辺
∫
∇∙
AdV
からわかるように,Aの発散
∇∙
Aは各点において単位時間内に湧出する流体の体積の 空間的密度を表す.もちろん,∇∙A> 0
の場合には,流体は実際に湧き出し ていて,∇∙A< 0
の場合には,流体は実際には吸収されていると考えられる(§11(p. 111)参照).
§15 ストークスの定理
ストークスの定理とよばれる基本定理を証明するために,まず準備をする.
次のグリーン(Green)の定理が成り立つ.
§15 ストークスの定理 125
II - 36 図 O
Y2(x) Y
a x b X
A
C F
R
E
B
Y1(x) 定理 4
xy
平面で,単一閉曲線C
(自分自身とふたたび交わることのな い閉曲線)Cで囲まれた領域をR
とする.2つの関数M (x, y), N (x, y)
がC
とR
を含む領域で連続な偏導関数をもっているとする.また,閉曲線C
には,II-36
図のように,向きを付ける.このとき,次式が成り立つ.∫
(M dx + N dy) = ∫∫
∂N ∂x − ∂M ∂y dxdy
[証明] まず,II-
36
図のように,閉曲線C
と各座標軸に平行な直線とが,多くとも
2
点で交わる場合に,この 定理を証明する.II-36
図の記号に したがって,閉曲線C
を2
つの部分AEB
とAFB
に分けて考え,これら の曲線弧の方程式をそれぞれy = Y
(x), y = Y
(x)
(a
≦ x ≦ b)
とする.さて
∫∫
∂M ∂y dxdy
= ∫
∫
∂M ∂y dydx
= ∫
M (x, y)
dx = ∫
M (x, Y
(x))dx − ∫
M (x, Y
(x))dx
また,線積分の定義(p. 115)によって
∫
M (x, Y
(x))dx = ∫
M dx
∫
M (x, Y
(x))dx = − ∫
M dx
であるから,上の式は次のようになる.
− ∫∫
∂M ∂y dxdy = ∫
M dx + ∫
M dx = ∫
M dx
全く同じようにして,次式を証明することができる.
II- 第4章 スカラー場・ベクトル場 126