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Editorial Comment平田 康隆

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Academic year: 2021

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Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 35(3): 202203 (2019)

© 2019 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery

Editorial Comment

小栗論文に対する Editorial Comment

平田 康隆

東京大学医学部附属病院心臓外科

Editorial Comment on Paper by Oguri et al Yasutaka Hirata

Department of Cardiac Surgery, The University of Tokyo Hospital, Tokyo, Japan

本症例報告1

7

か月の乳児に対して両方向性グレン手術を行った後,挿管

8

時間で両側の声帯麻痺を来した が,保存的治療にて軽快した症例である.

心臓術後の声帯麻痺の原因としては手術操作に伴う反回神経麻痺が最も多く,下行大動脈の剥離を伴う症例,動 脈管の処理を伴う症例などで左側片側性に起こることが多い.片側性の場合,症状としては嗄声,吸気性喘鳴,誤 嚥などが一般的であるが,保存的治療で改善することも多い.一方,両側声帯麻痺の場合,気道狭窄症状は片側の 場合に比べて顕著であり,場合によっては気管切開を要することもある.

本症例1では,

1

)術中操作による反回神経損傷の可能性は低く,

2

)両側声帯麻痺である,という

2

点から,

気管挿管に伴う両側声帯麻痺の可能性が最も高いと考えられた.

小児における両側声帯麻痺は稀であるが,先天性のものも知られており2, 3

Hasniah

らは

7

例の先天性両側声 帯麻痺の症例を報告しており,そのうち

5

例が

Pierre Robin

症候群などのなんらかの症候群を持っていたとして いる.

7

例はいずれも出生直後から喘鳴,上気道閉塞症状が著明であり,うち

5

例(

71

%)で気管切開が必要で あった.また,

Lesnik

らの

26

例の先天性両側声帯麻痺の報告では,最終的に

14

例(

54

%)で気管切開が必要に なったとしており,なるべく気管切開を避けたい小児においてでも,両側声帯麻痺では気管切開が必要になる可 能性が比較的高いと考えられる.また,両側声帯麻痺においては,手術療法として,内視鏡的前後方輪状軟骨切 開術(

endoscopic anterior and posterior cricoid split

4や喉頭鏡下に経皮的に声帯を縫合して側方に固定する方法

endoscopic percutaneous suture lateralization

5などが報告されており,気管切開を回避できて有用な方法であっ たとしている.

本症例1においては,両側声帯麻痺の原因を,喉頭部の解剖などの詳細な検討によって明確にし,気管切開を 行うメリットとリスク,そして行わない場合のメリットとリスクが詳細に検討された結果,家族とも判断を共有し たうえで再挿管,気管切開を極力避けたうえで保存的治療を行うという選択がなされた.今回の手術以前にも挿管 後の嗄声が繰り返し認められたことから,患者本人に先天的な喉頭付近の組織,筋肉の脆弱性が存在する可能性は 否定できないものの,両側声帯麻痺の原因として気管挿管に伴う声帯の直接の圧迫だけではなく,経食道エコープ ローブによる後方からの圧迫も要因として指摘している.経食道エコープローブが後輪状軟骨後面に存在し,喉頭 を構成する内喉頭筋のうち唯一の声門開大筋である後輪状披裂筋が気管チューブと挟まれることによって特異的に 圧迫され麻痺し,圧迫を免れた声門閉鎖筋群が優位となった結果,両側声帯がほぼ正中位で固定したと考察してい る.これらのことから,声帯麻痺は可逆性であると判断し,慎重な観察と管理によって両側声帯麻痺の回復をみる ことができた.

本症例の患者は比較的短時間の挿管にもかかわらず,両側声帯麻痺という重篤な合併症を生じたが,適切な診断 によって気管切開を回避することができた.声帯麻痺における経食道エコーの関与は見逃されがちであるが,本症

doi: 10.9794/jspccs.35.202

注記:本稿は,次の論文のEditorial Commentである.

小栗沙織,ほか:鎮静と呼吸管理による保存的治療で寛解した心臓術後両側声帯麻痺.日小児循環器会誌2019; 35: 197201

(2)

203

© 2019 Japanese Society of Pediatric Cardiology and Cardiac Surgery 例1の経験から考察すると,特に新生児や乳児においては過度に太いプローブの使用,あるいは太い経鼻チュー ブなどとの併用などによる圧迫は避けるべきであると推察でき,小児心臓外科医のみならず,小児科医,麻酔科医 も常にこのような可能性を意識しておく必要がある.

このような両側声帯麻痺の症例においても,慎重な管理によって,再挿管や気管切開を避けうるということを示 したという点において,本報告は非常に有益であると考えられる.

引用文献

1) 小栗沙織,安原 潤,肥沼悟郎,ほか:鎮静と呼吸管理による保存的治療で寛解した心臓術後両側声帯麻痺.日小児循環器会 誌2019; 35: 197‒201

2) Chen EY, Inglis AF Jr: Bilateral vocal cord paralysis in children. Otolaryngol Clin North Am 2008; 41: 889‒901, viii

3) Lesnik M, Thierry B, Blanchard M, et al: Idiopathic bilateral vocal cord paralysis in infants: Case series and literature review.

Laryngoscope 2015; 125: 1724‒1728

4) Sedaghat S, Tapia M, Fredes F, et al: Endoscopic management of bilateral vocal fold paralysis in newborns and infants. Int J Pedi- atr Otorhinolaryngol 2017; 97: 13‒17

5) Montague GL, Bly RA, Nadaraja GS, et al: Endoscopic percutaneous suture lateralization for neonatal bilateral vocal fold immo- bility. Int J Pediatr Otorhinolaryngol 2018; 108: 120‒124

参照

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