九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
撥水・親水複合面上での凝縮に関する研究
山田, 寛
https://doi.org/10.15017/1500736
出版情報:Kyushu University, 2014, 博士(工学), 課程博士 バージョン:
権利関係:Fulltext available.
(様式2)
氏 名 : 山田 寛
論 文 名 : 撥水・親水複合面上での凝縮に関する研究 区 分 : 甲
論 文 内 容 の 要 旨
気相から液相へ相変化する凝縮現象は,潜熱を利用するため多くの熱を輸送することができる.
特に,固体面で液滴が凝縮・離脱を繰り返す滴状凝縮は,固体面に液膜が付着する膜状凝縮と比較 して熱伝達率が数倍から1桁高いことが知られている.しかしながら,滴状凝縮を作りやすい撥水 面では凝縮が発生しにくく,膜状凝縮になりやすい親水面では凝縮が発生しやすい特徴がある.そ のため,熱輸送性能と凝縮の発生しやすさは相反する関係にあると言える.近年,これらの特徴を 組み合わせた撥水・親水複合面を用いた研究が進められており,全面が撥水な面と比較して熱輸送 が促進されることが示されている.また,液滴の大きさと熱輸送の関係は実験と理論を組み合わせ て研究されており、直径10 m以下の液滴が熱輸送の50%以上を担っていると報告されている.そ れに対してこれまでに行われた撥水・親水複合面を用いた研究では,親水部分の幅が10 mオーダ ーであるためそのようなスケールの液滴は離脱しにくいと考えられる.そのため,液滴離脱を促進 させるためナノスケールの親水部分を有する撥水面での凝縮を実現する必要があるが,そのような 面における凝縮のメカニズムは十分理解されていない.本論文では,撥水・親水複合面上での凝縮 実験を行い,古典核生成理論を拡張することで凝縮メカニズムを明らかにした.
本論文は全5章から構成される.第1章では,本研究の背景,特に既報の凝縮に関する研究や濡 れ性の指標である接触角を解説し,研究目的および本論文の構成を述べた.
第2章では,グラファイトの表面を用いて凝縮実験を行った.この表面はナノメートルスケール の高さを有するステップと平坦なテラスで構成されており,ステップ面はテラス面と比較して親水 性であると考えられるため撥水・親水複合面として扱う事ができる.表面構造と凝縮との関係を明 らかにするため,予め原子間力顕微鏡(Atomic force microscope: AFM)を用いて表面を観察した後,
環境制御型走査電子顕微鏡(Environmental scanning electron microscope: ESEM)を用いて同じ位置で の凝縮を観察した.液滴の核生成はステップに沿って発生し,テラス面上では見られなかった.こ の結果から,サブミクロンスケールの液滴の凝縮位置を把握する手法を確立することができたと言 える.また,凝縮した液滴の形状を把握することは液滴を離脱させるため重要であるが,ミクロン スケールやそれ以下の液滴の形状は,三相界線に働く線張力に大きく影響されることが知られてい る.この値は観察された液滴の接触角と修正されたYoungの式から求められ,見かけ上サイズによ って異なることがわかった.これは,線張力自体一定であるものの固体面から液滴に働く van der
Waals相互作用等がサイズによって異なるためと考えられる.
第3章では,表面にステップの無い撥水・親水複合面を作製し凝縮実験を行った.試料面は撥水 性の単分子膜を形成するFOPAを用いて作製し,その上に集束イオンビーム(Focused ion beam: FIB) を線状に間隔をあけて照射した.FIB 照射された部分では,表面に結合しているフッ素がスパッタ されることで親水性に変化していると予想され,面の濡れ性はイオン照射量に依存していた.この
部分の幅はAFMで観察したところ40 nmから170 nmであった.作製した複合面での凝縮もESEM を用いて観察され,親水部分上から優先的に凝縮が発生し撥水部分での凝縮は見られなかった.ま た,撥水・親水複合面上での凝縮メカニズムを明らかにするため親水部分の幅や親水部分同士の間 隔を変化させて観察を行ったものの,液滴間隔はこれら表面構造に依存していないという結果が得 られた.
第4章では,第3章で観察された実験結果を説明するため理論解析を行った.そこでは,撥水・
親水複合面の親水部分に水分子が引き寄せられると仮定し,これらの分子スケールの現象を連続体 で記述される理論に組み込むための圧力と考えることで古典核生成理論を拡張した.核生成した臨 界核半径(凝縮液滴の最小曲率半径)の液滴を構成する水分子が周囲の半球状の蒸気空間から集まっ てくると仮定すると,となり合う半球同士の間隔が実験で得られた液滴間隔に関連付けられる.こ のように考えることで拡張した理論から親水部分に引き寄せられた分子による圧力増加分が推定さ れ,その圧力から水分子はおおよそ1分子層分であることがわかった.
第5章では,本研究で得られた知見を総括した.