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カオスが持つ類似性について 小笠原

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Academic year: 2021

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カオスが持つ類似性について

小笠原 義仁(Yoshihito Ogasawara)

早稲田大学

自然科学で言うところのカオスとは、いわゆる「混沌」とは異なり、例えば次のよう な性質によって特徴付けられる[1,2]。

・任意の素周期をもった周期点の存在

・周期点の稠密性

・初期値鋭敏性

・稠密な軌道の存在

・位相推移性

ここでは厳密性を無視して、直感的な説明を試みると、

「カオスとは、ある種の法則に従っているにもかかわらず(それも、しばしば 単純な法則)、ランダムであるかのように振る舞うもの」

として特徴付ける事が出来る。コンピュータ科学の発展と共に発見されたこのカオスの 概念は、それまでの自然科学における

・法則によって現象を完全に予想出来る

・ランダムであるがゆえに現象が予想出来ない

という二元論的な考え方を揺るがすものであり、量子力学が持つ確率論的側面と共に、

当時の自然認識を揺るがすものであった。

またカオスの分析と共に、ランダムの概念が極めて理想的な概念である事も露わにさ れた。実際、一見振る舞いがランダムであったとしても、それが本当にランダムである 事を示すためには、カオスではない、すなわちそこにはあらゆる法則性が隠されていな い、という事を立証する必要がある。

例えば、点列

x(1), x(2), x(3), … が与えられた時に、最初の100番目

x(1), x(2), x(3), …, x(100)

までに周期性が無い事が証明されたとしても、101番目にx(1)が現れて x(1), x(2), x(3), …, x(100), x(1), x(2), x(3), …, x(100), …

という周期100の周期性があるかもしれない可能性を否定出来ない。実際、この点列が 決定論的に決まっているとするならば、101番目に1番目と同じ点が現れたならば、102 番目以降は2番目以降と同じ振る舞いをする事になる。

それでは、101番目

x(1), x(2), x(3), …, x(100), x(101)

まで調べて、周期性が無い事が証明されたとしても、今度は102 番目に x(1)が現れて、

やはり今度は周期101の周期性があるかもしれない、という可能性を否定する事が出来

(2)

ない。この議論はいくらでも繰り返す事が出来るので、与えられた点列が周期性を持た ない(法則性を持たない、カオスではない)事を示すのは、現実的には不可能である。

実際、

「調べた限り周期性(法則性)が見つけられなかった事」

により

「あらゆる周期性(法則性)が無い事」

を立証した事にはならない。すなわち、カオスの発見とは、決定論的自然観を揺るがす ものであると同時に、(その前提としてランダムの存在が仮定されている)確率論的自 然観をも揺るがすものであった。

さらにカオスが持つ特徴として、

「そのランダムであるかのような複雑な振る舞いの中から、しばしばそのアト ラクタとして、フラクタル(自己相似)構造が現れる」

という性質を挙げる事が出来る。あらゆる法則性を拒絶しているランダムからは、決し てこのような構造は生まれない。一見するとランダムであるかのような振る舞いであっ ても、そこに法則性が潜んでいるからこそ現れ出る性質である。逆に言うと、混沌と思 えるようなものであっても、それがランダムではなくカオスであるならば、そこから構 造が生まれ出る(創発される)可能性があるという事である。そして、その構造である フラクタル(自己相似)構造とは、自然現象のあらゆる箇所に表れる特徴である事が知 られている[3]。

発表者は、このカオスの概念を利用して、意識のハードプロブレム、すなわち

「私たちの意識経験にはなぜ、主観的な側面(クオリア)が伴うのか」

という問題に新たな光を当てられないかという研究を試みている[4-7]。すなわち、主観 的側面を持つ「意識」なるものの起源を、カオスが持つ特徴からの類似性(アナロジー)

として捉えられないか、すなわち混沌から現れる構造として捉えられないか、という事 である。

[参考文献]

[1] R. L. Devaney, An Introduction to Chaotic Dynamical Systems(Westview Press, Boulder, CO, 2003).

[2] Y. Ogasawara and S. Oishi: Consideration of a Primitive Chaos, Journal of the Physical Society of Japan 81 (2012) 103001.

[3] B. B. Mandelbrot: The Fractal Geometry of Nature (W. H. Freeman &Co., New York, 1983).

[4] 小笠原義仁「ものの見方としての位相空間論入門」培風館, 2011年9月.

[5] Y. Ogasawara: A Structure behind Primitive Chaos, Journal of the Physical Society of Japan 84 (2015) 64007.

[6] K. Lewin (translated by F. Heider and G. M. Heider)“Principles of Topological Psychology”McGraw-Hill Book Company, New York, 1936.

[7] V. Weizsäcker“Der Gestaltkreis: Theorie der Einheit von Wahrnehmen und Bewegen”Georg Thieme Verlag, Stuttgart, 1940.

参照

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