保育学生の遊び実践を通した遊び観に関する一考察
-遊び経験と子ども理解の視点から-
A Study on Playful View through Practice of Childcare Students' Play
― From a viewpoint of play experience and child understanding ―
児童学科 前田 和代1 問題と目的
本研究の目的は、保育学生が授業内で遊びの実践を経験した後、遊びをどのように捉えたのか、また、
遊びを通した子ども理解について考察することである。
幼稚園教育要領に「遊びを通して総合的に学ぶ」と示されているように、遊びは子どもの園生活の中心 である1)。子どもはたくさんの遊び経験を通して、様々な成長をする。遊び経験が充実するためには、保 育者の遊びの理解は重要であり、保育者の適切な援助が大切であることも自明のことである。具体的な援 助の際の遊びの理解を考えると保育者自身の遊び経験も援助する際の一助になるのではないだろうか。し かし、最近では、環境の変化などにより、直接的な遊び経験が乏しい保育者も少なくない。そのため、子 どもと一緒に遊ぶことに戸惑ったり、遊びの理解や適切な援助の方法が困難だったりする場合も見られ る。このような状況を踏まえると、保育学生においても、遊びの重要性についての理論を学ぶため、遊び への理解は深まるが、具体的な援助や環境構成などの実践へ繋げることは容易でないと考えられる。
このような現状を踏まえ、まず、学生自身がどのような遊び経験をし、どのように遊びを捉えているの かという遊び観を検討することは、実践への一助になると言える。
保育学生の幼児期の遊び経験に関する研究としては、調査研究として、佐々木らが大学生の心理特性と 幼児期の遊び経験の関連について研究を行った2)。佐々木らは、回想的方法により、遊びの評価を4タイ プに分類した。幼児期の遊びに不安要素を感じながら遊びに集中することができなかったとしても、遊び を回避することなく遊び続けることが示された。また、福田らは、授業内での質問紙調査から、保育専攻 生における幼児期の遊び体験量と遊びへの参加度に関する評価を行った3)。その結果、出身園によって幼 児期における遊び体験量に差があることを明らかにした。幼児期の遊び体験量は現在の学生自身の遊びへ の参加度の評価に関係していることも明らかにしている。これらの研究から、保育学生の遊び経験と現在 の状況の関係性を捉えることができる。
養成校の授業における遊び経験からの学びについての研究では、実践の対象を運動、絵画などに限定さ れた研究が多い。例えば、櫻木は、「保育内容・健康」での運動遊びの実践、グループワーク、全体発表 の授業体験から、運動遊びを導入することの効果として、質問紙調査から保育者の援助にかかわるさまざ まな観点から学び、気付きがあることを明らかにした4)。宮本は、保育内容総論の授業における遊びと文 化の授業実践において、交互描画活動における振り返りシートを5領域の視点から分類を行った5)。その 結果、実践を通して学生が子どもの世界に降りたてる専門性、相手の気持ちをくみ取りながら自己表現す る専門性、相手のための自己表現することを通しての二者関係を育んでいくという専門性という3つの専 門性に着目していることを明らかにしている。また、上村は音楽表現の観点による学生の遊びの考案、実 践経験から、子ども理解を出発点として保育実践を展開するという即応力の基礎となる思考プロセスを形
動、絵画、音楽表現などの遊びに特化しており、園生活での子どもたちの自発的な遊び全般とは捉えにく い。
以上のように、幼児期の遊び経験に関する調査研究、授業内の特定の遊び(教員からの指定)実践によ る学生の気付き、身体機能や心理的機能との関係性という視点の研究から、保育学生の現状を把握するこ とができる。しかし、養成校における授業内での園生活における子どもが実際に遊んでいる遊び実践経験 と、その遊び経験から、子どもだったらどのような経験になるのかというような子ども理解についての研 究は見当たらない。遊びの実践を通して子ども理解を得ることは具体的な遊びの理解と援助方法の一助に なると考える。そこで、本研究では、授業内における遊びの実践を通した学生の遊び観と子ども理解を考 察することを目的とする。特に、今回対象の学生は、入学してすぐのあまり専門知識を学んでいない学生 を対象にすることにより、学生が遊び観や子ども理解をどのように構築していくのという視点から捉えて いくとする。
2 研究方法
対象学生は、授業「総合演習」の筆者が担当した2グループの学生24名(各12名ずつ)である。授業 内で、まず筆者が具体的な遊びをいくつか提案し、一緒に実践していく。次に各学生が調べてきた遊びを 他者に伝えながら、実践していく。その後、さらにできるだけたくさんの遊びを調べたり思い出したりし ながら抽出していく。合計162の遊びが抽出された。その遊びを学生の視点から、様々な分類を行う。こ のような授業実践から、最終授業の際、学生に質問紙調査を行った。まず、予備調査として、学生が取り あげた162の遊びのうち、「知っている遊び」「知っていて経験した遊び」の有無を尋ねた。そして、自由 記述式による質問を行った。質問項目は、下記に示す。
1 学生自身が授業でみんなと遊んだ感想 2 遊びのイメージ
3 子どもがこの遊びを経験するとどのような気持ちになると思いますか。全体的な考えと、具体的 な遊びを取りあげ子どもが感じると考えられる気持ちを書いてください。
4 遊び実践から学んだこと
まず、予備調査としての学生の遊び経験数を整理し、学生の遊び経験を考察する。そして、その結果を 踏まえ、自由記述における内容を考察する。各回答数については、複数の内容を記述している学生がいる ため、学生数とは一致しない。
尚、倫理的配慮においては、学生に研究以外の目的には使用しないこと、個人を特定しないことについ て対象学生に授業内において了解を得ている。
3 結果と考察
(1)学生の遊び経験
学生が経験した遊び、保育雑誌やインターネットで調べた遊び合計162の遊びを対象に「知っている遊 び」「経験したことがある遊び」を尋ねた。その結果、全員が知っていて、経験があった遊びは表1に示 したように30の遊びが該当した。
表1 調査対象学生全員が知っていて経験した遊び
ハンカチ落とし 椅子取りゲーム 氷鬼 しっぽとり おままごと
もうじゅうがり オセロ マジカルバナナ お店やさんごっこ 大縄跳び
にらめっこ 折り紙 泥だんご作り ジェンガ はないちもんめ
伝画ゲーム だるまさんの一日 色鬼 高おに 腕相撲
じゃんけんポイポイ アルプス一万尺 指相撲 しりとり つみき
あたまひざかたぽん どろけー(けいどろ) だるまさんがころんだ フルーツバスケット おせんべやけたかな
ドッジボール けんけんぱ 伝言ゲーム かくれんぼ トランプ
おしくらまんじゅう
さらに、対象学生の8割以上が知っていて経験した遊びは表2に示す通り28の遊びが該当した。
表2 8割以上の対象学生が知っていて経験した遊び
竹馬 宝探し あたまかたひざぽん 震源地ゲーム かげふみ あぶくたった 相撲 じゃんけん列車 ジェスチャーゲーム ウインク殺人事件 お弁当箱の歌 隠れ鬼 粘土 お寺の和尚さん 郵便屋さんの落とし物 押し相撲 羽子板 すごろく ウノ 家族ごっこ いないいないばあ 家族ごっこ かるた レゴブロック リレー かごめかごめ あーした天気になあれ こま回し あやとり 紙相撲
したがって、ほとんどの学生が知っていて経験した遊びを含めると、58 の遊びがほぼ全員の学生が共 通して経験してきた遊びであることが分かった。ほぼ全員が知っていて経験している遊び内容をみると、
「氷鬼」「高鬼」などの鬼ごっこ、「はないちもんめ」などの伝承遊び、「おままごと」「おみせやさんごっこ」
などのごっこ遊びなどが多い傾向だった。さらに、「椅子取りゲーム」や「大縄跳び」「泥団子つくり」「ど ろけー」など園生活で経験してきたと考えられる遊び、特に外遊びが多くあがった。これらの遊び内容か ら、学生は大勢の友達との外遊びが印象的だったといえる。
(2)学生の遊び実践について
次に、授業で実際に経験した遊び全体に対する感想の分析、考察を行った。総回答数は、30であった。
まず、入学して間もない1年生であったことから、「みんなで遊びをすると仲が深まったり、会話するきっ かけになる」ことや、「みんなとかかわることが多くて、あんまり話したことがなかった人とも遊びを通 して距離が縮まった」「コミュニケーションをとることができた」など、遊びを通して互いを知ることが できたという感想が多く見られた。さらに、「童心にかえることができた」「小さいころに遊んでいた遊び は全力で楽しめるんだ」「全然楽しめたし、懐かしかった」「子どものころに楽しかった遊びは今やっても 楽しいんだなと思った」というような感想からは、子どもの時に経験した遊びを大人になって実践しても 楽しいと感じていることがわかった。さらに、懐かしんでいることから、子どもの時の遊び経験を思い出 すきっかけにもなっていたといえる。また、「まったく知らない遊び、知っているけどやったことがない 遊び」「知らない遊びを教えてもらった」など、自分の経験の幅が広がったという視点からの感想も見ら れた。また、「自分が保育者になったら伝えたい」「実習の時に知っておくと役に立つ」というような保育 学生として視点や、「知らない遊びを教えてもらうのは子どもも同じだな」というような子ども側の視点 もあった。このように、学生は自分自身が楽しめたことから、遊びの実践を通して、まず、コミュニケー
を学生自身が体験していると考えられる。遊びからの学びへの理解が深まっている。
(3)学生の遊びイメージについて
遊びのイメージについての総回答数は 42 であった。回答の文言を分析した結果、「楽しい」「楽しむ」
という言葉が含まれた回答は19あり、約半数の回答に含まれていた。単語として「楽しい」という回答 が多かったが、中には「みんなで楽しめる」「楽しくて盛り上がる」「みんなでやって楽しい」など、楽し さを共有するというような回答もあった。これらから、遊びにおける「楽しい」は、仲間との共有である とのイメージを持っているといえる。この回答の要因として、授業での遊びの実践の経験が考えられる。
自分たちが実際経験して楽しかったという思いがすぐにイメージにつながったと考えられるからである。
約半数の回答であることから、まず遊びのイメージは「楽しい」であるといえる。
さらに、「たくさんの種類がある」「種類が多い」などの回答から、遊びの種類に関する回答が見られた。
これらの回答からは授業でのたくさんの遊び経験や調べ学習からなどの授業での学びを反映していると考 えられる。さらに「コミュニケーションが取れる」「みんなでやる」というような回答からも、やはり人 とのかかわりにつながるイメージをもっていると言える。このような回答から、保育学生の遊びのイメー ジはみんなで行う楽しいものという肯定的に捉えていると考えられる。しかし、「みんなとやって楽しい ことのほうが多いけど、うまくみんなの輪に入れなかったり、みんなと遊ぶのがおっくうになったりする イメージ。」という回答が1つあった。さらに、続きとして「そこに保育者がどうかかわるかだと思います」
と記述されていた。この回答から、自分自身の経験をふまえ、「みんなで楽しい」だけでない子どもいる ことという視点、さらに保育者としての役割を見出している。このような視点があったのは、やはり遊び の実践を経験したからこそ、自分の経験を振り返り、保育者としての必要なスキルまで考えることができ たといえる。
(4)子どもが遊びを経験するときに抱く思いについて
次に、子ども理解に関する質問として学生には「子どもがこの遊びを経験するとどのような気持ちにな ると思いますか。全体的と具体的な遊びを取り上げ子どもが感じると考えられる気持ち」という内容の質 問を行った。「全体的」「具体的」を一つの回答で記述した学生がいたため、全体的についての総回答数は 21であった。そのうち、「楽しい」のワードが含まれた回答は16あった。これは総回答数の76%を示す。
学生の遊びのイメージや遊び実践の感想でもやはり「楽しい」のワードが多かったことから、学生は自分 自身が経験した楽しい気持ちはおそらく子どもも同じように感じるのではないかという捉えと、自分自身 が子どものころの経験を思い出したことからの捉えの二つの視点から捉えたといえる。さらに、ここでの 回答の特徴は、学生自身のイメージでは、「楽しい」の一言が多く見られたが、「遊びは楽しく、面白い、
またやりたいと思う」「自分たちで考えたり、協力したりして楽しい」「友達や保育者とかかわれて楽しい という気持ちになる」など、どのように楽しいのかというような具体的な気持ちが記述されている回答も 多かった。さらに、「もっとやりたい」「頑張ろうという気持ちになる」「負けたら悔しい」「自分もできる ようになるという向上心」「相手への尊重」「友達つくりのきっかけ」など、子どもが遊びを通して経験す ると考えられるさまざまな気持ちについての記述もあった。これらの具体的な気持ちの記述から、子ども は遊びを通してまず、楽しい経験ができるだろうという思いが読み取れる。学生は子どもにとって遊びは 楽しいものであると捉えている。そして、様々な具体的な気持ちの記述から、仲間との楽しい経験を通し て、一人一人がより複雑な気持ちの経験をしていくと捉えたといえる。このような記述から、学生は子ど もの様々な気持ちを知ろうとしていることが読み取れる。
さらに、具体的な遊びを子どもが感じると考えられる思いについては22の回答があった。多く上がっ た遊びは「ごっこ遊び」「鬼ごっこ」「ゲーム」の3つであった。
そのひとつの「ごっこ遊び」は授業では経験していない遊びである。しかし、学生の多くが取りあげて いることから、子どもの時の経験で印象的な遊びの一つであったと考えられる。「ごっこ遊び」では、「自 分があこがれている人や身近な人をまねることで、自分がなりたい人になれる楽しさ感じる」「独自の世 界で何かになりきることがおもしろい」「気分に合わせてお母さんになってみたり、犬になってみたり、
とても楽しめるし、家族になりきるので、一緒に遊んでいる子を信頼できるようになれる」というような 記述があった。これらの記述から、「ごっこ遊び」が人とかかわることや自分たちで自由に考えて展開で きるおもしろさがあることを遊びの視点として捉えてことがわかる。このような視点は学生自身が経験 し、遊びの展開を理解しているからこその視点といえる。遊びの質についても捉えている。
「鬼ごっこ」では、「ルールが単純だし、わかりやすいのですぐ楽しめる」「競争心とか負けたくない気 持ちが育つ」「鬼につかまってしまうドキドキ感。スリル感で気持ちが興奮して、捕まっても触れ合えて なんか楽しくなる」「大人数で遊べる」「みんなと遊べる喜びの気持ち」「もっと足が速くなって人を捕ま えたいという向上心」「氷鬼では、同じチームの人が捕まった時、助けようという思いやりの心が芽生える」
「悔しさ、達成感」などの具体的な記述が見られた。「ルールが単純」の記述では、特にすぐ遊べる楽しさ というルール、つまり遊びの方法から捉えていることがわかる。また、鬼の立場、鬼から逃げる立場での 気持ちに触れている記述からは、やはり経験したからこその視点である。このような具体的な気持ちの記 述は、学生自身の経験で学んだことを子どもたちに経験してほしいと感じた気持ちの育ちから捉えた視点 と考えられる。
「ゲーム」では、「大根抜き」「爆弾ゲーム」「なんでもバスケット」「ドッジボール」「リレー」「じゃん けん列車」などが具体的な遊びとして挙げられていた。「負けたくない気持ち」「負けたら悔しい」「勝て ばうれしい」「みんなで協力できる遊びなので、みんなでやりたいという思いが強くなる」などの記述が あった。「勝ち」「負け」の勝負による気持ちについての記述が特に多いことから、鬼ごっこと同様、これ らの遊びを経験すると、子どもたちが様々な気持ちを経験することからの育ちを捉えていると考えられ る。さらに、ゲームではチーム分けがある場合が多いので、「みんなで協力できる」という記述のあるよ うに、仲間意識について触れている視点もあった。これらの遊びの視点から、学生は、一つ一つの遊びに ついても、楽しいだけでなく、その遊びを通した具体的な経験からの気持ちを考えることがきでたといえ る。このように、具体的な遊び場面からの子どもの具体的な経験する気持ちや、育つと考えられる気持ち や友達関係について読み取っていくことは、一人ひとりの思いを考えられるという子ども理解につながる 学びと言える。
(5)遊び実践からの学びについて
学生が遊び実践から学んだことについての総回答数は33である。記述における多かった視点は、発達 の視点であった。「年齢に応じてルールなどの工夫が大切だと思った」「年齢や好みに合わせて遊びを選ぶ こと」「じゃんけんや数字を使った遊びは、年齢的にできる子とできない子がいるので考慮する必要があ る」などの記述から、年齢によって遊びや遊び方が違うということへの理解につながっているといえる。
年齢や子どもの興味に合わせた遊びの展開が必要であることを経験から学ぶことができたと考えられる。
また、多かった記述のもう一つは「種類」である。今回の授業で、改めて自分の経験した遊びを振り返っ たり、遊びを調べたりした学習での学びである。数だけでなく、分類したことにより、戸外遊びや室内遊 び、道具が必要な遊び、歌がある遊びなど具体的な遊びの方法にも触れる学びを得たことがわかった。例 えば、「いろいろな種類が本当にたくさんあって子どもたちがどんな時でも遊べるようになっている」「遊
きたと言える。「一人ひとりへのかかわり方が違うこと」「子どもたちが様々な反応をすること」「毎回同 じ子が鬼になってしまったときの解決策を考えておく必要性」「生きるための必要な能力を育てるものが 含まれている」などの記述などからは、遊びを通した一人ひとりの子ども理解について捉えた視点である。
同じ遊びをしていても、その中での様々気持ちや、育ちがあることへの気づきである。学生は、遊びの実 践を通して、子どもの発達や育ちについての気づきを学ぶことができた。また、たくさんの遊び実践から、
状況に適した遊びを選ぶという遊び自体の理解も深めることができたといえる。
4 総合考察
(1)保育学生の遊び観
まず、予備調査として行った遊び経験については、「ままごと」「鬼ごっこ」「ゲーム」の経験が多かった。
これらの遊びは、いわゆる園生活で経験してきたと考えられるオーソドックスな遊びであるといえる。園 生活で育まれている遊びであると言える。そして、遊び経験を踏まえた授業での遊び実践の感想、遊びの イメージの記述については、「楽しい」というキーワードが上がった。自分たちが授業で経験したこと、
経験したことにより思い出したことも踏まえたと言える。このような実践経験から、まず保育学生の遊び 観として、遊びは楽しいという捉えができる。そして、その「楽しい」の中にも、「コミュニケーション がとれる」「仲良くなれる」とう関係構築の方法としての楽しさとして捉えている視点があることがわかっ た。さらに、種類の多さを挙げている。楽しいこと、種類が多いことから様々な形で人とのかかわりが持 てるという捉えに至ったと言える。
このような結果から、保育学生の遊び観は楽しい肯定的なものであることがかわった。そして、そこに は、具体的なコミュニケーションや友達との関係構築など遊びで得る経験を通した「楽しさ」がある。
一方、多くの学生が肯定的に捉えている中で、肯定的記述として用いられた「みんなで楽しい」がそう でない子どもいることという視点もあった。この視点は、遊びを通した子ども理解につながると言える。
なぜなら、遊びは子どもにとってすべてが楽しいものでないからである。そこには、楽しむために気持ち をコントロールする葛藤やできるようになりたいという頑張りなどの姿があるからである。
(2)遊びの実践を通した子ども理解
このような遊び観を踏まえた子ども理解では、2つ挙げられる。一つは、遊びを通した様々な気持ちの 経験や育ちである。まず、子どもが感じると考えられる気持ちに挙げられているように「楽しい」経験が ある。さらに、頑張ろうという気持ちや負けたら悔しいという気持ちの経験や、仲間との関係性について の経験である。遊びの過程に着目していると言える。楽しい経験になっていく過程には、より様々な気持 ちの経験があるという理解を得ていると考えられる。遊びを通して、学生は楽しい、悔しい、嬉しいなど 様々な気持ちを得るという心の育ちに関する理解を得たことが一つである。この捉え方は、授業での遊び 実践だけでなく、おそらく自分の遊び経験をも踏まえた子ども理解であると考えられる。
もう一つの子ども理解は、発達と遊びの繋がりである。学びにおいても遊びの「種類」が挙げられたよ うに、今回、学生はたくさんの遊びの経験をした。たくさんの遊びがある中で、子どもの年齢や遊び理解、
状況に適した遊びの選択があることへの気づきであった。遊び自体への具体的な理解から子ども一人一人 に経験してほしい遊びを考えるという気づきを得たことである。
本研究では、保育学生が授業内で遊びの実践を経験した後、遊びをどのように捉えたのか、また、遊び を通した子ども理解について考察した。授業での遊びの実践から、具体的な一人ひとりの遊びの中での思 いや育ちの理解構築が育まれることがわかった。さらに、年齢にあった適切な遊び内容や展開の仕方のな ど遊び方についても学ぶことができた。
知っていることは保育者として保育内容を展開していくうえで必要なことである。大切なのは、その遊 びが子どもたちにどのような育ちが育まれていくのかという専門性としての遊び理解である。
1年生の前期授業のため、まだ多くの保育における理論を学んでいるわけではない学生が対象であった ため、おそらく回答には自分の遊び経験が大きく反映していると思われる。そう考えると、具体的な遊び 場面での子どもが経験すると考えられる多々な気持ちの読み取りは今後変化したり増加したりしていくと 考えられる。ここに、本研究における限界がある。そこで、今後は、実習や授業での学びを深めた学年で も調査を行うことにより、保育学生の遊び観や子ども理解についての考察を検討していきたい。
註
1)文部科学省(2018)幼稚園教育要領解説書 フレーベル館 p26
2)佐々木直美 井原友里恵他(2017)大学生の心理特性と幼児期の遊び体験との関連について 山口県 立大学学術情報 第10号 看護栄養学部紀要 通巻第10号 pp11-17
3)福田真奈(2011)保育専攻学生における幼児期の遊び体験量と遊びへの参加度に関する評価 白鷗大 学論集 第25巻第2号 pp255-275
4)櫻木真智子(2016)保育専門科目に実践を取り入れることによる学びに関する報告―「保育内容・健 康」に模擬保育形式の運動遊びを導入することの効果を例として― 聖徳大学研究紀要 聖徳大学 第27号 聖徳大学短期大学部 第49号 pp127-134
5)宮本桃英(2017)保育養成における総合的活動としての遊びに関する一考察―「保育内容総論 遊び と文化」の授業実践をふまえて― 名古屋女子大学紀要63(人・社)pp335-345
6)上村晶(2013)保育者養成段階における保育実践力の向上に関する一考察 高田短期大学 pp85-
94
7)上田知佳 安島栄文(2014)保育者養成の「子どもの遊び」の授業における学生の意識向上と「その 課題 甲子園短期大学紀要32 pp93-97
参考文献
・赤木敏之(2010)幼稚園の外遊びの実態と幼稚園教諭の外遊びの意識 聖和論集(38) pp1-9
・澤田由美 澤田孝二(2010)学生が考える子どもの運動機能や精神機能の発達を促す遊びや活動―保育 系短期大学生に実施したアンケート調査結果の分析―山梨学院大学研究紀要 第30巻 pp65-81
・清水桂子(2015)保育者養成における遊びの実際から理解へ導く「保育内容総論」の授業展開と一考察 北翔大学短期大学部研究紀要 第53号 pp71-78
・丸田愛子4(2017)保育者の専門性を理解する主体的な学びの検討―短期大学における「保育者論」に 着目して― 鹿児島女子短期大学紀要 第52号 pp141-144