遊びの経験と伝達に関する社会学的研究
~大人の子ども期の遊び経験の分析から~
清水 一巳 上田 和美
A Sociological Study on Communication and Experience of Play
:analysis of adult’s play experience in childhood
Kazumi SHIMIZU Kazumi UEDA
子どもの遊びへの期待形成の構造を明らかにすることを目的に、大人の「遊び経験」 と「子どもとの遊び」の関連について分析をおこなった。①子ども期の遊び経験に 「性別 」 が関連し、現在の子どもとの遊びには 「自然、住居環境」 が関連している。②女性は、 現在の子どもとの遊びにおいて、自身の子ども期に経験のない遊びをおこなっている割 合が高い。また、これらの分析過程から「遊びのコミュニケーション」という分析視点 の有効性を確認した。 1.はじめに これまで生活時間や空間の変化にともない,子どもの遊びが変容しているとの指摘は多く のところでなされてきた(住田氏 2002,仙田氏 2011 など)。また,この視点は一般化してお り,今の子どものスポーツや外遊びの環境について(文部科学省調査 2013),「悪くなった」 とする者が 60.8%にのぼり,「よくなった」27.3%,「変わらない」8.4%と,多くの大人が, 自分の子どもの頃との比較から,遊びの環境が悪化しているという認識をもっていることが わかる。このように,生活環境の変化にともない,子どもが遊べなくなったという認識が一 般化してきているといえる。 そこで,本研究では,子どもの「遊び」をめぐり,大人はその意味をどのようにつくり上 げているのか,子ども期の経験との関連から明らかにしていく。また,子ども期に「経験さ れた遊び」と,子どもに「伝えられる遊び」との差異をもたらす要因について社会学的視点 から考察を行なう。 そして,その期待をつくり上げている遊びの経験と知識との関係について構造化していく ことにつなげていきたい。それは,遊びのための能力(遊ぶ力)を,大人の期待により形成 された媒介物(環境の整備,モノ)により影響を受けた経験と知識による実践としてとらえ ることであり,現代に共有された遊びの意味を明らかにすることでもある。
2.研究枠組 本論では,子どもの遊び環境としての大人の存在に焦点を当て,子どもの遊びへの期待が どのように形成されているのかを明らかにする。 現代の子どもの遊びの環境について,村瀬氏(2007)は世代間の遊び環境を比較し,「子 ども(友人)同士の関わりだけでは,外遊び ・ スポーツ遊びの幅広い実践が保障されない」 との見方を示している。そして,「大人の関与による外遊びの紹介,奨励,支援が必要」で あるという。しかし,子どもの遊びの環境としての大人の存在について,元森氏(2006)は, 子どもの自由という視点から,そこには,「大人の不断の配慮という不自由さ」か「大人の恣 意の発見」という隘路を指摘する。そして,プレーパークを事例に,「『子ども』も『大人』も 〈自由〉を実感し,その非対称性を強く意識しなくなる場」として大人と子どもの関係性の可 能性を見出している。 つまり,現代の子どもの「遊び」は,子どもにより占有されているだけでなく,大人の影 響,関わり方に大きな影響を受けていることを前提に考える必要があるといえる。そこで, 大人の遊びの経験(①)により影響され形成された観念として,遊び観(②)を位置づける。 そして,この遊び観をもとに形成された,子どもにむけられる期待と環境(③)を媒介として, 大人 ― 子ども間のコミュニケーションが成立し,「遊び」の伝達がなされるものと捉えてい く。 西村氏(2005)によると,遊ぶということは「遊びというコミュニケーション行動につい てのメタ・コミュニケーションが可能」でなければならず,そこには「現実世界にあって, 遊びというひとつのコミュニケーション状況に立つ『現実の遊ぶ自我』」があるという。 日常生活の中で子どもは,この大人の遊びのコミュニケーション行為(二重のコミュニ ケーション行為)を模倣することにより,「メタ・コミュニケーション的了解」という認識行 為の一様式を獲得していく側面があるのではないだろうか。そのためには,社会の中で遊び のコミュニケーションが成立している必要がある。この「遊びのコミュニケーション行為」 の模倣というコミュニケーション構造を明らかにしていくことは,子どもの遊び環境を考え ていく上で重要な示唆を与えてくれるものと思われる。 そこで,本報告では,質問紙調査の結果をもとに,現代の大人と子どもの遊びの現状(幼 児期の子どもをもつ親の遊び体験と,子どもと一緒におこなう遊び)について明らかにし, 遊びの経験(実践)と遊びのコミュニケーション(伝達)との関係について考察を行なう。
3.調査概要 政令指定都市内にある幼稚園を通し,保護者(父親 267 名,母親 272 名)に対して質問紙 を用いて調査を実施した。期間や回収率は以下の通りとなっている。 調査期間:平成 25 年6月8日から6月 26 日まで 回収率 :回収数 265 部(回収率 49.17%) 4.調査の結果 ①属性 表1-① . 現在の居住地域と現在の居住形態 表1-② . 性別と年齢 ୡ௦㸦ぶᏊ㸧 ྠᒃ ୕ୡ௦㸦♽∗ẕ 㸫ぶ㸫Ꮚ㸧ྠᒃ ᐙ᪘㸦ぶᏊ㸫 ぶᏊ㸧ྠᒃ ࡑࡢ ᗘᩘ ⌧ᅾࡢᒃఫᆅᇦࡢ ⌧ᅾࡢᒃఫᙧែࡢ ᗘᩘ ⌧ᅾࡢᒃఫᆅᇦࡢ ⌧ᅾࡢᒃఫᙧែࡢ ᗘᩘ ⌧ᅾࡢᒃఫᆅᇦࡢ ⌧ᅾࡢᒃఫᙧែࡢ ᗘᩘ ⌧ᅾࡢᒃఫᆅᇦࡢ ⌧ᅾࡢᒃఫᙧែࡢ ྜィ ⌧ᅾࡢᒃఫᙧែ ྜィ ⌧ ᅾ ࡢ ᒃ ఫ ᆅ ᇦ 㒔ᕷ㒊ᒃఫ⩌ 㑹እఫᏯᆅᒃ ఫ⩌ ࡑࡢ 㹼ṓ 㹼ṓ 㹼ṓ 㹼ṓ 㹼ṓ 㹼ṓ 㹼ṓ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ྜィ ᖺ㱋 ྜィ ᛶู ዪᛶ ⏨ᛶ
本報告で用いる調査対象者の特徴として,都市部居住者(59.6%),郊外の住宅地居住者 (40.0%),その他(0.4%)となっており,都市部での生活経験を有する者に限定されている。 また,年齢層も 20 歳代(4.6%),30 歳代(63.9%),40 歳代(30.4%),50 歳代(1.2%)と,30 歳代が6割と,非常に限定的なものとなっている。しかし,これからの子どもを取り巻く 環境に関わりをもつという意味において,この世代の遊びの経験や子どもの遊びに対する考 えを分析していくことは重要な示唆を得ることができるものと考える。1980 年代後半から 1990 年代にかけての子ども期の生活,遊び体験を有している大人(親)である。この時期には, 都市化がすすむと同時に,遊び場・時間が減少し,子どもの体力が低下していると指摘され ている時代でもある。 ②大人の子ども期の遊び体験 子ども期の遊び体験について,①受動的自然との関わり,②能動的自然との関わり,③ 自然(草木)をつかった創作,④昆虫・水生昆虫採集,⑤伝統的遊びのそれぞれの項目ごと にみていく。全体としては,全ての項目において 50%を超える割合で経験がある。最も経 験の度合いの低いものは,「タガメ,ゲンゴロウなどの水生昆虫取り」で 57.3%で,女性は, 40.4%と半数に満たなかった。次に少なかったのが,「竹水鉄砲」で 58.5%(女性 50.7%),「屋 外でテントで寝る」58.9%となっている。 次に,自然との関わりを,受動的関わりと能動的かかわりの視点から見ていく。まず,受 動的自然との関わりでは,星空を眺める体験を有するものは9割を越しているのに対し,屋 外でテントで寝る体験では6割弱となっている。 表2-① . 受動的自然との関わり 能動的自然との関わりでは,全ての項目において経験を有するものが8割を超えている。 性別での比較を見ると,木に登る体験で女性 82.3%に対し男性 94.8%,水切りの体験にお いて女性 91.8%,男性 98.3%と男性において体験を有するものほうが多くなっている。 ᫍ✵ࢆ═ࡵࡿ ᒇእ࡛ࢸࣥࢺ࡛ᐷࡿ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᛶู ዪ ⏨ య
表2-② . 能動的自然との関わり 昆虫や水生生物の採取といった生物との関わりについては,全体では9)セミ,クワガ タ,カブトムシ,10)オタマジャクシ,カエル,11)ザリガニ取りにおいて8割を超えており, 12)タガメ,ゲンゴロウなどの水生生物取りにおいては,6割弱であった。この昆虫・水生 生物採取では全ての項目において男性の経験者[9)95.7%,10)91.4%,11)93.1%,12) 78.4%]において女性よりも多くなっていた。 表2-③ . 昆虫・水生生物採取 さらに,草木を使った造形活動の4項目でも経験者が全体で6割を超えている。しかし, ここでは 13)シロツメクサの冠づくりで 89.7%,14)ササ舟づくり 84.2%,15)草笛 81.5%と 女性の経験者のほうが多くなっていた。 表2-④ . 草木(自然)を使った造形 伝統的遊びにおいては,22)竹水鉄砲(58.5%)を除く全ての項目において8割を超えてお り高い経験率が見られた。20)缶ぽっくりでは女性が 87.8%と男性よりも経験率が高く,23) 竹水鉄砲(男性 68.4%),24)こま回し(男性 94.8%)と女性より男性の経験率のほうが高く なっていた。 ᕝࡸ†ࠊᾏ࡛Ὃࡄ ᮌⓏࡿ ࡁⅆࢆࡍࡿ Ỉษࡾ㸦Ỉ㠃▼ࢆᢞࡆࡿ㸧 ▼㋾ࡾ ᙳࡩࡳ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ * * * ᛶู ዪ ⏨ య ࢭ࣑ࠊࢡ࣡࢞ࢱࠊ࢝ ࣈࢺ࣒ࢩ࡞ࡢྲྀࡾ ࢜ࢱ࣐ࢪࣕࢡࢩࠊ ࢚࢝ࣝࡾ ࢨࣜ࢞ࢽྲྀࡾ ࢱ࣓࢞ࠊࢤࣥࢦࣟ ࢘࡞ࡢỈ⏕᪻ྲྀࡾ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ *** ** *** *** ᛶู ዪ ⏨ య ࢩࣟࢶ࣓ࢡࢧࡢෙ ࡙ࡃࡾ ࢧࢧ⯚ࡘࡃࡾ ⲡ➜ ࢁࡔࢇࡈసࡾ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ *** ** ** ዪ ⏨ య ᛶู
表2-⑤ . 伝統的遊び ③現在の子どもとの遊び体験 子ども期の遊びの体験は現在の遊びへの興味関心に影響を及ぼしていると考えられる為, 次に,現在の子どもと一緒に行なったことのある遊びの体験についてきいた。子どもの年齢 段階が低いということもあり,大人の自身の遊びの体験の割合と比較すると,現在の子ども との遊びの経験は低い値となった。 受動的自然との関わりから見ていくと,1)星空を眺める体験とにおいて女性が 74.1%と 男性より高い経験率となっている。2)屋外でテントで寝る体験では 2 割に満たない経験率 であった。 表3-① . 受動的自然との関わり 次に,能動的自然との関わりでは,3)川や湖,海で泳ぐ,8)影ふみにおいて5割を超え る経験率となっていた。また,4)木に登る経験では女性が 51.0%と男性よりも高くなって いた。 表3-② . 能動的自然との関わり 昆虫や水生生物の採取といった生物との関わりは,9)セミ,クワガタ,カブトムシ取りが4 割となっているのに対し,それ以外の水生生物採集においては2割に満たない経験率となった。 ฏ࠶ࡆ ࢩࣕ࣎ࣥ⋢㐟ࡧ 㢼㌴ ⨁ࡱࡗࡃࡾ ➉㤿 ➉ࢇࡰ ➉Ỉ㕲◙ ࡇࡲᅇࡋ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ * * ** య ᛶู ዪ ⏨ ᫍ✵ࢆ═ࡵࡿ ᒇእ࡛ࢸࣥࢺ࡛ᐷࡿ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ྜィ ᛶู ዪ ⏨ ᕝࡸ†ࠊᾏ࡛Ὃ ࡄ Ỉษࡾ㸦Ỉ㠃 ▼ࢆᢞࡆࡿ㸧 ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᛶู ዪ ⏨ ྜィ ᮌⓏࡿ ࡁⅆࢆࡍࡿ ▼㋾ࡾ ᙳࡩࡳ
表3-③ . 昆虫・水生生物採取 草木を使った造形活動では 16)どろだんご作りが7割弱の経験率となっており高い経験率 となっている。また,13)シロツメクサの冠づくり(女性 50.7%),16)どろだんご作り(81.0%) と男性よりも女性の子どもとの経験率のほうが高くなっている。 表3-④ . 草木(自然)を使った造形 伝統的遊びにおいては,18)シャボン玉遊びにおいて全体で 96.6%となっており,全項目 の中で最も高い経験率であった。他にも,17)凧揚げ(65.6%),19)風車(63.5%),24)こま 回し(69.1%)と全体の経験率が6割を超えているものがあった。性別での比較では,17)凧 揚げ(女性 72.8%),19)風車(女性 74.3%),20)缶ぽっくり(女性 37.0%),24)こま回し(女 性 77.6%)といずれにおいても女性の子どもとの経験率が高くなっている。 表3-⑤ . 伝統的遊び ࢨࣜ࢞ࢽྲྀࡾ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᛶู ዪ ⏨ ྜィ ࢭ࣑ࠊࢡ࣡࢞ࢱࠊ ࢝ࣈࢺ࣒ࢩ࡞ࡢྲྀࡾ ࢜ࢱ࣐ࢪࣕࢡࢩࠊ ࢚࢝ࣝࡾ ࢱ࣓࢞ࠊࢤࣥࢦࣟ࢘ ࡞ࡢỈ⏕᪻ྲྀࡾ ࢩࣟࢶ࣓ࢡ ࢧࡢෙ࡙ࡃࡾ ࢧࢧ⯚ࡘࡃ ࡾ ࢁࡔࢇࡈ సࡾ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᛶู ዪ ⏨ ྜィ ⲡ➜ ฏ࠶ࡆ ࢩࣕ࣎ࣥ⋢ 㐟ࡧ 㢼㌴ ⨁ࡱࡗࡃࡾ ➉㤿 ➉ࢇࡰ ➉Ỉ㕲◙ ࡇࡲᅇࡋ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᗘᩘ ᛶูࡢ ᛶู ዪ ⏨ ྜィ
表4-① . 子ども期によく行なった遊び(女性) 表4-② . 子ども期によく行なった遊び(男性) 表5. 余暇時間に行なっている活動 ᑠᏛᰯධᏛ௨๓ ᑠᏛᰯపᏛᖺᮇ ᑠᏛᰯ㧗Ꮫᖺᮇ NO.1 䜎䜎䛤䛸㐟䜃 䛚ேᙧ䛥䜣䛤䛳䛣 䝂䝮䛸䜃 䠂 32.40 13.90 22.50 NO.2 䛚⤮䛛䛝 䝂䝮䛸䜃 䜿䜲䝗䝻 䠂 23.70 11.80 13.40 NO.3 䛚ேᙧ䛥䜣䛤䛳䛣 ㏣䛔䛛䛡㨣 ᐙᗞ⏝䝀䞊䝮ᶵ䠄ᤣ䛘⨨䛝ᆺ䠅 㸣 ᑠᏛᰯධᏛ௨๓ ᑠᏛᰯపᏛᖺᮇ ᑠᏛᰯ㧗Ꮫᖺᮇ NO.1 䛛䛟䜜䜣䜌 㔝⌫䠄䜻䝱䝑䝏䝪䞊䝹䛺䛹䠅 㔝⌫䠄䜻䝱䝑䝏䝪䞊䝹䛺䛹䠅 䠂 22.10 43.00 NO.2 䛚⤮䛛䛝 䝃䝑䜹䞊䠄䝪䞊䝹䛡䜚䛺䛹䠅 ᐙᗞ⏝䝀䞊䝮ᶵ䠄ᤣ䛘⨨䛝ᆺ䠅 䠂 13.80 12.40 20.20 NO.3 㔝⌫䠄䜻䝱䝑䝏䝪䞊䝹䛺䛹䠅 䝃䝑䜹䞊䠄䝪䞊䝹䛡䜚䛺䛹䠅 㸣 ㏣䛔䛛䛡㨣 㐠ື࣭ࢫ࣏࣮ࢶ ᩱ⌮ 㡢ᴦࠊ₇ዌ࣭㚷㈹ ㄞ᭩ ᫎ⏬㚷㈹ࠊࣅࢹ࢜ ࡑࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ ᩘ ᗘ ᛶูࡢ 䠆䠆䠆 䠆䠆 ྜィ ᛶู ዪ ⏨
表6-① . 家庭にあるモノ 家庭にあるモノを手がかりに,さまざまな活動にどのような意味が付与されているのかを みていく。スポーツとの関わり,自然との関わり(挑戦,採集・観察),音楽との関わり, 絵画(書)との関わりの項目から,関連する所有物があるかをきいた。最も多かったのがサッ カーボール(60.2%),ついで,バドミントン(ラケット,シャトル)(56.1%),水彩画用具 (46.5%),科学・百科事典(45.9%),野球用具(ボール,グローブ,バット)(45.3%)となった。 表6-② . モノの所有者 䝰䝜 ᡤ᭷⋡ 1 ࢧࢵ࣮࣮࢝࣎ࣝ 2 ࣂࢻ࣑ࣥࢺࣥ㸦ࣛࢣࢵࢺࠊࢩࣕࢺࣝ㸧 3 Ỉᙬ⏬⏝ල 4 ⛉Ꮫ࣭ⓒ⛉ 5 㔝⌫⏝ල㸦࣮࣎ࣝࠊࢢ࣮ࣟࣈࠊࣂࢵࢺࡢ࠸ࡎࢀ㸧 6 ᪻᥇㞟㐨ල㸦࢝ࢦࠊ⥙࡞㸧 7 ࡑࡢࡢࢫ࣏࣮ࢶ⏝ල 8 ⩦Ꮠ⏝ල㸦ࡩ࡛ࠊቚࠊᩥ㙠࡞㸧 9 ࣆࣀ 10 ࢦࣝࣇ⏝ල 11 ║㙾 12 㔮ࡾ⏝ල 13 ࡑࡢࡢᴦჾ 14 ࡑࡢࡢ⤮⏬ࠊ᭩ࡢ⏝ල 15 ࢠࢱ࣮ 16 Ἔ⤮⏝ල㸦Ἔ⤮ࡢලࠊࡩ࡛ࠊ࢟ࣕࣥࣂࢫ࡞㸧 17 ኳయᮃ㐲㙾 18 Ⓩᒣ⏝ල 19 ࣂࢫࢣࢵࢺ࣮࣎ࣝ 20 㢧ᚤ㙾 21 ࣂ࣮࣮ࣞ࣎ࣝ 22 ࣇ࣮ࣝࢺ 23 ࢻ࣒ࣛࢭࢵࢺ 24 ࢺࣛࣥ࣌ࢵࢺ ᗘᩘ 䠂 ⮬ศࡢࡳᡤ᭷ 2 1.28 ᐙ᪘㸦ேᏊࡶ㸧࡛ᡤ᭷ Ꮚࡶࡢࡳᡤ᭷ 81 51.92 ⮬ศࡢࡳᡤ᭷ 21 14.29 ᐙ᪘㸦ேᏊࡶ㸧࡛ᡤ᭷ 110 74.83 Ꮚࡶࡢࡳᡤ᭷ 16 10.88 ⮬ศࡢࡳᡤ᭷ 11 9.09 ᐙ᪘㸦ேᏊࡶ㸧࡛ᡤ᭷ 28 23.14 Ꮚࡶࡢࡳᡤ᭷ 82 67.77 ⮬ศࡢࡳᡤ᭷ 9 7.56 ᐙ᪘㸦ேᏊࡶ㸧࡛ᡤ᭷ 39 32.77 Ꮚࡶࡢࡳᡤ᭷ 71 59.66 ⮬ศࡢࡳᡤ᭷ 20 17.09 ᐙ᪘㸦ேᏊࡶ㸧࡛ᡤ᭷ 68 58.12 Ꮚࡶࡢࡳᡤ᭷ 29 24.79 ࣂࢻ࣑ࣥࢺࣥ㸦ࣛࢣࢵࢺࠊ ࢩࣕࢺࣝ㸧 Ỉᙬ⏬⏝ල 4 ⛉Ꮫ࣭ⓒ⛉ 5 㔝⌫⏝ල㸦࣮࣎ࣝࠊࢢ࣮ࣟࣈࠊࣂࢵࢺࡢ࠸ࡎࢀ㸧 3 1 ࢧࢵ࣮࣮࢝࣎ࣝ 2 73 46.79
スポーツ系の用具については,共有するという意識が高い傾向をみてとれる。サッカーボー ルでは,子どものみ(51.92%)の方が家族での所有(46.79%)を上回っているが,バドミ ントンでは子どものみ(10.88%),家族(74.83%),野球では子どものみ(24.79%),家族 (58.12%)と家族での所有のほうが高くなっている。サッカーボール(子どものみ 51.92%, 家族 46.96%)は子どものみの所有率が高くなっているが,家族での所有率は,他分野のも のとの比較では高い値であった。 水彩画用具(子どものみ 67.77%),科学・百科事典(子どものみ 59.66%)と,子どものみ の所有率が5割を超えている。 5.考察 ①子ども期の「遊び」と現在の子どもとの「遊び」 現在の大人(30 歳代− 40 歳代を中心とする)の子ども期の遊び経験については,自然との 関わり(受動的・能動的),生き物との関わり,草木との関わり,伝統的遊びといった全て の分野での体験の比率が高いことがわかった。子ども期の居住環境との関わりからは,それ ぞれの遊び体験の違いはみられなかった。 性別での経験率の違いが見られたのが,能動的自然との関わり(「木登り」,「水切り」),昆虫・ 水生生物採集(「セミ・クワガタ等」,「オタマジャクシ,カエル」,「タガメ・ゲンゴロウ等」) と伝統的遊び(「竹水鉄砲」,「こま回し」)といった,3分野7種の遊びにおいて男性の経験 率が優位に高いものとなっていた。木登りや水切り(石を投げる)といったからだを大きく 使う遊びや,昆虫・水生生物,特に日常生活では目にすることの少ない水生生物との関わり, 竹水鉄砲やこま回しといった道具を製作調整する作業や技術を必要とする遊びにおいて,男 性(男の子ども)が強く興味を持っていたといえる。それに対して,草木(自然)を使った 造形(「シロツメクサの冠つくり」,「ササ舟つくり」,「草笛」)の1分野3種の遊びにおいて 女性の経験率が有意に高いものとなった。特に,シロツメクサの冠つくりにおいては女性が 89.7%であるのに対して,男性が31.2%と大きな違いが見られた。ここには,草花の採取や それらを使った造形物を冠や舟,笛に見立てるという遊びとなっており造形活動そのものと いうより,ごっご遊びとのつながりをみてとれる。子ども期によくおこなった遊びの種類と して,最も多かったのが小学校入学以前(女性:ままごと遊び 32.4%),小学校低学年(女性: お人形さんごっこ 13.9%)となっていることとも関連しているものと考えられる。ちなみに 男性の子ども期によくおこなった遊びで最も多かったのが,小学校入学以前(男性:かくれ んぼ 14.7%),小学校低学年(男性:野球・キャッチボール 22.1%)であった。 須田氏(2006 年,頁 27)によると,「男子のほうが女子よりよくする外遊びは,『友だちと スポーツする』,『ボールで遊ぶ』,『空き缶や石で遊ぶ』,『魚やカエルなどをとって遊ぶ』で
ある」という。また,「女子のほうが男子よりよくする外遊びは,『友だちとしゃべる』,『ペッ トと遊ぶ』,『縄跳びやゴム跳びをする』,『地面に絵や字をかいて遊ぶ』である」という。今 回の調査対象者は,1980 年代から 1990 年代にかけて学童期を経験したものである。須田氏 の調査時期(2006 年)の子どもと,そこから 10 年から 20 年遡った時期の子ども(親世代)に おいても,「男子の外遊びのほうが活動範囲が広く,女子の外遊びは一箇所にいてもできる ような遊び」という類似する特徴を示していることが明らかになった。 現在の保護者(大人)の子どもとの遊び体験においては,現在の子どもの年齢段階が低い ということも考慮に入れる必要があるが,24 種の遊びのうち経験率が全体の5割を超えるも のは,8種の遊びにとどまっていた。特に,全体で2割に満たなかったのは,2)テントで 寝る,3)焚き火をする,10)オタマジャクシ,カエル取り,11)ザリガニ取り,12)ゲンゴロ ウなど水生生物取り,14)ササ舟つくり,15)草笛,23)竹水鉄砲となっている。テントや焚 き火をする空間,水生生物のいる水辺,笹や草笛に使う植物など自然環境が不足しているこ とが大きな要因と考えられる。今回の調査対象者の 99.7%のものが都市部や郊外の住宅地 に居住しているということからもその影響を考えることができる。また,草笛や竹水鉄砲な ど遊ぶ為に必要な知識,技能が必要とされるものについては,知識,技能の伝達される世代 間での遊び関係の不足も考えることができる(居住形態:親子二世代のみ 93.1%)。 次に,経験率の差が性別で有意な違いを見せた8種の遊びすべてにおいて,女性が子ども と一緒に経験した割合の方が高くなっていた。その中には,自身の子ども期には男性の経験 率のほうが多かった「木登り」と「こま回し」が含まれている。ここに,子ども期の「遊びの 経験」と現在の「子どもとの遊び」にズレをみてとれる。 ②伝えられるコトとしての「遊び」 今回の調査項目では「自然との関わり」,「生物との関わり」,「伝統との関わり」の体験を きいた為,スポーツ・芸術系の活動は含まれていない。子ども期の遊びの経験(表4−①,②) についての質問では,男性で最もよくおこなった遊びとして,スポーツ系の遊びをあげたの が,小学校以前で 14.7%,小学校低学年で 34.5%となり,小学校高学年では 59.7%となっ ている。生活形態や労働形態などの影響も考えられるが,遊び経験と現在の遊びとのつなが りから考えると,「子ども期に自然と関わったことはあるが,よくおこなっていたのはスポー ツ系の遊びである」という大人の男性像が浮かび上がる。また,(大人)自身の現在の余暇時 間で行なっている活動(表5)も,男性で最も多いのが「運動・スポーツ」(37.1%)となっ ており,女性よりも実施率が高くなっている。このことからも,大人になった男性が自身の 子どもとの遊びにおいて,スポーツ以外の遊びを共有する(一緒に遊ぶ)ことが少なくなっ ていると推察することができるのではないか。
我が国でも,1964(昭和 39)年の東京オリンピック以降,青少年の活動領域においてスポー ツが制度的広がりをみせてきた。現在の 30 歳代− 40 歳代の大人はこの時期に子ども期の遊 び・スポーツ経験を有している。スポーツ制度の発達した現代社会について,ホイジンガは, 「遊びの内容の最高の部分,最善の部分を失っているのである。遊びはあまりにもまじめに なりすぎた」と指摘している。スポーツの制度化がすすんだ社会において,多くの男性(子 ども期)が,自然での遊び経験を有しており,かつスポーツ系の遊びの経験も有している。 しかし,現在の子どもとスポーツ以外の遊び(「自然,生物,伝統との関わり」の遊び)を共 有する割合が低いのは,「遊びから離れたスポーツ」と「遊び」に付与される意味の違いによ るものという視点を提示することができる。 杉本氏(2011,85 頁)は,遊びの状況定義について「『日常,非日常』という二分法の遊び のとらえ方は,いわゆる産業社会における『生産・消費』に価値を置いた時代の文化のとら え方であり,あくまで,日常の『労働』に対する非日常としての『遊び』のとらえ方にすぎない」 と指摘する。そして,多様化,曖昧化している現代社会では,遊びの世界を「多元的現実の ひとつとしてとらえた方が理解しやすい」としている。「そこにはルールや道具といった他の 日常生活と同じ条件を保つためにの『コト』と『モノ』が存在する」という。 そこで,次に家庭にあるモノを手がかりに,さまざまな活動にどのような意味が付与され ているのかをみていくと(表6−①,②),上位5つのうちスポーツに関わるモノが3つと なっている。さらに,その所有者を見てみると,スポーツに関わるモノにおいて家族(大人 と子ども)での所有率が高くなっている。同じモノを家族(大人と子ども)で所有すること により,そのモノに対する意味も大人と子どもで伝達,共有されることになっていると考え ることができる。 「(遊びの世界の)『コト』や『モノ』は遊びの意味を付与されており,そのことによって, 他とは異なったひとつの現実を構成している」というが,家庭で所有されているモノにはど のような意味が付与されているのか,今後の課題となる部分である。 家庭で所有されているモノにおいて,サッカーボール(60.2%)が最も多くなっていたが, 同じスポーツに関わる他の「ボール」の所有率は,バスケットボール(8.8%),バレーボール (4.2%)となっている。サッカーボールとバスケットボール,バレーボールの所有率の差異 が非常に大きい。そこには,単なる丸く,弾力性のあるボールではなく,「足で扱うボール」 としてのサッカーボール,「手で地面に弾ませるボール」としてのバスケットボール,「手で 空中に弾ませるボール」としてのバレーボールというコードが付与され,「ボール」との関わ り(実践的状態)から,各々の「スポーツ種目のボール」として形式化され,所有するか否 かという選択をもたらすのではないか。また,このようなモノの選択は「子ども期に自然と 関わったことはあるが,よくおこなっていたのはスポーツ系の活動である」という経験と,
現在の余暇時間でもおこなっている「運動・スポーツ」の実践により得られる情報図式によ るものといえる。コード化により明瞭化,均質化された「スポーツ」または「モノ」を通して の子どもとの関わりが,男性と女性における「遊びの経験」と現在の「子どもとの遊び」のズ レに影響を及ぼしていると指摘できるのではないだろうか。 6.まとめ 本報告では,現代の大人と子どもの遊びの実態を捉える為に,幼児期の子どもをもつ親へ の質問紙調査から,子ども期の遊び体験と,子どもと一緒におこなう遊びの特長について明 らかにしてきた。特に性別による遊びの経験と現在の子どもとの遊びとの関係について,次 の5点について示唆を得ることができた。 ①子ども期の居住環境との関わりからは,それぞれの遊び体験の違いはみられなかった。全 ての項目において 50%を超える割合で経験がある。 ②性別での経験率の違いが見られたのが,能動的自然との関わり,昆虫・水生生物採集と伝 統的遊びといった,3分野7種の遊びにおいて男性の経験率が有意に高いものとなってい た。 ③子どもの年齢段階が低いということもあり,大人の自身の遊びの体験の割合と比較すると, 現在の子どもとの遊びの経験は低い値とであった。24 種の遊びのうち経験率が全体の5 割を超えるものは,8種の遊びにとどまっていた。 ④経験率の差が性別で有意な違いを見せた8種の遊びすべてにおいて,女性が子どもと一緒 に経験した割合の方が高くなっていた。 ⑤子どもと共有する遊びへの影響として,テントや焚き火をする空間,水生生物のいる水辺, 笹や草笛に使う植物など自然環境が不足している居住環境が大きな要因としてあげられ る。また,草笛や竹水鉄砲など遊ぶ為に必要な知識,技能が必要とされるものについては, 知識,技能の伝達される世代間での遊び関係の不足も指摘できる。 子ども期の遊び経験の差異に 「性別」 が影響しており,現在の子どもとの遊びには 「自然, 住居環境」 が大きく影響している。また,女性は,子どもとの遊びにおいて,自身の経験の ない遊びをおこなっている割合が高い。ここに,「子どものために」遊ぶという行為の意図 をみてとることができるのではないか。大人が「遊び経験」から「子どもの遊び」という観念 を形成するときに「意図性」が現れてくるのである。しかし,このことで大人自身の「遊び経験」 と「子どもとの遊び」においてズレが生じ,「意図性」によるメタ・コミュニケーションが形 成され,「遊びのメタ・コミュニケーション了解」 を難しくすることにつながっているので はないだろうか。
本論では,子どもと遊ぶ生活環境や自然環境が限定的になっていることを明らかにし,人 的環境である大人と子どもの遊びにおいて,「遊びのコミュニケーション(メタ・コミュニケー ション)」に焦点をあてることの意義を確認することができた。この遊びのコミュニケーショ ンに付与される「意図性」を詳細に検討し,遊びの成立(伝達)への影響を明らかにすること が今後の課題となる。 *本研究は,千葉敬愛短期大学附属総合子ども学研究所で実施された「大人のあそびへのま なざし」調査(2013 年度)の一部を使用したものである。 【参考・引用文献】 深谷昌志,深谷和子,高旗正人編『いま,子どもの放課後はどうなっているのか』2006,北 大路書房 ホイジンガ/高橋英夫訳『ホモ・ルーデンス』1973,中央公論社 文部科学省『体力・スポーツに関する世論調査報告書』2013 元森絵里子「子どもへの配慮・大人からの自由」,『社会学評論57(3)』2006,日本社会学会 村瀬浩二,落合優「子どもの遊びを取り巻く環境とその促進要因:世代間を比較して」『体 育学研究 52(2)』2007,日本体育学会 西村清和『遊びの現象学』2005,勁草書房 仙田満「子どもの遊びと運動意欲を喚起する環境」『体力科学60 NO.1』2011,日本体力医学会 杉本厚夫『「かくれんぼ」ができない子どもたち』2011,ミネルヴァ書房 住田正樹,高島秀樹編『子どもの発達と現代社会』2002,北樹出版