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基礎数学Ⅱ . 多変数関数の微積分 【書評】

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2017年7月号 (69)461

【書評】

山本 芳嗣 著

基礎数学Ⅱ.多変数関数の微積分

東京化学同人 176頁 2015年 定価2,000円+税 ISBN: 978-4-8079-1494-4

本書は,主に大学の理系学部において,教養課程で 学ぶ微分積分学を対象とした書籍です.全部で二冊構 成となっており,本書はその二冊目で,多変数の微積 分を取り扱っています.

微分積分学を対象とした書籍は,すでに世の中に多 数存在するものの,基本的かつ重要な内容であること から,新しい書籍が次々と出版されています.筆者の 学生時代には,笠原先生の微分積分学(サイエンス社)

を利用していました.

微分積分学が取り扱う範囲は非常に広く,またどの 程度まで厳密に記述するかによって,ボリュームや難 易度に相当幅があります.筆者の知っている範囲では,

本書でも紹介されている,杉浦先生の「解析入門III」

が一番厳密で取り扱う範囲も広いです.一方で,大雑 把なイメージを掴んだうえで,とにかく問題を解こう という,石村先生の「やさしく学べる微分積分」のよ うなアプローチもあります.

筆者は,本書に以下のようなイメージをもちました.

・扱う範囲は絞るが,証明は丁寧に行う

・誤解されやすい場所には例・図を加える

・本格的な内容を,何とか理解させる

本書が取り扱うのは,多変数の微分積分学ですが,

一変数を多変数に拡張した際に,概念が自然に一般化 できる箇所とそうでない箇所が存在します.本書は,

特に一般化が自然にできない箇所に関して,その部分 の説明を,例を交えて非常に丁寧に記述しています.

何を自然と思うかは個人の感覚にも依存しますが,長 年理工系の学生を指導されてきた著者のノウハウが凝 縮されていると思います.

第1章では,点列の極限・連続性の高次元版が議論 されています.この話題に関しては,一次元の話題が そのまま一般化できる部分が多いのですが,収束の方 向に関しては,初学者が間違いやすい部分で注意が必 要です.この部分に関して,本書では非常に的確な例 が与えられています.また,本書では微分の説明以前 の段階で陰関数定理の簡易版を証明しており,これは

類書にない本書の特色です.陰関数定理については,

証明よりもまずその意味を理解することが大切で,本 書では丁寧な説明が与えられています.数学の専門書 などでは,線形二変数の場合の例などは,当然すぎる ということからか,掲載されていないのですが,何と か意味を理解させようという,著者の意気込みが伝 わってきます.

第2章では,多変数の微分を取り扱っています.一 次元からの拡張を考えた場合,ここでの難所は全微分 の理解かと思われます.特定の変数を固定して偏微分 係数を求めたり,チェインルールに基づいて合成関数 の微分を計算することは,特段の問題はありませんが,

偏微分可能性,さらには全方向に対する方向微分可能 性が全微分可能性を担保しないことに関しては,理解 するのに少し時間がかかると思います.本書では,こ の点も丁寧に説明されており,いくつかの例を交えて,

全微分とは「関数が点の近傍で,方向に関わらず一様 な精度で線形関数で近似できること」だと述べていま す.非常に的を射た表現かと思います.

第3章では,多変数の積分を取り扱っています.一 変数の積分を拡張する方向性としては,本書で取り扱 うように積分区間を高次元化する方向の拡張だけでな く,被積分関数の値域を高次元化したり,曲線・曲面 上の積分を考えたりする,ベクトル解析方向の拡張も 存在します.この点に関しては,内容としては取り扱 わないにしても,一言コメントがあってもよいように 感じました.第3章で著者が強調している点は,積分 可能性の問題に厳密かつ丁寧に取り組むことと,変数 変換定理を式だけでなく直感的にも理解できるように することだと感じました.

本書はページ数の少ない書籍であり,入門的教科書 という位置づけではありますが,取り扱う内容は少な いものの,アプローチは本格的で,初学者が理解しづ らい難所を丁寧に解説しています.特に,例を通して 理解を深めたい読者にはおすすめしたい一冊です.

(原田耕平)

参照

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