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電子タグの包装容器リサイクル工程に与える影響

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(1)

システム開発

19-F-11

電子タグの包装容器リサイクル工程に与える影響 への対策に関するフィージビリティスタディ

報 告 書

- 要旨 -

平成 20 年 3 月

財 団 法 人 機 械 シ ス テ ム 振 興 協 会 委 託 先 社団法人日本自動認識システム協会

この事業は、競輪の補助金を受けて実施したものです。

http://ringring‐keirin.jp/

(2)

わが国経済の安定成長への推進にあたり、機械情報産業をめぐる経済的、社 会的諸条件は急速な変化を見せており、社会生活における環境、都市、防災、

住宅、福祉、教育など、直面する問題の解決を図るためには技術開発力の強化 に加えて、多様化、高度化する社会的ニーズに適応する機械情報システムの研 究開発が必要であります。

このような社会情勢の変化に対応するため、財団法人機械システム振興協会 では、財団法人日本自転車振興会から機械工業振興資金の交付を受けて、シス テム技術開発調査研究事業、システム開発事業、新機械システム普及促進事業 を実施しております。

このうち、 システム技術開発調査研究事業及びシステム開発事業については、

当協会に総合システム調査開発委員会(委員長:東京大学名誉教授 藤正 巖氏)

を設置し、同委員会のご指導のもとに推進しております。

本「電子タグの包装容器リサイクル工程に与える影響への対策に関するフィ ージビリティスタディ」は、上記事業の一環として、当協会が社団法人日本自 動認識システム協会に委託し、実施した成果をまとめたもので、関係諸分野の 皆様方のお役に立てれば幸いであります。

平成20年3月

財団法人 機械システム振興協会

(3)

はじめに

世界中がいま直面している「地球温暖化」に顕現される地球環境問題は、人類にとって 今世紀最大のテーマとされているが、我国の産業界においても省エネルギー・省資源や廃 棄物削減などの環境マネジメントに取り組み、人と地球環境が調和する持続可能(サステ イナブル)社会の実現にどれだけ対応していけるかが重要な経営課題となっている。

電子タグは、貼付する対象物一つ一つを識別できると同時に、個体ごとの様々な履歴を 逐次記録できるという優れた機能を持つため、サプライチェーンの上流から下流までの 様々な場面で活用されることで生産・物流・販売にわたるトータルな効率化を促進し、結 果として省エネルギーや炭酸ガス排出削減に貢献すると考えられている。

またその機能を活用することで、廃棄の必要な物や部品はどれか、廃棄すべき時期はい つかなどについての自動認識ができるため、廃棄する際の分別を容易にすると同時にリユ ースやリサイクルをスムーズに進める極めて有効な媒体と考えられ、サステイナブル社会 実現に不可欠な役割が期待されている。

一方、電子タグが広く普及した段階では、貼付対象物が廃棄される際に、電子タグ自体 も取り外されずにそのまま一緒に廃棄される場合が多いと予想される。

段ボール箱など輸送梱包への電子タグ利用が始まろうとしているが、電子タグが貼付さ れたままの段ボールを従来と同じようにリサイクルできるかは、使用される各種の電子タ グ及びリサイクルのあり方などについて十分に検討されねばならない。現状の電子タグは ICチップやアンテナ金属を含んでいるため、段ボール箱のリサイクルを阻害する要因と なってしまう可能性が存在するからである。

電子タグは極めて微量に過ぎず、貼付物リサイクルなどに問題はないとの意見もあるが、

「問題が発生してから対処するコストより、事前に予防策を講じておくコストの方がはる かに安い」との観点からも、導入期である今のうちに将来の普及シーンを想定して電子タ グが段ボール箱のリサイクルに与える影響を考えておくことは極めて重要といえよう。

本スタディは上記視点に立った「問題未然防止」のための実験検証である。

平成20年3月

社団法人日本自動認識システム協会

(4)

目 次

はじめに

1 スタディの目的

1

2 スタディの実施体制

2

3 スタディの成果の要約

5

第1章 スタディの背景と前提

6

1-1 JAISAにおける電子タグ廃棄問題検討の経緯

6

1-2 電子タグ付き段ボールのワーストシナリオ

8

1-3 本スタディの前に実施した自主実験

9

第2章 スタディの全容

13

第3章 実験プラントでのリサイクル検証(予備実験編)

15

3-1 実験の目的

15

3-2 実験内容

15

3-3 結果及び考察

19

3-4 結論

21

第4章 実験プラントでのリサイクル検証(本実験編)

22

4-1 実験の目的

22

4-2 段ボールの一般的な古紙処理フロー

23

4-3 実験内容

25

4-4 実験結果

30

第5章 段ボール業界向けの電子タグ仕様の検証

37

5-1 電子タグの構造

37

5-2 電子タグのリサイクル適性

38

第6章 段ボール業界のリサイクル処理工程の検証

6-1一般的な段ボールの古紙処理工程への影響

39

6-2新たな古紙処理工程の可能性

41

(5)

第7章 評価・検証

42

7-1 問題発生の可能性

42

7-2 問題の対策

42

7-3 問題と対策の共有 42

第8章 物流センター調査

44

8-1 調査の目的

44

8-2 電子タグ導入と剥離作業追加の可能性

44

8-3 経済性評価

44

4 スタディの今後の課題及び展開

45

(6)

1

1 スタディの目的

社団法人日本自動認識システム協会(以下「JAISA」という)では、2005年 度に設立したエコロジーワーキンググループ(以下「エコWG」という)において電子 タグの廃棄に関連する問題を検討してきた。

2006年度には、段ボール箱など輸送梱包への電子タグ利用が本格的に始まろうとし ている状況を鑑みて、電子タグが貼付されたままの段ボールを従来通りのリサイクル工程 において再生できるかの検証を早急に行うことが必要であると考え、電子タグ付き段ボー ルのリサイクルに関する小規模な自主実験を実施した。

同実験の内容については、1章3節で報告するが、実験の結果として、段ボールのリ サイクル工程において、貼付された電子タグに起因する問題が発生する可能性があるこ とが明らかとなった。

そのため引き続きJAISAでは、昨年度に実施した小規模な実験よりも実験の精度 を更に高め、発生する可能性ある問題についての正確なデータ収集と、それに基づく評 価と判断を行うことが必要となった。

本スタディは、JAISA・エコWGにおける昨年度の自主実験結果を踏まえつつ、

実際の段ボールの古紙処理設備に近い大規模な実験施設において実験を行い、貼付され た電子タグが段ボールのリサイクルにどのような影響を及ぼすかについて、更に正確で 詳細なデータを収集すると共に、問題が発生する可能性があるかないかを最終的に判断 するための材料を抽出することを目的にしている。

(7)

2

2 スタディの実施体制

JAISAがスタディ実施主体となり、RFID専門委員会の下部組織であり、電子タ グの廃棄に関する問題を検討するエコWGに、本スタディの活動を推進するリサイクルF S委員会を設置した。

このリサイクルFS委員会は、電子タグベンダー10社と、7つのユーザー・段ボール 業界など団体や経済産業省などをオブザーバに迎えて委員会の運営を行うことにした。

本スタディの実施体制を図1に示す。

財団法人 機械システム振興協会

委託

エコWG:電子タグの廃棄に関する問題を検討する ワーキンググループ

リサイクルFS委員会:本スタディの活動を運営管理

図1 スタディの実施体制

社団法人日本自動認識システム協会(JAISA)

RFID専門委員会*1:傘下WGの活動方針などを審議

*1:Radio Frequency IDentification

総合システム調査開発委員会

(8)

3

総合システム調査開発委員会委員名簿

(順不同・敬称略)

委員長 東京大学 藤 正 巖 名誉教授

委 員 埼玉大学 総合研究機構 太 田 公 廣 地域共同研究センター

教授

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 金 丸 正 剛 エレクトロニクス研究部門

副研究部門長

委 員 独立行政法人産業技術総合研究所 志 村 洋 文 産学官連携推進部門

産学官連携コーディネータ

委 員 東北大学大学院 中 島 一 郎 工学研究科 教授

(未来科学技術共同研究センター長)

委 員 東京工業大学大学院 廣 田 薫 総合理工学研究科

教授

委 員 東京大学大学院 藤 岡 健 彦 工学系研究科

准教授

委 員 東京大学大学院 大 和 裕 幸 新領域創成科学研究科

教授(副研究科長)

(9)

4

リサイクルFS委員会 委員名簿

(順不同・敬称略)

<委員長>

赤塚 元 凸版印刷㈱ ICビジネス本部

<副委員長>

緒方 哲治 大日本印刷㈱ CBS事業部ICタグ本部 古田 拓 レンゴー㈱ パッケージ・デザイン部

<委員>

川井 若浩 オムロン㈱ 新事業プロデュース室 紀伊 智顕 みずほ情報総研㈱ コンサルティング部

久田見 篤 ㈱リコー サーマルメディアカンパニー 産業用リライタブル事業推進室 小林 正治 東レインターナショナル㈱ ICタグ事業推進

坂下 仁 リンテック㈱ アドバンストマテリアルズ事業部門 佐野 州範 全国段ボール工業組合連合会 事務局

相馬 一彦 UPMキュンメネ・ジャパン㈱

高津 秀文 トッパン・フォームズ㈱ 情報メディア事業部 多田 裕 ㈱サトー 営業本部サプライ推進部

寺浦 信之 ㈱デンソーウェーブ 自動認識事業部 山崎 榮三郎 やまざき事務所

油井 喜春 (社)日本印刷産業連合会 調査研究部

渡邊 篤史 王子製紙㈱ 研究開発本部 製紙技術研究所 寺澤 慶信 テラ・マーケティング

<オブザーバ>

森田 和敏 経済産業省 商務情報政策局 情報経済課 尾里 篤史 経済産業省 製造産業局 紙業生活文化用品課 内藤 貴浩 経済産業省 製造産業局 産業機械課

皆川 円 ㈱日立製作所 生産技術研究所 梶山 宗助 相川鉄工㈱ 営業部

<事務局>

中畑 寛 (社)日本自動認識システム協会 研究開発センター 立石 俊三 (社)日本自動認識システム協会 研究開発センター

(10)

5

3 スタディの成果の要約

(1) スタディの背景と前提

小規模な自主実験を実施し、段ボールリサイクル工程への影響があることが明ら かになった。実際の生産設備に近い大規模な設備で、正確な結果と判断材料を抽 出する実証実験を実施。

(2) スタディの全容

JAISA内にリサイクルFS委員会を設置し、関連業界団体をメンバーに加え て、予備実験、本実験を実施。

(3) 実験プラントでのリサイクル検証(予備実験編)

富士工業技術支援センターで、15タイプの段ボールリサイクル工程への影響の 確認と本実験のタグの選択。

(4) 実験プラントでのリサイクル検証(本実験編)

相川鉄工㈱で、5タイプの大規模段ボールリサイクル工程への影響の確認。

(5) 段ボール業界向けの電子タグ仕様の検証

電子タグの組成、段ボールと電子タグ間の粘着材の選定、表層材の選定を検証。

(6) 段ボール業界のリサイクル処理工程の検証

一般的な段ボール古紙処理工程への影響と新たな古紙処理工程の可能性を検証。

(7) 評価・検証

経済性観点を含め、電子タグを剥がすという対応との比較考量や実験結果に対し て、評価・検証。

(8) 物流センター調査

物流センターでの電子タグを剥がす作業と段ボールリサイクル工程での除去工程 と比較考量を実施。

(11)

6

第1章 スタディの背景と前提

1-1 JAISAにおける電子タグ廃棄問題検討の経緯

本スタディの背景と前提を把握しておくため、スタディに至る経緯となったJAISA内 のエコWGにおける現在までの活動成果から、今回のスタディに関連すると考えられる内 容を抽出し確認しておきたい。

エコWGは2005年度に電子タグの廃棄に関連する下記課題を検討した。

(1)廃棄される電子タグの構成材料明示

構成材料について、最も普及している13.56MHzの電子タグの一般的な構成を 表1、図2に示す。

表1 電子タグ(RFタグ)構成

重量比から明らかなようにICチップのシリコンは極めて微量であるが、アンテナ素材 の銅・アルミ・銀や、ベース素材のPETなどは大量廃棄されたときに問題となる可能性 がゼロではない。

・周波数:13.56MHz

・規格:ISO/IEC15693

・製品形状:ラベル

236[ mg]

銀(銀ペースト)

32[ mg]

樹脂(銀ペースト)

302[ mg]

PET ベース

0.1[ mg]

ニッケル

0.0024[ mg]

バンプ

270[ mg]

アクリル酸エステル共重 合体

756[ mg]

PET ラベル材料

401[ mg]

122[ mg]

アルミニウム アンテナ

0.19[ mg]

エポキシ ACP

0.35[ mg]

シリコン IC

重量/RFタグ1枚 主要構成材料

部材

(12)

7

表層材 粘着材 ICチップ アンテナ 基材 粘着材 剥離材

インレット 表層材

粘着材 ICチップ アンテナ 基材 粘着材 剥離材

インレット

図2 電子タグ(RFタグ)の構成図

(2)構成材料の化学物質としての問題と環境への影響

化学物質について、現状の構成材料には有害物質が含まれていないことを確認した。

(3)廃棄状況(焼却、埋立て)による問題と、経年変化による環境への影響

廃棄状況を想定した実験、及び経年変化の検証につき、研究機関への実験委託を企図 したが、当面の緊急度による優先順位が低いため見送った。

(4)電子タグのLCA(ライフサイクルアセスメント)と各責任対象の検討

LCAは、現状導入されている電子タグはサプライチェーンを跨らず、限定された場 所での利用に止まるケースが多い。しかし電子タグの機能が十分活用された場合、サプ ライチェーンの多様な事業体を通して利用されるため、責任や費用負担の捉え方が難し い複雑なライフサイクルになると想定される。今後普及が進んだ段階で実地調査が必要 となるであろう。

(5)関連法規への対応

関連法規につき、電子タグは貼付対象物と一緒に廃棄されるケースが多いため、容器 包装、家電、食品、建設資材、自動車などの対象物業界ごとに制定されている各リサイ クル法に準じねばならない。

なお、海外ではEUにおいて、電気電子機器に含まれる特定有害6物質(水銀、カド ミウム、鉛、六価クロム、ポリ臭化ビフェニール、ポリ臭化ジフェニール)の使用規制 RoHS指令が2006年7月に施行されたが、ICチップはRoHS指令で定めた電気電 子機器の定義に合致し指令対象とされるものの、現行の電子タグには規制の有害物質は 含まれず問題とならないことを確認した。

以上の2005年度活動成果を受けて2006年度には、環境や廃棄の専門家に対す るヒアリングを実施した。ヒアリングを依頼した㈱エコマネジメント研究所(森下研代 表)や、(独)国立環境研究所・廃棄物研究センター(森口祐一センター長)ほか各専門 の先生方から、それぞれ貴重なアドバイスを頂き、共通して提案のあった「電子タグ貼 付対象物の廃棄に関し想定されるワーストシナリオ作成」を行った。

(13)

8

更にワーストシナリオを実際に検証するため、電子タグ付き対象物の廃棄やリサイクル の現場を想定した実験にトライすることとし、シナリオの一つである1章2節の「電子タ グ付き段ボールのリサイクル」に関する自主実験を、レンゴー㈱の協力のもとで実施した。

自主実験の内容と結果については3章3節に記載する。

1-2 電子タグ付き段ボールのワーストシナリオ

日本の段ボールの年間生産量は約140億㎡であり、大部分は小売店や一般消費者など エンドユーザーに渡った時点で廃棄されることになる。段ボールはリサイクルの優等生で あり、大部分は古紙としてリサイクルされ、少量が事業系又は家庭系廃棄物として焼却、

埋め立て、コンポスト化されている。

段ボールについては下記のようにいくつかのワーストシナリオを作成したが、最終的に はシナリオ1について自主実験を行うこととした。

<シナリオ1>

電子タグが貼付された段ボール古紙が大量に製紙原料として使用された結果、アンテナ に使用されている金属箔や金属ペーストが再生された段ボール原紙に混入し、金属探知機 トラブルを発生させる。その結果、電子タグが貼付された段ボールは古紙回収の禁忌品と なり、段ボール回収率の低下を引き起こす。

<シナリオ2>

国内で回収された段ボール古紙のうち約20%に相当する167万トン(2006年) は海外に輸出されている。電子タグに含まれる有害物質が原因で相手国での受入拒否問題 や汚染問題が発生する。

<シナリオ3>

製紙工場で電子タグが貼付された段ボール古紙を処理した結果、工場排水、廃棄物の焼 却残渣から有害物質が検出される。

<シナリオ4>

事業系又は家庭系廃棄物として焼却、埋め立て処分された結果、排気ガス、焼却残渣、

土壌などから有害物質が検出される。また、コンポスト化された場合、堆肥や飼料に含ま れる有害物質が食物連鎖の過程で濃縮され最終的に人体に影響を及ぼす。

<シナリオ5>

シナリオ1の結果、古紙回収率が低下し、一般廃棄物として処分される段ボールの量が 増える。その結果、シナリオ4がより深刻化する。

(14)

9 1-3 本スタディの前に実施した自主実験

1章2節で前述した電子タグ付き段ボールのワーストシナリオ1を検証するために、2 007年1月にJAISA・エコWGのメンバーであるレンゴー㈱の中央研究所に於いて ラボスケールの自主実験を行った。

今回のスタディに至る問題意識の経緯を確認しておく意味で、自主実験の概要と実験結 果に対するJAISA・エコWGの見解を簡単に振り返っておく。

1-3-1 実験の概要

(1)実験の目的

電子タグが付いた段ボールを古紙処理工程に流して段ボール原紙を再生する場合に、

次のようなトラブル発生の可能性を調べた。

①原紙に混入したアンテナの金属箔が原因となった段ボールユーザーにおける金属探 知機チェックのトラブル。

②電子タグ粘着材が原因となった原紙の品質トラブル。

③原紙に混入した電子タグのICチップによるトラブル。

(2)実験の流れ

①試験サンプル(電子タグ付き段ボールシート)を離解機により離解。

②離解したサンプルをスクリーンに通して異物を分離。

③通過したサンプルをより細かなスクリーンに通し、より細かな異物を再分離。

④異物を分離回収したサンプルで手抄きシートを調製。

図3に自主実験の流れを写真で示す。

タグの貼付例 離解前のサンプル例 離解30分経過時 図3 自主実験の流れ

(3)実験の結果

①アンテナ金属は、ほとんどのサンプルにおいて基材フィルムから剥離して微小な薄 片となり、スクリーンのスリットを通過した。

②ICチップは、大部分が脱落し、向きによってはスクリーンのスリットを通過した。

(15)

10

③再生した手抄きシートには、図4に示すアンテナのアルミ片、銅片が混入していた が、ハンディの金属探知機には反応しなかった。

スクリーンプレート上のリジェクト リジェクト乾燥物 図4 自主実験のリジェクトサンプル

1-3-2 実験結果に対する見解

問題があるかないかの明確な判断は非常に難しかったが、総合的に判断して、電子タグ 付き段ボールが将来的に大量に使用された場合、問題が発生する可能性は皆無でないとの 判断に到った。問題発生可能性の要因は、電子タグを構成する粘着材、アンテナ金属、I Cチップの3点にあったと思われる。

(1)粘着材

①リサイクル処理工程で電子タグから分離した粘着材が、スクリーンに付着し絡まる ことで処理工程にトラブルを発生させる可能性があり、更に最終的に原紙に混入し 斑点など概観上の品質低下の可能性もある。

②ただし、より正確な判断を行うためには、更に大規模な実験設備を使い、実際の製 紙工場に近い量を使っての実験が必要であると判断され、そのことが本スタディを 行う契機となった。

(2)アンテナの金属

①実験では、離解及びスクリーン処理の後にもアンテナのアルミ片や銅片が残って原 紙に混入したが、ハンディタイプの金属探知機が反応することはなかった。アンテ ナ金属が極めて薄く小さいためと考えられる。

②ただし、目視で(キラキラする)混入金属が確認でき、見た目でわかってしまう。

(3)ICチップ

一部の電子タグではICチップも残留したが、ICチップは比重差により除去でき る可能性は残されており、自主実験で実施できなかったものの、通常の段ボールの古 紙処理工程で行う比重分離法を試す必要があるとの認識に至ったことも、今回のスタ ディの契機となった。

(16)

11 1-3-3 実験結果から出た課題

出された問題点を解決するため方法として次の各項が考えられた。

(1)リサイクル前に電子タグをできるだけ剥離

①絶対条件ではないが、段ボールをリサイクルに廻す際には「できるだけ電子タグを 剥してもらう」ことを推奨することも選択肢としたい。

②ただし剥す側のユーザーにとってのメリット及び労力が不明で、実効性に疑問が残 るとの結論となった。本スタディでは、リサイクル前に剥離することとの比較考量 のため、実際の物流センターにて、剥離できるかの可能性とそのためのコスト、労 力につきヒアリング調査を実施した。

(2)剥離しなくても問題が発生しない、もしくは発生しにくい電子タグの使用を推奨

①問題とならない電子タグとしては次のような両極のタイプが望ましいと考えられた。

a.離解により細裂化することなく取り出せる電子タグ

b.アンテナを含む全体が微細な粒子にまで粉砕されてしまう電子タグ

②現状のラベル形状の電子タグは、全て上記2タイプの中間にあり、リサイクル面で は中途半端といえる。

(3)剥離しなくても問題とならない電子タグ開発の方向性を提示

①現状の電子タグでは「問題とならない」と完全に言い切れるものがないため、リサ イクル面で適切な電子タグの開発方向性をJAISAから電子タグベンダーに提示 する必要がある。

②当面、例えば「古紙処理に影響しない粘着材」などの可能性の検討からスタートし、

方向性を明らかにしていくべきだと考えた。

(4)段ボール古紙処理工程を改変

①リサイクルに適応する電子タグを電子タグベンダーに提示する一方で、現状の電子 タグでも問題とならない段ボール古紙処理方法自体の改変可能性の検討を製紙会社 に要請することも選択肢として挙げられた。

②今回スタディでは、コスト面が課題となるものの、通常の段ボール古紙処理工程に はない設備の導入の可能性についても検討を加えた。

(17)

12

1-3-4 剥離する場合、剥した電子タグ自体の廃棄法

電子タグ自体の廃棄実験が未着手であり確定的指針は明示できないが、現状で用意して おくべきことを確認した。

(1)産業廃棄物としての処理法を用意する。

(2)現状、段ボール最終ユーザーの多くは卸や量販店などであるが、古紙回収業者に使 用済み段ボールを渡す前に可能な範囲で電子タグを剥してもらうことを推奨し、剥 した電子タグは産業廃棄物として処理することなどを説明する「指針」を用意すべ きである。

(3)家庭ゴミとしては自治体ごと対応。量は僅かながら、各家庭で使用済み段ボールか ら電子タグラベルを剥した際は、各自治体それぞれで異なるゴミ分別区分に準じた 処理に当面委ねることとなる。

(18)

13

2章 スタディの全容

本スタディの目的を達成するために、次のプログラムにて遂行した。

項 目 日時・場所 実 施 内 容 1.予備実験の実施 日時:

2007 年 11 月 12 日~14 場所:静岡県富士市 富士工業技術支援センター

実際に稼働している製紙工場における実験は困 難なため、ラボスケールの実験を使って、15種 の電子タグ付き段ボールを離解する実験をし、発 生する可能性ある問題点の把握と本実験に使用 する電子タグの選定を実施。

2.第一次本実験の実施 日時:

2007 年 12 月 11~12 場所:静岡県静岡市

相川鉄工㈱

技術開発センター

予備実験結果をもとに、実機スケールでの確認 試験を実施。

第一次本実験では、予備実験の結果をもとに、

3タイプの電子タグの実機スケールでの確認試 験を実施。

3.物流現場視察と有識 者へのヒアリング

日時:

2008 年 1 月 11 日 場所:東京都江東区

アスクル㈱

DCMセンター

電子タグが貼付された段ボール古紙について、

経済性の観点を含め、物流のなかで電子タグを 剥がす作業と、段ボール古紙処理工程での除去 との比較考量を行う。物流現場として、年間約 480万ケースの段ボールを廃棄しているアス クル㈱のDCMセンター内の現場を視察し、情 報交換を行い、有識者へのヒアリングを実施。

項 目 日時・場所 実 施 内 容 4.第二次本実験の実施 日時:

2008 年 1 月 16~17 場所:静岡県静岡市

相川鉄工㈱

技術開発センター

予備実験での実験結果をもとに、2フローの実 機スケールでの確認試験を実施。第二次本実験 では、予備実験の結果をもとに、2タイプの電 子タグの実機スケールでの確認試験を実施。ま た、高濃度パルパーの効果についての確認試験 も実施。

5.業界団体ヒアリング 日時

2008 年 2 月 13 日 場所:東京都千代田区 JAISA 会議室

古紙に関連する業界団体へヒアリングの実施。

・全国段ボール工業組合連合会、

・(社)日本印刷産業連合会

6.本実験試料の分析 実験のまとめ

日時:

2008 年1月17~2 月 18 日 場所:埼玉県川口市

本実験において、回収した試料から手抄きシー トを回収し、異物などの分析を実施。実験結果 をまとめる。

(19)

14

レンゴー㈱

7.段ボールに貼付する 電子タグ仕様の検討

日時:

2008 年1月17~2 月 18 日 場所:リサイクルFS委員会 JAISA

リサイクルFS委員会にて、予備実験、本実験 の結果をもとに電子タグ仕様を検討。。

8.評価・検証 日時:

2008 年 2 月 20 日 場所:リサイクルFS委員会

実験結果に対して、環境や廃棄問題の外部専門 家にアドバイスを仰ぎ評価・検証を行い、スタ ディの結果を報告書にまとめる。

(20)

15

3章 実験プラントでのリサイクル検証(予備実験編)

3-1 実験の目的

昨年度、ラボスケールの自主実験として、段ボールに電子タグが貼付された場合、段ボ ールのリサイクルにどのような影響を及ぼす可能性があるか調査を行った。その結果、電 子タグのアンテナ由来の金属異物、粘着材、ICチップが再生された段ボールに混入する 可能性が皆無ではないとの結論に至った。

以上の状況を踏まえ、今回の予備実験では、新たに集めた15タイプの電子タグについ て自主実験と同内容の実験を行い、これらの電子タグの段ボールリサイクル工程に及ぼす 影響について予備的な調査を行った。そして、その結果をもとに、実際の製紙工場と同レ ベルの設備で行う計画の本実験に使用する電子タグを選定することを目的とした。

3-2 実験内容

3-2-1 実験日及び場所

実験日 :2007年11月12~14日

実験場所 : 静岡県工業技術研究所 富士工業技術支援センター

3-2-2 実験概要

予備実験の概要を図5に示す。電子タグを貼付した段ボール試料をラボスケールの実験 装置であるJIS標準離解機で離解した後、0.25mm 幅のスリットを有するフラットス クリーンで異物を除去する。フラットスクリーンを通過したパルプスラリーについては手 抄きシートを調製し、段ボールのリサイクルに及ぼす影響を評価した。

今回の予備実験では、さまざまな電子タグが段ボールの古紙処理工程あるいは再生され た原紙にどのような影響を及ぼすか評価し、実際の製紙工場と同スケールの設備で行う本 実験に使用する電子タグの選定を行うことが目的である。そのため、発生する可能性のあ る問題点が明瞭となるように、実際の製紙工場のパルパーよりも激しい攪拌条件を採用す ることとした。

(21)

16

図5 予備実験の概要

電子タグ(5枚)

段ボール試料(約30g)

離解処理(20,40,60分)

フラットスクリーン処理(スリット幅0.25mm)

リジェクト パルプスラリー

手抄きシート調製

貼付

JIS標準離解機による

(22)

17 3-2-3 試料

(1)段ボール試料

約33g(絶乾30g相当、寸法300mm×220mm)

段の種類 : Bフルート(厚さ約3mm)

材質構成 : 表・裏ライナ LB170g/㎡

中しん MC120g/㎡

(2)電子タグ試料

表2に示す15タイプの電子タグについて評価を行った。

表2 電子タグ試料の仕様一覧

試料 No.

アンテナ材 表層材 基材 粘着材 周波数帯 ラベル寸法

(mm)

アンテナ寸法

(mm)

1 PET アクリル系 UHF 76x76 68x68

2 PET EVA 系 HF 54x86 45x76

3 PET アクリル系 UHF 101.6x101.6 93x23

4 PET アクリル系 HF 48x48 46x43

5 PET アクリル系 UHF 101.6x152.4 16x94

6 PET アクリル系 UHF 101.6x152.4 78x78

7

紙系

PEN アクリル系 UHF 101.6x152.4 20x90

8 PET アクリル系 HF 86x54 76x45

9 PET アクリル系 HF 35x89 20x60

10

アルミニウム

(Al)

プラスチック系

PET アクリル系 HF 54x86 46x77

11 PET アクリル系 HF 54x86 50x82

12

紙系

PET アクリル系 UHF 86x54 70x14

13 PET アクリル系 HF 50x18 37x8

14 PET アクリル系 HF 65x35 61×33

15

銅(Cu)

プラスチック系

PET アクリル系 UHF 11x98 8x95

3-2-4 実験手順

(1) 段ボール試料の離解

①段ボール試料に15タイプのうちいずれか1タイプの電子タグ5枚を貼付した。

②電子タグを貼付した段ボール試料を2~3cm 角程度に手で引き裂き、2,000ml の水の一部に20分以上浸漬した。

③JIS標準離解機に上記全量(段ボール試料と水2,000ml)を移し、回転数 3,000rpm で40分間処理した。電子タグのタイプによっては、20分、60 分処理も行った。

(23)

18

(2) フラットスクリーンによる異物の除去

①TAPPI UM242準拠のフラットスクリーンを用い、スクリーンプレートのス リット幅0.25mm(10カット)で離解処理後のパルプ中の異物除去を行った。

②約10ℓ/分で給水しながらスクリーンプレートのスリットを通過したパルプスラリ ーをふるいで受け、パルプスラリーとして回収した。

③スクリーンプレート上の残渣物をリジェクトとして回収した。

(3)手抄きシートの調製

①フラットスクリーン処理後のパルプスラリー(スリット通過物)を約1%に水で希 釈し、全量を3分割した。

②上記紙料から25cm 角型手抄きシートマシンで手抄きシートを3枚調製する。坪量 は約150g/㎡となる。

③湿紙手抄きシートは、ろ紙にはさんでプレスした後、約120℃に過熱したドラム 式乾燥機で乾燥させた

3-2-5 評価方法

評価項目は以下に示すフラットスクリーンのリジェクトについての3項目とパルプスラ リーから調製した手抄きシートについての3項目の計6項目とし、それらをもとに総合評 価を行った。

(1)フラットスクリーンのリジェクト

①リジェクトの総重量

②電子タグの破損の程度 : 目視評価とし、大・中・小の3段階評価。

③粘着異物の量 : 目視評価とし、特に多いものについて特記。

(2)パルプスラリーから調製した手抄きシート

①金属異物混入の程度 : 目視評価とし、非常に多い・多い・少ない・ほぼなしの 4段階評価。

②ICチップの混入数 : 手抄きシート3枚に含まれるICチップの数を計測。た だし、紙の中に埋もれ表裏面から視認できないものは計測しない。

③その他異物 : 目視評価で特記すべき事項について記載。

(1)(2)の結果を総合的に判断し、段ボールのリサイクルへの影響が大きいと予想 される電子タグを「難」、影響が小さいと予想される電子タグを「易」と判定。中間の電 子タグについては無印とした。

(24)

19 3-3 結果及び考察

3-3-1 離解後の状態

電子タグのタイプによって離解処理中の電子タグ破損の程度が異なり、細かく裂けて小 片化したものからほとんど原形のままのものまで多様である。また、粘着材の状態も異な り、電子タグ No.5、No.6、No.7ではゴムひも状に分離した粘着材がJIS標準離解機 のプロペラに絡みついていた。

3-3-2 フラットスクリーンでの異物の除去結果

離解処理後のスラリーに含まれる電子タグの基材由来異物のほとんどは0.25mm 幅の スリットのフラットスクリーンで除去された。表3に各電子タグについて、離解処理を4 0分行った後のフラットスクリーンリジェクトの評価結果を示す。

表3 フラットスクリーンリジェクトの評価結果

表層材が紙系の電子タグ破損の程度は、プラスチック系の電子タグに比べて大きい傾 向にある。また、細長く、小さめの電子タグである No.15の離解後の破損程度は小さか った。粘着異物の状態は、No.5、No.6、No.7の電子タグでは粘着材がゴム状に伸びる 大きなかたまりを形成していた。No.12の粘着異物も比較的多かった。

電子タグの構成 フラットスクリーンのリジェクト 試料

No. アンテナ材 表層材 重量

(g)

電子タグ の破損

粘着異物の量

1 3.45 大

2 2.59 大

3 2.53 大

4 1.17 大

5 4.41 大 多い(ゴム状)

6 4.78 大 多い(ゴム状)

7

紙系

3.78 大 多い(ゴム状)

8 5.57 中

9 3.20 中

10

アルミニウム

(Al)

プラスチック系

5.81 中

11 3.68 大

12

紙系

1.35 大 多い

13 1.31 小

14 3.37 中

15

銅(Cu)

プラスチック系

1.09 小

(25)

20 3-3-3 手抄きシートへの異物の混入結果

(1)電子タグのタイプによるが、アンテナ材由来の金属異物やICチップはフラットス クリーンのスリット(0.25mm)を通過し、手抄きシートに混入していた。

(2)各電子タグについて、離解処理を40分行った後のフラットスクリーン通過原料か ら調製した手抄きシートの評価結果を表4に示す。電子タグの破損状態で見られた傾 向と同様に、表層材が紙系の電子タグの方がプラスチック系の電子タグに比べて手抄 きシートへの金属異物とICチップの混入が多い傾向にあった。

(3)フラットスクリーンリジェクトと手抄きシートの状態を総合的に判断し、段ボール のリサイクルへの影響度が大きい(評価:難)電子タグは表層材が紙系のものが多く、

影響度が小さい(評価:易)電子タグは銅アンテナの表層材がプラスチック系のもの であった。

表4 手抄きシートの評価結果

電子タグの構成 手抄きシート

試料

No. アンテナ材 表層材 金属異物混 入

ICチッ プ混入数

(個)

その他異物 総 合 評 価

1 非常に多い 3 難

2 多い 3 難

3 多い 3 黒変・薄片異物 難

4 非常に多い 4 難

5 非常に多い 4 難

6 非常に多い 2 難

7

紙系

多い 0 難

8 多い 0

9 少ない 2

10

アルミニウム

(Al)

プラスチック系

少ない 0

11 非常に多い 3 難

12

紙系

ほぼなし 0

13 少ない 0 易

14 ほぼなし 0 易

15

銅(Cu)

プラスチック系

ほぼなし 0 易

(26)

21 3-4 結論

今回の予備実験結果より、以下のことを確認した。

(1)JIS標準離解機を使った実験では、離解中に細かくなった電子タグ由来の金属 異物やICチップはフラットスクリーンの0.25mm 幅のスリットを通過し手抄 きシートに混入し、昨年度レンゴー㈱中央研究所(福井)で実施したラボスケー ルの自主実験の結果と同様である。

(2)表層材がプラスチック系の電子タグの方が破損の程度が小さく、段ボールのリサ イクルに及ぼす影響が小さいことが示唆された。

(3)実験結果をもとに本実験で使用する電子タグを選定した。選定した電子タグは、

下記に示すように、段ボールの古紙処理工程への影響が比較的大きいと予想される 紙系電子タグ3タイプと影響が比較的小さいと予想されるプラスチック系電子タグ 2タイプである。

①リサイクル工程への影響が大きいと予想される電子タグ No.4

No.7 No.11

②リサイクル工程への影響が小さいと予想される電子タグ No.10

No.15

なお、これら5タイプの電子タグの選定については、アンテナ材(アルミ又は銅)と表 層材(紙系又はプラスチック系)によって分類される4つのカテゴリーからそれぞれ1タ イプ以上を選定した。

(27)

22

4章 実験プラントでのリサイクル検証(本実験編)

4-1 実験の目的

段ボール原紙を製造している製紙工場が現在採用している一般的な段ボール古紙処理工 程と再生された段ボール原紙の品質に電子タグがどのような影響を及ぼすか評価する。そ のため、製紙工場の設備と同レベルの大規模な実験プラントの設備を使い、先に行った ラボスケールの予備実験より実際の操業条件に近いデータを収集する。

また、現在国内の段ボール古紙処理工程にはほとんど採用されてないが、電子タグ由 来の異物混入を最小限に抑えるための手段として、高濃度パルパーと低濃度クリーナー の効果も確認する。高濃度パルパーは、電子タグの細裂化を抑え、工程初期段階で比較 的大きな状態で電子タグ及び電子タグ由来の異物を除去できる可能性がある。低濃度ク リーナーは、現在の一般的な段ボールの古紙処理工程の後段に追加することにより、よ り高次の異物除去が期待できる。

図6 実験の目的と方法 目的①

方法

・段ボールの古紙処理工程

電子タグの影響評価

・段ボール原紙の品質

①大規模実験設備の使用 実操業に近いデータ収集

目的②

方法

・電子タグの処理に適した古紙処理工程の検討

低濃度クリーナーの効果

工程初期での異物の細裂 化抑制

高濃度パルパーの効果

最終工程での異物の高次 除去

(28)

23 4-2 段ボールの一般的な古紙処理フロー 4-2-1 段ボール古紙処理の概要

紙は木材繊維など親水性のセルロース系植物繊維を水中に分散させ、網(ワイヤ)で平 面状に抄き上げ、プレス脱水後、乾燥することによって隣接する繊維のセルロースの水酸 基相互間に水素結合を形成させ、必要な強度を有するシートにしたものである。この水素 結合は水の介在により容易に解離するため、紙を水中で撹拌すると元の繊維に離解される。

これが紙のリサイクルの原理である。

実際の原料古紙にはさまざまな異物が混入しているため、製紙工場での古紙処理工程で は、水中での撹拌によってパルプ繊維をバラバラのスラリーにする離解工程に加え、製品 の品質や製造工程に悪影響を及ぼさないよう異物を除去する除塵工程が必要となる。

図7に段ボール原紙の一般的な古紙処理工程の概略を示す。

図7 段ボールの一般的な古紙処理工程

4-2-2 離解工程

離解工程は古紙処理の最初の工程であり、パルパーを用い、水中で古紙を撹拌しバラバ ラに解離した繊維のスラリーを調製する工程である。パルパーは離解だけではなく、古紙 に付着して工程内に混入する大きな異物の除去機能も有する。異物を効率的に除去するに は、古紙処理工程の初期段階で異物が分散・細裂化する前に極力大きな状態で除去する必 要がある。従ってパルパーの性能が異物の除去にも大きな影響を及ぼす。

代表的なパルパーに低濃度パルパー(離解濃度3~6%)と高濃度パルパー(離解濃度 13~18%)がある。DIP(脱インキパルプ)用原料として使用される新聞古紙や雑 誌古紙の処理にはインキの剥離性が良い高濃度パルパーが採用される場合が多いが、離解 が進みにくい段ボール古紙の処理には、設置スペースや歩留まりの面から低濃度パルパー を採用するのが一般的である。

段ボール古紙

完成パルプ

パルパー 高濃度クリーナー

粗選スクリーン(丸穴)

精選スクリーン(スリット)

離解工程 除塵工程

(29)

24

(1)低濃度パルパー

円盤状ディスクにタービンブレード状の羽根が付いたロータを円筒タブの底部に備え ており、ロータと原料間の速度差によるスラッシング作用により離解を行う。離解され た繊維はロータの下にあるストレーナーから排出される。紐、針金、PPバンド、フィ ルムなどはパルパー内に垂らしたロープに絡みつけ、ラガーロープとして排出する。

(2)高濃度パルパー

原料古紙を高濃度状態で回流・撹拌することで生じる繊維同士の摩擦作用によって離 解を行う。高濃度領域における繊維間摩擦はせん断力の働きが緩やかであることから低 濃度パルパーより異物の細裂化作用が小さく、繊維からのインキの剥離性も良い。日本 ではバッチ処理式のタブ式高濃度パルパーが主流で、スパイラル型やヘリディスク型の ロータが使われる。大きな異物や未離解片はデトラッシャを併設し、原料抜き出しとき に除去する。

4-2-3 除塵工程

古紙処理工程には、原料古紙に付随してさまざまな異物が混入する。異物は、古紙の手 選別段階で排除される大型ごみから排水処理で除去される SS 成分まで、その大きさは広範 囲にわたる。原料古紙のグレードと完成パルプの要求品質レベルに応じて異物除去プロセ スを複数組み合わせることで古紙処理の全体プロセスが構成される。

異物分離の原理には、形状分離と比重分離がある。形状分離は、異物の大きさや形によ りふるいにかける方法であり、代表的な機器としてスクリーン(丸穴スクリーン、スリッ トスクリーン)がある。比重分離は、異物粒子とパルプスラリーとの比重差により分離す る方法であり、遠心沈降の原理を利用したクリーナーを使用する。

(1)スクリーン

除塵工程には、古紙離解後の粗大異物の除去を目的とする粗選工程と、完成パルプ の品質要求に見合った異物レベルの達成を目的とする精選工程とがある。低濃度パル パーを使用する段ボール古紙の処理工程では、粗選工程にフィルム片、紐状物、金属 片、未離解片など粗大異物の除去を目的に直径2.0~3.0mm の丸穴スクリーンを設 置する例が多い。また、精選工程にはスリットスクリーンを設置するのが一般的で、こ こでいかにチリ、粘着異物、その他微細異物を除去できるかが完成パルプの最終品質を 決めることになる。

(2)クリーナー

スクリーンはスリット幅以下の微細な異物や弾塑性変形しやすい異物を通してしまう という欠点を有するが、クリーナーはこのような異物に対してもパルプスラリーとの比 重差があれば分離可能である。遠心力を利用することにより、微細な粒子に対して大き

(30)

25

な遠心沈降速度を与えることを基本原理とする。ポンプによって圧送されたパルプスラ リーは原料入り口から円筒部へ接線方向に流入し、回転流となって下方の円錐コーン部 に進む。液中の異物粒子は遠心力により周壁部に集められながら下方に進み、下流出口 より排出される。異物を分離した液は中央部を上昇し原料出口より流出する。

クリーナーは、処理濃度によって高濃度クリーナー(2~6%)と低濃度クリーナー

(0.5~1.5%)に大別される。高濃度クリーナーはパルパーでの離解後の原料か ら石や金属片などの大型重量異物を除去し、粗選・精選スクリーンを保護することが主 目的である。そのため、粗選工程の前段に設置される。

これに対し、低濃度クリーナーは重量異物又は軽量異物の除去を目的とし、精選スク リーンの後工程に設置されるのが一般的である。しかし、低濃度であるため処理容量が 大きくなり、動力が必要となる一方で歩留まりは低下する。そのため、古紙選別が進み 原料内異物の少ない国内段ボール古紙の処理工程に採用する例はほとんどない。

4-3 実験内容

4-3-1 実験日及び場所

実験日 : 第1回 2007年12月11~12日 第2回 2008年 1月16~17日 実験場所 : 相川鉄工㈱ 相川技術センター

4-3-2 実験フローと使用機器

今回の本実験では、図8及び図9に示す2種類の古紙処理フローで実験を行った。各工 程処理後のパルプスラリーと異物として除去したリジェクトを分析・評価用試料としてサ ンプリングした。サンプリング箇所は図中の①~⑯である。

図8 古紙処理フロー概略図:実験フロー1

④ ⑥

① ③

リジェクト リジェクト

リジェクトリジェクト

リジェクト

低濃度パルパー 高濃度クリーナー 粗選スクリーン 精選スクリーン 低濃度クリーナー

粗選2

スクリーン

精選2

スクリーン

低濃度クリーナー

2

実験フロー1

Φ9.0mm Φ2.2mm

Φ2.2mm

0.25mm

0.25mm 電子タグ:1,563

段ボール古紙:250kg

(31)

26

図9 古紙処理フロー概略図:実験フロー2

(1)実験フロー1

現在、製紙工場で行っている段ボールの一般的な古紙処理工程に電子タグがどのよう な影響を及ぼすか評価するため、低濃度パルパーで離解後、高濃度クリーナーで粗大重 量異物を除去し、粗選(丸穴)スクリーン、精選(スリット)スクリーン処理を行うと いう段ボールの一般的な古紙処理フローを基本とする。図8の⑥でサンプリングした試 料が段ボール原紙用の完成パルプとほぼ同等となる。また、より高次の除塵処理が必要 になった場合に備え、最終工程に低濃度クリーナーを追加し、その効果も確認可能なフ ローとした。

①パルパーへの段ボール古紙投入量 : 250kg

裁落古紙(国内の紙加工工場で発生する加工屑)230kg+段ボール台紙20kg

②パルパーへの電子タグ投入量 :1,563枚(予め段ボール台紙に貼付しておく)

国内の段ボールの平均坪量を約640g/㎡、段ボール1箱当たりの面積を 約0.5㎡とし、段ボール1箱に電子タグが2枚貼付されるとして算出

(2)実験フロー2

低濃度パルパーより異物の細裂化作用が小さい高濃度パルパーを使用することで、古 紙処理工程の初期段階で、電子タグをできるだけ破損させず大きな状態で除去すること を意図した実験フローである。高濃度パルパーの後段にデトラッシャとしてペアパルパ ーを配置し、大きな異物や未離解片は離解後のパルプスラリーを高濃度パルパーから抜 き出す際に除去する。

①パルパーへの段ボール古紙投入量 : 500kg

裁落古紙(国内の紙加工工場で発生する加工屑)460kg+段ボール台紙40kg

②パルパーへの電子タグ投入量 :3,125枚(予め段ボール台紙に貼付しておく)

国内の段ボールの平均坪量を約640g/㎡、段ボール1箱当たりの面積を 約0.5㎡とし、段ボール1箱に電子タグが2枚貼付されるとして算出

リジェクトリジェクト

リジェクト リジェクト

高濃度パルパー ペアパルパー 高濃度クリーナー 精選スクリーン 低濃度クリーナー

精選2

スクリーン

低濃度クリーナー

2

⑬ ⑮

⑩ 実験フロー2

Φ7.0mm

0.25mm 0.25mm +Φ2.5mm

電子タグ:3,125 段ボール古紙:500kg

(32)

27 4-3-3 使用機器と設定条件

各機器の仕様と設定条件は以下の通りである。

(1)低濃度パルパー

機器名 : 低濃度パルパー ADP-5(Delta Pulper) / 相川鉄工㈱製 容量:5㎥

使用水温:約30℃

離解濃度:8.5~10%

離解時間:15分

ストレーナー:Φ9.0mm

(2)高濃度パルパー

機器名 : 高濃度パルパーHDP-5 / 相川鉄工㈱製 容量:5㎥

使用水温:約30℃

離解濃度:13.5%

離解時間:20分

(3)ペアパルパー

機器名 : PEA―1100N型 / 相川鉄工㈱製 ストレーナー:Φ7.0mm(直径)

バスケット:Φ2.5mm(直径)

(4)高濃度クリーナー

機器名 : A強力型高濃度クリーナー / 相川鉄工㈱製

(5)粗選スクリーン(丸穴スクリーン)

機器名 : 粗選 CH-500 型高濃度スクリーン / 相川鉄工㈱製 バスケット:Φ2.2mm(直径)

(6)粗選2次スクリーン(丸穴スクリーン)

機器名 : 粗選FR-400型リジェクトスクリーン / 相川鉄工㈱製 バスケット:Φ2.2mm(直径)

(7)精選スクリーン(スリットスクリーン)

機器名: 精選GFF-300型グランフロースクリーン / 相川鉄工㈱製 バスケット:0.25mm(スリット幅)

(33)

28

(8)精選2次スクリーン(スリットスクリーン)

機器名 : 精選GFR-400型リジェクトスクリーン / 相川鉄工㈱製 バスケット:0.25mm(スリット幅)

(9)低濃度クリーナー

機器名 : LCC-150型ラモー・クリーナー / 相川鉄工㈱製 1次クリーナー:径150mm × 6本 ノズルΦ6mm

2次クリーナー:径150mm × 1本 ノズルΦ6mm

4-3-4 電子タグ試料

(1)実験フロー1用の電子タグ試料

予備実験の結果をもとに選定した5タイプの電子タグを試料とした。表5に電子タグ 試料の仕様を示す。なお、試料 No.は予備実験の際の No.を引き続き使用することとした。

表5 本実験用電子タグとその仕様

電子タグの試料 No.は予備実験の際の試料 No.と同じ。

(2)実験フロー2用の電子タグ試料 電子タグ No.7を試料とした。

(3)選定理由

予備実験結果で比較的リサイクルへの影響が大きいと判定された3タイプの電子タグ の中から選定した。特に、段ボールに貼付して物流過程で使用されるようになるのは読 み取り距離が比較的長いUHF帯の電子タグになると考えられることから、No.7を選定 した。

試 料 No.

アンテ ナ材

表層材 基材 粘着材 周波 数帯

ラベル寸法 アンテ ナ寸法

4 PET アクリル系 HF 54×86 46×43 7

紙系

PEN アクリル系 UHF 101.6×152.4 20×90 10

アルミ ニウム

(Al) プラスチック系 PET アクリル系 HF 54×86 46×77 11 紙系 PET アクリル系 HF 54×86 50×82 15

(Cu) プラスチック系 PET アクリル系 UHF 11×98 8×95

(34)

29 4-3-5 実験区分

表6に示すテスト 1 からテスト6の区分の実験を実施する。

表6 実験区分 電子タグ テスト

番号*1

古紙処理フロー

試料 No. パルパーへの投入量*2

パルパーへの段ボー ル古紙投入量 テスト 1 実験フロー1 No.7 1,563 枚 250kg*3 テスト 2 実験フロー1 No.11 1,563 枚 250kg*3 テスト 3 実験フロー1 No.4 1,563 枚 250kg*3 テスト 4 実験フロー1 No.10 1,563 枚 250kg*3 テスト 5 実験フロー1 No.15 1,563 枚 250kg*3 テスト 6 実験フロー2 No.7 3,125 枚 500kg*4

*1:テスト1~3は2007年12月11,12日、

テスト4~6は2008年1月16,17日に実施

*2:国内の段ボールの平均坪量を約640g/㎡、段ボール1箱当たりの面積を約0.5㎡

とし、段ボール1箱に電子タグが2枚貼付されるとして算出

*3:裁落古紙230kg + 電子タグを貼付した段ボール台紙20kg

*4:裁落古紙460kg + 電子タグを貼付した段ボール台紙40kg

(35)

30 4-4 実験結果

4-4-1 原料歩留まり率

各工程の原料歩留まり率は、工程が進むにつれて低下していることを確認した。

4-4-2 低濃度パルパー及びペアパルパーリジェクトについて

(1)電子タグの破損状態

①低濃度パルパーのストレーナー(9.0mm)を通過できずにタブ内に残留したリジ ェクトとして投入した電子タグ(1,563枚)の大部分を回収できた。

②ラボスケールの予備実験で使用したJIS標準離解機では離解時間20分でも電子タ グはかなり細かく裂けていたが、容量5㎥の低濃度パルパーでは多くの電子タグが裂 けやちぎれのない状態で回収された。

③高濃度パルパー後段のペアパルパーのストレーナー(Φ7.0mm)とバスケットの 丸穴(Φ2.5mm)を通過できずに排出されたリジェクトとして、多くの電子タグ

(No.7)を回収した。

④ペアパルパーから排出されたリジェクト中の電子タグは、ラボスケールの予備実験の ときより細裂化の程度は小さいが、低濃度パルパーのリジェクトと比較すると破損の 程度が大きい。

⑤低濃度パルパーとペアパルパーのリジェクトとして回収した電子タグの破損状況を 表7にまとめる。低濃度パルパーで処理した場合、投入した電子タグのうち 96%以上をパルパー内に残留するリジェクトとして裂けやちぎれのない状態で回収 した。

⑥特に、電子タグNo.10とNo.15は99%以上裂けやちぎれのないほぼもとの形状 のまま回収できた。これら2タイプの電子タグは、予備実験で段ボールのリサイクル への影響が小さいと予想した電子タグであり、予備実験での傾向とも一致する。

⑦ICチップのない電子タグ数や破損した電子タグの破片数などからも、予備実験で段 ボールのリサイクルへの影響が大きいと予想した電子タグ3タイプ(No.7、No.1 1、No.4)より、影響が小さいと予想した電子タグ2タイプ(No.10、No.15)

の方が、破損の程度が小さいことを確認した。

⑧予備実験に比べ、アンテナ材の剥離は少ない。ただし、電子タグ No.7は、離解中 に折れ曲がったり捩れたりした部分からのアンテナ材金属の剥離が他に比べて 多い。

⑨電子タグNo.4とNo.11は、基材に裂けやちぎれはないが、ICチップがなくなっ

ているものの比率が高い。

⑩ペアパルパーのリジェクト中の電子タグは低濃度パルパーのものより破損の程度が 大きく、電子タグ基材に破損がなく、ICチップも付いていたものは全体の50%程 度であった。

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