【 特 集: 容器包装プラスチックのリサイクルと今後 】
プラスチック包装・容器の歴史と機能
良 忠 彦 *
【要 旨】 現在,包装材料として,プラスチックが主要な材料となっている。プラスチックが適用され ている包装材料の形態は,フィルム包装,シート成形容器,射出成形容器,ブロー成形容器など,その 種類は多様である。包装材料としてのプラスチックは,ガラス,金属,紙に比べて,その歴史は比較的 新しい。フレキシブル包装としては,セロファンの単層フィルム包装から始まり,現在バリア包装とし て,多層フィルムが多用されている。シート成形容器は,スーパーマーケットでのプリパックに適用さ れるようになり,普及した。ブロー成形容器は,食用油,液体調味料の容器として適用されるようにな り,現在では,飲料容器として地位を確立した。包装材料には,多くの機能が要求されるが,ガスバリ ア性は特に重要である。現在,種々のバリアー材料やバリア化の技術が開発されている。包装材料はそ の使命を終えると廃棄される。このため,3R (リデュース,リユース,リサイクル) を基本とする包 装設計が行われている。 キーワード:フレキシブル包装,シート成形容器,ブローボトル,ガスバリア性,3R1.包装材料としてのプラスチックの位置
包装材料としては,ガラス,金属,紙,プラスチック など種々の材料が現在用いられている。これらの材料の うち,ガラスと金属は古い時代から包装材料として使用 されてきた。近年になって紙が使用されるようになった。 その後,化学工業が発展し,種々のプラスチック材料が 提供されるようになると,包装材料への適用が行われる ようになった。プラスチック材料は,軽量であること, 種々の形態に加工可能であることをはじめ,多くの長所 を持っているため,包装材料としての使用量が急増した。 また,プラスチック材料には,特性の異なる種々のもの がある。これらの特性を利用して現在種々の機能を持っ た包装材料が開発されている。現在,包装材料の使用量 としては,紙・板紙製品が一番多いが,その次にプラス チック製品が続いている。 プラスチック包装容器としては,種々の形態のものが 使用されている。表 1 に,プラスチック包装容器の形態 と,それらに使用されている主なプラスチックの種類を 示す。形態別の使用量としては,フィルム包装が最も多 く,ブロー成形容器が続いている。2.プラスチック包装・容器の歴史
2. 1 フレキシブル包装 日本におけるフィルムによる食品のフレキシブル包装 は,塩酸ゴム (ライファン) とセロファンによる包装か 原稿受付 2010. 7. 29 * 包装科学研究所 連絡先:〒 247-0026 横浜市栄区犬山町 61-4 E-mail : [email protected] シート成形容器PET, HDPE, LDPE, PP ブロー成形容器 PP, PS, HDPE 射出成形容器・コンテナ LDPE, PP 押出ラミネート製品 PS, HDPE 発泡製品 PP, HDPE 延伸フラットヤーン 使用プラスチックの種類 LDPE:低密度ポリエチレン HDPE:高密度ポリエチレン EVA:エチレン酢酸ビニル共重合体 PP:ポリプロピレン PET:ポリエチレンテレフタレート PS:ポリスチレン A-PET:非晶性 PET 包装容器の形態 表 1 プラスチック包装容器の形態と使用プラスチック
LDPE, HDPE, EVA, PP, PET, PS フィルム
ら始まる。その後,表 2 に示されるように,各種のプラ スチックフィルムの開発が行われ,フレキシブル包装へ の適用が始まった。フレキシブル包装の初期は,単体 フィルムやセロハンに PE フィルムを張り合わせたポリ セロのように単純なものが使用された。その後,押出 コーティングやドライラミネーションなどのラミネート 技術の進歩により,種々の食品包装技法に適した多層 フィルム包材が使用されるようになった。 現在でも,単体フィルム包装は,さまざまな用途に使 用されており,使用量も非常に多い。しかし,特に保存 を目的とした食品のフィルム包装にとって,ガスバリア 性など,種々の要求特性が必要であるため,多層フィル ム包装が行われるようになり,ポリ塩化ビニリデン (PVDC) フィルム,エチレンビニルアルコール共重合 体 (EVOH) フィルム,各種 PVDC コートフィルム (K コートフィルム) が,ガスバリア材として使用されよう になった。現在では,ガスバリア材として,EVOH,後 述する NXD6 ナイロンや各種バリアコーティングフィ ルムが多く使用されている。多層フィルムパウチ包装に は,さらに印刷基材とヒートシール (シーラント) 層が 必要であるが,印刷基材としてはポリエチレンテレフタ レート (PET),2 軸延伸ポリプロピレン (OPP),2 軸 延伸ナイロン (ONY) フィルムが,またシーラント層 には低密度ポリエチレン (LDPE),エチレン酢酸ビニル 共重合体 (EVA),無延伸ポリプロピレン (CPP) フィ ルムなどが使用されている。 各種の包装技法の中で,レトルト包装はレトルト食品 という新しいジャンルを形成した技法である。レトルト 食品の研究は,米国において最初に開始され,1955 年 にイリノイ大学で本格的な研究が始まっている。その後, 1959 年に米国陸軍ネイティック研究所が軍用食として レトルト食品の研究プロジェクトを発足させた。日本に おいては,1961 (昭和 36) 年に研究が開始され,1963 (昭和 38) 年に PET/PE 構成の透明レトルトパウチが完 成している。その後,1967 (昭和 42) 年に PET/アルミ 箔/PE 構成の本格的なレトルトパウチが完成し,1969 (昭和 44) 年レトルトカレーが商品化された。アルミ箔 タイプのレトルトパウチの初期のシーラントとしては, 耐衝撃性を向上させるためにエラストマーであるポリイ ソブチレン (PIB) をブレンドした HDPE が使用されて いた。しかし,このシーラントのヒートシール強度や耐 熱性は十分でなかった。現在では,耐衝撃性,耐熱性に 優れたエチレン・プロピレン・ブロック共重合体のフィ ルム化技術が確立され,この無延伸フィルムが使用され ている。レトルト食品の内容品としては,現在でもカ レーが主であるが,各種ソース類,各種調味液類など, 用途が拡大している。 2. 2 シート成形容器 プラスチックシートから真空・圧空成形やプラグアシ スト成形などにより熱成形されたトレーやカップが現在 多用されている。タイプとしては,単層と多層に分かれ る。単層の成形容器材料としては,ポリスチレン (PS) が最も多く使用されている。PS 成形容器の主要な用途 は,精肉や鮮魚用のトレー,青果物用のフードパック, インスタント食品用のトレーやカップ類である。このよ うな PS 成形容器の需要は,流通革命によるスーパー マーケットの台頭と即席麺に代表されるインスタント食 品の普及により急速に拡大した。 成形容器に使用されている PS シートにはさまざまな 成形法によるものがあるが,精肉,鮮魚,水産加工品な どのトレーに成形されているポリスチレンペーパー (PSP) は,日本では 1961 (昭和 36) 年に生産開始され ている。精肉のプリパックは,1964 (昭和 39) 年にスー パーマーケットのダイエーにより始められている,また, 青果物に使用されているフードパックやフルーツケース に成形される 2 軸延伸ポリスチレン (OPS) シートは, 1965 (昭和 40) 年に発売されている。 調理食品の容器には,ガスバリア性が要求されるため, このような用途には多層成形容器が使用されている。ガ スバリア性多層シート成形容器としては,1978 (昭和 53) 年に生産開始された PP 系のラミコンカップがある。 ガスバリア材としては EVOH が使用されている。現在, 味噌の容器として多用されているが,デザート食品など のレトルト容器としても使用されている。 アルミ箔やスチール箔と PP フィルムをラミネ − ト した材料で成形された容器もレトルト食品に適用されて いる。PP/アルミ箔系のレトルト容器は,1985 年頃ま では多く使用されていたが,現在ではあまり使用されて いない。現在,ベービーフード,デザート食品,おつま ライファン (塩酸ゴム) 上市 ライファン,ツナハムの包装に使用 セロファンにグラビア印刷 PVC フィルム生産開始 PVDC コートセロファン上市 PVC のインフレーション製膜開始 PVC 高周波ウェルダー実用化 PE のインフレーション製膜開始 味噌を PE 袋で発売 ポリセロ生産開始 クレハロン (PVDC フィルム) 上市 PVA フィルム,OPP フィルム上市 2 軸延伸ナイロン (ONY) フィルム上市 エバール (EVOH) フィルム上市 1937 (昭和 12) 年 1938 (昭和 13) 年 1939 (昭和 14) 年 1947 (昭和 22) 年 1950 (昭和 25) 年 1952 (昭和 27) 年 1954 (昭和 29) 年 1956 (昭和 31) 年 1962 (昭和 37) 年 1968 (昭和 43) 年 1969 (昭和 44) 年 表 2 包装用プラスチックフィルムの開発史 (日本)
み類などの容器として使用されている PP/スチール箔 /PP 構成のレトルト容器は,1985 (昭和 60) 年に生産が 始まった。 2. 3 プラスチックブローボトル ブロー成形は,古くからガラスびんの成形に使用され てきた成形法である。高分子材料のブロー成形は,天然 高分子であるグッタペルカの成形に関する 1851 年の特 許に見られるのが最初で,次に 1880 年にセルロイドに 関するブロー成形の特許が見られる。この方法はセルロ イドの人形などの玩具の製造に適用された。 合成プラスチック樹脂を材料とした,近代的なブロー 成形法が確立されたのは 1930 年代である。商業的には, PE の生産が始まり,第 2 次世界大戦後,防臭剤,ヘ ヤートニック,液体薬品などの包装容器として米国で普 及した。わが国においては,米国に遅れること約 10 年, 1950 年代に PE のブロー成形容器の本格的な商業生産 が始まった。他の材料としては,PP が使用され始め, 1960 年代中頃,透明性,ガスバリア性に優れたポリ塩 化ビニル (PVC) のブロー成形容器が開発されて食品用 プラスチック容器として多用されるようになる。 このようにブロー成形法は,PE, PP, PVC の押出ブ ロー成形から始まり,PVDC の延伸ブロー成形,PS の 射出ブロー成形,EVOH をガスバリア材に用いた多層 ブロー成形,さらに PP,PET などの 2 軸延伸ブロー成 形へと技術的発展が行われてきた。 食品包装・容器の要求特性としてガスバリア性は非常 に重要である。酸素の影響を受けやすいサラダオイル, しょう油,ソースなどの食品用ボトルとしては,初め PVC ボトルが主要な座を占めてきた。しかし,ガスバ リア性が不十分であった。そこで,EVOH 樹脂を用い たポリオレフィンとの多層ボトルの研究が行われ,1972 (昭和 47) 年に「ラミコン」ボトル (東洋製罐(株)) が開 発された。最初に実用化された「ラミコン」ボトルは, LDPE/EVOH 系の柔軟なスクイズボトルで,マヨネー ズ容器として採用された。現在では,LDPE/無水マレ イン酸変性 PE/EVOH/無水マレイン酸変性 PE/LDPE 構成の「ラミコン」ボトルがケッチャプに,同様の構成 の HDPE 系のボトルがサラダオイルに,また PP 系の ボトルがサラダドレッシングに使用されている。 現在 PET ボトルは,主要な飲料容器となっている。 PET は包装材料としては,まずフィルムの形態での使 用が始まった。ボトル材料としては,1974 年デュポン 社により初めて応用され,ペプシコーラ用ボトルとして 採用された。日本においては,当初食品衛生法に PET の記載がなかったため,清涼飲料用に使用できず,1977 (昭和 52) 年にしょう油用ボトルとしての使用が始まっ た。その後,ソース,台所用液体洗剤へと用途が拡大し, 1982 (昭和 57) 年の厚生省告示 20 号による清涼飲料へ の使用許可とともに飲料への展開が開始された。現在で は,清涼飲料をはじめ,緑茶やウーロン茶などの茶類, ミネラルウォーターへの需要が拡大している。 PET ボトル製造における技術的革新としては,熱間 充填 (ホットフィル) に対応できる耐熱 PET ボトルの 開発があげられる。果汁飲料などホットフィルなどによ る低温殺菌 (pasteurization) される飲料の用途には, 熱収縮や変形が生じないようにする必要があり,ヒート セットを基本技術とする耐熱 PET ボトルが 1985 (昭和 60) 年に開発されている。この場合,生産速度が問題と なるが,PET 樹脂の特性の解析を十分行い,高速ブ ロー成形技術が確立されている。また,炭酸ガス入り果 汁飲料用の耐熱圧 PET ボトルや多層ハイガスバリア PET ボトルの技術も確立された。
3.包装・容器の要求特性
包装には,物を輸送するための包装と,食品や医薬品 などの個装に見られる貯蔵機能を重視した包装とに大別 される。輸送・保管することを主目的として施す包装は, 工業包装とも呼ばれている。また,個装は,商品が消費 者の手元に渡るために施す包装で,工業包装に対して消 費者包装とも呼ばれる。 包装の目的や包装されるものの種類により,適用され る包装の技法は異なる。輸送包装では,商品を保護して 販売者や消費者に届けるのが主な目的であるため,緩 衝・防振包装技法が重要である。一方,食品,医薬品, 日用品などの消費者包装では,包装される物により種々 の包装技法がある。 包装されるものとして最も主要である食品や医薬品な どの場合,内容品に及ぼす主な外的要因としては,酸素, 水分,光,温度,微生物などがあげられる。包装の機能 としては,このような外的要因を抑えることが必要であ り,これらの要因を制御する種々の技法が用いられてい る。 主に酸素などのガスの透過を防ぐための技法としては, 真空包装技法,ガス置換包装技法,ガスバリア包装技法, 脱酸素剤封入包装技法,酸素吸収性容器包装技法などが あげられる。また,野菜や果物などの青果物の鮮度を保 持するための包装では,酸素や炭酸ガスの透過を制御す る技法が必要となる。 乾燥食品や医薬品の包装では,水分の侵入を防止する ことが重要であり,防湿包装が適用されている。水分は,物理的に内容品に影響を与えるだけでなく,微生物の繁 殖する原因にもなる。 光は,その物理化学的作用により,食品や医薬品の変 質・劣化の原因となる。特に,紫外線の作用は強力であ る。また,酸素の存在で酸化反応の速度が顕著となる。 包装材料には透明性が要求されることがあり,このよう な包装材料では,紫外線を吸収するための設計が必要と なる。 食品包装の場合,微生物を制御する技法が特に重要で ある。微生物を制御する方法としては,熱,殺菌剤,放 射線などによる殺菌,温度,水分,雰囲気ガスの制御に よる静菌,洗浄・濾過などによる除菌など,種々の技法 がある。無菌・無菌化包装技法は,微生物を遮断する技 法であるが,内容品や包装材料は,熱や薬剤,あるいは 放射線などにより殺菌される。 以上述べた種々の包装技法で使用される包装材料には, 包装技法の種類により多少異なるが,一般的に表 3 に示 すような特性が要求される。また表 4 には,主要な食品 包装技法に使用される包装材料に要求される主な特性と プラスチック包装の場合の包装形態を示す。プラスチッ ク包装材料は,現在食品包装で最も多く使用されている が,この場合ガスバリア性が非常に重要な要求特性であ る。
4.ガスバリア包材・容器の開発状況
ガスバリア性フィルム包材として最も多く使用されて きたものは,ポリ塩化ビニリデン (PVDC) 系フィルム である。PVDC は,2 軸延伸ポリプロピレン (OPP) 基 材のコートフィルムとしての使用量が多い。最近の傾向 として,環境問題から PVDC 系バリアフィルムの使用 量が減少し,非 PVDC 系バリアフィルムが増加傾向に ある。代替品として,EVOH や MXD6 ナイロン系共押 出フィルムや,次に示すガスバリアコートフィルムが使 用されている。 4. 1 ガスバリア性樹脂 EVOH は,現 在 主 要 な ガ ス バ リ ア 樹 脂 で あ る。 EVOH 単体フィルムは無延伸タイプと 2 軸延伸タイプ のものがあり,ポリオレフィンや PET フィルムとラミ ネートされて使用される。共押出フィルムは,多くの メーカーから種々のタイプのものが供給されており,主 に畜産加工品やチルドビーフなどの包材として広く使用 されている。材料構成としては,PE/EVOH/PE, NY/ EVOH/PE, PET/NY/EVOH/PE など種々の構成があり, 安全性,衛生性 軽量,易開封性,ユニバーサルデザイン 便利性 ディスプレー性,透明性,表示,標準化など 商品性 生産性,保管性,輸送,材料価格 経済性 剛性,滑り性など 作業性 機械加工適性 印刷適性 ヒートシール性 廃棄物処理性,リサイクル適性,省資源など 環境対応性 各種ガス,水,水蒸気,香気,臭気,光など 引張強度,衝撃強度,突刺強度,ヒートシール強度,耐ピンホール性など 耐内容品性,耐水性,耐油性,耐熱性,耐寒性など 品質保全性 バリア性 内容品保護性 安定性 表 3 包装容器に対する要求特性 有害物質,異味,異臭の移行のないこと 微生物,虫,ほこりが入らないこと 冷凍食品包装 パウチ 防湿性 ガスバリア性 乾燥食品包装 パウチ,トレイ カップ ガスバリア性 耐熱性 レトルト食品 包装 ボトル,カップ スタンディングパウチ ガスバリア性,透明性 自立性,非吸着性 飲料・液体食品 包装 要求特性 包装形態 包装技法 表 4 主要食品包装技法と要求特性および包装形態 ガスバリア性 防湿性 低温ヒートシール性 ガス置換包装 パウチ トレイ,カップ ガスバリア性 防湿性 脱酸素剤 封入包装 パウチ,トレイ カップ,ボトル 酸素ガス吸収性 トリガー機構 酸素吸収性 容器包装 パウチ トレイ 段ボールケース ガス選択透過性 防湿性 エチレンガス吸着性 鮮度保持包装 パウチ,深絞容器 カップ,ボトル ガスバリア性 殺菌処理適性 アセプティック (無菌) 包装 パウチ トレイ 低温耐衝撃性 低温耐ピンホール性 突刺強度 パウチ ガスバリア性 防湿性 突刺強度 真空包装 パウチ トレイ深絞り成形される場合もある。 2 軸延伸ナイロンフィルム (ONY) は強度があり,液 状内容品や冷凍食品に使用されている。ガスバリア性が 必要な用途には,PVDC コート ONY が使用されてきた。 最近,代替品として,MXD6 ナイロンフィルムが使用 されるようになった。ラミネート用単体フィルムもある が,NY6 や LLDPE などとの共押出フィルムの用途が 多い。 4. 2 コーティングによるガスバリア化 コーティングによりバリア性を向上させる方法として は,高分子基材表面にバリア性樹脂をコーティングする 方法とアルミ,シリカ,アルミナ,非晶性カーボンなど の金属や無機材料をコーティングする方法とがある。 樹脂コートバリアフィルムとしては,PVDC コート フィルム,アクリル酸系樹脂コートフィルム1),PVA コートフィルムが食品フィルム包材として使用されてい る。前 2 者のガス透過度の相対湿度依存性は非常に少な いが,PVA コートフィルムは高湿度状態ではガスバリ ア性が低下する。このため,コート材を平板状無機フィ ラーと複合化した製品が開発されている2)。平板無機 フィラーを樹脂に充填すると,透過ガスの透過経路が長 くなり,ガス透過度が低くなる。また,PVA 樹脂の結 晶化度を高くすると,さらに湿度依存性が低減できる。 平板状無機フィラーを応用したナノコンポジット系 コートフィルムは,種々のタイプが製品化されてお り3-5),基材フィルムとしては,OPP, PET, ONY が使用
されている。ナノコンポシット系コーティング剤の樹脂 としては,PVA 系以外にウレタン系樹脂も適用されて いる6)。表 5 に,ナノコンポジット系コートフィルムの 種類を示す。
プラスチック材料へ金属や無機材料をコーティングす る方法としては,PVD (Physical Vapor Deposition;物 理 蒸 着) 法 と,CVD (Chemical Vapor Depisision;化 学蒸着) 法とがある。PVD 法の真空蒸着法は,主に フィルム基材へのコーティングに適用されている。 CVD 法としてはプラズマ CVD 法が適用されており, コーティングする材料をプラズマ化する手段として高周 波やマイクロ波が用いられている。CVD 法は,主に立 体容器のコーティングに適用されている。表 6 に,透明 蒸着ガスバリアフィルムの種類とコーティング方法を示 す7-10)。 4. 3 ラミネート・多層成形によるガスバリア化 フィルム包装,シート成形容器,ブローボトルのガス バリア化は,ガスバリア材との多層化によって行われて いる。多層化の方法としては,フィルムの場合,接着剤 によるラミネーション,押出ラミネーションおよび共押 出,シート成形容器の場合はシートの共押出,ブローボ トルの場合は共押出ブロー成形や共射出ブロー成形が適 用されている。 4. 4 ガスバリア性ブローボトル マヨネーズ,ケチャップ,サラダオイルなど酸化によ OPP
OPP, PET, ONY ONY OPP PET, ONY PVA 系ナノコンポジット PVA 系ナノコンポジット 有機ポリマーハイブリッド ポリウレタン系ナノコンポジット PVA 系ナノコンポジット (両面) A-OP AG, EXS
セービックス コーバリア NCX クラリスタ 東セロ(株) ユニチカ(株) (株)興人 フタムラ化学(株) (株)クラレ 商品名 コーティング材 基材 メーカー 表 5 ナノコンポジット系樹脂コートバリアフィルム ファインバリヤー (株)麗光 PET アルミナ蒸着 TL-PET PET
PET, ONY, OPP シリカ蒸着 アルミナ蒸着 GL, GX 凸版印刷(株) 商品名 コーティング方法 基 材 東セロ(株) メーカー 表 6 各種透明蒸着フィルム MOS 尾池パックマテリアル(株) PET, ONY PET, OPP シリカ CVD アルミナ蒸着 IB 大日本印刷(株) PET, ONY シリカ/アルミナ 2 元蒸着 エコシアール 東洋紡(株) PET アルミナ蒸着 BARRIALOX 東レフィルム加工(株) PET PET シリカ蒸着 アルミナ蒸着
PET, ONY, PVA シリカ蒸着
テックバリア 三菱樹脂(株)
PET シリカ蒸着
り品質が劣化しやすい液状食品の容器として用いられる ブローボトルには,EVOH をガスバリア材に使用した 多層ボトルが多用されている。主材料は,PE や PP の ポリオレフィンで,ブロー成形は多層共押出ブロー成形 によって行われている。絞り出しが容易なマヨネーズや ケチャップ用ソフトボトルの基本構成は LDPE/無水マ レ イ ン 酸 変 性 LDPE/EVOH/ 無 水 マ レ イ ン 酸 変 性 LDPE/LDPE である。サラダオイルには,LDPE の代 わりに HDPE を適用したハードボトルが用いられてい る。無水マレイン酸変性ポリオレフィンは接着樹脂であ る。 飲料用の容器としては,現在 PET ボトルが最も多く 使用されている。PET ボトルの多くは PET 単層ボトル である。しかし,PET 樹脂のガスバリア性は,ポリオ レフィンに比べるとかなり良好ではあるが,十分とはい えない。このため,酸素の影響を受けやすいビールやワ イン,ホット販売される茶類の容器としては,ガスバリ アボトルが必要である。ガスバリア PET ボトルには, 単層 PET ボトルにシリカ (SiOx) プラズマコーティン グ11-13)やカーボンコーティング14,15)したものと,EVOH, MXD6 ナイロンなどのガスバリア樹脂 (パッシブバリ ア材) や,次に述べる酸素吸収性樹脂 (アクティブバリ ア材) を用いた共射出ブロー多層ボトルとがある。
5.アクティブバリア包材の開発状況
ガスバリア樹脂やガスバリアコーティング材を適用す る方法は,包装内部に侵入して来る酸素ガスをバリアす るという受動的な包装技法 (Passive Packaging) であ る。一方,このような受動的な技法とは異なり,容器の 内部に侵入してくる酸素ガスを積極的に取り除くタイプ のアクティブパッケージング (Active Packaging) と呼 ばれている包装技法があり,食品や飲料の包装に適用さ れている。 アクティブパッケージングに適用されるアクティブバ リア材としては,還元鉄/塩化ナトリウム,亜硫酸ナト リウム,アスコルビン酸などの酸素と反応する物質を樹 脂にブレンドしたものや,MXD6 ナイロン/コバルト塩, 2 重結合系ポリマー/コバルト塩,シクロヘキセン側鎖 含有ポリマー/コバルト塩などの樹脂ブレンドが適用さ れている。 還元鉄系のものは,トレイ (無菌米飯),レトルトパ ウチ (粥など),カップ (スープ) などに適用されてい る16)。亜硫酸ナトリウムとアスコルビン酸は,飲料ボト ルのキャップライナーに使用されている。2 重結合ポリ マー/コバルト塩系,シクロヘキセン側鎖含有ポリマー/ コバルト塩系のものは,生パスタなどのトレイ容器の蓋 材に適用されている。ポリオレフィン系ボトルにもアク ティブバリア材を用いた多層ボトルが開発されており, 低カロリーマヨネーズの容器として使用されている。 PET ボトル用のアクティブバリア材としては,MXD6 ナイロン/コバルト塩系と MXD6 ナイロン/2 重結合ポ リマー/コバルト塩系のものが適用されている17,18)。ア クティブバリア PET ボトルは,海外ではビールボトル として,国内ではホット販売用飲料用に使用されている。 図 1 に,各種アクティブバリア容器を用いた製品を示す。6.プラスチック包材の環境対応状況
環境に適合した包装材料の設計の基本的な考え方とし て,使用材料・製造エネルギーの低減,再資源化が容易 であること,廃棄物の処理が容易で,有害物質を発生し ないこと,などがあげられる。このような環境対策の具 体的な方法としては,包装材料の減量化や減容化,リサ イクルしやすい素材の使用,分離容易な包材の設計,脱 塩素系樹脂材料の使用,生分解性樹脂の使用などがある。 容器包装の減量化 (リデュース) の手法としては,容 器を薄肉化することにより使用材料を少量化することが まず考えられる。この手法の例としては,プラスチック ボトルの薄肉化があげられる。飲料用 PET ボトルの軽 量化もボトルメーカー各社の努力により進んでおり,薄 上右:PP/還元鉄系多層カップ (スープ) 上中:PP/還元鉄系多層トレイ (無菌米飯) 上左:LDPE/2 重結合ポリマー系多層ボトル (マヨネーズ) 下右:PET/MXD6 ナイロン/2 重結合ポリマー系多層ボトル (ホット販売飲料) 下左:PET/MXD6 ナイロン系多層ボトル (ビール) 図 1 各種アクティブバリア容器の製品肉化に伴う強度低下を補うため,リブ形状,位置などの 検討を行い,かなり薄肉化された大型ボトルも登場して いる。具体的な例として,キリンビバレッジの「生茶」 に使用されている 2 L の PET ボトルは,以前 63 g で あったが,最近適用されるようになった「NEW ペコロ ジーボトル」は,38 g にまで軽量化が図られている19)。 また,コカ・コーラシステムの 1,020 mL の「い・ろ・ は・す」天然水に使用されている PET ボトルは 18 g で, このクラスで国内最軽量を実現している20)。 種々の包装形態中で,パウチが最も材料を効率良く生 かせる形態である。液状の内容品の容器としては,プラ スチックボトルが主流であるが,最近では,「ボトルか らパウチへ」や「詰替用パウチの適用」という事例が急 増している。容器減量化のその他の手法としては,部材 の省略があげられる。輸送包装の梱包材の部品点数を削 減する事例などが見られる。 ガスバリア性フィルム包材として最も多く使用されて きたものに,塩素系の PVDC 系フィルムがある。しか し,環境問題から,前述したように PVDC 系バリア フィルムの使用量は減少し,非 PVDC 系バリアフィル ムが増加傾向にある。
7.プラスチック包材のリサイクル状況
容器包装リサイクル法に基づいて,PET ボトルと その他プラスチック製容器包装が分別収集され,リサ イクルが進められている。PET ボトルの回収率は高く, 2008 年には,約 60 万 ton の PET 樹脂がボトルに成形 されているが,その約 78% が回収されている21)。回収 されたボトルは,再生原料としてかなりの量が輸出され る。国内での PET ボトルのリサイクリングの方法とし ては,回収された PET ボトルを破砕し,ポリオレフィ ンなどの他の物質と分離して洗浄・乾燥することを基本 とするマテリアルリサイクルの方法と,PET 樹脂を解 重合 (depolymerization) によって一度モノマーやオリ ゴマーに戻し,精製後,再びポリマーに重合する方法で あるケミカルリサイクルの方法がある。マテリアルリサ イクルされた PET 樹脂の用途は,繊維が主流で,衣料, 毛布,カーペット,つめ綿などに加工されていたが,最 近では,シートに加工される量が増加している。卵パッ クは,以前塩ビシートの成形品であったが,現在は再生 PET シートの成形品が使用されている。2008 年の実績 では,再生量約 19 万 ton の内,繊維が 45.7%,シート が 49.9%,ボトルが 2.4%,成形品・その他が 2.0% と なっている21)。 その他プラスチック製容器包装の処理の手段としては, マテリアルリサイクル,油化,高炉還元剤,コークス炉 化学原料,ガス化,エネルギー回収などの手法がある。 マテリアルリサイクルの方法は,再商品化コストが高く, プラスチックとして再商品化される比率が低い。また, 残渣の処理問題などもあり,LCA 的に考えてあまり良 い処理方法とはいえない。その他プラスチック製容器包 装の処理方法としては,エネルギー回収を中心にした方 法の方が良好と考えられる。 参 考 文 献 1 ) 大場弘行:ハイバリヤーフィルム「ベセーラ」の特性 と利用分野,ジャパンフードサイエンス,第 40 巻,第 3 号,pp. 59-65 (2001) 2 ) 吉井優博:高水分活性対応バリアフィルム「A-OP EX シリーズ」,ジャパンフードサイエンス,第 45 巻, 第 12 号,pp. 45-50 (2006) 3 ) 角野岳志:ナノコンポジットバリヤーフィルムの特徴 と応用,プラスチックスエージ,第 50 巻,第 3 号, pp. 81-87 (2004) 4 ) 尾下竜也:ナノ技術を応用した新しいガスバリアフィ ルム,日本包装学会誌,第 15 巻,第 4 号,pp. 185-190 (2006) 5 ) 幸原 淳:ハイブリッドコートフィルム「コージン・ コーバリア」,ジャパンフードサイエンス,第 44 巻, 第 7 号,pp. 59-63 (2005) 6 ) 今 泉 卓 三:ハ イ バ リ ア フ ィ ル ム「NCX」,ジ ャ パ ン フードサイエンス,第 44 巻,第 7 号,pp. 65-67 (2005) 7 ) 藤井 均:透明蒸着バリヤーフィルムの特徴と応用,プ ラ ス チ ッ ク ス エ ー ジ,第 50 巻,第 3 号,pp. 88-92 (2004) 8 ) 渡辺二郎:アルミナ蒸着バリヤー性フィルム,プラス チックスエージ,第 46 巻,第 2 号,pp. 91-94 (2000) 9 ) 高原 健:超ハイバリア透明フィルム「GX フィルム」, ジャパンフードサイエンス,第 44 巻,第 7 号,pp. 52-58 (2005) 10) 大谷寿幸,伊藤勝也,石原英昭:食品包装用フィルム における無機薄膜加工,成形加工,第 13 巻,第 10 号, pp. 665-668 (2001)11) E. Schmachtenberg, A. Hegenmart and S. Cöbel : Novel Exterior Plasma Coating System using a Stretch Blow Molding Module, SPE ANTEC 2005, pp. 2-5 (2005) 12) 小林 亮:ハイバリア PET ボトル「SiBARD」,成形加 工,第 16 巻,第 6 号,p. 385 (2004) 13) 掛村敏明:バリア性透明蒸着ボトル (GL-C) について, 包装技術,第 42 巻,第 8 号,pp. 14-17 (2004) 14) 山下祐二:PET ボトルのハイバリヤー化 ―― カーボ ンコーティング,プラスチックスエージ,第 50 巻,第 3 号,pp. 98-102 (2004) 15) 原 直史:PET ボトル用高速・高バリヤー DLC コー ティング装置,プラスチックスエージ,第 52 巻,第 3 号,pp. 90-92 (2006) 16) 石崎庸一,小暮正人,小田泰宏:酸素吸収容器 ―― オ
キシガード ――,成形加工,第 13 巻,第 10 号,pp. 669-672 (2001) 17) 菊地 淳:酸素吸収性多層 PET ボトル,成形加工,第 16 巻,第 6 号,pp. 370-374 (2004) 18) 菊地 淳:アクティブバリヤー PET ボトル,プラス チックスエージ,第 52 巻,第 3 号,pp. 85-89 (2006) 19) キリンビバレッジ:J PACK WORLD, 2010 年 6 月号, pp. 22-24 (2010) 20) コカコーラシステム:J PACK WORLD, 2010 年 6 月号, pp. 18-19 (2010) 21) PET ボトルリサイクル協議会資料 (2010)
The History and Functions of Plastic Containers and Packaging Materials
Tadahiko Katsura Packaging Science Institute
(61-4 Inoyama-cho, Sakae-ku, Yokohama 247-0026 Japan) Abstract
Plastics are now being used as the principal packaging material. They are utilized for a variety of packaging and containers, including flexible packaging, sheet-mold containers and blow bottles. Compared to glass, metal or paper, plastics are a relatively new comer to the world of packaging. Flexible packaging began with the use of cellophane film, and multi-layered film packaging is now used widely as well. Sheet-mold containers were first used as consumer packs in supermarkets. The first applications for blow bottles were as containers for edible oil and liquid seasonings but these are now used in a major way as containers for beverages. Among the many functions needed for packaging materials, the gas-barrier property is seen to be the most important function. Recently, many kinds of gas-barrier materials and gas-barrier technologies are being developed for application in plastic packaging. Since packaging materials become waste after use, the 3Rs (Reduce, Reuse, Recycle) philosophy is being taken into consideration with the design of these forms of packaging.