• 検索結果がありません。

Ⅰ 総合研究報告

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2022

シェア "Ⅰ 総合研究報告"

Copied!
12
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

Ⅰ 総合研究報告

(2)
(3)

厚 生労働 科学研 究 費 補助金 ( 第3次対 がん総 合 戦略研究 事業)

総 合 研究 報 告書  

呼 吸 移 動 を 伴 う 胸 部 病 変 に 対 す る 先 進 的 強 度 変 調 回 転 照 射 に 関 す る 研 究

 

研 究 代 表 者   橋 本   成 世   が ん 研 究 会 有 明 病 院   放 射 線 治 療 部  

研 究 要 旨

高 精 度 放 射 線 治 療 法 の 1つ で あ る 強 度 変 調 放 射 線 治 療(IMRT)は 身 体 の 様 々 な 部 位 の 治 療 に 用 い ら れ つ つ あ る 。呼 吸 に よ っ て 移 動 す る 肺 癌 や 悪 性 胸 膜 中 皮 腫 に お い て も IMRT が 使 用 さ れ て お り 、さ ら に 強 度 変 調 回 転 照 射(VMAT)を 用 い る こ と で 線 量 集 中 性 の 向 上 及 び 照 射 時 間 の 短 縮 化 等 の 利 点 が 見 出 さ れ て い る 。 し か し 、 呼 吸 移 動 を 伴 う 部 位 に VMAT を 行 う 場 合 、 治 療 時 の 呼 吸 状 態 に よ っ て 投 与 線 量 が 変 化 す る 。こ れ は 、治 療 機 の 機 器 動 作 と 呼 吸 に よ る 体 内 臓 器 の 動 き が 照 射 毎 に 異 な る こ と が 主 な 原 因 で あ る 。そ の た め 、日 々 の 治 療 毎 に 投 与 線 量 が 異 な る 可 能 性 が あ る も の の 、実 際 に 投 与 さ れ た 線 量 を 確 認 で き る 手 法 は 確 立 さ れ て い な い 。 ま た VMAT プ ラ ン に よ っ て 機 器 動 作 が 異 な る た め 、 投 与 線 量 の 変 化 も VMAT プ ラ ン に 依 存 す る と 考 え ら れ る 。 本 研 究 で は 呼 吸 移 動 を 伴 う 胸 部 病 変 に お い て 、VMAT の 最 適 な 治 療 計 画 か ら 日 々 の 投 与 線 量 の 評 価 ま で の 一 連 の 手 法 を 開 発 し 、 シ ス テ ム を 構 築 す る こ と を 目 的 と す る 。

本 研 究 は (1) 治 療 計 画 ・ 照 射 法 に 関 す る 研 究 (2)VMAT に お け る 腫 瘍 位 置 の 検 出 に 関 す る 研 究 (3)VMAT に お け る 4次 元 に 対 応 し た 線 量 再 構 成 法 に 関 す る 研 究 の 3項 目 か ら 成 り 立 つ 。本 研 究 に よ り 以 下 の 成 果 を 得 た 。(1)照 射 時 の 呼 吸 状 態 の 変 化 に よ り 腫 瘍 に 投 与 さ れ る 線 量 は 最 大 10%程 度 変 化 し た 。線 量 変 化 は リ ー フ ギ ャ ッ プ 幅 及 び 照 射 中 に 生 じ る 呼 吸 回 数 に 依 存 性 を 示 し た 。ア イ ソ セ ン タ の 処 方 線 量 に 対 し て 最 も ば ら つ き が 少 な い Volume 線 量 は PTV の D95 線 量 で あ り 処 方 線 量 の 有 力 な 候 補 と し て 考 え ら れ た 。(2)正 規 化 相 互 相 関 を 用 い る こ と に よ り 、 治 療 ビ ー ム で 取 得 し た 電 子 照 合 画 像 装 置 (EPID) 画 像 か ら 腫 瘍 位 置 を 求 め る こ と が で き た 。VMAT 照 射 で は 多 分 割 コ リ メ ー タ と 腫 瘍 が 重 な る 状 況 が 生 じ る が 、RPM(Real-time position management)system か ら 得 ら れ る 呼 吸 波 形 か ら 腫 瘍 位 置 を 予 測 す る こ と に よ っ て ±1mm 程 度 で 腫 瘍 位 置 を 求 め る こ と が で き た 。EPID画 像 の フ レ ー ム 毎 に ト ラ ッ キ ン グ に 用 い る 関 心 領 域 を 再 配 置 さ せ る こ と に よ り RPM波 形 か ら 腫 瘍 位 置 を 予 測 す る 割 合 を 減 少 さ せ ら れ る と 示 唆 さ れ た 。(3)治 療 機 器 の 動 作 記 録 で あ る ロ グ デ ー タ と 4D-CT 画 像 を 用 い 、4次 元 に 対 応 し た 線 量 再 構 成 シ ス テ ム を 構 築 し た 。(2)と

(3) の シ ス テ ム を 統 合 す る こ と で 実 際 の 腫 瘍 位 置 を 基 に し た 4 次 元 線 量 再 構 成 シ ス テ ム を 構 築 す る こ と が で き た 。フ ァ ン ト ム 実 験 の 結 果 、本 シ ス テ ム は ± 2%以 内 の 線 量 誤 差 で 腫 瘍 の 中 心 線 量 を 求 め る こ と が 可 能 で あ っ た 。2次 元 線 量 分 布 に お い て も 線 量 誤 差 3%、 位 置 誤 差 3mm を 許 容 範 囲 と し た ガ ン マ 解 析 の Pass Rate は 平 均 89.6%を 示 し た 。

(4)

研究分担者氏名・所属研究機関名及び所 属研究機関における職名

小口正彦・がん研究会有明病院放射線治 療部・部長

小塚拓洋・がん研究会有明病院放射線治 療部・副部長

中島大・がん研究会有明病院放射線治療 部・主任

伊藤康・がん研究会有明病院放射線治療 部・主任

北村望・がん研究会有明病院放射線治療 部・診療放射線技師

五月女達子・がん研究会有明病院放射線 治療部・診療放射線技師

大友結子・がん研究会有明病院放射線治 療部・診療放射線技師

上原隆三・がん研究会有明病院放射線治 療部・診療放射線技師

松林史泰・がん研究会有明病院放射線治 療部・診療放射線技師

高橋良・がん研究会有明病院放射線治療 部・診療放射線技師

A. 研究目的

社会の急速な高齢化に伴いがん患者、

特に高齢のがん患者が急増している。比 較的治療の負担が少ないことから放射線 治療を受ける患者数は飛躍的に増加して いる。特に強度変調放射線治療(IMRT)

は前立腺癌や頭頸部だけではなく呼吸性 移動を伴う肺癌や悪性胸膜中皮腫でも線 量分布の向上を認め臨床でも利用され始 めている。さらに身体360度方向から照 射が可能な強度変調回転照射(VMAT)

は、従来のIMRTよりも短時間で腫瘍に

線量を集中することが可能となり、胸部 病変においても利点が見出されている。

  VMAT は ガ ン ト リ 角 度 と 多 分 割 コ リ メータ(MLC)及び線量率を連続的に変 化させて治療を行う照射法である。肺等 のように呼吸により腫瘍が移動する部位 では呼吸抑制、息止め、呼吸同期といっ た手法を用いて腫瘍の動きに対応した治 療を行う。いずれの手法も、照射時の腫 瘍の位置を完全に一定にすることはでき ず、投与線量の誤差の原因となる。動き のある腫瘍に対して VMAT を行う場合 には、このような誤差が特に顕著になり 腫瘍に十分に放射線があたらないおそれ がある。また、治療中の腫瘍あるいは体 内臓器の動きを経時的に捉える方法は確 立されておらず、治療中に腫瘍が動いた 場合に患者体内においてどのような線量 分布が形成されているかを知る方法は確 立されていない。本研究では呼吸移動を 伴う胸部病変において、VMATの最適な 治療計画から日々の投与線量の評価まで の一連の手法を開発しシステムを構築す ることを目的とする。

本研究により従来以上に安全性が確保 された高精度放射線治療が可能となり、

治療効果の増加及び副作用発生頻度の低 下が期待できる。悪性胸膜中皮腫に対す る放射線治療では、致死的な放射線肺臓 炎が問題となるが、悪性胸膜中皮腫の解 析では症例数が限られている。呼吸性移 動を伴う肺癌に対する放射線治療の知見 は、同じ胸部の疾患である胸膜中皮腫に も有用と考えられる。そのため、本研究 では、症例数の多い肺癌を主として解析 した。

(5)

B. 研究方法

本研究は(1)治療計画・照射法に関 する研究、(2)VMATにおける腫瘍位置 の検出に関する研究、(3)VMATにおけ る4次元に対応した線量再構成法に関す る研究の大きな3つの研究項目から成り 立つ。

(1)治療計画・照射法に関する研究 最適な治療計画・照射法を決定するた め、(a)呼吸状態による投与線量の変化 及び投与線量の変化に影響を与えるパラ メータの検討、(b)VMAT治療計画にお ける処方線量及び線量制約の検討、(c)

適切なVMATプランの検討を行った。各 項目の検討方法は以下の通りである。

(a) 息 止 め 下 及 び 自 由 呼 吸 下 の VMAT照射を想定し、腫瘍の静止位置あ るいは照射中の呼吸状態を変化させて投 与線量の変化量を評価した。また、自由 呼吸下の照射に対して投与線量の変化量 と VMAT プランのパラメータの関係性 を解析した。検討には様々な呼吸状態を 模擬できる胸部動体ファントム(Model 008A; CIRS lnc., Norfolk, VA)を使用し た 。 使 用 し た 腫 瘍 フ ァ ン ト ム の 直 径 は 3cmである。

(b)がん研究会有明病院にて過去に3 次元照射(3D-CRT)で治療を行った肺 癌患者を対象とし、計画標的体積(PTV)、

肉眼的腫瘍体積(GTV)、肺、脊髄、食 道、の線量体積ヒストグラム(DVH)の 解析を行った。PTVの解析により処方線 量、肺野線量と有害事象の関係を調べる ことにより、肺における線量制約を検討 した。

(c)過去に 3D-CRT を行った症例に 対し、ガントリ回転角度を変更した複数 の VMATプランを立案し、DVH及び線 量 分 布 を 比 較 す る こ と で 適 切 な VMAT プランの検討を行った。

(2)VMAT における腫瘍位置の検出に 関する研究

  呼吸移動を伴う胸部病変において実際 に投与された線量を評価するためには、

VMAT 照 射 中 の 腫 瘍 位 置 を 把 握 す る 必 要がある。VMAT照射中に電子照合画像 装置(EPID)を用いて画像を収集する ことで、治療中の腫瘍陰影を得ることが できる。EPID 画像を連続収集し、腫瘍 陰影の移動を関心領域(ROI)でトラッ キングすることで腫瘍位置を求められる ソフトウェアを構築した。トラッキング には正規化相互相関を使用し、初期配置 し た ROI 座 標 の 周 囲 を 次 フ レ ー ム の EPID 画像において探索し、最も高い相 関値を持つ位置に ROI が移動するとい う方法である。

  VMAT は 照 射 中 に 連 続 的 に 線 量 率 が 変化するために、EPID 画像を収集した 際に特有のアーチファクトが生じる。腫 瘍位置の検出に影響が生じるため、アー チファクト低減のための専用の画像フィ ルタを作成した。また、VMAT照射は回 転照射であるため、ガントリ角度によっ ては腫瘍と椎体あるいは寝台が重なって しまう。また、MLC が連続的に動くた めに腫瘍と MLC が重なる状況も生じる。

このような状況ではトラッキング精度が 低下するため、障害陰影が入るガントリ 角度や相関値が低い場合、または MLC

(6)

が 腫 瘍 と 重 な る 状 況 に お い て は RPM

(Real-time position management) system から得られる呼吸波形を用いて 腫瘍位置を予測させるようにした。

  精度評価は、腫瘍を動かしながら撮影 した胸部動体ファントムのEPID画像を 使用し、実際の腫瘍位置と本手法で得ら れた腫瘍位置を比較することで行った。

EPID 画像は固定照射野を用いたガント リ固定の照射(固定照射)、固定照射野を 用いたガントリ回転の照射(回転照射)

及びVMAT照射を用いて収集した。また、

固定照射を用いた実患者のEPID画像及 び、VMAT照射中に得られる実患者画像 を模擬するため、動的な MLC パターン を仮想的に重ねあわせた画像に対しても 腫瘍位置の検出を行った。使用した直線 加 速 器 は CLINAC 21 EX(Varian Medical Systems, Palo Alto, CA)、EPID は aS1000(Varian Medical Systems, Palo Alto, CA)である。EPID画像の収 集フレームレートは 10fps(frame per second)を用いた。

(3)VMATにおける 4 次元に対応した 線量再構成法に関する研究

  線量再構成は VMAT 照射時の機器動 作記録であるログデータを使用し、治療 計画装置で線量分布を再計算させる方法 を用いた。本手法では、VMAT照射中に おける腫瘍の位置変化を線量計算に反映 させるために以下の処理を行った。はじ めに、回転照射であるVMATプランを固 定多門照射に分割した。次に、治療計画 用の4D-CT画像とログデータを用いて、

照射門毎に治療時の腫瘍位置と機器動作

を治療計画装置上で再現させて線量計算 を行った。最後に、照射門毎に得られた 線量分布を腫瘍の中心位置で座標を規格 化して全てを合算させた。この処理によ り、腫瘍の呼吸移動を考慮した線量分布 を再現することが可能となる。固定多門 照射のプランは、本研究で開発した専用 の ソ フ ト ウ ェ ア を 用 い て DICOM-RT Plan として作成できるようにした。

胸部動体ファントムを用い腫瘍の動き を変化させた複数の VMAT プランに対 して線量再構成を行い精度評価した。頭 尾方向のみの2次元の動き及び頭尾方向 に加え腹背方向、左右方向にも動かした 3 次元的な動きで腫瘍を動作させた。評 価は腫瘍の中心線量と腫瘍の中心を通る 2次元断面の線量分布を用いて行った。

(4)線量再構成法と腫瘍位置検出法の

システム統合

腫瘍位置検出に用いるEPID画像ファ イルにはヘッダー情報として VMAT 照 射時のガントリ角度の情報が記録されて いる。このガントリ角度情報と EPID画 像から得られる腫瘍位置情報、さらに実 際の照射時の呼吸波形及びログデータの 4 種類の情報を複合し線量再構成に必要 となるDICOM-RT Planファイルを作成 す る 一 連 の シ ス テ ム を 構 築 し た 。(3)

VMATにおける4次元に対応した線量再 構成法に関する研究と同一の VMAT プ ランを用いて線量再構成精度の評価を行 った。

(倫理面への配慮)

(7)

4D-CTの撮影及び治療中のEPID画像 の撮影に関してはがん研究会有明病院の IRBで承認を受けたプロトコールに従っ て患者への説明と同意を得て行われてい る。本研究においては実験動物に対する 動物愛護上の配慮等への対応に対する問 題は発生しない。また、本研究の実施に おいて既存の医療用直線加速装置を利用 するが、薬事法に触れる機器改造は伴わ ない。本研究の実施において、がん研究 会有明病院で放射線治療を受けた患者の CTやMRI、PETなどの画像を用いるこ とがあるが、そのデータについては個人 情報をすべて削除する措置を講じる。

C. 研究結果

(1)治療計画・照射法に関する研究   (a) 自 由 呼 吸 下 の 検 討 に お い て 、 VMAT 照 射 時 の 呼 吸 状 態 を 変 化 さ せ る ことによって同一プランを用いた場合で

も最大10%程度の線量変動が生じた。呼

吸停止下の照射においても、腫瘍位置の 変 異 に よ っ て 10%程 度 の 投 与 線 量 の 変 動が生じた。自由呼吸下における呼吸状 態による投与線量の変化は、VMATプラ ン の 平 均 リ ー フ ギ ャ ッ プ 幅 及 び VMAT 照射中に生じる呼吸回数に相関が認めら れた。平均リーフギャップ幅が広いほど、

呼吸回数が多くなるほど線量の変化量は 小さくなる傾向を示した。また、両パラ メータを変数にとることで、投与線量の 変化量を予測できる近似式を導出するこ とが可能であった。

(b)処方方法の検討においては、ア

イソセンタ線量と PTV の最大線量、平

均線量、D98、D95、D50、D2、GTV の 最大線量、最小線量、平均線量、D98、

D50、D2の比較を行った。PTV の D50 の標準偏差が 2.3%であり、最もばらつき が小さかった。また、アイソセンタにお ける線量処方と比較して線量の平均値も 2〜3%程度高い程度であった。Gr2 以上 の肺臓炎と肺線量を基に同時化学放射線 療法群、順次化学放射線療法群を合わせ て CART 法を用いて解析を行ったとこ ろ、Gr2 以上の放射線肺臓炎の Cut Off 値 は V5=47.8% 、 V10=40.2% 、 V20=34.9%、V30=27.4%、V40=25.1%、

V50=19.9%、MLD = 20Gyであった。

(c) ガ ン ト リ 回 転 角 度 を 変 更 し た VMAT プランを比較したところ、360°

回転の VMAT プランよりもガントリ回 転 角 度 に 制 限 を 与 え た 部 分 回 転 の VMAT プ ラ ン の 方 が 正 常 肺 に 与 え る 低 線量をおさえることが可能であった。し かしながら PTVに対する conformityが 低下してしまうため、homogeneity及び conformity を 保 ち つ つ 正 常 肺 の 線 量 を 低下させることができる治療計画を更に 検討していく必要がある。

 

(2)VMAT における腫瘍位置の検出に 関する研究

  固 定 照 射 及 び 回 転 照 射 に お い て は ± 1mm 以内で腫瘍位置を検出することが 可能であった。VMAT照射においても±

1mm 程度の誤差で腫瘍位置を求めるこ とができた。また、実患者画像において も固定照射の場合には同程度の精度で腫 瘍 位 置 を 求 め る こ と が で き た 。 動 的 な MLC パターンを仮想的に重ねあわせた

(8)

画像に対しては±5mm 程度の差が認め られた。

 

(3)VMATにおける 4 次元に対応した 線量再構成法に関する研究

  腫瘍の中心線量においては腫瘍の頭尾 方向のみの動き及び頭尾方向に合わせて 左右方向、腹背方向にも動かした腫瘍の 動 き に 対 し て も ±2%以 内 で 実 測 と 一 致 する結果が得られた。2 次元断面の線量 分布では線量誤差 3%、位置誤差 3 mm を許容範囲としたガンマ解析において、

腫瘍を頭尾方向のみに移動させたプラン では90%以上のPass Rate、頭尾方向及 び左右方向に移動させたプランにおいて も88%以上のPass Rateを示した。検討 した全プランの平均Pass Rateは92.9%

であった。

(4)線量再構成法と腫瘍位置検出法の システム統合

  EPID 画像から検出した腫瘍位置を用 いて線量再構成したところ、腫瘍の中心 線量の測定では腫瘍の頭尾方向のみの動 き及び頭尾方向に合わせて左右方向、腹 背方向にも動かした腫瘍の動きに対して も ±2%以 内 で 実 測 と 一 致 す る 結 果 が 得 られた。また、線量誤差3%、位置誤差3 mmを許容範囲としたガンマ解析におけ るPass Rateは平均89.6%であり、実測 と一致する線量再構成が行えていた。

D. 考察

(1)治療計画・照射法に関する研究 平成 24 年度において呼吸状態の変化

による投与線量の変化量を評価し、平成 25 年度において変化量に関連するパラ メータの検討をした。その結果、自由呼 吸下の照射においては、同一 VMATプラ ンにおいても呼吸状態に応じて最大 8%

程度生じる線量変化が 3%程度にまで減 少する。また、同一の呼吸回数において も、VMATプランによっては線量変化が

8%から 4%にまで変化することが分かっ

た。これらの変化はリーフギャップ幅及 び VMAT 照射中に生じる呼吸回数が強 く影響しており、これらのパラメータを 変数にとることで投与線量の変化量が求 まる予測式を導くことが可能であると分 かった。一般的に VMATプランの平均リ ーフギャップ幅が広い場合には、回転原 体照射に近くなるために平均リーフギャ ップ幅が狭い場合と比較して線量分布が 不利になることが多い。患者の呼吸回数 は個人によって変化するため、予測式を 利用することで許容される投与線量の変 化量を担保しつつ、かつ可能な限り有利 な線量分布の作成が可能になると考える。

現在用いられている治療計画装置では最 適化計算時に呼吸回数やリーフギャップ 幅の変数は取り入れられていないため、

リーフギャップ幅を操作するには煩雑な 作業が必要である。これらの変数を考慮 した最適化計算が行える治療計画装置の 開発を行うことで、本研究の結果を実臨 床へ応用することができると考える。本 研究で導いた予測式は腫瘍の大きさや照 射野の大きさ等が限られた条件によるも のである。研究期間内において、このよ うな全てのパラメータを評価するまでに 至っていないが、検討を進めることでよ

(9)

り一般化した予測式を導き出すことも可 能だと考える。また、呼吸停止下におけ る VMAT 照射においても同様な検討を することで予測式を導きだせる可能性も ある。

VMAT や IMRT などの治療計画では 従来通りのアイソセンタ線量による処方 では無く Volume線量が用いられる。ま た最適化計算においては肺等のリスク臓 器の線量制約が重要である。過去症例の 検 討 か ら 、 ア イ ソ セ ン タ 処 方 に 対 し て PTV の D50 の安定性が良く、IMRT や VMAT の 処 方 線 量 の 有 力 な 候 補 と し て 考えられた。また Gr 2 以上の放射線肺 臓炎のカットオフ値を導いた。VMATプ ランの検討では使用するガントリ回転角 度を変更することで、肺等の正常組織に あ た る 線 量 を 抑 え る こ と が で き る が 、 conformity の 低 下 が 生 じ る こ と が 分 か った。研究期間内において最適な治療計 画法を導くには至っていないが、本研究 で求めたカットオフ値を基にしてガント リ回転角度の設定等を今後検討していく ことで、適切なVMAT治療計画を導ける 可能性があると考える。

(2)VMAT における腫瘍位置の検出に 関する研究

  平成 24 年度では EPID 画像に描出さ れた腫瘍陰影をトラッキングできるシス テ ム を 構 築 し 、 平 成 25 年 度 に お い て VMAT 照 射 に 適 応 で き る シ ス テ ム へ の 拡張を行った。その結果、VMAT照射に おいても±1mm 程度の精度で腫瘍位置 を求めることができた。本手法のような 治療ビームを用いて腫瘍位置を検出する

以外にも On-board imager を用いて腫 瘍位置を求める方法もある。この方法で は MLC 等の障害陰影が写り込まないの で腫瘍の位置を正確に求めやすい利点が ある。しかしながら、本手法は余分な被 曝を伴わずに腫瘍位置を求めることがで きるという特徴がある。問題点としては、

MLC が腫瘍に重なるような状況におい て RPM 波形から間接的に腫瘍位置を予 測させているので、実際の腫瘍位置と差 が生じている可能性も否定できない点で ある。動的な MLC 照射野を用いた実患 者画像において 5mm 程度の差が生じた 原因にもこれが影響していると考えられ る。

平成 25 年度において上記の問題を解 決する方法の検討も行った。EPID 画像 のフレーム毎に ROI を再配置させるこ とで、MLCとROI の重なりを可能な限 り減少させるという手法である。単純な 照射野を用いた場合には 1mm 程度の精 度で腫瘍位置が検出できるところまでシ ステムの開発が進んだが、VMAT照射の 検討までは行うことができなかった。こ の手法が実現できれば、今以上の精度で VMAT 照 射 中 の 腫 瘍 位 置 を 求 め る こ と ができると考える。

(3)VMAT における 4 次元に対応した 線量再構成法に関する研究

  平成 24 年度において線量再構成シス テムの構築を行い、平成 25 年度におい て評価用ファントムを作成して線量再構 成の精度評価を行った。腫瘍の2次元的 な腫瘍の動きに加え 3次元的な動きにお いても腫瘍の中心線量は±2%以内、2次

(10)

元線量分布のガンマ解析(3mm / 3%)

においても平均92.9%のPass Rateを示 し、実測と一致した結果を得ることがで きていることが分かった。

実患者に対して線量再構成を行う場合、

腫 瘍 や 肺 の 動 き が 直 線 的 で あ れ ば 4D-CT 画 像から 腫瘍 位置を 求め て線量 分布の合算を行うことで、同様の精度で 投与線量の評価を行えると考えられる。

しかしながら、実際には腫瘍や臓器は呼 吸と共に変形を伴いながら動くことが予 想される。近年、変形を伴う線量分布の 合算には deformable registration が多 く用いられている。平成 25 年度におい て deformable registration を用いて線 量分布の合算を行ったところ 3%前後の 線量差が生じると分かった。実患者に対 し て 線 量 再 構 成 を 行 い deformable registration で線量合算を行った場合、

この程度の線量誤差が含まれる可能性が あると考えられる。いずれにしても線量 分布を合算した場合、完全に動きが予測 できていないと合算に伴う誤差が生じる。

精度の高い線量評価を行うには、合算前 の位相毎に計算された線量分布を使用す る、あるいは臓器の変形モデルを取り入 れ る 等 し た 精 度 の 良 い deformable registration アルゴリズムの開発が重要 となると考える。

(4)線量再構成法と腫瘍位置検出法の システム統合

  2年間の研究期間で構築した(2)の腫 瘍位置検出法及び、(3)の4次元線量再 構成法のシステムを統合した。これによ り、VMAT照射時に EPID画像を取得す

ることで、実際の腫瘍位置を基にした線 量再構成を行うことが可能となった。精 度評価の結果(3)の VMATにおける 4 次元に対応した線量再構成法に関する研 究の結果と比較し、ガンマ解析(3mm / 3%) の Pass Rate は 平 均 92.9%か ら 89.6%にわずかではあるが低下する傾向 を示した。腫瘍位置以外は(3)の線量 再構成と同一の手法を用いていることか ら、低下の原因は腫瘍位置の検出精度が 影響していると考えられる。腫瘍位置検 出精度を向上することで今以上に再構成 精度を高めることができると考える。

E. 結論

  呼吸状態による投与線量の変化に関連 するパラメータを求めることができた。

これにより事前に線量変化量を見積もる ことが可能だと分かった。4 次元に対応 した線量再構成法の一連のシステムを構 築し、ファントム実験において実測と一 致する結果が得られていると確認できた。

  本研究により、安全な高精度放射線治 療の提供、実投与線量を基とした治療効 果判定、放射線治療の技術水準の向上と いった成果が期待できる。また、日々の 患者投与線量を把握することにより、万 が一投与線量に誤差が生じた場合におい ても、誤差の追及ができプランを修正す ることも可能になると考えられる。さら に、実際に投与された線量情報を利用し た 適 応 放 射 線 治 療 ( adaptive radiotherapy)といった照射法について も、研究を発展させていくことが可能と なると考える。

(11)

F. 健康危険情報 特になし

G. 研究発表 1. 論文発表

1) Hashimoto M, Uematsu M, Ito M, Hama Y, Inomata T, Fujii M, Nishio T, Nakamura N, Nakagawa K.

“Investigation of the feasibility of a simple method for verifying the motion of a binary multileaf collimator synchronized with the rotation of the gantry for helical tomotherapy,” J. Appl. Clin. Med.

Phys. 13(1), 27-43, (2012).

2) Matsunuma R, Oguchi M, Fujikane T, Matsuura M, Sakai T, Kimura K, Morizono H, Iijima K, Izumori A, Miyagi Y, Nishimura S, Makita M, Gomi N, Horii R, Akiyama F, Iwase T. “Influence of lymphatic invasion on locoregional recurrence following mastectomy: indication for postmastectomy radiotherapy for breast cancer patients with one to three positive nodes,” Int. J.

Radiat. Oncol. Biol. Phys. 83(3), 845-852, (2012).

3) Tachibana H, Takahashi R.

“Quantitative analysis of geometric information from an end-to-end examination of IMRT and VMAT using the optimal selection method,”

Med. Phys. 40(6), 061709, (2013).

2. 学会発表

1) Hashimoto M, Haga A, Takahashi R, Nakajima M, Hashimoto T, Saotome S, Sato T, Nakagawa K, Kozuka T, Oguchi M. “Verification of MLC position using electric portal imaging device during VMAT delivery,” Int. J. Radiat. Oncol. Biol.

Phys. 84(3) Supplement, S768-S769, (2012). (Presented at the 54th Annual Meeting of the American Society for Radiation Oncology, Boston, MA, USA, Oct 28-31, 2012)

2) Kitamura N, Murofushi K, Hashimoto M, Nakajima M, Matsubayashi F, Saotome S, Takahashi R, Eba J, Sato T, Oguchi M. “The threshold CT value difference in the deformed volume with good conformality,” Int. J.

Radiat. Oncol. Biol. Phys. 84(3) Supplement, S786, (2012).

(Presented at the 54th Annual Meeting of the American Society for Radiation Oncology, Boston, MA, USA, Oct 28-31, 2012)

3) 中島大, 橋本成世, 北村望, 伊藤康, 伊 藤 裕 志, 五 月 女 達 子, 佐 藤 智 春, 小塚拓洋, 小口正彦. “Log fileを使 用 し た 強 度 変 調 回 転 照 射 時 の ビ ー ム デ リ バ リ ー 確 認 法,” 医 学 物 理 32 Sup.3, 277-278, (2012). 第104 回 日 本 医 学 物 理 学 会 学 術 大 会, つ く ば市, 平成24年9月14-15日.

4) 橋 本 成 世, 伊 藤 康, 中 島 大, 北 村 望,

(12)

五月女達子, 大友結子, 上原隆三, 小 塚拓洋, 小口正彦. “VMAT における 腫瘍の呼吸性移動を考慮した線量再 構 成,” 医 学 物 理 33 Sup.1, 99, (2013). 第 105 回日本医学物理学会 学術大会, 横浜市, 平成 25 年 4 月 11-14日.

5) 五月女達子, 橋本成世, 北村望, 木 田智士, 伊藤康, 中島大, 大友結子, 上原隆三, 小塚拓洋, 小口正彦. “胸 部病変に対する EPID 画像を用い た腫瘍 位置 情報の 確認,” 医学物 理 33 Sup.1, 96, (2013). 第105回日本 医 学 物 理 学 会 学 術 大 会, 横 浜 市, 平 成25年 4月11-14日.

6) 橋 本 成 世, 伊 藤 康, 中 島 大, 北 村 望, 五月女達子, 大友結子, 上原隆三, 高 橋良, 松林史泰, 小塚拓洋, 小口正彦.

“VMAT に お け る 腫 瘍 の 呼 吸 性 移 動 を 考 慮 し た 線 量 再 構 成,” 医 学 物 理 33 Sup.3, 136, (2013). 第106回日本 医 学 物 理 学 会 学 術 大 会, 吹 田 市, 平 成25年 9月17-18日.

7) Ito Y, Hashimoto M, Saotome S, Nakajima M, Otomo Y, Kitamura N, Uehara R, Kozuka T, Oguchi M.

“Dose reconstruction in considering of respiratory motion of the target using 4D-CT in VMAT,” Int. J.

Radiat. Oncol. Biol. Phys. 87(2) Supplement, S721, (2013).

(Presented at the 55th Annual Meeting of the American Society for Radiation Oncology, Atlanta, GA, USA, Sep 22-25, 2013)

8) 北 村 望, 橋 本 成 世, 伊 藤 康, 中 島 大,

五 月 女 達 子, 小 口 正 彦, 佐 藤 智 春.

“呼 吸 移 動 を 考 慮 し た 線 量 再 構 成 に おける 4DCT の位相分割数が計算制 度に与える影響,” 第 41 回日本放射 線 技 術 学 会 秋 季 学 術 大 会, 福 岡 市, 平成25年10月17-19日.

9) 上原隆三, 橋本成世, 伊藤康, 中島大, 五月女達子, 北村望, 大友結子, 佐藤 智 春, 小 塚 拓 洋, 小 口 正 彦. “胸 部 病 変に対するVMATの治療計画パラメ ータが線量変化に及ぼす影響,” 日本 放射線腫瘍学会学術大会法文集, 161, (2013). 第26 回日本放射線腫瘍学会 学術大会, 青森市, 平成 25 年 10 月 18-20日.

10) 伊藤康, 橋本成世, 中島大, 五月女達 子, 大友結子, 北村望, 上原隆三, 佐 藤 智 春, 小 塚 拓 洋, 小 口 正 彦. “呼 吸 性移動を伴う胸部病変へのVMATに 関する研究,” 日本放射線腫瘍学会学 術大会法文集, 266, (2013). 第26回 日 本 放 射 線 腫 瘍 学 会 学 術 大 会, 青 森 市, 平成25年10月18-20日.

H. 知的財産権の出願・登録状況 1. 特許取得 

2. 実用新案登録なし  3. その他 なし

なし

参照

関連したドキュメント

少子化と独立行政法人化という二つのうね りが,今,大学に大きな変革を迫ってきてい

 介護問題研究は、介護者の負担軽減を目的とし、負担 に影響する要因やストレスを追究するが、普遍的結論を

歌雄は、 等曲を国民に普及させるため、 1908年にヴァイオリン合奏用の 箪曲五線譜を刊行し、 自らが役員を務める「当道音楽会」において、

Research Institute for Mathematical Sciences, Kyoto University...

  

市民的その他のあらゆる分野において、他の 者との平等を基礎として全ての人権及び基本

○特定緊急輸送道路については、普及啓発活動を継続的に行うとともに補助事業を活用するこ とにより、令和 7 年度末までに耐震化率

線量は線量限度に対し大きく余裕のある状況である。更に、眼の水晶体の等価線量限度について ICRP の声明 45 を自主的に取り入れ、 2018 年 4 月からの自主管理として