本号に掲載する8つの論文は,2004 年2月 24 日から 25 日まで早稲田大学国際会議場で韓国の7 名の国際私法,知的財産法の研究者を招待し,「WTO発効以降の知的財産法の展開」「知的財産紛 争の国際私法的問題」「日韓自由貿易協定と知的財産」の3つの部会に分けて開催された公開共同 研究会と 2004 年9月4日から5日まで韓国ソウル特別市にある漢陽大学法科大学校会議室で開催 された第2回日韓公開共同研究会の報告原稿から選択したものである。原稿はこのほかにも多く 既に手元にあるが,集まった原稿の全てを一度で掲載するのは困難であるから,今回はさしあた り,第1回分として掲載することにした。第2回目には,残りの原稿のほか,2004 年 11 月 27 日に 予定しているドイツのミュンヘンにあるマックス・プランク無体財産法研究所のAnnette Kur教 授を招待して第3回目の公開共同研究会を開催する予定であるので,それらの原稿を掲載したい と考えている。
これらの共同研究会は,東北アジアの視点から,まずさしあたり比較法的な研究を通じて 日本と韓国の間における知的財産法の現状の認識を共有し,ついで知的財産法の調整と調和 の可能性を探るとともに,知的財産紛争に関する国際裁判管轄権,準拠法,判決の承認執行,
ADRについての規則の統一を研究し,その成果を世界に発信しようとするものである。知的 財産権は,各国の産業政策や文化政策などと深いかかわりを持つだけに,実質法的統一が困 難な部分が少なからず存在するだけではなく,この方法だけで知的財産権のエンフォースメ ントを高めるには限界があることは否定できない。そこで,各国の実質法的相違を残しなが らも知的財産権のエンフォースメントを高めるために,上記のような国際私法的,国際民事 訴訟法的研究が不可欠になる。世界的なレベルにおいて国際裁判管轄権や判決の承認執行に 関する規則の提言としては,1999 年 10 月のハーグ国際私法会議特別委員会の草案があり,そ の後アメリカ法律協会(The American Law Institute,ALI)やマックス・プランク知的財産 法研究所(The Max-Planck Institute for Foreign and International Patent, Copyright and
Competition Law, MPI)がそれぞれ準拠法を含めた原則ないし規則の提案を行っている。本
研究は,これらを素材として,東北アジアの視点から望ましい統一規則のありようを検討す るために,既に学術的交流のある日本と韓国の国際私法学者を中心に知的財産法の実務家や 研究者を加えて始めたものであり,同時に,現在水面下で行われている日韓自由貿易協定に おける知的財産条項のあり方などをも対象とする総合的なものである。
なお,これらの公開共同研究会については,早稲田大学 21 世紀COE《企業法制と法創造》総合 研究所の主催によるほか,サントリー文化財団や早稲田大学特定課題からも「東北アジアからみ た知的財産に関する国際私法の統一についての研究」に関して研究を助成し,研究会を後援して
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* 早稲田大学法学学術院教授,比較法研究所所長
日韓比較・国際知的財産法研究 ¸
特 集 3
木棚照一
*いただいた。本特集は,そのような助成・援助の成果でもある。また,韓国側原稿の日本語の見 直しについては,最終的には木棚があたったが今村哲也COE助手,中山真里知的財産研究所特別 研究員をはじめ,COE関係者の協力を得た。記して謝意を表したい。
今回掲載することにしたのは,次の各論文である。
¸ 丁 相 朝 「TRIPsによる韓国知的財産権法の改正と今後の展開方向」
¹ 木棚照一 「日本における知的財産法の展開―WTO成立後を中心に―」
º 石 光 現 「韓国における知的財産紛争の国際裁判管轄」
» 木棚照一 「日本における知的財産紛争の国際裁判管轄権―最近の判例における展開を 中心に―」
¼ 石 光 現 「1999 年 10 月ハーグ国際私法会議特別委員会の草案における知的財産紛争の取 扱の問題点」
½ 崔 公 雄 「2002 年アメリカ法律協会のIPプロジェクト草案の特徴と問題点」
¾ 渡辺惺之 「Max Plank研究所の管轄ルール提案について」
¿ 今村哲也 「日韓自由貿易協定と知的財産法」
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