協定保険価額の拘束力
その他のタイトル Sull'impugnabilita della polizza stimata
著者 栗田 和彦
雑誌名 關西大學法學論集
巻 50
号 1
ページ 1‑49
発行年 2000‑04‑15
URL http://hdl.handle.net/10112/00023614
協 定 保 険 価 額 の 拘 束 力
は し が き
一イタリア学説・判例にそって
1
一八八二年商法︵第四三五条︶施行当時2
一九四二年体制への移行期間3
民法第一九0八条4
航行法五一五条5破棄院一九九八年九月二日判決八七一四番
二損害保険契約法改正試案にいう評価済保険
1評価済保険に関する規定設置の意義
2規定の位置
3
合意の不要式性4
本文の適用範囲︵﹁契約締結の時に﹂を挿入したことの意味︶5
但書きの適用範囲6
半面的強行規定の意義むすびにかえて
協定保険価額の拘束力
栗
田
和
彦
しかし︑評価済保険が一般化してくると 第五0
巻 第 一 号
評価済保険も︑︵損害︶保険にみられる他の多くの制度と同様︑その起源を海上保険に求めることができるのであ
ろう︒評価済保険が活躍の場をもっぱら海上保険にかぎり︑陸上保険︑とりわけ家計保険に浸透してこないあいだは︑
( 1 )
その有効性を認めるについて︑﹁実際上の理由から便宜的に認められた変則的制度﹂といっておけば足りたであろう︒
︵たとえば︑住宅総合保険は評価済保険になっている︶︑評価済保険にお
ける協定保険価額の拘束力をいかなる程度で認めるべきか︑という問題が身近なものになってくる︒
周知のように︑評価済保険における協定保険価額の拘束力をいかなる程度で認めるかについて︑立法は︑大きく二
つに分かれている︒すなわち︑ひとつは︑ドイツ保険契約法第五七条第一項およびわが国の現行商法第六三九条のよ
うに︑協定保険価額が実価を著しく超える場合︑保険者は︑その協定の効力を否認︵填補額の減少を請求︶すること
ができる︑とするタイプのものである︒他方は︑イギリス海上保険法第二七条のように︑原則として︑協定保険価額
に絶対的拘束力を認めたうえで︑詐欺的な場合に︑保険者が知っていれば引き受けなかったであろう程度に過当に実
価を超えているときにのみ︑保険者は︑告知義務違反として契約を無効にしうる︑とするタイプのものである︒
損害保険法制研究会﹁損害保険契約法改正試案・傷害保険契約法︵新設︶試案理由書一九九五年確定版﹂︵以下︑
(2 )
改正試案︶の第六三九条は︑現行商法第六三九条に実質的変更を加えていない︑という︒
この選択は︑損害保険法制研究会の長期間にわたる慎重な検討の結果であり︑また︑評価済保険に関するわが国の
伝統を維持したものである︒さらには︑協定保険価額の拘束力をいかなる程度で認めるか︑という問題は︑おそらく
関法
ま し
9̲ 9,
が
き
判例につき一瞥を加えておきたい︒ 一八八二年商法︵第四三五条︶施行当時
イ タ リ ア 学 説
・ 判 例 に そ っ て
︵一︶︑改正試案第六三九条について︑いくつかの
( 3 )
は︑損害保険契約の大原則のひとつである﹁損害填補の原則﹂にかかわってくるもの︑と思われる︒
そうした重要な問題について︑本稿のような小稿において︑軽々に意見をのべることは︑慎むべきであろう︒しか
し︑評価済保険が家計保険にも浸透してきたいま︑われわれは︑うえの重要な問題について︑過去以上に︑問題意識
を有していなければならない︒本稿は︑その民法︵第一九0八条︶と航行法︵第五一五条︶において別個に評価済保
険に関する規定を有するイタリアの学説・判例を概観したうえで
解釈上の問題点の指摘を試みよう︵二︶︑とするものである︒
(1
)
今村
有﹁
海上
保険
契約
論上
巻﹂
昭和
一六
年四
00
頁 ︒
(2
)
損害
保険
法制
研究
会﹁
損害
保険
契約
法改
正試
案・
傷害
保険
契約
法︵
新設
︶試
案理
由書
一九
九五
年確
定版
﹂平
成七
年︵
以下
︑
改正
試案
理由
書︶
一八
頁︒
(3
)
学説
は︑
評価
済保
険の
有効
性を
認め
る点
で一
致し
てい
るが
︑そ
の説
明・
根拠
の捉
え方
は︑
大き
く異
なっ
てい
る︒
もし
︑そ
れを
実際
上の
理由
から
便宜
的に
認め
られ
た変
則的
制度
︑と
説明
する
にし
ても
︑や
はり
︑﹁
損害
填補
の原
則﹂
との
かか
わり
か
ら無
縁で
はあ
りえ
ない
︑と
思わ
れる
︒
評価済保険は︑イタリアにおいては︑
p ol i z za
st
im
at
a または
p ol i z za t as s a ta
と長らく呼び習わされ︑今日に至って
( 1 )
いる︒現行法︵民法および航行法︶の規定に関する議論・判例を概観するまえに︑
協定
保険
価額
の拘
束力
一八八二年商法施行当時の議論・
承認された評価がない場合︑付保された物の価額は︑法律によって認められたすべての証明手段によって︑算
定さ
れう
る︒
を申し立てることができない︒ 第四三五条を設けている︒つぎのような規定である︒
第五
0巻 第 一 号
一八八二年商法施行当時の定評のある
Ra
me
ll
a0の保険法の教科書によると︑イタリアにおいて︑すでに二世紀
の始めには︑評価済保険は︑海上保険の分野のみならず︑陸上保険の分野においても︑締結されていたようである︒
評価済保険が陸上保険の分野に導入される要因として︑当時すでに︑鉄道運送において︑運送人が負担すべき損害賠
償額の算定につき︑実損害額によるのではなく︑法定の算定方法による旨の運送法の規定が多くの国において確立し
ていたことが指摘されている︒たしかに︑評価済保険は︑保険期間が短い陸上運送などにおいては︑導入に障害は少
なく︑かえって合理的である︒しかし︑当時すでに︑あらゆる種類の陸上保険について︑評価済保険が普及していた
わけではない︒火災保険においては︑むしろ︑評価済保険が締結されることは稀であったようである︒保険期間の長
( 2 )
さが阻害要因であったのであろう︒
一八八二年商法は︑まず︑第一編第一四章の陸上保険に関する章のなかに︑評価済保険に関する一般規定として︑
﹁保険者によってなされるぺき損害の填補は︑付保された物が保険事故の時に有していた価額にしたがい︑決
定さ
れる
︒
( 3 )
保険者によって承認された評価が保険︵契約締結・筆者注︶の時になされている場合︑保険者は︑詐欺︑偽装
または偽造を理由としてしか︑刑法上の訴えを含めてその他のあらゆる訴えを害することなく︑その評価に不服
関法
四四
(a) 一八八二年商法は︑この規定のほか︑第二編︵海商︶第六章の航行の危険に対する保険に関する章のなかに︑評価 ー第四項省略~」
済保険に関する特則として︑第六︱二条を設けている︒第四三五条と第六︱二条は︑
( 4 )
保険法第二0条に範を求めたもの︑といわれているので︑並行的に検討するべきかもしれないが︑第六︱二条につい
ては
︑
のちに
(1
の伺︶みることにして︑とりあえず︑第四三五条の規定︑とりわけ︑協定保険価額の拘束力に関す
(1
)
評価済保険を締結するために挿入される約款を
c l a u s o l a v a l g a o n o
(
また
は
c l . v a l o r e c o n c o r d a t o )
と称
する
よう
であ
る
( A n t o n i o r B
E
1 e t t i , D i r i t t o m a r i t t i m o p r i v a t o t a i l i a n o , v o l .
3 , 2,T o r i n o ,
1 93 8,p p
665 , 666;
.
A n t o n i o L a T o r r e , F u n z i o n e e
旦
l i
d i t i e f f i c a c i a d e l l a p o l
i z z a t i s m a t a , S c r i t t d i i d i r i t t o a s s i c u r a t i v o , M i l a n o ,
1
97 9,
p .
3.
,
J~U~
細四シ
dE
王ナソZ3ギ臼•N i c o l a G a s , p e r o n i , L a r e g o l a p r o p o r z i o n a l e e l ' a s s i c u r a z i o n e d e ! c o n t r i b u t o d i a v a r i a c o m u n
e , s s A i c u r a z i o n i p r i v a t e , P a d o v a
̀
19 72 ,
p .
64
8)︒
(2
)
A g o s c i n o R a m e l l a , T r a t t a t d e o l l e a s s i c u r a z i o n
̀
M i
i l a n
o
192 1,
p .
21 6.
(3
)
筆者
は︑
条文
の試
訳を
行う
場合
︑可
能な
かぎ
り直
訳を
心が
けて
いる
︒こ
の部
分は
︑お
そら
く︑
筆者
が補
注し
たよ
うな
意味
︑
と思われる(同旨•
R a m e l l a , o p . i t . c , p .
217;
C e s a r e V i v a n t e T r , a t t a t o d i d i r i t t o c o m m e r c i a l e ,
5
e d
. , v o l .
4,M
i l a n o ,
1 92 9,p .
45 1)
が︑別の意味にも解しうる
( S e a l l ' a s s i c u r a z i o n e h a p r o c e d u t
0
日
1 a s t i m a a c c e t t a t a d a l l ' a s s i c u r a t o r e ,
⁝⁝)
︒な
お︑
条
文の
s t i m a
には︑
一般
的な
﹁評
価﹂
をあ
てて
おく
が︑
その
他の
場所
では
︑﹁
保険
価額
の協
定﹂
をあ
てる
こと
もあ
る︒
(4
)
R a m e l l a , o p . c i t . , p .
218
n o t a
4
.
拘束力肯定説
協定保険価額の拘束力 第四三五条第二項の規定は︑ る議論・判例を概観することにしよう︒
五
五
一見して︑協定保険価額の拘束力を認める趣旨のようである︒
のちにみるように︑保険価額の協定に拘束力を認めず︑保険者に実価額の立証責任を転換するものにすぎない︑とす 一八七四年六月︱一日ベルギー
条に関する立場は︑つぎのようである︒ 第五0
巻 第 一 号
る反対説︵拘束力否定説︶が有力な支持者をえているが︑協定保険価額の拘束力を認める立場︵拘束力肯定説︶が学
説の主流を形成しているようである︒ここでは︑拘束力肯定説の代表的提唱者である
Ra
me
ll
a の意見を紹介してお
( 1 )
くこ
とに
しよ
う︒
填補額に対する評価済保険の効果ないし影響に関する
Ra
me
ll
a
の分析は︑評価済保険がしばしば合意される運送
保険を意識したものになっている︒その分析の冒頭部分を引用してみよう︒
﹁評価済保険がある場合︑運送品の滅失に対する填補は︑その実価によってではなく︑その額の算定は傭船者︑
荷送人および証券所持人のあいだでは終局的である︑合意された額によって決定されることになる︒当事者のい
かなる者にも︑評価が滅失した商品の実価に一致していないことの証明により︑評価に不服を申し立てる権限は︑
認められていない︒⁝⁝その不変性の理由は︑運送品の場所の変化に伴いあらかじめ想定された価額を超える価
( 2 )
額の増大は︑多くの場合︑起こりそうにもありそうにもない︑という短い法律関係の継続期間から推論される﹂︒
たしかに︑保険期間が短い運送保険などにおいては︑契約締結時から保険期間の終期までのあいだに︑目的物の価
額が大きく変動︵増大︶することは︑稀であろう︒したがって︑︵運送︶保険の実務上︑協定価額の拘束力を認めて
も︑それほどの実害︵被保険者の利得︶は考えられないかもしれない︒しかし︑実害が生じる理論的な可能性は残る︒
すべての立法が協定価額の拘束力を認めているわけではない︒周知のように︑ドイツ保険契約法第五七条などは︑わ
が国の商法第六三九条と同様︑明示的に再評価の可能性を認めている︒
Ra
me
ll
a の一八八二年イタリア商法第四三五
﹁イタリア法においては︑保険者は︑詐欺︑偽装または偽造を理由としてのみ︑すなわち︑被保険者が︑保険 関
法
六
^
六した場合︑被保険者は︑三三三万円を不当利得する︑ともいいうる︒
七
︵ 七
者の負担で自己が利得する意図でもって︑目的物の価額を故意に過大評価した場合のみ︑保険者が承認した評価
に不服を申し立てることができる︒損害保険において︑被保険者は保険事故から不当な利得をえてはならないの
で︑目的物の価額を超える部分につき保険の効果を否定する規定があるのは真実であるが︑不服申し立てのケー
( 3 )
スの法的制限を前にして︑たとえ保険価額を上回るにせよ︑評価は不動のまま保たれなければならない﹂︒
した
がっ
て︑
Ra
me
ll
a によると︑第四三五条第二項に列挙された不服申し立てが可能な三つのケースは︑制限的列
﹁もし︑保険者が承認した評価が実価を上回ること自体に︑超過保険の無効︵超過部分の無効︶を定めた第四
ニ八条の一般的原則規定の適用を認めると︑第四︳︱‑五条第二項が不服申し立てが可能なケースを列挙した意味が
( 4 )
失わ
れる
から
なの
であ
る︒
﹂
R月
1 e l l
a は︑さらに︑過小評価の場合に保険者に評価の見直しを認めるべきか︑との議論を持ち出し︑協定保険価
額の拘束力を肯定する立場を補強している︒この議論は︑わが国の商法第六三九条についても存在している︒よく知
られた例でいうと︑実価二千万円︑協定保険価額千二百万円︑保険金額千万円とした保険において︑分損千万円が生
じた場合︑付保割合によって保険金を算出すれば︑八︳︱‑三万円になるが︑保険者に五
00
万円︵保険金額の実価に対する割合によって算出した額︶までの減額請求を認めるべきか︑という問題である︒付保割合によって保険金を算出
もし︑協定保険価額の拘束力を否定するのであれば︑この場合にも︑保険者に評価の見直しを認め︑保険者が支払
うべき保険金を五
00
万円とするべきであろう︒しかし︑このような結論は︑保険者にとってもっとも有利な法制度協定
保険
価額
の拘
束力
挙ということになる︒すなわち︑
第五
0巻第一号
( 5 )
のもとにおいても︑認められていない︑というのである︒
R a m e l l
a
のいう保険者にとってもっとも有利な法制度とは︑ドイツ保険契約法第五七条である︒そして︑同条に関するのいく人かの論説
( L e w i s , V o i g t , G e r h a r d
, H
a g e n )
を紹介している︒同様の結論は︑わが国においても︑広く
(1
)
その
他の
拘束
力肯
定説
の提
唱者
は︑
M a n a
r a
︑C o b i a n c h
i
︑M o r a g l i a
など
であ
る
( A n t i g o n o D o n a t i T r , a t t a t o d e ! d i r i t t o d e l l e a s s i c u r a z i o n i p r i v a t e , v o l .
2,
M i l a n o ,
1 95 4,p .
249
n o t a
1 87;
V i t t o r i o S a l a n d r a , D e l l ' a s s i c u r a z i o n e ,
3
e d . , B o l o g n a
,
R o m a ,
19 66 ,
p .
320
n o t a
3)︒
(2
)
R a m e l l a ,
0
p . c i t . , p .
21 7.
(3
)
R a m e l l a , o p . c i t . , p .
21 8.
(4
)
R a m e l l a , o p . i t . c
`
l o c o c i t . , n o t a
5 .
e
でみる
こと
にな
るが
︑
V i v a n t e , o p . c i t . , p .
452
は︑
第四
三五
条第
二項
の三
つの
場合
を
例示
的列
挙と
して
いる
︒
(5
)
R a m e l l a , o p . c i t . , p .
21 9.
支持者の数のうえでは︑拘束力肯定説が上回るにしても︑拘束力否定説は︑あの
V i v a n t e
契約締結時に保険価額を協定しておきながら︑なお︑それが拘束力を有せず︑通常︑被保険者の負担とされる保険
事故発生時の目的物の価額の立証責任を免じるだけにとどまるのか︒
V i v a n t e
は ︑つぎのように説明している︒
﹁法典は︑保険者にあらゆる民事上の訴えの実行︑それ故︑付保された物の価額を実際の価額に一致するまで
減額させる権利も残している︵第四二八条︶︒このあらゆる民事上の訴えの留保は︑第四三五条に列挙された三
つの場合につき︑完全に例示的な性質を表している︒その三つの場合が制限的な性質を有するとすれば︑その留
⑯ 拘 束 力 否 定 説
( 1 )
の支持をえている︒ 支持されている︑といいうる︒ 関法
八
八
害保険契約の機能範囲を制限し
九
九
すな
わち
︑
Vi va nt
eは︑第四三五条第二項の挿入句﹁刑法上の訴えを含めてその他のあらゆる訴えを害することな
く﹂に︑拘束力否定説の形式的論拠を求めている︒挿入句の前半部分﹁刑法上の訴えを含めて﹂を反対解釈すれば︑
﹁民事上の訴え﹂の実行可能性が保険者に留保されており︑そのなかには︑保険価額の再評価請求権も含まれている︑
( 3 )
という論法である︒
そし
て︑
Vi va nt
eが拘束力否定説に立つ背景︵実質的論拠︶には損害保険契約の損害填補性に対する強い執着がみ
られる︒すなわち︑当事者が合意により付保目的物の過大評価をなしうることを認めると︑填補契約としての保険契
約が︑故意の事故に対して社会秩序の必然的防御を要するという︑その本質のところで︑崩壊してしまう︑との不安
を隠さないのである︒そうした事態を避けるために︑第四一七条が保険契約を填補契約と定義づけ︑第四二三条が損
︵損害保険契約を締結しうる者は︑目的物の所有者︑そのうえに担保権を有する者︑
( 4 )
現実のそして正当な利益を有する者などに制限される︶︑第四二八条が超過保険の無効を定めている︑としている︒
(1
)
その
他の
拘束
力否
定説
の提
唱者
は︑
Um be rt oP i p ia , r T at ta to i d d ir i t to m ar i t ti m o ,
2
e d . , v o l .
2,
M
il an o,
1
92 5, p p
53839;. ふ
Lu ig i L o rd i , S t i rn a ac c e tt a t a e v al o r e d e ll a cosa s s a i cu r a ta , i v R i st a de ! di r i tt o co mm er ci al e,
1935
I I , p .
263
. ( : §
! > J
\'.cl~i-0!0
(2) Vi va nt e,
0
p . c i t . , lo co c i t .
(3
)
Vi va nt e, op . i t . c l, oc o c i t ・
なお
︑
Vi va nt
eが
第四
三五
条第
二項
の三
つの
場合
を例
示的
列挙
とす
る点
につ
いて
︑
Ra me ll aの
反論
があ
るこ
とは
︑い
です
でに
みた
︒
(4
)
Vi va nt e, op . i t . c l, oc o c i t .
なお
Gi ul io P ar t e so t t i, La po l i zz a t i s m at a , P ad ov a, 1 96 7, p .
1 0 4 nota
1に
よる
と︑
Vi va nt e は ︑
一八
八二
年商
法施
行直
後か
ら︑
一貫
して
︑損
害保
険契
約の
損害
填補
性を
強く
守る
立場
りよ
︑拘
束力
否定
説を
支持
して
いる
よ
うである(損害填補性を定めた規定•原則は強行性を有する、と考えていたもの、と思われる)。
協定
保険
価額
の拘
束力
( 2 )
保は死文になってしまうからである﹂︒
このかぎりではない︒ あるいは︑目的地における到着時の損害なしの時価によって︒ と︑保険価額の協定に拘束力を認める学説が多数を占めるようであるが︑海上保険の伝統的傾向は︑むしろ︑否定説を支持しているようである︒すなわち︑評価済保険に関する議論を遡って行くと︑S
日
ac
ca
や
Sa nt em
aあたりまで
( 1 )
行き着くことになりそうであるが︑そのあたりまで遡ってみても︑保険価額の協定に拘束力を認める立法・学説に出
( 2 )
合うことはない︑というのである︒
一八八二年商法の海上保険に関する規定は︑評価済保険︑とりわけ︑その拘束力について︑どのような
態度を示しているのか︑あるいは︑学説は︑第四三五条に関してと同様の議論をしているのであろうか︒そのあたり
一八八二年商法は︑第六︱二条において︑貨物保険について︑明示的に︑評価済保険を締結しうる旨を定めている︒
つぎのような規定である︒
あるいは︑船積費用および傭船料を付加した︑取得価格によって5
契約において付保された物に他の説明なしになされた評価
( v a l u t a z i o n e )
は︑うえの両者の場合に関連するこ
とができ︑そして︑第四二八条の適用を生じさせない︒ただし︑評価が上記の価格の大きいほうを超えるときは︑
保険者によって承認された評価
( s t i m a )
が前もってなされていない場合︑前項にいう評価は︑ ﹁船積みされた貨物は︑付保されうる を概観しておくことにしよう︒
それ
では
︑
海上保険の伝統およびイタリア判例 関
法
第五0
巻 第 一 号
イタリアの一八八二年商法第四三五条に関する議論の状況を概観する
10
( 1
0)
つねに︑被保
一瞥を加えておくことにしよう︒﹁
va lg a
o no﹂条項の拘束力を直接に取り扱った破棄院
( 7 )
判例は︑二例(‑九二六年一月一︳︱‑日判決と一九三四年四月ニ一日判決︶存在するようであるが︑いずれもが︑拘束
( 8 )
力を肯定する多数説を支持している︒
(1
)
Lo rd i
̀
o p c i t . . , p .268 ;
P ar t e so t t i, o p. c i t . , p .
116
no ta 2 5.
(2
)
Lo rd i,
0
p . c i t . , p p.
268 ,
27 0.
I四三五年バルセロナ勅令に評価済保険に関する規定があったかについては︑議論の余地が
ありそうであるにしても
( Pa r t es o t ti , o p. c i t . , p .
117
no ta 2 5)
︑評
価済
保険
の起
源は
相当
に古
い︑
とい
いう
る︒
(3
)
P ip i a ,
0 p .
c i t . , . p p
538 , 5
39 .
(4
)
船舶保険について︑評価済保険を締結しうる旨を明示的に定めた規定がみあたらないのは︑一八八二年商法が一八0
七年
フランス商法の影響を受けているからかもしれない
( Pa r t es o t ti , o p. c i t . , p .
110 n
ot a
14 e
no ta
1
5)
︒そ
の点
につ
いて
︑こ
こ
では
詳細
に立
ち入
るこ
とは
でき
ない
︒
(5
)
B ru n e tt i , o p c i t . . , p p.
661 ,
66 2.
(6
)
Fo ro it a l ia n o ,
19 26 ,
I,
c ol o
. 4
24 .
協定保険価額の拘束力
当時の判例についても︑
(
‑
︱ )
険者の告知に基づきなされたもの︑と解され︑それ故︑第四三五条第二項に定められた規定にしたがう︒﹂
第六︱二条は︑第四三五条︵評価済保険に関する総則的規定︶を排除するものではなく︑貨物保険における評価済
保険についても︑第四三五条の適用を前提にしている︑といいうる︒したがって︑第六︱二条に関しても︑第四三五
( 3 )
条に関する議論の対立がそのまま反映することになる︒
そして︑一八八二年商法のなかに︑船舶保険について︑評価済保険を締結しうる旨を明示的に定めた規定はみあた
( 4 ) ( 5 )
らない︒船舶保険における評価済保険については︑第四三五条が適用されることになる︒したがって︑船舶保険にお
ける評価済保険の拘束力自体に関する議論は存在しないことになる︒
を介して間接的に部分的に知りうるのみである︒ とは︑困難であり︑筆者は︑ また︑海法︵航行法︶の改正草案は︑
( 1 )
れて
いる
︒
一九三一年に海法改正草案が発表され︑ 公表されたようであるが︶
一九
四0年商法改正草案と称されている︒
正草
案は
︑
筆者の理解するところによると︑最初の商法改正草案は︑ 2
第五
0巻 第 一 号
一九
四
0年航行法改正草案が発表さ
(︱ 二︶
(7
)
F o r o i t a l i a n o ,
19 34 , I•
c o l o
.
1933;
R i
v i s t a d e
! d i r i t t o c o r n r n e r c i a l e ,
1935
I I ,
p .
26 3.
(8
)
その
他に
は︑
一九
二四
年六
月一
四日
判決
も﹁
v a l g a o n o
﹂条
項に
関連
して
いる
が︑
直接
︑そ
の拘
束力
を判
断し
たも
ので
は
ない
よう
であ
る
( L o r d i , o p . c i t . , p .
26 3)
︒
︳九四二年体制への移行期間
一九
二
0年代の初頭から一九四0
年に
かけ
て︑
いくつかの商法改正草案および海法︵航行法︶改正草案が発表され
た︒それらは︑完成した時点と公表された時点が異なるため︑人によりあるいは場合により︑呼称が異なっている︒
一九ニ︱年商法改正草案とも一九二二年商法改正草案と
も称されている︒起草の主導者である
V i v a n t
e
の名を
借り
て︑
V i v a n t
e
草案とも称されるようである︒第二の商法改一九二五年商法改正草案と称されている︒最後の商法改正草案は︑(‑九三九年から一九四一年にかけて 当時の印刷事情によるためかあるいは世界大戦をはさんでいるためか︑それらの草案をわが国において入手するこ
一九三一年の海法改正草案を有するのみである︒したがって︑他の四つの改正草案が︑
それぞれに︑評価済保険についてどのような考えを有していたのかを︑直接に知ることはできない︒いくつかの論説
関法
(1
)
(2
)
(3
)
なにものべていない︒
(1
) 海法改正草案および航行法改正草案については︑窪田宏﹁イタリア航行法典その形成過程の研究ー﹂神戸法学雑誌
八巻
三号
三八
四頁
以下
を参
照の
とこ
︒
商法典改正草案まず︑最初と第二の商法改正草案は︑評価済保険について︑規定を有していなかったよう
である︒これは︑草案作成者たちの評価済保険に対する獣示的な拒絶の意思の表れであろうが︑最初の商法改正草案
の起草主導者である
Vi va nt
eの影響を受けているのは明白である︒起草者のひとり
Va le ri
のことばを引いておこう︒
﹁現行法第四三五条︵委員会によって熟慮のうえ再生されなかった︶の損害の事前的評価の制度は︑維持され
るに値しなかった︒損害の発生後に︑少なくとも絶対に充分な近似値をもって︑保険事故による損害の大きさを
査定することは︑今日︑つねに容易であり︑そして︑填補契約というべき損害保険が変質してしまう可能性を提
( 2 )
供する根拠はなにもない﹂︒
ここには︑損害保険契約の填補契約性を絶対視する︵あるいは︑超過保険を承認しない︶強い姿勢がみられる︒
( 3 )
しかし︑最後の商法改正草案の第五四六条第二項は︑現行民法第一九0八条第二項と同文になっていたようである︒
すなわち︑同項の起草者は︑最初と第二の商法改正草案の起草者と異なり︑評価済保険の締結可能性を明示的に承認
したのである︒この時︑老境にあった
Vi va nt
eは︑草案作成者たちに影響を及ぼすことができなかったのであろう︒
のち
に
( 4 )
(a)
みるが︑現行民法第一九0八条第二項は︑評価済保険を認めているが︑その拘束力の有無については︑
P ar t e so t t i, o p. c i t . , p p.
121
, 1
22 .
P ar t e so t t i, o p. c i t . , p .
122
によ
って
直接
引用
され
てい
る︒
P ar t e so t t i, o p. c i t . , p .
1 2 4 n
ot a
42 .
協定保険価額の拘束力
︵一 三︶
更は
︑
第五
0巻 第 一 号
海法︵航行法︶改正草案
商法改正草案が無視していた評価済保険について︑規定︵第三四二条︶を設けている︒つぎのような規定である︵評
﹁保険者は︑保険事故により被保険者がこうむった損害のみを填補しなければならない︒
付保された物が当事者間の合意により評価された場合︑評価がたんに契約において表示されているだけでは足 りず︑付保された物の価額に関する相互的同意の明示的告知が契約に挿入される必要がある︒なされた合意にも かかわらず︑評価は︑債務の無効の一般的原因によるほか︑過当を理由として︑不服の申し立てをなされうる︒
第三項以下省略~」
ここでは︑明示的に︑過大評価の場合に︑再評価の可能性が認められている︒再評価請求をなすべき主体について
は︑明示されていないが︑多くの場合︑保険者になるであろう︒
一九三六年に発表された一九三一年海法草案に関する所見・
提案集
(O
ss
er
v az
io
ni
e p
ro
po
st
e s u l p
ro
ge
tt
o d i c
od
ic
e marittim
o,
Ro ma ,
19 36
, 2
v o l ! . ) は ︑
ようである︒その旨を報じている
F er r a ri n
i の論説を紹介しておこう︒
﹁第三四二条第二項は︑商法第四三五条のシステムを変更し︑外国の立法例︵フランス︑ベルギー︑ドイツ︑
オーストリア︑スイスなど︶にしたがい︑過大算定を理由とする評価の不服申し立て可能性を容認している︒変
一致して批判されており
( Os s e rv . 第二巻一三四頁以下︶︑私も当然のこと︑と思う︒実際︑保険者に保
険事故発生時に被保険利益の評価のやりなおしを認めることは︑随意に引き受け︑それにつき相応しい保険料を ︶の草案第三四二条は︑多くの批判の対象になった︒ 価済保険に関連する項のみを試訳する︶︒
(b)
関法
海法︵航行法︶の改正草案に転じると︑
一致して反対していた
一四
( 1 )
一九三一年の海法草案は︑最初と第二の
︵一 四
こうした批判は︑やがて︑
一 五
︵一 五︶
一九
四
受け取った負担から免れる可能性を保険者に与えることを意味する︒他方︑保険者に有利な取扱をする理由がこ
こに存しないのであれば‘|—正当な対価として1被保険者に過小算定を理由とする評価の不服申し立てを認
めるべきであろう︒かくて︑評価は︑争いのもとになってしまう︒⁝⁝ここで唯一案じられる保険取引の倫理性
の保護については︑商法第四三五条第二項に規定された被保険者による詐欺︑偽装または偽造を理由とする不服
( 2)
申し
立て
可能
性で
足り
る﹂
︒
すな
わち
︑ F e r r a r i n
i は︑評価済保険の拘束力を否定すると︑結局︑評価をめぐる争いのもとになり︑評価済保険
が目指すところ︵迅速な損害の填補︶とは逆のところに行き着く可能性を案じているのである︒
そして︑当時︑法改正に関して積極的に発言をしていた
B ru n e tt i
は︑うえにみた
F e r r a r i n i
の論説と前後して︑海
上保険の改正に関する私案を公表しているが︑そのなかで︑評価済保険の拘束力を肯定する規定︵第二三条︶を提言
( 3)
して
いる
︒
九三一年海法草案第三四二条第二項が認めていた過大評価を理由とする評価の見直しを排除させるのである︒
( 4 )
0年航行法改正草案第四一0条第二項は︑つぎのような規定という︒
﹁評価は︑保険者により︑詐欺︑偽装または偽造を理由としてのみ︑刑法上の訴えを含めてその他のあらゆる
訴えを害することなく︑不服申し立てられうる︒
(L
a
st
im
a p uo es s e re im pu gn at a d a l l ' a s s i c u r a t o r e s o l t a n t o p
er
f r o d e ,
•••••
)﹂
ーでみた一八八二年商法第四三五条第二項は︑﹁⁝⁝保険者は︑詐欺︑偽装または偽造を理由としてしか︑刑法上
協定
保険
価額
の拘
束力
一九
四
0年航行法改正草案の起草者を一八八二年商法第四三五条第二項に回帰させ︑