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垂直的価格拘束に代わるもの

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垂直的価格拘束に代わるもの

その他のタイトル Alternatives to Resale Price Maintenance

著者 山東 茂一郎

雑誌名 關西大學商學論集

巻 19

号 3‑4

ページ 254‑276

発行年 1974‑10‑25

URL http://hdl.handle.net/10112/00021121

(2)

28 (254) 

垂直的価格拘束に代わるもの

山 東 茂 一 郎

垂直的価格拘束制への訣別

有標品製造元が,卸,小売りの販売業者との間の契約に基づき,流通過程 の各段階において,自己の定めた売価を守ることについて拘束を加える垂直 的価格拘束

(vertikalePreisbindung)

あるいは再販売価格維持は、内外にお いて久しい間, その是非功罪をめぐってはげしい論議が繰り返えされ,そ の論争は尽きるところを知らなかった。しかるに西ドイツにおいては,

1973

6

月連邦議会(下院)で, 続いて同年

7

月連邦参議院で「競争制限禁 止法」

(Gesetz  gegen  Wettbewerbsbeschriinkungen)

別称「カルテル法」

(Kartellgesetz)

の改正法案が通過成立し,垂直的価格拘束制は,

1

部の例外 を除いて

1974

1

月以降,ほとんど全面的に撤廃されることとなった。

このことは,価格拘束の対象とされる有標品の本質的特性の理解のうえに

立って,この制度を擁護しようとする理性的な経済論が,感情的な政治論の前

に,ついに屈服することを余儀なくされたことを意味するものにほかならな

い。わが国における再販売価格維持をめぐる議論の論拠は,きわめて素朴で

あり,とうてい西ドイツの比ではなく,またこの制度の評価を左右する客観

的背景は,西ドイツとはひとしくないとしても,この制度に対処する態度に

おいて理性の判断より遠ざかった感情論が優勢を保っているところよりすれ

(3)

垂直的価格拘束に代るわもの(山東)

(255)  29 

ば,西ドイツの先例が,今後の推移にかなりの影蓉を与えることは想察する に難くない。

西ドイツにおける垂直的価格拘束制の撤廃は,これをめぐる長年の論議に 一応の終止符を打ったものとみることができる。しかし,そうした結果が,

価格拘束をもって有標品製造元に平掏的価格水準を越えた価格の維持による 超過利得獲得の特権を付与するとともに,価格機構による自動的調整の作用 に期待をかける市場経済の秩序を攪乱する異物

(Fremdktirper)

で あ る と し て,:::れに抵抗を示そうとする理性的判断にはなじまない論議の勝利のうち にもたらされたところに,問題は残されている。さらに,こうした感情的論 議に力を得させた他の要因としては,インフレの進行とともにいよいよ募る 物価の騰勢をあげることができる。価格拘束制は,価格の下方硬直化をもた らし,価格の引下げを阻止するもので,物価の上昇を助長するものであると いうのが,インフレに誘発された反対論者の論拠である。しかし,垂直的価 格拘束制は,物価問題とは本来,なんら内在的関連のあるものではなく,価 格の柔軟性をも妨げるものではないところよりすれば,インフレ促進のえん 罪を負わされて,その撤廃という理不尽な犠牲を押付けられているとみるほ かはない。

およそ,販売政策的手段にして垂直的価格拘束制ほど歪められた中傷的論

議によって禍いされている問題領域は少ないといえよう。垂直的価格拘束に

対する至当な評価を阻む基本的要因は,これを有標品の本質的特性に関連さ

せることなく,孤立化してその是非を判定しようとする態度のうちに求めら

れる。しかもその際,判定の基準として援用される尺度は,多段階的な個別

競争に競争の典型的形態を見出し,しかも競争の中軸を価格に求めようとす

る陳腐化した競争理念である。こうした理念に導かれるとき,価格拘束は小

売段階における価格競争を抑止するものとして非難されるのを免れることが

できない。また価格拘束を効果的に遂行しうるものは,有標品製造業者にし

て寡占的地位を占めているものであるところから,製造元段階における価格

形成に当たっては,独占的要素の介入することは避けることができず,こう

(4)

30 (256) 

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

して形成された価格に拘束を加えることは,消費者の犠牲において製造元に 独占利潤を享受することを可能とするものであるとの非難が加えられる。

しかし,こうした非難の根底に横たわっている競争の観念は,それぞれの 水平段階における競争の現実とは遊離したきわめて素朴なものであること

(1) 

は,これまでもしばしば論証されてきたところであるが,競争の主要形態 が,流通径路の垂直的関連において機能を発揮する集団競争ないしシステム 競争に転移し,そうした競争に対処するための手段として垂直的協力の方式 としての垂直的価格拘束の意義を再確認することを要請されている時代的背

(2) 

景に顧みるならば,議論の素朴性に対する感慨をいっそう深めざるを得ない。

西独経営学界の長老であるとともに,卓越した独自の見解をもって価格拘 束に対する反対論に挑んできたメレローヴィッチ教授は,価格拘束撤廃の気 運が裔まりつつあった1

968

年,その所見を次のごとく表明している。すなわ ち,「製造業者および販売業者にとっても,また消費者にとってもひとしく 有用な,長年にわたって試験済みの垂直的価格拘束のごとき用具が,信服さ せるに足る理由を示されることなく,また当てにできない期待のもとに,安 易に廃棄されようとしていることに対しては,不安と焦燥の念を抱かざるを

(3) 

得ない」というのである。

(1) 

この点に関し,透徹した見解を表明した代表的著作として,

Mellerowicz, K., Markenartikel ‑ Die  okonomischen, Gesetze ihrer  Preisbildung  und  Preisbindung,  Zweite Auflage,  Mi.inchen u.  Berlin 1963. 

をあげることが できる。

なお,山東茂一郎著『有標品と販売政策』(昭和

44

年,千倉書房)において も,この点への考察が加えられている。

(2)  Solter,  A., Kooperative Absatzwirtschaft, Koln • Berlin • Bonn • Mi.inchen  1971.

は,流通径路のシステム的構成の原理に立脚して,垂直的価格拘束が,競 争経済の理念とは相反するものでないことを論証した優れた文献である。

(3)  Mellerowicz,K.,,.Alternativen  zur  Preisbindung  im  Falle  eines  Verbotsgesetzes," in:Der Markenartikel Mai 1968,  S.194. 

/なお,この論文は,本稿の構想の重要な拠りどころとなっていることを断わっ

ておく。

(5)

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

(257)  31 

またゼルクーは,先年「カルテル法」の:改正法案が廃案に追い込まれた 際,「有標品に対する価格拘束の禁止を断行しようとする連邦経済省および 連邦カルテル庁の長年にわたる企図が失敗に終わったのは,個別企業に過度 の自由を闊める結果として,流通段階における個別競争が極端に先鋭化する ことに伴う危険が,責任を意識した経済政論家であれば,誰しもこれに対し いよいよ危惧の念を抱かざるを得ない程度にまで培大してきたところに深

(4) 

くその根因が宿されている」と論じ,自由と拘束との間に健全なジンテーゼ を求めて,市場経済における競争の秩序を維持しようというのであれば,垂 直的協力の方式としての垂直的価格拘束が,公正な競争への導きの糸として 果たす機能に対して,正当な評価を与えるべきであるとして,この制度に対 するいかなる攻撃にも抗しうる防禦の論陣を張ってきた。

しかるに,この制度が撤廃されたうえは,観点を新たにしてこの問題を論 じなければならぬようになったとするとともに,「やはり不条理がついに勝

(5) 

を制した」ことだけは動かし得ないとして深い嗅息を洩らしている。

ちなみに価格拘束制の撤廃を惜しむ声は, そのほかにもペンツリンが,

「価格拘束は禁止された。感情が理性を打ち負かしたのである。企業の価格 形成はどのように行われているか,市場はどのように機能しているかについ

(8) 

ての反対論者の見解は,あまりにも素朴である」と述べていることのうちに も伺うことができる。

たしかに垂直的価格拘束制は,多くの論者が指摘するごとく,この制度が 競争制限的作用を発揮するものであるか,あるいは市場経済の秩序とは相 容れないものであるかどうかという経済的論議のうちより廃止の結論が導き

(4)  Salter,  A.,,,Markenpreisbindung  als  Form  vertikaler  Kooperation 

zwischen Industrie.  und Handel",  in  : Der  Markenartikel Jan.  1969, 

s.5. 

(5)  Solter,,,Marketingkonzeptionen des Herstellers  nach  Aufhebung  der  Preisbindung,  in:  Markenartikel Feb.  1974,  S.44. 

(6)  Pentzlin,  K.,,,Abschied  von  der  Preisbindung".,  in  : Markenartikel  0kt.  1973,  S.489. 

(6)

32 (258) 

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

出されたのではなく,優勢な政治的勢力に支えられた反対論の連射連撃に抗 し切れず,ついにその軍門に降ることを余儀なくされたとみるべきである。

こうした事態を招いた背景として,本来,市場経済の理論に照らして巨視的 見地から論議されるべき問題領域が,久しくカルテル庁による販売政策的手 段としての微視的処理に任され,しかもその際,価格拘束をその対象とされ る有標品の本質的特性との関連においてその意義を問うという態度において 欠けており,その間隙に乗じて一部の経済政論家の心理的作戦が意外の功を 奏したという事実を見逃がすことができない。

わが国における再販売価格維持制度をめぐる最近の動きは,理論武装にお いてはとうてい西ドイツの比ではないところから,感情的動因に発してこの 制度の撤廃を狙う運動の高まりの前に理性的論議はあえなく潰え,ついに法 規の改正を待たずして行政措置により再販指定商品の大幅縮減の方針が定め られ,この制度の実質的廃止の公算が強まっているなど,その基本的方向に おいては,西ドイツと一脈相通ずるものがある。

いずれにせよ,垂直的価格拘束制の命運を占うさいは投げられたのであ る。しかし,現代経済社会における有標品の意義が次第に加わり,それに特 有な販売方式の経済的および経営的意義を再確隠することを要請されている 現在,有標品の本質的特性の発硯に寄与する用具として逸することができな い垂直的価格拘束が,その機能の発揮を妨げられているのを等閑視すること ができない。ここにおいてか,それに代わるべき方策の若千につき,それら がどの程度まで垂直的価格拘束に代わる作用を表わしうるものであるかにつ き検討を加えることが,今日的課題に応答するゆえんであると信ずる。

I l

 

代替方策評価の視点

有標品製造元が垂直的価格拘束の作用に寄せる期待は,ただこれによって

消費者価格の安定を図りうるということだけではなく,長期にわたる販売成

果実現のための必須の要件であるとされている顧客サービスの提供において

(7)

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

(259)  33 

販売業者の協力を得るということとあわせて,強力な販売網を保持すること を可能とされるということである。こうした観点からすれば,価格拘束の代 替方策としては,有標品製造元が自社製品の販売径路に及ばす支配を強化す ることに役立ついっさいの手段が含まれることになる。そうした支配強化の 方式としては,契約に基づきあるいは事実上,独立の販売業者の行動の自由 に制約を加えるものもあれば,また直営店を設けて独立の販売業者を排除す る場合もある。さらにまた作用の強弱からみれば,直営販売店制は最も強力 であり,これに次ぐものに垂直的販売拘束制,専属販売店制あるいはフラン チャイズ制があり,作用の最も弱いものに勧告価格制がある。いずれの方策 によるかは,価格拘束によって達成しようとしている目的および直面する市

(7) 

場情勢に応じて判定するよりほかはない。

およそ,これらの代替諸方策の機能を評価するに当たっては,消費者利益 の擁護と経済の合理的運営への寄与を究極の基準とせられるべきであること はもちろんであるが,企業の販売政策的観点よりすれば,有標品製造元が維 持することに努めてきた品質の恒常性と品質訴求を旨とする消費者広告およ ぴ提供される顧客サービスを通じて築き上げることに成功したク・ッドウイル を保持し,プリセリングされた製品の販売促進のうえにどこまで役立つかと いうことが,有力な評価の基準となる。このことは,価格拘束制がそうした 効果の発現を助ける用具としての機能に,この制度を支持する理由が駆めら れてきたという点にかんがみても十分に了承することができる。しかも,価 格拘束がそれに負託された任務をどの程度まで果たしうるかは,企業の当面 する現実の市場情勢のいかんに応じて,おのずから分かれるものであるとさ れてきたところから,代替方策の評価に当たっても市場に視点を定めて考察 することが適切である。

しかるに市場は,変転常なき流動の過程の中に置かれているもので,その

(7) 

この主題に関する単行の文献として.

Bersuch,. J.,  Alternativen  zur  Preisbinung  als  Instrumente ・ der  Absatzpolitik,  Verlag  Otto  Hain,  Meisenheim 1971.

は注目に値する。

(8)

(260)

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

推移を展望することはきわめて困難である。これまでの経過に顧みても,市 場は複雑多岐にわたる分化を遂げ,その統一性は破れ,それに伴って価格拘 束制の完全な実施が妨げられ,この制度の機能障害をもたらした事例は決し て少なくない。市場はそれを攪乱する要因より遠ざけられて,その統一性が 維持されている限りは,価格拘束制の実施には多くの困難を伴わない。しか るに市場展開の過程において統一を破って分化に導く要因が勢いを加え,こ れ力項:販売径路の分化と販売方式の差別化をもたらし,売上げの極大化を狙っ て投売りの手段に訴えたり,販売に伴う用役の提供を犠牲にして価格の引下 げのみを指向する販売方式や販売業者が出現するにつれて,価格拘束の機能 は麻痺せざるを得ない。

さらに市場の複雑化をもたらした要因として注目すべきものは,市場領域 拡大の趨向に応じて,同一部類に属する有標品の販売径路にブランドを異に する多数の製造元有標品とあわせて販売業者有標品(自家生産にかかる製品で あると,他の製造業者によって調達されたものであるとを問わない)が参入して,

たがいに競合関係に置かれるようになったということである。こうした展開 に照応して,流通径路における主導性が販売業者とりわけ大規模販売業者に 移り,いわゆる後方への統合

(Riickwiirtsintegration)

が進められる。しか し,製造業者にして自己の機能圏を技術の分野にのみ縮減し,賃労働者は転 落することをいさぎよしとしない限り,'製造業者は流通径路に対する主導性

を取り戻し,前方への統合

(Vorwiirtsintegration)

をもって,これに対抗し

•ようとする。

こうした統合は,いずれの方向をとるにせよ,その発現の形態は多様であ り,社会経済的にみてそれが製造業者および販売業者の機能の強化に連なる ものであるかどうかについては, にわかに論断することはできない。 しか し,そうした統合の動きの過程において,硯金持帰り卸売商,ラック・ジョ

ッパー,スーパーマーケットあるいはフランチャイズ・システムなどの新規

の販売形態が出現し,また製造業者と販売業者との間に種々の形式による結

合関係が形成され,それに応じて前例のない取引形態や販売径路が生起し,

(9)

垂直的価格拘束に代わるもの(山東) (

261) 35 

これが生産および販売の領域を通ずる生産性の向上に貢献してきたことは否 むべくもない。この場合,特に注目しなければならぬことは,そうした展開 のうちに流通径路における垂直的協力に導く動因がはらまれており,製造業 者より販売業者を通じて消費者にいたる財貨流動の過程は,その統一性を回 復し,消費者欲求の最適の充足という流通径路に課せられた社会経済的使命 を果たすに適応する体制の整備に接近するための契機が熟されてゆくという ことである。

流通径路の統合とその統一化が進められる過程において,経営規模および 経営形態の異なる構成員の間において,種々の形式による結合関係が結ば れ,それを支える合意の内容もまた多岐にわたっている。しかも,そうした 結合関係が形成されてゆく半面において,径路の構成より排除されるものが 生ずるなど,離合集散はきわめてはげしい。垂直的価格拘束の代替方策につ きその効果を判定するに当たっては,不断の変転を遂げつつある市場の現実 を踏まえて議論を進めなければならない。

現代的生産経営の要訣は,最適経営規模を創設し,かつこれを維持するた め適時適切な製品交替をもって売上高の確保を図るとともに,自社製品に競 争製品と識別するに値する特異性を打ち出し,これを拠点として競争者の介 入を許さない顧客圏の保有を策することにあるが,それはひっきよう,最適 な販売径路の保持を待って可能とされるものである。とりわけ単価の高い耐 久的な有標品については,特にそうである。価格拘束に対する代替方策は,

いずれも販売径路の選定と関連する。それゆえ,最適の販売径路を保持して 販売の確保を図るうえにおいての有効性に照らして,代替諸方策の本質を究 明することが適切な考察の態度であるといえる。

皿 垂直的価格勧告制

垂直的価格勧告

(vertikale Preisempfehlung)

とは,製造業者が自社製品の

卸売業者およぴ小売業者の双方または一方に対し,所定の再販売価格を守る

(10)

36 (262) 

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

よう勧告するが,これに従うことにつき拘束を加えないことをいう。したが って,現実の売価が勧告価格より上下に離脱して形成されることが容認され ている。

1. 

勧告価格の市場適応性

垂直的価格勧告制は,価格拘束の代替方策としては,その発揮する作用の 最も弱いものであるが,それに固有の効果をあげるためには,消費者価格の 勧告に関する場合には,勧告価格の設定に当たり,消費者市場において形成 されることが予想される価格水準に正しく照準を合わせるとともに,設定後 においても変化する価格水準との調整に不断の注意を払うことが必要とされ る。勧告価格は販売業者に不当な値引きの余地を与えるよう定められてはな らない。指示価格が高きに失するときは,販売業者の連帯意識は弛緩し,安 売りによる抜け駆けの功名を狙うものが現われ,通常の小売価格よりもはる かに低い価格で取引されるいわゆるグレイ・マーケツトなるものが出現し,

市場の展望は妨げられ,不公正競争が助長されて,流通秩序が攪乱される。

こうなれば,製造業者であると販売業者であると,はたまた消費者であると を問わず,市場関係者のすべてに被害が及ぶことは避けることができない。

勧告価格の設定に際して;製造業者が市場の現実から遊離した不当に高い 価格ー一これを

Mondpreis

または

Phantasiepreis

と 呼 ぶ 一 を 守 ら れ な いことを承知のうえで勧告価格として指示し.小売商に広範な値引きの余地 を与え,これによって消費者にはよい買い物をしたとか,あるいは当該店舗 がそれほどの安売りに耐えるだけの能力を持っているかのごとく錯覚させよ うとすることがある。しかし,価格勧告がそうした欺睛的目的を達成するた めの手段として用いられる限り,価格拘束に代わる機能を発揮しうるもので ないことは明白である。

勧告価格は,厳正に算定された市場適応の

(marktgerecht)

価格として,

廃係者の承認を受けるに足るものでなければならない。西ドイツにおいて価

格拘束制の撤廃後においても,なお勧告価格制を存続させるに当たり,市場

不適応の幻想価格の勧告に対する監視を強化し,またこれに対し世人の支持

(11)

垂直的価格拘束に代わるもの(山東) (

263)  37 

が寄せられているのは,幻想価格を排除することが勧告価格制の機能を保障 するゆえんであり,世人の関心もまたここに集められているからである。

しかし,勧告価格によって与えられる販売業者マージンが適正であって も,なお販売業者が売価を操作するおそれがありうる。とりわけ,知名度が 高く売れ行きのよい有標品で,しばしば安売りの危険にさらされているもの がある。しかもそのうちには単価の低い消耗的な生活用品もあれば,単価の 高い耐久消費財も含まれている。すなわち,前者にあっては,取引頻度を高 めるうえにおいての安売りの効果に期待がかけられるし,また後者にあって は,顧客の価格意識に訴求するための手段として効果的に利用することがで きるという理由に基づくものである。これらいずれの場合においても,価格 勧告制を導入したからといってすぐに消費者価格を統一しうるとは限らず,

ことに製造業者が販売径路に対し支配力を及ぽし得ないというにおいては,

特にそうである。この場合,なお勧告価格に実効をあげさせようとすれば,

. . . . . . . .  

販売径路の再編成をあわせ進めるよりほかはない。

これに対し,知名度が低く単価も比較的安い

1

群の有標品にあっては,価 格勧告がある程度までは価格拘束に代わってその機能を発揮することができ

る。けだし,こうした部類の製品にあっては,取引頻度も比較的低く,かつ 他の種類の製品と組み合わして販売されることが多いところから,これを

. . .  

おとりの手段として利用しても,実効をあげることが難しいからである。し たがって,そうした製品領域にあっては,製造業者とあわせて小売商も価格 勧告制に対し強い関心を示し,定価表を用いるとかあるいは包装の上に価格 を表示するとかなど,各種の形態による価格勧告方式を効果的に導入するこ とができる。

2. 

価格勧告制の経営的意義

価格勧告制がどの程度まで価格維持の効果をあげうるかについては,商品

の性格に応じて異なる判定が下さるべきであるが,およそ価格勧勧告制がも

たらす経営経済的作用を主として販売業者に即して考察すると,次のごとく

(12)

38 (264) 

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

である。

まず第

1

に,販売業者とりわけ中小小売商に売価形成の指針を与えるとい う点があげられる。一般に製造業者は,市場を展望するに当たり小売商より も優れた眼識を備えているのが通例であるところから,消費者価格の形成 は,製造元段階において一元的に管理し,小売商に価格形成上頼るべき指針 を提供するという方式が勝っていることは争えない。なお,そのうえ,小売 商にして多数の取扱い商品につき適正な売価を算定することが,技術上の理 由から至難とされているものが決して少なくない。またそれと同じ理由で小 売商が商品または包装の上に正札を付けることは,常に必ずしも可能である とは限らない。この際,製造元が小売価格の表示に協力することは,とりわ け低額の商品については,小売商の煩労を省くものとして至当な評価が与え られてしかるべきである。

次に製造元の設定する勧告価格が,小売商が自己に固有の任務として果た すべき顧客に対する販売訴求を助成する有効な手段として役立っていること を見逃がすことができない。近年,消費財の販売に際してカタログおよび定 価表を介するものが,広範に及んでいる。カタログによって消費者の購買行 動を方向づけるといっても,そこに価格が表示されておらなければ,その目 的に沿うことは困難である。げんに西ドイツにおいては,販売業者にしてそ の所属する団休が価格勧告制に反対の立場を表明しているにかかわらず,な お製造元にカタログに価格を表示することを要求している例は,決して少な くない。以上の諸点に顧みるとき,価格勧告制が,垂直的価格協力

(vertikale Preiskooperation)

の方式として意味づけられるゆえんは,十分に了承するこ

(8) 

とができる。

価格勧告制には,勧告価格を消費者に知らせることなく,販売業者に示す だけに止めるものがある。この種の価格勧告方式が,近年ひろく採用される ようになったのは,販売業者を売価算定の煩労から解放するという単純な理 由のほかに,共通の使用目的に役立ち相互に補完関係に置かれている製品が

(8)  Solter,  Kooperative Absatzwirtschaft,  S,89 ff. 

(13)

垂直的価格拘束に代わるもの(山東) (

265)  39 

組み合わされて発揮する総合的機能に販売訴求の拠点が求められる製品部類 が拡大したがゆえである。住宅設備関連機器のごとき,住まいの環境を改善 するという共通の目的に役立つ多種類の製品を要素として構成されているシ ステム製品にあっては,販売業者がシステムの構成要素になっている製品に つき,それぞれ売価を算定しなければならぬというのであれば,取扱い品目を 縮減することを余儀なくされ,ついにはシステム販売の要請に応じ得ないと いう結果を招来することもありうる。この場合,勧告価格が定められている ならば,販売業者はシステム構成のため必要とされる多種類の製品を取扱い 品目のうちに加えて,顧客の選択に供することを可能とされるとともに,品

目の取揃えをめぐって販売業者間の競争もまた促進される。

3. 

価格勧告制の法制的地位一ーその社会経済的意義との関連において 西ドイツにおいては, 垂直的価格勧告は,「競争制限禁止法」第1

5

条によ って,原則として禁止されてきた。しかし,同種の他の製品との間において 価格競争が行なわれている「有標品」についての価格勧告は,

1958

年の連邦 裁判所の判決に基づき,同法第

16

条によるカルテル庁への届け出を条件とし て認められてきた。ただし,その実施に強制を伴わないこと,およびその旨 をだれにでも判るように表示することが必要とされていた。

1973

年同法が改 正され,垂直的価格拘束制が廃止されるに伴って,それまで垂直的価格勧告 を容認してきた法的根拠は失われた。しかし,この制度を存続させようとす る立法者の意図に基づいて改正法に特別の条項が挿入され,価格勧告制はこ れまでと変らぬ法的地位を与えられることとなった。この場合,改正法が行 政事務の簡素化を理由に価格勧告についての届け出義務を免除したこと,ぉ よび市場不適応の幻想価格の勧告に陥ることを勧告禁止の制裁をもって防止 するなど,価格勧告の実施に対する力、ルテル庁の監視を強化していることが

(9) 

注目される。

(9)  Martino,  H.D.,,,Das  neue  Recht  der  Preisempfehlung",  in  :  Markenartikel Aug. 1973,  S.386‑387. 

(14)

40 (266) 

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

価格勧告制が,.改正カルテル法によって法的地位を付与されたのは,それ が運用の適正を期しうるならば,先に見たごとくかずかずの経営経済的効果 をあげうるだけでなく,ひいては市場経済の根幹となっている競争の秩序の 維持に寄与し,社会経済的にもその効果を発揮することが期待されるからで ある。この際,まず注目すべきことは,安売り競争に代わって真実の意味に おいての価格競争が促進されるということである。とりわけ,多数の売手が 差別化された製品を携えて市場に現われる異質的多占の市場情勢のもとにお いては,特にそうである。価格勧告によって販売業者マージンが固定化さ れ,販売業者はその発揮する機能に照応する代償をもって酬いられることを 妨げられることになりはしないかと憂えることは,思い過ぎである。むし ろ,市場適応の勧告価格の形成をめぐって,製造元段階における健全な価格 競争を促進するという積極的効果を評価すべきである。

流通段階において収められる販売業者マージンは,若干の例外を除けぱ,

業者相互間においては大きな格差が認められるものではなく,むしろ業務態 様のいかんによってマージンに相瀧を来たすのが通例である。業務態様は発 揮する機能に応じて区別され,製造業者の観点からすれば,それぞれ異なる 販売径路が形成される。径路が相遣するに応じて取得されるマージンに差異 が生ずるのは当然である。価格勧告制が,流通段階における真正の価格競争 を助長するといわれるゆえんである。

垂直的価格勧告制が,製造業者と販売業者との間における価格協力の用具

としての作用を表わし,さらにこれが消費者利益にも及ぶよう運用の適正が

期せられるならば,所期の効果の発現に接近することが期待される。さらに

価格勧告制の利点として,製造業者にとっては,価格拘束制よりもその実施

がはるかに容易であるとともに,勧告価格は販売業者によって守られる公算

が大きいことが指摘されている。しがし,価格勧告制がその実効をあげうる

がためには,この制度に港在する弊害を防止するうえにおいて万全の構えが

とられることが必要とされるわけで,にわかにその効果を過信することは早

計である。げんに西ドイツにおいては,今次のカルテル法の改正によって価

(15)

垂直的価格拘束に代わるもの(山東) (

267) 41 

格勧告制が取り入れられるに際し,労働組合,消費者団体および小売業界な

どが反対の意向を表明した。こうした情勢を反映して,改正法案を審議した 連邦議会の経済委員会においては,連邦政府に対し価格拘束制を廃止してか ら3年を経過した後において,価格勧告制実施の経験についての報告書を提 出することを要請すべきであるとする提案が採択されている。しかも,この 報告書は,将来における法律改正の方向を示唆する提議をも含めた内容のも のとなることが望まれている。

このように,価格勧告制が所期の効果をあげうるかどうかについては,実 施の経過に徴して将来の判定に委ねるよりほかはないとされている。ただ実 施の完壁を期するためには,そのための前提条件が備わっていることの必要 であることはもちろん,それが有標品製造元の販売政策的手段としての機能 を維持しうるがためには,その誤用ないし悪用を防止するための行政措置が 機宜に応じてとられることが必要とされることだけは,動かし得ない事実で

ぁ 式 ゜ )

I V

 

販 売 拘 束 に よ る 販 売 径 路 の 選 択

垂直的価格勧告は,有形の商品とあわせて無形の用役が同時に提供される のを通例とするいわゆる専門品の範疇に属する製品については,価格安定の 機能を十分に発揮し得ない場合がある。例えば家庭用電化製品のごとく単価 の高い耐久財で,同質の販売径路を通ずるとは限らず異質の径路をも経由す る製品にあっては,価格勧告だけで価格維持の目的を達成しうるかどうかは 疑わしい。いわゆる専門品の領域に属する製品は,本来,販売に際して消費 者の商品選択を助けるための勧告助言を提供するとともに,販売後において も消費者がその商品のはたらきにかけている期待をかなえさせるよう持続的 な配慮をめぐらすべきものであるとされており,また勧告価格がそうした用 役の提供に心がける専門店の機能に酬いるに足るマージンを含めて定められ

(10)  Martino,  a,  a.  0.,  S.390. 

(16)

42 (268) 

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

るのが通例であるが,用役の提供に関心を示さない販売業者にとっては,そ うした指示価格は高きに過ぎるものとして受け取られるに相遣ない。こうな れば,有形の商品とあわせて無形の用役をも売る専門店は,用役の提供を伴 わない一般の販売店の安売り攻勢に脅やかされるのを免れることができな い。しかも,専門店はコストの関係からそうした安売り価格に同調し得ない のが通例であるとすれば,専門品に特有な販売方式を止めるよりほかはな

く,ついには専門店は市場よりその姿を消すという結果が招来される。

製造業者は,自社製品の販売に際し,顧客の特別の要求に応ずることが必 要とされるというのであれば,それをかなえるに足る販売径路を選ぶにしく はない。高度な技術の所産で,販売の前後にわたって提供される用役に対す る顧客の評価を高めなければならぬ製品は,それに照応する機能を果たすに 適する販売業者を選んで,その取扱いを任せるべきである。また化粧品のご とく,たがいに関連させて総合的な美容効果を発揮させるべき商品について は,広範な品目取揃えの用意のある販売店を選んで,その取扱いを委ねるべ きである。あるいはまた婦人服飾品のたぐいで,奢俊品の範疇に属するもの は,それを取扱うのにふさわしい雰囲気の漂っている店舗を選んでその販売 を任せるべきで,これをディスカウント・ストアの店頭にさらすようなこと があれば,高級品としてのイメージは損なわれる。

いずれの場合においても,製造業者は自社製品の販売を託するに足るだけ

の資格条件を備えない販売業者に対する出荷を差止めることによって,販売

径路選択の目的を達することができる。しかし,供給を停止された販売業者

が仲間取引を通じて当該商品を入手するおそれがあるところから,これを防

止するため製造業者は,供給を受けた販売業者に対し再販売の相手方を選ぶ

自由を制約する契約上の拘束を加えることがある。これが垂直的販売拘束

(vertikale Vertriebsbindung)

と呼ばれるもので,製造業者が最も有利な販売

径路を設定したいとの要望は否定されるべきではないとの理由から,この種

の拘束を内容とする契約を締結するこーとは,西ドイツにおいては原則として

容駆されてきた。ただ,そうした拘束が有効競争を阻害したり,あるいは第

(17)

垂直的価格拘束に代わるもの(山東) (

269) 43 

三者に不当な取引制限を加えることとなる場合には,競争制限禁止法に基づ き無効とされる場合がある。

垂直的販売拘束は,商品の特性に応じた販売方式に照応する販売態勢を整 えた店舗を選別しようとの意図に発して進められるものであるところから すれば,消耗的な日常生活用品よりも耐久財で要説明商品

(erklungs‑und beratungsbediirftige Ware)の部類に属するものが,この方式による販売径

路の選択に適するものであるといえる。このことは販売径路の選択は,とり わけ安売りの手段に訴えて客寄せを図る販売業者を回避して,製品の名声を 維持したいとの製造元の関心に発したものであるという点に顧れば,おのず から明白である。

販売拘束を通じて販売業者を選別するに際しては,客観的な基準に拠るこ とが望まれる。したがって特定の販売者業を名指して,これとの取引関係を 排除するがごとき方策は避けるべきで,無形の用役の提供に対する販売員の 適格性,品目取揃えの状況,店舗装備およぴ販売方法とあわせて店舗の立 地,保有する顧客圏,博している名声などのごとき客観的に捕捉しうる指標 にしたがうべきである。また販売拘束の契約条項のうちには,販売径路とは なんら関係のない取引条件を守らなかったという理由で,取引関係より排除 するような規定は挿入されるべきではない。さらにまた販売業者の心構えの ごときも,それが客観的判定に耐え得ないものであるところからすれば,選 別の基準としては適切なものではない。ただ,安売りを事とする小売店と使 命に忠実な専門店とは,その心構えが相遣していることだけは確かである。

販売拘束によって製造業者は,自社製品が販売業者の恣意的な販売方法に

委ねられることによってこおむる名声の失墜を防止することができる。また

これによって専門店は,価格訴求を本位とする競争業者とりわけグレイ・マ

ーケットの加える攻勢より自己の地位を防衛することができる。これとあわ

せて注目すべきものは,販売拘束に伴う価格の同一化作用である。有標品製

造元にして,業務態様においてもまた品目構成においても相類似する専門店

を主要な販売径路として選ぶものは,安売りの危険にさらされることなく価

(18)

44 (270) 

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

格勧告を効果的に実施することができ,場合によっては,定価販売の励行を さえ可能とされる。価格攻勢を構える販売業者への供給を抑止することは,

行動パラメーターとしての価格の意義を減退させる。しかし,これによって 競争が一般的に緩和されるとみることは当たらない。むしろ,種類をひとし くする消費者欲求の充足をめぐって形成される販売拘束システム相互間にお ける競争は剌激され,しかもその重点を無形の用役の提供に移して展開され てゆくことを見逃がすべきではない。

最後に販売拘束による販売径路の選択が,価格安定の機能を保障されるが ためには,(1 ) 流通連鎖を構成する販売機関の業務態様は相類似しており,

利害と関心を異にするところから勧告価格を無視した安売りに走るおそれが ないこと,(2 ) 有標品製造元は,値引きを誘発し統一的な価格水準の維持を 妨げる結果を招来することを回避するため,不当に高い販売業者マージンを 供与することのないよう自戒すること,などの前提条件を満たすことが必要

とされる。

Y  専 属 販 売 店 制

製造業者と販売業者との間において,販売業者が商品の購入先およぴ販売 先を選ぶ自由を制限することを内容とする契約が結ばれることがある。こう

した契約に基づいて販売業者は特定の製造業者の製品を排他的に取扱う義務

を負うとともに,販売先についても制約を受ける。その半面,製造業者は契

約上の拘束を受けている販売業者の市場圏内には,その承諾なくして他の販

売業者を介入させないという義務を負い,また非競合品目の取扱いについて

は,当事者間の共同決定に待つこととされている。こうした専属販売店制

は,販売店の選択を指向する販売拘束に比べると,その発揮する競争制限的

作用は,いっそう強い。けだし,販売拘束は第三者の選択に関連するもので

あるのに対し,専属販売店制は第三者との取引関係の排除を内容とするもの

(19)

(11) 

だからである。

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

(271)  45 

専属販売店制を採用して効果をあげうるのは,単価の高い高級品で,顧客 階層の限定されている場合においてである。専属販売店を選定するに際して は,地域市場において激烈な競争関係に置かれておらない同質な少数の専門 店を参加させるよう,格段の配意をめぐらすことが必要とされる。けだし,

これによって勧告価格を維持して,価格水準の動揺を防止するという有標品 製造元の重要な関心に応答しうることとなるからである。

製造業者が自社製品の専属販売店として参加させる専門店の数が,どの程 度であれば適正であるか,すなわち,どの程度の流通密度を保つことが至当 であるかを判定するためには,市場諸条件の推移についての深い経験とそれ を感知する鋭い触角の作用に待たなければならない。ただ一般的に概言しう ることは,その数が多きに過ぎれば,それぞれの店舗は必要にしてかつ十分 な売上高を確保することができず,当該製造元の製品の販売に対する関心は 低下せざるを得ない。これに反し,販売網が粗大であれば,消費者が措定し ている購買目的に即応してキメ細かく対処することが困難であるところか ら,買手との関係は疎遠となり,細密な販売網を張っている競争業者に顧客 を奪われるのを避けることができないということである。

要するに,参加させるべき専属販売店の数はどの程度をもって適正とする かについては,普遍的に妥当する客観的な基準は存在しない。産業部門によ り,また製品部類にしたがって,時に応じてこれを定めるよりほかはない。

ただ原則として確認しうることは,製品の機能の発揮による効用の享受が,

(11) 

専属販売店は,処置の自由

(Dispositionsfreiheit)

を欠いているところから,

独立の商業者としての自主性を制約せられる。それゆえ,独立の商業経営と企業 の販売機関の中間形態としてその性格が把握される。

(Gutenberg,  E.,  Grundlagen der Betriebswirtschaftslehre,  Bd.  IT,  Der Absatz, 14. Aufl.,  Berlin‑Heidelberg‑New York 1973,  S.157. 

Ahlert, D.,,,Absatzorganisation und Abnehm~rselektion.Zur Problematik  der institutionellen Gestaltung des Absatzes"., in: Betriebswirtschaftliche  Forschung  und Praxis,  3/1974,  S.219. 

(20)

46 (272) 

垂直的価格拘束に代わるもの(山東)

販売に際して提供される無形の用役に依存する度合いの高い製品の開発が進 むにつれて,資格条件を備えた少数の店舗を選んでその取扱いを任せるとい う傾向が,いよいよ強められるということである。誇示意欲を満足させよう とする奢的俊な製品で,消費者が購買の場所に特別の関心を示すものについ ては,大都市を単位として専門店

1

店だけを選んで,専属販売店としての資 格を与えることが適当とされる場合さえある。

VI 

フ ラ ン チ ャ イ ジ ン グ

販売拘束による販売径路の選択および専属販売店制と相似た効果をあげう るものに,フランチャイジングがある。フランチャイングあるいはフランチ ャイズ・システムとは,流通過程における垂直的協力を指向する当事者間の 契約に基づいて成立する販売制度であって,当事者の一方(フランチャイザー)

が自己の供給する商品または用役を販売する特権を相手方(フランチャイジー)

に与えるとともに,販売ノウハウを提供して経営上の指導と援助をも与え,

フランチャイジーはその代償として一定の対価を支払うことを約束する。こ の場合,製造業者が結合のイニシャテイプをとり,前方への協力の形式にし

(12) 

たがうのが通例である。

この制度に伴う利点としてあげるべきものは,フランチャイジーとなるべ き小規模小売商の経営上の独立性を強化するということである。垂直的結合 形態は,往々にして集中化の方向に傾き易く,レギュラー・チエーンまたは 支店網の展開に導く公算の強いものであるとされているが,フランチャイズ

・システムは,製造業者の主宰のもとに独立小売商のネットワークをつくり

(12)  Mellerowicz,  K.,,,Franchisingeine  neue  Vertriebsform",  in  : 

Markenartikel Sep.  1971,  S,369 

f f .  

Wrabetz,  W.,,,Das  Franchise‑System‑Wesen,  Inhalt und Probleme",  in  : Betriebswirtschaftliche  Forschung  und Praxis,  3/1974,  S.259 f

f .  

山東茂一郎「フランチャイジングについて」甲南経営研究第1

4

巻第

2

号(昭和

489月

13

ページ以下。

参照

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