アメリカ自動車工場の苦闘(下) : アメリカの工場
・日本の工場
著者 石田 光男
雑誌名 評論・社会科学
号 85
ページ 1‑66
発行年 2008‑03‑31
権利 同志社大学社会学会
URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000012026
アメリカ自動車工場の苦闘(下)
──アメリカの工場・日本の工場──
石 田 光 男
目次
1章 はじめに
1−1.問題意識 1−2.方法 1−3.調査 2章 組織的特徴
2−1.経営組織 2−2.組合組織
2−3.階層構造(組合員)
2−4.階層構造(経営者・監督層)
2−5.労使関係への含意
3章 生産計画・勤務体制・配置をめぐる労使関係 3−1.生産計画に伴う勤務体制の労使協議 3−2.勤務体制の上限
3−3.労使協議の違いの含意
4章 方針管理と労使関係−組織と担い手−
4−1.概要 4−2.A工場 4−3.J 1工場
4−4.J 2工場 (以上,前号)
5章 品質管理と労使関係 (以下,本号)
5−1.概要 5−2.A工場 5−3.J 1工場 5−4.J 2工場
6章 能率管理と労使関係 6−1.稼働率
6−2.要員水準漓−量産に先だっての要員設定−
6−3.要員水準滷−量産後の効率化−
― 1 ―
5
章 品質管理と労使関係上に方針管理の機構と組織を三つの工場について観察した。J 2工場の委細 はつまびらかでないのが残念であるが,しかし,A工場とJ 工場の違いは明 白だと言わなくてはならない。
この点をさらに現実の管理項目に即して,観察しよう。中でも品質が最も重 要な管理項目である。
5−1.概要
A工場はラインの中間に特別の検査工程(Verification Station)を導入し,
応急措置をした後,その工程作業者が品質不良を「ブルーカード」に記載し,
それを一件ごとに解決する方式を90年代末に導入した。だが,下記のように 問題が山積している。
J 1工場では「モジュール」を構成する「ユニット」毎に配置される「品質 スタッフ」が応急措置をした後,集計したデータに基づき「モジュール」内全
「ユニット」の「品質スタッフ」の「毎朝の会合」で,不具合を検討し,現場 作業のチェックポイントに具体化する。J 2工場は通常の職場組織であるが,
領域毎に「チェックマン」が不具合を拾い出し,応急措置をした後,毎日午後
「持ち帰り会議」で部門をまたがる問題の行動を決定する。
仕掛けは似ている。相違は検査工程でチェックされた問題の解決が円滑かど うかの違いである。A工場では職長が半数ほど人材会社からの契約社員であ り,対応能力がなく,不良を発生した工程作業者を制裁に処することが見ら れ,作業者は「ブルーカード」を恐怖の対象とみている。また,標準作業にチ ェックポイントを付加して改訂しそれを遵守することが不可欠であるが,標準 作業表の改訂は職長の技能不足,それを補佐すべきTC,任命役員であるprob-
lem solverの役割と技能が不安定で円滑ではない。
― 2 ―
5−2.A工場
(1)歴史
まず,現状に至る歴史を瞥見したい。主として組立工場で説明しよう。
(1)−1.1970年代までの状況
インタビュー記録を紹介しよう。70年代を彷彿とさせる印象的な説明であ る。
質問「大昔,例えば1970年代でよいが,当時は品質問題はどのように処 理していたのか。通常の説明は組立のラインの最終工程に検査員Auditorが いるとなっているが。」答え「そうだ。正しい。」質問「最終工程のAuditor の発見した不良情報は現場にどのようにフィードバックされていたのか。」
答え「うーん,それは通常はエンジニアーに任される。エンジニアーに情報 が伝えられてエンジニアーが処理する。生産労働者とは全く無関係であっ た。」質問「全く関係なかったのか。」答え「全くない。通常エンジニアーが 職場にやってきて,労働者にどうするかを伝えるのだが。その際に労働者か らの質問やコメントには全く関心を示さなかった。」質問「労働者が何か質 問すれば,エンジニアーは答えるのか。」答え「質問をすることはよくない ことだった。話し合いdiscussionはあまり良くないことだったし,良い結果 も生まなかった。」質問「どうして。」答え「エンジニアーは自分らの権威に 何びとも挑戦することを嫌っていたからだ。大抵のエンジニアーはそうだっ た。中には良い人もいたけれど,大部分は傲慢arrogantであった。」
組立ラインの最終工程に検査員(auditor)がいて,engineerにフィードバッ クする。検査員は生産現場の組合員ではなく,品質課の組合員であった。engi- neerは彼らで対策を講じて作業者とは話し合わない。engineerが職場に来て命 令する。その際,作業者の質問は「よくないことだ」と見なされていた。engi-
― 3 ―
neerは自らの権威に挑戦されることを嫌い,多数は傲慢で(arrogant)作業者 の質問に答えたがらなかった。フォーディズム的管理の特徴は技術者志向(en- gineer directed)が強く,生産現場は定常業務を遂行するだけの組織であった ことをよく示している。
(1)−2.1980年代の変化
1980年代に多少の変化が見られる。
1985年にstatistical process control(SPC)という職務が設定され,これに生 産現場の組合員が配置された。この職務への任命はレジュメの提出,審査後,
デミング等の品質管理と統計学の座学を義務づけられた。先任権での配置では なかった。
質問「このSPCは組合員か。」答え「そうだ。この設定が変化の始まりで ある。エンジニアー達はこのSPCの意見に耳を傾け始めた。SPCは現場の 品質不良のデータ収集に現場で動いていたが,しばしばエンジニアーも特定 の問題についてSPCに相談するようになった。塗装工場が特に顕著で,そ の次が車体工場であった。組立工場はそうでもなかったが。」質問「SPCが 設定されたのはいつか。」答え「1985年だ。彼らは職場のミーティングに参 加していた。当時,従業員参加ミーティングEmployee Participation Group Meeting(略称EPG meeting)と呼ばれていた会議である。(62))」質問「品質 不良対策の中で,標準作業表(BPP)(63)に落とし込まなくてはならないと思 うが,当時どうしていたのか。」答え「1985年時点ではBPP はなかった。
それは90年代の初期に導入されたものだ。」質問「そうすると,単に作業者 にこういうふうにせよというだけになるのか。」答え「そうだ。SPCが現場 に行ってデータを集めて,おそらく,SPCは塗装で言えばエンジニアーに どこそこに汚れがあると伝えて,エンジニアーがそれを直すということだ。
職長へのフィードバックはない。」
― 4 ―
このSPCは品質不良のデータ収集にあたった。塗装工場や車体工場ではen-
gineerが特定の品質問題でこのSPCに相談するケースが出始めた。この時期
日本へのキャッチアップとして始められた参加型職場改革の一環としてEPG
meetingにSPCも参加した。生産現場の品質への取り組みの萌芽である。だ
が,生産現場にきちんとフィードバックされる仕組みは上述のように存在しな かった。
(1)−3.1990年代の変化
1990年代に入り,品質問題を取り扱うQuality Meeting(表11のQuality Coun- cilとは別の会議)に組合代表1名(任命役員のQuality Network Representa-
tive)が参加するようになった。しかし,労使の対立から2000年代以降は組合
代表は参加しなくなっている。
この経営のみのQuality Meetingは,品質課(Customer Satisfaction)のマネ ジャーと工場側の経営陣(Plant Managerと3人のArea manager。Superintendent は議題により参加。)とから構成される。
現在は表11のQuality Councilの一議題としても品質問題が協議される。
だが,品質は現場の問題である。現場はどうなっているのか。
(2)現状の仕組み
現状の仕組みを理解する上で重要な事項は,ライン中途の検査工程(Verifi-
cation Station=以下VS)の設置,「ブルー・カード」と呼ばれる不良のチェッ
ク表の運用,Problem Solversの活用である。
(2)−1.VSの設置
組立ラインの最終工程であるAuditの他に,ラインの中途に検査工程(Veri- fication Station=以下VS)を置いた。組立で6工程である。車体と塗装は各1 工程である。
― 5 ―
質問「VSを導入した背景は何か。」答え「それまではラインの最終工程 で全てが明るみに出るという状況であった。導入の理由は不良品を最終工程 に至る前につかまえておけば,最終工程で発見してその補正をするのにいっ たん車を分解してまた組み立てるという必要がなくなるというものであっ た。」
質問「組立の場合はVSのイメージはつかみやすいが,車体や塗装工場で はVSはどこに設定するのか。」答え「いずれも工程の最終ラインだ。車体 で言えば,Metal Finisherが検査し,おそらくそこである程度不良品を発見 するだろう。その直後の工程にVSを置き,全ての溶接をチェックする。」
質問「そうすると,最終工程での従来の検査が入念になったということで,
組立のようなライン中途でのチェックのような大きな変化ではないと考えて よいか。」答え「そうだ,大きな変化ではない。我々の理解では変化は,従 来は検査はMetal Finisherで車体課の組合員であったのが,VS の導入によ ってその工程担当者が品質課(の組合員)になったことである。」質問「ど うしてそうなったのか。」答え「職場労働者を信頼できないということだ。
生産台数を達成しようとすれば生産職場は検査の者に大目に見ろgo easyと 言う。」質問「よく飲み込めないが。」答え「検査基準を緩めるということ だ。塗装のほうが説明しやすい。塗装に汚れがあったときには修復場に搬送 するはずのものを,生産量を達成しようとして,塗装職場の仲間である検査 員はOKと判断する。」
VSの担当者は,組立工場も生産職場の作業者ではなくて,品質課の作業者 であり組合員である。したがって,職場のチーム組織の中でこのVS工程はロ
−テーションからはずれている。職場労働者のほうが生産工程を知悉している ので,本来であればVSは職場のローテーションの対象にすべきであろうが,
そのような風土にこの時点ではなっていない。
これにより品質課の規模が大きくなったという。前掲組織図の品質課(Cus- tomer Satisfaction)の検査inspectionのグループがこれにあたる。
― 6 ―
(2)−2.「ブルー・カード」の運用
もう一つの工夫は「ブルー・カード」(以下 BCと略記)と呼ばれる不良品 のチェック表の導入である。この運用は以下のヒアリングの通りである。
質問「BCは誰が記入し,どこに提出されるのか。」答え「BCは二つの場 所から発出される。一つは不良を発見した最終工程のAuditからであり,も う一つは同じく不良を発見したVS からである。」質問「誰が記入するの か。」答え「通常はこうなる。VSの作業者が不良箇所を発見すると,VSが 設定されている職場のSupervisorにVSの作業者が連絡し,そのSupervisor がBCに記入する。最終工程のAuditorは自らBCに記入するケースが多 い。いずれのBCも不良の発生した職場のSupervisorに回付される。」
質問「BCを受け取ったSupervisor はどのような行動をとるのか。」答え
「うん。理想を言えば,Supervisorは職場に行って,そこのTC(チーム・コ ーディネーター)に話して問題処理をする。そこではまず応急処置Contain- mentがなされ,さらに根本原因Root causesの究明と再発防止策の追求がな される。」質問「その後 BCはどうなるのか。」答え「翌日,通常24時間以 内にSupervisorはBCに記載された不良についての対策をQuality Meeting に回答しなくてはならない。Quality Meetingは毎日開催されるのでそこに出 席して経営に問題の発生状況や再発防止策を報告する,ということにな る。」
BCには,不良の内容,発見した場所,不良発生の工程,発生原因の特定,
応急措置の内容,再発防止策が記載される。これらは問題発生箇所のSupervi- sorが記入する。記入されたBCは事業所品質課所属で工場に出向いている Process Control Manager(Supervisorより一階層上の職務ランク)が管理し,事 業所全体の視点から追加的な情報を記載し,Quality Meetingに付議される。
Supervisor が記入すべき事項が正確に遺漏なく記録されるために,7つのチ
ェック項目が「標準問題解決シート」Standardized Problem Solving Worksheet
― 7 ―
という名称でBCの裏面に記載されている。
その概要は次の通りである。
1.正しい作業手順であったか。
・作業者はきちんと訓練をうけていたか。
・標準作業表BPPに基づいて作業をしていたか。
・作業者は問題を誰にどのように伝達すべきかを知っていたか。
・アンドンは作動していたか。
・検査員(VSまたはAuditor)は検査方法,検査基準を知っていたか。
2.正しい工具,機械を使用していたか。
・機械装置は正常で,予防保全を計画通りなしていたか。交換は予定通 り実行していたか。
・機械はアンドンとの接続が正しくなされていたか。ポカよけは作動し ていたか。
3.部品の移動は正しかったか。
・部品搭載の箱の番号は正しかったか。
・部品番号は部品箱の番号と一致していたか。
・箱の中に別の部品が混入していなかったか。
4.部品は適切であったか。
5.作業方法,生産手順の改善。
6.部品の改善。
・部品の設計変更は必要か。
・追加部品の設計の必要はあるか。
7.複合的問題
(2)−3.Problem Solversの活用
現場で品質管理を行うということ自体が変革である。その目立った担当者 は,上記の説明から旧来からの最終工程に配置されるAuditorに加えて,VS の作業者,職長,TC(チームコーディネーター)である。これらに加えて,
― 8 ―
ローカル任命役員であるProblem Solversの役割も無視できない。
Problem Solversは組立工場では,BC(ブルーカード)の管理にあたるProc-
ess Control Managerと同じ事務所に机があり,通常は最終ラインの付近にい
て,品質不良の発生工程に直行し問題処理にあたる。また,Process Control Man- agerのBCに関わる事務を手伝い品質不良のデータのコンピューターへのイ ンプット,BCの職長への迅速な回付の補助を行っている。
(2)−4.その他
品質不良には部品それ自体に原因があることも多い。部品の適切性,改善を 現場での不良の発生を契機に検討し実施することが欠かせない。先の「標準問 題解決シート」の第4項と6項がこれに該当する。
この担当者は,ここでも組立を例にとれば,品質課のTrim Supervisorと組 立工場に配属されているTrim Engineers達である。この人々が部品の欠陥の処 理と協力会社での改善の話し合いにあたる。
また,消費者からの品質に関する苦情を現場にフィードバックするのは,デ トロイトに立地するTechnical Centerに所属しているReliability Engineersの役 割である。
このように,品質問題は工場内部にとどまらず,協力会社,販売店・消費者 と広がりがある。しかし,部品の不具合ひとつをとっても,生産の現場で不良 を発見することが厳格になされていることが出発点である。また,消費者の要 望や苦情を,生産に翻訳し,個々の作業に具体化することが終着点である。つ まり,生産現場での厳格な品質管理が協力会社,エンジニアリング,ディーラ ー・消費者との結節点をなしている。そこに抜かりがあると全ての仕組みは作 動しない。
(2)−5.標準作業表
そうした品質管理の集約点が標準作業の遂行であり,品質不良の再発防止を 織り込んだ標準作業の改訂である。この標準作業の管理上の表現物は標準作業
― 9 ―
表である。この事業所ではBPPと呼称していることは上述した。
第4章の方針管理の記述との重複をいとわず,このBPPへの品質の落とし 込みが枢要点であることを確認したい。ローカル協約で作業チーム及び一般作 業者の職責は次のように規定されている。
作業チームは品質に責任を持つ。「この責任には,就業前にも就業中も以下 の確認を行うこと。製品品質,工具の良好な状態,アンドンの作動。」また,
BPPとライン停止コードPull Systemに責任を負う。
個々の作業者は「BPPに従った作業の遂行を基本にしつつ,BPPの改訂に 協力するassists in development of BPP charts」。
そしてチーム組織の牽引役であるTCは,品質問題処理の全てに責任を負わ されているのみならず,BPPについて次の責任を負うとローカル協約には明 記されている(p. 65)。「チーム内の要素作業山積み表Visual Line Balance Wall を維持・改訂し,チーム内の要素作業のリバランシングを行う。」要素作業山 積み表はBPPと同義である。
したがって,あるべき姿としてはTCが作業者の協力を得ながら品質不良対 策としてのBPPの改訂にあたるということになる。
(2)−6.要約
以上を要するに,AuditもしくはVS で発見された不良はBC に記入され る。BCは職長に回付され,職長は現場での応急措置と再発防止策を講ずる。
他方,BCは集約され,毎日開催されるQuality Meetingで取り上げられ,状況 報告と技術的視点も加味されて対策が講じられる。この対策の現場へのフィー ドバックはBPPの励行,ライン停止コードの使用を前提とした品質に留意し た標準作業の遂行と再発防止を防ぐためのBPPの改訂である。
(3)軋轢
このようにVS, BC, BPP により品質不良を防止する仕掛けは作られてい る。だが,上述したように,職長の技能的問題や一般作業者,TC(チームコ
―10 ―
ーディネーター)らのキャリア形成が体系的でないことのために,事態は円滑 に進行しない。
その様相はどうなっているのか。先に職長の箇所で紹介したが重要であるの で再掲したい。
質問「VSで発見された不良がBCに記載され,不良の発見された職場の 職長に回付されるが,職長はどうするのか。」答え「職長は不良原因を,通 常,作業者のミスであるとする。いつもうそうだとは言えないが,作業者の 責任にするのが一番簡単な方法だからだ。」質問「よくわからない。どうい うことだ。作業者の責任にするのは難しいのではないか。」答え「いや,職 長にとってはたやすいことだ。問題を解決せずに,また,何故か,何故かと 原因を追及する必要がないからだ。だから,こうなるのだ。職長がよく不良 を出す作業者を抱えていて,ある日にBCが発行されて,翌日もそれが続く となると,行って「おい,また明日もBCを発行されたら自宅待機だ」と言 う。」質問「自宅待機とは。」答え「口頭での譴責verbal warningをし,無給
での待機 suspensionを命ずるのだ,新工場ではそうはならないとは思う
が,旧工場ではそれが常態であった。だから,BCは作業者に恐怖心を植え 込むことになった。」
どうして,このような悲惨な職場になるのか。「Quality Meetingの場で,発 給されたすべてのBCが点検され,そこで職場からの対応策が提示されていな ければまずいことになる。工場長はArea Managerを叱責し,Area Managerは Superintendentを怒鳴りつけ,Superintendentは職長を叱る。」「そして職長が作 業者のミスと断定して自宅待機を命じたとなれば(改善策を示すこと無しに)
ことが収まるからだ。」しかし,それはしばしば労使紛争を呼び込む。「職長と 作業者が作業者のミスかどうかをめぐって口論になる。作業者は組合のCom-
mittee Personを呼ぶ。口論が無給での自宅待機にまで及んでいないときには
Committee Personはハラスメントの名目で職長を苦情処理にかける。さらに口
―11 ―
論がエスカレートして職長が無給での自宅待機を命じたとなれば,Committee
Personは復職と未払い賃金支給を求めて苦情処理に訴える。」
また,アンドンの活用にも疎漏が生じている。工程station間が22フィート に設定されていて,職長はだいたい4つのチームを管轄しており,サイクルタ イムは54秒で流れているので,アンドンが点滅しても該当する工程まで駆け つけるのに間に合わないことが多い。TCも端にいれば,80フィートくらいを 迅速に移動しなくてはならない。遅れることがある。そこでラインは停止す る。「そうすると,どうしたんだとなり,職場が悪い雰囲気となり,やがて停 止コードを引かなくなる」というのだ。
全てが悪いのではない。よきケースではどうなるのか。
答え「BCが職長に回付されて,職長はチームに行って,TC(チームコー ディネーター)と話しをする。作業者はローテーションをしているので,す でに品質不良のことはわかっていて,問題解決を始めているだろう。だか ら,チームの方から職長にどこが悪いかを説明し,職場の問題処理の用紙に すでに対策を書き込んでいるだろう。それに基づいて職長はBCに対策を記 入し,Superintendentを通じてQuality Meetingで報告する。」だから,うま くいっているケースもあるのだ。そういうチームについては労使が合同でそ のチームを祝福する。例えば「このチームは過去7週間にわたって品質不良 を出していない。そこのTCにCertificateを授与し,小さなセレモニーをし てチームの写真をとる。次の7週も首尾よく進めば,ランチを一緒にする。
3回目にはTシャツを支給し,という具合だ。」「全部がここまで行かない けれど,確かに上手く行っている職場もある。」
うまく行っている職場や個々人への報酬は,すでに詳述してきたように,人 事考課がなく,昇進を通じたキャリアの体系を持たない職場組織であるから,
残る方策は,この紹介のようにチームスピリットの昂揚を促すことに制限され ていることは注目してよい。
―12 ―
それはともかく,品質に職場毎のむらがあってはならないのに,むらがある のだ。うまくいくかどうかは「誰が職長であり,また,誰がTCであるかによ る。あまりよくないTCもいるのだ。」内部労働市場の未発達とそこでの技能 形成の体系のないことが原因しているが,もはや繰り返すことはやめよう。
素朴に考えて,職場で品質不良を未然に防止し粛々と生産が進行するために は,作業の進め方の問題点が指摘され,その改善が正確に標準作業表BPPに 置き換えられることを着実に行い,作業者がBPPを遵守することが不可欠で ある。前述のように,ローカル協約で品質問題への取り組みについて,作業 者,TC,チームのBPPに関する責務が謳われているのはこのためである。
ところで,そのBPPの改訂は実際,誰が行っているのか。
質問「ローカル協約にBPPの規程があって,品質不良の対策を講じた 後,その対策はBPPに落とし込まれなくてはならないと考えてよいか。」答 え「そうだ。問題解決の結果 BPPの改訂が必要になるものがある。」質問
「誰が改訂するのか。」答え「興味深い質問だ。かつては,IEがその改訂の 全てを行っていた。それが変化しつつあり,TCが徐々にやるようになりつ つある。」質問「職長はしないのか。」答え「たまにはやることもある程度 だ。今は過渡期だと思う。確か1999年くらいから少しずつ変化している。
そして2003年にはBPPの書き換えの訓練をTCに実施した。(64)」
1970年代の技術者優位の工場経営からの変化は,いかにたどたどしいとは 言え,やはり大きいと言わざるを得ない。だが,「課によって違いが大きい」
と言う。
「組立課はTCが行っている。塗装課はIEがやっている。車体課はTCと IEの参加は半々くらいだ。」質問「その違いは生産技術の違いか,それとも 人々の性格の違いなのか。」答え「リーダーシップの違いだ。」質問「どうい う意味か。」答え「組立課には非常に開明的 progressiveなArea Manager が
―13 ―
いて,彼はチーム方式を強化しようと考えていた。TCがより多くの責任を 担うべきだと考えたのだ。塗装課は伝統的な経営者で責任や権限を持たせる ことを望まなかった。TCがBPPの改訂をきちんとできるとは信じなかっ た。やはりEngineerがすべきだと。車体課はそれらの中間だ。」
(4)簡単なまとめ
次のようなことが散発する。Supervisorが該当作業者を非難し,その工程で のブルーカードの発生が続くと無給での自宅待機を命ずる。作業者とsupervisor の口論になり,作業者は組合役員(committee person)を呼ぶ。そこで収まら なければ苦情処理手続きにかかる。もちろん,円滑なケースもあろう。supervi- sorがチームに行き,team coordinatorを交えてteam memberと話し合って問題 解決に当たることが期待もされている。team memberはチーム内の工程のロー テーションを行っているので,問題処理の技能も期待されている。だが,漓職 長が半数は外部人材であることに端的に表現される職場管理者としての技能の
欠落,滷auditおよびVSの担当者が品質課の組合員であって,生産ラインの
チームとはローテーションになっておらず,作業者の技能形成は体系化されて いないこと(65),澆職長の技量不足を代替すべきTCの技能も限定的であること など,によって円滑な進行への制度的保証がまことに脆弱である。
だが1970年代からの変化をたどれば,現場へのより多くの権限を付与し,
現場での品質問題への取り組みを強化する方向は明白である。
そうした現場志向の方向と脆弱な技能形成や報酬体系の不備との軋轢は大き く,まさに苦闘が続いている。
5−3.J 1工場
事態はA工場と比べれば,軋轢もなく日常茶飯事のように円滑に進行して いる。だからかえって,記述が難しい。状況をスケッチしよう。
組立の検査工程は各モジュールの最後の工程を検査工程として設置し,そこ には一人工をあてがっている。担当者はラインのユニット内の作業者である。
―14 ―
作業者(アソシエイトと呼ばれる)は多能工化訓練のプロセスでこの検査工程 にも習熟できるように意図されている。最終ライン以外の中途の検査工程の担 当者が品質課の責任であるA工場との違いに着目すべきである。
この検査工程ではもちろんのこと,普通の作業工程でも不具合が見つかる と,「おーい」と呼んで「工程スタッフ」がそれを確認して,工程をさかのぼ り応急措置をとる。応急措置がとれないものは「検査カード」に記入し,措置 がとれていない車を最終ラインで横に分けて,「工程スタッフ」が全部直す。
やや重い問題は「対策書」に記入し,毎日開催されている「品質熟成ミーティ ング」にかけられる。この「品質熟成ミーティング」は各工場(塗装,車体,
組立)の「品質スタッフ」が出席し,前日の不具合のデータ,対策を確認し振 り分けていく。
当事者は品質対策の簡潔な説明は難しいという。その理由は,「一人一人の 作業者が品質を保つ作業ができていて,何か異常があったときにすぐにフィー ドバックできるようになっていれば検査は本当は省ける」という事情の下で,
「品質の作り込み」の徹底が進むほど品質対策の多くは日常作業に吸収される からである。だから,「対策書」を通じて大きくはシステムの見直しや,小さ くは個々の作業標準表の見直しに至る対策は氷山の一角であって,大部分は職 場の「ミーティングで済ませてしまう」,より正確には「済ませてしまえる」
職場があるということが重要であろう。例を示そう。「人の変化(有給休暇で 工程の担当者が変わる)が品質に影響を一番もたらすんですね。そうすると朝 のミーティングで工程スタッフが検査工程の人に「今日はこの工程とここの工 程が変わっているよ,だからちょっとこの辺をよく見ておいてね」と,こうい う話しをするんですよ。」また,作業者レベルでも「一人3工程できるという ことは,前工程でやっていた自分の仕事はわかるから,ついていないと,「お い」とかとなるわけですね。そういう小さなところが品質を守っていくことに つながっている」というのである。
なお,上の話しに登場していない「品質スタッフ」は「品質熟成ミーティン グ」で「ユニット」に割り当てられた課題を推進していくこと(66),新機種の立
―15 ―
ち上げに際して生産技術のスタッフと話し合って品質面からの智恵を入れ込む ことに注力する。品質検査(工程)は「いい悪いをはじく」のに専念するのに 対して,「品質スタッフ」は「明日の品質を考える人」と言われているゆえん である。
5−4.J 2工場
基本的にはJ 1工場と類似している。車体,塗装,組立の各課の最終で検査 を行う(品質保証部の管轄)以外に,組立を例にとれば,工場のラインが4つ ほどの係に区切られており,その係の最後の工程を「チェックマン」の工程と して設置している。担当者は組立課,すなわち現場の作業者である(67)。
この「チェックマン」が不具合を発見すると,工長もしくは指導員を呼び,
彼らが応急措置をする。その上で,工長もしくは指導員は工程をさかのぼり発 生工程を特定して原因を探る是正する。他方,「チェックマン」は「アクショ ンカード」に記入し,上司に報告する。
このように「チェックマン」工程を軸に,軽易な問題は工長,指導員による 応急措置をとりながら生産は進行するが,やや重い問題は「持ち帰り会議」と 呼ばれている会議を毎日昼から開催し,前日の午後と当日の午前の問題の原因 追及と対策を打ち出す。この「持ち帰り会議」は日々の生産と品質の状況をチ ェックし速やかな行動をとるための会議で,生産課,品質保証課が事務局とな り,製造部各課の係長が参加する。この会議は,品質問題で言えば,係内で応 急措置でおさまりにくいほどの問題であり,係をまたがる問題,部品の問題,
技術的問題と組織間,協力会社との調整が必要になる。原因を追及し,アクシ ョンをとる。アクションをとる際に各組織の納得を取り付けなくてはならな い。しかも,その日のうちにアクションを固めなくてはならない。「長引くこ ともあり,どろどろしたところを」曖昧にせずに答えを出す。そういう真剣な 会議である。
この「持ち帰り会議」で固まったアクションは,「アクションカード」に記 載され,各係長は職場に持ち帰り,課長を交え工長らと相談して具体的な行動
―16 ―
に置き換える。
以上は,現場からの品質問題であるが,品質保証部からは販売,市場サイド からの品質要望が「持ち帰り会議」に付され同様に「アクションカード」に置 き換えられ職場にフィードバックされる。
こうした「持ち帰り会議」の結果は,製造部の部課長で構成される「推進会 議」に報告される。「推進会議」も毎朝1時間開催される。「持ち帰り会議」を 通じてのアクションが不備であれば,「推進会議」で当該課長は製造部長に
「何やっているんだ」という叱責を免れない。
しかし,基本中の基本は,作業者の定常業務それ自体に品質を作り込む仕掛 けが普通のこととして進行している有様である。この点はJ 1工場と全く同様 であり,A工場との本質的な差を生む点であろう。こういうことである。「チ ェックマン」が発見するのはやはり一部で,まず作業者個々人が例えば「この 部位にごみがないのか」というチェックポイントを「だいたい二つが限度」で あるが標準作業の中に含むようにしている。「各自が申請し,そこについては チェックマンはみないようにしている」というのである(68)。
6
章 能率管理と労使関係組立職場を念頭に置く。能率は,機械の稼働率と要員水準により決まる。
6−1.稼働率
(1)概要
A工場は生産職場で機械の稼働率管理を行っていない。管理責任は技術部 門である。保全は技術部門の管轄下にある。A工場の技術部門(保全はのぞ く)は非組合員であり,技術者が組織内の上位者であるという意識が強く,現 場との連携が困難である。
J 1工場は「ユニット」内に「保全スタッフ」「生産技術スタッフ」を配置し 職場で完結的に管理している。J 2工場も生産職場の管理事項である。
―17 ―
J 1工場は生産業務と生産技術業務はキャリアのルートが入職時点から分離 されず適性と希望に応じて相互乗り入れしている。他方J 2工場はキャリアル ートは異なる。生産業務は高卒,生産技術業務は大卒というように。日本では J 2が一般的であろう。それでも両者の連携は密であり,機械設備の設置され ている生産職場の業績として把握される。
(2)A工場
(2)−1.要約
機械の故障に,保全労働者が対応し,高度な問題は組立工場で言えば,trim
engineer等技術者が対応する。こうした技術的な仕組みはJ工場と大きな差が
あるわけではない。
だが,機械の稼働率について,生産職場に管理権限がないのが特徴的であ る。工場の方針管理の項目にresponsivenessという項目があるが,これは機械 の稼働率(machine uptime)を受け止める指標である。このresponsivenessと いう指標は,Plant quality councilの審議事項となるが,責任者は生産技術部門 の長(director of plant engineering)である。機械のトラブルは保全労働者(skilled
trades)が対処するのはJ工場と選ぶところはないが,以下にみるように,J
工場ではそれを生産職場のパフォーマンスとして把握し生産側の管理者の責任 にもなっているのに対して,A工場では生産職場(supervisor, superintendent)
でもなく,課(area manager:塗装工場,組立工場に対応)でもなく,事業所 レベル(plant manager)にいたってはじめて稼働率が管理項目に登場するとい う仕掛けである。
ここには,生産(production)と生産技術(engineering)との組織的乖離と それをしからしむる労働者とエンジニアーとの身分的格差意識を読み取ること ができる(69)。品質問題でもふれたように技術者志向の強さ=現場軽視の風土が 品質問題でも影を落としていたが,機械の稼働率対策でも同様である。だが,
品質問題以上に稼働率対策は生産サイドの軽視が色濃い。
以上が基本的なA工場の枠組みである。ここでやや立ち入って観察すべき
―18 ―
は,第一に,そもそも工場の管理指標として機械の稼働率がどの程度重視され ているのかである。第二には,技術部門と保全部門の稼働率対策の仕組みであ る。第三に,少ないとはいえ,生産職場での取り組みに変化はないのかであ る。
(2)−2.工場の管理指標における稼働率の位置
事業所全体の管理指標は前述したように「スコアーカード」に集約されてい る。稼働率は「スコアーカード」のResponsivenessという大項目中のSchedule Attainment to Planという小項目に示されるという。そこには,例えば2001年 の達成率はCラインで100.8%,Mラインで99.9% という数字が記載されて いる。2002年にはそれぞれ101.5%,103.5% という数字が並んでいる(70)。数 字の上からは問題がないのである。
そもそも,稼働率が生産計画に対する生産実績の達成率でとらえられるかと いう問題がここにはある。実際には次のようになっている。
質問「この生産実績の完璧な達成率は機械の停止がないということになる のか。」答え「実際にはラインは生産計画が前提としているライン・スピー ド以上に速く動かしているので仮に機械の停止がなければ生産実績の達成率
は105% とかになるようになっている。だから停止時間があっても100% の
達成が可能なようになっているのだ。」質問「残業をして生産計画を達成す るということもこの数字には入っているのか。」答え「そうだ。残業もする し,ライン・スピードも速くしているのだ。つまり,1時間に60台の生産 計画を実際には1時間に63台にライン・スピードを設定するということ だ。」質問「しかし,それでは作業負荷の問題になって労働組合は反対する のではないか。」答え「うーん,そこがちょっと込み入っているのだ。例え ば車体工場の場合,時間あたり70台の生産をし,さらに昼休みも生産を続 行して在庫Bankをためておく。そこで,何故労働組合が反対しないのかと いうことだが,そういう生産をして6時間半で8時間分を生産できれば,あ
―19 ―
とで休憩できるからだ。」質問「家に帰れるのか。」答え「帰れないがごろご ろsit aroundしていられる。」質問「それは一種の交渉bargainingというわ けか。」答え「そうだ,一種の交渉だ。勿論,品質に悪い影響が出る。そう いう生産が可能であったのも組立のラインの中途にも大きな在庫を抱えられ るライン設計になっていたからだ。」
あるいは次のような説明もされた。「生産計画は1台のサイクルタイムが 60秒で設定されているが,その内訳は,アンドンによる停止時間4秒,機 械の故障による停止時間が2秒となっている。だから,純粋な時間は1台54 秒で,54秒で生産が進んでいれば,スコアーカードでは108とかの達成率 に表現される。」また,質問「生産が遅れたら昼休み無しで働くというの は,労働組合の作業負荷に対する原則的態度と整合しない」との疑問に対し ては,「機械の停止で1時間遅れたとする。そうすると,職長は昼休みも働 いてくれ,午後の休憩もなしで働いてくれ(昼休みと午後の休憩を合わせて 50分になる(71)),働いてくれれば50% の割増賃金(プレミアム)を払うと 持ちかける。労働者は,故障中に1時間休憩をとっているし,プレミアムが つくので了解する。」(72)
このように,稼働率が生産実績の達成率に置き換えられていて,稼働率が管 理指標として純粋に拾い上げられていない。生産計画の達成の遅れは昼休みや 休憩時間の連続勤務により取り戻す。これは作業負荷の増大になるが,就業時 間の最後の方で「ごろごろできたり」「プレミアムがつく」という作業集団の メリットによってつじつまがあわされている。
(2)−3.技術部門と保全部門の稼働率対策
稼働率について生産職場が管理的責任を負っていないことを上述した。まず この点を確認しよう。
質問「稼働率に対する管理責任は生産職場ではなくて保全と考えてよい
―20 ―
か。」答え「生産計画に対して生産実績が追いつかない時期があった。それ は機械の故障による停止のためで,計画を達成するために残業をよくやった 時期があった。その時期は稼働率対策が強調され,保全部門が重視され た。」質問「そうすると,現場で責任を分有するのは保全の職長ということ か。」答え「そうだ。」質問「生産職場の職長ではなくて保全の職長というこ とか。」答え「まさにその通りだ。生産職場の職長は(機械の故障ではなく て,作業の遅れや品質不良のために点滅する)アンドンに責任を持つ。」
それでは,稼働率に責任を負う,技術部門と保全部門はどのような組織体制 と仕事の分担になっているのか。組織図(図6−1)をみると,生産技術・保全 部 門 Engineering and maintenance に は ,漓Dispatch Supervisor と 呼 ば れ る 人々,もう一つは滷Control Engineeringと呼ばれる人々がいる。
他方,現場には,例えば組立工場の艤装課General Assembly−Trimの組織図
(図2 − 1) を 見 る と ,Manufacturing Engineering(Acting Assistant Superinten- dent)の下に澆Trim Engineersと呼ばれる人々(5人),潺Manufacturing Coordi- nator,潸保全の職長Maintenance Supervisorが複数名いる。このMaintenance Su- pervisorの下に澁保全労働者の一群がいる。さらに,澀Capacity Assurance Coor-
dinatorがいる。これらの職種はどのような役割を担っているのだろうか。保
全の主力部隊は,当然澁であるが,それにしても,わかりにくい職種が多い。
図6−1 Engineering部門の組織
―21 ―
機械装置の稼働率対策を観察する場合,土日の集中保守点検と月から金曜日 の稼働中の故障への対応に区別する必要がある。
土日の集中保守点検は,滷のControl Engineerや潺のManufacturing Coordina- tor,潸保全の職長,澀のCapacity Assurance Coordinatorが日常的な観察した結 果に基づき(73),保全作業のプロジェクトの作業計画を滷Control Engineer が漓 のDispatch Supervisorに策定させる。澀のCapacity Assurance Coordinatorは保 全に必要な資材が準備されているかを確認手配する。他方,滷Control Engineer は潺のManufacturing Coordinatorに澁保全労働者の人員配置を策定させる。
「このプロジェクトには,5人の電気工electricians, 5人の鉛管工pipefitters, 5 人の機械工millwrightsといった具合に」である。
稼働中の故障については,漓のDispatch Supervisorは工場のコントロールル ームにいてパネルにロボットの不調等が表示されると,潺保全部門に連絡す る 。潺の Manufacturing Coordinator と潸保 全 の 職 長 Maintenance Supervisor は,故障の現場をみて,澁保全労働者と進め方を話し合って故障への対応をは かる。漓Dispatch Supervisorはこの故障対策の作業を記録logbookにとどめ,
処理の確認をする。したがって,Dispatch Supervisorは,いずれかと言えば保 全業務の事務管理的役割を担っていると言えよう。
上は稼働中の故障対応の作業計画である。さて,実際の故障への対応はどう か(74)。おそらく現場に潺の保全職長と澆のTrim Engineerが直行するだろう。
保全労働者で対応できないケースは,どうなるのか。「例えば組立で窓枠をは め込むロボットの故障では,まずTrim Engineerが現場に直行して,ロボット のプログラミングの問題だと判断すれば,Control Engineerを呼んで一緒に問 題解決にあたる。」同じ生産技術者でもControl Engineerはよりシステム設計 に専門性を持つということである。
保全の現場サイドの管理を見よう。保全の職長は,上記Dispatch Supervisor の作業計画に基づき保全労働者を指揮監督する。土日の集中的保全計画の前提 には,保全の職長が日常的な巡回Safety Tourで土日に保守点検すべき作業プ
―22 ―
ロジェクトを発見する業務がある。これをDispatch Supervisorに伝えDispatch
Supervisorがそのプロジェクトを計画化する。
なお,保全の職長からDispatch Supervisorへの昇進は通常はないという。Dis- patch Supervisorは大卒の資格はもっているが,「その仕事は大してprestigious ではない。経営の中で一番低いグレードだ」という。技術的というより事務的 な仕事であるからであろう。保全の職長は,むしろ,「工学の学位をもってい れば,Control EngineerやTrim Engineerに昇進する」という。
(2)−4.保全労働者
保全労働者は同じUAWの組合員であるが,賃率も異なる。この事業所の 職種別人員と賃率は下表の通りである。2003年11月現在である。
生産労働者が全員一律の1時間あたり26.16ドルであったから,保全労働者 の賃率は13−14% 高い。
この保全労働者の組織は,電気工Electrician,機械工Millwright,鉛管工Pipe-
fitter,機械工作工Tool Makerが車体,塗装,組立の全工場をまたがって管轄
し,この4つの職種毎に別々の集団を形成して詰め所も別々の箇所にあったと いう。
保全労働についてもチーム方式が協約に謳われていたが,機動的な運用から はほど遠かった。それぞれのチームが職種別に構成され,チームのサイズが大
表6−1 保全労働者の職種と賃率
職 種 人員 賃率(1時間あたり:ドル)
Auto, Truck and Trailer Repair Mechanic Carpenter
Electrician Millwright Pipefitter
Stationary Engineer Tinsmith
Tool Maker
4 4 250 75 75 6 10 15
29.60 29.60 29.90 29.60 29.60 29.76 29.60 29.92
―23 ―
きすぎた。職種別に詰め所に待機していて,詰め所には部品や道具が詰め込ま れていて乱雑であった。「正直に言うが,寝台も置かれていた」という(75)。
そこでは周知のように職種毎の縄張りDemarcationの弊害も日常茶飯であっ た。
質問「それでは故障の処理に時間がかかるのではないか。」答え「それは ひどいものだった。例えば,電球が切れたとき,電気工を呼ぶ。電気工が来 て 電球が焼け切れている。だが,かさは取り外せない。機械工だ。 機械 工を無線ラジオで呼び出しておいて,電気工はコーヒーを飲みに戻る。機械 工が来て, やれやれ,かさを外さにゃならん。 機械工がさらによく見る と, コードのパイプが駄目になっている。かさを外す前にパイプを直さな くてはならん。 それで鉛管工を呼ぶ。こんな冗談をよく言っていたもの だ。実際,これに近い状況をしょっちゅうみてきた。」
新工場では次のように改めることが話し合われている。塗装工場と組立工場 はそれぞれ各職種が集まって一つのチームを作り,チーム内で工場内の地域分 担を決めて対応する。車体工場はロボットの数が多く,保全労働者の必要人数 も多いので,上記4つの職種毎のチームを作り故障の都度各チームから必要な 人数を呼び出す。車体工場は職種別のチームであるが,事業所全体の組織でな くなるのでサイズは小さくなる。また,いずれの工場も部品置き場を工場の中 心部に置き,都度詰め所に戻らなくてよいようにするという。
いちいち詰め所に部品や道具を取りに戻ることや職種の縄張りによる保全労 働の非能率はFeatherbeddingと呼ばれていたが,これを直そうというのであ る。新工場では「保全労働者にも永続的な改善の心 continuous improvement
mindsetをもってもらい,生産を支えるようにさせたい」という。
なお,ポカよけ装置error proofing devicesはチームコーディネーターがその 設置箇所の特定等の提案をするが,装置が複雑であればControl Engineerが製 図して保全労働者が作製する。
―24 ―
(2)−5.生産現場の関与
すでに4.方針管理と労使関係,の章でも言及したように,生産労働者の側
からの保全に対する協力的な働き方がローカル協約にも謳われていた。一般作 業者も「適切な訓練を受けた後,予防保全(Production Maintenance Partnership
=PMP)を実施する」ことが責任として明記されている。当然,生産労働者の チームとしても「予防保全」が責務となる。また,チーム・コーディネーター
(TC)も「予防保全の計画通りの実施の督励」が責務となっている。
ローカル協約にはPMPの目的として「機械の故障を減少させて機械の稼働 効率を高めること,生産労働者,保全労働者,生産技術者,監督者の参加によ り一つのチームとして稼働率対策をなすこと」が謳われている。PMPが注力 するロスは次の六つである。1.装置の故障,2.小停止,3.生産量の減少,
4.稼働スピードの低下,5.工程内の不良品,6.段取り替え,調整。
PMPは現場の生産労働者の行う機械の故障の予防的措置である。行うべき 予防的措置のチェックリストを作成し,それに基づき行う。何を行うのか。ロ ーカル協約には次の事柄が例示されている。「目視検査,液体の流量や圧力の 計器の読み取り,清掃,簡単な注油,問題の保全部門への報告。」(ローカル協
約p. 75)がそれである。
具体的にどのようにPMPが始められたのか。答え「まずPMPのワーク ショップ=チームを作った。このチームは第一シフトと第二シフトのTC,
希望のあった少数の作業者,保全労働者の一部,保全の職長,及び一人の助 言者からなっていた。」質問「助言者とは。」答え「このPMPをよくわかっ ている人間で,必ずしも保全の人間ではない。このチームが一つ一つ機械を 診て,それぞれについて予防保全で何をすべきか,保全との業務分担をどう すべきか,等をすべて決めていった。」「各機械にはプラカードが着けられて いて,シフトの開始前にすべきことが明示されている。」
質問「PMPによって何が変わったと思うのか。」答え「生産労働者は機械 の稼働率について責任を持つようになった。以前は彼らは計器が読み取れな
―25 ―
かった。今は計器が読み取れるので,機械の故障に至る前に保全に連絡がで きるようになった。」
このように,生産と保全の協力体制がローカル協約で合意され,生産労働者 もチェックリストにしたがって,「油圧等の計器のチェック,設備の清掃,簡 単な注油,異常の速やかな保全への連絡」を行うようになりつつある。このた めに,指導チームを作り,指導チームが職場毎設備毎にチェックリストを作成 して生産労働者が上記の予防保全ができるように指導した。
しかし,その協力体制が真実のものであるかは疑わしい。この点を最もあざ やかに伝えるのは,機械が停止したときに工程作業者は「クロスワード」パズ ルを行っている風景である。
(3)J 1工場
上述したようにJ 1工場の「ユニット」は,「ユニット」単位でSMQCDの 完結的なパフォーマンスが把握できる仕組みとなっている。機械の稼働率も直
接C=コストとD=デリバリーに影響するから,「ユニット」内部でその対応
にあたる「保全スタッフ」と「生産技術スタッフ」が各1名配属されている。
設備に異常が起きると設備は停止し,工程作業者は「おーい」と声を上げ る。それは同時に保全の集中管理室のインディケーターに表示されるので,そ の担当者が各「ユニット」の「保全スタッフ」に無線でどこの設備に急行する ように連絡する。そこで復旧に当たるが,仮に復旧が不可能なおおごとの場合 には「生産技術スタッフ」が駆けつける。
こうした,「ユニット」単位での稼働率対策はA工場と全く対照的な現場重 視の風土がしからしめたと断言できる。こういうことである。第一に,「生産 技術スタッフ」も「製造技術スタッフ」も「生産技術ルーム」に通常は常駐 し,また「保全スタッフ」も集中管理室に常駐しているけれど,組織上「ユニ ットリーダー」の管轄下に置くことにより,「ユニットリーダー」の裁量でこ れら「スタッフ」を異動させることができるようになった(76)。生産現場の長の
―26 ―
権限を強化した。そうでなくては「ユニットリーダー」が「社長みたいな者」
にはなりえない。第二に,こうした,「スタッフ」的機能は,旧来は課(=組 立工場)に生産現場とは別組織で「ぶらさがって」いたものを,あえて生産現 場の「ユニット」に分属させると,集中による効率を犠牲にする恨みもなきに しもあらずであるが,「現場にルームから出なくなる」という心性を克服する ことにより重い価値を置いたということである(77)。第三に,最も重要な基盤で あるが,J 1工場では(正確には会社が)既述したように,生産,保全,生産 技術の職種を学歴別に管理していないことである。そういう文化だという。
個々人の能力と意欲次第だというのである(78)。
(4)J 2工場
現場の長が機械の稼働率指標について責任を負っていることはJ 1工場と同 様でありA工場と異なる。工場全体の「アクションプラン」は原価低減(台 あたり原価削減),同期生産の拡張とレベルアップ(設備稼働率向上等)の目 標達成が生産現場に課せられるからである。
ただし,J 1工場との違いもある。生産職場と保全,生産技術は別組織にな っている。前掲図2−1の工務部の工務課に保全と生産技術のエンジニアがい る(79)。数年前までは保全作業者も生産技術者も製造部の各課に配属されていた が,それを現状の別組織に変更した。「現場に近いと生産優先になってしまい 本来業務がおろそかになる」という傾向が見られたためであるという。
J 1工場と逆方向の組織変更である。
6−2.要員水準漓−量産に先だっての要員設定−
要員水準は,第一に新車・モデルチェンジ車の量産に先だっての要員設定 と,第二に量産後の「効率化」による要員水準の低減とに区分される。
(1)A工場
ここまでお読みいただいた読者には,新車立ち上げ時の要員設定について生
―27 ―
産労働者もしくは現場サイドの意見が反映される余地は少なかろうと予測でき るだろう。
しかし,ここにも格闘の歴史がある。
(1)−1.1970年代から80年代の状況
実際,1970年代から80年代を通じて生産労働者の発言の余地は乏しかっ た。それが,90年代に入って少しずつ変化する。
質問「伝統的には新しい車種のスタート時に現場の作業者が立ち上げに参 加することはなかったのか。」答え「うん,新工場では参加が飛躍的に増加 しているが,かつてはそれほどでもなかった。一つの課から一人が参加して いた。車体,塗装,組立から一人ずつがエンジニアと一緒に立ち上げに加わ る。だが問題は作業工程が複雑でとうてい一人では無理だということだ。」
この各課1名の立ち上げへの参加はようやく90年代に入って,立ち上げ時 の生産と技術の協力チームProduct Development Team(=PDT)が実施されて からのことである。
それ以前は立ち上げ時の工程設計はすべてIndustrial Engineer(=IE)が行 っていた。次項で述べる量産後の工数低減方策も含めて,IEがすべて要員水 準を決めていた。
その当時の状況。「IEがストップウォッチを持って現場に来る。IEは工 場の柱に隠れて労働者に気付かれないようにしている。気付いた労働者は仲 間に伝える。 IEが来ている,ストップウォッチを持っているぞ と。そう なると,労働者は仕事をゆっくり目に進める。」
(1)−2.1990年代の試み
このIEが専一的に工程編成を行っていた仕組みは,日本自動車企業の台頭
―28 ―
によって変化を余儀なくされた。
「MITの調査報告書(80)をみて,経営者も おー,トヨタはこんなに有利な のだ。彼らは新車開発に1年半しかかけていないのか と。これにより目を 開かれた。 我々は3年もかけている と。こんなことから変化が始まっ た。」
そこで,90年代になって,上記のPDTをスタートさせた。
新車立ち上げ時に,量産体制に移行する前に労働者の習熟を図るために,事 業所内にあるOperator Support Centerに標準作業表をわかりやすく壁に貼りだ している。Visual Line Balance Wall elementsと呼ばれている。PDTはIndustrial Engineerと組合員とがチームをつくってこのVisual Line Balance Wall elements を作成する。PDT に参加する組合員は選抜による。レジュメを提出し選抜さ れるので,「通常非常に熟練度の高い作業者である」という(81)。
しかし,わずかに生産労働者が通常時各課1名ずつ,立ち上げ時に組立課か ら4人,塗装課と車体課から各2名という限られた参加であった。
質問「各課1名では十分ではないということをローカルは工場経営に訴え なかったのか。」答え「組合は人員の増加を要求した。交渉をして,一番多 いときには確か10から15名がPDTに参加していたこともある。だが,経 営はコスト増を恐れて各課1名に固執した。それと,この工場は,GMの他 の工場に比較してかなりコンスタントに新車の計画が承認されていたので,
われわれは上手くやっているのだ,余分な人をつける必要はない という のが,経営の本音だった。」
この問題については,今ひとつ,やっかいな労使関係が関係している。こ のPDTへの生産労働者の参加数には「時にゲームが介在する。例えば6月 にその数を増やして,12月にはその数を職場に戻して,翌1月になると再 びPDTに戻すというやり方だ。これは適正要員管理目標を年末に達成する
―29 ―
ためのゲームだ。」
労働組合は「作業者の能力開発の面でも,通常生産における作業負荷の面で も」PDT へのより多くの人員の投入を要求したが,経営は「人を出すとコス トがかかる」という理由から抵抗した。上述したように,コストを含めた方針 管理での管理サイクルが不備であるにもかかわらず,当面のコストについては かたくなであるという管理の非体系性をうかがうことができる。
このような事情で,立ち上げ時の要員設定=作業負荷の決定に生産労働者の 関与はまことにたどたどしい。それでも,このPDTによる変化はこの工場に とって意義深かったと言わざるを得ない。
1970年代から80年代を通じて,Industrial Engineerと生産労働者とは疎遠な 関係もしくは敵愾心の関係であったが,「PDTの導入によって徐々に変化し た」という。「参加した労働者は立ち上げ時にIEと一緒に仕事をして知り合 いになる。」そうなると,PDT参加労働者は知り合いのIEを職場に連れてき て,(標準時間の測定や改善のための作業研究のために時間測定をするにあた っても),職場労働者に紹介して,「彼はいい人だ,君にいくつかの質問をする が,心配しなくていいよ」というような関係が始まった。
とはいえ,industrial engineerが机上で計算して,supervisor と話し合った 後,supervisorが職場で実施するという形であったために,結果はしばしば
「失敗disaster」であった。
(1)−3.新工場での革新
しかし,A工場は2005年にいったん閉鎖され,2006年秋から新工場での操 業開始となるが,新A工場では新車立ち上げに伴って100人以上の生産労働 者をPDTに投入すると言う。また,開発には,上に述べた前段のプロトタイ プの製作段階があるが,新A工場ではTeam Coordinator とSupervisor が毎 日,それが行われているTechnical Centerに出勤し問題点を指摘している。問 題点をエンジニアが整理する。
―30 ―
さらに,同じTechnical Centerに出向いているTeam Coordinatorは標準作業 表を作成していて試行しながら改訂を重ねているという。
この面での革新が急である。
(2)J 1工場
この工場はラインの多機種の混流生産が著しく進化しているので,新機種の 立ち上げに際して他既存機種の組立との同期化をはかる工夫が複雑である(82)。 だが,基本は以下のごとくである。新機種の導入に伴い,現場の「工程トレー ナー」を中心に新機種チームを編成し「仕組み場」で実際に作業を行い,「こ れなら何秒のうちに収まるなという」感触を前提に,各作業者に工程を割り当 てて,「仕組み場」でラインを動かさずに80% ぐらいまで習熟をあげる。これ を「静的習熟」と現場では呼んでいる。2週間程度で全員の「静的習熟」をは かり,その後は実際の生産ラインでタクトをゆるめて残りの20% の習熟を図 る。
A工場と比べて,エンジニアではなくて,現場のベテラン(=「工程トレー ナー」)の経験と知識がすべてである。
(3)J 2工場
標準時間は生産技術のエンジニアが設定するが,それで本当に適切なのかは 現場が深く関与している。組立でいうと,製造各課の工長,指導員以上がプロ ジェクトを編成して課の人員の半数くらいがプロジェクトに入る。それでも通 常生産は維持しなくてはならないからライン側での人員のやりくりが大変であ る。だが,経営はプロジェクトの人員を減らせということはない。新車立ち上 げのプロジェクトの予算として会社がそれを織り込んでおり,会社は「現場の 智恵が入らないとだめだと」考える。その考えは動かない。「組立で何十人 も,がっと入らないと,その段階では車体の穴とか細かな調整にしかならない のだけれど,それをどうやったら不具合がでないんだとか,どうやったら着き やすいんだといったところはそこでやらないと」というのである(83)。
―31 ―
6−3.要員水準滷−量産後の効率化−
立ち上げ時に設定された要員水準を,量産体制に入ってさらに低減すること ができれば効率化になる。もちろん,機械化・自動化投資を行って要員を減ず ることも効率化であるが,投資といえるほどの投資をせずに,小さな工夫の積 み重ねで要員を減ずることが可能な場合には工場の効率化は投資費用が少ない のでいっそう効果が大きい。だが,労使関係の違いは,この工数低減の領域で 最も鋭く現れるはずである。
(1)概要
A工場は機械化を伴わない,純粋の工数低減を昔から追求していたとい う。だが,組合は全国協約のproduction standardsに関する条項に基づき,作 業負荷が増大すると苦情処理手続きに付託し,事実上労使紛争の原因となって きた。また,工数低減の発案者はIndustrial engineerであり,どうしても机上 の案にとどまり,その強制は現場の混乱を招いていた。90年代に入り,「カイ ゼン」が導入されたが,組合は作業が容易になったかどうかで厳しく規制して いる。また,A工場では工場長,課長クラスのボーナスに,この工数低減の 目標数値達成度合いが直接反映する仕組みがあり,達成率の「ごまかし」を巡 って労使の緊張を毎年,年末に向けて高めている。
J工場でも純粋な工数低減はかなり余地が狭まっているが,その推進が職場 の監督者の重要な職責であり,大きな労使問題になるケースはない(84)。
(2)A工場
(2)−1.制度的前提
スコアーカードとの関連
量産後の効率化も工場の業績指標であるスコアーカードに表現されるはずで ある。
コストの大項目中に人員レベル(時間給労働者)Staffing Levels-Hourlyの目
―32 ―