高等学校における参加体験型人権学習の効果に関する実証的研究
‑内的葛藤による自己変容を目指す学習フ。ログラムの実践を通して‑
学 校 教 育 専 攻 教 育 臨 床 コ ー ス 大 西 雅 人
1 ,研究の背景と目的
これまでの人権学習では、生徒の 自己肯定 感"や効力感を育成することなしに、被差別の 立場に置かれている者への共感が求められてき た。そして、具体的な人権諸課題を扱う「人権 についての教育」が、教師の一方的な知識伝達 という「重良行型教育」の形態で実施されてきたc
そこでは、人権についての学習をする上で、
欠かすことのできない「人権を通じての教育」
としづ、生徒の人権を尊重した学びが十分考慮 されてこなかったO
これまでの人権学習の中で、生徒たちは差別 が許されるべきではないことを、頭では理解し ていながら他人事と捉え、当事者意識は欠如し ていた。そのため、差別をなくすための具体的 な行動を起こそうとしづ意識を、生徒たちはも ち得ていなかったと考えられる。
そこで、本研究においては、従来の「銀行型 教育」とは対極に位置する、 「参加体験型学習J の手法を用いた実践授業を 「人権を通じての 教育jという点に留意して展開した。
その上で、 「参加体験型学習」の手法を用い た人権学習は、①高校生の人権学習に対するイ メージや意識の変化をもたらすのか、② 他者 の心情理解"を促進できるのか、③ 行動化へ の意欲"につながる 自己変容"をもたらすの かということについて検証することを目的とし た。
指導教官 浅 野 弘 嗣 吉 井 健 治
2,方法
支橡はA県B高等学校第2学年で、 「現代社 会」選択者12名(男子9名・女子3名)を対象群
とし、それ以外の生徒を統制群とした。
対象群の生徒に対しては、テーマ学習の形態 で「現代社会の諸課題一わたしたちと人権問題
‑Jとし、う単元名を設定し、グループ。で、の活動 を中心にした参加体験型の授業を、プログラム に従って、2002年4月15日から5月30日まで、
15時間実施した口授業前後には4件法からなる
「人権学習質問紙」調査を実施し、 「参加体験 型学習」の手法を用いた実関受業が、高校生に どのような効果をもたらすのかについて測定し たc
また、生徒が授業をどう捉えているのかとい うことを欄市が知り、授業改善に向けての 1つ の方策にするということを念頭に置き、振り返 りシートによる授業評価を授業の区切りとなる 時間に 11回行った。研究のデザインは下図のよ
うになっている。
対 象 群(12名) [ 統 制 群(88名) プレテスト実施
a
15時間分のプログラムに よる実践授業
示ストチスト実施
さらに、本研究では、 15時間分のプログラム
一 64‑
を作成し、①人権学習に対寸る生徒の変化を見 ⑤ 他者の心情理解"に関しては、十分な効 ること、引;蕎成を訓面すること、③効果が見ら 果は認められなかったC
れた生徒と、見られなかった生徒の原因を確認 (2)振り返りシートの分析結果から、
し、改善点を見いだすことをねらいとした。プ ⑥授業評価における評価項目の得点は高く、
ログラムの構成は下図のようになっている。 生徒は実践授業を、概ね好意的に受け止め
No. タイトノレ
1 ルール作り
2 わたしの立つ位置 人間
3 わたしの4面鏡 関係
4 アイマスク散歩とトラストフォール 作り 5 さわやかな自己表現
6 わたし発見
7 A B型の王国 8 偏 見 ・ 劃IJに気づく
9 レモンの物語1 人権
10 レモンの物語2 基礎 11 レモンの物語3 体力
12 すべてを失う 作り
13 何かおかしいな 14 明るい未来に向かつて1 15 明るい未来に向かって2
実践授業では、 行動化への意欲"を培うた めの動機づけに注目し、プログラムの「開始期」・
「展開期」・「終末期j、並びにセッション毎に 存在する各期の動機づけの方略に留意したc
3,結果と考察
( 1 )質問紙調査の分析結果から、
① 「参加体験型学習」の手法を用いた実践授 業は、人権学習のイメージ転換ならびに、
意識の変化をもたらす効果があることが認 められた(p<O.01)。
② 授 業 終 了 1ヶ月後に実施したフォローアッ プテストにおいても、効果が持続している
ことが認められた(p<0.05)。
③下位尺度における得点の上昇から、 「自己 変容」因子と、 「知識獲得感J因子におい て実践授業の効果が認められた。
(p<0.05 • p<O. 05) 0
④フォローアップテストでは、 「人権学習イ メージ」尺度において得点が上昇し、人権 学習に対する生徒のイメージが好転してい
ることが確言忍できた (p<O. 10) 0
ていた。
⑦人権学習分野における動機づけの方略は、
評価得点の推移から適切に与えることがで き、プログラムの構成も概ね適切で、あった。
③ 自由記述のカテゴリ一分析から、生徒たち は 自己変容"を意識する記述が見られ、
行動化への官欲"を培うとし、う授業の目 標がほぼ達成できた。
⑨プログラムは、スキル面が不足しており、
効果が十分で、はなかった生徒もいるため、
改善点も荷主するc
以上のことから、研究の目的は、質問紙調査、
振り返りシートの結果の分析から、ほぼ達成で きたと考えられるものの、人権学習において身 につけさせたい力とされる、知識・技能・態度 のうち、スキル面の強化がやや不十分で、あった
と考えられるc
4,今後の課題
今後は、多様な生徒に効果をもたらすことの できる学習フOログラム・耕オ開発と、研究の結 果を判交現場でどのように拡げ、普遍化してい くのかが求められている この成果を前面に出 しながら、教職員に対する効果的な研修体制を 確立し、教師の意識改革ならびに人権尊重の視 点に立った、 「判交文化」の構築が求められる。
そして、 「人権を通じた教育Jが展開できる 教師集団の育成とともに、生徒と教師が共に学 ぶ、としづ姿勢を育む「学習共同体」の創造が 必要であるc
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