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シリーズ 新 受験風土記第 22 回 神奈川県 横浜中華街 ( 横浜市 ) このコーナーでは 各都道府県の大学進学に対する取り組みを紹介する 今回は神奈川県を取り上げる 横浜みなとみらい 21 地区 ( 横浜市 ) 神奈川県の人口 :9,058,589 人 (2011 年 5 月現在 ) 大学数 :

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玉名 済々黌 熊本 宇土 八代 熊本市 宇土市 八代市 玉名市 県南学区 輝翔館 明善 久留米大学附設 春日市 川崎市 横浜市 藤沢市 鎌倉市 八女市 福岡市 北九州市 小田原市 久留米市 春日 福岡 城南 東筑 小田原 湘南 栄光学園 光陵 桐蔭学園 洗足学園 横浜サイエンス フロンティア 横浜翠嵐 久留米大学附設 春日市 福岡市 北九州市 春日 福岡 城南 東筑

受験風土記

22

神奈川

【シリーズ】

私立中高一貫校の進学実績が好調

公立高校の改革も進行

このコーナーでは、各都道府県の大 学進学に対する取り組みを紹介す る。今回は神奈川県を取り上げる。

朝も放課後も課外を実施

面倒見の良さが共通の特徴

 毎年2月1日、東京・神奈川の私 立中学入試が解禁になり、早朝から 真剣な表情で試験会場に向かう子ど もたちの姿が見られる。神奈川県に は私立中学受験に積極的にチャレン ジする子どもが多いのだ。2010年度 学校基本調査によると、県内の中学 生のうち、私立中学に通う生徒の割 合は12.1%と、全国で4番目に高く なっている。  それだけ私立中学人気が高まった のは、2つの要因が考えられる。  1つは、県内に人気の高い私立大 学の附属校が多くあることだ。入学 後に一定の成績を修めていれば、慶 應義塾大学、法政大学、日本女子大 学などに推薦で進学できることは、 子どもや保護者にとって大きな魅力 なのである。  もう1つは、多くの私立校が、6 年間一貫のメリットを生かした特色 ある教育を展開するとともに、中学 受験を経た学力の高い生徒が入学し てきたこともあって、大学合格実績 を上昇させているためである。その 実績がさらに学力の高い生徒の入学 を促進するといった相乗効果を生み 出している。  近年では公立高校でも、県の指定 による「学力向上進学重点校」などを 中心として、大学進学実績の向上に 熱心に取り組むようになってきた。 まずは教育委員会主導の改革の流れ を、神奈川県教育委員会・教育局教 育指導部高校教育企画課・高校教育 事業グループの方々に解説していた だこう。  2000年から2009年までの10年間進 められたのが「県立高校改革推進計 画」だ。  「神奈川県では、1970年代に、高校 進学率の上昇を受けて『県立高校百 校新設計画』を立案・推進し、量的 整備を図りました。しかし、少子化 に伴う生徒数減少期を迎え、改めて 質と量の両面からの改革が必要にな りました。そこで、1997年以降、こ れからの県立高校の在り方について ●神奈川県の人口:9,058,589人  (2011年5月現在) ●大学数:  国立2校、公立2校、私立24校  (短大除く、大学院大学を含む) ●高校数:公立161校、私立80校  (中等教育学校を含む) (人口は神奈川県統計センターHPより 学校数は2010年度学校基本調査より) 横浜みなとみらい21地区(横浜市) 横浜中華街(横浜市) 小田原城(小田原市)

質と量両面の向上に挑む

「県立高校改革推進計画」

26 Kawaijuku Guideline 2011.7・8

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検討を重ね、策定したのが『県立高 校改革推進計画』です。総合学科や 単位制普通科高校などの新しいタイ プの高校の開設、普通科高校の特色 づくりなどの『質』的な向上と、高校 の再編・統合など『量』の適正化の改 革を同時に進めたところに特徴があ ります」(竹鼻修主幹)  この『県立高校改革推進計画』の もう1つの特徴は、数多くの高校を 指定し、特色づくりを支援したこと だ。2004年度から2006年度の取り組 みでは159校を指定。2007年度から 2009年度の取り組みでは、「確かな学 力向上」「協働による教育活動展開」 「これからの社会に対応する特色あ る教育」の3つを柱としてさまざま なテーマを設け、延べ249校を指定。 ほぼすべての県立高校が何らかの指 定を受けていた。  その理由を、田村丈晴副主幹は次 のように語る。  「指定校を多くしたのは、できる だけたくさんの高校で意識的に特色 づくりに取り組んでほしいと考えた からです。その目的は相応に達成で きたと評価しており、2010年度にス タートした『県立高校教育力向上推 進事業』では、テーマを絞るととも に、指定校数を大幅に減らしていま す」  具体的には、キャリア教育、スペ シャリスト人材育成などの「教育活 動開発校」に33校、学力向上進学重 点、環境教育などの「教育推進校」に 51校、言語活動充実、伝統・文化教 育などの「教育課程研究校」に36校を 指定している<図表1>。  「指定校が減った分、教育力向上 推進事業に指定された高校は、成果 を積極的に他校に情報発信し、普及 させる役割を担っています。そのた めに、研究会に他校の先生方にも参 加してもらい、研究協議を行うなど、 教育活動を自主的に公開していま す。そうして情報を共有していくこ とで、県全体の教育が活性化するこ とを期待しています」(田村副主幹)  教育推進校のうち、県内各校の進 学の充実に資する拠点校として研究 を行う学力向上進学重点校には、横 浜翠嵐高校、横浜緑ヶ丘高校、横浜 国際高校、光陵高校、希望ヶ丘高校、 川和高校、柏陽高校、多摩高校、横 須賀高校、追浜高校、平塚江南高校、 鎌倉高校、湘南高校、小田原高校、 相模原高校、秦野高校、厚木高校、 大和高校の18校が選ばれている。  「各高校でテーマを定めて、独自の 取り組みを進めています。具体的に は、教員の授業力及び進路指導の向 上のほか、知的好奇心を高める学び の実現、先進的なカリキュラムの開 発、学習習慣の確立などを目指す活 動が中心です」(小宮智主幹)  教育力向上推進事業はまだ開始後 2年目だが、早くも着実な成果が現 れていると、戸井田洋グループリー ダーは評価する。  「研究テーマと指定校の数を絞る ことで、これまで以上に斬新な取り 組みが見られるようになっていま す。学力向上進学重点校の取り組み の傾向としては、『授業力』と『進路指 導』が両輪となった効果的な指導が 進行している印象があります。また、 以前は学年の意向が強く反映され、 年によって指導方針が異なることも ありましたが、高校全体で情報共有、 共通認識を図り、入学から卒業まで 組織的、体系的に生徒を指導するよ うに、進路指導の流れが変わってき ています」  なお、神奈川県教育委員会では、 今年3月、『これからの県立高校のあ り方』の最終報告を公表した。2009年 度に終了した県立高校改革推進計画 の成果を受けて、今後の方向性をま とめたものだ。特色ある学校づくり の推進など、基本線はこれまでの高 校改革の流れを継承しているが、細 かい具体策については、今後検討を 進めていく予定だ。

重点化を進めた

「教育力向上推進事業」

事 業 事業構成(指定枠名) 指定 校数 指定校 教 育 活 動 開 発 校 キャリア教育 5 横浜清陵総合、新羽、瀬谷西、住吉、大原 シチズンシップ教育 13 永谷、横浜旭陵、瀬谷西、新城、菅、大船、深沢、湘南台、逗葉、上溝、相模原総合、相模田名、厚木商業 スペシャリスト人材育成 5 上矢部、海洋科学、小田原城北工業、相原、弥栄 家庭 ・ 地域等連携教育 5 磯子、岸根、平塚湘風、逗子、上鶴間 学校マネジメント 5 釜利谷、横浜桜陽、向の岡工業、秦野総合、相模向陽館 教 育 推 進 校 学力向上進学重点 18 横浜翠嵐、横浜緑ヶ丘、横浜国際、光陵、希望ヶ丘、川和、柏陽、多摩、横須賀、追浜、平塚江南、鎌倉、湘南、小田原、相模原、秦野、厚木、大和 ボランティア ・ 福祉教育 9 横浜南陵、霧が丘、瀬谷、横須賀明光、高浜、藤沢総合、秦野曽屋、綾瀬西、 大井 環境教育 9 鶴見、舞岡、横浜栄、川崎、平塚工科、平塚農業初声分校、三浦臨海、海老名、吉田島総合 国際教育 6 横浜平沼、氷取沢、百合丘、鶴嶺、橋本、大和西 家庭・生活教育 4 横浜立野、港北、金井、横浜緑園総合 支援教育 5 田奈、横浜修悠館、菅、大楠、有馬 教 育 課 程 研 究 校 言語活動充実 5 横浜桜陽、上矢部、麻生総合、追浜、平塚湘風 伝統・文化教育 16 氷取沢、金沢総合、岸根、舞岡、柏陽、横浜緑園総合、川崎、津久井浜、平塚湘風、鎌倉、小田原、上溝、伊勢原、座間総合、山北、愛川 理数科学教育 5 横浜緑ヶ丘、西湘、弥栄、厚木、座間 総合的な学習の時間 5 横浜清陵総合、保土ヶ谷、住吉、藤沢清流、麻溝台 道徳教育 5 永谷、瀬谷西、菅、逗葉、相模田名 <図表1>2010年度県立高校教育力向上推進事業指定校一覧 (神奈川県教育委員会 HP より)

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 同時期に、横浜市の市立高校でも 改革が始まった。  まず、2000年から2009年まで推進 されたのが「横浜市立高等学校再編 整備計画」だ。中学生が急減するこ とが予想された時期に合わせて、高 校を再編するとともに、新しいタイ プの高校や特色ある学科を相次いで 設置したのだ。2002年度のみなと総 合高校(全日制総合学科)、横浜総合 高校(三部制定時制総合学科)の新設 を始めとして、2003年度には横浜商 業高校に国際学科を設置した。  2005年には、再編計画をより充実し たものにするために、「横浜市立高等 学校教育改革推進会議」が発足した。  「この会議で提言されたのは、普通 科高校の特色を1校ずつ鮮明にする ことです。その提言を受けて、2006 年から『横浜市立高等学校改革推進 プログラム』をスタートさせ、横浜 サイエンスフロンティア高校の新設 や、金沢高校への文理特進コースの 設置などを実現。2010年度にはその 後期計画として『横浜市立高等学校 教育振興プログラム』を策定し、2012 年度の中高一貫教育校(南高校)の開 校、金沢高校、桜丘高校、横浜サイ エンスフロンティア高校の進学重点 校指定など、さらなる改革を予定し ています<図表2>」(横浜市教育委 員会高校教育課・高橋正彦課長)  確かに、<図表2>を見ると、今 後、各校とも、はっきりとした特色 を有することになる。  「普通科がプラスアルファの特色、 魅力を持つことで、市民に選ばれる 高校であり続けてほしいと考えてい ます。また、それぞれ特色化、先鋭 化することで、相互に切磋琢磨する 関係が築けるのではないかと期待し ています」(高橋課長)  このように公立高校では積極的に 改革を推進しており、今後、学力向 上への期待が高まる。  神奈川県の受験風土で特徴的なの は、首都圏の私立大学への進学を希 望する生徒が多いことだ。  2010年度学校基本調査によると、神 奈川県の高校生が進学する大学の所 在地トップは東京都で、2位は神奈 川県。この2都県で9割以上を占め る。自宅から通学が可能な地域に全

首都圏私大志向が強いため

幅広い科目の学習を

促すことが課題

すべての高校の特色化を図る

横浜市の取り組み

<図表2>横浜市立高校の特色化 金沢高校 南高校 桜丘高校 横浜総合高校 横浜商業高校 戸塚高校 2015年度 2014年度 2013年度 2012年度 2011年度 2010年度 文理特進コース設置 進学指導重点校として進路実績向上の取組 中高一貫教育校開設準備 中高一貫教育の推進 学年制移行準備 進学指導重点校の取組 大岡高校跡地(南区)移転準備 企業と連携したキャリア教育の推進 スポーツマネジメント学科設置準備・英語力の育成 芸術コース設置準備 SSHとして理数教育推進・進学指導重点校の取組 スポーツコース設置準備 キャリア教育の推進と国際性育成の取組 企業連携等による職業教育の実施 理容・美容業界を担う人材育成 中高一貫教育校開校 大岡高校跡地移転 ・進学指導重点校指定 ・学年制移行 スポーツマネジメント 学科設置検討開始 英語力の育成 芸術コース 設置検討開始 芸術コース設置 SSH指定 進学指導重点校指定 スポーツコース 設置検討開始 スポーツコース設置 キャリア教育推進 国際理解教育推進 企業等との連携に 関する検討開始 理容科、美容科 教育の充実 スポーツマネジメント等 を専門的に学ぶ 学科設置 東高校 みなと総合高校 戸塚高校定時制 横浜商業高校別科 横浜サイエンス フロンティア高校 (横浜市立高等学校 教育振興プログラムより)

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●神奈川県立小田原高等学校

県立高校

「小田高学力スタンダード」と

「小田高進路ストーリー」で

生徒を伸ばす

 1901年、神奈川県第二中学校とし て開校。1948年から現校名。2004年 に小田原城内高校と統合するととも に、単位制普通科高校になった。全 日制と定時制を設置。全日制の募集 は8クラスだが、入学後、36名ずつの 9クラス編成をとっている。また、授 業は90分×4時限を採用している。  同校では、体系的な学力向上プロ グラム「小田高学力スタンダード」< 図表3>を設定している。学年ごと に「知識」「自己管理能力」「考える力」 の3つの点について、最低限備える べき力を提示している。各学年の具 体的な目標はこのスタンダードに基 います。また、3年前から、本校の 卒業生である黛まどかさんの協力を 得て、『小田高TALK(投句)プロジェ クト』を始めました。毎月、お題を 出し、優秀作品には賞を授与してい ます。さらに、2年夏の早い段階で 小論文模試も実施しています。文章 を書くことが苦にならない生徒が増 えたこともあって、今春、小論文が 課される学部が多い慶應義塾大学の 合格者が倍増しました」(池辺先生)  同校でもう1つ注目されるのが、 小集団指導が活発なことだ。セン ター試験以降は、「東大・阪大・東工 大グループ講座」「東北大・名古屋大 グループ講座」といったように、目標 大学ごとにグループを編成。入試の 直前まで志望校の入試問題に即した 指導を続けている。志望校の過去問 は生徒が自主的に取り組むが、いく つかの大学でグループを作ると、生 徒が触れたことのない、他大学のハ イレベルな問題に触れられるという 効果もあるそうだ。  さらに、「小田高進路ストーリー」 として、キャリア教育も充実させて いる。  「6月に全生徒対象で『先輩大学生 と語る進路学習会』を実施。大学生約 40名を招き、大学の授業・生活、受 験勉強のアドバイスなどを熱く語っ てもらっています。分科会形式で、 生徒は30分ずつ2つの講演を聞くこ づいて設定しており、例えば1年次 の目標は「知識の量は着実に増やす」 「能動的でリズムのある学校生活を 実現」「知識偏重気味の生徒に対し考 える力を徹底的に育成」などとして いる。  「各段階で目標とする力を図示す ることで全教員の共通認識を図ると ともに、模試の成績で不足している 部分が明らかになった場合は、すぐ に関連する教科の教員が、週末課題 を多めに課すなど、臨機応変な対応 を心がけています」(池辺直孝先生)  この体系的な学力向上プログラム は、1年次のオリエンテーションか ら始まる。高校で求められる自律的 な学習態度を身に付けさせることが 目的で、入学直後から予習・復習の 方法、週末課題への取り組み方など を伝えるとともに、5月上旬の宿泊 オリエンテーションでそれが身に付 いているかどうか、確認する。  普段の指導では、文章を書かせる ことを重視している。  「本校は、生徒に論述、記述の機会 を最も多く提供している1校だと自 負しています。芸術鑑賞教室など、 行事ごとに原稿用紙を配布し、感想 文を提出させていますし、授業で も、例えば数学では生徒にペンネー ムで解答を提出させ、斬新な答案は 授業中に紹介。自分の考えを表現す る喜びを体感する機会を大切にして <図表3>小田原高校 「小田高学力スタンダード」 知識 自己管理 能力 考える力 中学まで 中学まで 能動的に部活・行事・学習課題を消化 要約・文章表現・記述式の定期試験 要約・文章表現・記述式の 定期試験の質と量を増加 授業・記述 式添削指導 リーダーシップ・ 持ち味を発揮する 試行錯誤による自律的な学習 課題・小テスト・ 課題テスト 授業・課題・小テスト・課題テスト 授業・自習室での学習 中学まで 1年次 2年次 3年次 国的にも人気の高い大学が多く立地 しているため、他地域の大学にはあ まり進学しないのだ。また、近隣の国 公立大学はほとんどが難関大学であ るため、早期から私立大学を第一志 望とし、学習する科目を絞る生徒や、 指定校推薦を希望する生徒も多い。  高校としては、生徒にバランスよ く学力を身に付けさせたいため、早 期から学習する科目を絞り込むこと は望ましくない。生徒にできるだけ 幅広い科目の学習を継続させること が、神奈川県の高校に共通した課題 の一つのようだ。  以上見てきた受験風土を踏まえ て、神奈川県の高校ではどのような 指導が展開されているのか。各高校 の状況を、具体的に見てみることに しよう。

(5)

国立大学の設置学部に対応した5グ ループに分かれ、生徒各自が興味を 持ったテーマを選び、研究を始める。 月2回のペースで、横浜国立大学の 学部生・大学院生が訪れ、生徒は研 究方法などのアドバイスを受けるこ とができる。その集大成となるのが、 2年9月の論文作成で、さらに優秀 者10名を選抜して発表会を行う。  「生徒には、調べて終わりにするだ けでなく、自分なりに研究したこと を、大学に進学した時、さらには社 会に出た時の学びにつなげてほしい ということを強調しています。KU を自分のキャリアを考える場にした とができます。11月には1・2年生 対象で、約30名の卒業生社会人を招 いて『社会で活躍する先輩たちとの 職業別セミナー』を開催。こちらも分 科会形式で、60分ずつ2つの講座に 参加可能です。そのほか、保護者と の連携も重視しており、年3回、『保 護者対象進路説明会』を行い、情報共 有に努めています」(塩谷勝弘先生)  1966年創立。文理によるクラス分 けは行わず、3年次に多様な選択科 目を設定することで、生徒の志望に 対応したカリキュラム編成に基づく 教育を展開している。  現在は各学年6クラスだが、2009 年に横浜国立大学教育人間科学部附 属横浜中学校との連携型中高一貫校 となり、2012年度の新入生から同中 学校の生徒が1クラス分入学してく るので、現在の定員が維持される場 合は7クラスとなる。  「本校は、中学校、高校、大学が連 携した、先導的な中等教育のモデル を構築することを目指しています。 最大の目標は、これからの社会をよ りよく生きるための幅広い能力(リ テラシー)を育成すること。そのた めに発見・探究型の学習の充実を図 ります。中学校・高校の教員が協議 を重ね、今年3月には、教科ごとに、 6年間の指導の流れをまとめました <図表4>」(鈴木俊裕校長)  既に、「KU」(光陵ユニバース)と 名付けられた「総合的な学習の時間」 では、発見・探究型の学習を先行して 始めている。1年は課題図書のブッ クトーク、宿泊研修でのディベート などを実施。1年後半からは、横浜 いのです」(鈴木校長)  同校の新しい学力観に基づく教育 への注目度は高い。年に1回実施し ている、1・2年の全クラスの授業 を公開する「研究発表会」には、近隣 の中学校、高校の先生方約250名(保 護者も含めると300名以上)が参加し ているのだ。  「参加した先生方には、優れている 点、改善すべき点を記入する2種類 のアンケート用紙を配布。それを研 究協議の場で役立てています。また、 研究協議の冒頭では、約10分間、生 徒が授業を受けた感想を語り、先生 方からの質問にも対応しています。

●神奈川県立光陵高等学校

連携型中高一貫校の

先導的モデルの構築を目指す

中学校 個性探求期<発見> 単元・授業テーマ(学年) 手塚治虫が願ったこと ( 中学 1 年 ) 身に付けたい力 本や文章などから目的に応じて情報を読み取る力 リテラシーとの関連で育成を目指す力 【学び続けるカ】【感じとるカ】【熟考する力】 授業のポイント ○二つのテキストを比較して読み取らせる。 ・この授業を通して、二つのテキストを使用する。 ・一つは手塚治虫の願いをまとめた文章から内容を読み取らせる。そ のことをもとに、もう一つのテキスト(手塚治虫の作品)にどう表現 されているかを読み取らせる。 中学校 個性探求期<探求> 単元・授業テーマ(学年) ポスターを使って話す(中学 2 年) 身に付けたい力 社会生活の中から課題を決め、多様な仕方で材料を集めながら自分の考えをまとめる力 リテラシーとの関連で育成を目指す力 【学び続けるカ】【感じとるカ】【熟考する力】 授業のポイント ○授業のめあてと課題、評価の観点を明確にさせる。 ・活動としてポスターセッションを行うが、指導の中心は課題設定や 取材である。 ・自分の話しの根拠として必要な情報をどのように集めたか、などを 発表メモ用のカードの記述をもとに評価することを提示して行う。 高校 個性伸長期<充実> 単元・授業テーマ(学年) 表現・ディベートをしてみよう(国語総合) 身に付けたい力 反論を想定して発言したり疑問点を質問したりしながら、課題に応じた 話合いや討論を行う力 リテラシーとの関連で育成を目指す力 【問題解決力】【学び続けるカ】【感じとるカ】 授業のポイント ○図書館での情報収集を通じて問題点を具体化する方法を身に付けさせる。・ディベートの論題についてメリット・デメリットをまとめさせる。 ・ディベートを行う中で論理的な思考力や説得力を身に付けさせる。 高校 個性伸長期<発展> 単元・授業テーマ(学年) 話し合いの技術・2050 年の社会はどうなっているかを考えてみよう(国語表現Ⅱ) 身に付けたい力 様々な考え方ができる事柄について、幅広い情報を基に自分の考えをまとめ、発表したり討論したりする力 リテラシーとの関連で育成を目指す力 【問題解決力】【学び続けるカ】【感じとるカ】【熟考する力】 授業のポイント ○自分の興味・関心がある分野を具体的にイメージさせる。 ・各自が考える2050年の社会状況について、他者の別のイメージな どを組み込みながら、より具体的・多角的に考えさせる。 ・自分の興味・関心のある分野が、他の分野とどう関わっているのか に気付かせ、自分の予測したイメージについて説得力のある説明を 行わせる。 <図表4>光陵高校 「リテラシー」育成カリキュラム展開例(国語)

(6)

さらに、研究協議には文部科学省、 教育委員会、横浜国立大学の先生も 参加しており、迫力のある議論が展 開されています」(鈴木校長)  学力向上進学重点校の1校とし て、進路実現に向けた取り組みも強 化している。その1つが「KST」(光 陵スタディタイム)。週3回、1・2 年生を対象に、放課後の15分間、英 語・国語・数学の授業で学習した基 礎的事項を再確認する小テストだ。 また、朝補習は7時30分から8時20 分まで、放課後補習は1時限実施。 いずれも、複数の講座から生徒が自 由に選択できる。  土曜日には午前と午後に同様の内 容の講習を開講し、部活動などの都 合に合わせて受講できるようにして いる。さらに、夏休みには前半、後 半に1週間ずつ夏期講習を実施。そ のほかの夏休み中の行事として、「勉 強合宿」も実施。これには、横浜国 立大学の学生もチューターとして協 力しており、学習支援に加え、さま ざまな体験談を聞くことができる。  キャリア教育にも力を注いでい る。3月に1・2年生対象で、「卒業 生によるキャリアガイダンス」を実 施。事前に生徒から興味を持ってい る職業をアンケート調査し、人気の 職業に就いている卒業生を20名程度 招く。そのほか、11 ~ 12月に、1・ 2年生を主対象とした「大学出前授 業」や、12月に1・2年生が大学の 研究室などを見学する「横浜国立大 学見学会」を開催する。  1920年、湘南中学校として開校。 全日制と定時制を設置。全日制は1・ 2年が9クラス(360名)、3年が8ク ラス(320名)である。70分授業を実 施。文理分けは3年からで、さらに 文系は2コース、理系は『数学Ⅲ』の 履修の有無で2コースに分かれる。  「将来、リーダーとして活躍するた めには、文系、理系を問わず、幅広 い教養が求められます。一方の知識 に偏った生徒にしないために、文理 分けを遅めにするとともに、理科3 科目、地歴3科目を必修にしていま す」(村田真先生)  伝統的に部活動が盛んで、1年生 には全員加入を推奨。2・3年生も 95%以上が参加しており、複数の部 を掛け持ちする生徒も少なくない。 行事も、4月の陸上記録会、6月の 文化祭、7月の合唱コンクール、9 月の体育祭と目白押しで、並行して、 5月頃から、サッカー、バスケット ボール、駅伝など、クラス対抗の運 動競技も実施。そのすべてに生徒た ちは取り組む。  特に体育祭は、1~3年の1クラ スずつを1チームにした対抗戦で実 施しており、他学年と交流する中で、 責任感や精神力が育つ機会になって いる。さらに、3年に進級する際にク ラス替えがないため、2・3年は同 じチームで臨むことになり、部活動 のような団結力が生 まれるという。メイン イベントの「仮装」< 図表5>は、衣装、振 り付け、大道具など、 すべて生徒の企画・考 案によるもので、1年 間かけて準備する。  「本校には、部活動 や行事が盛んなこと が、受験勉強を阻害す るといった考えはあ りません。むしろ、体育祭が終わった 瞬間に、皆で一斉に受験勉強モードに 入り、頑張ろうという雰囲気が生まれ ています。行事に夢中になって取り組 んだ生徒ほど、切り換えがスムーズ にいき、爆発的な集中力で、志望校合 格を果たす場合が多いという印象を 持っています」(村田先生)  伝統校として、社会の第一線で活 躍する卒業生が多いことも、同校の 強みだ。そのパワーは進路指導にも 生かされている。学年ごとに年2回 ほど、卒業生を招いて講演会を開催。 昨年はノーベル化学賞受賞者の根岸 英一氏も訪れた。そのほか土曜日に も、年間6回、卒業生による講座を 実施している。卒業生の活躍が刺激 になり、生徒たちがより高い目標を 目指すようになるという。  また、学力向上進学重点校に指定 されたことによって、生徒たちの意 識に変化も見られるようだ。  「周囲の期待を感じることによっ て、早い時期から受験を意識する生 徒が増えています」(村田先生)  それを受けて、進路指導でも、こ れまで以上にきめ細かな指導体制が 形成されつつある。例えば、2009年 から『進路通信』、2010年から『進路 の手引き』を作成。積極的な情報提

●神奈川県立湘南高等学校

部活動や行事に夢中になった経験を

受験勉強の力に変える

<図表5>湘南高校 「仮装」の様子

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●神奈川県立横浜翠嵐高等学校

課題解決能力を高める

「探究型授業」を開発・実践

供に努めている。また、4年前から 外部模試を導入し、各学年2回実施。 そのデータが蓄積され、中学校の成 績、高校の成績、模試の成績、合否状 況などの相関関係が分析可能になっ た。そこで、2010年に、教員3名に よる研究開発グループを組織し、さ まざまなデータの分析を始めた。  「以前は、本校に長年勤める教員 が多かったこともあり、個々の教員 の経験に頼った進路指導が中心でし た。けれども、教員の異動サイクルが 短くなった近年では、きめ細かな進 路指導を実現するためには、客観的 なデータに基づいた指導を行うこと が重要になってきました。今後、さ らにデータが集積されることによっ て、進路指導を充実させていきたい と考えています」(村田先生)  1914年に県立第二横浜中学校とし て開校し、1950年に現校名に改称。 普通科に全日制と定時制があり、全 日制は各学年7クラスを設置。文理 分けは3年からだが、2012年度以降 は2年から実施する予定だ。95分授 業を基本とし、一部45分授業も組み 込みながら、各教科・科目の特性を 生かした授業を展開している。  県の学力向上進学重点校として、 同校が力を注いでいるのが「探究型 授業」の開発・実践だ。  「本校の使命である未来のリー ダー育成のために、まず重要になる のがバランスのとれた学力の養成で す。文系、理系の一方に偏った学習 を避けて、幅広く学んでほしい。そ れによって必然的に難関国公立大学 を目指す生徒が増えることを期待し ています」(鈴木浩之校長)  また、複雑化した現代社会において は、単純に解答が出ない問題が多発し ている。その状況に対応するために は、知識習得型の学習から、課題を解 決するために必要な思考力、判断力、 表現力などを涵養する学びへと転換 していくことが大切である。そこで同 校では、探究型教材の開発に着手。昨 年12月に、各科目1講座計9講座の研 究発表会を実施した<図表6>。  「どの科目も、取り上げたテーマ は、日常生活に身近なものでありな がら、意外性が感じられ、なおかつ複 数の解答が想定されるものばかり。 通常の授業とは異なる観点から学べ たと、生徒たちからも好評で、授業 中の議論に熱が入っていました」(鈴 木校長)  この成果を受けて、2011年度から、 総合的な学習の時間の中で「探究講 習」を導入。1年生は年5回、2年生 は年10回受講する。漠然としたテーマ と方向性を与えて、後は生徒任せとい うのではなく、教員がしっかりと枠組 みを構築し、その中で生徒たちが議論 する「教員主導の生徒参加型」の形態 をとっているところに特徴がある。  また、2011年度から、これまで個 人単位で進めていた難関大学の入試 問題研究を、教科ごとに教員が連携 して行うこととした。  「その成果を日頃の授業や、定期考 査などの問題にも反映させ、難関大学 をより身近なものにすることが目標 です。本校での指導経験が少ない教員 が担当することで、教員のスキルアッ プにも役立てています」(鈴木校長)  課外授業にも積極的に取り組んで いる。  「1・2年生対象には、年間15回 (3期に分けて、各期とも5週連続実 施。1日60分×3時限)『ハイレベル』 と『ベーシック』の2タイプを用意し た土曜講習を実施しています。2年 生対象の土曜講習では、センター試 験対策を前面に打ち出す科目もあり ます」(玉井正史副校長)  生徒の学習習慣の確立、計画的な 学習活動を促進するための取り組み も注目される。  「学習と部活動の両立をうまく図る ことが、神奈川県の進学校に共通する 課題です。本校では3年前から、部活 動の活動日数・時間に一定の制限を 設け、適正化を図っています。これに よってメリハリをつけた高校生活を 送ってほしいと考えています。また、 予習→授業→復習のサイクルを確立 させる指導にも力を入れており、入学 直後に校内で学習オリエンテーショ ンを行っています」(鈴木校長)  また、「個人カルテ」も活用してい る。これは、各学期の評定や定期試験 教科・科目 テーマ 講座概要 社会 (公民) 『領土問題』 日本は近隣諸国と数々の「領土問題」を抱えています。その実態 や歴史的経緯を知るとともに、将来を生きる私たちは、この問題 にどのように向き合うべきかを議論しましょう。 数学 『無限を比べる』 数学で度々登場する「・・・」すなわち「無限」。一言に「無限」と言っ ても、実は 1 つではないのです。それを調べに「無限」に関する 不可思議な世界へと入って行きましょう。 理科 (化学) 『立体化学入門』 突然ですが、あなたは右利きですか、それとも左利きですか。有 機化合物の中にも、右利きと左利きがあります。一方は薬になり、 他方は毒になる。どうしたら区別できるか考えてみましょう。有 機化学の光学異性体の話です。 英語

『What happened to her?』 To think and understand what happens in Afghanistan

Look at the cover of the Time magazine and read the article. Try to understand what is happening in Afghanistan. <図表6>横浜翠嵐高校 「『探求型授業』実践研究」公開授業テーマより

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の成績、進路希望、模擬試験の結果 などといった情報を集めてファイリ ングしたものであり、学年が変わる ごとに次の担任に引き継ぐことで、 生徒の計画的な学習や進路指導に貢 献している。  「以前から試行的に実施していま したが、現行のスタイルにしたのは 2010年度からです。3年間の生徒の 学習履歴をスムーズに伝達すること ができるため、担当教員が変わって も指導の連続性が確保されていま す。面談の貴重な資料にもなってい ます」(相羽昭仁先生)  2009年開校。単位制理数科で、6 クラスを設置している。  同校の教育理念は、「ほんもの体 験」と「知識と知恵の探求サイクル」 を柱とし、先端科学技術を活用して 世界で幅広く活躍する人間の育成。 東京大学名誉教授の和田昭允氏、元 東京大学総長の有馬朗人氏の両氏を 始めとする5人のスーパーアドバイ ザーと、横浜市立大学名誉教授の小 島謙一氏ほか65名の科学技術顧問が 教育理念の検討や講義・研究指導に 協力し、同校の特色ある教育を支え ている。  同校の教育理念を実現するための 中核となる授業が1・2年次の「総 合的な学習の時間」を使って行う「サ イエンスリテラシー(SL)」だ。  「研究機関、大学、企業の協力を 得て開講している点が特色です。1 年次の『サイエンスリテラシーⅠ』で は、科学技術顧問の方々を毎週お招 きし、1つの研究テーマを2クラス ずつに分けて週3回、講義や実験を 担当してもらっています。2年次の 『サイエンスリテラシーⅡ』<図表7 >では、生徒自身が研究テーマを設 定し、科学技術顧問の指導のもと、 研究・発表をします」(長久博事務長)  その集大成と位置づけているの が、2年次10月に3泊5日で実施す るマレーシア研修だ。  「半年間の研究成果を、現地の高 校・大学に行って、ポスターセッショ ンで発表します。もちろん、英語での 発表です。さらに帰国後、その内容 をレポートにまとめます。1年次の 現代文の授業で、プレゼンテーショ ンなどの言語活動を意識的に取り入 れていますし、1年次の10月頃に3日 間、外国人研究者を招いて、『サイエ ンスイマージョンプログラム』を実 施し、英語での実験・実習・プレゼ ンテーションに取り組む機会も設け ていますから、生徒たちは、相応に 緊張しながらも、堂々と発表してい ます」(山本俊太郎先生)  そのほか、土曜日には「サタデー サイエンス」を開講。通常の時間帯 では実施しにくい研究機関、企業の 見学などを組み込んでいる。  さらに、毎週水曜日の放課後には 「和田サロン」を実施している。  「紅茶やクッキーを食べながら、生 徒と常任スーパーアドバイザーの和 田先生が話をする場です。1年生は全 員、20名ずつ交代で参加。その後は希 望者が集まる形をとっています。和田 先生は科学者の卵を育てたいという 気持ちが強く、科学を学ぶに当たって の心構えを説かれるほか、時には『意 識とは何次元だろう』といった、生徒 に刺激を与えるような問いを投げか けられることもあります。さまざまな 示唆と含蓄に富んだ時間になってい ます」(川井幸男副校長)  こうして2年次まで多様な体験活 動を積んで、目指す将来像や、学び の目的意識を高めた上で、3年次に は受験勉強に力を入れる。土曜日に 午前中90分×2時限、午後は時間無 制限で1時限、課外授業を実施して いるほか、4月下旬からは平日放課 後の課外授業も始めている。  また、全学年とも、8時から8時 30分までを「朝学習」の時間に設定。 1年次には半年間かけて評論文を毎 日読ませるほか、2年次までは週ご とに教科を替えてプリント学習を行 う。3年次は自学自習の時間だ。 1 微生物の培養技術の習得と育種 15 化学合成 2 動物細胞の培養技術の習得と育種 16 タンパク質(リゾチーム)単結晶の育成と物性の評価 3 アフリカツメガエルの発生 17 C60フラーレン・ナノウィスカーの育成と物性の評価 4 海洋生物の系統解析と有用物質(タンパク質)の研究 18 単層カーボンナノチューブの生成と物性の評価 5 海洋生物の環境と生態系の研究 19 周期構造がつくりだす光の回析・干渉現象の解明 6 東京湾・鶴見川の河口の環境 20 Excelで学ぶ物理シミュレーション 7 鶴見川の環境と生物 21 プログラミングの基礎 8 横浜の水と環境 22 LEGOを用いたロボットの制御 9 身近な(自宅・学校周辺)環境と生物 23 ディジタル回路の設計と製作 10 生物の遺伝子解析からみた環境と生態系の研究 24 様々な分野の事例における数学的考察 11 バイオマスとエネルギー 25 天体の観測 12 燃料電池自動車 26 地震計を自作して、地震波形記録を録る 13 食品成分分析 27 地震による揺れの大きさの場所による変化を調べる 14 薬品 28 岩石の分析を通して地史を考える <図表7>横浜サイエンスフロンティア高校 2012年度SLⅡ課題研究テーマ

●横浜市立横浜サイエンス

 フロンティア高等学校

市立高校

充実した環境の中で

最先端の科学技術に触れる

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 「単位制のため、3年次は履修の 仕方によって空き時間が出ます。た だし、授業がない生徒でも、ホーム ルームまで残して、帰宅時間を揃え、 その間は自習するように指導してい ます。そのために、2つの自習室、 進路学習室、 レクチャールームを開 放しています。また、あえて選択す る授業を絞ることも認めています。 生徒自身で振り返る時間を作ること が、学力の定着につながると考えて いるためです」(山本先生)  開校一期生である今の3年生は、 多くの生徒が難関国公立大学の理系 学部を志望していることから、初年 度の大学合格実績が注目される。  1947年創立の男子校。中高一貫校 で、高校からの募集はない。1学年4 クラスで、文理分けは高校3年から。  同校の教育の特徴の一つは、教養 主義だ。  「いわゆる進学校のイメージがあ るかもしれませんが、私たちはむし ろ『論述』『専門的』『本質的』『実験』 などをキーワードとした、教養主義 的な教育を目指しています。できる だけ幅広く学んでもらうために、文 理分けを高校3年まで行わず、理科 は最低3科目以上必修、地歴・公民 も日本史、世界史、倫理、現代社会 を必修としています。書くことを伴 う授業が多く、定期試験も記述中心 です。解答用紙が原稿用紙のことも あります」(田村篤史先生)  同校の教養主義を端的に表してい るのが「高1ゼミ」だ。  「40年以上の歴史を有しており、現 在は『総合的な学習の時間』の一部と して取り組んでいます。もともとは 教員が自分の専門を生かした講座を 開講することが多かったのですが、 近年は外部講師も招いており、約20 講座を開講。これまで以上に異色の テーマも見られるようになっていま す<図表8>」(伊藤直樹先生)  また、今年度から、高校1年の6 月に「農家体験授業」を導入。生徒は 10人ずつのグループに分かれて、農 家の生活を体験し、働く人々の姿、 考え方に接する。未来のリーダーと して、授業で農業政策や農業地域に 関する知識を学ぶだけでなく、実際 に生活している人々の生の声を聞か せることが目的だ。

 「Men for others」(他者のための 人間)という理念の下、人格教育に 力を入れていることも同校の特徴で あり、6年間を通して、倫理の授業 を置いている。  「倫理では、社会との関わりの中で、 自分は何をすべきか、あるいはすべき でないかという選択ができるように なることを目標にしています。特に高 校1年では労働の意義について扱う ことになっていて、進路指導、キャ リア教育の意味合いを持っています。 『Men for others』の意味を常に問い続

けることによって、働くことの意義が 見えてくる面があるからです。卒業生 には、対人志向性の高い職業に就いた り、周囲にメッセージを発信していく ような仕事をしている人が少なくあ りません」(宇佐美修先生)  そうした同校ならではの精神を後 輩たちに伝えたいという思いが強い 卒業生も多いため、同校では、同窓 会とも連携し、生徒と卒業生が触れ る機会を多く設けている。例えば、 先述した「高1ゼミ」の1つとして、 「OBゼミ」を開講<図表8>。毎週 異なる卒業生を招き、多様な話を聞 いている。ゼミの対象は高校1年生 だけなので、放課後にも同じ話をし てもらい、他の学年の生徒にも触れ る機会を設けている。  ところで、同校では、今年度から、 高校1年で年に1回の実力試験を導 入した(以前から高校2年は年1回、 3年は年3回実施)。  「高校2年までは極度に受験を意 識させたくないという思いがあり、 実力試験を実施していませんでし た。けれども、テストの校内順位を生

●栄光学園中学校・高等学校

私立高校

「論述」

「専門的」

「本質的」な

教養主義の教育を展開

<図表8>栄光学園中学校・高等学校 「高1ゼミ」2011年度テーマより ◉「映画で学ぶ現代史」 背景の説明→実際に映画をみる→感想を語り合ったり、感想文を書いたり、の繰り返し。【定員 15 名程度】 ◉「長崎とキリスト教」 日本の歴史のなかでキリスト教との関わりが深い長崎の歴史を、特に長崎・五島列島に注目して考える。 オプションで現地ツアー(長崎五島巡礼旅行)を企画する。【定員:15 名】 ◉「文化人類学のすすめ」 日本および世界の諸民族の文化と生活に注目し、これらを自分で調べて、お互いの発表から議論し、その 特徴や本質を考える。年度末にはパネルディスカッション形式でまとめる。【定員:なし】 ◉「日本の社会のしくみを考える 卒業生有志(OB ゼミ) 国際社会で「経済大国」と認められた後、第二次世界大戦後に発展を遂げた立法・行政・司法・金融・産業・ 報道・教育・技術開発と知的財産の管理など、さまざまな分野で今までの仕組みがうまく機能しなくなっ ています。現在 40 ~ 50 歳台で、これらの仕組みを作り育ててきた世代である栄光 OB の有志が、さま ざまな分野における自らの体験を踏まえて、日本の社会を支えてきた仕組みを多角的に問い直し、評価す べき点、改善すべき点などを、皆さんとともに考えてみたいと思います。【定員:20 名程度】

(10)

徒に公表していないこともあって、 自分の学力を知りたいという声も出 てきました。また、生徒からデータ に基づいた進路指導を求める声も強 くなってきました。必然的に長期的 な学力の推移を把握することが重要 になり、高校1年から実力試験を実 施することにしたわけです。そのほ か、3年前から、学習時間、朝食の 回数、就寝時間などを6年間追跡調 査する『学習生活アンケート』を実施 しています。その結果と、実力試験 の相関関係なども分析して、より客 観的な進路指導体制を強化していき たいと考えています」(田村先生)  1924年創立の女子校。中高一貫校 で、高校からの募集はない。全日制 普通科と音楽科を設置していたが、 2011年度から音楽科の募集は停止し た。普通科は6クラスで、文理分け は高校2年で実施する。  近年、進学実績の向上が目覚まし いが、その要因を田中友樹先生は次 のように語る。  「以前は生徒の志望校の入試科目 に合わせたカリキュラムを編成して いました。それを5年ほど前から、 国公立大学入試に対応した方向に大 きく舵を切りました。それが進学実 績の向上につながったと考えていま す。具体的には、理系では国公立、 私立別のコースを設けないことにし ました。文系は高校3年だけ私立文 系コースを設置していますが、今年 度からその生徒たちも、高校3年で 数学を必修にしました。本校の教育 理念である『社会に有為な女性の育 成』のためには、幅広い科目を学ぶ ことが必要だと考えたためです。将 来的には、文系でも国公立、私立別 のコースを設定しないことが目標で す」  また、5年前から、各クラスから難 関国公立大学を目指す生徒を集め、 「総合コース」を組織している。  「それまで本校の生徒は、難関国公 立大学に敷居の高さを感じている面 がありました。同じ目標の生徒集団 を作り、日常的に志望校を意識させ ることで、それを払拭したかったの です」(田中先生)  総合コースの生徒は、放課後に進 学講習(週2時限、1コマ70分)を受 講する。  「総合コースでは難問を提示し、グ ループワークなども交えながら取り 組んでいきます。ある時、数学の教 員が、あまりの難問に手が出ない生 徒の様子を見て、ヒントを出そうと したところ、生徒から『ちょっと待っ て。もう少し考えたいから』という声 があがったそうです。生徒の学習へ の意識が変わったことに取り組みの 成果を感じています。また、こうした 生徒の変化を受け、授業を行う教員 の意識も変わってきました。一方的 に教え込むだけでなく、生徒が自ら 学びとる力を引き出すことの重要さ に気付かされたのです」(田中先生)  年を追うごとに難関国公立大学志 望者は増え、当初40名でスタートし た総合コースの履修者は、現在では 80名に増加している。  また、「模擬国連会議大会」、「青少 年赤十字リーダーシップ・トレーニ ング・センター」、「日本の次世代リー ダー養成塾」、各種のディベート大会 など、さまざまなプログラムやコン テストに生徒を送り出していること も特色だ。東京に近い川崎市という 立地も生かし、都内で行われるオー プンキャンパスなどのイベントにも 積極的に参加させている。  「刺激を受けて、もっと勉強しよう というモチベーションを高めると同 時に、それまでの自分の学びが校外 でも通用することを知り、自信をつ ける意義が大きいと考えています」 (田中先生)  6年前からは、中学校から高校 に進学する時期に合わせて「ホーム ルーム研修」を導入した。今年は震 災の影響で中止されたが、例年4月 に実施している。  「中高一貫校の最大の課題は、中学 校から高校への切り換えをいかに図 るかということです。形式だけ中学 校の卒業式、高校の入学式を行って 日時 アクティビティー 目的 1日目 浅間神社参拝 高校生活の成功祈願 開校式 校長講話  オリエンテーション 教務部主任のお話 生徒指導部主任のお話 LHR クラスびらき ほうとうづくり クラスではじめての共同作業 Candlelight talk 1 学校って何?勉強って何?友達って何?など、あらた めて学校生活についてグループディスカッション 2 日目 ハイキング「16歳の地図」 三湖台~紅葉台~氷穴~風穴~樹海 ~野鳥の森~バス ハイキングコースと人生との重ね合わせ。みんながい るからゴールできることを感じさせる。

ROSE & CRYSTAL BALL 卒業生による講演会 未来予想図Ⅰ 未来の日付で履歴書作成 一筆啓上 保護者への研修報告をあらたまった文体で書くことで精神的な自立をはかる。 3 日目 洗足で一番早いスポーツ大会 高3体育祭種目の実施 限りなく私たちは(学年集会) 学年からこの合宿にこめた思いを生徒に伝える。 <図表9>洗足学園中学高等学校 「ホームルーム研修」行程表(抜粋)

●洗足学園中学高等学校

「総合コース」を組織し

難関国公立大への意識を高める

(11)

●桐蔭学園

到達度目標を明確にした

能力別の授業を編成

も重みがないと考え、それらを廃止 し、代わりに2泊3日の『ホームルー ム研修』を導入しました。①卒業生 の体験談を聞く、②保護者に向けて 感謝の手紙を書く、③20年後の履歴 書『未来予想図』を作成し、高校生活 のデザインに生かす、といった多様 な取り組みを実施しており、生徒た ちの精神的な成長を促す場になって います<図表9>」(田中先生)  1964年創立。中学校は男子7クラ ス、女子5クラス。高校からの募集も あり、男子部16クラス(普通科10、理 数科6)、女子部7クラス(すべて普 通科だが、うち5クラスが理数コー ス)を設置。そのほか、中等教育学校 が4クラス(男子のみ)ある。高校2 年は理系、文系、特文(数学・理科を 履修しない)の3コース、高校3年は 国立文系、私立文系、国立理系、私 立理系の4コースに分かれる。  高校2年までは男女で校舎が異な るが、高校3年では全員の学習エリ アを「進学棟」という同一校舎に移す。  「大学受験という同じ目標に向 かって、男女それぞれの良さを見 習って、刺激を受けあうことが目的 です。男子の大胆さ、女子のきめ細 かさは、別学のままでは分からない ところであり、進路選択に幅が生ま れる効果があると考えています」(佐 藤幸信先生)  同校は、創立当初から、当時まだ 珍しかった能力別授業を導入した学 校としても知られる。  その仕組みを具体的に紹介しよ う。例えば、男子部の理数科の場合、 英語、数学の授業において、6クラ スを能力別に再編し、6段階の授業 用のクラス(レッスンルーム)を作 る。年4回の定期考査の成績によっ て、各レッスンルームの10名程度を 入れ替える。普通科や女子部でも同 様に編成している。  同校では、学期の初めに生徒に到 達度目標を示し、内容を明確にした 上で授業を始めることにしている。 当然、授業内容も到達度目標もレッ スンルームごとに異なるため、定期 考査の問題も、レッスンルームごと に異なる。教員は担当するレッスン ルームのレベルに応じて、異なる複 数の問題を作成することになる。  「そのほかに、年2回、実力テスト を実施。こちらは共通の問題であり、 全員が同じ土俵で戦った場合、自分 の現状の学力がどの程度かを把握す る資料になっています。また、年度 末には、1年間の総復習の意味で、 統一到達度テストを実施。科目ごと に設定した基準点を満たさない場合 は、何回でも追試を重ねます。つま り、全員を一定の基準まで到達させ た上で進級させる方針を徹底してい るのです」(佐藤先生)  近年は、キャリア教育の充実も 図っている。卒業生の大学生を約10 名招き、高校1年の10月に文理選択 に関する話、高校2年の10月に志望 校選びに関する話を聞く機会を設け ている。また、9月の学園祭では、 高校3年生が卒業生や保護者などに 職業や学問の話を聞く「フロンティ アセミナー」を開催。感想文には、 第一線で活躍している人の話に刺激 を受けたという感想を書く生徒が多 く、有意義な場になっているようだ。  そのほか、「学習記録カード」<図 表10>を活用。定期的に調査期間を 設けて、その期間は毎日担任に提出 させ、コメントをつけて返却してい る。このカードのやり取りは生徒と の貴重なコミュニケーションの手段 でもあるため、調査期間にかかわら ず、年間を通して日常的に実施して いるクラスも多い。また、高校3年に なると、長期休暇期間中の勉強時間 のバランスを見るなど、スケジュー ル管理のため、自主的にカードを役 立てる生徒も多いそうだ。 <図表10>桐蔭学園 学習記録カード

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