あ ら ま し 富士通は,3GPP標準仕様に基づき,屋外型LTE無線基地局装置(eNodeB)を開発した。 本装置は,高効率・高集積化デバイス,柔軟なソフトウェア構成,およびシンプルなアー キテクチャの採用などにより,小型,軽量,低消費電力化を実現している。これによって, 移動通信ネットワークのトラフィック増大に向けた効率的な配備が可能であり,お客様 の設備投資,運用コスト低減に貢献できる。また,環境にも配慮したプロダクトとなっ ている。 本稿では,屋外型LTE無線基地局装置について,その概要や特長を紹介する。 Abstract
Fujitsu has developed outdoor LTE infrastructure equipment (eNodeB) based on the specifications in the 3rd Generation Partnership Project (3GPP). Thanks to the use of highly efficient and highly integrated devices, flexible software configuration technology and simple hardware architecture, this LTE infrastructure equipment is small, lightweight and has a low power consumption. This means it can be deployed easily and efficiently when a number of base stations are installed to cope with heavy traffic load in a mobile network. As a result, this equipment helps reduce capital investment and operating costs in our customers networks and it also contributes to the environment. This paper describes an outline of this LTE infrastructure equipment and its features.
● 渡辺君夫 ● 町田 守
LTEは,パケットサービス向けに最適化した無 線通信システムであり,高スループット,低遅延, 高い周波数利用効率を実現する。 (1) パケットサービスに最適化されたシステム LTEは,インターネット/メールに加え,リアル タイムな処理が必要な音声通話もIPパケットデー タ(Voice over IP)として取り扱う無線通信方式 である。 (2) ネットワークアーキテクチャのシンプル化 LTEでは,eNodeBが無線アクセス制御機能を具 備し直接コアネットワークに接続される。従来の 第3世代移動通信システムと比較して,無線アクセ スネットワークを構成する装置の階層が減り,シ ンプルになっている。これにより,データ転送お よびハンドオーバの低遅延化が可能である。 (3) マルチパス環境に強い無線アクセス技術 LTEは,無線アクセス方式として,下りリンク で は,OFDMA(Orthogonal Frequency Division Multiple Access), 上 り リ ン ク で は,SC-FDMA (Single Carrier-Frequency Division Multiple
ま え が き 近年,モバイルネットワークにおいては,スマー トフォンの普及により,トラフィックが急増して いる。多くの国内外の通信事業者は,周波数利用 効率の高いLTE無線基地局装置を多数配備し,ト ラフィックの急増に対応予定である。基地局の設 置場所についても,図
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に示すような様々な場所 でスペースを取らず簡単に設置できる装置が望ま れている。富士通は,NTTドコモ様など通信事業 者向けのW-CDMA開発,LTE開発で培った資産を 有効活用し,早期に小型,軽量で設置場所の自由 度の高い屋外型LTE無線基地局装置(eNodeB)を 開発した。 本稿では,eNodeBの概要について紹介する。LTE
を支える主要技術 LTEは,標準化団体である3GPP(3rd Generation Partnership Project)で,3GPP Release.8(1)として仕様化された無線通信方式の規格である。 ま え が き
LTE
を支える主要技術 MME IPネットワーク S-GW P-GW eNodeB eNodeB コアネットワーク eNodeB 地下 山間部 eNodeB 住宅地 都市部 eNodeB 都市間 eNodeB S1回線 UE S1回線 UE X2回線eNodeB: evolved Node B UE: User Equipment
MME: Mobility Management Entity S-GW: Serving Gateway
P-GW: PDN Gateway
図-1 LTEシステムの構成 Fig.1-LTE system.
(4) 保守容易性 遠隔からのソフトウェア更新により,機能追加, 変更が容易に行える。また,自律の保守診断機能 を備え,故障部位を早期に特定することが可能で ある。さらに,装置故障発生時には,一部機能を 縮退し,システムの動作を継続することでダウン 時間を最小化することが可能である。 (5) 環境対策 環境対策への取組みとして,装置の低消費電力 以外に,SON(Self-Organizing Network)の一つ として導入が期待されているEnergy Savingsなど を実現する。
eNodeB
装置構成 eNodeBは,1台 のBBUと, 最 大3台 ま で 接 続 可能なRRHにより構成される。BBUと各RRH間 は,標準仕様であるCPRI(Common Public Radio Interface)(2)に準拠した光インタフェースで接続さ れる。eNodeBの諸元を表-1
に,構成を図-2
に示す。 (1) BBU BBUは,デジタルベースバンド信号処理,コア ネットワークとの接続に使用されるS1回線の終端 処理,隣接eNodeBとの接続に使用されるX2回線 の終端処理,呼処理,そして監視制御処理を行う。 コアネットワークから受信するIPパケットをデジ タルベースバンド信号に変調しRRHへ送信する。 また,RRHから受信したデジタルベースバンド信 号を復調し,コアネットワークへIPパケットを送 信する。eNodeB
装置構成 Access)を採用する。OFDMAは,伝送信号フォー マットにCP(Cycle Prefi x)を用いて遅延波の干 渉を軽減させる仕組みを取り入れており,マルチ パ ス 環 境 に 強 い。 ま た,SC-FDMAも,OFDMA と同様にCPを用いているためマルチパス環境に 強 く, さ ら に,PAPR(Peak to Average Power Ratio)低減により,端末の低消費電力化に効果が ある。(4) 通信品質に応じた適用変調技術
LTEは, 変 調 方 式 にQPSK(Quadrature Phase Shift Keying),16QAM(16 Quadrature Amplitude Modulation), お よ び64QAM(64 Quadrature Amplitude Modulation)を採用し,複数ある誤り 訂正の符号化率と組み合わせてAMC(Adaptive Modulation and Coding)を実現する。AMCを用 いてeNodeB-UE間の通信品質に応じて変調方式を 動的に切り替え,伝送容量の最適化を図ることが 可能である。 (5) 高スループットを実現するアンテナ技術 LTEは,アンテナ技術にMIMO(Multiple Input Multiple Output)を採用する。MIMOは,複数ア ンテナを用いて異なるデータを送受信する空間多 重伝送技術であり,2×2MIMOの場合には,約2倍 のスループットで伝送が可能である。
eNodeB
の特長 eNodeBの主な特長を以下に述べる。 (1) 小型,軽量,低消費電力 歪補償技術であるDPD(Digital Pre-Distortion) をベースにした高効率アンプや高集積化デバイス を採用し,さらにアーキテクチャの見直しによる 部品点数の削減などにより,装置の小型,軽量, 低消費電力,自然空冷を実現している。 (2) 設置の自由度屋外向けに開発したBBU(Base Band Unit)と RRH(Remote Radio Head)は,電柱,壁面に容 易に取り付けられる。また,それぞれを別々の場 所に,分離して設置することも可能である。 (3) 柔軟な装置構成 お客様の要望するシステム要件(帯域幅とセク タ数)に合わせ,最適なハードウェア・ソフトウェ アによる柔軟な装置構成が可能である。
eNodeB
の特長 表-1 eNodeB装置諸元 項 目 仕 様 無線周波数帯 Band4,Band9,Band17 帯域幅 5 MHz,10 MHz,15 MHz,20 MHz アクセス方式 下り:OFDMA 上り:SC-FDMA アンテナ技術 下り:2×2MIMOに対応上り:1×2SIMOに対応 セクタ数 最大6セクタ 最大送信電力 60 W(30 W+30 W) 最大伝送速度 (セクタあたり) 下り:150 Mbps上り:50 Mbps S1/X2回線 インタフェース 1000Base-SX,1000Base-T 移動環境 ∼ 350 km/h 装置サイズ BBU:20ℓ以下 RRH:20ℓ以下(2) RRH RRHは無線信号の送受信をする装置である。 BBUからの各プロトコル処理されたデジタル ベースバンド信号をRF(Radio Frequency)信号 に変換,電力増幅しUEに送信する。また,UEか ら受信するRF信号を増幅し,デジタルベースバン ド信号に変換しBBUに送信する。 BBUおよびRRHの外観を図
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に示す。eNodeB
アーキテクチャ eNodeBは,小型,軽量,低消費電力を目指し, 従来複数枚で構成していたカードの集約を図り,eNodeB
アーキテクチャ シンプルなアーキテクチャを指向して設計されて いる。その結果,部品点数,カード間インタフェー スの信号線数を大幅に削減している。 図-2に示すeNodeBの各機能部の概要を以下に述 べる。 (1) CNT CNT部は,IPレイヤのプロトコル処理,呼制 御 処 理,OAM(Operations, Administration and Maintenance)処理,S1/X2回線終端処理,NAT (Network Address Translation)処理,帯域制御 処理,加えて,各機能部からの障害情報の収集, 装置障害監視処理などを行う機能部である。本機 RRH BBU CPRI APL BB TRX AMP CNT RRH RRH eNodeB 図-2 eNodeBの構成Fig.2-eNodeB hardware architecture.
(a)BBU (b)RRH
図-3 eNodeBの外観 Fig.3-eNodeB equipment.
る。 本 機 能 部 は,MMIC(Monolithic Microwave Integrated Circuit)などのRFデバイスで実現して いる。 干渉制御とグリーン技術 LTE無線基地局は,高いスループット性能と低 消費電力化が求められる。そのため,eNodeBには, 干渉制御機能とグリーン対応機能を実装した。以 下に概要を述べる。 (1) セル間干渉制御(ICIC:Inter-Cell Interference Coordination)機能 ICICは,隣接セルとの境界で,同一周波数の無 線信号が使用された場合に発生する電波干渉を避 けるために,隣接するeNodeBが自律的に異なる周 波数の無線リソースを割り当てる機能であり,セ ル境界に位置する端末のスループット向上を実現 する。ICICの概略を図
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に示す。なお,ICICの詳 細は,本誌掲載の「セル間干渉制御(ICIC)技術」 を参照いただきたい。 (2) グリーン対応機能 eNodeBは,以下のグリーン対応機能を有する。 ・消費電力/温度モニタリング機能 装置の消費電力/温度のモニタリング機能を有す る。モニタリングした情報は,ネットワーク機器 全体の消費電力,CO2排出量の一括集中管理(見え る化)のために活用される。 ・遠隔電源ON/OFF機能(Energy Savings) 動的に変化するトラフィック状況に応じて,遠 干渉制御とグリーン技術 能部は高性能CPU,通信プロセッサ,FPGA(Field Programmable Gate Array)などのデバイスで実 現している。また,CNT部に実装されるAPL(アプリケー ションソフトウェア)は,3GPP Release.8で制定 された標準仕様に準拠しており,Cell lock,Radio admission controlなど呼制御処理,Performance Management,Cell Supervision,Call Traceなど OAM処理を行う。また,eNodeBの設定・運用の 自動化などを行うSONなど将来の拡張を見据えた インタフェースを有する。 (2) BB RLC/PDCP/MAC/PHYの各レイヤのプロコトル 処理を行う。LTEの特徴であるMIMO処理,多値 変 調 処 理,OFDMA処 理,SC-FDMA処 理,AMC 処理,H-ARQ処理,電力制御処理,セル間干渉 制御処理などのデジタルベースバンド処理を行う 機能部である。本機能部は高性能DSP(Digital Signal Processor)やFPGAなどで実現しており, 今後の3GPP標準化仕様のリリースに合わせ,ソフ トウェアのダウンロードで機能拡張を行うことが 可能である。 (3) TRX 送信信号の歪補償処理,D/A変換処理,A/D変換 などの無線信号処理を行う機能部である。本機能 部は高性能CPU,FPGAなどで実現している。 (4) AMP 無 線 信 号 の 送 信 電 力 増 幅 を 行 う 機 能 部 で あ セル端 eNodeB セル端 干渉・スループットの低下 電 力 周波数 電 力 周波数 セル#0 セル#1 セル#0 セル#1 セル中心 セル中心 eNodeB間通信 図-4 ICICの概略 Fig.4-ICIC.
渡辺君夫(わたなべ きみお) アクセスネットワーク事業本部モバイ ルプロダクト開発センター 所属 現在,LTE無線基地局装置の開発に 従事。 町田 守(まちだ まもる) アクセスネットワーク事業本部モバイ ルプロダクト開発センター 所属 現在,LTE無線基地局装置の開発に 従事。 著 者 紹 介 隔から装置の電源をOFF/ONする機能を有する。 これにより,トラフィックが減少する夜間の消費 電力低減が期待される。 Energy Savingsの概略を図
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に示す。 む す び 富士通独自の高効率アンプ技術や高集積デバイ スの活用,ソフトウェアによる柔軟な装置構成の 採用,加えて,ハードウェア規模を削減可能なシ ンプルなアーキテクチャの採用などにより,小型, 軽量,低消費電力の屋外型LTE無線基地局装置を 実現した。また,装置にはグリーン対応機能や干 渉制御機能を実装した。 む す び 本装置の特長や機能は,今後の移動無線のトラ フィック増大に向けて効率的に配備可能であり, お客様の設備投資,運用コスト低減に貢献するも のである。今後もお客様や社会からの要請を早期 に実現し,価値の高い製品の実現を目指す。 参 考 文 献 (1) 3GPP TS36.300 V8.12.0. http://www.3gpp.org/ftp/Specs/html-info/36300.htm (2) CPRI Specifi cation V4.2.http://www.cpri.info/downloads/ CPRI_v_4_2_2010-09-29.pdf オンピーク オフピーク 電源オフ 電源オフ 図-5 Energy Savingsの概略 Fig.5-Energy Savings.