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「概念の概念」の概念 : 人工概念と概念表現の関係について

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全文

(1)

Tke 

JaPanese

丿b獄 獺 J of PSJ

cJtonomic  Science 1991

Vo1

 No

1

15

32

概 念

概 念

表現

関 係

に つ い て

早 稲田大 学

Conceptualization

 of 

Concept

‘℃ oncept ,,:

 

On

he

 

Relation

 

Between

    

Artificial

 

Ca

七egories  and  

Conceptual

 

Represen

七ations

Kenpei

 

SHIINA

}デ{iseda び niversity

  

Why  do  we   utilize  arti丘cial   categories  

in

 

investigating

 cQncepts  and  categor1es ?

No

 clear answer  has been given  to this question

 Then ,

 Ilow can  we  claim  the validity

of artificial categories  P

 

Thls paper makes  

logical

 set

 

theoretical

  and

 

psychological

consideration  around  this theme

 

Tlle

 major  conclusions  are : 1)

Arti

且cial categorles

(concepts )should  

be

 homomorphic  images  of   existent   categories (concepts )

 

2>SQme

functional (or abstract )concepts  cannot  be represented  

by

 sets  of  arti丘cial  stimuli ;this means  arti 且cial categories  are  not  alLpurpose  tools

3

As

 

for

 the types  of categories  and

concepts  which  can  be represented  

by

 sets

 a)intension and  extension

 b)the number  of

instances

, and  c)modes  Df uncertainty  both in intellsioll and  extension

乱re problems  of

critical importance

  In particular

 we  must  make  explicit  representational  

formats

 for the processing

 

of

 

uncertainty

 

and

 logical

 

structures

 

inherent

 

in

 

concepts

 

alld

 

catego 「1es

Finally,4

)people  can  handle conceptual  

information

 in completely  difCerent工y ways :they

a「esolnetimes  naive  statisticians

 sometimes  naive  scientists

 according  to the task

demands  and  the data available  to them

Key Wards : concepts

 categories

 sets , representation

 uncertainty

 1

人 工 概 念

 

実験心 理学の様々 な分 野で人 工 的刺激 が 使 用されて い るが, こ の こと自体が非 難さ れた り問 題と された りする ことはあま り ない

くの究は刺 激を処理する 心 理 過 程に注 目し て お り

刺激その もの の あり さ まに注 目する の で はないか らであ り

刺激 とは ある程 度 独立に

刺激 処 理 過 程が研 究 可 能で る と 了解されて い るか らで あろ う

ところ で概 念

カ テゴ リ

の研 究は

人間の持つ知 識 構 造と深 く関 係 す るの だが

その場 合に は知識 がい か なる過 程に よっ て獲得さ れい かに使 用される かを調べ る の と同時に

獲 得さ れる知 識そ れ 自体の内 的

構 造を調 べ の が重 要である

知識とはその大 部分 が 広 く外 界ic つ い て の の で あるか ら外 界の あ りさ ま が知識構造や内 容に大 き な影響を与 えて い る の は疑いない

そ して

人 工 概 念 を用い る 実験に おい て外 界と}ま 人 工刺激 慨 念 〉 に他 な ら ない の で ある

従っ て

外 界の事 物と その 内 的 表 現 構 造の間:こ り立 っ て いる関 係が, 人 工刺 激とその 内 的表 現と の間に成 り立つ こ とがよい概 念 研 究の

つ の 必要 条 件 とな り

こ のため に人工概 念は常に外 界の 事 物 を考慮しな け ればな らない こ と になる

 

最近で は

すべ ての概 念

カ テ ゴリ

が同じ プロ セ ス に よっ て 処 理 され

同じ形 式で表現さ れ ると考 える の は 不適 切である とい う主 張がしぽしばな さ れ る (Nelson

1983

p

133;Armstrong

 

Gleitman,

& Gleitnlan

i983

;Homa ,1984;Kei1

1989)

ま た 人工刺激を 用い た

「概 念研究 」 が有 意 味で ある とすれぽ

人工刺 激の集 合 が外 界の事 物や抽 象 概 念の表 現 (representation )にな

(2)

16

基 礎 心 理 学 研 究 第 10巻 第

1

号 た く存 在し ない よ う な人工概念を創作して

この ような 刺 激に対して も普 通の概 念と 同 じ よ う な処理が 行われる とい っ た た ぐい の研 究が無 意 味とは言 え ない だろ うが

これ は 「実在 する概念」の研究が

段落し た後にわれ るべ き もの で

っ と も

あ る任意に作成 さ れ た 人工概 念が

全て の実 在 する概 念と ま

た く無 関係であ る こと を証明する のが 困難 なの も事 実であるが)

こ の 二 点 を 認 め る な ら ば

人 工概 念に も種類 があるべ であ る

人 工概念作成者は自分が成 し た人工 概 念が どの よ うな種 類の実 在の概 念 を 表 現し てい る かを 常に意 識すべ きである

  人工概 念に は そ れ を作 成した研 究 者の概 念 観が しぽし ば研 究 者自身 も 気 がつか ない ま ま 「投 影 」 さ れて い るは ずである

本 論の 日的は 人 工刺 激が (作 成 者の意 図と特 に か かわ りな く)い か なる意 味で在 する念の現に なっ てい る か を考 察し

この こと を通じて人工刺激を用 い た概 念

カ テ ゴ リ

研 究の意 味に対して新しい視 点を 提供 し

さ らに概 念研 究

般につ い て考 究 す るこ とであ る

本稿で は 具体 的モ デルや 実 験以前の 問題を扱うの で

議論は形式的理論 的であり

具体的な 処 理過程のモ デル や実 験 的 事 実の解 釈につ い て は必 要 最 小 限の言 及 し かな さ

2

 

in

考 察際 念 頭て い る の は

念は主 として

Bruller

 

Goodnow

Austin

(1956)

Posner

  Keele  (1968  Reed  (1972

,  Franks  &

Bransford

197

ユ)

 

Rosch

Mervis

1975

), 

Neumann

(1977)

,Hayes,

Roth

 & Hayes

Roth

 (1977)

  Homa

(1 9

 78 Medin & Schwanenflugel 1981  Fried

Holyoak 1984

名 (1985, で使 用さ れ たものである

考察の道 具と して用い る の は 初 歩 的な)集合 論

論理 学

フ ァ ジ

集 合 論

お よび確 率 論で ある

また本 稿で は概念を 「 」

集 合 を { }に よっ て示 す

例 え ば 「犬」 は犬とい う概 念を示し

{犬}は実 在 する個々 の犬の集 合 を示 す

ま た {「犬」

「猫」}は概 念 「犬」「猫」の集 合を 表 し

{伏 }

{猫}}は 犬}と{猫}の集 合を衷 す

 さて人工念が何ら か の意味で実在 する概念の表現で な け ればな ら ない とい うこ と を認め る とする と

心 理 学 が 自ら外 界の記述を 行 わ な げ れ ば な ら ないで あ ろ うか ? 概念の完 全な 理解に は外 界の完 全な 理解が必 要でる と い うのは 正 しい のであろうが (

Neisser,

1987)

これ

は心 理学の範 囲 を は る かに超え る仕 事であ る

さ らに

抽 象 概念の よ うに外 界に re

ferent が存在 しない よ うな概 念 も数 多 く存 在する

こ の よ うな 概 念はいわぽ 「内 界」 に 存 在 する ことにな り

もし 「内 界」の 完 全 な記 述が 可能 な らば心 理 学は既に完 成して いることに なる

 そこで問 題になる の は

人工概 念に よっ て実 在 する概 念が表 現さ れ る とは ど うい う事態を指し てい るの か であ る

こ のた めには まず実在 する概 念が どの ように分 類 さ れる の か

そ し て 「表現する」とは ど うい うこ となの か を 明ら か に し なけ れ ば な ら ない

次 節に お い てまず 「表 現」につ い て察し

次 次 節で概 念の 分 類を試み た い

2

表 現 (representation につ い て  心理学に おける 「表現」 につ い て の最 も厳 密な 理 論 は 測 定 基 礎 論 (Krantz

 Luce , Suppes

&Tversky , 1971) に見 られる が

本 論で は この 理 論の基 礎になっ てい る同 型写 濛

及び同型 写像論 を 比喩 的に援 用 する

これは いわ ゆ る 「モ デル理論 」と呼 ぼれ る大 きな体系の

部 分 であ り (神野

内井

1976)

心 理学におい て は

Ho1.

land, Holyoak , Nisbett,&

Thagard

1986

 Halford

1987

),

Gentner

(1989),須賀 (1989)等の適用 例

ま た Rume ]hart & Norman (1988)の解 説 が ある

  表現と はある事 象を他の事 象や記 号 体 系で記述 するこ とである

まず 表 現されるべ き体 系

S =

X ,R

この 体 系を表現 す る体 系 S’

〈Y

R’ 〉と す る

こ こで X は 体 系 S 内の要 素であ り, R は その要 素 問の関 係である

ま た }

は休 系 S’ 内の要 素で あり

R’ はその要 素 間の 関 係で ある

表 現 する とは

f

:x → Y な る 写像が存 在し

さ らに

R

R

おいて保 存さ れ る こと を意 味 する

た とえぽ

S =

〈{「動 物」

「哺 乳 類」

「馬二}〉

R

動 物は 哺 乳 類 の上 位概 念である

哺乳

ff

 }ま馬の上 位概念で ある〉とする と

こ の体系 S は た と え ぽ κ y2 → → →   」 」 類 物 乳 」 動 哺 馬 「 「

U  

f

かつ R,

(X >y> a)と表 現で きる ことになる

この例の 場 合

表 現 されてい るの は 上位

下 位概念の 関 係だけで 他の関 係は

象 されて いる がこれで別に不都 合は ない と 考え るので ある

 Palrner (1978>は表 現

般の形 式 を理解 することの重 要性 を指 摘し表現につ い ての重要な図 式を提 案し た

彼 は

外的 匿界

(被験者の)内的 世 界

(研 究 者がてる) 認 知モ デル 研 究 者の持つ〉 認 知理論の 4種 を 区 別し

その間の関 係 を 図 1の ように示 した

す な わち

内 的 世 界は的 世 界の現であ り

認 知モ デル は 内的 世 界の表 現であ り

こ の こ とに よ り認 知モ デル は閭 接 的に外 的 世 界の表現}こな るこ とにな る

さらに

認 知 理 論は認知モ デル を 立て る際の枠組み とし て使 用さ れる もの である

(3)

外 的 世 界 ↑ 認 知 内 約 匱界 (被 験 者 ) ↑  仮 定 認 知モデル 実 験 者 )          ↑       認 知理論 (実 験 者 ) 図

1

矢 印の先は表 現されるもの 椎名  「概 念の概 念」概 念 矢 印の始 点は表現す る ものを 示す 外的世界 ← ?  認知 概 念 的 知 識の表 現 (被 験 者 )← ↑ 仮 定 概 念 表 現モ デル  

(実 験 者 〉 外 的 世 界  

↑ 具 体 化   図 2 外 的世界 表現モ デル →  人 (実 験 者 )   具 体 化 函 3 人工概 念 さて

概 念 研 究に的を しぼっ た 揚合

この図 式は どう書 ぎ直せ, 人工概 念は どの ように位 置づ け られるの であろ うか ?  この件に関して は

3

場では まず内的世 界は被験 者の概 念的 知 識 とな りこ れは外的 世 界の表現である

に認 知モ デル と認 知 理 論を

ま と めに して考えるとする と

これは概 念 表 現モ デル とい うこ とがでる であろう (図2)

概 念 表 現モ ル と は 「被験者の持つ外 的 世 界の表 現」の実験者に よ る 表 現である

2

の ように人工概 念ば概 念 表 現モ 準拠してその外 界にお け る具 体 化とし て作 成 される

こ の場 合 人工概 念は外 界の事物に

外 界被験 者) 概 念 的 知 識の表 現→ (実験者 )概念表 現ル → 人工概 念 とい う形で

3

段階を経て 間 接 的IC関 係 するこ とに なる (図2の

二 の立 場は

外 界の事 物の直接 的 表 現 と し ての人工概 念である (図

3

この立場で は

入 工概 念 作 成 者が界に対し て強い仮 説を もっ て お り

その表 現である刺激を直 接 的に作 成 する場 含や

外界の事物を 単純化 して 人 工概念とする場 合 が ある

こ の場 合は外 的 世界と 人 工概 念の間の関 係は (少 な く と も実 験 者に とっ 外的世界   ↑  認 知 概 念 的 知 識の表 現 (被験 者 )   (

1

1

  ;

l

! 導出   ↓ ↓ 抽象概念 (被験者)← ↑  仮 定 概念 表 現モデル  →   人概念 具 体 化 図 4

17

て は) 比 較 的 明 瞭でり, 被 験 者の もつ 内 的 表 現のあ り さ まにつ い て は と り たてて育及 さ れ ない

内的表現はデ

か ら推 測 な る

立 揚

外 界 referent が存在し ない 抽象念 を 対 象にする際に出 現 する

例 えば

「希 望 」「意 志 」「定 義 」の よ うな概 念は自 然界に対 応 物が存 在せず

人 間の心的 活 動に よっ て生じ る もの と考え ら れ る (図 4)

この よ う な概 念に対し て阿 らか概 念 表 現モ デル が 仮 定され

その具体 物とし て人工 概 念が

f

乍ら れる

  最 近の (実 験心 理学 系の) 概 念

カテ ゴ リ

の研 究に は 二つ の流れ がある

.一

つ は記 億 内項 凵間の関 係を問 題 にするもの であり

例え ば意 味 記 憶の研 究が これに相 当 する

こ の流 れの研 究の特 徴は外 界の事 物は直 接 参 照さ れず

書 語に よっ て記 述された概 念 間の関 係を取 り扱 う こ と で ある

もう

つ の流 れは

外 界の事 物と記 億項目 (カ テ ゴ リ

との 関 係を扱う もの で

ほ と ん どが人 工 刺 激を採 用 するこ とに な る

この 二 つ の流れの差は要 す るに外 界の事 物に対 する表現 構 造 を 問題にするのか, 既 に 内的に表 現さ れ て お り言語 的ラベ ル がつ いた概 念

カ テゴ リ

閲の 関 係を問 題とするか で あ る

こ の こ と が 若 干の混 乱の原 因と なっ て い る

例 えば 「犬」に言及 する 際に

外 界在 する犬の ことを 語っ て い るの か 概 念 「犬 」につ い て 語っ てい る の かが明 瞭で ない こと が多い

この状 態で は どの 立 場の 人工念を 用い るのかが不明暸 になる

  さて第

1

3

の立 場 での人 工概 念は外 界の事 物で はあ るのだが

「(被 験 者が) 概 念内的 表 現 」に対し て 実験者が 想 定 するモ デル に準じて作 成さ れる

従っ て

こ の立場の人工概 念は

実 験 者が被験者の 現 構 造を仮 定しな け れば作り よ うのない ものなのであ り

よっ て こ の立場の人工概 念は人 間の知 識 衷 現 構 造の モ デル に従 属 する ことにな る

第 2の立場 を 取る と内 的 表 現 を気に し なくて よ くなる が

その か わ り外 界の記 述 を心 理学の仕

(4)

8

基 礎 心 理 学 研 究 第 10 巻 第1号 事 として引 き受:なけれ ば な らな くなる

これ が 冂丁能で ある場 合があるのを認め る とすれば

この立 場で の人工 概 念は被 験 者の内的 世 界か ら

応 独 立 と な る が

し か し 実 験 者の外 的 匱界表現モ ル に は完 全に従 属 するこ とに なる

験心理 学では

実 験 する立場と実 験さ れ る 立場 を明確に分 離してえ るのが伝統で ある の で

実 験者 が どの よ うな表 現 を想 定す るの も 自由だ が

だか ら とい っ て被 験 者の表 現 構 造とあま りにかけはなれるの はまずい ので あ る

結局

人工概 念の意味とは実験者が持つ 概 念 表現モデルか外 的 瞳 界 表 現モ デル の分 類を前 提に し な け れば議 論で きない こ とになる

3

概 念の分 類

 

概 念の 分 類につ い て は様々 な 立 場 がある (4

参 照 )

人 工概 念との関 係におい て は

以下の

5

つ の論 点につ い て 整 理しな け れ ばな ら ない だ ろう

1) 概 念が集 含 論 的に 表 現可能か どうか

も し可能な ら ば 2) 集 合が外 延 的に 定 義さ れ るのか 内包的に定 義されるの か

,3

)有 限 集 合 で あ るのか無 限 集 合である のか, 4)通 常の 集 合である のか 不確 定性 を含ん だ集 合であるのか, さ ら に 5) ある 特定の個 物 を 同 定プ卩 セ ス に注 目する のか

異な る事 物 を同等と見なすプ ロ セ ス に注目するの か である

これ ら の問題につ い て順 次 考 察してゆ きたい

  3

1 集 合と して の概 念

 

Bruner,

 Goodnow

Austin

 (

1956

)の 冒頭に

To

 categorize  is tQ render  discriminably different

things equivalent

 to group  the objects  and events and  people around  us 

into

 class  membership  rather

than their uniqueness

」 とい う記 述がある

この定義

現 在 も基 本 的に生 ぎ続 けて お り

こ の ような概 念観 を定式 化す るの に 最 も 妥当 な 道具 は 集 合 論 で ある (

Hunt ,

1962;

Reitman ,

1965

;吉 田,1972;寺 岡, 1977)

こ の アブ卩

チ の本質的な点は概 念が集 合

すな わ ち何 ものか のあつ ま り

に よ

って表 現される と仮 定 する点で あ る

集合 論 的モデル には2形 式 ある

.一

事 物の全 体集合を想 定 し

その部分集合 として概 念な定 義 する場 合で

も う

つ は

事 物の持つ特 性の集合を 考 えて

こ の特

「生に よっ て概 念を表現 する方 法である

前 者の ア プ ロ

チ はい わ ゆ る外 延 的 定 義に相

後 者は内 包 的 定 義}こ当す る (宋 木

1969)

こ の 二 つの ア プロ

チに 触れ な が ら集 合 論 的モ デル につ い て考え たい

  3

L1  事 物の全 体集合 を想 定 する場 合 (外延 的 定 義 )

 

集合論 を用い て概 念の定 式 化す るに あ たっ て

あま り にも基 本 的である が た めに見 落と さ れがち なのは, 集合 論を用い る ため には

要 素を指 定 するこ と が是 非とも必 要 なことで あ る

ところで集合の要 索は他の要 素と判 然 と区別 で ぎ る 個 別 性 を持た な けれ ぽな らない と される

例えば

現代的 集 合 論の創 始者

Cantor

に よれば 「集 合 とばわ れ わ れの直 感 (Anschauung >ま た は 思 考 (Den

ken )の対 象で

確 定 し て い て , し か も互い に明 確に区 別 さ れる もの (そ れ を集 合の 元 とい う)を 1つ の全体と してま とめた もの である 」 と定 義さ れる か らである (岩 波 数学辞典 )

この 定 義で は集 合の元は 確 定し てい て明 確に区別 で き ればよい と して

具体 的に どの よ うなもの が 元 とな り うる か につ いて は何 も述べ てい ない

従っ て {犬

1,

犬 2

,…

}や {「犬」

「猫」

,…

{「動 物」

,…

}は もしその要 素が明確 確定 と見 な さ れ る な ら ば集 含にな り うるの である

こ こでちに 起され るの は

ア リス ト テ レ ス の 第

実 体と第二体の 区別である

「カ テゴ リ

1こよれ ば (1[1本 光 雄 訳

1971

p

7>第

実 体とは

「何か或る基 体につ い て言わ れ ることもなけ れば

何か 或る基 体の うちにある こと も ない ものの ことで ある

例 え ば或る特定の人 間

ある い は或る特定の 馬 」で あ り

第二 実体と ば 「

に実 体と言わ れ る ものが そ れの う ち に属するとこ ろの種 とそ れ らの 種の 類 と である⊥ 例え ば第

実 体は 「個々 の 犬 」とい う要 素であり

第二実 体 は 「犬」とい う集合的 概 念である

心理 学に おける概 念 研 究の従 来の用語法に従えば 事 例は第

実 体であり

概 念

カ テ ゴ

実 体る とい うこ とにな り1〕 , (外 延 的 ) 集 合 論 的モ

ア リス トテレ ス 概 念を念頭に置 ぎなが ら

事 例を要 素に よっ て

概念

カテ ゴ

に よっ て表 現 するモ デル なのだ と考 え る こと ができる

す なわ ち 「犬」= {犬

1,

2

と なる

さ らに 概 念

カ テ ゴ リ

の さらに高 位の集 合 を も考える こと がで き る

ア リス ト テ レ ス の古 典 的理 論

対して

,Russell

の タイ ブ 理諭 (Whitehead &

Russell

1910;

Wilder,

1965;末 木

1969> も同じよ う な 「存在 者 の階層 的 構 造」 を考える理論と言えよ う

こ こでも

犬 1

犬 2の よ うな 直 接 指 示 (ostensive  

denotation

)で き る事 物と

「動 物 」= 「犬 」

,…

「生物」

{「動 物」

「植 物」

,…

}の ように直 接 指示で ない概念のあつ ま り

その ような あつ まのあつ ま りを 区 別し な け れ ば な ら な い

とい の は, 概 念 「犬」は集合 伏 1

犬 2

,…

}の 要 素であろうか ? とい う問 題 が 生 起 する か らである

も し       「犬」; {犬

1,

犬 2

,…,

「犬} とするな らば 1) 概 念とカテ ゴ リ

の違い につ 後に述べ る

(5)

椎 名   「概 念の概 念 」の概 念 ユ

9

       「犬 」∈ 1

2,

{犬 1, 犬 2,

, 「犬 」}} と な り

以 下 無 限ル

プictsち込むのである2)

 さて延的に 現 され た集合に よっ て表現口

能な慨 念 と は, と りわけ 類 (クラス) 概念と な るのだ が, これに よっ てすべ て の概 念が 説 明できる の であろうか ? 以下 に示 すのは集 合 論 的 定 式 化が不可能か

あるい は不自然 な概 念の 存 在である

 少なくと も4種 類の概 念は集 合論的 定 式 化に なじまな い よ うに思 わ れ る

まず

「現 実」 「必然」 「抽 象」 「正義」 とい うよ う な 高 度に抽 象 的 な概念 を 考え てみ よ う

た と え ぽ 「現 実 」 を 考えてみ る と, その要素と認 定さ れ るべ き ものは はっ きり しない ズ 現実

{現実 1

現実 2,

} とい う様に示せ ない の である

この原囚は個 別 性ある い は分 節 性の欠 如である

「犬」 とい う概 念の場 合は, 必 要

2

) 実はこれで もパ ッ クス が生 じる

「犬」 「猫」「自     動 車」

の ような 概 念 が      {犬

1,

2,…

}{猫

1,

2,…

}      {自動 車 1, 自動車 2,

}    の よ うに表 現で きる もの と仮 走 する

い ま述べ よ     うに      「犬」= {犬 1

犬 2

,…

「犬」}    とする と問題がありそ う なの で

と し ての集 合    は 自 分 自 身 を 含 ま ない こ とにする

さて 「概 念」 と    い う概 念 も集 合 論 的に表 現で きるとす れば          「概 念」

{概 念 1

概 念 2,

}    例えば 「概 念」

{「犬」

「猫」

「自動 車 」,

}    となる はずで ある

すな わち 自分 自身を 含 んでい な    い よ うなすべ ての概 念の集 合が 「概 念」となる

と    ころで 「概 念」 は 「概 念」 に含ま れ ていたのだ ろ う    が ? 自分 自身を含んでい ない よ う なすべ て の概 念    の集 合 が

f

概 念」であると定義し たのだか ら      「概念寉{概 念  1, 概 念  2

 }; 「概念」     (1)    で なけれぽな ら ない

し か し (1) を 認 め るな ら ば    「概 念」は 「概 念」 に含まれてい い のだ か ら      「概 念」∈「概 念」    でな け ればな ら ない

これ は Russell の パ ラ ドッ ク    ス Wilder

1965

1985)と 呼ばれる も    の に他な ら ない

こ のようなパ ラ ドッ クスを 防 ぐた    め に は

「犬 」

「猫」

「自動 車」

よ うな概 念と

「概    念」 とは タイプが 異なるとしな け ればなる ま い

      以上の議 論は単なる言 葉の遊び以上の心 理 学 的 意     味を持つ

え ぽ 「動 物」は      {犬

1,

2,…,

1,

猫 2

…,

牛 1

牛 2

}    で は な く て      {「犬 」

,…

}    で な くてはならな くなる

する と      犬 1¢

r

動物 」    とい うこと}こなる

であ れば犬 1

犬 2

犬 3

とい ように個 物である要 素を指し示すこ とができる

とこ ろが

「現実」の場 合に は こ の よ う な指し示 しが難し く外延的な定 義は 不自然で ある3 )

ま た抽 象 概 念で な くて も「水 」

「空 気」の ように 英 語で 不可 算名 詞と よ ぽ れ る ような概 念に対して も 同様 の個 別 性 分 節 性の欠 如が観 察で きる の で

集 合 表 現は難 しい か もしれない

同様に 「美しい

「大 きい」, 「楽し い二の よ うな 形 容 詞 で表される 概 念 も集合表現は難し い

何が 「美しい 」事物で あるこ と を決め るのは難しい し, 仮に これ が可能である とし て も

それらの事 物を 並 べ ても 「美しい」 とい う概 念を表 現し たことに はな らな い であろ う

 つ

合 が たっ た

つ の要 素しか 含 ま ない場 合を 考えてみ よ う

例えぽ

「伊 藤 博 文

「イ ギリス o た 固 有名 詞で表現 される 概 念 がある

こ の よ な概 念 を, 外 延 的 定 義 するのは間違い ではない が同語反復的 で あ り

何 もの かを 「まとめ る 」 とい う操作にな じ ま ない

すなわ ち 「伊藤博 文 」伊 藤 搏 文 }は たい した 意 昧は ない の である (3

7 参 照〉

 最 後に

「上にある」

「離れて い る」とい っ た状態を 表 す 概 念

「泳 ぐ」や 「食べ る 」 よ う な動 詞表 現さ れ る 概念を考え て み よう

この よ うな 概 念は関係やシ ス テ ム の状 態を表 現 する

伝統的 立 場で は 関係 概 念と呼ばれる もの であり

多くの場 合 抽 象 概 念でもある

論 理 学の用 語を用い るならば二の 種の概 念は (多 項 ) 述 語 と 呼 ば れ

認知科 学で は フ レ

ス キ

マ で もに相 当 する

「上にある 」とい う概 念を考え て見よ う

物体 X と物 体

y

の 空間 的 位 置 関 係の 全体を全 体 集 合 と 考え

その要 素で ある個々 の空 間 配 置に対 して

「X が Y の上にあ る」 とい う命題が成 立 する か否か で部 分 集 合を考え るこ とがで きる

しか しこ の 部 分 集 合は 「上にある 」とい う 概 念が 成立 し てい る事例の 集 合で はあっ て も 「上にあ る」 とい う概念その もの で は ない

なぜ な ら

こ の 部 分 集合 は 「(Y が X の)下にある 」 とい う概念の事例 集 合 と見な し て もよい し

「(

X

Y

亡よ) 重なっ てい ない」 とい う概 念の事 例 集 合と見 なし て も よい か らで

こ の よ うに関 係が成 立して い る事態の集合を示すこ とは可 能だ が

この 事 態の 集 合は概念その もの とは 言いが た い

以 上の こ と を 論 理 学 の言 葉で 言 え ば

f

を 厂上にあ る」 とい う述語 と し, X, y を空 間 内の物 体の位 置 とする な らば

ア (X

が真で ある場 合 と偽である 場 合 は 区 別 できるが

命題関 数が真と な る事態集合

f

とい 3) 例 えば {太 郎 君に とっ て の現 実

花子さんに とっ て    の現実

,…

}とい う集 合はつ るが

指 し示せ な    い とい う点につ い て は同 じこ とである

(6)

20 基 礎心 理 学 研 究 第

10

巻 第 1号 述 語その もの で はない とい うこ とで あ る

同 じこと を認 知 科 学の 言葉でいえぽ

f

とは フ レ

ムで あ り,

V

s は slot

filler

であり

フ レ

ムその もの とフ レ

活 性 化さ れ る状 況の集 合を同

視 するこ とは で ない とい う こ とである

 し か しな が ら

数学 的集 合論で は しばしば 関 係を順 序 対の集 合と同

視 する (

Hallnos,

1960

訳 書

 p

48)

心 理 学で も

Reitman

(1965)や古田 (

1972

)は こ の よ う な 立場を とる

し か し Frege (藤 村編 訳

1988)は

早 くか ら記 号の意 義 (

Sin

コ)と意 味 (Bedeutung )との 区 別を 行い

同 じ意 味を持つ 記 号で も意 義 が 異なる揚含 があるこ と を 主張してい る (野 本

19

 

88a

な わ ち じ集 舎で あっ て も

異な る意 義に よっ て導 出 される場 合 がある わけで

概 念とは こ の 意 義に深 く関 係 する の である

野本 (1988b)に ょれ ぽ

 Frege の意 義と意 味の 関 係は

Carnap (1956)の内包 と外 延の区 別に ほぼ対 応 す るd>

関 係 概 と は 関 数概 念 も あ

Cassirer

(1910)は実 体概念と関数 概 念を区 別 する ことの重 要 性

必要 性を早 くか ら主張し てい る

簡単に 言 う と

実体概 念とは

実 体の集 合と そ れ を 類 と して ま とめあげてい く際に生じ る集 合であ り

関 数 概 念は 上で述 語 数学

物理学 等で用い られる関数で表現さ れ る概念であ る

前 者はか た ま りで り, 後者は働 きで ある

彼は関 数 概 念 と実 体 概 念と は区 別さ れ るべ の であ り

多 く の近代科 学の概念は類 概 念と して でな く

関 数 概 念とし て把 握さ れるべ であ る とする

集 含で表 現さ れるの は 主 として実 体 概 念 的な類 概 念であり, 関数概 念を集 合表 現 するのは難し く

時とし て不可能で ある こ とになる

 少な く とも以 上の

4

種 類 (抽 象 概 念

形 容詞的 概 念

個 体概 念

関 係 概 念 )の概 念を集 合 表 現 するの は不 自然 で あ ろ う

し か し

注 目 し な ければ なら ない の は

集 合 に よっ てある種の概念が表現 出来ない場 合で も

その よ

4

)  1)  宵の 明星と宵の明星は同

である

  2

 

宵の 明星は明けの明星 と同

である

   とい う二 つ の文 章はまっ たく同じことを主 張し てい    るのであろ うか ? 

解 釈は どち らの文 も1「金    星が 金星で ある 」 とい う 自明の理を示して い るとい    うものである

し か し ながら

「文の認 識 価 笹の説    明に当たっ て は

単に文の意味= 真理値 (従っ て

   その構成要素名の意味= 表示 対 象 )劣らず

その    意 味の与え ら れ方, 規定の仕 方 が 含ま れ る文の意義    

思 想 (その構成要 素 名の意 義)が考慮に い れられ    ねばならない」 (野本

1988a

  pp

33

34 )

分析哲    学の諸 家の用 語 法は非 常に大 ざっ ばに言っ て

Sinn

   

concept

intension

 

Bedeutung=

extension の

   よ う に ま と め ら れ る よ うに 思 われる

た だ し

Sinn

   は意 味

意義

Bedeutung は意 味

意 義

指示対    象 等と訳さ れ混 乱し てい るの で注意を要 する

うな概 念が

つ の 「思 考の対 象」 と される な らば その集 合は常につ る こと

すな わ ち概 念の合は存在 す ることである

す なわち,{「現 実 」, 「未 来」

」や{「伊藤 博文 」

「福沢 諭 吉」

「西郷隆盛」

,…

}や {「泳 ぐ」

「歩 く」

「走る」

}} 等々ぽ立派な集 含で ある

この意 味で は集 含 論は強 力であり

少なくと も名辞の存 在 する よう な概 念はその上位 概 念の事 例と し て集合 表 現の構 成 要 素 と なりうるの である

(そ れで 「重 力」 や 「伊 藤 [専文 」 や 「泳 ぐ」は 事 例の 集 合 と し て表 現 できない の である が)

そし て こ こ に

集合論的 概 念 表 現が過 大 評価さ れ て きた

因があ りそ うで

とに か どんな概念で っ て も

応 集 合 論 的 枠 組みのな か に取り込 むことがで き るので ある

し か し

そ れ ら が事例の合 として の人 工 概念に よっ て表 現で きるか どうか はまっ た く別 問 題であ る

  3

1

2 特性の集 合を想 定 する場 合 (内包 的 定 義 )  「現実」や 「美しい」 や 「伊 藤 博 文」 や 「上}こある」を 研 究 する にあたっ てそ れ らの概 念の もつ な 特 性 るい は 属 性, 特 徴 で も よい

これらにつ い ては後ほど 3

3.

1

で議 論したい)の集合を用い るのならば 集 合論的 定 式 化と言 える とい う立 場が可能である

こ の 場 合は概 念は特 性に よっ て表現さ れ ること に な り

いわゆる内包 的 集 合 定 義と な る

.一

般に 内 包 的 集 合 定 義 とは 「α」

{xlx が 「αである条 件} と い う形 式を取る

例 えば (

0

) 「現 実」

{xlx が 「現 実」であるため の条 件}  (1 ) 「犬二 

倒ツ が犬である条 件} (2) 等である

まず 「現 実」の よ う な抽 象 概 念につ い て考え て み よ う

仮に 「現 実 」 があ る特性の集合に よっ て 定義 可能 である として も, 「現実」の 事例 は存在 し ない

3.

1

1で述べ た と お り 「現」 は 「犬 」 よ うに分節され た 存 在で はない点には何のわ り も ない か らである

そ れ で も

もし 「現 実」であるため の条 件が特性の集合に よ っ て 「説 明 可 能 」であ る 場 合 は (これ は 非常に強い仮 定 である) 「現 実」

{特 性

1,

特 性

2 …

} (3) とい う表 現 が可能であり

これは

種の集 合 表 現といえ る か もしれ ない

ま たこ の 現 は 論 理学的 意味 論におい て記 述 群 説 (記 述 束 説 )と呼 ばれるもの である (野 本

198Sa

) 

つ ぎに事 例が存 在 する 「犬」の例 を 考

k

て み よ う

もし 「y が 犬でる条件」 が特性の集合に よっ て表 現できるのな ら, 外延 的定義である 「犬」

{犬 1

犬 2

,…

} (4)

(7)

とい う表現も 「犬」

倒特性 1

特性 2

, ・

} も, さ らに (3)と同じ よ う に 「犬」

{特 性 1

特 性

2,…

} 椎名 :「概念の概 念」の概 念 (5) (6 ) もすべ て可能であるこ とに な る

さて同 じ内包 的 定 義で ある と言 わ れ る (5) と (6) (あ るいは (1)と (3))は ど こが 異な るの だろ うか? (

5

)で は事 例集合 が特性集合 に よっ て指 定さ れ

事 例集合 が概 念を表現 してい る

  で は特性集合 が直 接 的に概 念を表現 し てい る

よっ て

4

5

) と なりうる が

必 ず (

4

)≠(

6

)であ り

5

)≠ (6) なの であ る

(6)の場 合には 「犬」の 具体的事例 と い う もの は どこ に れず

概 念 「犬 」に対 し て特 性 1

特性 2

が あ て は ま る とい う説明 方式である

個 体 とし て の事 例を想 定 する必要が ない のだか ら抽象的 概念に対 し て もこ の 説 明 方 式 は 使 用 叮能 なの である

結 論 と し て

3

>の形の 内包 的 定 義は特 性 集 含が概 念 を 確 定 する の に充 分であるなら ば 可能である といえる

そ し て (3) の よ う な 形式 が 集含表現の

種で ある とする と

事例は 存 在し な いが特 性の集 合に よっ て表現される概 念を認め ることに なる

 (

5

)と   の達い は以 上述べ た と お りであるが

(5) あるい は   は正式に は特 性を述 語と解 釈し て 「犬 」= κ

i

 1 (x)八特

[生 2 (x)八

} とする べ きで あろう

こ こ で X は観察可 能な事物 とす るべ である

これに対し て (6>は

(5)よ り 犬 (x

特 性

1

x〈特 性 2 (κ

とい う形 を導 出し

さ らに個 体 を 消 去して 犬

特 [ 1〈特 性 2〈

とした ものと考え ら れ る

し か しこ の よう な表現はそ れ 自体 概 念 的 (言 語 的 )なもの と な り, Typical な 人工刺 激は作 成 し え ない

従っ て

概 念の内 包 的 定 義を考え る 際に も, 人 工概 念に よっ て表現できるの は 申:例 が存在す るタイプ の概 念である二 とになる

これよ り

人工概念 実 験の 文 脈の なかでは 〔5)の形式の 内 包 的 定 義のみ を 考慮す ればよい こ とに な る

 今までの論では特性 とは何か につ て定 義し ないで きた

こ の 問 題について は 3

3

1 で 険討るこ とにす る

  3

2  Concept と

Category

につ い て  今ま での論で は ccncept とcategory との違いに つ い て も あいまい な ま まに し て お いた

この 二 つ の語

2

工 少なくと も実験心理学系の 概 念 研 究 の論 文 におい て は (意 図 的に ま たは 無 意 識的に) 区 別 さ れず;ご使用 される こ と も多いが

その本 来の意 味におい て はか なりの差 異 が あるよ うに 思われる

Category

の哲 学や生物分 類 学 (

Jardine

Sibson,

1971)での用 法は さて お い て

心 理 学の用 法で は (ま た辞 書に書かれて いる 日常 的 な 用 法で

は)Class や Group  と ほ ぼ 同義とされ

 

CQncept

は Idea とほ ぼ同 義と さ れる

多くの 研 究

Concept

Category

が交 換 可 能 なの は

「概 念は異なっ た刺激の集

合に対し て

その要 素を同等と見なすこ とに より成 立 す る 」 とい う概 念 観 を 採 用 してい る ため である

前 述し た よ うに

ク ラス ま たは類 と し て表 現 するの が不 自然 な概 念が多 数 存在するの に もか か わ らず

こ の概念観の も と では

Concept

Category

を 区 別 する必 要が な くな る の である

.Class

Group

を形 式 的に扱おうとする な ら ば その道 具ぽ 通 常集合論と な る が

先に述べ た と お り ある種の概 念は集合 論にな じ まず

従っ て

Concept

Category

の同

視も不可能にな る

 

Category

Con −

cept の関 係に は 2つ の立場が あると考え るこ とがで ぎ よ う

1

の立 揚は

類概 念 とし て の

Category

を Con

cept の下位概 念 と 考 え る もの である

例 え ば Piaget 派 の研 究では

Category

に相 当 する用 語は Cla

gs (類 )で あり

,C・

oncept はその 上 位 概 念 として の地 位 を 保っ て い る (「クラス の概念 」の よ うな用 語 法が用い ら れる)

実験心 理学以外の 分 野での概念と い う語の使用 法につ い て は宮 本 (1982)が 示唆的である

この本は概 念の問 題 の みを扱っ た 口本 語で唯

のモ ノ グ ラフ であ ip

々な 「概 念」が 登 場 する がそ れ らの間の 関 係に つ いて は

的に 記 述されてい ない

先に述べた よ うに類慨念と関 係 概念の未 分 化が その原因 と なっ てい る の で はない だろ う か? 第 2 の立場 は

categery を外 延

  concept を 包と捉える立 場である

実験 心 理 学 系の研 究は こ の立 場 で る よ 引こ思 われる

そし て

外 延

内 包の関 係を古 典 的に捉え る と

その対応 関 係よ り両 者 を 区別する必要 は なくなるの である

E

 3

2

1  人工刺 激 集 合の意 味  こ こ ま での考 察で明らか になっ たこ と は

ある種の概 念に は合 論 的 定 式 化が 不自然不可 能であ るこ と

すな わちある種の概 念に は 「個々 の 例 」 とい うものが存 在 し ない か

判 然 と分 離して示せない か

ある い は 「ま と め る」とい う操 作に な じ ま ない

とい うことである

従 っ て

とりあ え ず 結 論で きる こと は

「集合論的な定式 化の できない概念」特に抽象概 念の 存 在であ り

さ らに 重 要なこ と は

この ような概 念は事 例が作 り得ない の だ か ら, (少な くと も 現 在まで に考 案 された) 人工概 念に

(8)

22

基 礎 心 理 学 研 究 第 10 巻 第 1号 よっ て は表 現不能で ある ことで ある

そこ で以後 本 論で は

主 として事 例 が存在し集合 論 的に定式化 可能な概念 (類 概 念 >1このみに 考察対象を 限 定 する

こ の 限 定 下 で は

概念

category は ほぼ 同 義の語と し て使用 する こと がで きる

 

3.

3

 集 合 (類 ) としての概 念の外 包 的 定 義 と 内包 的 定       義  さ て察の対 象を

集合論的定式化がな類概 念の みに限定 することに した わ けだ が

こ の限定は 「概念は 異 なっ た刺激の集合に対して その要素を 同 等と見なす こ に よ り成 立 する 」とい う概 念観が 妥 当である 場合 だ けを考 察の対 象 とするこ と を意 味 する

さてつ ぎの 問題 は

外 延

内 包の具 体 的 内 容で ある

  内包に よ る定 義と は特 性 集 合や集 合 を生成 する手 続 き を指し示 す 場 合

す なわ ち集 合の要 素 間に存 在 する な ん らか の内 的構造を利 用 する場 合で

外延に よる定義 とは列 挙に よ る場 合である

外 延に よ る定 義と は 天 下 り 釣に この 要 素は この集舎に 含 ま れ る と 宣 言 す る もの で あ り

内 包 的 定義と は なぜ集合に属 するのか とい う理由 を 述ぺ い るのだとい う解 釈 も可 能であろう

  内包と外 延は

体となっ た もの であ り

内 包の推 定は 必然 的に外 延の確 定を も た ら し

外延の確定は内包の確 定をもたらす と考える のが伝統 的な主張である

すな わ ち, 「X」とい う概 念がある とき    「X」

{x1

 x2

{Ptb,が 「

X

条 件 } とい う関 係が成 り立ち

時 として「「

X

」で ある条 件」 が 特 性の集 合で表 現される わけで ある

し か し

しば しば 指摘される よ うに題は これほ ど単で はない

内包は 明瞭であ るが外延がは っ ぎり示せ ない概 念や

外 延は確 定 し ても内包が不 明の概 念が か な り存 在 するのである

現 実の概 念1こお い て

外 延と内 包に よっ て集 合 (概 念 ) が定 義さ れる仕 方に は形 式 的に言っ て大 体 表 1の 4つ の ケ

スが ありうる

この が有意 味で ある た めには確 定

未確定と は どの よ う な状 態か を はっ き り さ せ る 必 要 があろ う

外延が確定 する と は 1)集合の要 素て 枚挙 」できること である (強い 意 味 での外延 確 定 )

た だし要 素 数が多 けれ ば枚 挙に非 常 な時 間がか か る等の要 因 を考え な けれ ばな る まい

こ の 題 は3

4で 考察す る

こ こ で は 2)「個物が与 えられた時に

ほ とん ど実 に集 合へ の帰 属が判 定できる」 場 合に も外 延 確 定 と考 え ることにする (弱い 意 味での延 確 定 )

同様に 味で の内包の確 定とは 「集 合に帰 属させ る方 法

基準等 を 明確に述べ こ とがで きる 」状 態を さすこ とにする

ま た 弱 い 意味の 内包の 確 定 とは 「集 合 に 帰属さ れる方 法, 基準等を 不明 確に 述べ るこ とがで きる」こと とす 表 1 内 包 外  延 確  定 不確定 確  定 工型 3 型 不確定 型 型 24

以上の定 義で は 「ほ と ん ど確 実 」「明確に」 とい うあ い ま い な表 現が使用さ れて い るが

こ の点につ い て は具 体 的 例を挙 げ なが ら考 えて みたい

  まず 外 延の確 定して いる 1型2型の場 合につ い て考 え る

外 延 が確定 してい る概 念の 例は かな り存 在 する

「太 陽 系の惑星」「将 棋の」「ア メ リ カ の州」「歴 代 天 皇」 「シ

ュー

ベ ル トの 歌 曲」等である

これ らの概 念におい て は

有限の事例 を 具体 的に数え 上げて列 挙し て い くこ とが可能である

し か し 「太 陽 系の惑 星 」のように これ か ら要 素 数が化 する 可能 性がある場 合 も ある し

集 合 へ の帰属 が確 率 的であっ た リフ ァ ジ

である場 合 もある だ ろ う

こ の種の不確定 性の問 題は 3

5 で扱 うこ と とし とりあ

k

ず棚上げし て お

外延確 定に は も う

つ の形 式が想定されて い る

そ れは全 事 例 を 数 え上げる ことは できない が

事 例を与えられ ればそ れが集 合に属 するか ど うか を ほ とん ど 確実に決定で きる 場合である

例えば 「自動車 」 「(入間の)男性」等である

この場 合必ずしも 内 包が明か である必 要ぽ ない

 次 ぎに延が未確定の 3型4型につ い て考えて み る

3 型はいわ@る科 学 的 概 念に多い

た とえ ば 「三 角 形」 「二次関数」 など

この不確 定 性は要 素 数の 多さに起 因 する

また 「犬」 「鳥 」 とい っ た自然 概 念の ほ とん ど 4 型であると思われる

外 延 未 確 定 となる場 合には少 な く と も2種 類 ある

すな わ ち外 延が (実 質 的 )に無 限大 と な る場合

お よび 概 念の 境 界 が (確 率 論 的 意味で ま た は フ ァ ジ

集 合 論 的意味で)不明瞭である場合で ある

こ れらは

3、

4

3

5 で順 次 議 論 する ことになる

  さ きほど内 包の確 定 とは 「集 合に帰 属させ る方 法, 基 準 等を な ん らか の形で述べ ことができること」である と定 義 した

さて

「太陽系の 惑星 」の延は列 挙に よっ て確定 するが 内 包は確定 するの だ ろうか? {太 陽 系の 惑星}を内包 的に定 義 する ため に は

「太 陽 系の 惑星であ る 」 とい う述語を用意し て  「太 陽系の惑星」= {

vx は 太陽系の星である} (7 ) とい う定 義の しかた がある (例 えば, 坂本

坂井,1971)

こ の立場で は 「太 陽 系の惑 星 」は 1型である

の は恒 真 的である の で間 違い で は ないが

内 包に よ る定義とは 別の形 式を取 りうるので ないかと も考え られよ う

す な

(9)

椎名 「概念の概 念 」の概 念

23

わち  「太 陽系の惑 星」

{xlX は太 陽の ま わ りを 回っ てい る            〈 x は 星である}         (8> もし   に よっ て 内包が確 定し た と 主張で きるの な ら

やは り「太 陽 系の惑星 」 は 1型である

さ らに 徹 底させ れ ば 「太 陽 系の惑 星 」=X…

の部 分に天 文 学の教科書に書い てある 文章

数 式を書 く (9) で もよ い

これは 「理諭」に よる 説 明と言 えよ う(

Mur ・

phy &

Nledin,1985

 以 上のような 内 包 的 定 義で問題 と な る の は

「まわ り を 回る」, 「星である」等の 他の概 念を持ち 出 して来 る 点 で

究 極 的には 「ある」と は 厂動 く」 とは何かを 説 明し な け ればな ら なくなる

ある概 念を用いて説 明し ても

その他の 概 念が不 明 確で は説 明し たことにな ら ない の か も しれ ない

よっ て

こ の立場で は

1

3

型の概 念は存 在せずすべて 2型4型で ある ことになる

結局

内包 確 定 型の概 念の存 在を認め る か どうか は

条 件 部 分 を 十 分 に確 定し て い ると認め るかど うか にか かわる問 題で あ ろ う

も し認めない な らば何らか の不確定性を考 慮し

なけ れぽな る まい

古 典 的 人工概 念は 1型と考え られ る もの が多い

 3

3

1

 特 性}こ つ い て  つ ぎに

特}こ内 包 とし て条 件 部 分に特 性 (属性

特 徴) の集合 を用い る 場合を考えて み た い

特 性とは何か とい う問いに対し て は

「概 念に対し て成 立 する文 章 (命題) で ある 」 と答 える のが

数 量 的な特性 を も含む ことに な i , 最 も包括的であろう

こ の立 場で は 「X」に対し て    「x」は青い

   「

x

」は広い

  「x」は犬で は ない

    トムは 「X」 が好 きだ

   「X」 は液 体で でぎて お り, 温 度は お お む ね 30度以      下である

等が全て特性であること}こなる

X を主 語にするよ う な形 式が

般 的であろ うが

他の形 式 も許 容 するべ で あろ う

こ の表 現 法は特性に対して最も緩やか な定義 を あた えてい る

しか しこ の ような定 義で は自由 す ぎる と い う議 論も 可能であろ う

.Smith

& Medin (19Sl

 p

15)は特 性に対 する制 約と し 1) 概念間の 関 係を完全に 記 述し

かつ それ 自体 分 解可能でない こと

2性 は多 数の概念に適 応可能であり

従っ てそ れ 自身の数 は少な い がよい こと

3)心理 学 的 実 在 性がある こ と, を挙げ て い る

1) と

2

)は

要 因数ぽ少なくかつ 説 明力は高 く あるべ だ とい う

矛盾する要 求であり

3)も きわ めて 難しい問 題であ る

.1

)と 2)を 同時に満たすた めには, 特 性 間の関係 に 注 目 して よ り 「本 質 的 」な特性 集 合を抽 出 する 必要があろう

これは特性 を定義 的 特 性と特 徴 的 特 性に分け る考え方 (

Smith

, 

Shoben

, &

Lips,

1974)

あるい は surface 特性 と deep 特 性 (Medin &

Or .

theny

1989)}こ分 げる考え方に通 じ る が

ど ち らに して も難 しい 仕 事であり

なん ら かの方 法 論が必 要である

ま た こ の方 法 論に は特 性問の どの よ うな 関 係に注 目する か でい ろい ろな可能 腔を 考 えるこ とがで きる

 3

3

1

1 相 関 関 係に注 目する易 合  特 性の 間 に相関 関 係があるこ と が注 日さ れて い る (

Malt

Smith ,

ユ984)

し か し

心理 学で は特 性 問に相 関があるこ とはむ しろ常識であり

こ の よ うな 場 合は因 子 分 析 等 を 用いて次元数の縮 約を計るのが常 套 手 段であ る

未だに こ の ような試み は行われていない ようである が

風生リス テ ィ ングの 手 続 きでえ ら れた特 性を因 子 分 析して

抽 出 された 因子を本 質 的特性 と み なすアプロ

チは可能であろ う

ただし

その場 合は 因 子分析モデル が概 念のモ デル と し て適切 かどうかが 吟 味 され な くて は な る まい

 ま た

な ぜ相 関 関 係が存 在す る か につ い て1 その メ カ ニ ズ ム 定 すア ブV

チ も可 能であろ う (理 論に よ るモ デル

Murphy & Medin

1985)

こ の アプロ

に つ い て は

4.

4

で述べ たい

 

3.

3.

L2

 論理的 閾 係に注目する 場合

 

特性の合は 内包 を 表 現 するもの と考え ら れるが

論 理 学 的 意 味 論で はそ もそ もある種の概 念 (個 体 概 念  自 然 種 概 念 )に対 して は論理 的 に 十 全 な内 包は存 在しない とい う説がある (Kripke

198  ;Putnam ,1975)

この説 は論理的真理 (分析的 真理 )の妥 当 性の 問 題とし て提 起 さ れ た もの であるが

時 代 的に Rosch 流の研究 と平 行 して い るこ ともあ り

心 理学に対し て もか な りの影 響を 与 えてい る

た だ し

Kripke

や Putnam の説 明 (名 指 し とその 社 会 的 伝 達)は心 理学 的には受 け 入 れ 難い よう に思わ れ る (

Johnson・

Laird

1983

訳 書

  pp

225

231

む し ろ不確定なものは不確 定なもの と し て そのま ま受 け 入 れ る とい うの が人 間性であろ う

 

特性問の論 理 的 関 係か ら 「本 質 的 」な特 性を絞り込ん で いくプ 卩 セ ス を 比喩的に 言 え ぽ, 「公理 の発 見 」と な る であろ う

ひ と たび公 理が与え ら れれ ばそこ か ら無数 の定 理 (すな わ ち本質的で ない 特 性 )が導 き出ぜ る こ と に なる

論理的 手法を用い て最 小に して説 明 力最大の 性 集 合を発 見 する試み と して は

人工知 能 的アブP

 

参照

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