1 紙 フィルム テープでつくる 医療診断用チップ 産業技術総合研究所健康工学研究部門生体ナノ計測研究グループ渕脇雄介

紙・フィルム・テープでつくる

医療診断用チップ

産業技術総合研究所

健康工学研究部門

生体ナノ計測研究グループ

渕脇 雄介

紙・フィルム・テープでつくる

医療診断用チップ

１．途上国の医療ニーズ

-海外の取り組み-２．市販されているその場診断用検査薬

３．紙・フィルム・テープを使って

その場診断用チップをつくる・はかる

４．ヘルスケアや医療診断の姿を変える

途上国の医療ニーズ

–海外の取り組み-1. 途上国は費用、耐久性、使いやすさが、医療技術の障害

2. 医療にアクセス出来ない（医療の概念が無い）地域が多数

3. 結核、マラリア、腸チフス、HIVなど感染症の危険が大きい

 BOP層（Base of the Economic Pyramid層）は約40億人(世界の約72%)

一人当たり年間所得が3,000ドル以下の階層

1. Bill ＆ Melinda Gates Foundationの資産残高は現在292億ドル（3兆円超）

2. 2005年には総額13億6000万ドルの助成金を出すなど、慈善財団では世界最大

3. Buffett氏からの寄付を加算すると、600億ドル（約7兆円）

「Bill ＆ Melinda Gates Foundation」（ビル アンド メリンダ ゲイツ財団）

紙で作る医療診断用チップ

3セントで作った紙ベースのチップ (ハーバード大 2008.12)

１．高価な装置を使わない限り、複雑

なパターンの作成が困難

２．液体の経路をポンプにつなぐの

は大変な手間

３．診断チップが高価

 煩雑な診断チップの問題点

農作物のカビ毒（肝臓癌を誘発）6ドル/検査 → 50セント/検査に改善 血液型の検査を行う紙チップ （オーストラリア） 食品、水、空気中の病原菌を検出（カナダ）

米国（ハーバード大）を中心に安価な紙を用いた医療診断チップが研究レベルでも活発に。

煩雑な診断チップ

紙で作る診断用チップ

 尿中の黄体形成ホルモン（ＬＨ）検出用

保険点数：７５点 性能 ：検出感度 40ｍIU/mL 検出範囲 40～1,000ｍIU/ｍL 反応時間 3分

 尿中のヒト絨毛性性腺刺激ホルモン（hＣＧ）

検出用

保険点数：５５点 性能 ：検出感度 ２５ｍIU/ｍL 検出範囲 25～500､000ｍIU/ｍL 反応時間 3分

 膣分泌液および男子初尿検体中のクラミジアトラ

コマチス抗原検出用

保険点数：１７０点 特徴 ：検出感度 １×１０４_個/ｍL 反応時間 女性約30分 男性約60分 保険点数：１４０点 性能・検出感度：不明 反応時間：～15分

 インフルエンザウイルス検出用

10枚入りで¥ 1,000

尿潜血試験紙

ヘモグロビンを識別 検出感度：10個/µL

尿たん白質試験紙

検出感度：15mg/dL

尿ブドウ糖試験紙

検出感度：50mg /dL

1. 検体を被験者から簡単に採取

2. 簡単な検査

3. 熟練しない者が簡単に測定できる

4. 少量の検体で検査

市販されているその場診断用検査薬

その場診断チップの長所と短所

 その場診断用チップの基板材料の比較

透明度

紙

ガラス

_{/プラスチック 単結晶Si}

製造コスト

特徴

×

◎

○

△

高精度な分析

○

◎

×

◎

×

使い易く・安価

応用次第

集積化が容易

参考） 馬場嘉信, ナノテク・バイオMEMS時代の分離・計測技術, シーエムシー出版, 2006年

使い易く、安価で、高精度な分析ができる診断チップはできないか？

透明度

紙・フィルム・テープ

ガラス

/プラスチック 単結晶Si

製造コスト

特徴

×

◎

○

△

高精度な分析

○

◎

透明に

◎

流体制御で解決

使い易く・安価

応用次第

集積化が容易

参考） 馬場嘉信, ナノテク・バイオMEMS時代の分離・計測技術, シーエムシー出版, 2006年

使い易く、安価で、高精度な分析ができる診断チップはできないか？

その場診断チップの長所と短所

 その場診断用チップの基板材料の比較

紙・フィルム・テープによる新しいチップ

紙・フィルム・テープによる新しいチップ

紙

フィルム

テープ

￥

0.09（販売価格）

5cm×5cm

￥

_{1.7（販売価格）}

5cm×5cm

￥

1.0（販売価格）

5cm×5cm

 紙・フィルム・テープで作る診断用チップの特徴

液が流れる方向

有

無

効果判定部

入口

1. 紙・フィルム・両面テープを使い、

約3 円でマイクロ流路

を作製

2. 高度な操作が不要で、

「流す・止める」の流体制御を実現

3. 全血から

血漿成分を取り出す

ことが可能

4. 医療施設が整っていない

途上国でも簡便に測定

できる

1. 操作は入口に液を置くだけ

溶液交換の精度

蛍光液 水液 0 10 20 30 40 0 400 800 1,200 時間（秒） 蛍光強度

「流す・止める」の流体制御

「流す・止める」の流体制御

 高精度な分析を行うため・・・

 反応終了後、上澄みの試薬を廃棄

 試薬を量りとってウェルに添加

 サンプルを添加して静置させて反応

入口

入口に液を順次置く

複数の操作を繰り返す

 本チップ（紙・フィルム・テープ）の操作

1次抗体 固定 サンプル 添加 検出抗体 添加 標識抗体 添加 基質添加・ 酵素反応 E E

発光

ウェル

「流す・止める」の動画

「流す・止める」の自動化により高精度な分析に必要な操作が可能に。

 遠心分離機などの大型装置を利用

 血液から血漿成分を取り出すため・・・

血漿成分を取り出す

血漿成分を取り出す

 分離膜は目詰まりや溶血リスクが大

溶血のリスク

一般的な血球・血漿分離

遠心分離

_血漿

血球

展開液

血漿

 本チップ（紙・フィルム・テープ）の操作

1. 血液を入口の紙に置いて、展開液を置くだけ

①

②

③

④

液を置くだけ

高度な操作技術

高度で幅広い分析が可能に！

単純で限られた分析

液を置くと血漿抽出！

遠心分離機を使って血漿抽出

判読がハッキリ！

判読が困難

血漿

血球

簡便に測定を行う技術

簡便に測定を行う技術

化学発光による検出

化学発光による検出

●キット Circulex社製 ヒト・アディポネクチンELISAキット 96 assay、CY-8050 ●発光基質 Thermo Scientific社製

SuperSignal West Femto Trial Kit ●測定装置 GE Healthcare社製 ImageQuant LAS4000/4010

化学発光強度

(×

10

5

)

0

1

2

3

4

5

6

7

8

サンプル（

5 µL）

洗浄液（

10 µＬ）

標識抗体（

5 µＬ）

洗浄液（

10 µＬ）

15 min

10 min

基質添加（

5 µL）

1. 液を入口に置くだけで、ELISA法に

基づいたバイオマーカーの定量化

の操作が可能

2. ガラス/プラスチックの基板とほぼ同

じ感度で、発光の検出が可能

 酵素免疫測定(ELISA)法による測定

300 ng/ml

0 ng/ml

1 min 3 min 10 min 10 min

スマートフォンを使った測色による検出

スマートフォンを使った測色による検出

測色データ

顕微鏡画像

6±7

3±5

2±3

0±1

0±1

0±0

0±0

検査紙

41±3

29±3

16±3

6±2

2±2

1±1

0±0

本チップ

測色値をスマートフォンで解析することにより簡便に定量化。

①

②

③

④

まとめ

まとめ

その他の診断用チップ

本診断用チップ

● 紙・フィルム・テープの診断チップ

（低価格＋高性能）

1.高感度が容易、2.定量が容易、3.安価（数円）、

4.操作が簡単、5.大型の駆動装置なし

利用者 低侵襲採血 簡単操作 (スマートな 使用) 自動焦点機能 (瞬時に数値化)

Web化

(ビッグデー タ活用) 予防医療 へ

●測色の検査紙 （低性能・低価格）

● 高性能な診断装置

課題：低感度、定量が困難

紙内部は

検出困難

課題：高価、大型の装置

駆動が

煩雑

製造

→

紙・フィルム・テープを使い、数円で診断用チップを作製

使用

_→

本診断用チップと市販のキットで簡便・スマートに測定できる技術を構築

展開

→

電力や煩雑な操作が不要で、途上国や緊急時でも手軽に使用

 本シーズの技術的な特徴と今後の展開

 本シーズの技術的な特徴と今後の展開

従来の医療機器や市販の検査紙とは異なり、紙・フィルム・両面

テープを駆使して

数円の原材料でも安定した分析精度と優れた利便

性

を有する、診断チップを新規に作製しました。

紙などの特性を生かした新たな利用形態、流通コスト低減、廃棄処

理容易性など、利用者の診断ニーズからロジスティクスまで含めた、

実用的なメリットが得られる産業展開

をめざします。

途上国や災害緊急時の医療診断では、

費用、耐久性、使いやすさが

医療技術の大きな障害の一つ

となっており、安価で単純な方法によ

り診断を行うツールが必要とされています。

本診断用チップの産業展開に向けて

本診断用チップの産業展開に向けて

～新たな市場開拓と潜在ニーズの顕在化へ～

本技術に関する知的財産権

• 発明の名称

：多孔質媒体を利用したアッセイ装置

• 出願番号

：WO/2014/051033(2014/04/03)

• 出願人

：産業技術総合研究所

お問い合わせ先

国立研究開発法人 産業技術総合研究所

生命工学領域研究戦略部

イノベーションコーディネータ 新間 陽一

ＴＥＬ ０２９－８６２ － ６０３２

ＦＡＸ ０２９－８６２ － ６０４８

e-mail life-liaison-ml@aist.go.jp