事例 「ひとふさのぶどう」(出典:「みんなの道徳」学研)を活用した事例 内容項目 寛容・謙虚
主題名 ①「過ちを許す広い心」
②「広い心で相手のことを受け入れ許すこと」
③「相手を許す気持ち」
小学校 第6学年
主題名①「過ちを許す広い心」
1 目標 相手の立場や気持ちを考え,広い心で人の過ちを許そうとする心情を育む。 2 指導と評価の計画 過 程 学習活動と主な発問(○◎) 学習の様子を見取る視点 主体的・協働的な 学習活動の留意点 導 入 1 「過ち」について考える。 ○「過ち」とは,どんな意味でしょ う。 ○人の「過ち」を許した経験はあり ますか。どうして許せたのですか。 ◇経験を振り返ったり,友 達の意見を聞いたりし て,自分なりの考えを持 っている。 ・道徳的価値に関わる日常 生活場面を想起させ,児 童 に 問 題 意 識 を 持 た せ る。(見通す活動) 展 開 2 資料「ひとふさのぶどう」を読 み,話し合う。 ○登場人物の言動について,気にな った場面やみんなで話し合ってみ たい場面を教えてください。 【子供の気付きから考えられる 発問例】 ○絵の具をとろうとしたとき,心の 中では,どんな気持ちとどんな気 持ちが引き合っていたのでしょ う。 ○「ぼく」が絵の具をとったことが 分かったとき,ぼくのことをどう 思ったのでしょう。 ○先生は教室でどんな話をしたの でしょう。 ◇資料から感じたことや 気になったこと,話し合 ってみたい場面につい て考えながら聞いてい る。 ◇ぼくの気持ちを考えて いる。 ◇ジムの気持ちを考えて いる。 ◇人間には誰しも過ちを 犯す側面も持っている ことについても併せて 考えている。 ・登場人物の心情や葛藤, 授業で考えることを明 らかにさせる。(見通す 活動)3 広い心を持つことの大切さにつ いて話し合う。 ○自分の中で大切にしていきたいこ とはなんですか。 ◇経験や本時の授業を振 り返りながら書いてい る。 ・道徳的価値の自覚を深め るために,これまでの自 分 の 経 験 や 考 え 方 を 振 り返るようにする。(振 り返る学習) 終 末 4 教師の説話を聞く。 5 本時のまとめをする。 ◇本時の学習を振り返り ながら,教師の話を聞い ている。 3 学習指導の様子 (1) 主体的・協働的な学習のための指導の様子 ① 見通す活動「本時の主題に関わる問題意識を持たせる工夫」 ア 主題に関わる言葉のとらえ……「過ち」 導入で,「過ち」の意味について考えたところ,過ちを許した経験がある児童や,時間が経 ち忘れてしまっている児童が多くいた。主題に関わる言葉をとらえ直すことで「自分もそう だ」「過ちってみんな犯してしまうのかも」「過ちを犯してしまったことがあるけれど,許し てもらえたかも」とこれまでの経験を振り返るきっかけになった。 イ テーマの設定 本実践では,資料を読み,登場人物の言動について,気になった場面やみんなで話し合っ てみたい場面を考えた。その手がかりとして,資料を読む際に,「あるある」「不思議だな・ 分からないな」「いいね」の三つの視点を持って,読むこととした。 「過ち」とは。 ・間違うこと。 ・悪いイメージ。 ものを壊す,忘れ物をする,犯罪,約束を守らない。 あるある! ・誰かのものを欲しくなること。 ・授業の間,落ち着かなかったこと。 ・人の過ちについてつらく当たってしまったこと。 ・小学校に入学する前までは「ぼく」と同じことをよくしていた。 ◎なぜジムは,ぼくを許せたので しょう。 (ワークシート→役割演技) 【スタートの台詞】 「何で許してくれたの。」 「先生に言われたから許してく れたの。」 ◇ワークシートに自分の 考えを書いている。 ◇二人の気持ちを考え, 自分なりの言葉で表現 している。 ◇発表を聞き,考えを深 めている。 ☆期待する反応が見られなかったときの指導 ・ワークシートに書いた考えを発表させる。
「あるある」に関しては,資料と似たような経験を発表させることは好ましくないと判断 し,挙手をさせずに机間指導をし,内容を確認しながら発表させた。 「不思議だな・分からないな」については,発表していく中で多くの児童が「確かに。」「自 分だったら許せないかも。」「先生がキーパーソンなのかな。」と口々につぶやいていた。 「いいね」と感じた児童は二人と少なかった。また,その意見に対してさらに疑問も出さ れた。 これらのことから,本時のテーマを「なぜジムはぼくを許せたのか」とした。このことに ついて考える中で,「先生は何か言ったのか。」「先生も関わっているのか。」という疑問につ いても併せて考えることとした。 ② 振り返る活動 学習内容を基に,ねらいとする道徳的価値の自覚を深める 展開の後半では「同じような場面に出会った場合,自分の中で大切にしていきたいことはな んですか。」という発問をし,ワークシートに記入させた。多くの児童が導入,展開,役割演 技を受け,以下のような意見を出した。中には,今までの自分の経験や考えをふまえて記入し ている児童もいた。 ・これから大切にしていきたいことはその人の気持ち。話の中に出てきた一番よくできる生徒 は行動だけで,その人を悪人にしていた。だから私は,どういう思いでしたのかしっかり聞 いて態度を決めたい。 ・「何でこんなことをやったのか。」を聞いて素直に答えてもらって許してあげたい。もし,答 えてくれなくても問い詰めず,自分から言ってきてくれるのを待ってあげたい。そして,自 分にも何かきっかけがあったのか考える。 ・相手の気持ちに寄り添える心を大切にしたい。相手の立場に立って物事を見ることができる といい。許せなかった自分の気持ちもそれによって変わるかもしれない。 ・相手が過ちを繰り返さないように分かってもらえるように努力すること。 ・自分も過ちを犯したことがある。だから,相手が過ちを犯したとき,自分が過ちを犯したと きのことを考え,そこから,どうすればいいか判断したい。 ・過ちを犯すことはいけないことだけれど,その人がまた同じことを繰り返さないようになる と信じてあげることを大切にしたい。 ・自分の意見だけを強調するのではなく,視野を広げて考えたい。 ・過ちを起こした人を責めてもどちらにもメリットがない。攻めた自分も後悔すると思う。だ から,攻める前にアドバイスをしてあげたい。 ・どういう気持ちでやったのかを聞き,次に同じ過ちを繰り返さない方法を教えてあげたい。 ③ 道徳的価値について自分との関わりで考える活動 ア 自分の考えを持たせるための「役割演技」 本資料は,場面は違うかもしれないが,誰もが出会うであろう内容となっている。そこで, 本時のテーマである「なぜジムはぼくを許せたのか。」の場面の役割演技を行い,疑似体験を させ,将来主体的に判断し,行動することにつなげていけたらと考えた。スタートの台詞を 「何で許してくれたの」とし,児童対児童の役割演技を行った。 ○1組目(番号は会話の順番を表す。以下同様。) 不思議だな・分からないな ・どうして絵の具を貸して欲しいと言わなかったのか。 ・ジムはどうして許せたのだろうか。 ・先生が何か関わっているのだろうか。 ・自分から快く許せたのだろうか。 いいね! ・人の過ちを快く許すことができるジムはすごくいいと思う。ジムはすごく心の 優しい人なのだと思う。 ・次の日にはもう許しているジムがすごいと思った。
終わった後,「ぼく」の役をした児童に,終わった後の気持ちを聞いた。「許してもらえて 気持ちがよかった」と笑顔で答えてくれた。「ジム」役の児童も,「だまっていたり,怒り続 けていたりしたら,ジムは変わらなかったかもしれない。」と話した。 ○2組目 「ジム」役の児童が「悪いことだと分かっている と思った。」という言葉を言った瞬間,「ぼく」役の 児童が笑顔になった。演技が終わった後,「気持ちを 分かってもらえて嬉しかった。」と話した。 2組目は途中で「ぼく」役の児童の言葉が出てこ なくなってしまった。すると見ていた児童から,「感 謝の気持ちを伝えるかな。」「これからこうしていく っていう決意を言うかな。」と見ている立場からの意 見を出してくれた。 今回は,「何で許してくれたの。」をスタートの台詞としたが,道徳的価値の自覚をさらに 深めるために「ぼくのこと最低のやつだと思っているよね。」など,考えを深める台詞をあら かじめ用意しておくことが大切であると感じた。また,場合によっては教師が児童の気持ち を代弁したり,役割演技を見ている児童に考えを聞いたりするなどの介入が必要だと感じた。 ①何で許してくれたの。 ②怒り続けてもいいこ とはないと思った。 ③ぼくも言われて続け ていたら変わらなか ったかも。 ⑤分かった。ありがと う。今度からはしな いようにするね。 ④次からはこういうこ とをしないでね。 ②君も悪いことだと分 かっていると思った から。 ③うなずく。 ④感謝の言葉を言うか, これからどうしていく かを言うかな。 ⑤次からは許可を取っ てから借りるように するね。 ①なんで許してくれたの ゆるして
主題名②「広い心で相手のことを受け入れ許すこと」
1 目標 自分の過ちを許してもらえた主人公の気持ちを考えることを通して,広い心で相手の立場に立 って考えようとする道徳的判断力を養う。 2 指導と評価の計画 過 程 学習活動と主な発問(○◎) 学習の様子を見取る視点 主体的・協働的な 学習活動の留意点 導 入 展 開 1 資料を読み,本時の話合いの柱を検 討する。 ○資料を読んで感じたことを発表してく ださい。 ・ぼくは,どうして絵の具を貸してと言 えなかったのだろう。 ・ジムはどうして許せたのだろう。 ・ジムは友達を連れてまでぼくのことを 責め,許すことができなかったのだろ うか。 ・ジムに許してもらえてぼくは,安心し たと思う。 ・どうして先生は叱らなかったのだろ う。 2 自分との関わりで道徳的価値を考 える。 ○ぼくを許せなかったジムの気持ちを考 えよう。 ・黙って盗むなんてひどい。 ・友達として付き合えない。 ・貸してと言ってくれたら貸したのに。 ○どうしてジムは,ぼくを快く許せたの だと思いますか。 ・仲直りをしないと,このままずっと話 ができなくなると思った。 ・大切な友達だから。 ・一度の過ちで,ずっと友達から悪くい われるのは可哀想だから。 ◎ジムに許してもらえた「ぼく」の気 持ちを考えよう。(役割演技) 役割演技の進め方の例 ・「ぼく」が自宅を出る時の心情を言葉 にする。 ・校門でジムに出会い「どうして許して くれたの?」と聞く。 ◇資料を分析的・批判的に 読み,自分の疑問や問題 意識を基に,本時の話合 いの柱を検討している。 ◇ 登 場 人 物 の 考 え 方 を 想 像する学習であっても, そ の 根 拠 と な る の は 児 童 自 身 の 経 験 や そ の と きの感じ方であるので, 自 分 と の 関 わ り を 基 に 考えている。 ◇ 道 徳 的 な 価 値 の よ さ だ けではなく,現在の自分 の状況を自覚し,実現す る こ と の 難 し さ に つ い て考えている。 ◇役割演技を通して,道徳 的 価 値 を 実 現 す る 過 程 で 感 じ た り 考 え た り す ることは,人によって多 様 で あ る と い う こ と に 気付いている。 ・積極的に自分との関わ りで考えようとする思 いを高めるために,本 時で考えるべきことを 明らかにする。児童か らの一つ一つの発言を 解決していくことで, 読み取りが十分にでき ていない児童も,価値 理解を深めることがで きる。(見通す活動) ・児童が道徳的価値を, 自分なりに発展させて いくことへの,思いや 課題が培われていくよ うにするため,これま で自分はどのようなこ とを考えてきたかを振 り返らせる。児童の発 言に,「今まで似たよう な こ と を 経 験 し た の 」 「どうしてそう思った の」と問い返していく。 (振り返る活動) ・道徳的価値への理解 人 間 本 来 が 持 っ て い る,よりよく生きよう とする願いが,自分の 中にもあることに気付 き,価値の実現に向け てどう生きようとする のかを,役割演技によ る意見交流を通して学 び合わせる。終 末 3 これからの生き方を考える。 ○これから先,同じような場面になった 時,どのように考えたら少しでも広い 心で相手に接することができそうだ と,あなたは考えますか。 ◇ 道 徳 的 価 値 に 関 わ る 行 為,感じ方,考え方につ いて振り返り,自分なり に 発 展 さ せ て い く た め の 思 い や 課 題 に 気 付 い ている。 ・これまでの自分の経験 や感じ方,考え方を振 り返り,道徳価値への 自覚を深めさせる。 3 学習指導の様子 (1) 主体的・協働的な学習のための指導の様子 ① 見通す活動 ア 児童の気付きや疑問を生かし,本時で考えるテーマを決定する 資料からは,多くの児童が「なぜジムは許すことができたのか。」という問いを持った。 本学級の実態から,友達から寛容に接してもらえることで自分の心に安心感が湧き,自分 もまた友達に広い心で接しようという思いになることで友情が広がることを実感させたいと 考え,「ぼく」の気持ちを中心に考えながら,「なぜジムは許すことができたのか。」というこ とに迫る授業展開とした。 ② 道徳的価値について自分との関わりで考える活動 ア 自分のとの関わりで,人間理解・価値理解を進める 「どうしてジムはぼくを許したのだと,あなたは思うか。」という問いに対して,次の写真 のような意見が出された。声を震わせ言い寄り,ぼくを許せなかったジムの思いについて, もう少し共感できる場面を設定しておくと,広い心で接することの難しさを児童が実感でき たのではないかと考える。 ① 資料を一読した後,児童から出た感想を登場人物ごとに整理した。 <ぼく> ・どうして絵の具をとったのだろう。 ・友達に責められ,後悔していると思う。 ・これから先ずっと,泥棒呼ばわりされていじめられやしないか不安だと思う。 <ジム> ・なぜ許すことができたのだろう。 <先生> ・ブドウを渡したのはなぜか。 ・なぜぼくを叱らなかったのか。 ② 児童から出てきた疑問を順次解決したことで,一読しただけでは資料の内容理解が十分にで きない児童にとっても,道徳的価値について考えることの手助けとなった。その後,本時に話 し合うことを「ジムに許してもらえた時のぼくの気持ち(安心感)」とした。 <どうしてぼくは,絵の具を盗んだのだろう> ・やってはいけないと分かっていたのに,気持ちに負けてしまった。 ・友達ではなかったから,「貸して」と言えなかった。 <多くの人数で,ぼくを囲んだジム達の気持ち> ・とても悔しかったと思う。到底,許すことができない気持ちがあった。 ・自分のことなのに他の友達も出て,必要以上にぼくを苦しめてしまったことに後悔した。 <怒らなかった先生の気持ちを考えたい> ・先生は,ジムが相手を理解しようとする心を持っていると信じていたから。 ・先生が謝ることをすすめても,本当に納得しなければ解決できないから。
イ 役割演技 ジムに許してもらえたぼくの気持ちについて役割演技を通して考えた。 ○演技1 ○演技2 ぼく)今日は休みたいなあ。友達はみんな,昨日,ぼ くがしたことを噂しているだろうな。 ジム)おはよう。もう気にしていないよ。 ぼく)ありがとう。 ねえジム,どうして僕を許してくれたの? ジム)大切な友達だから,このことをきっかけに,も っと仲良くなりたかったからだよ。絵の具を使 いたかったら,いつでも貸してあげるよ。 ぼく)ありがとう。ジムとは,新しい友達になったよ うな気がするよ。本当にありがとう。 ぼく)今日は休みたいなあ。ぼくはこれからずっと,ど ろぼうとみんなから言われ続けるのだろうな。 ジム)おはよう。もう気にしていないよ。 ぼく)えっ。許してくれるの? ねえジム,どうして僕を許してくれたの? ジム)君は泣くほど反省したじゃないか。たかが絵の具 じゃないか。そんなに自分を追い込まなくてもい いよ。大丈夫だよ。 ぼく)ありがとう。こんなひどいことをしたぼくを許し てくれるなんて。うれしいよ。 ■「ぼく」を演じた児童の感想 ひどいことをしてしまったのだから,許して もらえないのは当たり前だと思った。でも,許 してもらえるって,こんなにも嬉しくて,ほっ とするものだと思いました。私もジムのよう に,他の友達を許してあげようと思いました。 ■演技を見ていた児童の感想 このクラスのメンバーがこんなにやさ しい言葉を言ってくれるなんて驚きでし た。友達を許し合う心は,友達の心まで変 えてしまうことに気付きました。許し合え るクラスは,居心地がいいと思いました。
③ 振り返る活動
振り返りの視点:これから先,似たような場面になった場合,どのように考えたら相手の気 持ちを受けとめて許すことができそうか。<児童のワークシートから>
主題名③「相手を許す気持ち」
1 目標 登場人物の気持ちから,過ちを犯してしまった友達とその過ちを許した気持ちを考え,相手を 許そうとする寛大な心を持とうとする心情を育む。 2 指導と評価の計画 過 程 学習活動と主な発問(○◎) 学習の様子を見取る視点 主体的・協働的な 学習活動の留意点 導 入 1 本時の道徳的価値につい て,自らの体験を想起する。 ○誰かを許したことはありま すか。 ◇これまでの経験からその時 の 気 持 ち を 思 い 出 し て い る。 ・体験を想起することで,本時 の学習のねらいについて意 識させる。 展 開 2 資料を読んで,話合いの テーマを決める。 ○資料を読んで,気になった ことや話し合いたいことを 発表しましょう。 3 登場人物の気持ちについ て話し合う。 ○絵の具を盗んでしまったぼ くの気持ちはどうだろう。 ○先生がひとふさのふどうを くれた意味は何だろう。 ◇資料から感じたことや気に なることをメモし,発表し ている。 ◇ぼくの盗んでしまった気持 ちについて考えている。 ◇ひとふさのぶどうをあげた 先生の意図やもらったとき の主人公の気持ちについて 考えている。 ・資料から感じたことを,共感 したことや批判的にとらえ たことを発表し,学習全体の 見通しを持たせる。 ・話合いのテーマに沿って子供 たちが気になったことを中心 に 登 場 人 物 の 気 持 ち を 考 え る。 ・資料で描かれているひとふさ のぶどうの意味について考え ることで,先生の思いや主人 公の気持ちについて考える。 話合いのテーマ 「なぜジムはぼくを許したのか。」 ☆登場人物の思いを振り返り,自分の体験と照らし合わせて推測する。 ◇話合いのテーマと授業の 流れを関連付けて,自分の 考えを示している。 ・グループで意見を交換し, それぞれの考えを共有した 上で,学級全体で話し合う。 ・話合いのテーマと関連させ て自分の考えを発表する。 ◎ジムはなぜぼくのことを 許したのだろう。終 末 4 本時の学習を振り返る ○「許す」ために大切なこと は何でしょう。 ◇話し合ったことから,本時 で学んだことと,自分のこ れからの生活について考え ている。 ・「許す」ことについて自分の これまでの体験を振り返り, これからの生活に生かそう と考えている。 3 板書計画 4 学習指導の様子 (1) 主体的・協働的な学習のための指導の様子 ① 見通す活動 本実践では,資料を読んでから児童の感じたことや気になったこと,つまり,心の引っかか りから,「話合いのテーマ」を設けた上で,学習を行った。「話合いのテーマ」は主発問と関係 しており,「何のために話し合うのか」という見通しを持った主体的な学びにつながる。 また,指導者の資料吟味や捉えさせたいことに偏ることなく,学習を行うことにもつながる。 本事例において児童が感じたことは,以下の通りであった。 ・ジムはぼくのことを許す優しい気持ちがあっていい。 ・ぼくはどうして絵の具を盗んでしまったのか。 ・先生がひとふさのぶどうをあげたのはなぜだろう。 ・ひとふさのぶどうの意味は何だろう。 ・ジムがどうしてぼくのことを許せたのだろう。 ジムが許した気持ちが気になる児童が多かったため,「先生が与えたひとふさのぶどうの意 味」と「ぼくが絵の具を盗んだ気持ち」を考え,それぞれの視点から多角的に捉えたあと,「ど うしてジムはぼくを許したのか。」ということを話し合うこととした。 ア 「ぼくが絵の具を盗んだ気持ち」について(S は児童,T は教師の発言を示す) T:ぼくはどうして絵の具を盗んだのかな。 S:どうしても上手に絵を描きたかったと思う。 S:ジムの絵の具は特別だったし,ぼくが持っていない色があったからでしょう。 S:でも盗む必要なかったよね。借りればよかったじゃん。
第○回 「ひとふさのぶどう」
話合いのテーマ 「ジムはなぜぼくを許したのか。」 ぼ く 先 生 ジ ム 絵の具をぬすんでしまったのは? ● 上手に絵を描きたかった。 ● ジムの絵の具を使ってみたかった。 どうして先生は ひとふさのぶどうをあげたの? おいしいもので笑顔にしたい。 ぼくの気持ちを落ち着けるため。 ぶどうのように仲良くなって欲し い。 優しい気持ちになって欲しい。 「許す」とは? ・ 許すことは,相手の気持ちを理解すること。 ・ 許すことで仲良くなれる。 ・ 相手を受け入れること。 ◎どうしてぼくを許したの? ・ 先生が許すように話したから。 ・ 自分もしたことがある。 ・ ぼくが絵の具を欲しがっていること を知っていた。 ・ 仲良くなりたいから。T:絵を描きたい気持ちから盗んだのかな。 S:本(資料)にはそのことしか書いていないからね。 イ 「先生が与えたひとふさのぶどうの意味」について T:最初に A さんがどうしてひとふさのぶどうなのか気になると言ってくれたけど,みんな はどう思う。 T:少し難しいかな。では,近くの人と話し合ってください。 S:たまたま近くにぶどうがあったからじゃないか。 S:みんなに連れてこられた時のぼくの気持ちを落ち着けるため。 S:ちゃんと絵の具も返して反省しているから。 S:あきれたからじゃないの。 S:何か心に響くようにじゃないの。 S:ジムにもあげているから,ぶどうのようにひとふさになって仲良くなって欲しいという メッセージじゃない。 S:ぶどうって一つじゃないの。 S:ちがうよ。ひとふさって何個も粒がくっついているでしょう。 T:ぶどうは一房で売っているでしょう。一粒ではぶどうとして寂しいね。 S:ぶどうは甘酸っぱいでしょ。だから甘さは優しい気持ち。酸っぱさは相手が怒っている 気持ちじゃないかな。 文学的な読み取りにもなったが,先生のひとふさのぶどうに込めたメッセージを考えてい くことで,許すために必要なことに気付くことになった。 ウ 「ジムはどうしてぼくのことを許したのか。」について ・友達だから。ぼく(主人公)と仲良くなりたいから。 ・先生が許すように言った。 ・ぼくが絵の具を欲しがっている事がわかっていた。 ・ぼくが泣いている様子を見て,しょうがなく許した。 ・ぼくが絵の具をしっかり返してくれたし,反省もしているから許した。 ・友達だから。もうやらないと信じている。友達を増やしたい。 ・ジムも先生もぼくのことを許さないと解決しないことは知っていたから。 ・自分も前にやったことがあって許してもらったから。 ・先生に言われる前に友達になろうとしていた。 ・いつまでも怒っていても仕方ないから,これからのことも考えて許した。 ・ジムは元から優しい子だから。 ・こんなことでケンカして,仲悪くなってしまうから。まだ仲良く生活したいから。 ・よくできる生徒に責められてかわいそうだから。 ・許すことでもう二度とやらないでくれというメッセージがこもっている。それを伝えたか った。友達として仲良くやっていきたいから。許さないと「ぼく」が毎日罪悪感で元気に 過ごせないから。 ・絵の具を返してもらったし,悪いことだと「ぼく」が認識していたから,もうやらないと 思った。 ここで議論になったのは,「先生に言われたかどうか」「仲直りしないと解決しないこと」 「友達として許すことが大切ではないかということ」「友達になりたいから」ということで あった。さらに,個人の思いや本音,これまでの経験を踏まえた意見が出された。自分が 以前に悪いことをして許してもらった経験のある児童は,相手を許すことで相手が救われ る気持ちになることや,許さないでいつまでもいるとお互いに気分が悪く,同じクラスで 仲良くできなかったりしたことが発言された。 道徳的な価値について自分との関わりで主体的に考える学習になり,それぞれの思いを 語ることができた。
② 振り返る活動 学習のまとめとして,「許す」ということについて本時に考えたことを学習感想に書いてもら い,授業を振り返った。以下はそれぞれの感想である。 ・友達が自分に嫌なことをしても,そのことを放っておいても何も変わらないし,何もないか ら,許すことは大事だなと思った。 ・許すことは心の優しい人しかできないから,ジムは心優しいのだと思う。ぼくもジムのよう に心の優しい人間になりたい。 ・許すことは相手の気持ちを自分におきかえて,考え,相手の悪いことを認めてあげることだ と思った。だから私も心を広く持とうと思いました。 ・友達が悪いことをしても許してあげようと思った。そうすれば学校もお互いに楽しくなるし, 友達も増えると思う。そのために,優しい気持ちを持とうと思った。 ・許さないと悪いことをした人がもっと悪いことをしちゃうかもしれないから,許さなくっち ゃいけないのかもしれない。 ・ぼくも許したいと思った。理由は許せば友達も増えるからやさしい気持ちを持ちたい。 ・許すことは許された人と友人になる仲直りの言葉だけど,もう一つその悪いことをした人を 注意する言葉だから,ぼくも使っていきたい。 ・許すということは許す相手を信頼するということを学んだ。 ・ぼくも周りの人が何かしたときも快く許してあげようと思った。許すために必要なことは許 される側の反省など,許す側にはやさしい気持ちが必要。 ・許すということは,いろいろな意味があることが分かった。勝手に何かを取られたり謝って きたりしたら許す。許すために必要なことは,友達を大切にする気持ち。 ・許す側も自分にとって嫌なことをされたらかなり苦しいはず。また許される側も初めて自分 の過ちに気付いたその瞬間,苦しさを感じると思う。ただ私はどちらの立場だとしても,苦 しさをおさえる強さを身に付け,相手も自分もまた気分良くなれるようにしたい。 ・ジムのように優しく許すようにする。私たちはこれからもたくさんの人と失敗などを許して いかないといけないので,許すことは大切だと思った。許すために必要なものは,優しい心 だと思った。 ・許すことはぼくたちが大人になるまで,いっぱいあることだから許すことは必要だと思った。 ぼくは今子供だから,大人になっても子供のことは許したいと思う。 ・許すことは相手を信頼したりしていないとできないことだし,その相手の好きなことなども 知っていないとできないこと。自分も許してあげようと思う。やさしい気持ちが大切。許せ る自分になる。 ・友達でも許す,許される理由はある。でも相手の身になってあげるのも大切。自分勝手に怒 るのは良くないから,優しく,なぜしたのかを聞いて仲良くなれるといい。 ・許すことは大切だと思う。許す方もずっとケンカしていたら,気になってしまうし,毎日が 楽しくなくなってしまう。許される方も許されないと悲しくなって学校にきたくなくなっち ゃう。だから私も友達を許したいと思った。私も何かしたら,しっかり謝りたいです。 ・私は友達にものを盗まれたら許せません。だからジムが,もし自分から謝っていたらすごい と思います。私は,物を盗まれたらしっかり注意してあげたいと思う。物を盗むことは犯罪 です。 ・許すとは,相手がした悪いことを受け入れて,優しくしてあげることだと思う。