国民ニーズに応えるマンション解消制度の実現を(提言) 老朽化マンション対策会議 2013 年 12 月 16 日 1.マンション解消制度は多くの国民のニーズに応える 地震に弱く、機能的にも劣る老朽化マンションで、改修で対応できないものについては、 現在、建替え制度しか用意されていない。しかし、建替えとは、現在のマンションの区分 所有関係を解消して、同一敷地に建替え賛成者によって新たにマンションを再建築するこ とを意味し、二度の引っ越し、事業主体として区分所有者が責任を持つことなどのため、 高齢化や賃貸化が進むマンションでは、負担が大きく、合意が難しい。 このため、多数決のみでマンションの区分所有関係を解消でき、古いマンションを除却 したうえで更地にし、これを一括売却できる仕組みを作れば、区分所有者のそれぞれが、 負担なく、大きな利益を得ることができ、しかも、安全快適な居住を実現しやすくなる。 これは、大きな効果を持つ景気対策にもなる。 2.マンション解消制度の世界の先例を参考に 米国には、建替え制度はなく、3 分の 2、4 分の 3 などの議決による区分所有関係解消制 度が州ごとに定められている。シンガポールも建替え制度を持たず、築 10 年超のマンシ ョンでは 80%、それ以下では 90%の合意により、区分所有関係解消、一括敷地売却を行 える制度が1999 年に導入され、800 棟、従前住戸 24,000 戸を超える解消実績を持ち、実 質的に活用されている。このような実績が、同国の好景気をもけん引している。オースト ラリアでは、ニューサウスウェールズ州でシンガポールをモデルとした立法の途上にある。 これらの制度・法案では、すべて区分所有者当事者の自治が尊重され、原則として多数 決のみの要件で解消が可能である。 3.耐震危険性だけでなく機能的社会的陳腐化にも対処し国民ニーズに的確に応えるべき (1) 解消制度は特別多数決のみを要件とするのが原則 本来、一定の特別多数決、例えば、5 分の 4、4 分の 3、3 分の 2 などの区分所有者の合 意があれば、そのような多数があえて決断する事情を尊重すべきであり、他に一切の条件 を付することなく解消を認めるべきものである。現在の建物区分所有法の建替え決議要件 は、紆余曲折を経て、2002 年法改正により、5 分の 4 の合意のみで建替え可能であり、そ れと異なる規律を解消に持ち込むべき必然性はない。 (2) 他の要件を付するとしても耐震性に劣るものだけではなく、居住性能が劣るマンシ ョンもすべて救済される要件としなければならない 仮に旧耐震基準によるマンションのみを対象とすると、1981 年以降に建築確認を受けた もの、すなわち概ね1982~1983 年以降に竣工したマンションは、一切解消が許されなく なるが、これでは、以下のようなニーズに応えることができず、妥当でない。
(1980 年代以降でも解消の必要性が強いマンション例) ・階段室タイプのエレベーターがないマンション。(近年のマンションは3F以上で エレベーターあり) ・空室増加または共益費の滞納等に起因して、管理が適正に行われていないリゾート マンション ・完成後の高さ規制や容積率の変更に伴う既存不適格マンションで、建替えると戸 当たり面積が狭小となるもの ・最寄駅までバスを利用せざるを得ない立地でマンションとしての建替えニーズが ないマンション ・投資用ワンルームマンションで適正な管理がされず入居率も下がっているもの ・その他:バルコニー避難ができないマンション。遮音性・階高等改修で対応でき ない陳腐化が進んでいるマンション 等 このため、旧耐震基準によるマンションに加えて、以下のようなものは、築年数を問わ ず、建替えが実際上不可能であり、区分所有者に多大な負担を強いるとともに、不良資産 化しかねない。これらすべて解消が可能となるよう立法で措置することが必須である。 (解消措置の対象とすることが必須のマンション) ① 3 階建て以上でエレベーターがないマンション(特に高齢者にとっては耐え難い苦 痛となり賃貸も困難) ② 既存不適格で、建替える場合に上限総専有面積が現状より減少することとなるマ ンション(高さ、容積率などの土地利用規制が強化され、延べ床面積が確保でき ないなど) ③ 建替えることにより総戸数を減少させることとなる規制が存在するマンション (自治体による最低専有面積規制など) ④ 空家率が継続して 2 年間以上 20 パーセント以上のマンション ⑤ その他、安全性・居住性能が現代の国民に必要な水準より劣るマンションとして 別途政令等で具体的な基準を定めるもの(例・床の厚み 150mm以下、階高 2750 mm以下、単身者向けを除く平均専有面積 50 ㎡以下など) (3) 本来要件全般を簡素で明確なものとすべきであり、仮に法案に明記されないとして も将来課題として以下を立法上明確な課題とすべき ① 多数決要件のみで解消を認める制度とすること ② 多数決要件は、5 分の 4 では少数者の投票価値を多数者のそれの 4 倍も高く評価 する基準であり、不公平かつ妥当でない。3 分の 2 とすること。
参考資料:1980 代以降の竣工でも解消の必要性が高いマンションの実例
老朽化マンション対策会議 2013 年 12 月 1.社会環境の変化により需要が減少したもの ■郊外のバス便立地で市場環境が変化したマンション 東京都西部や神奈川県、千葉県、埼玉県など郊外の最寄駅からバス便利用のマンション は、その後の住宅市場動向の変化や人口減少に伴い、マンション立地としての市場性がな くなり建替えには多額の自己負担を伴うものとなって、合意形成が困難な状況にある。こ うしたケースでは、区分所有関係を解消し、最有効利用となる施設用途で事業を行う事業 者に土地を売却できる仕組みが是非とも必要である。 ■拠点駅周辺で商業施設が集積した地区に立地するマンション 土地利用が建設時とは大きく異なり建て替え時期にはマンション用地としては不向きな 場所に立つマンション(渋谷、新宿、池袋など繁華街に実在)は最有効利用となる施設に 変更することが経済合理性が高く、マンションへの建替えよりも区分所有関係の解消のほ うが有効である。 ■バブル期に大量供給されたリゾートマンション(写真 1) 湯沢や熱海などの観光地で供給されたリゾートマンションには、景気の低迷・需要の変 化で市場が収縮し処分しようにも買い手がつかず、管理費等滞納や相続放棄、行方不明等 で空部屋率が高まる一方で区分所有関係を維持していくことが困難な事例が多くみられる。 新潟県湯沢町の場合、全体で56 棟・約 15,000 戸(内 49 棟・約 13,000 戸は新耐震)のリ ゾートマンションが供給され、潜在的にそのリスクを抱えている。 2.法規制の変化などにより建替えが困難なマンション ■既存不適格で建替えが困難なマンション 東京都区部では条例等で高さ制限が強化され、既存不適格となって建替えると従前の床 面積が確保できないマンションが多数発生している。行政との事前相談でこの点がネック となり、建替え事業が進まない事例は多数報告されている。 ■建替えると総戸数が減少するマンション 東京都区部など都心のワンルームマンションには住戸面積が戸当たり20 ㎡程度のものが 多数存在するが、多くは容積率の上限で建てられている。市区の条例等で最低専有面積 25 ㎡以上等の規制があるため、建替えた場合には総戸数が減少することとなり区分所有者の 負担額も多くなるため合意形成が難しく、最終的にはスラム化する可能性が高い。3.現在の居住水準を満足していないマンション ■階高や遮音性能が低い、専有面積が狭い等のマンション(図 1) 一部不動産業者ではあるが販売価格を下げるために階高を低くする、スラブ厚や壁厚を 薄くする、面積を狭くするなど居住水準の低いマンションを提供してきた。このようなマ ンションは年とともに上がる居住水準の中で、居住者の不満が高まっているが立地特性や 法規制、建替え時の負担増で合意形成の難しいものが多々見られる。 ■3 階建て以上でエレベーターがないマンション(写真 2) 5 階建で階段室タイプの公団団地は 1980 年代前半までは東京、大阪をはじめ大都市部郊 外を中心に大量に供給されている。 エレベーターを付加する改築は難しく費用負担の面からも不可能であり、分譲住宅では 前例がない。上の階ほど空き家が出ても住まい手がなく、従前から暮らす住民の高齢化に 伴いバリアフリー面で大きな問題となっている。 また、郊外立地の団地は建替えようにも市場がないため自己負担が多くなり合意形成が 困難であるため、区分所有関係の解消が最適な選択肢となる。 4.その他 ■道路拡幅に伴い敷地の一部を買収されるマンション(図 2) 東京都町田市で道路拡幅に伴い建物の除去を余儀なくされ、隣接地とあわせて円滑化法 により建替えた事例がある(クレストフォルム南町田)。敷地すべてが収用の対象となれば よいが、一部のみ買収等のケースでは建替えの合意形成も困難であり、区分所有関係の解 消制度の導入が望まれる。 ■反社会的勢力等が入居するマンション 暴力団事務所や不法営業店舗等が入居しており、他の区分所有者が退去を求めても応じ ないマンションのケース。東京や大阪、福岡など都市部の繁華街等に実例がある。このよ うな事例の場合、区分所有者側があきらめ空き部屋としたりしてスラム化が進んでおり、 区分所有関係を解消してこうした勢力を一掃したいというニーズがかなり存在している。
■写真 1:リゾートマンション(イメージ)
■図 1:住宅性能基準モデルの変遷
■図 2:道路拡幅に伴い敷地の一部を買収されるマンション
クレストフォルム南町田(出典:マンション再生協会ホームページ)
建替え事業スキーム及び土地推移イメージ