自然エネルギーを活用した省エネルギーに関する研究
-太陽光発電を利用した省エネルギー化への取り組み- The Study of Energy Conservation using Natural Energy
- Approach on energy Conservation using Photovoltaic Power Generation -
福岡 秀雄、吉田 信也、前田 みづほ FUKUOKA Hideo, YOSHIDA Shinya, MAEDA Mizuho 1. はじめに 近年、太陽光発電はクリーンエネルギーの活用 面から話題となっている。また、この太陽光発 電は環境対策の一環とし政府も力を注いでいる。 職業大東京校では、関係技術者育成を目的と して教材開発のための研究を実施している。 本報は、その概要の一部を報ずるものである。 また、システム構築の詳細や諸特性、及び問題 点等は後に改めて報告の機会を得たい。 図2 取り出せる電力 2.太陽電池の原理と特性 取り出せる電圧値は、PN 接合の 1 セル(一 素子)当りは、0.6~0.7V 程度である。従って、 高い電圧を得るにはセルの直列接続が必要とな る。また、大きい電力を得るには広いセル面積 (セルの並列接続など)が必要となる。 原理は、半導体のPN 接合部に光エネルギー を吸収させそのエネルギーで価電子帯の電子を 励起させ、電子・正孔対を生成する。 発生した伝導帯の電子群は負極(-)となり、 価電子帯の正孔群は正極(+)として作用し起 電力を得る。 また、照射光に対する変換エネルギー効率は、 下記のように処理され、データ値はこの計算方 法が一般に用いられている(図2 参照)。 図1 は、その概念を示したものである。図 2 は、取り出せる電力について概要を示したもの である。PN 接合の特性で、暗電流に相当する 特性はダイオード静特性であり、光照射時の電 流の特性が起電力を生じた時の特性である。図 中の斜線部が取り出せる電力部分である。 開放電圧:VOC 短絡電流:ISC とし、受光面面 積:S とすると電流密度:JSCは次式となる。 JSC=ISC/S ・・・ (1) また、最大出力電圧:V max 最大電流:Imax とす ると特性の曲線因子:FF は次式となる。 ・・(2) 照射光のエネルギーを100mW/Cm2(1000W /m2)で規格化すると効率:ηは次式となる。 η=VOC・JSC・FF [%] ・・(3) 図1 PN 接合での電子・正孔の生成
3.太陽電池の分類と用途 PN 接合は、反射防止を施してあるガラス基 板の下に構成され高濃度P 形(P+層)の裏側に 裏面電極が構成されている。 太陽電池(セル)は、用途により材料が異な る。 極小型用途(モバイル用など)では、サイズ が小さく結晶系での製造が容易であること。ま た、結晶系は変換エネルギー効率が良いこと。 コストが低廉であることからシリコン材料を主 体とした結晶系タイプが多用されている。 屋外設置の電力用では、セル自体が大型であ ることより、製造で有利な薄膜シリコン(アモ ルファスなど)が多用されている。 図5 セル断面略図の1例 化合物半導体のセルは、センサーや宇宙衛星 用など特殊用途に用いられている。 極小型の太陽電池の外観例を図6 に示す。 図 3 は、分類例を示した表である。図 4 は、 主なセルと変換エネルギー効率の概略を示して いる。 図6 極小型の太陽電池例 また、屋外設置の電力用は、単位セルを複数 接続して太陽電池モジュールを構成する。その 太陽電池モジュールを屋外にアレイ状に敷設し、 太陽電池アレイを構成し利用している。図7 は、 その構成をイメージで示したものである。 図3 セルの材料や構造による分類 また、図8 に、職業大東京校で敷設した写真 を示す。 図4 シリコン材料セルと効率 4.太陽電池の概略構造と写真例 セルの断面略図の一例を図5 に示す。受光面 には反射防止が施され、入射光を効率良く取り 入れる構造である。 図7 太陽電池アレイのイメージ
図8 職業大東京校でのアレイ状敷設 5.屋外設置の太陽電池モジュールの種類 屋外設置の太陽電池モジュールにも多くの種 類がある。設置部位や設置方式により適切な種 類を選定することが大切である。 ①設置場所:屋根 ②設置場所:壁 ③設置場所:窓 ④設置場所:①~③の他 ここで特記すべき事項は、建材型(建材目的 も兼ねるタイプ)の太陽電池は建築基準法(建 築物の立地、建築物の構造・用途、建築物の構 造強度等)との関連性について知識を必要とす る点である。 前掲(図 8)職業大東京校での敷設例は、一 般家屋に多用されている「屋根置き型」を用い ている。また、取り付け用の架台支持金具等は、 全て自加工(東京校)であり壁設置も可能とし ている。 6.発電容量と法手続き 太陽光発電では、電気関連の法規から届出や 承認、審査事項がある。 下表は「発電量と電圧の種別」による、届出 や承認の必要事項を示したものである。 表1 発電量と電圧種別の手続き この表から、発電量が20[kW]以下で、かつ、 低圧で有れば届出や承認の必要が無いことが判 断できる。 また、20[kW]の容量は、太陽光発電では極 めて大きい容量である。 一例で察すると、太陽電池(1200×530mm サイズ)モジュールでの発電量の最大出力が約 70~75W程度であるから、20[kW]を 75[W]で 除すればモジュール数が求められる。その値は 約267 モジュールとなる。 通常の一般家屋で太陽光の当る屋根面積を考 慮すると、この数のモジュールをアレイ状に敷 設できる広さは稀と考えられる。このことから、
8.一般的なシステム構築の流れ 一般家屋への太陽光発電は関連法の手続きが殆 ど必要ないことを窺い知ることが出来る(但し、 低圧連系システム)。 一般的な系統連系システムの構築の流れにつ いて図 10 に概要を示す。図中の必要な申請手 続きが、既述した設置側が行なう法的手続きや 売買時の電力会社との手続、補助金の手続きで ある。 勿論、電力会社との売買電をする場合や補助 金を申請する場合は、後項で示すところの必要 な申請手続き(所轄官庁や電力会社との協議・ 契約)が必要である。 7.電力会社と売買電するシステムの概要 現在主流となっている系統連系システムの概 要を図9 に示す。また、概要解説を①~⑤に示 す。 図9 系統連系システムの概要 ①太陽電池モジュールは、既述したようにアレ イ状に敷設される。 ②敷設されたモジュールを接続箱で接続し、集 電する。 図10 システム構築の流れ ③集電された電力は、直流であるからパワーコ ンデショナーで交流に変換する。この際、電力 会社より供給される電力(電圧、周波数、位相 の調相)を行う。 9.関連技術者の育成関係について 現在、太陽光発電の関連技術者(特に敷設施 工技術者)の育成は、太陽光発電モジュールの 供給企業や関連団体が主体になりセミナーを実 施し、行なっている。 ④この③で得られた電力は受配電設備に送られ 構内利用や電力会社に供給する。従って、この 受配電設備には、買電と売電の積算電力計が設 備されている。 教材も、主流である系統連系システム関して は、システムの概要、関連法規(電気事業法、 建築基準法)、系統連系ガイドライン関連(電力 企業との事前協議等)、安全作業関連、屋外設置 パネルの種類と標準施工法、工事区分、保守点 検など一連の教材がまとめられている。 ⑤太陽光発電の発電量を大きく左右する要素に 日射量や温度がある。日射量は直接発電量に影 響し、温度はモジュール内の生成キャリア(電 子、正孔)のモビリティに影響する。特にモビ リティは温度上昇に伴い低下し、発電効率を低 下させる。 特記すべき点は、太陽光発電の関連技術者に は、太陽光発電モジュールの建材型の出現によ り、電気関連技術、建築関連技術、両者の技術 的知識が必要とされていることである。 そこで、日射計、温度計が設置され発電量と 屋外状況を表示しモニタが出来るシステムが構 成されている。
10.職業大東京校での研究システムについて 構築したシステムは、モジュール 12 枚程度 の極小規模(1kW程度)である。 従って、売買電を行なわないシステムとして、 太陽光発電の電力は全て蓄電池に蓄え、その電 力をインバータでAC100V に昇圧して、夜間の 校内用電力(防犯灯3 灯、図中の NO1~NO3) に利用し僅少であるが省エネを実現している。 また、一部(図中のNO4)はソーラ建物内へ の電源供給である。 電力容量も小さく、更には独立したシステム であることから、設置に関する手続きは全く必 要としない。 図11 東京校でのシステム概要 このシステムの詳細については、第 17 回職 業能力開発研究発表会で発表しているのでその 稿を参照されたい(予稿集 P133-134)。また、 このシステムの特記すべき点は次の通りである。 ①太陽光発電モジュールの敷設実習が可能であ ること。 ②関連する電気工事の実習が可能であること。 ③各機能の要素を電気・電子系の総合製作の課 題として、企画から設計、製作、稼動まで行な えること。 ④常時稼動しているから、保守点検の大切さを 教授できること。 ⑤このシステムでは、構築過程での各種申請手 続、電力企業との連系運転の立会い等は経験出 来ない。従って別途これに関連する模擬教材を 用意する必要がある。 11.極小規模発電システムの検討について 敷設面積や建築構造物の関係で極小規模(5 kW以下)となる敷設では、一般の系統連系シ ステムを適用し、パワーコンデショナーや売 電・買電用の積算電力計設備を設置しても、売 電収益は極少であり設備費の償却出来る見通し は得られない。 従い、太陽光発電での極小規模の理想的なシ ステムのあり方は、一つの研究テーマである(大 手企業では取り組んでいない)。 12.今後の展開について ①技術者育成の教材の開発 企業利用のセミナーテキスト内容や研究シス テムで得られた事項を総合的に検討しながら、 実習を含めた教材の開発を進めたい。 ②極小規模(5kW以下)のシステム検証 極小規模の太陽光発電システムの理想的あり 方も研究対象として続けて行いたい。 ③遠隔地でのモニタと操作システムの検討 昨今では、ホームセキュリティ(宅内画像の 入手)や遠隔地からの住宅内電気機器の操作が ネットワーク技術で出来るようになりつつある。 いわゆるインテリジェントハウス化である。 この技術はクリーンエネルギー普及と共に、今 後、急激に進展する重要技術(省エネルギー) と推測する。 現システムの発電量、充電状況、放電状況を ネットワーク化で遠隔地端末からモニタできる システム構築や、一部、負荷切り替えの出来る システム構築を①②に併せ実施する計画である。 参考文献 ①NTT ファシリテーズ発刊の各種資料 ②太陽光発電協会発行の各種資料 ③佐久市のソーラモデル事業資料 他