A Study of
―発間の成立条件―
the Systems of′
reaching―
Learning in
The COnditions Of Questioning
the Classroom:
教育方法学教室 /J、 林洋 一 郎
I.発
問 研 究 の 意 義 授業 を参観す るとき,そ
の授業 はどこがす ぐれているか,ま
た,改
善すべ き点 はどこか といった 評価の対象 を探 しなが ら,教
授行動や学習活動 を観察 している。 その場合 に,ま
ず,ど
んな単元の どんな教材 を用 いて どのような学習課題 に取 り組 んでいるのかを,教
師の発言や学習行動 を通 して すばや く知 ろうとす る。そして,発
問や説明 は明確 であるか,学
習活動 に必要な情報 を提供 してい るか,子
どもの発言や活動 は活発 であるかな どに注 目す る。あるいは,子
どもたちが どのような問 いや問題意識 をもち,ど
のように問題解決 をしてい くかを観察 しなが ら子供の立場で考 えようとす る。授業 といちて もさまざまな型が存在するが,大
部分 は,教
師 と子 どもとの相互作用関係 におい て成立 している。つ ま り,教
材(情報)の提示が,多
様 なメディア と教師の発問,指
示,説
明などの 指導言によって行 なわれ,そ
れ らに対応す る子 どもの発言や活動や思考が生 じるのである。 教師は,発
間のタイ ミングや発間の仕方を一種 の直観で とらえ,指
導案 さえあれ ば安心 して,臨
機応変に発問 しているのが実際であろう。今世紀始め頃のアメ リカにおいて も,教
室での一斉授業 の状況は現在 とあ まり変わっていないようである。当時の研究報告によると,「発間 と応答のある授 業 は,教
師 と子 どもの間の会話時間 とな り,正
しい教育 の豊かな機会 を与 える。子 どもの心 に思 っ ていることを導 びき出す。 また,教
師の心が子 どもの意志や感情 と密接な接触 をす るときである。 子 どもの限界 を越 えて,正
しい思考や行為へ導びき方向づ ける。教師にとって子 どもたちが どこで つまづいてい るかがわか り,能
力 に応 じて独立 した知的作業 を行 う充実 した時 とな りうる。 また, 独力で考 えた り,行
動す る力 を身につける機会 となる。教師 に とって子 どもたちの 自発性の可能 な 道 を発見 した り,
また正 しい刺激 を与 えるときであるざ」と述べ られている。教師はまた,授
業で用 いる発間によ り,授
業の目的や 目標 を明確 に してい くことがで きるし,指
導観 は,授
業 に反映 し, その傾向は発問の仕方 にもっともよ く現われている。 よい発間の技術 は,教
師の専門性 として,研
究 と実践 によって獲得 されなければならない。先のアメ リカにおける授業に関する調査研究報告に おいて,「い くっかの異 なるタイプの授業の存在 と重要性 を認 めるけれ ども,授
業時間の80%は ,間
答で しめられているのは確かである認 と述べ られてい るが,
これは,現
在のわが国の状況 に,そ
の小林洋一郎:学習指導体制の研究 ままあてはまるのではないか と思われるのである。 授業中の発聞(質問)と応答の回数や質が問題 とされ るようになって きたのは
,授
業 にお ける教師 と子 どもの相互 コ ミュニケー シ ョンを分析す るカテゴリーの研究が行われ るようになった こと,ま
た,教
育工学的なアプローチ として,プ
ログラム学習(教授)の理論や実践が,一
般の教室授業 に応 用 され るようになって きた ことに関係がある。 子 どもは学校生活の中で,教
師による発問あるいはワー クブ ツクやテス トによる問題解決 をせ ま られ,毎
日,何
百回 とな く問いかけられているのが現実である。授業 における黎師の発間 は,ワ
ー クブックなどの問題 とは機能が異 なるものであるが,形
式的にまた内容的に共通 している側面があ る。授業設計や教材研究 を通 して,教
師 自らが,発
問 を構成 し,子
どもの学習 を成立 させてい くた めのよい発間 となる条件 を追究する必要がある。 そこで,次
に授業 における発問の性格 を考察 し, 発間を構成 している要素 を分析す るために,ベ
ラックたちの授業 コ ミュニケー シ ョン分析 における カテゴリーに手がか りを求 める。 そして,す
ぐれていると定評 のある林竹二の授業記録 を分析す る ことを通 して,発
間の役割 を明 らかにし,授
業 を評価する観点 を発間に求 めるのが この小論の 目的 である。II発
間 の概 念 と発 問 分 析 の カ テ ゴ リー 発間には,さ
まざまな形の問いかけがあ り,そ
の背後 には教師の意識や意図が存在す る。 したが って,発
間の概念 は,授
業 において,教
師がね らいをもって,問
題 を把握 させた り,目
標達成の過 程において,適
当な情報 を得 るために,課
題解決や意志決定 を子 どもたちにせ まる問いか けの総称 である。多 くの場合,知
的理解や探究のために,教
師 は子 どもの応答 を期待 し,予
想 し,あ
るいは, 思考や行動の構 えを設定するために発問す る。教師の発間は,解
答があ らか じめ予想 されている場 合が多いが,子
どもの応答 によっては,予
想 を越 えて発展 してい く場合 もある。 また,幼
児の質問 のように,何
にで も疑問詞 をつけて疑間形 にし,答
えに くい又 はあい まいな質問 をし,子
どもを困 惑 させ る場面 も多 くみ られ るのである。一般の授業 を記録 し,発
言 を分析 してみると, 1時
限の授 業 において,教
師の発問(質問)と子 どもの応答が,それぞれ100回を越 えてい る場合が非常 に多いの である。1分間に2∼
3回の問答が,平
均 して行 なわれていることになる。 この ように,一
問一答 型の授業が一般的であるが,こ
れ は最近の傾 向 ということではない。問答形式の授業 は,教
科書 を 中心 とした知的理解 をさせてい くことばか りでな く,探
究の手段 として も有効 な方法 と考 えられ て いるのである。 今回の実践事例の分析では,授
業の全体的特徴や発問に焦点 をあてるために,フ
ランダースの相 互作用分析カテゴ リーによる発言マ トリックス も利用す るが,さ
らに,ベ
ラックたちのカテゴ リー の うち,子
どもの応答や反応 を引 き出す教師の働 らきかけを分類 した り,応
答 を求 める指示的要素 を分析す るのに有効 と思われる誘引的手法の分析概念 を中心 に考察す る。発言マ トリックス とは, 表2のように10のカテゴ リーで授業中の発言 を分類 し,そ
の連続関係 と回数 を示 した ものである。AAベ
ラックたちは,「授業 コミュニケー シ ョン分析9の
中で,教
師および生徒が,何
について, どの程度,い
つ どんな条件の もとで発言 し,
どんな結果 をもた らしたか とい うことを研究 しようと している。 その場合の分析 システムのカテゴ リー として,教
授学的手法 と呼ばれ るものがある。そ の基本的な手法 は,lAl構造的手法 (StruCturing Move),(Bl誘 引的手法 (StiCiting Move),lCl応 答 的手法 (Responding Move),lDl反応的手法(Reacting Move)を
あげている。lAlは,授
業 に方向性 を与 えた り
,筋
道 を ととのえて学習活動 を組 み立 てるための発言で,直
接的な応答 を求 めない指 示,方向づ け,説
明,提
示,整
理,ま とめな どが含 まれる。lBlは,直
接的な応答 を求 める発問(質問), 指示,命
令,要
請,問
いかけなどが含 まれ る。lClは,lBlの誘引的手法に対する応答が これにあた る。 lDlは,⑥
の応答に対 して,反
応的な発言である。 それ は先行する発言 を修正 した り評価 するもので あるが,子
どもの応答 に対する教師の評価発言が一般的である。ベ ラックたちは,そ
れぞれの手法 に関連 して,さ
らに具体的で細かな分析 カテゴ リー を提案 している。 そこで,誘
引的手法 と応 答的 手法のための分析 システムについて,そ
の主要なカテゴ リーの概略を次 に紹介 し,発
問分析の有効 な手がか りとしたい。 誘引的手法 と応答的手法のための分析 システム0
0誘
引一応答行為 に含 まれ る人物 誘引者 (教師,生
徒,そ
の他の話 し手) 誘引 された行為者 (教師,ク
ラス全員の生徒,だ
れか一人の生徒) ○誘引的手法の指示的意味 ││:1急
gョ
き
ζ
?§
子
13写
,::言
菫
骨
三
:岳
:号
5羊
::ぞ
:::を
手
が
手
り
。
■教
辞輔題
([曜
磐
路
緊
謙
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Д
§
垣
F埋
基
岳
藍
彊
と
こ
っ
ぃ
て
螺題
期
待
さ
れ
た
行
為
の
型
(li厚曹
墾
舟
遭
景
薯
漂
岳
唇
電
│2.第
1義的
活
動
(lil⊆貫
百
兌
訂
橿
禦
宏
竜
侵
写
│:二十
i孝Я
落
桑
娼
橿
運
動
①分析的形式
(定義づけること
,解
釈すること
)②経験的形式
(事実を述べること
,説
明すること
)●)l③ 評価的形式
(意見を述べること
,正
当化すること
) ④特別論理的形式 1甘ヨ3§
電 1粟 吾畠 与皇ξF讐
♀:ゞ謬耳:響
冴:詈
τと擢禁する。) i行為 (身体的行為 を指示又は示唆する。) (b)│§g忌
:写
::与
蛾 二
§
雪
:言
ど
ξ
二
:ぞ :与
:号
ぞ
室
良
ょ
情
報
誘
導
語
「
疑
問詞」 をもつほ とん どの指示 は,応
答の構成 を求 めている。)3.適
当な用語についての手がか り (a)引用 された用語……特定の語 を用いて応答 をお こなうように指示。 (b)除外 さ胸フた用語……応答で除外すべ き用語 を指示。 (C)平行する性質の用語……応答 はすでに示 された情報 と基本的に同 じ性質 の ものであるべ き ことを指示するとき (他の, もう一つ別 の,他
の何 か)。 (d)誘導表現……正誤 を指摘することを指示 し,同
時 に受 け入れ られ うる特定 の応答 について 暗 に示 しているとき(`……で しょ″,`……ね〃,`……で はぁ りませんか,そ
うで しょ″な どの付加疑問文)小林洋一郎:学習指導体制の研究
(e)命
題的機能語……盾報誘導語として誘引の中で用いられる疑聞詞である。
①。なに
(What)② . ・……につ いて は どうで し ょうか (What abOut,how about) ③. どん な種 類 の (What type Of,sort of,kind of)
④
.ど
のように
,ど
のような方法で
(HOW,in what manner― way)⑥。なぜ
,ど
のような目的
,原
因
,理
由から
,目
的,原 因,理 由はなにか(Why,fOr what
purpose―cause―reason,what is the purpose― cause―reason)
⑥
.だ
れ
,だ
れを
(に)(WhO,WhOm)
⑦
.い
つ
(When,at what time)③
.ど
こ
(Where,at what place)⑨
.ど
れだけ
,ど
の程度
,ど
れだけの
(HOW muCh many,to what degree―extent,how
X)⑩.ど ち ら(WhiCh),いかなるOVhat X)。 いかなる(PrepOSition what―
X),だ
れの(WhOSe
X),…
… とはなんですか (What is t4e X that)○誘引的手法の文体的意味
(1)提
示の長 さ(2)提
示形式……命令法,疑
問法,平
叙法′
(3)手
法の構文……省略文,条
件文,完
結文 上記の分析 システムのカテゴ リーの うち,
とくに発問分析 に関係 して くるのは,誘
引的手法の指 示的意味の項である。一般 に,発
間が,何
らかの応答(反応)を求 め,又
は,適
切 な思考 を引 き出す ために用い られ るものであるとす るな らば,発
間 は,誘
引的手法の中で も重要な役割 を果 している のである。 そ して,子
どもたちの応答(反応)に直接的又 は関接的に影響 して くるのが,発
間の指示 的要素である。 したが って,授
業 における発問分析では,指
導言の題材的課題や思考 の論理的活動 ばか りでな く,子
どもの応答 を制御す る上記の指導的課題や情報過程活動及 び適 当な用語 について の手がか りに注 目す る必要がある。 Ⅲ.実
践 事 例 の 分 析(1)林
竹二の授業 について 林竹二 は,よ
い授業 とい うのは,子
どもが授業の主体 になることだが,そ
れは子 どもの発言が活 発であつたか どうかではな く,子
どもが どの程度授業 に集中 していたか どうかにかかわ つていると 考 えている。林竹二の授業 はユニークであつて,一
般 の教師にはまねがで きない と考 える もの もあ るが,そ のユニークさとか,子どもが授業 に集中する要因は何 なのかを明 らかにす ることによって, 現在の授業観や授業実践 に変化 を期待することがで きるので はないか と思 う。林竹二 の授業がす ぐ れているのは,子
どもが授業に集中 して,深
く思考す るようになる授業 を組織す ることがで きるか らである。 それ は,教
材解釈についての深い学問的な うらづけがあるばか りでな く,発
間 を工夫 し て,子
どもの応答 を無理 な く引 き出そ うとしているところにあると思われ るのである。 とり上 げる授業 は二 つで,表
1の ように,林
竹二が宮城教育大の学長の とき,1971年
に「人間 に ついてJと
いう主題で実施 された ものである。一つは小学校 において,こ
の主題 ではは じめて とい う六年生の授業 と,そ
の後の同 じ年 に行 なわれている小学校三年生の授業である。 とくに前者 は,「人 間 につ い て」 とい うテーマで何十 回 とな 業 の スタイル の原 型 を示 して い る と思 う。 く行われた ものの うち
,
最初 の授業であ り,林
氏の授 表1.発
間分析 の対 象 とす る授 業 記録⑪ 授業者,林
竹二 (元宮城教育大学学長)(1)「
人間について」,(宮
城県仙台市立坪沼小学校三年生), 1971年 7月 3日(2)「
人間について」,(福
島県郡山市立 白岩小学校六年生), 1971年 2月19日(2)三
年生の授業「人間 について」 まず,全
体 的な特徴 を見 るために,フ
ランダースの「相互作業分析のためのカテゴ リー」 による発言マトリックスを作成した結果は
,表
2のようである。④の発間に注目すると,75回 となってお
表2.三
年生 の授業 の発 言マ トリックス (一時限分) 1稔懸
岳
発
言
言 発 の 的 師 発 教 自 1生 徒 発 言 り,林
竹二 の授業 としては大変多 くなっている。それ に ともない,子
どもの発言 も多 く,指
名 な し の自発的発言が128回と非常に多 くなってお り,活
発 な授業であつた ことが推察 され る。一度発問 した後で
,表
現を少 しかえたり
,強
調するために再発問している場合が 8回
(たて④ とよこ④の交点
)となっている。
この授業は問答型というよりも
,会
話的な授業の展開となっている。それは
,説
明
のあとに発間が続き
(たて⑤ とよこ④の交点をみると
23回),次 に
,子
どもの自発的な発言のあとに
つづいて
,確
認や吟味の質問
(⑨×④→
19回 )がかなり多 くなされているcま た
,子
どもの発言を受
容し
(③→
48回 ),それをもとにさらに活用したり
,追究するための質問もかなり多い
(③×④→
16回)ことがわかる。
次 に,授
業 記 録 で,発
間 を中心 とした子 どもへ の働 きか け をみ る。 問題 や課題 を提 示 す る前 に, (図を示 しなが ら)ピ
ラ ミッ ドを知 って る?と たずね てい る。 これ は,知
って い るか知 らないか の ① ② Э ④ ⑤ ⑥ ⑦ ③ ③ ⑩ 計 ① 1 1 1 4 7 感 情 受 容 ② 4 3 6 賞 讃 ③ 1 2 アイデ ィア受容 ④ 8 4 1 5 2 発 問 ⑤ 2 講 義 ⑥ 1 2 2 1 5 一不 し 日 ⑦ 批 半J ③ 2 2 1 7 応 答 的 発 言 ⑨ 3 2 自 発 的 発 言 ⑩ 1 1 4 5 沈 黙 計 7 11 7212 小林洋一郎 :学 習指導体制 の研究 いずれかを選択 して答 えるよう求 めている。次 に(ス フィンクスの図を示 しなが ら), これ何だか知 っている ?と 質問 され
,こ
れは名前 を知 らなけれ ば,ま
た,思
い出せなければ答 えることがで きな い。名前 を明 らか に した上で,「スフィンクスって どんな もんかなあ」と質問 し,子
どもと対話 しな が ら,「うん,顔
は人間でね,か
らだはライオ ンなの,怪
物だね。」 と反応す る。 そ してスフィンク スはエジプ ト以外 に もあ り,羽
根 の生 えてるもの もあることを解説 し,ギ
リシャの「スフィンクス の謎」の話 に入 ってい く。すなわち,動
物で,朝
は4本
の足で歩いて,昼
は2本
の足で歩いて,夜
は三本の足で歩 く動物 は何だろうか とい う問題 を提示 した後で,「この謎,恐
いんだ よ。この謎 に答 えられない と,ス
フィンクスに食 い殺 されちゃう。」とつけ加 え,真
剣にな らざるを得 ない気持 にし ている。最初 にこの答 は,「人間」であることをあてさせ,な
ぜ人間なのか を,朝 ,昼 ,夜
を一生 に 対応 させて考 えさせている。 子 どもの学習意欲が喚起 された ところで,学
習課題 の提示が行なわれ る。すなわち,「ところで, 人間では,足
と手 は別々な ものになっている。足の役 目は何で,手
の役 日は何だか,は
つきり答 え られるかな?……みんなでよ く相談 して下 さい。」と話 し合 いの時間 をとり,考
えさせている。そ し て,こ
の課題 を,犬
と人間の食事の仕方の違 い,チ
ンパ ンジー と人間 との違 いな どか ら,人
間は頭 が発達 していて考 える力があることに注意 をむけてい く。人間 は火 をつか うこと。手 と足がそれぞ れ違った役 目をもつ ようになった こと。 そして,発
達 した頭のおかげで,人
間 は,他
の動物 とは大 変違 う生 き方 をす るようになった ことな ど,要
点の整理が行 なわれている。 この授業の二時間 日は,一
時間 目の授業 の結果 をふ まえて,さ
らに別の角度か ら, 人間の特徴 を考察す ることになる。一時間 目の応用又は一般化のための発展的学習 と みることがで きる。 中嶽治麿氏 は,授
業 における発間を,教
師の子 どもたちへの働 きかけの中心であ り, 授業を進 めてい く場合 に主導的な役割 を果 してい くもの と考 え,図
1の ような展開例 をあげている。図の中で,吟
は,各
発問(働 きかけ)の
ね らいを表 してお り,右
に書 い てある状態が,子
どもたちに認 め られるこ とが期待 されてい る。 この展開例 は,林
竹 二の授業展開の過程 と対応 している部分が 多 く,一
般的モデル として も授業の設計 に 役立つ と思われ るのである。 図1,授
業 にお ける発間の展 開例(6, ●)六
年生の授業「人間について」 六年生の「人間 について」の授業に関 して も,発
言マ トリックスを作成 してみ ると,表
3のよう になる。 この授業の特徴 を表3で
みると,発間の回数 も52回とかな り多 くなっている。この中で,説 明のあ との発問 が25回と最 も多 く,つ
いで,子
どもの発言 を受容 したあ と,吟
味す る発間が10回,発
問 を くり返す場合が9回
となっている。 また,発
間のあ とで,子
どもが応答す る前に解説 し,改
めて発 問題や課題の提示→学習課題の把握 ↓問
題
の
明
確
化
,具体
イ
い稲轟冨畿
2警接
↓ 問題の分析 ⇒混乱 (ゆさぶ り) ↓ 問題の単純化,構造化 ⇒混乱の回復 し 解決へのとント⇒ひらめき,洞察の誘導 ↓ 応用 。一般化⇒発展的学習 ↓ 定着・評価 →学習への自信 と白覚表
3.六
年生 の授業 の発言マ トリックス 感 情 受 容 讃 問 賞 発 講 し 日 批 1稔懸
岳
発
言
アイデ ィア受容 応 答 的 発 言 自 発 的 発 言 }生徒発言
問す るという傾 向がみ られ るの も,林
竹二の特徴であろう。 さらに,説
明が連続す ることを示すた て⑤ とよこ⑤の交点の数字が114回と高 くなっているのは,教師の連続 した発言が多 くなっているこ とを示 している。 次に,授
業記録 をもとに,発
問展開の過程 を考察 してみよう。まず,「一体,人
間 とい うのは何 だ ろうか」 とい う新 しい課題が提示 される。 そ して,「そこで,『人間 とは一体何 だ ろうか?』 という ことを聞かれた ときに,あ
なたたちはどう答 え ますか?」 というふ うに,発
問 している。 これ は, 「人間 とは何かJ
とい うむずか しい 「問Jで
あ ることに変わ りないが,そ
れ をス トレー トにつ きつ けるのではな く,自
分 の考 えを自由に述べていいのだ とい う指示が暗 に含 まれてい る。 最初 に指名 された子 どもは,「わか りません」 と応答 してい る。 それに対 して,林
竹二 は,「わか らない といっていいかな?」 とおだやかにうけとめ,「考 えてごらん,何
か言 えるで しょう。」 と勇 気づけ,発
言 をうなが している。 そして,「人間 って何 だろう?」と再発問 し,ま
ちが ったっていい んてす よ。答 えとい うのは,い
っぺんにあた るなんてだれ も期待 していない。ヤヽろんな まちがいを しなが ら,だ
んだんほん とうの ところにた どりつ くのが勉強だろう。」 と勉強のあ り方 にふれ,「じ ゃ,あ
とでまた聞 くか ら,考
えておいてち ょうだいね。」というふ うに,学
習への意欲 を失わないよ うにあ とで また聞 くか らといった配慮がみ られ る。実際にあ とで発言 を求 め られた。 これはベ ラッ クたちの分析 システムでは,「l旨導的課題」 と考 えられる重要な教授学的課題 の一つ といえよう。 その他の子 どもたちか ら,「頭の発達 した動物」「他の動物 に比べ るとが まん強 い」,「発明の能力, 文化 を創 るJ,「動作が違 う」,「手でつかむ ことができる」な どの子 どもの発言があつたが,そ
れぞ れの発言について吟味 し,反
応的発言や再質問 をされている。 とくに,「が まん強い」とい う発言 に 対 しては,い
ろいろな場合 をとりあげて吟味 し,こ
の場合の答 えとしては,
これ はあん ま り正確 と はいえないか も知れない とい うことになった。 また,子
どもの発言 をすでに出た発言 と関連 させ, 「発明 とか,文
化 を倉げるとい うことと,頭I凶が発達 していることとは,関係があるかな?な
いかな?J
というふ うに,解
答が予想 され るものを二者択― の形 にして,誰
で も応答 しやすい問いか けにして いるのが特徴である。 この ような問いかけ によって,課
題の顕在化がなされるのである。つ まり, 黙小林洋一郎:学習指導体制 の研究 子 どもの発言 をとらえ
,ど
うい う点で人間 は,他
の動物 とちが うのか を考 えることによって,課
題 の確認 と解決への方向づけをし,課
題解決への意欲 を引 き出 し,展
開への準備 となっている。 次の主要 な発間 として,「ところで,動
物 の中で,何
か物 を『つ くる』ものがい る と思 い ますか? いない と思い ますか?ど
うで しょう。」という問いか けに発展する。 これは,二
者択― の発間であっ て も,ど
うで しょうとい う問いか けによって,選
択の根拠 を求められているので うかつには応答で きない。す ぐには答 えられそうもない と判断 され,自
分で,ビ
ーバー とかア リとか ミツバチの話 に なる。そして,「あなたたちは,ミ ツバチ と同 じや り方で巣 を造 ってみろといわれた ら造れ る?造
れ ないね」と自問 自答の修辞的な質問 をとり入れなが ら,考
えるための材料や事実 を提供 したあ とで, 「 そこで,
考 えてみて もらいたいのは,
ビーバーがダムを造 るの と,人
間がダムを造 るの とで,
ど ういう違いがあるのか ということです。 ……考 えられ るかな?。」という問いかけによって,中
心的 な学習課題 の具体化が はか られ る。人間 は他の動物 と違 って,ち
ゃん と計画 を立 てて,そ
の計画 を 実現するためにどんなことをした らよいか と考 える力が人間にはある, とい う理解 にいた る。その ために人間 は,道
具を造 ることがで きるのだが,そ
れ は大変 なことなのだ という認識 をもたせ るた めに,ビ
ーバーの歯に相当す る人間の道具 としての「の こぎり」の進歩の話 とか,鳥
が空 を飛ぶ こ とに対 して,人
間 は飛行機 を造 り出 し,そ
の進歩のいち じるしいことが説明 され る。 そして,最
後の学習課題が,設
定 され る。「人間が考 える力 をもっているとい うことか ら,「理性 的な動物 とい うことが出てきた。 ここで,理
性 をもつ ということは,一
体 どうい うことだろうか と いうことを,ひ とつ考 えてみたい。」この ことを考 えるために,次のような問いかけが なされ る。「・…… 窓ガラスが透明だ と仮定 します。 そして この部屋 に雀が飛びこんだ と仮定 します。雀 は どうす るだ ろう?」 子 どもたち との対話で この問題 を吟味 したあ と,林
竹二 は,人
間は雀 とちが うが,雀
と同 じようになることはないだろうか ?と 問題 をなげか ける。 そして,「ケーラーの実験」を とりあげる ことによって,鼻
の先に欲 しい物 をおかれた犬の行動 のようにな らないために,人
間 は一体 どうし た らよいか とい う根本的な問題 を確認 し,人
間の「理性の力」を強調 して授業 は終 るのである。 Ⅳ よ い発 間 の 条 件 … …林 竹 二 の 授 業 分 析 を通 して 林竹二の授業記録 をもとに,発
間について考察 したが,特
徴の一つは,学
習課題 と発問が密着 し ていることである。 としヽうことは,理
解 させたい ことがあって,そ
れ を質問の形 を媒介 として,子
どもたちが追究 したい「問」 に置 きかえようとしていることである。学習課題 は発間 によって分析 され,発
間 は質問の形 と問 う内容 によって形成 されているのである。 林竹二の発間 は,複
数の質問によって成立 しているとみ ることがで きる。一般 に,質
問の形で問 いかけて も,単
独では不十分で,問
う場面の条件や事実 を含 めて発間 は成立す ると考 えなければな らない。 したがって,質
問 と発間 とは,厳
密 に言 えば区別 されるのであって,質
問 は発間の中に包 含 され,発
間 は思考の対象 を限定する条件 を含 めての質問である。 林氏の発間の特徴 は,第
一 に,質
問す る前 に問 う対象 を限定 し,思
考 に必要 な事実 を提示 してい ることである。第二 に,質
問の答 を予想 させ るような選択肢のある問いかけが多 くなっている。第 二 に,中
心的な問題(学習課題)を明確 に把握 させ るために,そ
の問題 を分析 し,い
ろいろな角度か ら,具
体的な ものに置 きかえることによって,次 第 に意味が はっきりして くるとい うこと,つ ま り, 個々の質問 も,中
核的な学習課題の解決 に関係づけ られているということである。 林竹二の授業(記録)を分析 してみると,学
者 だか らで きる特別な授業なのではな くて,一
般の教師で も努力すれば実現可能 な授業なのである。 それはまた
,授
業の一つのモデル として,す
ぐれ た 授業 を造 り出すための条件 を提起 していると見 る ことがで きる。 林竹二の授業 に対 しては,い
ろいろな評価がな され る。例 えば,大
学における ミニ構義 の ようだ とか,状
況設定 に時間 をか けす ぎて,子
どもが発言 をす る機会が少ない ということがある。しか し, 林竹二の授業の中には,先
に とり上 げた小学校三年生の授業の ように,子
どもの発言回数が きわめ て多い例 もある。多 くの教師は,講
義的に話す ことを否定的に とらえ,子
どもが発言 しない とよい 授業ではない とす る授業観 に とらわれている。林 に とって,授
業 とい うのは,一
定の事柄 を教 える ことではな く,教
材 を道具 にして,子
どもの学習 を組織す ることであ り,子
どもの中にある問題 を 設定 し,子
どもの主題 との取 り組 みを組織す ることなのである。 また,子
どもが授業の主体 だ とい うことと子 どもの発言が活発だ ということとは別 の ことであ り,授
業が成立 したか どうかは,子
ど もが授業 にどの程度集 中 したか どうかで半J断され るべ きもの と考 えている。つ ま り,林
竹二 には, 授業の組織化 にあたって,「。……子 どもたちの発言の多少 を問題 にしないことが大切であって,むし ろ,子
どもが多弁 な時 には,授
業が浅いのだ と理解すべ きである。?という認識があ る。 林竹二の授業の評価 は,授
業の内容や方法 と共 に,子
どもたちが何 を考 え,
また何 を発見 したか の子 どもの変容がみ られ る授業後の子 どもの意見や感想文 も合わせて行なわれなければな らない。 林竹二の授業がす ぐれていると判断で きるの は,次
のような特徴 によってである。 第一 に,授
業の目標が授業の展開につれて次第 に明 らかになってい くこと。 第二 に,子
どもの緊張 を とき,自
然 に学習への構 えをつ くりだ し,あ
るいは学習意欲 を引 き出す ために,
とくに導入段階での課題設定に工夫がみ られ ること。 第二 に,学
習課題 を追究す るための発問や教材構成の論理がわか りやすいこと。 、第四に,子
どもの興味や関心 を引 く教材のネタが用意 されていること。 第五 に,学
習課題 を考 えさせ るための発問や指示が明確 であることである。 以上,実
際の林竹二 の授業記録「人間 について」 を もとにして,主
として発間の観点か ら授業 を 分析す ることによ り,彼
の授業における発問展開の特徴 を明 らかにし,よ
りふい授業 を創造 してい くための発問の成立条件 を考察 したのである。 江Stevens,Romiett,“The question as a measure of efficiency in instruction",Teachers conege,colulanbia
University Contributions tO Education,No.48,p 2 1bid,p 6
A A Bellack,H M Kliebard,R T Hyman,F L Smith,“ The Language of the CiassrOom",1966,木 原健太郎,加藤幸次訳,「授業 コミュニケー ションの分析」,黎明書房,昭和47年
同書
,pp■
7∼ 129林 竹二,「授業人間 について」,国土社,1987,pp 14∼68
中嶽治磨,「授業展開 システム(1)」,AV Science,東 芝教育技法研究会,1987,No175,p13
林竹二 。伊藤功―,「授業 を追求する とい うこと」,国土社,1982,p40