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D-アロースが糖負荷後のラットの血糖値上昇に及ぼす影響-香川大学学術情報リポジトリ

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Academic year: 2021

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D-アロースが糖負荷後のラットの血糖値上昇に及ぼす影響

伊賀 悠祐、松尾 達博

EFFECT OF D-ALLOSE ON GLYCEMIC RESPONSES

AFTER ORAL CARBOHYDRATE TOLERANCE IN RATS

Yusuke IGA, Tatsuhiro MATSUO

Abstract

 D-Allose is one of the rare sugars present in small quantities in nature. We studied the effect of D-allose on glyce-mic responses after oral carbohydrate tolerance test in rats. Male Wistar rats (13 weeks old) were administrated (2g/ kg body weight) glucose, sucrose, maltose, or soluble starch together with (0, 0.2 or 0.5g/kg body weight) D-allose. D-Allose has no inhibitory effect of the increment of plasma glucose concentration in all of cases. These results sug-gest that D-allose is an ineffective monosaccharide on glycemic response after carbohydrate insug-gestion.

Key words : D-allose, rat.

緒 言  一般的に多くの人々が砂糖の過剰摂取と健康への害作 用、特に肥満とそれらに伴う代謝性疾患との関係につい て意識している。肥満の要因は、摂取エネルギーが消費 エネルギーを上回った結果であり、決して砂糖だけの問 題ではない。しかし、糖質の摂取による血糖値上昇に伴 い分泌されるインスリンは、体脂肪蓄積を促進すること から肥満の一因になると考えられている(1)。血糖上昇反 応は、食事に占める糖質の量、種類、同時に摂取する食 品の有無といった摂食状況、体内グリコーゲンの蓄積状 況などによって異なる。血糖上昇反応に影響する最も基 本的要素は、糖質食品の消化・吸収の難易度である。消 化・吸収の難易度には、滞胃時間および消化酵素阻害物 質が影響する(2)。その中で、希少糖の一つであるD-プシ コース(ケトヘキソースに分類)は、易消化性糖質と同 時摂取することにより、食後の血糖上昇を抑制する作用 を有することがラットへの経口単回投与実験で確認され ている(3,4)。また、D-プシコースから作られる希少糖の 一つであるD-アロース(アルドヘキソースに分類)はIn vitro試験において、癌細胞増殖抑制(5)、好中球由来の活 性酸素種の抑制(6)などの効果が報告されており、医薬 品産業への応用が見込まれている(7) 。しかしながら、D-アロースの消化酵素阻害や血糖値上昇抑制作用などは全 く検討されていない。そこで、本研究ではD-アロース の血糖値上昇に及ぼす影響をラットを用いて検討した。 実 験 方 法 1.実験動物および実験デザイン  実験動物には、13週齢ウィスター系雄ラット24匹を用 いた。ラットを個別にステンレス製のケージにいれ、粉 末飼料(CE−2, 日本クレア株式会社)を自由に摂取さ せ3日間飼育した後、ランダムに8匹ずつ3群に分けた。 12時間絶食後、各群のラットに2g/kg(体重)のD-グル コース、スクロース、マルトースあるいは可溶性デンプ ンに、0、0.2および0.5g/kg(体重)のD-アロースを添加 した溶液を経口投与した。投与後0, 30, 60, 90,および120 分に、尾部静脈より微量採血管(VC−C110FH、テルモ 株式会社)を用いて採血した。採血管をスピッツ管に入 れ、3,000rpmで5分間遠心分離し、得られた血漿を分析 まで−20℃で保存した。ラットに投与する糖質の種類を 変える場合、1週間以上の期間をおいた。 2.血漿グルコース濃度測定(ABTS法)  血漿グルコース濃度をBergmeyerら(8)の方法で測定し た。血漿0.01mLを1.5mLチューブにとり、0.33M HClO4 溶液を0.09mL加えて混合し、15分間放置後、3,000rpmで 香川大学農学部学術報告 第61号 63∼65,2009

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Tech. Bull. Fac. Agr. Kagawa Univ., Vol. 61, 2009 10分間遠心分離した。上清0.02mLにグルコース発色試 薬(0.12M リン酸緩衝液(pH7.0)、1.5U POD/mL、9U GOD/mL、0.92mM ABTS)1.0mLを加えて混合し、室 温で30~40分間放置した。その後、440nmにおける吸光 度を、マイクロプレートリーダー(VERSAmax, Molecu-lar Device)を用いて測定した。基準液には0−200mg/dL グルコース溶液を用い、検量線を作成してグルコース濃 度を求めた。 3.統計処理  測定値については各群の平均値と標準偏差で示し、平 均値の差の検定にはFisherのPLSD法を用いた(Stat View J-5.0, SAS Institute Inc.)。

結果および考察  投与後の血漿グルコース濃度を図1および2に示し た。  デンプンは唾液中のアミラーゼによってランダムに加 水分解され、さらに膵臓アミラーゼで二糖(マルトー ス)、三糖(マルトトリオース)、オリゴ糖(デキストリ ン)にまで分解される。さらに小腸上皮細胞膜に存在す るα-グルコシダーゼによりグルコースに分解される(9) マルトースやマルトトリオースはマルターゼ、イソマル ターゼにより分解されグルコースになる。スクロースは スクラーゼにより、ラクトースはラクターゼにより分解 されて、それぞれグルコース、フルクトースとグルコー ス、ガラクトースに分解される(10)。消化酵素活性を阻害 し消化を遅延させることは、食後の血糖上昇を抑制す る。しかしながら本研究では、D-アロース添加は同時 摂取する糖質の種類にかかわらず、血糖値上昇を抑制し なかった。このことから、D-アロースに消化酵素活性 を阻害する機能は、ほとんどないものと考えられる。  一方、すべての群で120分のグルコース濃度がほとん どピークから減少していないことから、動物種や週齢、 実験条件などに関して、さらに検討を要すると思われ る。 要 約  希少糖D-アロースの血糖値に及ぼす影響を、13週齢 ウィスター系雄ラット24匹を用いて検討した。各群の ラットに2g/kgのD-グルコース、スクロース、マルトー スあるいは可溶性デンプンに、0、0.2および0.5g/kgのD-アロースを添加した溶液を経口投与し、投与後0, 30, 60, 図2 マルトースおよび可溶性デンプン溶液投与後の 血漿グルコース濃度の経時変化     データを平均値±標準偏差で示す。Mal, マル トース;Sta, 可溶性デンプン;Al, D-アロース。 図1 D-グルコースおよびスクロース溶液投与後の 血漿グルコース濃度の経時変化     データを平均値±標準偏差で示す。Glu, D-グ ルコース;Suc, スクロース;Al, D-アロース。 64

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D-アロースが血糖値上昇に及ぼす影響 90,および120分の血漿グルコース濃度を求めた。いずれ の条件下でもD-アロース添加による血糖値上昇抑制は 確認されず、 D-アロースは血糖値上昇抑制効果を有さ ないことが明らかになった。 引 用 文 献

⑴ Bray, G.A., and York, D.A.:Hypothalamic and genetic obesity in experimental animals : an outonomic endo-crine hypothesis. Physiol. Rev., 59, 719−809 (1979) ⑵ 武藤泰敏:消化・吸収−基礎と臨床−. pp.14−15.

第一出版株式会社, 東京 (2002).

⑶ Matsuo, T.:Inhibitory effects of D-psicose on glycemic responses after oral carbohydrate tolerance test in rats.

J.Nutr. Sci. Vitaminol., 59, 119−121 (2006).

⑷ Matsuo, T., and Izumori, K.:D-Psicose inhibits intestinal α-glucosidase and suppresses glycemic response after carbohydrate ingestion in rats. Technical Bulletin of Faculty of Agriculture, Kagawa University, 58, 27 − 32 (2006).

⑸ Sui, L., Dong, Y., Watanabe, Y., Yamaguchi, F., Hatano, N., Tsukamoto, I., Izumori, K. and Tokuda, M.:The in-hibitory effect and possible mechanisms of D-allose on cancer cell proliferation. Int. J. Oncol., 27, 907 − 912 (2005).

⑹ Murata, A., Sekiya, K., Watanabe, Y., Yamaguchi, F., Hatano, N., Izumori, K., and Tokuda, M.:A novel inhibi-tory effect of D-allose on production of reactive oxygen species from neutrophils. J. Biosci. Bioeng., 96, 89−91 (2003).

⑺ Morimoto, K., Park C, Ozaki, M., Takeshita, K., Shi-monishi, T., Granstrom, T.B., Takata, G., Tokuda, M., and Izumori, K.:Large scale production of D-allose from D-psicose using continuous bioreactor and separation system. Enzym Microb. Tech., 38, 855−859 (2006). ⑻ Bergmeyer, H.U., and Bernt,

E.:D-Glucose:Determina-tion with glucose oxidase and peroxidase. In H.U.

Berg-meyer (ed.), Methods of enzymatic analysis. pp.1205−

1215 Academic Press (1974).

⑼ Voet, D., Voet, J.G., and Pratt, C.W.:ヴォート基礎生化 学. pp.142−143. 東京化学同人, 東京 (2000) ⑽ 野口忠:最新栄養学. pp.48. 朝倉書店, 東京 (2000)

(2008年10月31日受理)

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参照

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