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香川大学における中国語教育(第二部)-香川大学学術情報リポジトリ

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香川大学における中国語教育(第二部)

高 橋 明 郎*

第一・部(*1)目次 1 はじめに 2 教養教育体制変更前の中国語教育の改善 2・1 カリキコ.ラムの系統化 2・2 教官構成の変化 2・3 カリキ.ユラムの多様化一中国語会話の開設 2・4 カリキヱ.ラムの共通化と共通テストの試み 2・5 クラスの小人数化 2・6 授業内容の改善 3 中国語基礎ⅠⅡの運用 第一・部で述べたように、香川大学では初修外国語を1年次にまず4単位学習することになっている。 (*2)このうち中国語については、1年次の全てのクラスのカリキ.ユラム共通化を平成3年度から試 行し、平成5年度から完全実施している。その具体的な作業を紹介しよう。なお、ここでは通常の作 業に限定し、試験と成績評定に関する事項は、4で述べることにする。 3・1 時間割編成とクラス分け 初修外国語の授業は1クラスあたり1週間に2回行われる。この授業担当者の配置は、各外国語に よってまちまちである。週2回を同じ教官が行うタイプを基本にしているものもあり、また専任教官 がわずか1名で、定時非常勤講師の手配が難しいロシア語は、週1回の定時科目と、休業期間中の15 コマ分の集中という変則的な形がここ数年続いている。 中国語は週1回ネイティヴ・スピーカーを充てる方針をとっており、全クラスが日本人+ネイティ ヴ・スピーカーの組合せとなっているため、他の外国語より複雑な編成作業になっている。現在1年 次の外国語用の時間は、夜間を除くと1週間に6ある(英語と共用)。確保できた非常勤講師と専任教 官をただ埋めていくのは比較的単純な作業だが、ここに中国人の講師を全クラスに週1回配置すると いうのは難しいパズルである。 少ない人員でなるべく学生の受講希望に沿った編成をするため、大学によっては行われている学部 別クラス編成方式は採用していない。(この変更の経過も第一・部で既に述べた)混合クラスにするいま −…つの理由は、成績評価を共通化した場合、どうしても理系学部の学生の点が低く出る傾向にあり、そ の学生を固めておくと余計この傾向が助長されるからである。 クラス分け自体は、どの大学でも似たようなことであろうが、突貫作業である。近年入学者の確定は * 助教授 経済学部(社会と文化)

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香川大学教養教育研究 142 遅くなる傾向にあり、−・方香川大学では学年層を些か深い詰めを欠く形で変更したため、実際に動か してみると入学式から授業開始までの期間が著しく短縮されることになった。また最近の定員削減の 影響で、もともと入学式前後は非常に多忙だった事務官は更に身動きが取れなくなっているため、教 官が基本的にクラス分けの責任を持つ状況にあり、休日返上の仕事になっている。外国語の−・部の時 間帯は学科によっては使用できないため、従来の受講者数を参考に、どこに何学部を何人置くかも含 めて、毎年難しいパズルを解いている。 3・2 教科書の選定 週2回の授業は、文絵・作文の分野と聴写など音声面を重視した2分野で構成される。双方に向い た教科書はほとんどないので、試行期間には2種類の教科書を使用して、学生に進行対照表を持たせ る形で対応していた。しかし、この方式こは教官側、学生側双方にとって繁雑で不評であったため、現 在では1種類の教科書を2つの分野で共用している。 教科書の選定の最終決定は当然専任教官の責任である。通常は初めに2人の専任教官が2種類の候 補を決め、非常勤講師に閲覧を求め意見をきき参考にして最終決定をする。 上述のように2分野にわたり過不足が無く、しかも本学の学生のレベルに見合った教科書を見つけ るのは至難のことで、通常は1学期にB4版で4∼5枚組の補充例文集を別途配布している。これも 当然全クラス共通教材ということである。 教科書は原則として2年ごとに切り替えている。ただ、使い勝手は実際に使用してみないと分から ない。その意味で使用中の教科書についての反応を時々教官から聞いておくことは重要である。例え ば平成11年虜使用開始の教科書は、前期を過ぎた段階で、「中国の現状紹介に注意を払い、そうした単 語を意欲的にとっているが、基礎的な単語が少なすぎ、教えににくい」といった意見が上がってきて おり、本来なら12年度まで継続使用される予定のものであるが、おそらく1年で変更になるであろう。 3・3 受講者名簿の作成と配布 授業開始前の仕事は、3・1でも触れたが、中国語の受講者決定が終わると、早速クラス分けに入 る。いずれテストの集計に使用するので、この段階で成績打ち込み用のシートを作成してしまい、名 簿として担当教官に配布する。この際、あとの処理のために学生にクラスと学籍番号を示すナンバー を割り当てておくことになる。 各学部の教務担当窓口(本学では学務係)での受講登録締切りはかなりあとで、そこでの電算処理 による受講者名簿は、既に定期試験の方が時期的に近くなり、教官の誰もがその存在を期待しなくなっ た絶妙な時期を見計らって現れるのが通常であるため、授業ではもっぱらこの自前の名簿が意味を持 つことになる。 各担当教官は学生から提出された履修棄と名簿を照合して、学生が誤ったクラスに出ていたりする ことのないようにチェックする。 3−4 授業分担表の作成 1冊の教科書を週2回の授業に使用する場合、通常2種類の方式が考えられる。1つは教科書の配 列に従って順序よく進める方式で、これは一人の教官が2回とも担当する場合と同じである。前回の

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次をやれば良い。(本学でも学年当初の発音の基礎部分5∼6回は実質的にこの方式になる)。もう−・ つが本学の中国語初級で採用しているように各教官の担当分野が明確に分かれている場合である。 後者の場合、当然それぞれが教科書のどの部分を担当するか理解しておく必要がある。本学の場合、 授業分担表を作成し各教官に配布し、それに従って授業がなされる。資料1は平成10年度前期の分担 表である。ここに示されているように、表では単に教科書のどの部分をどちらの教官が担当するかと いうこと以外に、順序の入れ替えも一部指示されている。例えば教科書によっては能願動詞(助動詞) を数課にわたり分散しておいているものもあるが、こうした場合文法の説明としては−・括して扱う方 が効率的なので、そうした指定をした.りする。可能・状況・程度・結果補語についてもこうした扱い をすることが多い。 資料11997年庭中国語初級 前期 発音・聴取(中国人教官) 文法・作文 最初4、5回で発音練習。共通進行 @本文10、11貫 1 人称代i司 2 指示代i司 1 13貢1、3 3 繋 i司 プリント 肯定/否定/反夏疑同文 4 的 課 5 哨 6 也 13貢2 @本文14、15貫 1 形容i司構文 プリント 肯定/否定/反夏疑問文 2 17真1 2 有 プリント 肯定/否定/反夏疑同文 3 プリント 課 有銭使型 4 方位i司 5 名量i司 プリント @本文18、19貫 2 疑伺i司疑問文 3 20貢1 時間詞 3 反夏疑問文(1、2課で説明ずみ) 21貢1 4 的の用法 課 21貢2、3、4 @本文 22、23貫 2 速効文 プリント 3 法捧疑同文 4 4i吾彗助詞 5 介 伺 プリント 25貢 課 1の助動詞は、9課でまとめて説明するので、ここで はふれない。 25貢1の5、2の1と4、4の2は9課送り @本文 26、27貫 1 了 2 吋同i司 プリント 5 吋量朴活の説明と併せて52貢4の劫量河を説明する 目的語の入れ方など 3 注、都、根、−・起 プリント 課 併せて再又の説明 4 音吹 29貫 @本文 30、31貢 1∼3 比較構文 プリント 4 但 是 プリント 5 忠ム梓 33貢 1課を2回で終了するペースを標準とする

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香川大学教養教育研究 144 3・5 実際の授業進行 週2回の授業を連続して行う方式では、その2つの授業の受け渡しは比較的単純である。前回何ペ ージまでやったかが分かれば良い。しかし、分野を分かった方式では、ペアを組んだ教官の進度に常 に目を配っておく必要がある。ある課の本文、そこに使用される文法事項の説明、本文に示された状 況によるスキット練習などが有機的に組み合わされる必要があるからで、2分野の進度が著しく異な るのは当然好ましくない。しかし、休日や出張の関係で必ず授業回数のずれは生じるものであるし、重 要な部分は何回かの授業を使ったりするから、1クラスを担当する2名の教官が、お互いに相手の進 度を視野に入れて進み具合を調整していくことになる。 このために各クラスに1枚授業進行表を用意する。これは資料2の書式のもので、ボードまたはファ イルシートに入れた.形で非常勤講師のメールボックスに置かれている。授業担当者は開始前にボック スで進行表を確認し、授業終了後その内容を記入しボックスにもどす。 この表(資料2)には、その時間の進度以外に、相手教官への連絡事項も記入される。例えば試験 前で片方の進度が遅れてしまっているとき相手方に補充を頼む場合などに利用される。また、現状で は一・人の教官が初級の複数クラスをこなすのが普通であるため、教官自身の覚えとしても利用されて いる。私も学生に口頭で告知した次回の予習範囲などをメモしておくことが多い。 4 試験実施体制 4・1 書式験実施予告 現在中国語基礎では、定期的な試験として中間と期末の2回の大きな試験を行っている。中間試験 は通常授業期間に行うことになるが、共通問題で行うため、第一・に日程を調整することになる。進度 と学年暦をにらんで約1月前に担当教官に支障がないかを確認して最終決定する。 前期の中間試験の日程調整に合わせて、その年度の試験担当町割り振りを決定する。共通試験化の 試行期間には、授業担当者全員が1回の試験について少しづっ問題を提出してそれをまとめて試験問 題を作成していた。しかし、これはかなり面倒な作業になったため、本格実施になると同時に、1つ の試験の問題作製担当者及び採点者を2名とする形に変更した。具体的には音声分野を担当する中国 人非常勤講師1名と文法分野を担当する教官1名がそれぞれ100点分間題を作製する。出題担当になっ た試験については、出題者がすべてのクラスの答案を採点する。 1年周4回の試験について、のべ8名の出題採点者が必要になる。この割当ては専任教官は概ね2 年に3度回ってくる。ただし、専任教官の場合学内の運営にかかる仕事の負担や専門教育科目の担当 数に応じ、若干ずれることもある。非常勤講師は1年に1度の分担となる。 最近は各校の学年暦がばらついているため、非常勤講師にどの時期を担当していただくかはなかな か難しい問題をはらんでいる。特に本学の場合、前期定期試験が7月未までかかり、成績締切りまで の時間が従来や、後期の場合よりもかなり短くなったため、夏に出国される場合が多いネイティヴ・ スピーカーの非常勤講師のうちどなたにこの回の担当をしていただくかは運営面で気を使うところで ある。 1回目の試験計画の段階で、1年間の出題者の分担計画を併せて担当教官に示すことになる。 2∼3週間前に学生に具体的な日時と試験範囲を伝達する。資料3は平成11年度後期中間試験の試 験問題作製依頼書である。

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資料2 中国語 3組授業進行表 この書類の保管場所【 日高】教官メールボックス 発音(劉)月3 文法(日高)木2 第1回 10月4日 第八課 p46∼47本文 10月7日 48p 会話の練習 第2回 10月18日 第九課単語の説明 10月14日 48p 第九旗本文 第3回 10月25日 会話の練習 10月21日 54p 第十課本文 第4回 11月8日

10月28日 54p,55p

第十一篠本文 第5回 11月15日 短編−・、′トテスト 11月4日 58pとプリント 第6回 11月22日 短縮2 11月11日 59pとプリント 第7回 11月29日 第十二課本文 11課(3) 11月18日 12課(2)(3) 第8回 月 日 11月25日 復習 第9回 月 日 月 日 資料3 初級担当教官各位 出題依頼について 今年度前期期末試験について下記要領で実施の予定です。つきましては問題作成をお願いい たします。なお合わせて学生に周知方よろしくお願いいたします。 実施 日:2月9日(水) 16時20分から(5時間目) 開始前に外国語自習室で用紙、座席表を受け取って下さい。 試験範囲:【日本人教官の担当科目】11課1,2 12課1 13∼16課 書換え、正誤訂正、作文、訳など100点分 【中国人教官の担当科目】12課∼16課及び短文3,4とプリント カリキュラム表で中国人教師配当となっているもの(聴写、中国語の質問への回 答他会話表現を中心とする)100点分 今回の出題担当:高橋教官、李教官 問題提出期限:1月26日(水)記名欄得点欄は必ず用紙右下部に作って下さい。 高橋のメール・ボックスまで。そのまま印刷できる形で。 予定を一応下記のように組ませていただきました。もし問題がございましたら高橋までお申し 越し下さい。2月9日の監督に支障のある方は高橋までご連絡下さい。 実施予定 出 題 採 点 成績処理 前期中間 6月2,3日 小林・何 小林・何 高橋 前期定期 7月21日 小林・毛 小林・毛 ′ト林 高橋 後期中間 12月2,3 日高・劉 日高・劉 高橋 後期定期 2月9日 高橋・李 高橋・李 小林 高橋 注意・1試験は2日にわたりますので、問題の一部が異なるもの2種類を作成してください (今回は1種類で結構です)

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香川大学教養教育研究 146 4・2 試験実施計画 共通問題での試験に当たっては、同じ時間に試験を行うのが原則であろう。しかし、中間試験は、通 常の授業期間に行うため、6クラス分をすべて同じ時間帯で行うことはできない。そのため隣接する 2日にわたり行うことになる。 当然問題の一部は置き換えられているが、基本的な体裁や、学生に質す事項は原則として同一・であ る。とはいえ共通の部分が多いので問題用紙はすべて回収する。一・日日が二月目より不利ではないか という疑問は学生が時に口にするが、これまでの10回以上の中間試験で、2日目のクラスの得点が1 日目より明確に高かったことは一度もなく、ここ数回はむしろ1日目の方が平均点で上回っており、不 公平な現状であるとは認識できない。 さて、現在は水曜か金曜に1クラス、木曜か月曜に残り5クラスの試験がある。この5クラスの日 は、実は同じ日に2、3校時、乃至3、4校時と授業のある時間が分かれている上、他の授業との関 係でどちらかでまとめて試験をするわけにもいかない。また定期試験期間の試験とちがい他から応援 の補助監督制度がないため、通常授業を行う教官以外に1名その時間が空きコマの中国語担当教官を 手配し行うことになる。2、3校時の日には2校時の試験開始を昼休みに近づけ、3校時の試験開始 を昼休み中に設定している。平成11年度前期の中間試験を例に取ると、2校時の答案回収後の学生退 室時間が12時30分、3校時受験生の入室締切りが12時25分、試験開始35分である。これは2校時受 験生と3校時受験生を接触させないためである。しかしそのままでは通常2、3校時間に連続で授業 を持っている教官の移動時間もないために、その時間の授業担当者以外の人員が必要なのである。 当日の移動は分単位の仕事になり、試験監督者は分単位の作業予定書を予め渡されている。なお、 個々の監督業務にもばらつきが生じないように、検定試験のような形の作業マニヱ・アルが配布される。 5 集計と評価 5・1 集計 試験は中間200点、定期期末試験200点で、いずれも音声関連分野と文法、作文分野100点ずつで構 成されている。 得点はコンビニ1一夕に打ち込まれ、平均、偏差値などが計算される。中間試験にあっては、得点、偏 差値、順位などを記載した個人別成績棄の形で結果が学生に返却される。期末試験を含め、答案本体 は標準的卒業年次まで4年間は最低保管している。現在のカリキ・ユラムは、話す、聴く、書く、読む の4技能均等主義で各外国語とも作られているので、単純な平均点ではなく、音声と文法などのばら つきがない方が上の順位に行くようになっている。 5・2 成練判定用資料 実際の成績判定には2つの資料が使われる。一つは定時試験400点分の得点である。これは400点分 の打ち込みが終わった段階で、全履修者を偏差値順に並べたものである。定期試験については追試験 制度があるが、中間試験でそこまでのサービスを行う余裕はないので、中間試験をやむをえない事情 で欠席した/学生については、期末試験の得点の8割を以てダミーの得点として計算する。 もう一つは各授業担当教官から提出される受講状況調査票である。これは受講者名簿の変形で、そ こにはまず第一・に各学生の出欠状況が記入される。欠席が3分の1を超えたものについては履修した とみなさないので、週2回の授業でどちらかの曜日の欠席が5回を超えた段階で成績判定対濠着から

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外れる。そこまで至らないが欠席の多い学生については評価決定の段階でこの資料に基づく処置がと られる。 記入される第2の事項は各教官の個別の評定である。 これはカリキ.ユラムとテストの共通化と各教官の授業方式の融合を意図して行っている。同じ教科 書を使い、同じ順序で教えていくにしても、授業の際にはそれぞれの教官が様々な工夫をしている。共 通化と引換にそうしたものを無視すべきではない。むしろ共通化はカリキ・ユラムの最低限のラインを 示しているのであり、これより授業内容が欠けては困るが、これを超える部分については担当教官の 判断に任せ、余力と意思のある方には是非カリキュラム外であっても行って欲しいと考えている。そ してその結果はある程度評定に加味するべきであろう。 何人かの教官は、個別に用意したプリントを利用したり、小テストをこまめに行ったりしているし、 私の場合は中国語作文にかなりのウェイトを割いている。劇部の学生についてはそれらを平常点とし て−評定に加味し、成績評価を上もしくは下に修正する方が良いという記載もできるようになっている。 またこうした課題を提出しない場合は評定外とする余地も残している。 なお、付け加えるなら、この授業状況調査票に、出欠状況の記入は必ず行ってもらうが、成績修正 の有無についての記入は各教官の意思に任されている。これを利用する教官もいるし、そうでない教 官もいる。また、この記載の有無で、各教官の個別の授業方式が評価されるものではないことも強調 しておく。 5・3 評価の決定 評価は最終的に2名の専任教官によって決定される。非常勤講師の評定に関わる仕事は受講状況調 査票を提出するこ.とで終了する。以下の手順は全て−2名の専任教官の協議によって進められる過程で ある。 まず、基礎受講者全員の試験データを偏差値順に幾つかの階層に分ける。得点のばらつきが少ない 場合は変更することもあるが、通常8ランクに分ける。そして評価欄に高い方から1∼8へと番号を 振る。この番号の意味は、 1+ A 2 + A(B) 3.+ B(A) 4 + B(C)

5 ∵

C(B) 6 + C(不可) 7 + 不可(C) 8 + 不可 である。 この数字が成績判定の基本になるものである。さて、この後データはもう一度クラス別に分けられる。 次にクラス毎に、次のことを行う。まず、欠席過多や課題の不定出などで成績評価対濠外になる学 生の評価欄を空白にする。次に、受講状況調査票に記載のある学生については数字を変更する。例え ば成績の上方修正相当と記載されている学生については、もとの借が3であれば2に変更することに なる。 上のランク3の学生は、普通に出席し、特に担当教官からの特記がない限りB(良)の評価になる。

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香川大学教養教育研究 148 もし上方修正の記載があればランク2になり、評価はA(優)に変わる。一方下方修正の記載があっ た場合ランク4になるが、ここも標準評定はB(良)であるから実質的には評価は変わらないことに なる。つまり、上に示したもののうち()内のものは受講状況調査票の記載により変更される可能 性のある評価を示している。なお、調査票の記載が複数にわたる場合、最大2ランク変動させたこと はあるが、そうした事例は極めて希である。 現在こうした修正の対象のになっているのは、評価対像外になるものを含めて受講者の2割以下で あり、ほとんどの学生については試験の得点のまま評価が決定されている。 変更後の最終データを成績記入棄に記入して、評価作業を終える。 なお、学生から成績調査の申請があった場合は、まず評価決定の責任者である2名の専任教官が対 応することになるが、その評価が調査票の記載により変更されたものである場合は、当然記載した教 官に、記載事項の確認を行ってから学生に回答することになる。 6 現在の体制の点検と問題 以上簡単に、現在香川大学で行われている中国語科目の実務を述べた。最後にこうした体制が学生 にどう受け止められているかについて述べる。 現在教養教育では公式な最初の学生による授業評価を行い、外国語科目についても98年度後期に行 われた。それらの結果は別途この誌面でも紹介されるであろうが、質問事項は、外国語科目共通のも のであり、特段中国語の方式についての反応を知れるものではない。私はこうした公式な授業評価実 施前に、時々私的に調査を行っていた。初級については、新カリキュラムに移行した93年度入学生と、 94年度入学生のデータがある。項目は多岐に渡って−いるが、各調査で共通の事項をたずねた部分のみ をここでは示そう。 なお93、94年度は私の受け持った1年次学生のみのデータである。また98年度のものは、教養教育 行った「学生による授業評価」の際に、自由記載の項目に便乗して中国語初級全受講生に対して行っ たものである。 図1 授業を中国人教師とペアで 担当することについて 表1 項目1 すべてのクラスが中国人と日本人の ぺアで構成されていることについて 93年度 94年度 良 い 107 133 不 要 4 8 どちらでも 29 3 この項目については、圧倒的に学生の評価が高い。本学での中国人教師の雇用に当たり、単に中国 人であるということではなく、中国語以外の言葉の学習経験が長いとか、中国で中国語の授業を担当 したといった、言葉の知識と教育の経験を持つ方であることを重視してきてきたことも、学生の評価 を上げていると考えられる。−・方非とする者の意見としては、ネイティヴ・スピーカー・でも基本的に 日本語を使用して授業をしているのだから、特に中国人を当てなくても良い、といったものも見られた。

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図2 試験問題と成績評価の共通化 表2 項目2 試験問題と成績評価の共通化について 93年度 94年虜 98年度 現状に賛成 91 121 167 担当教官が個別に実施 27 22 84 どちらとも言えない 21 29 この項目については、年により相当ばらついている。いずれも、これを評価する者が従来型の評価 システムをよしとする者よりかなり多いが、年度によるばらつきも非常に大きい。共通方式は、確か に全体としての公平さは保てるが、クラス別に見ると、ほとんど合格するクラスとかなり不合格を出 すクラスが出てしまう。98年の結果をクラス毎に見てみると、合格率の高いクラスほど、共通方式に 賛成しており、逆に平均すると総合評定が低く出がちな、理科系の学生を抱えるクラスでは、共通方 式への賛同の割合はあまり高くない。学部別のクラス編成をとっているドイツ語では、必然的に理科 系学生内での相対評価になり、ある率で優も良も出ていくが、同じ土俵で競う中国語の評価となると、 理科系の学生はどうしても優クラスの者が少なくなりがちで、結果、評定方法への不満足につながっ ていくと見られる。 表3 項目3 中間試験と定期試験の2回テストを 行っていることについて 園3 試験を中間/定期と2回行うこと 93年度 94年度 98年度 現状に賛成 109 114 216 期末試験1回でよい 19 11 31 もっと度々してほしい 8 19 23 どちらとも言えない 11 ーは遜択肢に含まれなかったもの 1回だけの範囲の広い試験で成績評価されることは、現在の学生にはかなり冒険のようであり、さ りとて、共通問題で今以上に頻繁に試験を行うことは、教官側の負担が大きすぎる。現在の回数が、ほ ぼ学生のニーズにそったものになっているようである。 7 まとめ 現在の中国語の講義体制は、1ケ年終了時点でどのクラスであっても、同じことが最低教授される ことを目的にして考えられた。構想当時はほとんどの学生が最低2年間中国語を学習したので、2年 次の授業を展開する上で1年次の学習が共通であることが重要であった。ところが、教養教育の新カ

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香川大学教養教育研究 150 リキュラム導入で、ほとんどの学生が1年周のみの学習になったため、当初ねらった機能の劇部は、あ まり果たせなくなったと言える。 しかし、週2回の授業を複数の教官で受け持つ形式であり、しかも教官の組合せが−・定しない以上、 1つの基準を提供することは、やはり出口の水準を守る上では必要なものと考えている。少なくとも、 1冊の教科書を終えずに学年を終えるというようなことがどんな場合にもありえなくなる。(進んだ所 まで、行ける所までといった外国語の授業も、まだ多いのが現実ではないだろうか)また、副産物と して、担当教官に講義の進行や成果に対する関心を否応なく持たせる結果になっているように思う。誰 のインタピコ.−であったか思い出せないが、著名な音楽家がいみじくも語ったように『世の中には良 い教師というのは存在しない。存在するのは良い弟子だけである。』私も3クラスくらい同じ授業をし て、成績はまるで違うくらいだから、別段自分の担当するクラスの平均点に−・喜一・憂する謂れはない のだが、感情面では、ひどく成果が一気になるようになった。他の教官との比較の姐上に自動的にのせ られているからである。 一・方負の面としては、何と言っても、専任教官の事務的な仕事が通常の倍くらいになることである。 現在の連絡・調整役は私が担当しているが、もう1クラス授業するくらい手間がかかるというのが実 感である。とは言え、例えば各教官が自由に教科書を選び、テストするという方式にしたところで、結 局二人の判定をすりあわせる作業は省略できないし、複数のクラスに別々の問題を作るなど、個々の 教官の負担はむしろ増加することになり、どちらが教官にとって良いかは−・概には言えない。 次に、試験が4回である以上、教官間の負担にばらつきが出る。現在は2コマ担当の教官と1コマ 担当の教官と同じ頻度で出題・採点が回ってくる。1コマ担当の教官の場合、2コマ担当教官より負 担は重いこ.とになる。1クラス55名であるから、個別に試験をすれば、週1コマの教官は1年間に問 題作成が4回、採点は述べ220孝一分、−・方週2コマの教官は1年間に問題作成が8回、採点は述べ440 名分となる。現行方式では各教官が問題作成1回、採点330名分であるから、2コマ担当教官にとって は相当省力化されるし、1コマ担当の教官の場合も、採点枚数は増えるが、問題作成ではやはり省力 化できており、プラス・マイナス相殺といったところかと思う。また、追再試の対応は個別にしなく てすむという利点はある。ただ、現在半期のみお願いしている非常勤の方の場合は少し負担がきつく なっているかもしれない。平成12年度は音声分野の担当が述べ6名になるため、降り番の教官を作れ るので、2年の間にアンバランスを解消する計画は可能である。 更に、共通の日程に縛られるため、特に月曜の担当教官は振替休日と、学校関係者には不幸な”ハッ ピー・マンデー”の所為で、かなりきつい授業運営を強いられ、補講を余儀なくされる場合もある。こ れは今のところ解消の目度は立っていない。 なお、本学では平成12年度に外国語関係の卒業要件削減が予定されており、それに伴い、現在の基 礎8単位\上級2単位というカリキュラムについても大幅な見直しが新たな課題として生じているこ とを最後に付記しておく。 1 2 注* * 香川大学教養教育研究 創刊号1996.3 教育学部の教員養成系と農学部の学生は英語のみの選択が可能であり、卒業要件となる外国語 の総単位数も少ない。

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