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アジア企業進出を巡る問題点と課題 : 新潟県中越集積企業の『ボーダレス経営』研究

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(1)

〔共同研究報告書 〕

アジア企業進出を巡る問題点と課題

一新潟県中越集積企業の 『

ボーダ レス経営』研究

-2

0

0

3

年 (

平成

1

5

年)

1

1

新 潟

経 営 大

共 同研 究 プ ロジ ェク ト

(2)

し が

この研究報告書 は、新潟経営大学 における学 内共同研究 「集積地域企業 のボーダ レス ・ビジネスモデ ル研究」 (共同研究者 ;片上 洋教授及 び姥名保彦) の成果 を取 り纏 めた ものである。 同研 究 は、 新 潟 県中越集積企業がアジアとくに中国 に対 して生産基地化及 び市場獲得 を目的 として進 出す る場合 の ビジ ネスモデルの解明を通 じて 「ボーダレス経営

のあ り方 を明かにす ることを 目的 としてい る. われわれがボーダレス経営論 を取 り上 げたのは、現代企業経営 において、企業活動のボーダレス化 は、 今や経営戦略上 の課題 とな ってお り、中小企業 や集積地域企業 にとって も、最早避 けて は通 れない問題 とな りつつあると判断 したか らである。 とくに中小企業や集積地域企業 にとって は、 中国 ・ア ジア諸国 への進 出は、企業 にとって も集積地域 にとって も重大 な問題である。 ユーザー企業 の海外進 出 さ らには 自 らの進出が国内産業基盤や集積基盤 に与 える影響 は極 めて大 きいか らである。その意味で内外共生型 の 「ボーダレス経営

とは何か とい う問題 は集積地域企業 や集積地域 にとって今や死活的な問題である とさえ云え るのである。 中国 ・アジア諸国への企業進 出は、単 に企業 レベルでの問題であるだけではな く、今や日本経済 にとっ て も重大 な関心事 とな っている。東 アジアにおいては、周知 のように

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締結交渉 を通 じて 「東 アジア ビジネス経済圏」形成 の可能性が 日増 しに高 まってお り、 それ に対す る対 応如何が 日本経済再生 の行方を も左右 しかねない状況が生 まれているが、企業進 出は、 ビジネス ・ネ ッ トウークの形成 を通 じてその 「東 アジア ビジネス経済圏」形成 にも深 く関わ っているか らだ。 そ うした中でボーダレス経営論 は、新潟県 中越集積企業 にとって も今や企業経営上 の最重要課題の一 つ になろ うとしている。 そ こでわれわれは、新潟県中越集積企業 なかんづ く金属加工業 ・ニ ッ ト産業 ・ 木工家具業 における企業群を事例研究 の対象 と して取 り上 げ、 アジアとくに中国への進 出に伴 う企業経 営上 の課題 について研究 を行 ったのである。 本研究 に当た っては以下 の方 々の ご支援 ・ご協力を得 た。記 して謝意 を表 したい。 第 Ⅰ部 の金属加工業 について、 ヒヤ リング及 びコメ ン トを頂 いた方 々。 渡辺 勝利 (三条商工会議所会頭) 篠沢 隆夫 (株式会社高儀総務部総務課長) 渡辺 徹 (シンワ測定株式会社代表取締役社長) 角田 祐治 (株式会社角田工具製作所代表取締役社長) 明道 章一 (株式会社 明道代表取締役社長) 午坊 芳明 (株式会社遠藤製作所総務人事部長) (順不同) 第 Ⅱ部 のニ ッ ト産業 について、 ヒヤ リング及 びコメ ン トを頂 いた方 々。 五十嵐 基 (五泉市長) 高野 俊郎 (五泉市観光課長) 井 口 増- (見附市商工振興課長) 地山 広喜 (見附市商工振興課長補佐) 八 田 雅昭 (五泉 ニ ッ ト工業協同組合 ・新潟県 ニ ッ ト工業組合事務局長)I r/、〔しrd 高橋 雅文 (高橋 ニ ッ ト株式会社社長) 坂 田 紋三 (株式会社 マ ックスニ ッ ト専務)

(3)

近藤 英雅 (第- ニ ッ トマーケテイ ング株式会社社長) 泉 田 勝 (第- ニ ッ トマーケテイ ング株式会社総務管理部長) 佐野 統康 (丸正 ニ ッ トファク トリー株式会社社長) (順不同) 第 Ⅲ

の木工家具 につ いて、 ヒヤ リング及 び コメ ン トを頂 いた方 々0 宮崎 亘 (加茂市商工会議所事務局長) 朝倉 泰則 (株式会社朝倉家具代表取締役社長) 吉 田 虞 (吉 田家具工業株式会社代表取締役社長) (順不同) 第IV部 の クラスター論 につ いて、 ヒヤ リング及 び コメ ン トを頂 いた方 々. 三枝 章友 (メーカーズニ ッ ト・五つの泉店長) 山本 俊一 (経済産業省 ・経済産業政策局 ・地域経済産業政策課長) 松本 直樹 (経済産業省 ・産業 クラスター計画推進室 ・地域振興係長) (順不同) 最後 にな ったが、本報告書 の作成 には、本学 のサテ ライ ト・キ ャンパ スにおいて行 っている 「ビジネ ス ・スクール講座」 で筆者 が担当 している 「業種研究」 における受講者 の方 々に もご協力を得 た ことを 記 し、感謝 の意 を表 したい. またボーダ レス化 に対す る企業経営類型論 につ いて は、 (財) 新潟経済社 会 リサーチセ ンターが行 ったア ンケ丁 卜調査 「世界 に通用す る新潟 の ものづ くりに向けて一進展す るグ ローバル経済下 における県 内製造業 の現状 と今後

-

」 (『セ ンター月報

』[

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月号])か ら有益 な示 唆を得 た ことを記 し、合 わせて謝意 を表 したい。

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8

日 新潟経営大学 ・共同研究 研究代表者 姥名 保彦 /

(4)

はしがき 序

1.

問題意識

2.

研究結果 姥名 保彦 (新潟経営大学教授) 姥名 保彦 (1) 新潟県中越集積企業の中国 ・アジア進出における 「ボーダレス ・ビジネスモデル

・・- -

・2

① 金属加工業 ② ニット産業 ③ 木工家具業

(

2

)

「ボーダレス ・クラスターモデル」の必要性 と課題 ① 必要性 ② 課題 A.新高付加価値論 と地域 「ブランド戦略」

B.

ブレイクスルー型技術革新

C.

新 しい金融 システムの形成 D.新人材養成 システムの必要性

E.

ボーダレス ・コーディネー ト機能

(

3

)

新潟県集積地域 と 「地域版

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構想

3.

論点整理

(1) 企業経営におけるボーダレス化の意味

(

2

)

付加価値構造の変化 (3) "スマイルカーブ 'のボーダレス

(

4

)

ビジネス ・プロセス ・ネットワークのボーダレス化 (5) 高付加価値概念の再定義 (6) 「ボーダレス経営」 と 「ボーダレス ・ビジネスモデル

第 I部 中越金属加工業における 「ボーダレス経営

の課題 -アジア金属加工業共生の途-はじめに

1.

金属加工業の現状 と課題 (1) 全国 (D 現状 ・・・・・・・・・

A.

金属加工業全体 a.

事業所数

b.

製造品出荷額等

B.

素形材産業 姥名 保彦

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(5)

a

.概況

b

.生産額 C.貿易 (j) 鋳鍛造

(T3) 金型 ② 問題点 (2)新潟県 (D 新潟県における金属加工業の地位 ② 金属加工業に特

した新潟県の産業構造 (卦 後退する新潟県金属加工業 ④ 三条 ・燕地域 A.三条市 B.燕市 2.アジア諸国における金属加工業の台頭 と日本 (1)中国鋳造業の発展 と日本 (D 中国鋳造業の発展 A.生産 B.貿易 C.外資系企業 (参 日本鋳造業の課題 (2)アジア金型産業の発展 と日本 (》 アジア金型産業の発展 ② 中国金型産業の発展 と日本 A.中国金型産業の発展 B. 日本金型産業の課題 3.「ボーダレス経営」下のビジ

ス ・モデル (1) 金属加工企業が抱える経営課題 ① 技術革新戦略 ② 生産 システムの高度化 ③ マーケティング戦略 ④ ネットワーキング (2) ボーダレス経営の類型化 ① \タイプⅠ ② タイプⅡ ③ タイプⅡ ④ タイプⅣ (3)ボーダレス経営論 と金属加工企業経営論のマト リ ッ クス化 (D マ トリックス化 ② 経営課題 5 ヽ 6 7 7 8 9 1 1 5 7 8 8 1 8 8 8 8 8 9 2 5 5 6 6 7 9 9 9 9 0 2 4 4 4 4 6 6 6 6 2 2 2 2 2 2 3 3 3 3 3 3 4 4 4 4 4 4 4 5 5 5 5 5 5 5 5 5 5 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6

(6)

A.

全国 a. タイプⅠ ㈹ M製作所 (。) T型範 M H製作所 H T技研 銅 M軽金属 (Jl) 0板金 (ト) Fクローム

(

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1

)

N企業団地協同組合

b.

タイプⅡ

(

N杜)

C.

タイプⅡ C

-

1. aグループ

(

S社) C

-

2.βグループ

d.

タイプⅠⅤ B.新潟県 a.株式会社 高儀 b. シンワ測定株式会社 C.株式会社 角田工具製作所 d.明道株式会社 e.株式会社 遠藤製作所 4 . 中越金属加工業 の課題 (1) 金属加工企業 における 「ボーダレス経営」 の課題 ① 新高付加価値論 による 「ブラン ド戦略」 の構築 ② 要素開発論 とL

C

A型金属加工業への転身 ③ タイプⅣ型 「ボーダ レス経営」への移行 A.高度化戦略 とタイプⅣ型 ビジネスモデルとの結合 7 7 7 7 7 7 7 8 8 8 8 8 8 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 6 69 69 70 71 73 75 78 78 78 79 80 80 B.

L

C

A型金属加工企業への移行 とタイプⅣビジネスモデルとの融 合 - - -

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-

80 ④

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C

Aネ ッ トワーク」下の 「アジア

版L

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」戦

⑤ 中越金属加工企業 における新戦略 (2) 金属加工集積 における新クラスター ・モデル ① 金属加工集積 の高度化と知的集積化 ② 求 め られる中越金属加工集積 のボーダレス ・コー デ ィネー ト機能 第Ⅱ部 新潟県 ニ ッ ト集積企業 の中国市場進 出を巡 る課題 一集積地域企業 の 「ボーダ レス経営」 における ビジネスモデルー 姥名 問題 の所在

1.

中国における日系繊維企業 と日中繊維産業 (1) 日系企業 の進出状況 7

9

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8

8

8

(7)

(2)・,日本 における繊維産業の後退 ① ・・輸入浸透率の上昇 I② .国際競争力の喪失 (3ト 中国繊維産業の発展 ① 「繊維大国」化 した中国繊維産業 ② ・集積地域の発展

2.

日本の繊維企業 における 「ボーダレス経営」のモデル化 (1) 第 Ⅰ段階 (過去 ;生産基地化 ケース)

(

2

)

第 Ⅱ段階 (現状 ;生産基地化 +-部内販化ケース) (3)第Ⅱ段階 (今後 [予測];生産基地化 +内販本格化 ケース)

3.

新潟県 ニ ット企業 における 「ボーダレス経営」の課題 (1) 新潟県ニ ッ ト企業 を取 り巻 く深刻な状況

(

2

卜 新潟県 ニ ット企業 の課題 ① オ リジナルブラン ドの確立

A.

五泉市 - 「五泉 ブラン ド」の確立

B.

見附市 -

「1

1

ブラン ド」の推進 (診

I

T

の活用 ③ 中国進出 ビジネスモデル

A.

生産基地化 a.「純生産基地化」 ケース (J)高橋ニ ッ ト社 (ロ)第- ニ ッ ト・マーケテイング社

b.

「生産基地化 十一部内販化

ケース (マ ックスニ ット杜)

B.

直販 システムの導入 一五泉市 ・上海市場調査報告より-a.上海市場進出における問題点 b.上海市場進出に必要な戦略性 92 92 92 99 99 99

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6

C.「国際デザイ ン交流特区」構想 一見附市 ・丸正 ニットフ ァクトリ ー杜提 案- -・-・・-

1

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6

D.「ボーダレス経営」が抱える二面性 4.繊維集積地域企業の新 ビジネスモデル試論 (1) 新付加価値源泉の獲得 (2) 「日本人的感性」の重視 (3) 「知」の共有 とOEM体制か らの脱却 (4) 集積地域 アパ レルの 「企画販売力」強化 (5) 「ナ レッジ ・マネジメン ト」の導入 (6) 対中国 ・アジア 「クラスター ・ネッ トワーク」の形成 (7) 「知の集積」への移行 第 Ⅲ部 「ボーダレス経営」時代を迎えた木工家具企業

1.

全国的な状況 姥名 保彦

(8)

(1)木工家具業の推移

(

2

)

木工家具業の現況 ① 規模別状況 ② 品種別状況 ③ 産地別状況

(

3

)

木工家具業の国際分業 ① 輸出 ② 輸入

(

4

)

中国家具製品の輸入急増 と木工家具業界の課題 ① 「ボーダレス経営」時代の木工家具企業 ② 木工家具企業の 「ボーダレス ・ビジネスモデル」試論

2.

新潟県における木工家具業界 (1)新潟県の木工家具業 ① 木材 ・木製品製造業 ② 家具 ・装備品製造業

(

2

)

加茂市における木工家具業界 (》 木工家具業の概況 ② 木工家具企業 A.株式会社 朝倉家具 B.吉田家具工業株式会社

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1

第Ⅳ部 新潟県央集積における自主的経済圏形成 と東北アジア産業 クラスター ・ネットワーク構想 片上 洋 (新潟経営大学教授)

1.

緒言-ビジネス ・ネットワークに必要な人的ネットワーク

2.

産業 クラスター計画の問題点

3.

新潟県地場産業の実態 と地勢的有利性 4.新潟県央ニット産業の ビジネスモデル事例 ① 五つの泉 ② レダム

5.

自主的経済圏における産業 クラスター仮説

6.

地域産業 クラスター ・共通 ブランドと卸売機能

7.

結論 第Ⅴ部 (補論) 「ボーダレス経営」を巡 る韓点整理

1.

「ボーダレス経営」 とBPN (BusinessProcessNetwork)

(1)BPNの定義 (2)BPNの種類

(

3

)

BPNの高度化 (4)BPNのボーダレス化 姥名 保彦

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(9)

① BPNの構造変化 (参 BPNのボーダレス化 ③ "CreativeNetwork†'の形成 (5) 「ボーダレス経営」が抱える問題点 2.「ボーダレス経営」下の ビジネスモデル試論 (1) 「ボーダレス経営」 と付加価値論 ① ビジネス ・プロセスと付加価値 ライ ンの変化 ② 再検討を迫 られる付加価値概念 (2)自動車産業 における事例研究 ① 自動車産業の 「環境マネジメント」が教えるもの ② LCAクロスオーバー型JNXとボーダレス経営論 A.「LCAネ ッ トワーク」 と 「非 ボーダレス経営

B.「LCAネ ッ トワーク」 と 「ボーダレス経営

(3)新付加価値 ライ ンの形成 と 「ボーダレス経営」下の ビジネスモデル ① 求 め られる新 たな高付加価値概念 ② 新付加価値 ライ ンの 「非商品性

③ 「ボーダレス経営」下 の競争優位 170 170 170 171 174 -・--・--・174

(10)
(11)

-序

(新潟経営大学教授) lURL;http://www.with-online.com/yasuhiko/kenkyu-31110.htm]

1

.問 題 意 識

われわれが、「ボーダレス経営」研究に当たって抱いている問題意識 は次の三つである。一つは、ボー ダレス化を企業経営 としてどのように理解すべきかという点である。二つには、成熟社会の下での消費 者ニーズの変化についてである。最後 は、市場構造の変化 と中小企業 ・集積地域企業の ビジネスチャン スに関 してである。 まず、企業活動の 「ボーダレス化」をどのように捉えるべきか という問題であるが、それは、単 に国 境を越えた企業活動 というように地政学的に理解 されるだけでは不十分であり、地球大での市場活動の 拡大 と深化に因る企業競争の激化 と理解 されるべきだ、 というのがわれわれの立場である。 この場合、 企業競争 と表裏の関係にあるいわゆる

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革命 は、そうした競争 をさ らに促進す る役割を果 た している と捉え られるべきであろう。 次に、企業 は競争激化に曝されるだけではな く、消費者ニーズの変容 にも直面 させ られているという ことを見落 としてはな らない。成熟社会の下では、物質的価値のみな らず非物質的価値を も重視すると いう人々の価値観の変化を背景 にして、消費者ニーズは、必需性、利便性及び価格性を指向す るだけで はな く、個性、感性、文化性をも志向 し、環境問題のような社会性す ら視野に入れる、 というように多 様化 し多元化するが、企業 は、ボーダレス化の下での市場競争激化に対応する場合、こうした消費者ニー ズの変容に対 しても無関心ではおれない筈だ。・ 最後 に、市場構造の変化が何故、中小企業 ・集積地域企業の ビジネスチャンスに係わるのか。市場構 造の変化 とは、(イ)従来 は単純であり時 としては単一です らあった消費者及びユーザーのニーズが多様 化する、(ロ)それに応 じて生産者及び供給者の側 も従来の少品種大量生産か ら多品種少量生産- と移行 する、(-)その結果市場構造 もまた従来の生産者 ・供給者主導型か ら消費者 ・ユーザー主導型のそれへ の変化を余儀な くされる-ということを指 している。従 って、従来の市場構造の下では明 らかに大企業 が有利であったが、新市場の下では大企業の有利性が相対的に後退 し逆に中小企業や集積地域企業の有 利性が相対的に増すことになる。企業競争の激化がこうした市場構造の変化 と表裏の関係にある以上、 ボーダレス化を通 じての新市場獲得の機会 は、大企業にのみ与え られているのではな く、本来 は中小企 業や集積地域企業にもまた与え られているということになる。 本研究 は、 こうした問題意識に基づいて 「ボーダレス経営」 に関する問題点 と課題の解明を行 った。 研究方法 としては論点整理 と事例研究 とか らなる。研究そのものに関 しては、上記の問題意識に別 して、 まず論点整由を行い、次いで事例研究によってそれぞれの論点の裏付 けを行 った.だが報告書の構成 と しては逆に、事例研究によって得 られた知見をまず取 り上げ、その後、論点整理を補論 として展開 して いる。従 って本報告書では、まず新潟集積企業及び集積地域 として、第 Ⅰ部で金属加工業、第 Ⅱ部でニッ ト産業、第Ⅲ部で木工家具業そ して第Ⅳ部で中越 クラスターを取 り上 げ、最後 に第 Ⅴ部で補論 として 「ボーダレス経営」に関する論点整理を試みた.(なお、用語の使用方法については各執筆者 によって多 -

(12)

1-少異なっているが、 コンセプ ト自休については平坑を異 にしている訳ではないo) こうした方法を採 っ たのは、「ボーダレス経営」 に関する問題の理解を容易にするためだ。 そこで以下では、事例研究で得 られた研究結果をまず紹介 し、次いで論点整理に移 ることにしよう。

2

.研 究 結 果

(1)新潟県中越集積企業の中国 ・アジア進出における 「ボーダ レス ・ビジネスモデル」 上記の問題意識 に基づいて、 アジアとくに中国への進出を中心にして新潟県中越集積企業の 「ボーダ レス経営」のあり方を探 ってみよう。そのためには、「ボーダレス経営」を支える 「ボーダレス ・ビジ ネス ・モデル」 もまたPDqLゎれている.そこで、本研究で取 り上げた新潟県中越集積企業すなわち金属加 工業、 ニット産業 さらに木工家具 における企業群に関する事例研究を通 じて、 これ らの問題を順次検討 していこう。 ① 金属加工業 まず金属加工業 においては、高付加価値論を背景 とする 「ブランド戦略

及び

LCA

型要素開発によっ て、アジアとくに台頭著 しい中国の金属加工業 との共生の途を生産 ・市場両面 に亘 って切 り開 ぐべきで ある。そ してそれを可能にする 「ボーダレス ・ビジネスモデル」を構築すべ きである. rt 前者の 「ブランド戦略」 については、デザイ ン ・ブランドカ向上 によって品質 ・安全性 ・感性などを 中心 とする 「新高付加価値化」(後述の 「論点整理

3-[5]

を参照のこと) に成功を収める必要があ る。そのことは、消費市場の飛躍的な発展性を背景 に広がるアジアとくに中国における新市場において、 作業工具、利器工匠具 ・金属洋食器 ・ハウスウエアなど金属加工消費財の市場獲得に繋がる可能性があ るか らだ。中越金属加工企業の中にも、 ボーダレスに生産 ・販売活動を行 うことによって第Ⅳ類型化 し た 「ボーダレス経営」(後述の 「論点整理

3-[1

]

参照)へ移行 し、(イ)国内における高度な作業工 具の開発 ・試作、(ロ) タイを中心 とす る最適地生産 システムの活用、(ハ)国際的なブランド戦略によ るグローバルなマーケテイングの展開一に成功を収めている企業が存在 しているが、 こうした企業 レベ ルでの 「ブランド戦略」の展開がまず必要である。次に集積地域 としてのブランド戦略が必要である。 別版一体型の地域 「ブランド戦略」を構築するために、中越金属加工集積が持つ産地金物卸業の 「ファ ブレス企業性」をどのように活用するか も検討課題 とされるべきであろう。最後に、中越地域における プレス成型金型 メーカーの上海進出にみ られるように、金型をはじめとする中間財の場合 も、 とくに中 国における自動車産業や情報機器産業の急速な発展を背景 とする日系企業の金属加工製品に対する旺盛 なTT.潤・か ら推 して、品質向上 による販路獲得の可能性 はこれまた大 きいものと考え られる. 後=省の要

莱開

発に関 しては、(イ)技術 ・開発 ・生産高度化戦略、(ロ)

LCA

型金属加工業への転身、 (ハ)節IV実刑リ.企業群 (後述の 「論点整理

3

-[

1

]

参照)への参入、(ニ)高度化戦略 と第Ⅳ類型企 業群 との結合、(ホ)

LCA

型金属加工企業群への移行 と第Ⅳ類型企業群 との融合一などが課題 とされる が、小越金属

加1

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.余業即のマグネシウム合金等難加工軽量金属材料開発は中越金属加工企業群をしてこ うした課血に応えることを77J能に していると云えよう. ② ニ ット産業 次にニ ット産米の場令 も、

.

l

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.

歳印

、見附市 さらには加茂市など中越地域が持っ優れた文化性や感性杏 独 自ブランドの確立に結びつけることができれば、中国を単に生産基地 としてばか りではな く市場 とし

(13)

-2-て も位置づけることが可能 になるものと想定 される。 しか しなが らニ ット産業の場合 には、 (イ)中国における織維製品に対す る高率関税や流通 システム の未整備による様々なコス ト増要因 (これ らを合わせ ると約60%ものコス トアップ要因になるとされて いる)、(ロ)中国において急速 に増大 している婦人用アパ レル製品に対す る新潟県 ニ ット集積企業の製 品特化 における年齢上の ミスマ ッチーなど解決すべ き課題 も多い。従 って産地 アパ レルが直接 に しか も 短期的に中国市場を開拓することは必ず しも容易ではないものと観 られるが、既 に国内で手がけている 独 自ブラン ド戦略-それは国際的なブランド戦略 とも結 びっいてお りその意味で産地 アパ レルの一部 は 既に第Ⅳ類型企業群に参入 しようとしているとも云える-を背景 とす る直販 システムと中国市場進出 と を効果的に結びつけることに成功すれば、中国市場獲得の可能性 もまた生 まれて くるものと期待される。 ③ 木工家具業 ニ ット産業のケースは、加茂市をはじめとす る県内の木工家具企業 にもある程度当て飲めることがで きる。木工家具企業 は、 アジアとくに中国か らの輸入製品の攻勢 と生産基地化を狙 った日本企業の中国 への進出に因 って今や本格的なボーダレス化時代を迎えつつあ り、 ニ ット産業 と同様産業 としての存続 を賭 けた経営戦略上の選択を迫 られっっある。 しか しなが ら選択肢 は 「ボーダレス経営」を選択す る以 外に途がないという点で もニ ット企業 と同様の状態に置かれている。 しか も新潟県木工家具企業 に も 「ボーダレス経営

の可能性が残 されている。伝統技術に裏付 けられたそのインテ リア性 とブラン ドカ の結合に成功すれば、木工家具産業の勃興 と表裏の関係にある中国木工家具市場への参入 も容易となり、 そうした ビジネスチャンスを自らの高付加価値産業への転身 に結 びっけてい くこともで きよう。 すなわち、木工家具企業が 「ボーダレス ・ビジネスモデル」を構築す るためには、 まず高級品指向の 強いアッパーゾーン製品に関 しては、(イ)生活の飾 りや装 いのための 「ホームファッション」や 「ホー ムファニシング」など、(ロ)高齢化や介護など家族のライフサイクルに合わせた 「インテ リアライフ」、 (ハ)健康や くらしに配慮 した新製品開発、 (ニ) 自然環境を考慮 したエコ製品の重視 -などに依 って新 高付加価値論 に応える必要があるが、そうした余地 は十分残 されていると考える。従 って、 こうした高 付加価値戦略を背景にして、差 し当たっては、 ポ リウムゾーン製品を中心 にして生産基地化 プラス内販 化戦略を通 じて中国 ・アジアとの共生を計 り、 ビジネス ・プロセスのボーダレス化やグローバル経営戟 略構想 に トライ してい く必要があろう。 (2) 「ボーダ レス ・クラスターモデル」の必要性 と課題 ① 必要性 新潟県中越集積企業の上記 「ボーダレス ・ビジネスモデル」の構築 さらにはそれを通 じての 「ボーダ レス経営」化 は、中越集積が、技術開発力、資金調達面のみな らず人材養成 さらにはグローバル経営情 報など 「ボーダレス経営」 に必要な経営資源の提供 ・供給の面で重要な役割を果たす ことを不可欠 とし ている.その意味で、集積地域企業の 「ボーダレス ・ビジネスモデル」構築及び 「ボーダレス経営」化 を促進 し支援するための 「ボーダレス ・クラスターモデル」の構築 もまた急務 とされているということ をまず強調 しておかなければな らない。 ② 課 題 「ボーダレス ・クラスターモデル」 として求め られる課題 は、(イ)「ブランド戦略」、(ロ) ブレイク スルー型技術開発、(ハ)新金融 システム、 (ホ)人材養成 システム、 (へ) ボーダ レス ・コーディネー ト機能 -の五点である。

(14)

-3-A.

新高付加価値論 と地域 「ブランド戦略」 後述するように高付加価値概念 は変化 しっつあり、中越集積 にとって も、新たな高付加価値概念を背 景 とする地域 「ブランド戦略」を構築す ることが第一の課題 とされなければな らない。 金属加工集積 においては、品質 ・デザイン ・ブランドカ向上を通 じての新高付加価値概念の創出とと もに要素開発を通 じての環境問題への対応が求め られている。集積地域 としてこの二つの課題 とくに前 者の課題に応えるためには (後者の課題 については後述

B.

を参照されたい)、流通システムの構造変化一 産地金物卸業者が、市場動向への敏速な対応 と企画開発機能強化 という 「ファブレス企業性

を発揮す る一方で、「集積地問屋」化 し始めているという流通 システムの新たな展開-を踏 まえた製販一体型 の 地域 「ブランド戦略」の展開が今後の課題 とされよう。 ニット集積において も、 ボーダレスな直販 システムを軌道に乗せるためにも、中越地域の感性や文化 性を背景 としたデザイン ・ブランドを如何に創出 し確立 していくかが最重要課題 となろう。 さらに木工家具業の場合 にも、 アッパーゾーン製品を対象にしたホームファッション ・ホームファニ シング ・インテ リアライフ ・エコ製品開発など新事業分野におけるブランド性の重要性か らも明 らかな ように、地域 「ブランド戦略」が業界にとって死活的な課題 となっていると云えよう。

B.

ブレイクスルー型技術革新 この点 は主 として中越金属加工集積 に対 して期待されている。金属加工業 は、素材 と機械工業 とを結 びつける "素形材"産業であるということが重要である。環境問題 との関連での技術開発の基本的な方 向は、 とくにECにおける厳 しい環境規制 に促 されて、現在では国際的にも既 に要素開発論 に向かいっ つあるが、そのことは素形材産業である金属加工業にブレークスルー型技術革新 (突破型技術革新)す なわち 「アーキテクチャー ・イノベーション」 (注1)の可能性が生まれっっあるとい うことを示唆 し ている。既 に中越金属加工集積 においては、マグネシウム合金開発をはじめ難加工軽量金属材料開発が 活発化 しているが、それは以上の文脈で理解 されるべきであろう。 しか しなが ら金属加工業の最大のユーザーである自動車産業や情報機器産業 とりわけ自動車産業にお いては要素開発論 はさらにLCAソフ ト開発論 に移行 してお り(注2)、 しか もそれ は対 中国進出に観 ら れるようにアジアにおけるLCAネットワークへ と展開 し始めている (注3)。従 って中越金属加工集積 として も、 こうしたLCAにおけるソフ ト開発やネットワーキングに対応するために も技術開発力をさ らにアーキテクチャー化す る必要があると云えよう。

C.

新 しい金融 システムの形成 中越集積企業をはじめ新潟県集積企業が 「ボーダレス ・ビジネスモデル」を構築 してい く上で、金融 上の支援が必要であるが、それに対 して新潟県集積地域がどのように対応 し得 るのかが次の課題である。 この点で注 目されるのは、新たに地域金融機関を活用 した地域政策金融 システム創出の動 きが各地で強 まっている点である。例えば、 日本政策投資銀行関西支店 は、関西地域再生問題 との関連で、地域の潜 在需要を掘 り起 こし、それを既存の地域産業再生に結びっけるための 「金融プラットフォーム」構想を 提唱 している (注4)0 また経済産業省 と金融庁 は、地域の産業再生を目指す産学官連携事業 と地域金融機関とを結びつけて、 資金調達を支援す るために 「産業 クラスターサポー ト金融会議」を近畿地方を皮切 りにして全国11箇所 で順次立ち上げてい く方針であると伝え られる (注 5)0 さらに日本政策投資銀行 は、ベ ンチャー企業や中小企業 に対 して担保主義からの脱却を目指 した支援 ・ 融資制度の創設を試みている (注 6)0

(15)

14-こうした日本政策投資銀行や経済産業省などの取 り組みが新たな地域政策金融 システム形成 に貢献す ることが期待 されるが、新潟県集積の場合にも、集積地域企業の 「ボーダレス ・ビジネスモデル」を支 援 し推進す るために、 こうした地域政策金融 システム形成 に対 して積極的に対応することが強 く求め ら れていると云えよう。

D.

新人材養成 システムの必要性 「ボーダレス ・クラスターモデル

を構築す る上で、人材養成 システム形成の必要性 もまた無視で き ない。そこで次 にこの点 に触れておこう。新潟県集積 としては、上記の 「ボーダレス ・クラスターモデ ル」を遂行するためにはどのような人材が求め られているのか ということか らまず明 らかにしておこう。 求め られる人材像に関 しては、三つの観点か らアプローチする必要がある (注7). 第- は、 新潟県 集積が中小企業を主体 とす る集積であるということだ。多 くの集積地域がそ うであるように、新潟県集 積 もまた中小企業を主体 とす る地域産業か ら成 り立 っている。従 って これ らの産業では、中小企業や非 自立的零細企業 における戦略的経営能力を持 った人材や戦略的選択肢を選択できるような人材が求め ら れている。 またこれ らの産業 に属す る企業の新分野参入 に必要な技術指導や技能者の養成 も必要になる。 さらに集積経営能力の育成、新製品開発や販路開拓などの能力養成 も課題であろう。 このように中小企 業を主体 とする地域産業 においては多様な人材が必要 とされているのである。 第二 には、新潟県集積 はいわゆる "もの作 り"の拠点であるということだ。 とくに中越集積 はそうし た性格が強い。 この場合には前述 したLCAソフ ト開発やそのネッ トワーク化 な どアーキテ クチ ャー ・ イノベーションが今後の技術開発において最大の課題になるものと想定 される.そうした中で こうした 分野を担い得 る人材すなわち 「環境マネジメン ト」 一例えばLCAソフ トとソ リッ ド・デー タ ・システ ムの融合 は企業経営に対 して も戦略的な転換を迫 ることになろう一に精通 した人材が求 め られることに なるであろう。 第三 に、「ボーダレス経営」 との関連で国際的経営戦略論 に係わる人材 も必要である。 この場合の人 材論 についてはさらに以下の三点について考慮が払われなければな らない。一つは国際的なマーケテ イ ングに係わる人材 に関 してである。国際的マーケテイングにおいては、 とくに既存の品質 ・デザイン ・ ブランドの新高付加価値論的 リアライメントが不可欠であるが、それを可能 とす る人材が必要である。 二つにはローカル ・アーキテクチャー ・イノベーションに携わる人材 についてである。既 に述べたよう に製造業 における国際的なイノベーションの動向は環境制約をク リアす るための要素開発論 に中心軸が 移行 し始めているが、問題 はローカルなイノベーションすなわちイ ンク リメンタル ・イノベーションを アーキテクチャー ・イノベーションに結びっけることがで きなければ、集積地域がアーキテクチ ャー ・ イノベーションにアクセスすることは困難 となる。そうした意味で、上記の 「環境マネジメ ン ト」 に携 わる人材 は、 アーキテクチャー ・イノベーターであると同時 に地域産業 における固有で しか も既存の技 術 に精通 しかつそれをアーキテクチャー ・イノベーションに結びっけてい くことが出来 る人材すなわち 「ローカル ・アーキテクチャー ・イノベーター」で もあることが求め られるのだ。三つ には、 ボーダ レ ス経営 に係わる以上国際的な経営情報 にも精通 した高度な知的訓練を受 けた人材 についてである。そ も そも国際経営戦略に携わる人材 とは、それぞれの分野 における単なる専門家ではな く、多様な専門分野 を横断的に理解 しカバー しうる 「シンボ リック ・アナ リス ト」すなわち 「知的プロフェッショナル

で なければな らないということだ (注8)0 ではこうした人材を如何 にして養成す るのか。つまり養成方法が次 に問われることになる。 この場合 三つの方法が考え られる (注9)。一つは企業内部での養成である。確かに大企業 の場合 にはこうした

(16)

-5-方法 も可能ではある。だが中小企業や集積地域企業の場合 には、一部の中堅企業を除けばこうした-5-方法 は極 めて困難であると云わざるをえない。そこで、本来企業内部で行 うべ き養成過程を外部化す るケー スが次 に登場 して くることになる。 しか しなが らそうした養成の場では、単なる研修の域を超えること が難 しい場合が多いことも否定で きないであろう。 ことに 「知的プロフェッショナル」 は単なる研修で は育たないと考えなければな らない。そこで最後 に、 より本格的な 「人材育成」 システムとしての専門 的教育機関 とくに高等専門教育機関が登場 して くることになる。 しか しなが ら現在の高等専門教育機関 の多 くは専門別教育 システムつまり "タテ割 り教育" システムか ら脱却 してはいないムだが求め られる 人材 の多 くは-とくに 「知的プロフェッショナル」の場合 には-専門教育 とともに融合教育を必要 とし ている以上、 こうした "タテ割 り教育" システムの下では-それが如何 に高度化 していようとも (すな わちそれが例え大学院 レベルであるとして も) -やはり対応困難であるということにな りかねないので ある。 か くして、新 たな人材を養成す るためにはやはり新たな人材養成 システムが必要だ ということになる が、 この点の解決 もまた 「ボーダレス ・クラスターモデル

に課せ られた重要な課題なのである.

E.

ボーダレス ・コーディネー ト機能 上述 したように、 とくに中越金属加工企集 においては、流通 システムが、一方での市場動向への対応 力及 び企画開発力を強化 しなが らも、他方では 「集積地問屋」化 しつつあるが、 こうした集積地域問屋 化をボーダレスに展開 し、 アジアとくに北東 アジアにおける金属加工製品の流通セ ンター化 に結 びっけ てい くこともボーダレスな 「ブラン ド戦略」の一環 として検討 されてよいであろう. そ してこれまた上 述 したように、中越金属加工企業 における技術開発 におい_て

LCA

型要素 開発論 が登場 しつつ あるが、 それは 「アジア

LCA

ネ ッ トワーク

化 と表裏の関係をな してお り、 これまたボー ダ レスなアプローチ が求め られている。 従 って こうしたボーダレスな 「ブラン ド戦略」や要素開発論を展開す るためにも、中越集積のボーダ レス ・コーディネー ト機能の発拝が必要である。そ して こうした機能を発揮するためには中越集積のコー ディネー ト機能の高度化が求め られてお り、そのためには産学官協力 による中越集積の知的集積化 もま た必要 とされよう。 このように、 ボーダレス ・コーディネー ト機能 もまた 「ボーダレス ・クラスターモデル」 にとって避 けては通れない課題の一つなのである。

(3)新潟県集積地域 と 「地域版

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とくに北東 アジア

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(日中 ・日韓

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の帰趨が今後重要な意味を帯 びることになろ う.

FTA

は単 に貿易の自由化 に止 ま らず、企業進出に伴 うビジネス ・ネ ッ トワーク (注

1

0

)

形成 と相 まって、「ビジネス経済圏」の形成を促 し、それを通 じて経済統合に繋がる可能性を秘めているか らだ。 すなわち、 日中 ・日韓

FTA

及 び東 アジア

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の内容 は、 (イ)関税の全面的な引き下 げ、(ロ)投資ルー ルの調整、 (-)知的所有権の保護、 (ニ)

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及び環境規制を含む商取 引 ・ 商慣行 における基準 ・認証 の統一、 (ホ) ビジネス環境及 び ビジネス ・ネットワークの整備 ・発展、(へ) ビジネスシステム及 び ビジネスモデルの互換性、(ト)金融 ・為替 ・通貨市場の安定性 と統合 一な ど多 岐に亘 るものと想定 されるが (注

1

1

)

、 こうした課題が具体化 されていけば、北東 アジア及 び東 アジア に巨大な 「ビジネス経済圏

が誕生 し、それは東 アジア地域統合の行方を も左右 しかねないのである。

(17)

-6-こうした 「ビジネス経済圏」形成の動 きを背景 にして、企業 レベルでは、早 くもビジネス ・ネットワー クなかんづ くビジネス ・プロセス ・ネットワークのボーダレス化が本格的に進展 し始めている (注

1

2

)

. そのことは、集積地域 としても

FTA

への対応を早晩迫 られ、その対応如何が 「ボーダレス ・クラスター モデル」の成否をも左右する可能性が強いということを示唆 しているのである。従 って新潟県集積 とし て も、

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構想の一環 として 「新潟版

FTA」

に対 して今 か ら積 極的に取 り組んでい く必要があると云えよう。 また、 とくに製造業企業が集積 している中越地域 として は、北東アジアにおける重要な産業集積の一つであるという立地条件を生かして北東アジア ・クラスター ・ ネットワーク形成に向けて寄与することが期待 されよう。新潟県集積における 「ボーダレス ・クラスター モデル」 は、 こうした点にも係わっているということを最後 に指摘 しておこう。 (注 1) 「アーキテクチャー ・イノベーション」 とは、設計思想 に係わるイノベーションのことを指 している。それは、「インクリメンタル ・イノベーション」すなわち改良 の積 み重 ねか らな るイノベーションに対峠する概念である。 このように両者 は対立概念ではあるが、実際には 相互連関性を持 っているということも見落 としてはな らない。 この点 は、後述す る二つの高 付加価値概念の関係にも係わっている (第

3

章 [注 2]参照)。なお、「アーキテクチャー ・

イノベーション」 の詳細 について は、

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」(新潟経営大学紀要 [第

9

]

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を参照 されたい。 (注

2)

例えば トヨタ自動車 は

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5

年以降同社が開発する全車種に開発段階か ら

LCA

ソフ ト

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[エコバス

]

を装填す ると発表 している (日本経済新聞

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ECO-

VAS

は、(イ)車両開発の企画段階で 「環境負荷低減 目標値」を設定 し、(ロ)設 計 ・試作段階で達成状況をチェックし、(-)評価結果をフィー ドバ ックす る- とい うプロ セスを繰 り返す ことによって、燃費 ・排ガス ・騒音 ・リサイクル性

・CO2

排出量など広範囲 にチェックする

LCA

ソフ トであるとされる

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AUTOMOTI

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7より)0 (注

3)

自動車産業における

LCA

ソフ ト開発及びそのネットワーク化 の詳細 について は、拙稿 「自 動車産業における環境規制 と 『共通 ネットワークシステム』 の課題-JNXクロスオーバー 型

LCA

ソフ ト開発の意義

-

」(仮題)

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(新潟経営大学 ・ 地域活性化研究所 ・研究プロジェク ト

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)p.

2

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8

を参照されたい。 (注

4)

日本政策投資銀行関西支店 「地域潜在力活用によるサステナブル関西の構築」

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)

を参照 されたい。 (注

5)

日本経済新聞

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1

日より。 (注6) 日本政策投資銀行の新支援 ・融資制皮については、拙稿 「日本経済再生のための課題 -社会 的成長試論-」

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(新潟経 営大学 ・地域活性化研究所 『地域活性化 ジャーナル

』[

1

0

号]掲載予定論文) を参照 された

い。

(注

7)

新潟県集積において求められている人材像については、拙稿 「産業 ・就業構造の変容 と人材

(18)

-7-養成の課題 - 『ビジネス教育』試論

-

」(新潟経営大学 ・地域活性化研究所 『地域活性化ジャー ナル』 [第8号])p:126-127を参照 されたい。 (注

8)

「シンボ リック ・アナ リス ト」 とは

、I

T

に起因す る米 ニュー ・エコノ ミー論 に係わる人材 論の一環 としてロバー ト・B・ライ ッシュによって提唱 された人材像である。 それは、

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T

を駆使するという意味では

I

T

の専門家すなわちェンジニアで もあるのだが、単 にそれだけ に止 ま らず企業経営 に不可欠な 「暗黙知労働」なかんづ く 「高度暗黙知労働」の供給者集団 を指 しているが、 ここではそれをとりあえず 「知的プロフェッショナル」 と呼んでおこう。 なお、「知的プロフェッショナル」 に関 しては、拙稿 「産業 ・就業構造 の変容 と人材養成 の 課題- 『ビジネス教育』試論 -」(新潟経営大学 ・地域活性化研究所 『地域活性化 ジャーナ ル』[第

8

号])p.105-131を参照されたい。 (注

9)

人材養成方法論 に関 しては、拙稿 「中越金型産業 と

I

T-

『ティアⅠ』化 のための課題

-」

(新潟経営大学 ・地域活性化研究所 『新潟県中越金型産業 と

I

T

一地域企業情報 ネ ッ トワーク システムの研究 Ⅱ-』)p.57-59を参照 されたい。

(注10) ビジネス ・ネ ッ トワークに関 して は、YasubikoEbina「A proposalofAsianGreen ManufacturingNetwork-Fortheformation ofAsianEnvironmental&Economic Zone-」 (新潟経営大学紀要 [第9号])p.25-27を参照されたい。

(注11) 北東 アジアFTA及 び東 ア ジアFTAに関 して は、Yasuhiko Ebina 「TheEastAsian Economic Zone and japanese localeconomies-The slgnificance ofthe East AsianFTA (FreeTradeAgreem9nt)forJapaneseclusters

-

」(atentativetitle)

[URL;http://www.with-online.com/yasuhiko/kiyolOO31116.htm](新潟経営大学 ・ 紀要 [第10号]掲載予定論文)を参照されたい。

(注12) アジアにおける 「ビジネス ・ネットワーク」の展開については、拙稿 「東アジアにおけるビ ジネス ・ネットワークとFTA- 『北東アジアビジネス経済圏』の可能性 と課題

-」

(仮題) [URL;http://www.with-online.com/yasuhiko/Seikatuken031114.htm]([社]生活経 済研究所 ・研究 プロジェク ト掲載予定論文)を参照されたい。また 「ビジネス ・プロセス ・

ネ ッ トワー ク」 につ い て は、Yasuhiko Ebina 「A proposalofAsian Green ManufacturingNetwork-Fortheformation ofAsianEnvironmental&Economic Zone-」 (新潟経営大学紀要 [第9号])p.29-36を参照されたい。

3

.論 点 整 理

われわれはさらに、第

1

章で述べた三つの問題意識に別 して、「ボーダレス経営」 に関す る論点整理 を行 っておかなければな らない。その場合以下の六っの論点が浮かび上がって くる。一つは企業経営に とってボーダレス化 とは一体何を意味するのかである。二つには産業構造 ・組織の変貌の下での付加価 値構造の変化である。三つには新付加価値曲線 (いわゆる "スマイルカープ")のボーダレス化 に関 し てである。四つにはビジネス ・プロセス ・ネットワークのボーダレス化についてである。五つにはニー ズの変容 によって惹起 された高付加価値概念の再定義である。最後 は 「ボーダレス経営」及びそれを支 える 「ボーダレス ・ビジネスモデル

についてである。

(19)

ー8-(1)企業経営におけるボーダ レス化の意味 企業経営にとってボーダレス化 とは一体何を意味するのか」 ということをわれわれはまず明 らかにし なければな らない。それは上述 した企業競争の激化 ということをどのように捉えるべきか ということに 係わっているか らである。 この問題の理解を容易にするために、ボーダレス化への対応を基軸 にして企 業経営の類型化を試みてみよう。その結束 は次の通 りである。 第- は、専 ら国内生産 ・国内市場を企業活動の対象 とする企業群の企業経営である。 このグループに 属する企業群を図示 してみると、それは下図において左下 (第

1

象限)に属する企業群である (ここで はそれを第 Ⅰ類型企業群 と呼ぶ ことにする)。ボーダレス化が進んでいるとはいえ、 今なお この企業群 に属する企業が最 も多 く、 とくに中小企業 ・集積地域企業の大部分がこのグループに属 している。一見 したところ、 このグループに属する企業群の経営 はボーダレス化には最 も縁遠い存在であるかに見える。 しか しなが らこのグループは、中国 ・アジアか らの輸入品が急速 に市場に浸透 し始めてお り、企業経営 に及ぼすその影響が最 も深刻化 しつつある企業群であることを見落としてはならない。 しかもこのグルー プの場合、今後輸入浸透率の上昇によって喫水線が一気 に上昇 し企業経営が壊滅的な打撃を被 る可能性 す ら伏在 しているのである。 第二 は、海外市場に進出する企業群の企業経営である。 こ▲の場合の企業群 とは、下図 において左上 (第2象限)のグループに属 しているそれである (第 Ⅱ類型企業群 と呼ぶ ことにする)。 このグループに 属する企業群 は第-のグループのそれに次いで多い。そもそ も輸出に従事する企業がこのグループに属 している以上こそのこと自体 は当然のことである。だが最近では、 このグループの中に、そ もそも第一 のグループに属 しなが ら国内市場において販路縮小 に追い込 まれた結果、海外に販路を求めざるを得な い企業が数多 く含まれるようになってお り、そのことが日本の輸出において近隣窮乏化 に繋が りかねな い要素 -いわゆる押 し出 し輸出の様相-を深める役割を果た してお り、その意味でこのグループに属す る企業の経営についても、 とくに海外市場の動向如何では、その先行 きは必ず しも楽観を許 さないと云 えよう。 第三 は、海外生産拠点を活用する企業群の企業経営である。下図の右下 (第

3

象限)のグループに属 している企業群である (第Ⅲ類型企業群 と呼ぶ ことにす る)。 この場合、企業群 はさ らに二つの グルー プに分かれる。一つはアセンブラーの進出に伴いパーツ ・サプライヤーとしても進出を余儀な くされて いるグループであり、今ひとつは自らの経営戦略の一環 として独 自にかっ積極的に進出 しているグルー プである。前者には中小企業や集積地域企業の多 くが属 している。.パーツ ・サプライヤーが主 として中 小企業 ・集積地域企業か ら成 り立 っている以上、そのこと自体 はやむを得ないことだと云えよう。だが、 同時にそうした進出が中小企業 ・集積地域企業 にとって大 きな負担を伴 っているということも見落 とし てはな らない。それに対 して後者については、海外生産基地化を自社のコス トダウンに結びっけており、 進出が企業収益改善 ・向上 に貢献 している場合が多い。だが双方 とも、何れにせよ進出目的の重要な一 つが安価な労働力の獲得に置かれている以上、そうした獲得が困難 になれば進出自体の見直 しを迫 られ るという点では共通 した課題を抱えていると云えよう。 第四は、二万で部品 ・原材料を内外を含めてボーダレスに調達 ・生産 し、他方で海外市場進出を含め てボーダレスに市場を獲得するという企業群の企業経営である。下図の右上 (第

4

象限) に属する企業 グループである (第Ⅳ類型企業群 と呼ぶ ことにする)。 この場合は主 として、成長著 しい中国への企業 進出において観 られる。いわゆる 「生産基地化 +内販化」ケースである。 この類型 に属する企業の経営 は、生産の面ではグローバルな レベルでの最適地生産すなわち 「世界最適地生産」が可能であり、他方

-9-ら

(20)

マーケテイ ングの面で もグローバルな展開条件を備えてお り、 その意味で経営その ものが国内の場合 も 含 めて文字通 りボーダレス経営化 しているのである.つ まり,-この場合の 「ボーダレス経営

の下では 内外共生型 の企業経営が可能 になるとい うことだ。その意味で この場合の海外進出は、企業経営戦略 と して も有意義であると同時 に、後述す るように (第6節参照)、 日本企業 として ももっとも望 ま しい進 \1 出パ ター ンである. しか しなが らこうした進出条件を企業経営上備えているのは主 として木企業であ り かついわゆる 「グローバル企業

である。 そ うした条件を企業経営の面で整えることは、中小企業や集 積地域企業 にとっては容易で はないと考え られる。中小企業 ・集積地域企業 は、経営資源一資金 ・人材 ・ 技術 さらにはノウ- ウなビーの面で大企業 に対 して相対的に不利 な立場 に置かれているか らだ。従 って そ うした経営資源 に恵 まれている中小企業 ・集積地域企業 は少な く、 その結果 このグループに属す る企 業群 は今 なお少数 に止 まっている。 [ボーダ レス化への対応を基軸 とする企業経営の類型化] 海 外 市 場 莱 型 群 国 内 市 場 莱 型 群 (注)本図のアイディアは (財)新潟経済社会 リサーチセ ンター ・ア ンケー ト調査 「世界 に通用す る 新潟の ものづ くりに向けて一進展す るグローバル経琴下 における県内製造業 の現状 と今後

-」

(『セ ンター月報

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月号])

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5

によっている。 以上 の四つの企業経営類型化論か らわれわれが引 き出すべ き含意 は次の三点であ る。第- は、 ボーダ レス化 に対 して最 も深刻な影響 を受 けているのは実 は 「ボーダレス企業」の経営ではな く 「非 ボーダレ ス企業」 のそれであるとい うことである. しか も、中小企業や集積地域企業の殆 どが この 「非 ボーダレ ス企業」 に属 している以上、 ボーダレス化 の影響や被害 は専 ら中小企業 ・集積地域企業経営 に集中 しか ねないのである。第二 は、企業経営 におけるボーダレス化が 「ボーダレス企業」 と 「非ボーダレス企業」 - 10

(21)

-の二極分解を加速 しているということだ。「ポー・ダレス企業」である大企業 とくにグローバル企業 の場 合には 「ボーダレス経営」のメ リットーすなわち世界最適地生産 によるコス トダウンや新市場のボーダ レスな獲得など-を享受 し得 るのに対 して、ボーダレス化が困難な 「非ボーダレス企業」である中小企 業や集積地域企業 はそうした経営上のメ リットを享受するという恩恵には浴 していない。それどころか、 む しろ逆にボーダレス化が引き起 こす市場競争の激化 による被害を最 も被 っているのが中小企業 ・集積 地域企業経営に他ならないのだ。(しか も、第 Ⅰ類型企業群の経営が被 っている被害の一部 は、 第Ⅳ類 型企業群に因る場合 も少な くない。いわゆる "逆輸入" [注

1

]がそれである。)その結果、大企業 ・グ ローバル企業の経営 と中小企業 ・集積地域企業のそれとの間には "ダブル ・ボーダレス ・デバイ ド" と で も呼ぶべき二重の格差要因が新たに発生 し、それが両極化を加速 さえ しているいるのである。第三は、 ボーダレス化の下での両極化を回避するためには、集積地域が果たす役割が不可欠であるということだ。 ボーダレス化の影響 は地域経済や国民経済全体 に及ぶのに対 して、 ボーダレス化 に積極的に対応 し得 る のは一握 りの企業群に過 ぎないということになれば、結局、地域経済や国民経済 は二極化を余儀な くさ れることになる。 こうした事態を回避 し、逆に中小企業や集積地域企業経営に対 してもコス トダウンの 機会を与えまた彼 らが本来有 している筈の新市場参入機会を与えるためにも、中小企業 ・集積地域企業 経営の 「ボーダレス経営」化-さらにはそれを通 じての中小企業 ・集積地域企業 自体の 「ボーダレス企 業」化 -が地域経済及び国民経済にとっても不可欠な課題 となる筈だ (注2)。その場合、 中小企業 の 多 くが地域 に依拠 しているという点を考慮するな らば、集積地域が中小企業 ・集積地域企業経営の 「ボー ダレス経営」化に対 して果たすべき役割の重要性が改めて認識されなければな らないであろう。 (2)付加価値構造の変化 第二 に、産業構造 ・組織の変化が企業の付加価値構造における変化を促 しているということを指摘 し ておかなければならない。産業構造及び産業組織の変化 とは何か。それはサービス化及び中小規模企業 の優位性増大である。 しか もそれはまた付加価値構造の変化 と深 く関わっている。上述 した市場構造の 変化 とくに多品種少量生産への移行は産業構造のサービス化 と表裏の関係にあるが、そのことは、製造 業における付加価値源泉が従来のアセンブリング部門か ら一方では開発 ・企画 ・設計部門へ と移行する とともに他方ではマーケテイング ・流通部門へ と移行する、 ということを意味 している.その結果、付 加価値 ラインもまた、旧付加価値曲線か ら新付加価値曲線すなわちいわゆる "スマイルカープ"へ とシ フ トするのである。そのことは同時に、製品 (担い手 としてはアセ ンブラー) よりも部品 (同 じくパー ツ ・サプライヤー) さらにはサービス業務 (同サービス業者)がより大 きな付加価値を獲得する機会を 得 るということを示唆 している。云 うまでもな く、アセンブラーが大企業を中心 にしているのに対 して、 パーツ ・サプライヤーやサービス業者 は中小企業者を主体にしている.以上の点を図示す ると以下の通 りである。 - if l T

(22)

一部品 製品 販売 (注)本図のオ リジナル ・アイディアは野中郁次郎 「日本 の製造業 の課題」 (日本経 済新 聞2001年1 月19-26日) によ っている。 その意味で付加価値構造 の変化 は、産業構造 のサー ビス化及 び産業組織 における中小規模企業優位性 の相対 的上昇 とに深 く関わ っているのである。 (3) "スマイルカーブ〝 のボ ーダ レス化 第三 に、企業活動 のボー ダ レス化 は ビジネス ・プロセスのそれ と表裏 の関係 にあるという点が重要だ。 ビジネス ・プロセス論 か ら云 うと、企業活動が ボーダレス化するということは上記の "スマイルカープ" が ボー ダ レス化す るとい うことで もある. "スマイルカー1" を ビジネス ・プロセス化す ると下図の通 りであ るが、 この場合、付加価値縮小 に直面 した加工 ・組 み立て部門など生産部門 に従事す る企業 は、 企業収益 を維持す るためにはコス ト引 き下 げの必要性 に迫 られ、 その結果、最適地生産論 を採 り入れ新 たに海外 に生産基地 を求 め ることにな る。 そ こで、 ビジネス ・プロセスの中でまず生産 プロセスがボー ダ レス化 し、 "スマイルカーブ が ボーダ レス化す る.以降、企業競争が激化 し収益悪化部門が拡大す るにつれて、 "スマイルカ-ブ" のボーダ レス化 の皮合 い も深 まることになるのである。 ビジネス・プロセス

Y

ボ ーダ レス化 (注)本図のオ リジナル ・アイディアは経済産業省

『通商 白書』(2003年版)p.38によっている。 -

1

(23)

2-(

4

)

ビジネス ・プロセス ・ネ ッ トワークのボーダ レス化 第四に、上記に関連 して、企業活動のボーダレス化に伴い企業の ビジネス ・プロセス ・ネットワーク もまたボーダレス化するということも見落 としてはな らない。(従 って、 ビジネス ・プロセス論 の立場 か ら云 うと、「ボーダレス経営

とは、企業の ビジネス ・プロセスがネットワーク化 されかつ ボーダ レ ス化 された場合の企業経営 システムのことを指す、 ということになる。なお詳 しくは第Ⅴ部 [補論]を 参照 されたい。) ビジネス ・プロセスは、製造業 に関 しては少な くとも次の三つに類型化 され る。一つ には 「プラニング ・プロセス」(Pl.P;PlanningProcess)であり、研究 ・開発、設計、試作、金型 などか らなる。二つには 「プロダクション ・プロセス」(Pr.P;ProductionProcess)であ り、調達、 組み立て、在庫などか らなる.'三つには 「マーケテイング ・プロセス」(M.P;MarketingProcess) であり、販売、配送、決済などか らなる。そ して三者の間では、企業内は無論のこと企業間で も同一業 種内及び異業種間で様々なネットワークが張 り巡 らされてお り (Chart.1及びChart.2参照)、 ネ ッ ト ワーキングの担い手 としてのITがそれを支援 しかつ促進 しているのである。 - 1 3

(24)

-Chart.1 TheconceptofBPN (BusinessProcessNetwork) SCM Suppll yChainManagement)

t l

CALS(ContineousAcquisitionandLife-cycleSupport)

(●1)BP ;BusinessProcess

BPN ;BusinessProcessNetwork

A

1

・2・3

・;

Enterprisesintheautomotiveindustry

D/S

1・2・3

・;

Designers/Softwareengineers

M

1

・2・3;Sellersincludingcirculatersandinteトmediatdrs

(RefertoYasuhikoEbina「A proposalofAsianGreenManufacturingNetwork-Forthe formationofAsianEnvironmental&EconomicZone-」[NiigataUniversityofManagement・ JournalofNiigataUniversityofManagementNo.9]p.30)

(25)

-Chart.2 There一ationofBusinessProcesesandBusinessGroups/Enterprises

BG

BP En

classifiedinto

threestages

(

●4) Ⅰ Ⅱ_ Ⅲ Ⅳ ・Ⅴ corrⅠeT/BTsponding AutomotiVe SofDestiwargn&e Marketing Delivery Finanpetce

A

1

.2.3-

D/

S1.23 .-

.

M

1

.2.3- Dli2.3...F

1

.2.3

-a.Pla-annl1.R&DngProcess

◎ ◎

△ _△ 4 CALS.ⅠⅠN/BP

a-3.Testing

◎ ◎

× -× ×

a-4.Moldi鴫_

◎ 1

@

.×. × ×

b.Prち-1oduc.ProctiuronPrmeocntesq

.

△ × × × CALS.SCM/BP

b-2.Assembling

-

△ ` × × × b-3.Working

.

-

◎ ・

◎ ◎

-b-4.ⅠnVentory

_

ー△

(

●3)

(

●3) × --i C.Marc-1.SkeeltliingngProcess

◎ ◎ ◎

DSCM/BP C-3.Settlement

_

◎ ◎ ◎ ◎ ◎

.

BPN-α Ⅰ a-1,a-2, Ⅱ a-1,a-2, Ⅲ a-1,a-2, Ⅳ a-1,a-2, V a-1 a-3,a-4 a-3,a-4 Ⅲ b-3,もー4, Ⅳ b-3,b-4 V b-3 Ⅰ b-1,b-2, Ⅲ b-1,b-2, Ⅲ C-1,C-2, Ⅳ C-1,C-2, V c-1,C-3 b-3,b-4 Ⅰ CC--31,C-2, Ⅲ Cb-C--133,,Cb--24, C-3 C-3 BPN-β Ⅱ a-1,a-2, Ⅰ a-1,a-2, Ⅰ C-3 Ⅰ C-2 Ⅰ C-3 a-3,a-4 a-3,a-4 Ⅱ C-1 ⅢC-2 Ⅱ C-3 甲 C-1 Ⅲ C-1 Ⅳ C-2 Ⅲ C-3 (●1)BP;BusinessProcess BG ;BusinessGroup En;EnterprlCeS

IT ;InformationTechnology

CALS;ContinuousAcquisitionandLife-cycleSupport IIN ;IntellectualInformationNetwork

SCM ;SupplyChainManagement

DSCM ;DemandSupplyChainManagement

(

●2)◎ ;MostimportantbasicBP

図表 Ⅱ1 1‑1 9 日本の繊維産業の ビジネス ・グループと構造
図表 Ⅲ ‑ 2‑1 新潟県の木材 ・木製品製造業主要業種別構成 ( 平成 1 3 年) ( 万円) 品 . 目 事業所数 構成比 従業者数 構成甚 平成 出荷額1 3 年 構成比 平成 出荷額8 年 構成比 製材 .木製品
図 : Hond8 LCAシステムの概要.「Honda LCAデータシステム」と 「Honda LCAマネージメン トシステム」で構成される。

参照

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