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目 次 第 1 章序論 要旨 ( 研究の目的と背景 ) 社会情勢の変化 人口問題の変化 労働形態の変化 社会的ニースの変化 建設産業の環境の変化と建設投資について...

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平成

23 年 3 月修了

修士(工学)学位論文

我が国の建設プロジェクトの環境変化と

人材育成・人材活用に関する研究

A Study of the human resource management and

Change of construction projects environment in Japan

高知工科大学大学院 工学研究科 基盤工学専攻

学籍番号

1135095

中井 学

Manabu NAKAI

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目 次

第1章 序論 ...................................... 1 1-1. 要旨(研究の目的と背景) ...................................... 1 1-2. 社会情勢の変化 ...................................... 4 1-2-1.人口問題の変化 ...................................... 4 1-2-2.労働形態の変化 ...................................... 5 1-2-3.社会的ニースの変化 ...................................... 5 1-3. 建設産業の環境の変化と建設投資について ...................................... 6 1-3-1.建設産業の環境の変化 ...................................... 6 1-3-2.国内建設投資の変化 ...................................... 6 1-3-3.国際化への変化 ...................................... 7 1-4. 我が国の建設現場における作業所組織の歴史的変遷 .............................. 10 1-5. 用語の説明 ...................................... 13 1-5-1. プロジェクト ...................................... 13 1-5-2. 建設プロジェクト ...................................... 13 1-5-3. マネジメント ...................................... 13 1-5-4. プロジェクトマネジメント ...................................... 13 1-5-5. パーソネルアドミニストレーション(人事管理) ............................ 14 1-5-6. PMBOK ...................................... 14 1-5-7. ヒューマンリソースマネジメント(人材マネジメント) ...................... 15 1-6. 本論文の構成 ..................................... 17 第2章 建設プロジェクトにおける人事管理の実態 ...................................... 18 2-1. 国内建設プロジェクトにおける人事管理の実態 ................................... 18 2-2. 海外建設プロジェクトにおけるヒューマンリソースマネジメントの実態 ............. 21 2-2-1.米国建設プロジェクトにおけるヒューマンリソースマネジメントの実態 .......... 21 2-2-1-1.米国の建設産業の実態 ..................................... 21 2-2-1-2.米国建設プロジェクトにおけるヒューマンリソースマネジメントの実態 ...... 24 2-2-2.英国の建設産業の実態 ....................................... 25 2-2-3.EU諸国の建設産業の実態 ....................................... 26 2-2-4.諸外国の建設産業の実態 ....................................... 28

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第3章. 国内他産業におけるヒューマンリソースマネジメントの実態 ..................... 30 3-1.自動車産業のヒューマンリソースマネジメントの実態 .............................. 31 3-2.国内他産業のヒューマンリソースマネジメントの実態 .............................. 33 第4章. 我が国の建設産業における人事管理の問題点 ................................... 34 4-1.建設産業の国際化 ....................................... 34 4-2.建設技術者数の減少 ....................................... 35 4-3.技術の空洞化 ....................................... 36 4-4.建設マネジメントへの取り組み不足 ....................................... 37 第5章. 新しいヒューマンリソースマネジメントの提案 .................................. 38 5-1.提案1「資格登録制度と入札要件の雇用条件緩和」 ................................ 38 5-2.提案2「マネジメント技術の体系化により人材活用」 ............................... 40 5-3.提案3「施工技術に関わる人材育成の方策」 ....................................... 40 第6章. おわりに ........................................ 43 参考文献 ........................................ 46

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第1章. 序 論

1-1. 要旨(研究の目的と背景)

わが国の土木技術は世界的にトップレベルにあり,技術面での国際競争力は極めて高い と言われている。先進諸国の建設企業(Contractor)が躊躇するような困難なプロジェク トに挑み,そのほとんどを要求される品質と期日に完成させてきた。地勢,気象,風土, 資源等に係わる厳しい条件下で土木事業を推進するにあたり,多様な土木技術が開発され, 世界的にもそのレベルの高さが認知されているものも少なくない。 一方,図 1-1 に国内大手建設会社 31 社の経営状況を示すが、経常利益を見ると 2006 年 度迄は 30 億円以上の水準であったが、2007 年度以降は 8~18 億円程度と半減している。 これらは海外での建設プロジェクトにおいての損失であると言われており、その原因のひ とつに運営面であるプロジェクトマネジメント力不足があると言われている。 図 1-1 大手建設会社の経営状況(建設業ハンドブック 2010:日本土木工業協会) 他方、諸外国の大手建設企業には、海外事業を基幹領域とし、1 社で 2 兆円近い海外事 業を行っている企業が存在する。その基幹競争力はBOT(Build Operate Transfer:建設・ 運営・譲渡)などによる開発権プロジェクトにおけるプロジェクトプロバイダー(Project Provider)としての遂行能力である。公的発注者に代わり、プロジェクトを組立、安価に、 効率よく、確実に成功させる機能を担うことを新たなビジネスモデルとしている。 新しいビジネスモデルを導入することにより、それらの建設企業には、自国内の建 設市 場における産業構造のリストラクチャリング(再構築)という大きな変化が表れた。それ まで大手企業が主な事業領域としていた「施工請負者=Contractor」の機能が、中堅・地 元建設企業に移行してゆき、大手はこれを管理する機能を担う立場となった。つまり、大 手企業の事業領域拡大によって、中企業、小企業の活動の場が広がり、健全な形で産業構

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(年度) (百億円) 売上高 経常利益 2004  2005  2006  2007  2008  2009  2010 海 外 建 設 プ ロ ジ ェ ク ト に よ る 損 失 の 影 響

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造のリストラクチャリングが進んでいったのである。写真 1-1 は、フランスのエファージ ュ社が BOT(Build Operate and Transfer)で開発権 を得て実施 したプロジ ェクトであ るミヨー高架橋である。 写真 1-1 フランス ミヨー高架橋 (エファージュ社ホームページ) 次なる変化は、大手建設企業の国際市場への事業拡大である。国内で蓄積したプロジェ クトプロバイダーとしての経験と能力は国際建設市場への進出の基幹競争力となった。 建設企業は、リスク管理、契約管理、資金調達等の能力向上、異業種連携、そして地方 建設企業の活用・管理といった、これまでと次元の異なるマネジメント能力と技術力を競っ てゆくことになり進化・発展していった。 次に示す図 1-2 は、欧州の大手建設企業の組織図であり、建設部門のみならず多角的な 事業分野を持つ組織となっていることがわかる。 建設 不動産 道路 メディア 電話 建設 道路 エネルギー コンセッション 建設 住宅開発 商業開発 インフラ開発 図 1-2 海外の大手建設会社の組織形態(国土交通省中央建設審議会) マネジメント 空港事業 開発事業 建設アメリカ 建設アジア太平洋 建設欧州 ①Bouygues(ブイグ:仏):1952 年設立 売上高 3 兆 8,400 億円、従業員 52,600 人(2009 年) ③Skanska(スカンスカ:瑞):1887 年設立 売上高 1 兆 6,420 億円、従業員 80,000 人(2009 年) ②Vinci(バンシ:仏):1899 年設立 売上高 2 兆 9,529 億円、従業員 133,413 人(2005 年) ④Hochtief(ホッホティーフ:独):1875 年設立 売上高 2 兆 7,390 億円、従業員 51,937 人(2007 年)

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一方我が国の建設プロジェクトの執行は、発注者をはじめとして全ての関係者が日 本国 内にのみ視点をおいた、世界から見ればある種独自の執行形態となっていたという指摘が 少なくない。近年の社会情勢の急激な変化や国際化・情報化社会の到来という大きな波の 中で,旧来通りの建設管理手法だけでは、とうてい生き残ることができない時代が到来し ている。 その中でも、建設企業は「人」が最大の資源であり、世界に通用するプロフェショナル な人材を確保・育成・教育する必要があると強く感じている。 本論文では、旧来からの日本国内での建設プロジェクト運営にのみ重点をおいた建設技 術者の Personnel Administration (人事管理)から、変化に対応 でき世界に も通用する プ ロジェクトマネジメント力を習得した Human Resources Management(ヒューマンリソース マネジメント:人材マネジメント)へと構造改革する必要があると考え、研究をすすめる ものとします。

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1-2. 社会情勢の変化

1-2-1. 人口問題の変化 UNFPA(国連人口基金)の世界人口白書 2010 によると 2010 年の世界の人口は、約 69 億人で 2050 年には 92 億人になると推計されており、増加する人口のほとんどが開発途 上地域での増加であるとされている。アジア地域では、現在の 42 億人が 2050 年には 52 億 人へと 10 億人の増加と推計されており、世界人口の約6割をアジアで占める事になる。 一方、我が国の総人口は、1955 年に 8,927 万人であったが 2004 年の約 1 億 2,777 万人 をピークに減少しはじめ、まさに人口減少社会が到来した。 図 1-3 に示す国立社会保障・人口問題研究所の発表数値によると,総人口は現在の 1 億 2,739 万人(総務省統計局 2010 年 12 月速報値)から,1955 年には 8,993 万人へとさらに 減少が進み、50年弱で3割もの人口減となると推定されている。単に人数が減るだけで なく少子化による若年層の減少と高齢化比率(23.1%であり過去最高を更新中)が高まり、 現役世代すなわち労働人口の減少が大きな問題となっていくことが分かる。 労働力のベースとなる生産年齢人口(15~64 歳)は 8,373 万人であり人口に占める割合 は 65.5%である。その推移は、1982 年の 67.5%から上昇を続けていたが、1992 年 69.8% をピ ーク に 低下 して い る。 中位 推 計の 結果 に よれ ば、2030 年には 7,000 万 人 を 割 り 込 み 、 2050 年には 5,389 万人(53.6%)へと縮小するものとみられる。 図 1-3 日本の総人口の推移と推定(国立社会保障・人口問題研究所) 0 20,000 40,000 60,000 80,000 100,000 120,000 140,000 1 3 5 7 9 11 13 15 17 19 21 23 25 27 29 (年) (千人) 0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 100 総人口(千人) 15~64(生産年齢人口率) 65歳以上 (老年 人口率) 1945 50 55 60 65 70 75 80 85 90 95 00 05 10 15 20 25 30 総人口(左目盛) 生産年齢人口比率 老年人口比率 →推定値 %

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1-2-2. 労働形態の変化 我 が 国 の 労 働 市 場 に お い て 、 会 社 や 団 体 等 に 雇 わ れ て 働 い て い る 雇 用 者 は 5,086 万 人 (2009 年 1-3 月平均)いるが、そのうちの約 1/3 に当たる 1,699 万人が非正規雇用者とな っていることが、図 1-4 に示した経済財政白書から分かる。非正規化の動きは、最近にな って始まったものではなく、一貫して非正規比率が上昇している。非正規比率の上昇テン ポもここ数年で加速したとはいえない。逆に、テンポはやや鈍化している。上昇テンポが 加速したのは 1997~2002 年である。バルブ崩壊後にしばらく非正規化が止まった時期があ ったが、その後、遅れを取り返すかのように正社員のリストラと非正規化が進んだ。 このような非正規雇用(派遣形態での雇用) の 増 加 の 背 景 に は 、 そ れ ぞ れ 高 齢 化 や 労 働 法制の改正があると考えられるが、終身雇用から労働形態の多様化が現実のものとなって いることがいえる。 図 1-4 雇用者における正規・非正規比率の推移(平成 21 年度版経済財政白書) 1-2-3. 社会的ニーズの変化(説明責任、透明性、品質の確保など) 2000 年前後で発生したいわゆる姉歯一級建築士の耐震計算偽装事件や雪印乳業の食肉の 産地偽装事件などにより、社会から要求される項目にも変化がでてきた。コンプライアン スを守り、広く一般社会にも説明責任を果たすというニーズが急速に拡大してきた。 社会資本整備関係では、ダムや高速道路などの必要性についての議論が活発にもなった。 企業においても社会的責任 CSR(Corporate Social Responsibility)を果たすことが強く 求められてきており、自分たちだけが分れば良いということではなく、広く世間からも見 える透明性の確保と説明責任を果たす事が重要となってきた。これらにより、建設産業に おいても今までの管理手法と違ったスキルが必要となってきた。

3 人 に 1 人 は 非正規雇用者

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1-3. 建設産業の環境の変化と建設投資について

1-3-1. 建設産業の環境の変化 我が国は明治維新以降,国家主導の下に迅速に,そして着実に社会基盤整備を進めてい った。注目すべきは,欧米先進諸国の技術者を受け入れ,指導を受けながら,その殆どを 自力で行っていったことである。 大正,昭和と時代が進むに従い,日本本土やそれ以外の地域での社会基盤整備事業の推 進によって高度な品質を保ちながら迅速かつ確実にプロジェクトを推進して行く力を蓄積 していった。 1945 年の太平洋戦争終結時には日本の社会基盤施設は壊滅的な状態であったが,建設産 業は戦後の混乱の中から立ち上がり,国民が生きてゆく為の社会基盤施設の復興にエネル ギーを注ぎ,1950 年代に戦後復興を果たした。そして休むことなく 1960 年代から 1970 年 代にかけて経済発展のための社会基盤整備事業を着実に行っていった。正にこの頃は、国 民が一致して、建設産業の力なくして日本の発展はないと考えていたといってよい。 1980 年代に入り一時低迷期を迎えるが,1985 年頃から始まった“バブル経済”によって 再び急激な拡大を見せる。しかし,1990 年代初頭,バブル経済の破綻と共に,建設産業の 根底を揺り動かす,様々な問題が発覚した。1993 年には,地方公共団体の幹部や大手企業 の役員が贈収賄や談合の発覚によって次々に逮捕され、2000 年代に入っても,官製談合 , 耐震設計偽装事件といった問題が発覚し,これら一連の事件によって,建設産業に対する 国民の信頼は著しく低下する事態となった。 これらを契機として、2000 年の公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律 、 2005 年の公共工事の品質確保の促進に関する法律の制定、2008 年から 2009 年の建築基準 法・建築士法・建設業法の改正など、透明性や説明責任が非常に重要な時代となってきた。 1-3-2. 国内建設投資の変化 国内建設投資の推移を次ページの図 1-5 に示す、政府・民間を含めた建設投資額(建築・ 土木)が, 1992 年までは拡大していた。バブル崩壊に伴い民間投資が減少した後も景 気 回復策として政府投資の下支えにより増加を続け,84 兆円にまで達した。その後,1993~ 1996 年度までは 80 兆円前後を維持してきたが、1997 年度以降は,民間投資の一層の冷え 込みと小泉改革に象徴される公共事業削減により一貫して減少を続けていることが分かる。 国土交通省総合政策局より 2010 年 6 月に発表された 2010 年度建設投資見通しは,40 兆 円程度の見通しで,建設投資の規模は 1990 年代前半と比べて半減する予測と なっ てい る 。 また、建設投資の中長期予測として 2005 年に建設経済研究所が推定したものでは、2010 年度に 40 兆円を下回る予測値はなく 2020 年度に 40 兆円台を割り込む可能性があるとされ ていたが、現実にはこの予測の最小値を下回るくらい低い水準で推移している。 今後も財政状況や一定のストックが整備された状況から判断すると建設投資額が大きく

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拡大する可能性は低いと考えられる。 図 1-5 建設投資の推移(建設業ハンドブック 2010:日本土木工業協会,建設経済研究所:中長期予測) 1-3-3. 国際化への変化 世界の建設市場の年間投資額は約540兆円(2006年)であり、日本を除くアジア太平洋地 域で約150兆円の規模があり、日本の3~4倍の規模であり今後も堅調な成長が見込まれて いる。図1-6に欧米・アジアの建設市場規模を示す。 図 1-6 欧米・アジアの建設市場規模( 日 本 土 木 工 業 協 会 、 建 設 業 界 2008 年 9 月 号 ) 世界の大手建設企業の中には、ここ数年で飛躍的に売り上げを伸ばす企業も現れてきて 36.0 36.4 36.5 38.0 38.3 39.0 39.1 41.2 41.1 41.4 40. 7 42.2 47.6 47.6 51.3 51.6 52.8 53.7 56.8 61.3 66.2 68.5 71.4 75.2 82.8 79.0 78.8 81.7 83.9 82.4 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 80.0 90.0 1991 1992 1993 1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 201 1 201 2 201 3 201 4 201 5 201 6 201 7 201 8 201 9 2020 (兆円) 140.0 35.0 30.4 29.6 28.2 27.8 47.6 6.0 52.3 97.4 14.2 9.8 9.6 13.6 アメリカ ドイツ スペイン イギリス フランス イタリア その他西ヨーロッパ 中・東ヨーロッパ 日本 中国 韓国 インド オーストラリア その他アジア ア ジ ア : 150 兆円 中長期予測からの推定値 ア ジ ア 地域

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る戦略で展開している。表1-1に世界の大手建設企業の総売上高と海外売上高上位25社のラ ンキングを示す、海外売上高比率(2008年)では、上位25社平均で36%、この内欧米の 企業平均だと50%を超える比率となっていることが分かる。ちなみに日本の大手5社平 均は17%である。韓国の建設企業では、1,000億円を海外建設で売上げる企業が8社(2009 年)存在する。 表 1-1 世界の大手建設企業の総売上高と海外売上高ランキング 金額単位:100 万ドル 08 年 04 年 企業名(国名) 2008年総売 上高 うち海外 売上高 海外売上 比率 1 1 Vinci(仏) 49,901 18,489 37.1%

2 11 China Railway Group Ltd.(中) 34,548 1,337 3.9%

3 2 Bouygues(仏) 34,405 13,567 39.4%

4 15 China Railway Const Corp.(中) 32,417 1,957 6.0%

5 3 Hochtief(独) 29,284 26,181 89.4%

6 17 China State Const Eng’g Corp.(中) 27,659 3,523 14.2%

7 - China Communications Const Grp.(中) 25,965 5,858 22.6%

8 4 Grupo Acs(西) 24,015 5,099 21.2%

9 27 China Metallurgical Grp Corp.(中) 23,314 1,372 5.9%

10 5 Bechtel(米) 21,659 13,984 64.6%

11 23 Fcc,Fomento de Constr,y Contratas(西) 20,561 8,530 41.5%

12 6 Skanska Ab(スウェーデン) 20,283 15,050 74.2% 13 20 Strabag Se(オーストリア) 19,101 15,946 83.5% 14 9 清水建設(日) 19,042 1,967 10.3% 15 8 鹿島建設(日) 17,853 3,727 20.9% 16 24 Fluor Corp.(米) 17,300 9,140 52.8% 17 10 大林組(日) 16,457 3,990 24.2% 18 16 Eiffage(仏) 15,901 3,487 21.9% 19 22 Bilfinger Berger(仏) 15,802 10,757 68.1% 20 21 Balfour Beatty(英) 15,207 6,042 39.7% 21 7 大成建設(日) 14,935 2,853 19.1% 22 29 Leighton Holdings(豪) 13,815 2,052 14.9% 23 13 竹中工務店(日) 13,284 1,332 10.0%

24 19 Royal Bam Group(蘭) 12,988 7,144 55.0%

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海外建設協会の集計によると 2009 年日本の建設企業の海外建設受注実績は 6,969 億円で 前年の 1 兆 347 億円から 33%の大幅減となっており、ここ数年の海外での損失により受注 に慎重になった建設企業が多かったと推察されるが、国内の公共事業費削減や民間設備投 資の低迷もあり、日本の建設企業はインフラ整備の需要が旺盛なアジアを中心に海外事業 を経営戦略上の重要分野の一つとして位置付けていることに変わりはない。 現状でのアジア地域の受注額は、海外建設受注実績のうち、7~8割を占め、アジア地 域での受注動向が海外全体の受注動向を大きく左右し、ひいては会社経営のも多大な影響 がある。

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1-4.我が国の建設現場における業務分担の歴史的変遷

1) 2) 明治維新により我が国は近代化を図る為に、社会基盤の整備が急務となった。そのため の建設事業は、主として内務省(河川、道路、港湾など)、逓信省(鉄道、通信など)陸 海軍省(要塞、軍港、飛行場など)、農商務省(干拓、圃場整備、鉱山開発、発電所など) によって推進された。 内務省および農商務省の後身である農林省では、直営工事が採用された。これらの工事 に民間の業者は、労務提供や資材納入の形で参画した。 逓信省の後身である鉄道省や農商務省の後身である商工省では、請負工事が採用された。 これらの工事に民間の業者は、労務請負(手間請け)や労務資材を含む材工込みの請負の 形で参画した。請負形態の採用は、元請業者に技術や経営の自立を促すのに効果があった。 太平洋戦争終結後(1945 年)戦災復興と米軍基地建設に始まり、朝鮮戦争が契機となっ て経済成長が始まると産業活動を支える電源開発の建設事業が始まった。図 1-7 に下請完 成工事比率(元請完成工事高に対する下請完成工事高の比率)を示す。1960 年代の下請完 成工事比率は 20%台であったものが、高度経済成長をなした 1980 年代に 40%台,バブル期 の 1990 年代には 60%以上にまで到達し,以後下請制度(専門工事業者)の深化がさらに進 んでいくことになったことが分かる。 官庁の直轄工事から労務提供、元請の直傭施工から専門工事業者への建設現場での業務 分担が推移していき、総合建設会社(ゼネコン)と発展した元請会社は管理業務へと業務 内容を変化させていった。 図 1-7 下請完成工事比率の推移(建設業ハンドブック 2010:日本土木工業協会) 総合建設会社の建設活動における専門工事業者への依存度は極めて高くなり、専門 工事 業者からの外部調達が大半を占めるようになった。それ以前のゼネコンで働く技術社員を 例にとれば、働き始めてから 5~6 年間は実践的技術を先輩から後輩へ, 上司から部下への 技術教育・技術移転が充分効率よく実施されていた。当時の専門工事業者の技術者は,ス 下請完成工事比率 0.0 20.0 40.0 60.0 80.0 198 0 199 6 1998 2000 200 2 200 4 2006 2008 (年) (%) 下請完成工事比率 60%以上

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キル的要素は持ち合わせていたが品質管理,安全管理,工程管理などは,総合工事業者の 技術者の指導に依存していた。その当時の総合工事業者の若手技術者たちは自社の密度の 濃いOJT( On the Job Training) によって,専門工事業者をしっかりと指導できる技 術力を身に付け,実践力と応用力を兼ね備えていた。1980 年代に入って建設投資が低迷し ても総合工事業者のOJTによる技術教育・技術移転のシステムは大きく変化することは なかった。しかし,1980 年代中頃から始まったバブル経済期に入ると技術教育・技術移転 の事態は急速に, 且つ大きく変化した。 バブル経済は, 急激な事業量増加をもたらした,1960 年代,1970 年代の建設投資の平均 年間上昇率は 15%程度であったが,1980 年代中頃から始まったバブル経済発生時の建設投 資の上昇率は、これを上回るものであった。1960 年代から 1970 年代の建設投資の上昇期, 建設関連企業は事業量の増加に合わせ,総合建設会社は人材を確保し技術力の維持と向上 を図っていった。しかし,バブル経済発生時に於ける対応はこれとは異なったものであっ た。大部分の建設関連企業は急激な事業量の増加に対して、施工管理実態を大きく変化さ せる方策をとった。所謂,工事の専業化,分業化策による対応である。 我が国の建設産業では資本金 10 億円以上の企業は企業数でみるとわずか 0.3% 程 度し かない。工事の専業化,分業化策の変化はその中でも資本金 100 億以上の大手企業群にお いて顕著に現れた。それまで,大手総合建設会社は専門工事業者と請負契約を結んでいて も,詳細な作業計画立案や資機材調達を自身で行い,専門工事業者(下請企業)を指導し て工事を行う形態をとっていた。 大手総合建設会社の現場技術者はコンクリート型枠や支保工の計画,鉄筋の加工図 の作 成,鋼矢板山留の設計,資機材調達計画,施工機械計画等のほとんどを自身で行い,その 計画に基づいて専門工事業者や下請企業は作業をおこなっていた。 しかし、急激な事業量増加に技術者の確保が追い付かなくなり,それまで総合建設 会社 の現場技術者が行っていた建設技術の根幹ともいえる施工計画に関わる作業を専門工事業 者に任せるようになった。始めは,専門工事業者を指導して“行わせる”形であったが, 次第に“任せる”形になり,最後には“全てやってもらう”形へと変化していった。この 変化は大手企業の間に瞬く間に広がっていった“ゼネコンの商社化”である。 バブル経済に入る前までは,ほとんどの大手総合建設会社は自社で資材や建設機材 を保 有し,資材センターや機械センターを有していた。総合建設会社の現場技術者達は自社保 有の資機材をいかに活用して生産性の高い施工計画を経済的に組み立てることに注力し, これが企業の競争力となっていた。 バブル経済時に起きた総合建設会社から専門工事業者(下請企業)への建設技術の 実行 主体の移行は,主に“要素技術(基礎技術)の移行”であった。 建設プロジェクトの遂行には,総合建設会社自身の保有する,“総合技術力”と“ 要素 技術”が旨く廻って,初めて,クオリティーの高い製品が生み出される。 “要素技術”とは,実際の工事現場にて,コンクリート型枠や支保工の計画,鉄筋 の加

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工図の作成,鋼矢板山留の設計,敷材調達計画,施工機械計画等の施工計画技術と,その 計画に基づいて専門工事業者(下請企業)を直接的に指導する技術を総称したものである。 “総合技術”とは“要素技術”という基盤を持って形成されるものであり,要素技 術を 失うことは総合技術を失う結果となる.我が国の土木分野の総合建設会社は,“総合技術” を自身側に残し“要素技術”の大部分を専門工事業者(下請企業)移行してしまった形と なっている。図 1-8 に元請・下請による役割の変化についての模式図を示す。予って土木 分野の総合建設会社は、大きな技術の空洞を抱える形となり,近い将来に“総合技術”の 消失が懸念される。 図 1-8 元請・下請により役割の変化( 福 元 洋 一 : 高 知 工 科 大 学 大 学 院 修 士 論 文 ) 技 術 の 空 洞 化

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1-5.用語の説明

本論文における用語及び範囲を以下とする。 また、本論文中における“建設企業”とは、特に断らない限り大手建設企業(ゼネコン) を対象とし、土木部門を中心とした記述としている。

1-5-1.プロジェクト

プロジェク トとは、限 られた資源 (人、機材 、資金)を 用いて、定 めた期間で 目的を達 成するもの。 主として組 織の戦略計 画(目的) を達成する 手段として 実施される 一定規模の 計画事業 を指し、その特徴は有期性・独自性にある。継続性・反復性を特徴とする定常業務とは明 確に区別される。

1-5-2.建設プロジェクト

以下、PJ と表す。 対象範囲は 、公共土木 工事をイメ ージしてお り、建設事 業の施工( 建設の具体 化)を行 う建設企業側(Contractor)からの視点での記述となっている。

1-5-3.マネジメント

目的を達成 する為の統 合理念であ り、様々な 視点で将来 からの逆算 を行い。必 要な全て の知識体系に基づいた最善の選択が常に為されるような、一連の決断・実行・見直しの行 為の集約を意味する。

1-5-4.プロジェクトマネジメント

以下、PM と表す。(プロジェクト管理と同義語とする) PM とは、定めた目的(建設の具体化)を達成するためのプロセス(経過)を扱う技術。 目的の業務 、品質、時 間、コスト とステイク ホルダーの 満足を達成 するために 、近代的 な経営手法を用いて、プロジェクト期間にわたって人的・物的資源を指揮し調和を図る技 術とされている。 組織がプロジェクトの目的を達成する為、その目標に最も効果的に到達できるよう にマ ネジャーが常時行う管理運営活動であり、時間、資金および品質についての一定の制限下 で、プロジェクトタイプの仕事を所期の目標どおり完成させることを目的として人・物・ 金・時間等の経営資源や技術・情報などを統一化された思想のもとに計画立案・組織化し、 調整、統制等を行うべく有機的に総合化された一連の技法や運営技術を適用する専門的管 理活動と定義する。

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1-5-5.Personnel Administration (人事管理)

ブリタニカ 国際大百科 事典電子辞 書版による と人事管理 とは、企業 などの中で 職員を最 も効率的に統制し、運用する手続全般をさす、まず要件にかなった者を採用し、適性に応 じた職場に配置する。教育や昇進、賃金などを総合的、組織的に行う。 ここでは、 企業内での 採用から退 職に至るフ ローのなか での従業員 の配置、育 成、処遇 などとする。

1-5-6.PMBOK

プ ロ ジ ェ ク ト マ ネ ジ メ ン ト に 関 す る 国 際 標 準 と し て 、 P M B O K (Project Management Body Of Knowledge) と い う 規 格 で あ り 、 米 国 プ ロ ジ ェ ク ト マ ネ ジ メ ン ト 協 会 ( P M I:Project Management Institute)が 1987 年に発行したプロジェクト管理に関する知識 体系のガイドであり、プロジェクト活動を管理する為の基本的な考え方、手法をまとめた ものである。 図 1-9 にPMBOKの知識管理体系を示す。プロジェクト管理体系に関する知識を分類 し、書類棚に並べたような引き出しに整理している。この書類棚は、知識エリア(縦9段)、 プロセス(横5段)、パート(奥行き3段)の構造で、それぞれのボックスの中にプロジ ェクト管理に関する項目が入っている。 図 1-9 PMBOK の知識管理体系(梅田弘之:実践!プロジェクト管理入門増補改訂版)

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図 1-10 にPMBOKにおける5つのプロセス群の流れを示す。「立ち上げ」→「計画」 →「実行」→「終結」というように流れ、それらと並列して「監視・管理」プロセスが位 置付けられている。 PDCAサイクルにおける「改善」のプロセスは存在しない。その代わりにPDC Aに はない「管理」というプロセスが独立して重要な役割を担っているのが特徴である。PD CAの継続的という考え方が、ともすると「マンネリ」に陥る恐れがあるのに対して、P MBOKは体系的に「コントロール」という機能を強化し、目の前のプロジェクトを成功 させようという性格が強くなっている。PDCAが「長期的展開」に重きを置くのに対し て、PMBOKは「ミッション明確化」という米国的な性格が強い管理手法であるとも言 える。 図 1-10 PMBOK の5つのプロセス群(梅田弘之:実践!プロジェクト管理入門増補改訂版)

1-5-7.Human Resources Management(人材マネジメント)

以下、HRMと訳す。(プロジェクト人的資源管理(Project human resources management) と同義語とする。) 経済・ビジネス用語辞典電子版によると HRM とは“ヒト”“モノ”“カネ”といわれる ように、企業における重要な経営資源であるヒトに関する管理体系の総称であり、採用か ら退職に至るフローのなかでの従業員の配置、育成、処遇、福利厚生などのあり方に加え、 格付け、評価、賃金など関連する人事諸制度を含む。近年では“ヒト”を単なる資源とし て管理するだけでなく、企業の競争優位構築の源泉となる知的資本とみなした管理の重要 性が唱えられている。 ここでは、 プロジェク トを実施す るために必 要な人的資 源の確保、 育成、選任 配置等を 行うことし、外部からの招集もありと考える。 立ち上げ(Initialing) 計画(Planning) 実行(Executing) 終結(Closing) 監視・管理(Controlling)

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確化といった組織運営・システムについても含むものと考える。 PMBOK では、プロジェクトに関与する人々を最も効率的に活用するために必要なプロセス、 計画=要員・組織計画(Organizational Planning) 実 行 = 要 員 調 達 ( Staff Acquisition) プ ロジ ェ ク ト 遂 行 に 必 要 な 人 的 資 源 の 確 保 チームの育成(Team Development)プロジェクト遂行能力のための個人とチーム の能力強化 監視・管理=プロジェクトチームの管理(Controlling) によって構成される。

り、様か主

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1-6.論文の構成

本論文では、我が国の建設プロジェクトにおける人事管理の実態を明らかにし、海外企 業の事例や他産業などとの比較分析(外から内を見る)により、その問題点を洗い出し今 後の対策について提案するものである。 “第1章 序論”では、本研究の背景と目的、用語の説明、本論文の構成について述べ る。 “第2章 建設プロジェクトにおける人事管理の実態”では、国内の建設プロジェクト における人事管理の実態と比較の為に海外での人事管理の実態について述べる。 “第3章 国内他産業におけるヒューマンリソースマネジメントの実態”では、比 較 と して国内他産業の製造業におけるヒューマンリソースマネジメントの実態について述べる。 “第4章 我が国の建設産業における人事管理の問題点”では、第2章及び第3章の比 較・分析を行い、我が国の建設産業における人事管理の問題点を抽出する。 “第5章 新しいヒューマンリソースマネジメントの提案”では、第4章から明らかに なる問題点に対して、建設プロジェクトにおける新しいヒューマンリソースマネジメント の提案を述べる。 『人事管理からヒューマンリソースマネジメントへ』 “第6章 おわりに”では、本研究の要約と筆者の思いを述べる。

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第2章. 建設プロジェクトにおける人事管理の実態

2-1.国内建設プロジェクトにおける人事管理の実態

日本の 2009 年度国内総生産(GDP)は 476 兆円であり、この内建設投資は 42 兆円と なり、GDPに占める割合は 8.9%となっている。建設会社数は、51 万社で全産業事業所 数に占める割合は 8.2%、建設就業者は 517 万人となっている。 日本の建設生産システムは欧米諸国と基本的な考え方が異なっているといわれてい る。 特に、単一民族で極東の島国という地理的条件と鎖国時代も長かったことなどから、その 独特の文化性や建設契約制度についても明治時代に制定された会計法と戦後の公官庁直営 の流れを基本的に受け継いでおり、諸外国とは大きく異なっており近年様々な問題が指摘 されている。 ここでは、それらから派生する人事管理という視点からその実態について述べる。 建設生産の特質は一般的に、一品受注生産、多部品擦り合わせ生産、屋外現場生産 であ る。一品受注生産は、一件ごとの受注により工事の場所、仕様、その他生産条件が異なる などの特質があり、請負契約方式を成立させた。請負契約方式の場合、契約相手の選定方 法(特命、見積り合せ、入札等)や契約履行保証など契約を適切に締結し、履行を担保す るための独特の仕組みが発達してきた。多部品擦り合わせ生産は、多種類の部分的工事を 相互に調整、摺り合わせ、総合し生産物を造るものであり、下請生産方式を成立させた。 下請業者を含めた多数の者による様々な工程を総合的にマネジメントする必要がある。屋 外現場生産に由来する個々の自然条件への対処及び工事の現場内外における安全確保、環 境配慮が施工の品質、効率に大きく影響するため特段重要である。これらの特性があるこ とから、建設業者の施工能力が特に重要となる。 建設業法(第26条第1項及び第2項)で、建設工事を施工する場合には、工事現場に おける工事の施工の技術上の管理をつかさどる者として、主任技術者を置かなければなら ないこととされている。また、発注者から直接請け負った建設工事を締結した下請契約の 請負代金の額の合計が3000万円(建築一式工事の場合は4500万円)以上となる場 合には、特定建設業の許可が必要となるとともに、主任技術者に代えて監理技術者を置か なければならない。 監理技術者等となる為には、一定の国家資格や実務経験を有していることが必要であり、 当該建設業者と直接的かつ恒常的な雇用関係にある者でなければならない。 直接的な雇用関係とは、監理技術者等とその所属建設業者との間に第三者の介入する余地 のない雇用に関する一定の権利義務関係(賃金、労働時間、雇用、権利構成)が存在する ことをいう。恒常的な雇用関係とは、一定の期間にわたり当該建設業者に勤務し、日々一 定時間以上職務に従事することが担保されていることとされ、概ね入札日以前の3か月以 上の雇用関係にあることが必要とされている。これは、技術者と建設業者が双方の持つ技

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術力を熟知し、建設業者が責任を持って技術者を工事現場に設置できるとともに、建設業 者が組織として有する技術力を技術者が十分かつ円滑に活用して工事の管理等の業務を行 うことができることが必要とされている為である。 上記の登録確認機関として、公共機関等(公共機関及び鉄道、電気、ガス等の公益 民間 企業を含む)が発注する工事のうち請負金額500万円以上の工事実績情報サービス(以 下、コリンズ)という。上記の機関等から受注者が「コリンズ・テクリスセンター」に工 事情報を登録し、過去の工事実績や工事成績を一括して管理しており、技術者の専任確認 も確認することができる仕組みとなっている。 また、建設業法第18条に建設工事の請負契約の原則として、「建設工事の請負契 約の 当事者は、各々の対等な立場における合意に基づいて公式な契約を締結し、信義に従って 誠実にこれを履行しなければならない。」と規定され、受発注者間の「信義則」が前提と なっており、当事者だけが理解できる“あうん”の呼吸での対応・処理が当たり前となっ ていた。結果として、当事者だけや換言すれば日本人のみが理解できれば良いというシス テムである。 図 2-1 に日本の建設生産システムを示す。発注者を中心とした2者構造と重層下請構造 が特徴であるといえる。 図 2-1 日本の建設生産システム(土木学会建設マネジメント委員会研究報告書) 上記の産業構造を背景として、ゼネコンでの人事管理は、自社での必要な人材を全 て採 用・調達し、自前で雇用、自前で教育するとして発展してきた。その内容も時代の変化に よる追加事項はあるが、原則的に5管理の個別管理(原価、工程、品質、安全、環境)手 法の内容であり、金太郎飴型のオールラウンドプレーヤーの人事育成方針であった。次ペ ージの表 2-1 はあるゼネコンの教育プログラムの抜粋を示す。

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表 2-1 教育プログラム(建設技術・施工系) フェーズ Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 達成年次(年) 1~ 3 3~ 5 5~ 7 7~ 8 設計力 担当工事の仮設設計計算書の理解と計算内容確認 … … … 担当工事の本設設計計算書の理解と計算内容確認 … … … 施工管理・計画 担当工事の作業手順書・施工計画書の通読と内容の把握 … … … 担当工事の施工計画書に基づく工事実施状況確認報告 … … … 担当工事の資機材・労務の適正な手配と管理 … … … 担当工事の各種記録・報告書・書類の作成 … … … 工程管理 担当工事の工程表に基づいた工程管理の実施と進捗確認 … … … 工程表作成技法の習得 … … … 担当工事の実施工程表の作成 … … … 原価管理 担当工事の資機材・労務単価の確認と把握 … … … 担当工事の工事数量の計算と把握 … … … 作業日誌の作成(歩掛データの収集) … … … 品質管理 ISO9001の内容確認・把握、工事品質計画書通読 … … … 担当工事の品質管理基準の把握(仕様書、示方書、指針) … … … 安全衛生管理 安全衛生管理基準の把握 … … … 工事・安全衛生環境打合せ書の作成 … … … 環境 ISO14001の内容確認・把握 … … … 建設副産物の適正管理方法の把握と管理 … … … 運営能力 報告・連絡・相談の的確な実施 … … … 作業員とのコミュニケーションによる問題点の把握 … … … 教育手法もOJTが中心であり、教育内容やシステムについては、教える側の経験 や方 針で差が生じる一貫性のないOJT中心の教育であった。さらに近年団塊の世代の大量退 職による職員数の激減及び就労者の減少や労働時間短縮などの社会的要請により、技術の 伝承と専門工事業者に移行した基礎技術力の空洞化が叫ばれている。 日本でのプロジェクト管理は、外見上近代的な管理に見えるが実態はかなり異なる 。す なわちそこは、全体的、統合的、システム的な意味での概念が乏しく、各段階で各人に分 割された各機能別管理の独立性が高い。相互にブラックボックスになっていることも多い。 人と人の間柄をベースとする間人主義と企業文化とも言える業務標準(慣習に近い)を背 景として、相互信頼と自己規律でのプロジェクトを運営してきた。これは、柔軟性と普遍 性を持っていると同時に、一方で全体最適化意識あるいは共通意識の欠如や機能別で遅い 意思決定、連帯責任の無責任、純血主義による慣れ合いなどの問題点を持つと言われてい

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2-2.海外建設プロジェクトにおけるヒューマンリソースマネジメントの実態

ここでは、 比較分析す るために諸 外国の建設 産業の実態 と建設プロ ジェクトに おけるヒ ューマンリソースマネジメントの実態を調査する。

2-2-1. 米国建設プロジェクトにおけるヒューマンリソースマネジメントの実態

2-2-1-1.米国の建設産業の実態

米国の 2009 年の GDP は 1,412 兆円であり、この内建設投資は 91 兆円となり、GDP に占 める割合は 6.4%となっている。ここ数年の傾向としては、緩やかながらその割合が増 加 している。建設会社数は、73 万社(2007 年)で全産業事業所数に占める割合は、7.5%(2007 年)、建設就業者は 1099 万人となっている。 図 2-2 に米国の建設生産システムの一部を示す。 図 2-2 米国の建設生産システム(土木学会建設マネジメント委員会研究報告書) 2000 年のデータであるが建設就業者のうち、事務職(アドミニサポート、コンピュータ 関連、設計、財務、弁護士等)が 96 万人、現場労働者が 570 万人となっており内訳は、現 場管理・監督者(Management)45 万人、建設・ボーリング労働者(Construction & Extraction) 452 万人、設備・維持補修労働者(Installation,Maintenance &Repair)39 万人、車両・ 資材運搬労働者(Transportation & Material moving)23 万人、製造労働者(Production)10 万人となっている。 全産業労働者の平均年齢は 38.6 歳であり建設業は 37.2 歳と12産業中10番目となる 比較的若い産業といえる。また、時給も 18.87 ドルと全産業中一番の高給となっている。 売上高に占める各費用の割合は、下請代金が 30%前後、資材代金が 33%前後、社員給料 が 25%前後で推移している。 また、米国建設業界は、日本ほど土木と建築を明確に区別しておらず、石油・交通・電 力関連等といった産業別の分類を用いています。図 2-2 に Bechtel(べクテル)の組織図を A / E : ア ー キ テ ク ト / エ ン ジ ニ ア

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示す。8分野(Civil,Power,Petrochemical,Pipeline,Telecom&Industrial,Metal&Mining, National, Enterprises)に分かれて事業を展開し、建設に当たる「Civil」部門では、 PM(Project Management)/CM(Construction management)が主体であり、計画設計・調達・ 建設の3つの機能(EPC)を兼ね備えている。 図 2-3 ベクテルグループの事業組織(べクテル社ホームページ) 米国の特徴を記載すると、3) ① 契約至上主義 必ずしも建設業だけではないが、欧米では契約が全てといっても過言ではないよう であ る。元請・下請契約のいずれに関わらず、毎日業務をこなしあるいは問題を処理するにあ たっては、契約書に何と書かれているかが基本となり、何か問題が起きた時は、その問題 の解決よりも誰の責任かが関心事となり、日本でよく見られる甲乙協力して問題の解決を 図るという意識は薄いようである。従って常に契約書を意識し、問題が起こった時の責任 回避をいかにするかに重点が置かれることとなる。 最近はこれらの紛争解決の為に、パートナリング(Partnering)契約やディスピュート ボード(Dispute Board:紛争処理委員会)を盛り込むことも見られる。 元請・下請関係においても同様で、下請契約を結ぶことによってその部分の権利と責任・ 義務は下請業者に移行し、元請業者は下手に口出しができない。下請業者が法を犯さず、 また工期に遅れることなく作業を進めている限りはそのやり方等の決定は彼らの権利とみ なされるのである。権利と義務といった契約による活動が基本となっている。 ② プロジェクト毎での採用 米国においては、色々な形態の入札方式があるが、最も一般的なのは自由競争入札 であ る。事前資格審査(EQ)を満足し、ボンド保証さえ確保できれば誰でも入札が可能であ る。(米国は州毎に法律が異なるので、各建設会社は州単位で営業を行っている例が多い)

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入札額のバラツキは大きく最低と最高で10%以上の差があることも珍しくない。 契約による人材確保が容易で、経費を極力抑える為会社の組織としてはできる限り 小さ くしておきたいので、工事の現場担当者はそのプロジェクト毎に採用されることになる。 入手前後で必要な人材をより良い条件で引き抜いてくるのである。一方採用される側も最 も条件の良い仕事はないか常に注意し、ステップアップに必要な資格は自ら取得して経験 と資格でいかに自分を高く売るかを考えます。従って日本でよく見られる会社費用での OJT や OffJT という考えはほとんどない。 またこのように即戦力が求められるので、ほとんどの人が専門職を目指します。例 えば 工事入札のための見積りには、Estimator(エスティメータ)と呼ばれる見積り専門の担当 者がおり、他社へ移る時も積算士として移っていきその道から外れることはまずありませ ん。これも別職種で採用された場合、経験が少ないということで必ず条件が悪くなるから である。その他、工事工程表を専用ソフトにより作成する Scheduler(スケジューラ)と いって工程専門の担当者や安全を専門に担当する安全専任者がいます。大型工事では、安 全専任者に関する資格要件が大変厳しい場合も多く、安全専任者の確保が工事着手の要件 となることもある。彼らも他社へ移る時には、その専門職として移っていきます。 このように して雇われ た人の業務 責任は Job Description という書式に細か く記載さ れており、それに従って各人が仕事を遂行することになる。 ③ その他の特徴 多民族国家でいくつもの州が集まった連邦国家であることに由来するいくつかの特 徴が あります。まず最初に挙げられるのがマイノリティ(少数民族)や女性が経営する小規模 会社の積極的雇用が義務づけられていることです。公共工事においてはこれらの小規模会 社に下請発注するべき最低割合が示されています。 その次の特徴としてユニオン(労働組合)の存在があります。各地域ごとあるいは 職種 ごとにユニオンがあり、原則的には地域・職種・等級が同じであれば給与も同じであり、 各建設会社は関連するユニオンと契約し、そのユニオンに所属する作業員を使って工事を 行います。表 2-2 に資格級の例を示す。ユニオンは作業員の労働条件等に厳しい条件をつ け、要求が受け入れられない時は長期間にわたってストライキにより現場をとめてしまい ます。従って彼らとの交渉は日本では見られない米国独特の重要な現場管理業務に一つと 言えます。 表 2-2 資格級の例 資格級 日本語訳 Master 職長 Craftman 熟練工 Journeyman 職人 Apprentice 見習い

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3番目の特徴として直傭による自社施工の割合が決められていることが挙げられま す。 特に連邦政府の予算が入った公共工事では通常請負金額の50%以上を自社で施工するこ とが求められ、元請はこの条件を満足するために前述のユニオン所属の作業員を自社の従 業員として賃金台帳に登録するとともに、基本的な施工機械は全て自ら保有し施工を行い 作業員の出退勤管理、機械の維持・補修業務等が現場で求められることになります。

2-2-1-2.米国建設プロジェクトにおけるヒューマンリソースマネジメントの実態

ここでは米国の建設プロジェクトにおけるヒューマンリソースマネジメントの実態 につ いて、特に日本との違いについて焦点をあてていきます。 ①Project Manager(以下、PM。所長=現場最高責任者) 現場の最高 責任者とし て広い範囲 の知識と経 験、顔の広 さが求めら れるポジシ ョンであ る。契約主義の米国においてもやはり人と人との付き合いは大事にされ、また比較的頻繁 に会社を変えるので、昔一緒の会社で働いていた知り合いが工事の発注者組織の重要な地 位にいるということもよくある事です。PMは自分の顔の広さ、人脈を用いて対発注者、 対コンサルタント業務をスムーズにし、またマイノリティやユニオンとの交渉も行います。 自社の現場組織要員もPMの人脈で集めることになり、優秀な(顔の広い)PMを 得る ことが即ち全工期を通じて工事の現場運営をスムーズにすることになります。 ②Project Engineer(以下、PE。工務課長) 米国の特徴の一つとして契約至上主義について前述しましたが、そのための契約管 理の キーとなるのがPEです。特に設計変更についてはその手順等が詳しく契約書に明記され ており、その手順や手続きを間違えると設計変更増の権利を失ってしまいます。PEは契 約書の内容、設計図書、自社の見積り条件や工事計画時の条件等を熟知し、現場で当初の 予想と異なる事態が発生したなら、直ぐにそれが設計変更に該当するかどうか評価し、契 約書に規定された期日以内に発注者に設計変更のための通知(Claim Notice)を行わなけ ればなりません。この最初の通知を期日内に出さなかったために権利を喪失することがあ るので、通知後の発注者との話し合い、それが紛争となり調停や裁判に発生した場合の資 料作成等はこのPEが中心となって行われます。

③General Super Intendant(以下、GSI。工事課長、大世話役)

米国の特徴の一つとして、50%以上の自社施工、そのための直傭作業員と自前の施工 機械を挙げましたが、そのためには大部隊を抱えることになり、その総元締めがこのGS Iです。大部隊を効率的に運営していく為に段取り・番割(役割分担)を行います。米国 の重機オペレーターは朝自分の機械の運転席に座ると昼食も休憩も機械に座ったまま取り、 滅多に機械からは降りてきません。GSIは、睨みのきく叩き上げという感じで、彼の腕 次第で現場の施工能率ひいては利益に大きな差が出できます。その業務内容からすると大 世話役と呼んだ方が相応しいかもしれません。その他の職能別業務内容を表 2-3 に示す。

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表 2-3 職能別の業務内容 職能分類 日本での職能 業務内容 General Management 統括業務 安全管理、法務管理、渉外、組織統括管理 Quality Assurance 品質保証 性能・機能の設定、仕様の策定 Engineering 技術 設計管理、実施、品質管理、技術情報管理 Procurement 調達 入札実施、契約管理(契約、購買、クレーム) Project Control 工務 見積、原価管理、工程計画、工程管理 Construction 工事 労務管理、機械管理、資材管理、仮設備管理 Administration 事務 資金管理、出納、OA管理 まとめとして、契約社会の米国では、職場毎、プロジエクト毎の契約形態(流動性 が高 い)が一般的であり、個人も権利と責任・義務の履行に基づき活動している。良い面とし ては OJT 教育がなくても自己努力でのスキルアップした専門職化しており、他方その責任 範囲外や全体最適という視点では行動していない。 日本の現在 の建設産業 構造では、 かなりの部 分を専門工 事業者へ移 転している 部分が多 いが、直轄施工義務部分もあるので基礎技術や契約、雇用、調達、為替に関する知識が必 要である。 技術者は、 何を経験し どんな実績 があるのか 、採用後何 をさせたら よいかを明 確に判断 し、迅速対応できることが重要とされている。

2-2-2. 英国の建設産業の実態

英国のGDPは 2008 年で 277 兆円、建設投資額は 16 兆円,建設業者数が 20 万社,建設 就業者数は 238 万人であり全就業者に占める割合は 8.1%である。 英国の建設 生産システ ムは、近年 の2つのレ ポート(レ イサム、イ ーガン)に 基づく公 共事業改革により、基本的にPFI(Private Financial Initiative)やDB(Design Build)、 プライム方式、フレームワーク式等が用いられている。これらに共通する思想は、VFM (Value for Money)を目的として、発注者の責任分担、請負人グループの責任一極化、長 期的かつ効率的下請けグループの結成(サプライチェーン)にある。 コンサルタ ントは、発 注者の技術 業務全般を 支援するク オンティテ ィサーベイ ヤーとい う職業が社会的に確立している。 英国では、 公共工事に おいて下請 を発注者か ら指定され たる場合、 下請に出す 金額は原 則として受注額と同じであり、元請けは下請の管理に対してフィーを発注者から受け取る 仕組みである。 図 2-4 に英国の建設生産システムの一部を示す。

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図 2-4 英国の建設生産システム(土木学会建設マネジメント委員会研究報告書)

2-2-3. EU諸国の建設産業の実態

EU内の市場統合により、建設労働者、資機材、建設資金の移動が自由化し、為替リス クのない単一市場が誕生した。自国内の企業再編を重視してきた欧州の大手建設企業は、 EU全域を視野に入れた企業の吸収合併、資本提携及び系列化を展開している。 ドイツのGDPは 2008 年で 380 兆円、建設投資額は 18 兆円,建設業者数が 39 万社,建 設就業者数は 387 万人であり全就業者に占める割合は 6.5%である。 フランスのGDPは 2008 年で 297 兆円、建設投資額は 17 兆円,建設業者数が 32 万社, 建設就業者数は 259 万人であり全就業者に占める割合は 7.2%である。 フランスの建設産業の特徴は、自社施工比率の高さである。大手建設企業であって も、 そのグループ内で建設技能労働者を雇用し、建設資機材も保有している。この理由のひと つは、「完成工事の自社施工比率 70%以上」が FNTP(建設企業が加盟する全国的な業界団 体:1946 年より専門能力評価に取り組む)の発行する建設会社の専門能力証明書での重 要 な認証条件であるためと考えられる。フランスでの下請施工比率は公共土木工事で 10%、 建築工事で 15%程度である。次ページの図 2-5 にブイググル―プ(仏)と日本の大手ゼネ コン 35 社の職種別従業員の割合比率を示す。ブイググループで建設部門を担当する「ブイ グコンストラクション」は、建設部門を担当するグループ内の全従業員の 51%に当たる技 能者を直接雇用している。日本の大手ゼネコンは 3%であることが分かる。 PFI 方式 DB 方式 PFI 会社 発注者 発注者 DB 会社 設計 建設 維持 管理 資金 調 達 建設 設計

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図 2-5 職種別従業員の割合比較(CE/建設業界:日本土木工業協会) 企業の系列化については、大規模工事では親会社と仏国内の専門工事業者や材料供 給会 社との系列化と小規模工事においては、親会社と仏国内の地方単位で元請として活動する 地方建設企業との系列化を進めている。これらの模式図を図 2-6 に示す。 図 2-6 ブイググループの系列化(CE/建設業界:日本土木工業協会) 親会社 専門工事業者 (子会社) ①大規模工事 材料供給会社 (子会社) 専門工事業者 (子会社) フランス国内全域(海外においても同様) 親会社 地方建設業者 (子会社) ②小規模工事 地方建設業者 (子会社) 地方建設業者 (系列会社) 1) 連結対象の場合 子会社が生み出す工事収益を連結財務諸表に反映し収益を合算。 2) 連結対象外の場合 系列会社が生み出す工事収益を配当の形で受け取り収益を計上。 発注者 97.0 49.0 3.0 51.0 0% 20% 40% 60% 80% 100% 日本:大手35社計 仏:ブイグ 割合 事務職・技術職 技能職 技能職 3.0 51.0 事務職・技術職 97.0 49.0 日本:大手35社計 仏:ブイグ

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2-2-4. 諸外国の建設産業の実態

海外でのプ ロジェクト マネジメン トは、不確 実性の範囲 を可能な限 り狭めよう とする前 提で、プロジェクトを推進するに必要な機能や行為を全て包含し、統合と機能別管理を多 面的に合成するとともに、それぞれの独立性と総合性を合せ持たせようとしており、独立 した個人をベースに、その集積を図るとともにトップダウン的な指示系統による徹底した 合理主義の思想となる為、各管理項目や各機能を詳細にマニュアルや規定等の記述し、プ ロジェクトマネジャーが責任を持ってトップダウン的に全体を管理し、最も重要な戦略的 プロセス、相互依存性、スコープマネジメントを明確にして、プロジェクトの全体目的を 達成しようとする方法論を取っている。 合理性追求を基本である化学的手法を可能な限り導入しリスクの最小化をめざしている。 それゆえ、諸外国では契約を中心とした工事執行が常態化しており、PJ に関わる一人ひ とりが責任と権利を常に認識し、保有する専門見識と適用能力をタイミングよく発揮する プロフェショナルとして行動できる。それゆえ専門性を重視するシステムとなっている。 これにより 雇用も契約 によるので 、条件によ り少しでも 良い条件を 異動し、ス キルアッ プも自らが進んで身に付ける努力を行っている。 また、直轄 施工分があ り、基礎技 術力も必要 とされてい ることで、 技術伝承を 図ってい る。表 2-4 にプロジェクトマネジメントのシステム要素の比較表をまとめる。 表 2-4 プロジェクトマネジメントのシステム要素の比較 近年、諸外国において契約に関する過度の訴訟依存による工期・価格・品質の悪化 の反 省から、互いに共通の改善目標を持って、継続的な効率性の向上を図っていく仕組みとし て、Partnering(パートナリング)が導入されつつある。 項目 日本 欧米 人的資源 終身雇用 施工重視型技術者 相互扶助・ロイヤリティー重視 プロジェクト雇用 PM/施工分業型技術 権利・義務意識 プロジェクト執行形態 施工請負中心 2社構造 調達指向 多様な契約形態 3者構造 プロジェクト達成指向 意志決定構造 自発・協議型 責任・権限明確化型 業務手順 口頭型 ボトムアップ型 調 達 物 の ア カ ウ ン タ ビ リ テ ィ ー 重視 マニュアル型 トップダウン型 PM のアカウンタビリティー 重視

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なるところが多いが、このようなパートナリングの考え方が一般的に導入されるようにな れば、欧米企業と比較し、我が国建設企業の弱点とされてきた交渉、クレーム処理能力の 問題も自ずと解決されることとなる可能性もある。 一例を上げ るとワーク ショップと いうコンセ ンサスを形 成していく ツールに加 えて、タ ーゲットコストという概念を導入し、リスク要因を積み上げうえでそれに伴うコストを見 込んだ総コストを見込んでいくものである。ただ、リスクシェアの配分ルールや透明性、 恣意性などへの批判などをどう排除していくかが課題でもある。 今後日本に おいても、 このパート ナリングや ディスピュ ートボード (紛争処理 委員会) に必要な新たな知識が、建設企業にも必要かつ重要なスキルとなると考えられる。

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第3章. 国内他産業におけるヒューマンリソースマネジメントの実態

国内の他産業でのヒューマンリソースマネジメントの実態について調査・分析する 。対 象としては、製造業で海外でも成功しているトヨタ自動車などを取り上げ、役割分担の歴 史的変化や国際化のためにHRMをどう変遷させたかを研究する。

3-1. 自動車産業のヒューマンリソースマネジメントの実態

自動車工場での生産方式は、写真 3-1 に示す歴史的に有名な米国のフォード社により実 用化されたライン方式に始まり、ゼネラルモーターズのマーケティング手法を導入した複 数ブランドからなる多種多様な車種を供給するフレキシブル大量生産方式に移行し、近年 では日本のトヨタ自動車などのリーン生産方式が主流となっている。 写真 3-1 フォード社(ライン生産方式)(フォード社ホームページ)

リーン生産方式(lean manufacturing、lean product system)とは、日本の自動車産業 における生産方式(主にトヨタ生産方式、写真 3-2)を米国のマサチューセッツ工科大 学 (MIT)が研究し、再体系化した生産管理手法の一種であり、製造工程におけるムダを排除 することを目的として、製品および製造工程の全体にわたって、トータルコストを系統的 に減らそうとするのが狙いの生産方式である。このムダを「”会社と言う名の巨人”につ いた贅肉」と見立て、「贅肉のとれたスリムな状態」で生産活動を行うことを目指す生産 方式として構築された。そして「贅肉のとれた」の意である英単語の lean(リーン)を用 いてリーン生産方式と命名された。つまりムダの無い生産方式という事である。そのうち、 トヨタ生産方式では7つのムダを定義し、それらを減らす・無くすことに注力する為に、 ジャストインタイム生産システムなどを開発・採用した。

図 1-10 にPMBOKにおける5つのプロセス群の流れを示す。「立ち上げ」→「計画」 →「実行」→「終結」というように流れ、それらと並列して「監視・管理」プロセスが位 置付けられている。  PDCAサイクルにおける「改善」のプロセスは存在しない。その代わりにPDC Aに はない「管理」というプロセスが独立して重要な役割を担っているのが特徴である。PD CAの継続的という考え方が、ともすると「マンネリ」に陥る恐れがあるのに対して、P MBOKは体系的に「コントロール」という機能を強化し、目の前のプロジェクト
表 2-1 教育プログラム(建設技術・施工系)  フェーズ  Ⅰ  Ⅱ  Ⅲ  Ⅳ  達成年次(年)  1~ 3  3~ 5  5~ 7  7~ 8  設計力  担当工事の仮設設計計算書の理解と計算内容確認  …  …  …  担当工事の本設設計計算書の理解と計算内容確認  …  …  …  施工管理・計画  担当工事の作業手順書・施工計画書の通読と内容の把握  …  …  …  担当工事の施工計画書に基づく工事実施状況確認報告  …  …  …  担当工事の資機材・労務の適正な手配と管理  …  …  …
表 2-3  職能別の業務内容 職能分類  日本での職能  業務内容  General Management  統括業務  安全管理、法務管理、渉外、組織統括管理  Quality Assurance  品質保証  性能・機能の設定、仕様の策定  Engineering  技術  設計管理、実施、品質管理、技術情報管理  Procurement  調達  入札実施、契約管理(契約、購買、クレーム)  Project Control  工務  見積、原価管理、工程計画、工程管理  Construction
図 2-4  英国の建設生産システム(土木学会建設マネジメント委員会研究報告書) 2-2-3. EU諸国の建設産業の実態    EU内の市場統合により、建設労働者、資機材、建設資金の移動が自由化し、為替リス クのない単一市場が誕生した。自国内の企業再編を重視してきた欧州の大手建設企業は、 EU全域を視野に入れた企業の吸収合併、資本提携及び系列化を展開している。  ドイツのGDPは 2008 年で 380 兆円、建設投資額は 18 兆円,建設業者数が 39 万社,建 設就業者数は 387 万人であり全就業者に
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