九州大学学術情報リポジトリ
Kyushu University Institutional Repository
地震火山観測研究センター年報 : 2009 年度版
九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター
Institute of Seismology and Volcanology, Faculty of Sciences, Kyushu
University
https://doi.org/10.15017/18908
出版情報:九州大学大学院理学研究院附属地震火山観測研究センター年報. 2009, 2011-01. 九州大学大 学院理学研究院附属地震火山観測研究センター バージョン:published 権利関係:地震調査委員会,地震予知連絡会,火山噴火予知連絡会への提出資料
地震調査委員会資料 第 195 回(2009 年 4 月 9 日) ・2009 年 4 月 5 日に日向灘で発生した地震(Mj5.6)について (※) 第 198 回(2009 年 7 月 9 日) ・2009 年 6 月 25 日に大分県西部で発生した地震(M4.7)について ・2009 年 6 月 28 日に長崎県大村湾で発生した地震(M4.4)について (※) 第 198 回(2009 年 10 月 8 日) ・大分県西部の地震活動について (※) 地震予知連絡会資料 第 183 回(2009 年 8 月 21 日) ・2009 年 6 月 25 日に大分県西部で発生した地震(M4.7)について ・2009 年 6 月 28 日長崎県大村湾で発生した地震(M4.4)について ・2009 年 8 月 3 日熊本県芦北地方で発生した地震(M4.9)について 火山噴火予知連絡会資料 第 113 回(2009 年 6 月 18 日) ・ 雲仙岳周辺における傾斜変動 ・ 雲仙岳北麓における全磁力変化 ・ 平成新山ドームの噴気ガス温度変化 ・ 雲仙火山における地下水観測 ・ 雲仙火山における温泉観測 ・ 阿蘇火山における温泉観測 第 114 回(2009 年 10 月 5 日) ・ 雲仙岳周辺における傾斜変動 ・ 雲仙岳北麓における全磁力変化 ・ 平成新山ドームの噴気ガス温度変化 ・ 雲仙火山における地下水観測 ・ 雲仙火山における温泉観測 ・ 阿蘇火山における温泉観測 第 115 回(2010 年 2 月 2 日) ・ 雲仙岳周辺における傾斜変動 (※) ・ 雲仙岳北麓における全磁力変化 (※)・ 平成新山ドームの噴気ガス温度変化 (※) ・ 雲仙火山における地下水観測 (※) ・ 雲仙火山における温泉観測 (※) ・ 阿蘇火山における温泉観測 (※) 火山噴火予知連絡会会報 第 100 号 阿蘇火山における地球化学的観測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・65-67 雲仙岳火山活動状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・71-73 第 101 号 阿蘇火山における地球化学的観測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・109-111 雲仙岳火山活動状況・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・112-114 第 102 号 阿蘇火山における地球化学的観測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・156-158 雲仙岳火山活動状況(2008 年10 月 2009 年1 月)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・165-171 第 103 号 阿蘇火山における地球化学的観測・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・99-101 雲仙岳火山活動状況(2009 年 2 月 2009 年 6 月)・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・102-105 (※) 掲載資料
2009 年 4 月 5 日に日向灘で発生 し た地震(Mj5.6)につ いて
平成 21 年 4 月 9 日 開催 地 震調査 委員会 資料 九州大学 地震 火山観 測研究 セン ター 2009 年 4 月 5 日 18 時 36 頃、宮崎市西方の沖合およそ 60km 付近を震央とする M5.9(Mj5.6) の地震が発生し、宮崎市で最大震度4を観測した。また、18 時 53 分頃に最大余震である M4.5(Mj4.2)の地震が発生し、最大震度1を観測した。図 1 に、本震と最大余震の震源の位置と、 初動の押し引きより求めた発震機構解を示す。震央は海域であるため、震源の深さの精度はやや 落ちるが本震の深さは両方とも 15km 付近に求まっている。発震機構解は低角逆断層型を示すこ とより、沈み込むフィリピン海プレートとユーラシアプレートとのプレート境界で発生した地震 であると考えられる。なお震央付近のプレート境界の深さは、構造探査の結果などより 15km か ら 20km であると推測されている。 下記の震源分布図で示した震源の丸の直径は宇津(1961)による余震域の長径である。今回の地 震は 10km 程度の範囲が震源域と考えられる。最大余震はその破壊領域の端の部分に位置してい る。 この付近では、1996 年 10 月 19 日に Mw6.8、1996 年 12 月 3 日に Mw6.7 のプレート境界型 地震が発生しており(図 2 の赤星印)、これらの地震による地震時の滑り分布と余効滑り分布が Yagi et al. (2001) などにより求められている。今回の地震(黄色星印)とその図を修正加筆した ものとを重ねると下記のようになる。地震時滑りは最大滑り量の半値幅で塗りつぶしてある。こ の図を見ると、今回の地震は 1996 年 10 月の地震の地震時に滑った領域の北縁部に位置しており、 極めて両者は近接していることが分かる。 図 1. 2008 年 4 月 5 日から 2009 年 4 月6 日までの日向灘における震源分布図。赤丸 は今回の地震の本震と最大余震を示す。発 震機構解は下半球等積投影。 図 2. 1996 年 10 月(Mw6.8)と 1996 年 12 月 (Mw6.7)の震央(赤星印)と今回の地震(黄星 印)の震央の比較(Yagi らの図を修正加筆)。 コンターは Yagi らによる地震時滑りと予効 滑り分布を表す。地震時滑りについては最大滑 り量の半値幅で塗りつぶしてある。大分県西部の地震活動について
平 成21 年 10 月 8 日開催 地震調査委員会資料 九 州 大 学 地 震 火 山 観 測 研 究 セ ン タ ー 2009 年 6 月 25 日 23 時 03 頃、大分県西部の日田市を震央とする M4.7 の地震が深さ 11km 付近で発生し、日田市などで震度4を観測した。また、8 月 31 日にはこの地震の東側で M4.1 の地震が発生した。九州大学地震火山観測研究センターではこれら一連の地震活動を詳細 に調べるために6 月 26 日より震央域周辺に臨時観測点を5カ所設置し、このうちデータの 取得出来た3カ所のデータも用いて解析を行った(図1)。臨時点の含まれている解析期間 は6 月 26 日から 7 月 28 日である。 6 月 25 日から 10 月 7 日までの地震について、手動検測で読み取り観測点数が 10 以上の 地震 439 個を用いて JHD 法により一次元地震波速度構造を求めた。その構造を用いて DD 法により求めた震源分布と、初動極性より求めた主な地震の発震機構解を図2に、時空間 分布を図3に示す。およそ N70 80 E(4 5km の広がり)の走向で南東方向に傾斜した 面に集中して発生している。M3.5 以上の地震の発震機構解については、震源分布の西側で 正断層型、東側で横ずれ断層型の解が求まっている。 図1:大分県西部周辺の観測点配置図。赤三角が今回使用した臨時観測点(3カ所)。 黒三角は九州大学のテレメータ観測点。+印は他機関の観測点。図2:DD 法により求めた震源分布と 初動極性より求めた発震機構解(下半 球等積投影)。 )) 図3:2009 年 6 月 25 日 10 月 7 日 の時空間分布図。
2009 年 6 月 28 日長崎県大村湾で発生した地震(M4.4)について
平 成21 年 7 月 9 日開催 地震調査委員会資料 九 州 大 学 地 震 火 山 観 測 研 究 セ ン タ ー 2009 年 6 月 28 日 09 時 35 頃、長崎県大村湾を震央とする M4.4(Mj4.0)の地震が深さ 10km 付近で発生し、長崎市・大村市などで震度3を観測した。6 月 28 日から 7 月 3 日までの地 震について、手動検測で読み取り観測点数が10 以上の地震 57 個を用いて JHD 法により一 次元地震波速度構造を求めた。その構造を用いてDD 法により求めた震源分布と、初動極性 より求めたM3.0 以上の地震の発震機構解を図1に、時空間分布を図2に示す。 震源はほぼ東西に並んでいるように見えるが、2km 以内の範囲に集中して分布している ためあまり定かではない。発震機構解については、本震、最大余震などは正断層型の地震 であったが、6/28 10:14 に発生した地震は横ずれ断層型であった。 九州大学地震火山観測研究センターではこれら一連の地震活動を詳細に調べるために震 央域周辺に臨時観測点を3カ所設置した(図3)。6/28 に余震域の東部に設置し、6/30 に長 崎空港、そして、7/1 に余震域の南東部に VSAT を用いたテレメータ観測点(図1の OMIQ) を設置した。今後これらのデータを用いてより詳細な解析を行う予定である。 図 1:DD 法により求めた震源分布と 初動極性より求めた発震機構解(下半 球等積投影)。 )) 図2:2009 年 6 月 28 日 7 月 3 日ま での時空間分布図。図3:長崎県大村湾周辺の観測点配置図。赤三角が今回設置した観測点。黒三角は九
-20 -15 -10 -5 0 5 10 15 20 25 NS EW Tilt (microradian) E down N down 地震による飛び 山領 降雨の影響 降雨の影響 地震による飛び 1992 1997 2002 2007 -30 -20 -10 0 10 NS EW 礫石原 Tilt (microradian) N down E down 地震による飛び 地震による飛び 地震による飛び 1992 1997 2002 2007 -15 -10 -5 0 5 10 15 NS EW Tilt (microradian) E down N down 日向灘地震による飛び 山の寺 福岡県西方沖 地震による飛び 1992 1997 2002 2007 -30 -25 -20 -15 -10 -5 0 5 1992 1997 2002 2007 N down E down 1000 500
Monthly Rain(mm) at UWS,JMA
Tilt (microradian) 池の原 地震による飛び 地震による飛び 島 原 半 島 千 々 石 湾 有 明 海 3 2 5 0 3 2 4 0 13 0 10 13 0 20 礫 石 原 (KR E) 池 の 原 (I K E) 山 寺 (Y TE ) 山 領 (Y ME ) 平 成 新 山
九州大学地震火山観測研究センター
降雨の影響が多少見られるが,特に火山活動に関連すると思われる 変動はない.雲仙岳周辺における傾斜変動
九州大学地震火山観測研究センター
第115回火山噴火予知連絡会単純差では約0.8nT/yrの増加傾向が見られる.さらに両地点には 1度05分の伏角の違いがあり,最近の九州地方の地磁気永年変化 の影響を受けている. 46600 46700 46800 46900 47000 46350 46450 46550 46650 46750 全磁力 1992 1997 2002 2007 proton2 (nT) proton1 proton2 -320 -316 -312 -308 -304 -300 1992 1997 2002 2007 全磁力差 (nT) 全磁力差(単純差) -1 0 1 2 3 全磁力差 1992 1997 2002 2007 全磁力差(nT) P2 - P1*1.01 - 0.80*yr + 857 全磁力を30日間の移動平均値を用いて,ばらつきが最小になるように 係数を決めて差を求めた.また0.8nT/yrの経年変化を差し引いた. 2000年ごろより全磁力差が減少し,帯磁傾向が見える
雲仙岳北麓における全磁力変化
九州大学地震火山観測研究センター
第115回火山噴火予知連絡会0 100 200m カルデラ縁 島の峰 霧氷沢 崩落堆積物 古い溶岩 の残骸 11 A点(透明) C点(透明) E点(高温・透明 刺激臭) D点(透明) 溶岩ドームの主な噴気分布 (中田節也(5/19/95)の図に加筆) 破砕された溶岩か らなる台地 G点( 明透 ) N F点(透明) スパイン ●噴気ガスの温度は順調に低下している.2008 年秋以降は最高温度が摂氏 200 度を下回っており, 2009 年 11 月 18 日測定での最高温度は E 地点の摂氏 165 度であった. ●E 点は活動末期に隆起した尖頂(Spine)の西側の根元にあり,マグマの湧き出し口(旧地獄跡火口) の直上にある.以前見られたモリブデン化合物は見られず,現在は硫黄の昇華物のみ肉眼で確認される. ●青白いガス(主に二酸化硫黄)や刺激臭のガスの量もしだいに減少している.
●E 点における北川式検知管による測定では,CO₂ 2500-2800ppm, SO₂ 8ppm, HCl 90-100ppm であり, H₂S は検出されなかった.
Temperature
九州大学地震火山観測研究センター
第 115 回火山噴火予知連絡会