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ている さらに, 施設内通貨等を用い利用者自 身が目標に向けて能動的に取り組めるように促 す工夫も行っている 次に, 実際の事例を通して通所介護計画の立 案, 支援の内容, 結果等を紹介する 例 歩いて自宅に帰る ことを目標とした事例 Fさん,60 代, 男性 現病歴 : 脳出血 ( 右片麻痺, 失

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Academic year: 2021

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通所介護計画を立案する上で心がけていること

 平成27年4月に介護保険制度の改正が行われた。指定居宅サービスの介護報酬につい ても利用料の減算等の改定が行われている。しかし,「個別機能訓練加算(Ⅰ)」「個別機 能訓練加算(Ⅱ)」についてはプラス改定となっている。これは,国が我々に対して,介護 保険を通してより利用者の自立支援に資するサービスを提供するよう期待しているためで あると思う。具体的には,「身体機能に偏りがちであった支援内容から,活動と参加に焦点 を当てたリハビリテーションへと意識を向けてください」というものであると解釈してい る。これを踏まえて個別機能訓練加算の内容を確認してみると,個別機能訓練加算(Ⅰ) では身体機能の向上が目的とされているのに対し,個別機能訓練加算(Ⅱ)では「ADL及 びIADLの状態を把握し,日常生活における生活機能の維持・向上」が目的とされている。  このことを踏まえ,実際の現場で通所介護計画書を立案する上で心がけていること は,単なる身体機能の向上を目標とするのではなく,その先の利用者の生活を見据えて 機能訓練を行うことである。そして,少しでも利用者に自立した生活を送っていただく ために,運動機能の向上のみではなく,生活機能の維持・向上につながる内容のサービ スを提供することが重要である。例えば,「自宅での入浴の際に浴槽へのまたぎ動作が できない。よって,それを改善するための下肢筋力を強化していく」というように,活 動・参加的な要素から身体機能の練習を選択していく。  また,デイサービスで利用者とかかわっている中で,次のようなことが感じられる。 要支援や比較的活動的な利用者については,マシーントレーニングや自主練習等のメ ニューでも生活機能の維持・向上が見られる。これに対して,中重度の利用者について は,これらの運動のみでは現在の機能の維持はできても,思うような活動・参加の向上 にはつながらない。つまり,自立支援につながるサービスを提供していくためには,身 体機能の向上を図るだけでなく,その能力を定期的に発揮する機会を設けることが必要 となる。当事業所でも,マシーントレーニングや自主練習を提供しているが,それに加 え目標とする「活動」「参加」の内容ないしそれに類似した動作を用いる練習を提供し

株式会社シンパクト ケアサポートメロン

個別機能訓練(Ⅰ)生活機能の

向上に焦点を当てた実践事例

元田真一

 所長/作業療法士 1989年作業療法士の免許を取得。病院での勤務を経て, 1998年より「地域」という新たなフィールドで勝負している。病 院と違い,地域にはさまざまな「活動と参加」があり,それに応 じた笑顔がある。その笑顔の生まれる過程をサポートしている。

山下翼

 理学療法士 理学療法士の免許を取得して約4年になる。地域 の現場で利用者の生活を支える手助けをしたいと いう思いでデイサービスを選んだ。今回,当事業 所での個別機能訓練への取り組みを紹介する。

特 集 2  ケ ア マ ネ ジ メ ン ト ケ ー ス ス タ デ ィ 編

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ている。さらに,施設内通貨等を用い利用者自 身が目標に向けて能動的に取り組めるように促 す工夫も行っている。  次に,実際の事例を通して通所介護計画の立 案,支援の内容,結果等を紹介する。

「歩いて自宅に帰る」ことを

目標とした事例

Fさん,60代,男性

●現病歴:脳出血(右片麻痺,失語症),高血圧症 ●性格:努力家,頑固 ●家族構成:本人,妻,子ども3人(同居は妻 のみ) ●キーパーソン:妻 ●利用までの経緯:脳出血によって回復期リハ ビリテーション病院に入院する。退院時,車 いすでの自宅復帰を勧められた。しかし,F さんの「歩いて帰りたい」という思いや,家 族の介護に対する不安から,「自宅に歩いて 帰る」ということを目標に当事業所の利用開 始となる。また,同時に併設の有料老人ホー ムに入所する。 ●身体機能・心身機能…右上下肢の片麻痺,感 覚障害(重度),注意障害,運動性失語(単語 も聴き取りにくい)。ぶん回し歩行,反張膝(4 点杖,金属支柱付き短下肢装具使用)があり, 長時間の歩行で膝関節に痛みが出現する。

居宅ケアプランに基づいた

通所介護計画書の立案

ケアマネジャーの立案した居宅サービス計画書 のニーズと目標 ニーズ①:在宅復帰への意欲が高いため,復帰 に必要な準備を行っていく 目標:家族介護に対する負担を除去することが できる ニーズ②:物忘れ,注意力の低下,興奮してし まうことがあるため,穏やかに安全に過ごせ るようにしていく 目標:毎日穏やかに生活することができる ケアマネジャーとの合意目標:自宅へ戻るため の適切な練習と環境の整備を行っていく  以上のサービス計画書とFさん・妻の要望を 基に,通所介護計画の立案を行った(資料1)。  計画書の立案に当たり当事業所で使用してい るアセスメントシートでは,利用者の基本情 報,身体・心身機能,日常生活自立度,家屋形 態に加え,趣味趣向,性格,職歴等の利用者の 背景まで把握するようにしている。利用者の生 活につながる計画書の立案には,身体機能等の 表面に見える情報のみではなく,さまざまな情 報の収集が必要となる。これらを踏まえて,自 宅での活動や参加をイメージした練習を提供す ることで,利用者自身も同じ目標に向けて,受 動的な運動ではなく,(自己決定の上で)能動 的に運動に取り組むことができる。  本事例の通所介護計画書の立案においてポイ ントとしたのは,「自宅で安全に生活を送るた めには何が必要か?」ということである。必要 なことを確認するために,本人と自宅に同行 し,家屋環境の調査,動作の確認を行った。デ イサービスでは,自宅への訪問が行いやすく, 利用者の実生活を評価しやすいことが強みであ る。評価の結果から,移動能力の向上(屋内移 動,自宅内の段差,生活の場),ADL動作(排 泄,入浴)の安定,コミュニケーションの向上 を目標に通所介護計画書を立案した。

事例

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個別機能訓練の実践

 ここからは,当事業所内でFさんと一緒に取 り組んだ訓練内容について紹介する。

最も注意すべきは転倒・骨折

 本事例において,Fさんが自宅で安全に生活 を送る上で特に注意しなければならないこと は,転倒である。特に,骨密度が低下した麻痺 側は骨折しやすく,その中でも大腿骨頸部骨折 は寝たきりの原因となる場合もあるため,十分 に気をつけなければならない。本事例の場合, 歩行の際に麻痺による筋力低下,注意障害(周 【個別機能訓練加算Ⅰ】 マシーントレーニング ・ヒップアブダクション 6kg ・レッグプレス 10.0kg ・ローイング 3kg ・ニューステップ 負荷1 ・レッグエクステンション 30N プーリー 起立訓練 バランス訓練・階段 歩行練習(平行棒内) 徒手練習(麻痺の改善) 【個別機能訓練加算Ⅱ】 言語練習 ・コミュニケーション練習 脳トレ ・注意力アップの練習 入浴練習 ・洗髪,洗体の練習 ・浴槽のまたぎ練習 【リラックス】 ・アクアタイザー ・スーパーカイネ 〈解決すべき課題(目標)〉 ・転倒せず安心して家での生活を継続することができる ・病状が安定し再発の防止ができる(薬の管理等) ・他者とふれあい活動的な生活ができる 〈長期目標〉 ①転倒することなく安全に歩くことができる(風呂も含めて)。 ②自宅での趣味や役割(簡単な家事等)を見つけることができる。 〈本人・家族の希望〉 【本人】 歩いて家に帰りたい 〈短期目標〉 ①通所内を右脚をぶつけることなく移動できる。 ②自発的に簡単な言葉での意思疎通ができる。 ③趣味活動(囲碁・将棋)に参加し他者と交流が持てる。 ① ② ③ 6回/週 月∼土 10:00 ∼ 15:30 療法士 看護師 介護士 ・体調の管理 ・バイタルサイン確認 ・内服の確認 趣味活動 ・囲碁 ・将棋  など 野外活動 イベント ・季節のイベント ・外出イベント ・バイタルサインの変動に注意し ます。 ・移動は杖を使って歩いていただ きます。また,まだ転倒の危険 があるため,移動時は職員が付 き添います。 ・移動時は右側に注意していただ くよう声掛けを行います。 ・趣味活動への参加のお声掛けを 行います。 ・趣味活動は注意力アップの目的 でも提供していきます。 ・自宅での生活の様子や,自宅ま たは自宅周囲の環境について定 期的に評価を行います。 ※上記の計画書に基づきサービスを提供いたします。 ※提供するサービス内容に変更があった場合,新しい計画書を作成いたします。 ※短期目標期間終了時のモニタリングの際,計画の見直しの必要がない場合は長期目標の実施期間まで短期目標を継続と致します。 ご本人・ご家族への説明と同意 〈個別援助内容(機能訓練・運動器機能向上計画を含む)〉 短期目標 PT・OT・STが実施する内容 看護・介護が実施する内容 留意事項 頻度 担当 日付 サイン 平成   年   月   日 日付 平成   年   月   日 サイン 利用者氏名 住所 F  様 要介護度生年月日 M ・ T ・ S  26年  月  日要介護3 作成者氏名   山下 翼 作成年月日   平成  27年  10月  1日 認定の有効期間      ∼      作成者氏名 山下 翼 資料1

Fさんの通所介護総合計画書

・自宅へ歩いて帰りたいという思いが強い ・ぶん回し歩行によるけがが懸念される ア マ ネ ジ メ ン ト ケ ー ス ス タ デ ィ 編

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囲に注意を払うことが苦手)により右下肢がぶ ん回し歩行になり,施設内でもいすや壁に足を ぶつける場面が多く見られた。さらに,感覚障 害により足の位置の認識が不十分なため,激し くぶつけてしまい,けがや転倒のおそれがあっ た。よって,ぶん回し歩行の改善を最初の目標 として設定した。  本事例の場合,ぶん回し歩行の主な原因とな る機能障害は,片麻痺,筋力低下,感覚障害で ある。また,麻痺の影響により反張膝が出現し ていた。反張膝は放置しておくと,膝の変形や 痛み等の弊害が出現してくる。60代という年 齢から,今後の生活も考慮するとぶん回し歩行 と同時に対処していく必要がある。

目標とする生活動作を意識した運動

 前述の身体機能の改善のために提供した個別 機能訓練加算(Ⅰ)に分類される内容は,マ シーントレーニング(①レッグプレス,②レッ グエクステンション,③ヒップアブダクショ ン)や自主練習(スケートボード),徒手練習 等である。  ①,②については,膝の伸展筋力の増強,膝 関節の安定化による,反張膝の軽減を目的に提 供した。実施する上では,歩行時の膝の筋肉の 働きに近い動きを意識して行ってもらった。具 体的には,膝を伸ばす時より曲げる時にゆっく りと意識することである。マシーントレーニン グは見た目にも運動している感じがあり,利用 者も好んで使用することが多く,設置している デイサービスも多くなってきている。しかし, 正しい方法で行わなければ十分な筋力はつかず, 場合によってはけがを負わせてしまうこともあ る。さらに,ただマシーントレーニングを行っ ていても,利用者自身の生活の向上にはつな がっていかない。よって,目標とする生活動作 をより意識して行ってもらうことが大切である。  ③については,股関節外転筋力の向上から膝 関節の安定化を目的に提供した。股関節外転筋 は歩行の際に,膝の安定化を助ける働きがあ る。自主練習(スケートボード)については, 当事業所内で木工が得意な利用者と一緒に作成 したものである(写真1)。麻痺側と非麻痺側 を同時に動かすことで,麻痺により低下した下 肢の動きを促進する目的がある。直接的な援助 としては,Fさんの自宅での主たる生活の場が 畳間であるため,立位から床座位までの立ち座 りの練習を行った。  運動の配分についても,受け身となりがちな 徒手訓練などの直接的な援助は極力最小限にと どめ,自分で行う能動的な練習を多用した。こ れも,機能訓練に偏重した考え方を取り除くた めにとても大切なことであり,当事業所でも力 を入れているところである。 写真1 スケートボードを使った運動

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運動量を増やす工夫

 これらの訓練の成果を実際に発揮する場とし て,屋外歩行練習や階段昇降(1段20cm)を 提供した。屋外での歩行は路面が悪かったり, 車や歩行者がいたりと慣れた屋内を歩くより難 易度の高い練習である。さらに,階段について もFさんの自宅にある段差より高い段差での練 習となっている。このような難易度の高い練習 を提供することで,普段の生活の場ではより安 定した動きができる。  しかし,本事例のように短時間に高負荷の運 動(連続での歩行等)を行うと痛みが出現して しまう方も多い。よって,そのような方に対し ては,少ない負荷の運動を頻回(少量頻回の運 動)に提供する方が効果を得やすいとされてい る。そのため,当事業所の中で過ごしていただ くことで自然と運動が行えるような工夫を実践 している。例えば,介助歩行が可能な方は車い すを使わず歩いていただく,洗面台にて立位で 整容を行う(写真2),昼食の配膳(写真3) 等である。普段,車いすで移動している方や 座っていることが多い方にとって,立位や歩行 を行うことはそれだけでもリハビリテーション (以下,リハビリ)となる。  これについては,利用者は療法士に触れても らうことをリハビリととらえ,触れてもらえない 自主的な練習はリハビリと思っていない場合が あるため,十分な説明と同意が必要である。ま た,デイサービス内の環境づくりを行うことも大 切であると考える。本事例においても,環境づ くりにより入院中と比較すると歩行距離だけで も約3倍(当事業所:約300m,病院:約100m) の運動を提供することができた。このように,1 日の生活を通して運動を提供することができる のもデイサービスならではの強みだと考える。

支援の結果

 本事例では,歩行能力の改善に着目して支援 を行ってきた。結果として,利用当初は歩行練 習(施設内)時,1回の練習中に右足をぶつけ た回数が平均13回でふらつきもあったが,最近 の練習ではぶつけることもふらつきもなく歩行 できている。また,装具についても主治医より プラスチック短下肢装具の許可が出た。そして, うれしいことに11月末にて併設の有料老人ホー ムを退所し,自宅に帰ることが決まった。  「自宅に戻りたい」という思いが強かった本 事例では,生活期における参加に対するアプ 写真2 立位での整容 写真3 昼食の配膳 ケ ア マ ネ ジ メ ン ト ケ ー ス ス タ デ ィ 編

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ローチとして「自宅で生活ができる」という目 標は達成することができた。しかし,楽しみが あり意欲的な生活ができるようにというアプ ローチは不十分であったと思う。  これからは,自宅から通って当事業所を利用 されるため,より楽しみを持ち意欲的に生活して いただけるよう支援していきたいと思う。また, 入所時に行われていた運動量を維持するための 自宅での練習や,家庭内での役割(朝の新聞を 取りに行く,洗濯物を畳むのを手伝う等)を持っ ていただくことも必要になってくると思う。  支援のポイントとしては,定期的に自宅を訪 問し住環境を理解した上で,適切な運動方法を 提供したことだと思う。また,妻は介護に対し て不安を抱えており,「本当に自宅に帰れるの だろうか」と悩んでいた。そのような中,定期 的な自宅訪問や試験外泊をすることで,Fさん がいろいろなことができるところを見ていただ いたこともポイントになったと思う。利用開始 時と現在の要介護度,日常生活自立度(FIM) の変化を表1に示す。  デイサービスで働く中で,家族とお話をする と,利用者がいろいろなことができるというこ とを知らず,どうしても「介護」という目で見 てしまっている方も多い。そのような方に対し て,できないこと(短所)を伝えることも大切 ではあるが,できること(長所)を伝えること こそ生活期におけるかかわりの中でとても大切 なことだと思う。

支援のまとめ

 次に,当事業所で機能訓練を実施していく上 で心がけているポイントを整理する。

お世話から支援へ

 デイサービスと聞いて,どんなイメージを持 つだろうか? 利用者や家族,通所のスタッフ においても,「介護≒世話」という考え方で, デイサービスは日中過ごして世話を行う場所と いうイメージを持っている方も少なくない。し かし,本来,デイサービスにおける介護とは 「介護≒支援」という考え方が重要である。つ まり,できないところをお世話するというよう な考えではなく,その人ができることを支援す るという視点が重要となる。

少量頻回の運動

 当事業所でも,少量頻回の運動による活動量 の獲得を意識し,本人に説明した上で,できる ところは自分で行っていただき,難しい部分は 一緒にお手伝いするというセミセルフに取り組 んでいる。前述した立位での整容,昼食の配膳 等もその一環である。ほかにも,ゴミ箱や ティッシュペーパーの数を減らし,ゴミを捨て る,ティッシュペーパーを取るには自分の席か ら3~5m歩かなければならないというような, 運動量を上げるための細かな工夫も行っている。

スタッフ間の協業

 これらは,スタッフ1人で行っていくのは難 しく,チームでの自立支援を意識したかかわり が必要となってくる。また,1日の中でどんな ことが自立支援につながっていくかという創造 力も必要である。  当事業所でも通所介護計画書は,介護職員, ■ 表1 Fさんの要介護度・FIMの変化 利用開始時 現在 要介護度 要介護3 要介護3 FIM 83 101

(7)

看護師,療法士が支援内容を相談しながら多職 種協働で作成している。さらに,立案の段階か ら多職種がかかわることで,利用者の支援の方 針について合意形成を得ることができる。

集団の力を活用する

 デイサービスでは,本人のみでなく周囲の利 用者を交えてのグルーピングも効果的である。 1人ではなかなか参加に持ち込めない利用者で も,仲のよい利用者と一緒ならと外出行事やイ ベントに参加することはよくある。また,外出 等に参加することで,初めて見えてくる課題も あり,それが今後の支援の目標にもなってくる。

逆ピラミッド思考

 参加制約を先に考え,次に活動制限,そして 心身機能障害を考える。具体的には,自宅で生 活することが困難という参加制約を先に考える。 さらに,それを妨げている歩行や入浴等の活動 制限を考え,そして,それを困難にしている麻 痺や筋力低下,記憶障害等の心身機能障害を考 えるというものである。これによって,利用者 自身が課題に対するイメージを持ちやすく,主 体的に取り組んでいくことができると考える。

今後の課題

 個別機能訓練と聞くと,運動機能やADLに 目が行きがちである。しかし,人の一日の生活 の中でADLが占める時間は約20%と言われて いる。もちろん,ADLの改善は日常的に介護 を行う家族にとっても重要な項目である。しか し,デイサービスにおいては,QOLも含めた 残りの80%にも目を向け,利用者の1日の生 活をコーディネートしていく支援も求められる と考えられる。そして,生活に目を向けること で普遍的なADLを獲得でき,利用者の笑顔, QOLの向上につながると思う。  本事例においても,目的とした自宅での安全 な歩行は獲得できた。今後は自宅での楽しみや 役割の獲得に向け側面的にかかわり続けていき たい。 ケ ア マ ネ ジ メ ン ト ケ ー ス ス タ デ ィ 編

(8)

利用者の生活の幅を広げることの

できる運動を提供した事例

Gさん,70代,女性

●現病歴:脳梗塞(右片麻痺) ●既往歴:両膝変形性関節症 ●性格:社交的,気配り上手 ●家族構成:(同居)本人,娘,娘婿,孫2人, (別居)息子 ●キーパーソン:娘

事業所での洗濯物干しが

意欲向上のきっかけに

 Gさんは利用当初車いすで来所しており, 「手が動かない」「車いすを使いたい」等の言葉 が多く聞かれていた。  運動にも取り組まれていたが,こちらからの声 掛けで行うことや徒手によるリハビリを強く希望 される等,受動的な運動を好んでいた。逆に,

事例

【個別機能訓練加算Ⅰ】 マシーントレーニング ・ヒップアブダクション 8kg ・レッグプレス 7.5kg ・レッグエクステンション 30N 歩行訓練 プーリー モップがけ 【個別機能訓練加算Ⅱ】 ・入浴動作の動作指導 ・自助具等の選択,提案 ・太ももの筋肉強化 リラクゼーション ・スーパーカイネ ・ホットリズミー 〈解決すべき課題(目標)〉 ①清潔で安全に入浴ができる。 ②マシントレーニングやリハビリスタッフの訓練にて筋力低下を 予防する。 〈長期目標〉 ①近所の方々のところに自分から出掛けることができる。 ②自宅で入浴することができる。 〈本人・家族の希望〉 本人:安全な歩行ができるようになる。 家族:事業所にて他者と交流をすることにより楽しみを持っ てほしい 〈短期目標〉 ①全身の筋力の向上を図り,杖歩行(もしくは片手杖+伝 い歩き)が楽にできるようになる ②事業所にて見守りで洗体ができる。 ① ② 2回/週 (月曜,木曜) 10:00 ∼ 15:10 療法士 看護師 介護士 体調管理 バイタルサインチェック 家事活動の参加 ・入浴動作の確認 ・自主訓練の促し 外出活動の参加 リラックス(他者との会話, コーヒーブレイクなど) ・体調不良時はかかりつけ医や家 族との連携を図ります。 ・その日の体調に合った運動を 行っていただきます。 ・トイレへの声掛けを行います。 ・自宅での浴槽入浴を目指して立 ち上がり訓練を促します。 ・フラワーアレンジメントでは必 ず声を掛けます。 ・外出行事がある際には事前に声 を掛けます。 ※上記の計画書に基づきサービスを提供いたします。 ※提供するサービス内容に変更があった場合,新しい計画書を作成いたします。 ※短期目標期間終了時のモニタリングの際,計画の見直しの必要がない場合は長期目標の実施期間まで短期目標を継続と致します。 ご本人・ご家族への説明と同意 〈個別援助内容(機能訓練・運動器機能向上計画を含む)〉 短期目標 PT・OT・STが実施する内容 看護・介護が実施する内容 留意事項 頻度 担当 日付 サイン 平成   年   月   日 日付 平成   年   月   日 サイン 利用者氏名 住所 G  様 要介護度生年月日 M ・ T ・ S  15年 3月 29日要介護1 作成者氏名    作成年月日   平成  27年  3月  1日 認定の有効期間      ∼      作成者氏名 資料2

Gさんの通所介護総合計画書

・車いすで来所 ・苦手な練習には消極的

(9)

手指を使うような練習や歩行等の苦手 な練習には消極的だった(資料2)。  ある日,当事業所内での洗濯物干し を仲のよい利用者と一緒に行っていた だいた。仲のよい利用者が一緒という こともあり,椅子に座った状態で一生 懸命に手指を動かしていた。以前は当 たり前に行っていた洗濯物干しだった が,病気後は自宅でも家族が行ってい た。しかし,当事業所において他利用 者と一緒に行えたことやスタッフからの「あり がとうございます」という感謝の声は,Gさん のやる気の向上につながった。そして,繰り返 し洗濯物干しをお願いしていく中で,手指を動 かす練習(写真4),マシーントレーニング, 自主運動等へ意欲的に取り組む姿が見られるよ うになった。  また,意欲的に運動に取り組む中で,身体機 能が向上し,他利用者と共に立って洗濯物を干 すことができるようになった。施設内での役割 として,利用時にモップがけ(写真5)や拭き 掃除(写真6)も行っている。写真でも分かる ように,立っている状態で腕を伸ばす動作は脚 の筋力強化,手指の巧緻性,バランス能力等の 練習になる。これらの活動を続けて行うことで, 本人の自信にもつながり,現在は自宅でも掃除, 洗濯を自分で行うようになった(写真7)。

自宅でのIADLが活動や

意欲の増進につながる

 デイサービスで働く中で難しいと感じるの は,毎日の運動量の確保である。デイサービス 利用時は活動的に運動している方でも,自宅で の過ごし方を聞くと,ベッドに寝ていることが 多いという方や,何もせずテレビを観て過ごす だけという方が多くいる。そのような中,自宅 写真4 手指を動かす練習 写真5 モップがけ 写真6 拭き掃除 写真7 自宅でも掃除・洗濯物干しを行うGさん ケ ア マ ネ ジ メ ン ト ケ ー ス ス タ デ ィ 編

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での掃除,洗濯等のIADLは立派なリハビリと なる。  Gさんは,活動が増えたことで意欲的にさま ざまなことに挑戦しようという意識が芽生えて きた。現在では,シャワー浴であるが自宅で入浴 している。さらに,当事業所で年に2回行って いる,メロントラベルというバスでの小旅行に も参加されている。利用開始時と現在の介護度, 日常生活自立度(FIM)の変化を表2に示す。  今後は,Gさんが「自宅で浴槽につかりたい」 という目標を立てているため,その実現に向け てのお手伝いをしていきたい。

まとめ

 生活期におけるリハビリの支援には,ICFに おける活動・参加に目を向けたかかわりが必要 になってくる。つまり,参加を通して,そのた めの個別機能訓練を組み上げていく必要がある と考える。そして,活動を共に繰り返し練習す ることで,「自分でやってみよう」という利用 者の気持ちを引き出すことができるのではと思 う。「心が動けば体も動く」。生活期という フィールドで利用者の「主体的な参加」が獲得 できるよう,これからも努力していきたい。 ■ 表2 Gさんの要介護度・FIMの変化 利用開始時 現在 要介護度 要介護2 要介護1 FIM 90 115

参照

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