第65回理学療法科学学会 学術大会プログラム
日 時: 平成 25 年 6 月 30 日(日) 9:30∼15:30 会 場: 愛仁会リハビリテーション病院 8F 会議室 テーマ: 「想像することから創造する理学療法」 午 前 特別講演:9:30∼12:20 理論に基づいた腰痛アプローチの実践 姫野病院 荒木 秀明 先生 午 後 一般演題発表Ⅰ:13:30∼14:20 健常成人男性の足趾機能と重心動揺計における静的立位バランスの関係 ...1 国際医療福祉大学塩谷病院 木村 和樹 人工膝関節置換術後の熱感と機能障害との関係 ...2 愛仁会千船病院 中田 みずき 膝屈筋腱を用いた膝前十字靭帯再建術の術前・術後 6 ケ月の筋力回復率の検討 ‐スポーツ復帰時期に本当に筋力は回復しているか?‐ ...3 愛仁会高槻病院 小田 あゆみ 膝屈伸筋力と大腿周径及び身長、体重との関係 ‐新型徒手筋力計「Mobie」を用いた検討‐ ...4 専門学校 柳川リハビリテーション学院 本多 裕一 一般演題発表Ⅱ:14:30∼15:20 座る作業に対するセルフイメージの改善に向けてのパイロット試験 ‐体幹装具ラクナールエクササイズ導入前後にて‐...5 ジェイワンプロダクツ株式会社 山内 義崇 視力・聴力低下の圧迫骨折患者への各福祉機器と使用条件によるふらつきの変化 ...6 国際医療福祉大学塩谷病院 木村 和樹 半構造化面接法による歩行の動作観察に対する一考察 ‐経験年数の異なる理学療法士による比較‐ ...7 山田整形外科病院 大桐 将 被災地ボランティアを2 年経過して感じる事 ‐体験的・主観的見解‐ ...8 横浜新緑総合病院 玉井 洋平
健常成人男性の足趾機能と重心動揺計における静的立位バランスの関係 木村和樹 1) 小川幸宏 1.2) 加藤龍彦 1.2) 前田和也 1.2) 大橋知央 1.2) 大平和弥 1) 須澤貴 1) 中澤環 1) 屋嘉比章紘 1.2) 石坂正大 1) 久保晃 3) 1)国際医療福祉大学塩谷病院 リハビリテーション室 2)国際医療福祉大学大学院 保健医療学専攻 3)国際医療福祉大学 保健医療学部 理学療法学科 【目的】 立位において足底と足趾は唯一地面と接地しており,立位バランスと関係があるとされ ている.足部は 28 個の骨から構造されており,微細な動きを伴っている.従来の足趾の評 価は,足趾把持力,反応時間が多く挙げられている.そこで,簡単に足趾の機能を評価で きる足趾反復動作の評価を発案して,静的立位バランスとの関係性を検討した. 【方法】 対象者は男性 6 名(12 肢)年齢:21 歳,身長 172.3 3.1cm ,69.2 5.8kg.本研究は国 際医療福祉大学倫理委員会承認を得て行った(承認番号:12-26). 足趾の機能評価は足趾の反復動作,足趾の単純反応時間,足趾の把持力とした.測定肢 位は端座位にて行った.各評価の左右の合計を個人の値とした. ① 足 趾 反 復 動 作 は 母 趾 の 下 に お い て 圧 力 セ ン サ を 押 す 離 す 動 作 を で き る だ け 速 く 繰 り 返 し,10 秒間に圧力センサを押せる回数を計測した. ② 足趾の単純反応時間は LED ライトを足元におき発光したらすぐに母趾の下にある圧力 センサを押す・離すまでにかかる時間を計測した.5 施行行った最大最小を除いた 3 施 行の平均値を計測した. ③ 足趾把持力は SAKAI 社製の足趾把持力測定機器を使用し 2 回計測し最大値を用いた. ④ 静的立位バランスは重心動揺計アクティブバランサー(SAKAI 社製)の上に閉脚にて開 眼と閉眼の 30 秒間立位保持の重心動揺を計測した. 統計処理は,各足趾機能と重心動揺をピアソンの積率相関係数を求めた.なお有意水準 は 5%未満とした. 【結果】 足趾機能と重心動揺の結果を平均値 標準偏差で示す. 足趾機能は足趾反復回数 32.3 7 回,押す反応時間 278.5 33.9msec,離す反応時間 265.8 41msec,足趾把持力 10.3 3.6kg であった. 重 心 動 揺 計 ( 開 眼 / 閉 眼 ) は 総 軌 跡 長 592.5 82.0/681.7 126.4mm , 矩 形 面 積 491.6 245.3/628.4 295.2mm2であった. 表1.各足趾機能と重心動揺の pearson 相関係数 *:p<0.05 【考察】 静的立位バランスにおいて開眼時には足趾把持力に相関があり,開眼時に視覚からのフ ィードバックによる足趾を随意的に動かし立位保持していると考える.足趾反復動作は素 早く繰り返す動作であり,敏捷性と協調性を伴う動作である.また,協調性は小脳がつか さどり、小脳は閉眼時の静的立位バランスに影響するとされている.協調性を伴う足趾反 復動作であるため閉眼時の重心動揺と相関があったと考える.今後,静的立位バランスの 評価として足趾の敏捷性も重要視する必要がある.
人工膝関節置換術後の熱感と機能障害との関係 中田みずき1 )・池上泰友1 )・篠原信平1 )・井上健太1 )・ 清水富男(MD)2) 1)千船病院 リハビリテーション科 2)千船病院 整形外科 【目的】 人工膝関節置換術(以下 TKA)術後の炎症はリハビリや動作獲得を阻害する要因となるこ とをしばしば経験する。しかし、これまで術後炎症に関しては腫脹や CRP、またサーモグ ラ フ ィ ー を 用 い た 皮 膚 表 面 温 度(熱 感 )を 指 標 と し た 報 告 が 散 見 さ れ る の み で あ る 。 今 回 TKA 術後の皮膚表面温度(熱感)を炎症の指標として術後経過を追えた症例を経験したので ここに報告する。 【方法】 症例は変形性膝関節症により TKA に至った 68 歳の女性である。手術は内側傍膝蓋アプ ローチで行われ、PCL 温存型の人工膝関節に置換されている。測定項目は熱感(サーモフォ ーカスプロにて膝関節内側)、筋力(ハンドヘルドダイナモメーターにて膝伸展筋力)、患肢 最大荷重量(体重計を使用し立位での最大荷重量)、荷重時痛(患肢最大荷重時の疼痛)、関節 可動域(膝屈曲と伸展)、周径(膝と大腿中央)の 6 項目であり、測定時期は術後3日から 退院までとした。筋力と患肢最大荷重量は測定値を体重で除して正規化し、疼痛評価は数 値評価スケール(以下 NRS)を用いた。統計学的処理はスペアマン順位相関を使用し、熱感 と各測定項目との関係性を調査した。なお本症例には本研究の目的や方法を充分に説明し 同意を得ている。 【結果】 FTA は術前 179 、術後 174 であった。熱感は術後3日 35.3℃、退院時 34.1℃で、平 均は 34.3 0.6℃であった。術後の熱感値とその他の測定値との間には膝伸展筋力では rs= ‐0.51(p<0.01)、患肢最大荷重量では rs=‐0.63(p<0.01)で熱感値との間に負の相関 を認め、荷重時痛では rs=0.60(p<0.01)、膝周径では rs=0.52(p<0.01)と熱感値との 間に正の相関を認めた。しかし、関節可動域とは相関を認めなかった。 【考察】 今回の研究では熱感と膝伸展筋力の間に負の相関を認めたが、これは炎症にて関節内圧 が上昇し大腿四頭筋の反射性抑制が生じたこと、また炎症による疼痛の為に運動が制御さ れたことが原因ではないかと考えている。患肢荷重量との関係では、荷重量と大腿四頭筋 の筋力に正の相関を認めるとの報告があることより術後継時的に炎症が改善することによ り膝伸展筋力や荷重時痛が改善し荷重量増加につながったと考えている。関節可動域に関 しては、皮膚表面温度の高値群と低値群の比較にて、高値群で膝屈曲角度への影響が報告 されているが、本症例では伸展時に膝窩部、屈曲時に膝前面の疼痛が生じており、これら は軟部組織の伸長痛と考えられたが熱感との間には明らかな相関を認めなかった。今後更 に症例数を増やしそれぞれの因子について検討していきたいと考える。
膝屈筋腱を用いた膝前十字靭帯再建術の術前・術後6 カ月の筋力回復率の検討 ‐スポーツ復帰時期に本当に筋力は回復しているか?‐ 小田 あゆみ 1)、矢野 正剛 1)、小杉 正 1)、欅 篤(MD) 2)、平中 崇文(MD)3) 1)社会医療法人愛仁会 高槻病院 技術部 リハビリテーション科 2)同 診療部 リハビリテーション科 3)同 診療部 整形外科 【はじめに】 膝 前 十 字 靭 帯(以下、ACL)再建術後の筋力の回復率についての研究は多数報告されてい る。先行研究より、スポーツ復帰時期は術後 6∼12 カ月とされているが、当院では術後 6 カ月目でスポーツ復帰を許可している。また、スポーツ復帰条件として吉田らは膝関節伸 展または屈曲関節トルク健患比 80%以上の回復、堀部らは H/Q 比 60%以上の回復などと 報告し、当院でも健患比 80%以上の回復をスポーツ復帰の目標としている。そこで今回、 術前の筋力と術後 6 カ月目の筋力の回復率を比較し、当院でのスポーツ復帰時期の膝関節 伸展筋力(以下、膝伸展筋力)および膝関節屈曲筋力(以下、膝屈曲筋力)について調査したた め報告する。 【対象と方法】 対象は、2010 年から 2012 年までに当院にて半腱様筋・薄筋を用いた ST/G 法(double bundle)にて ACL 再建術を施行された、男性 7 名・女性 1 名の計 8 名。年齢は平均 24.6 7.7 歳(16∼41 歳)であった。慶大分類に基づく術前のスポーツ活動レベルは、class1 が 1 名、class2 が 5 名、class3 が 2 名であった。 方法は、Hand-held dynamometer (以下、HDD)を用いて先行研究で良好な再現性がえ られるベルト固定法を用い 3 回測定、その中の最大値を採用した。測定方法は、膝伸展筋 力は端坐位で股関節と膝関節が 90 屈曲位となるように設定し、最大伸展筋力を測定。膝 屈曲筋力は、腹臥位で膝関節屈曲 30 に設定し、最大屈曲筋力を測定。術前及び術後 6 カ 月 に お い て 、 膝 伸 展 筋 力 と 膝 屈 曲 筋 力 の 最 大 筋 力 値 を 計 測 し た 。 統 計 学 的 分 析 に は 全 て Wilcoxon 検定を用い、有意水準 5%未満とした。 【結果】 膝伸展筋力の健患比は、術前 95.0 12.4%から 6 カ月目 87.7 6.1%と有意差を認めなか った(p>0.05)。膝屈曲筋力の健患比は、術前 89.6 13.8%から 6 カ月目 78.0 17.4%と有 意に低下(p<0.05)し、健患比 80%以上の回復は得られなかった。 【考察】 膝伸展筋力が術前健患比80%以上では術後 6 カ月目にて術前レベルまで筋力の回復がみ られる傾向があり、先行研究で報告されている健患比80%を上回る結果となった。しかし、 膝屈曲筋力では術前健患比 80%以上の症例でも、術後 6 カ月目で筋力が術前と比べ有意に 低く回復の遅延が見られた。その原因として、当院の術式は半腱様筋・薄筋を用いている ため、膝屈曲筋力の低下が著明にみられたと考えられる。また、術前の慶大分類における スポーツ活動レベルも class2 レベルが多く週1回程度と元々の運動頻度が低く、さらに術 後の荷重制限・運動制限により活動頻度が減少し筋力低下に至ったものと考えられる。 【まとめ】 今回の結果より膝屈曲筋力では術前健患比80%以上の症例でも術後の筋力回復に遅延が みられた。そのため、特に膝屈曲筋力の筋力強化を促すことでスポーツ活動レベルも維持・ 向上すると推察される。
膝屈伸筋力と大腿周径及び身長,体重との関係 ‐新型徒手筋力計「Mobie」を用いた検討‐ 本多 裕一1 ) 2 ) 東 裕一1 ) 3 ) 吉塚久記1 ) 3 ) 1)専門学校 柳川リハビリテーション学院 理学療法学科 2)国際医療福祉大学大学院 医療福祉学研究科 保健医療学専攻 3)佐賀大学大学院 医学系研究科 医科学専攻 【目的】臨床上,筋力は周径,身長,体重と相関すると考えられている.新型徒手筋力計 「Mobie MT-110」(酒井医療)を用い,同機器の妥当性を検討した.また筋力の定量的測定 という観点から,膝屈伸筋力と大腿周径,身長,体重との相関を調査し,各測定の臨床的 意義を再考した. 【方法】理学療法学科学生 21 名(身長:172.5 6.3 ㎝,体重:69 11.1 ㎏,BMI:23.1 2.8,年齢:21.3 3.1 歳 ※平均 SD)を対象とした.倫理委員会の承認後,ヘルシンキ宣 言に則り,文面及び口頭にて調査の趣旨,方法,不利益の可能性,個人情報保護について 説明,同意を得てから開始した.大腿周径は,膝蓋骨上縁部(以下上縁部)と膝蓋骨上方 15 ㎝部(以下 15 ㎝部)を背臥位膝伸展位で,直接皮膚上より市販のメジャーを用い,㎜ 単位まで測定した.また皮下脂肪厚の影響を減らす意図で 15 ㎝部から上縁部の差(以下周 径差)を算出した.筋力は,同社のマニュアルに従い,被検者を端座位,両上肢支持,膝 関節 90 度とし,下腿末端部に pull sensor pad を装着,同機器と水平になるように固定, 膝関節屈曲・伸展方向に牽引させ,最大等尺性収縮筋力(kgf)を測定した.被検側は利き 足とし,3 回実施,最大値を測定値とした.大腿周径,周径差,膝伸展・屈曲筋力,身長, 体重それぞれの関係をピアソンの相関係数を求めて検討した.有意水準は 5%とした. 【結果】上縁部(37.5 3.0 ㎝),15 ㎝部(50.8 4.0 ㎝),周径差(13.3 1.8 ㎝),膝伸 展筋力(48.6 8.1kgf),膝屈曲筋力(21.3 5.4kgf)であった.15 ㎝部と伸展筋力(r=0.49) で相関がみられたが屈曲筋力ではみられなかった.また周径差と筋力の相関もみられなか った.一方,身長と伸展筋力(r=0.56)及び屈曲筋力(r=0.52)で相関がみられた.身長 と体重(r=0.70),体重と伸展筋力(r=0.70),体重と屈曲筋力(r=0.47),体重と 15 ㎝部 (r=0.88)で相関がみられた. 【考察】15 ㎝部と伸展筋力で中等度の相関がみられ,異なる測定機器を用いても先行研究 と同様の傾向がみられた.このことは同機器による測定の妥当性にとって有益な結果であ ると考えた.周径差と筋力は相関せず,若年健常人では指標となりえなかった.一方,体 重と膝伸展・屈曲筋力,体重と 15 ㎝部に高い相関がみられたことは,被検者の身長と体重 の相関が高く,BMI も普通範囲(日本肥満学会 2000)で肥満傾向が小さく,大腿部の筋群 の量と体重が比例していた可能性が考えられた.そして体脂肪量の影響が少なければ,体 重が筋量や筋力の目安となりうる可能性が考えられた.更に身長と膝伸展・屈曲筋力に相 関がみられ,15 ㎝部と膝屈曲筋力に相関がみられなかったことは,身長が筋の長短を表わ し,瞬間的作業能力もこれに比例するという説に矛盾せず,hamstrings の筋力が筋の長短 に依存している可能性が示唆された.
座る作業に対するセルフイメージの改善に向けてのパイロット試験 ‐体幹装具ラクナールエクササイズ導入前後にて‐ 山内 義崇 オフィス環境改善コンサルタント(理学療法士) ジェイワンプロダクツ株式会社 【目的】オフィスワーク、長時間座位労働で経験する VDT 症状には慢性腰痛、頚部痛、頭 痛などがある。身体的(physical)不具合なストレス感、痛みは先行しがちだが、実は心 理的(mentality)要素が潜在しているとの文献報告もある。その観点から、オフィスワー カーにとっての「座るイメージ(の要素)」先行は重要な課題だと予測し、そのプラス面に 働くポジティブ(以下、P)要因と、マイナス面に働くネガティブ(以下、N)要因の比較 は今後参考になるカテゴリーと仮説する。また、実際に主観的に感じる身体ストレスも臨 床上重要なカテゴリー要素である。今回はパイロット試験であり、それらのカテゴリー変 化をみた。座位で可能な腹部・股関節周囲筋運動(以下、Ex と記載;体幹装具ラクナール、 ジェイワンプロダクツ株式会社)を導入し、Ex 前後の座位環境による主観的反応の経過を 追ったので報告する。 【方法】腰痛症の既往があり、特に座位姿勢で身体の不具合を訴える 40 代男性 1 名を対象 とした。被験者に Ex 導入の前後に合わせて、10 分毎の座位姿勢保持を指示した。オフィ スチェアー上で1.背もたれなしで端坐位をとり、2.頭部を空間上可及的に移動しない ような条件付けを指示した。日頃の座位環境で感じる身体的不具合も含め、その主観的反 応を経時的変化(ⅰ.日常生活で座るストレス感について ⅱ.座位保持 1 分後 ⅲ.座 位保持 10 分後 ⅳ.Ex 体験直後 ⅴ.(ⅳ)後の座位保持 1 分後 ⅵ.(ⅳ)後の座位保 持 10 分後)に従い、自由記入形式をとった。なお、Ex の内容は、ラクナール起案者推薦 の運動プログラムをそのまま活用した。また、座位姿勢時の身体的情報を補足的に、傾斜 角度計測器 Horizon(ISO16840‐1)と座圧分布測定器 comform-light を用いて、骨盤帯 周囲のアライメント・座圧を計測した。主観的反応を①「身体的」要素と②「座る」要素 の2つの領域に分類した。比較対象では、A.Ex 体験前後の(ⅰ)と(ⅳ)の比較、B.座り 始めの(ⅱ)と(ⅴ)の比較、C.10 分間座り続けた後の(ⅲ)と(ⅵ)の比較を行い要素 個数を加減法でとった。 【説明と同意】被験者には事前に口頭で説明し同意を得たものに対し実施した。 【結果】A.比較にて①「身体的」要素と②「座る」要素に由来する P 思考、N 思考では、 ①;N が 1 個から0個へ、P が0個から 3 個へ、②;P が1個から 1 個へ、N が 5 個から 0 個への変動があった。B.比較の①「身体的」要素と②「座る」要素では、①;P が 0 個 から 3 個へ、N が 3 個から 0 個へ、N が 3 個から 0 個へ、②;P が 0 個から 0 個へ、N が 1 個から 0 個へ。そして、C.比較では、①;P が 0 個から 4 個へ、N が 4 個から 0 個へ、 ②;P が 0 個から 2 個へ、N が 1 個から 0 個への変動となった。座圧、アライメント変化 にてわかる要因もあった。 【考察】純粋に Ex を導入することで「身体的」および「座る」要素で P 面への変化はあ った。本症例でラクナール Ex 導入は「身体的な負担要素と、座ることへの意識にマイナス なイメージは少ない」と解釈した。1 分後の B.比較と 10 分後の C.比較より、「座る」P 変 化では座る時間が経つにつれて体感しやすいのではと考察した。
視力・聴力低下の圧迫骨折患者への各福祉機器と使用条件によるふらつきの変化 木村和樹 1) 小川幸宏 1.2) 加藤龍彦 1.2) 前田和也 1.2) 貞清秀成 3) 貞清香織 4) 石坂正大 1) 久保晃 4) 木村千代子 5) 森辰男 5) 1)国際医療福祉大学塩谷病院 リハビリテーション室 2)国際医療福祉大学大学院 保健医療学専攻 3)介護老人保健施設 マロニエ苑 4)国際医療福祉大学 理学療法学科 5)山中パソコンスクール 【はじめに,目的】 高齢者は視力が低下する傾向にあり,視覚のフィードバックが不十分となり歩行時にふ らつくことがある.高齢者の転倒が多い条件としても夜間の移動時がある.視覚はバラン スを保つために必要な機能である.本研究では,視覚・聴力の低下された一症例における さまざまな福祉機器を使用した歩行のふらつきを評価した. 【方法】 対象者は圧迫骨折後(6 カ月後)の 96 歳,女性である.視力と聴力が低下しており視力 はセラピストの顔を判断できないがセラピストの声や手の触感で判断可能である. 理学療法評価:疼痛は歩行時にはないが,ベッド上で体動時に疼痛を伴う.可動域制限 は両股関節伸展‐15 ,両下肢の筋力は MMT4,立位姿勢は重度な円背姿勢であった.歩行 は病棟内歩行車(オパル)にて自立されていた.認知機能 HDS-R は 27/30 点であった. 各条件での 10m歩行時間・歩数・歩行周期変動を測定した. 10m歩行時間・歩数の計測について,加速と減速を考慮して開始と終了地点を 3mずつ 延 長 し て 行 い , 計 測 は そ の 間 の 10m と し た . 快 適 歩 行 速 度 に て 歩 行 周 期 変 動 を 計 測 し た . 歩行周期変動の測定について,踵に圧力センサを貼付しマイクロコンピューター (arduino 社製)と記録用パソコンに接続して,踵接地から次の同側踵接地を一歩行周期 とし,歩行が安定する 4 歩目以降の 10 歩行周期を用いた.変動係数(coefficient of variation:以下 CV)%〔標準偏差(SD)/平均値(Mean) 100〕を算出した. 条件は歩行車(オパル 2000),独歩,T-cane,右・左手に T-cane の上シャフトを持ちグ リップが床に着かないようにした. 【結果】 10m所要時間・歩数・CV の順に結果を以下に示す. 【考察】 視力低下した高齢者は,杖先が確認できないために,杖を使用することが一つの運動課
半構造化面接法による歩行の動作観察に対する一考察 ∼経験年数の異なる理学療法士による比較∼ 大桐将1 ) 弓永久哲2 ) 来田宣幸3 ) 1)山田整形外科病院 リハビリテーション科 2)関西医療学園専門学校 理学療法学科 3)京都工芸繊維大学 ≪緒言≫ 我々理学療法士(以下 PT)は、日常の診療において患者の動作を観察し分析することを理学 療法技術の核と捉え、仮説検証作業を重視している。しかし、動作を観察する能力や方法 は各 PT により異なり、さらには動作観察から導き出された問題点に対する治療アプローチ も各 PT により様々で、動作観察の良し悪しにより治療効果が異なることがある。先行研究 では、動作観察能力が各個人の知識や経験という主観的要素により影響され、PT の経験年 数に依存しないという報告もされている(盆小原,2008)。そのため、本研究は動作観察能 力の要因を検証するための前段階として、インタビュー調査を実施した。このことにより、 PT の動作観察から問題点予測及び治療プログラム立案までの理学療法思考過程を検討し ようと試みた。 ≪方法≫ 現職の PT10 名(経験年数 4 年∼27 年:平均 13.1 年)を対象に、脳梗塞による右片麻痺 を発症後 10 年以上経過している患者の歩行動画を観察させ、観察した動画からどのように 問題点予測及び治療プログラム立案を実施しているか等について、1 対 1 の半構造化面接 法を用いてインタビュー調査を実施した。インタビュー調査者は本稿の筆頭著者 1 名であ り、PT の臨床経験 8 年を有している。動画を観察した被調査者の PT には先入観を持たせ ないため患者の情報は一切開示しなかった。そこから理学療法思考過程に関する意味単位 を抽出し、それを同一または類似カテゴリーに分類した。被調査者である各 PT 及び歩行 動画モデルである患者には研究の趣旨を十分に説明し、研究協力の内諾を得た。 ≪結果及び考察≫ 以下、本稿ではカテゴリー名に【】を用いた。分析結果から【全体的な印象】、【歩行から 受ける印象】、【歩行から問題と推測される歩行相】、【異常と推測される問題点】、【治療ア プローチ】の 5 つのカテゴリーに分けることができ、PT の思考過程を反映する項目が抽出 された。本研究に参加した PT の経験年数は、4 年目∼27 年目と様々であったが、今回のイ ンタビュー調査結果から、PT によって動作観察時の思考過程が異なっていることが示され た。各 PT により観察内容が異なるということと、そこから派生する治療アプローチが異な ることが示唆され、治療アプローチが異なることで治療結果が異なる可能性があり、PT に よって治療効果が違うということも十分に考えられる。これは、各個人の知識や経験によ り理学療法技術が決定されることが原因であると考えられる。本結果のみでは PT の動作観 察時の思考過程を理解するには不十分であるが、今回のように各 PT によってこれほどまで に思考過程が異なることを報告した研究は現在まで無い。このため、今回の結果は PT の動 作観察時の思考過程を理解する一助となったと考えられる。
被災地ボランティアを 2 年経過して感じる事 ∼体験的・主観的見解∼ 玉井洋平 横浜新緑総合病院 【はじめに】 2011 年 3 月 11 日東日本大震災は津波の影響で、人・人の生活・人の心に大きなダメー ジ・爪痕を残した。震災直後、多くの人が災害支援として現地に足を運び、今できる事は 何かを考え、活動をしていた。マスメディアも被災状況やボランティア募集を報道し、日 本全体で助けようの精神があった。震災から 2 年が経過した今、日本人、特にリハビリテ ーションに従事している専門職の目・心にはどのように残っているのか。 【目的】 2011 年 3 月 11 日から 2 年が経過した今、仮設住宅での生活を余儀なくされている方々 の状況を体験的・主観的に報告し、今後私ができる事や方針を報告・伝達する。 【現状】 住まい:震災直後は避難所生活であったが、現在は仮設住宅へ移転。瓦礫はほとんど目 に見えなくなっているが、まだ残っている場所もある。今後は高台へ集団移転 の計画だが、実際移転するには費用と時間が必要となっている。 仕事・趣味:漁業は壊滅したが、徐々に復帰しつつある。仕事は新しいものがなく、瓦 礫撤去・遺跡発掘などの肉体労働が多い。趣味活動は元々のコミュニティが崩 壊したため、以前とは異なる形で始めている方もいる。 身体面・心理面:震災直後の精神的ショックのよる不動からの廃用症候群は減っている が、環境の変化も加わり、疼痛の訴えや活動性の低下は残存している。 ボランティアの状況:震災後 1 年間は多数来ていたが、昨年度 3 月までに多くの団体も 撤退している。目的、費用等含めて「役割終了」として判断していることが多 い。 現在の活動:月 1 度 2 か所の仮設住宅に訪問し、傾聴・運動指導・治療的介入を実施。 助成金の申請を行い、活動費用負担最小限とする。活動人数は 4 人で、交代に 訪問。 問題点:元々地域にリハビリテーションが存在せず、財源がなく、身体的不調を管理す る人・場がない。最近やっと福祉センター職員がたまに集団体操を援助してい る程度。 【考察】 人間は、身体と環境と精神が相互に関連しあって生きている。今回の震災は、そのすべ てが崩壊してしまったと考えられる。被災地に私たちのような活動を頻度多く担える団体 やリハビリ関係者がいればよいが、元々リハビリテーションが存在しない為、自治体・人 材の協力が不足しているのが現状である。今回私は、身体と精神の相互作用を図ることが 出来るように月1回訪問し、身体評価と精神評価によって、仮設住宅の会長や生活支援員 と連携をとり、被災者の状況を伝えることで、身体・精神機能低下予防の一助となってい ると考えている。被災者から喜びの言葉と訪問機会を待っているというコメントより、仮
特別研究顧問 局 博一(東京大学大学院農学生命科学研究科 教授) 船山 泰範(日本大学法学部教授 弁護士) 編集顧問 藤沢しげ子 編集委員 大重 匡* 赤坂 清和 安藤 正志 黒澤 和生 解良 武士 藤田 博暁 2013 年 6 月 29 日発行 編集発行 一般社団法人 理学療法科学学会 〒 170-0002 東京都豊島区巣鴨 1 − 24 − 12 パブリケーションセンター内 理学療法科学学会 事務局 TEL:03-5978-3576 ホームページURL http://www.jstage.jst.go.jp/browse/rika/