Title
糖尿病治療変更による血小板凝集能およびイノシトールリ
ン脂質代謝への影響に関する検討( 内容の要旨(Summary) )
Author(s)
板谷, 聡実
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)甲 第371号
Issue Date
1998-03-25
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/14762
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氏名 (本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 板 谷 聡 実(愛知県) 博 士(医学) 甲第 371号 平成10 年 3 月 25 日 学位規則第4条第1項該当 糖尿病治療変更による血小板凝集能およぴイノシトールリン脂質代謝への影響 に関する検討 (主査) (副査) 吾則 圭義 田澤 安野 授授 教 教 教授
清
島 満 論文内容の要旨 糖尿病性血管合併症の発症,進展には.高血糖.各種蛋白質の糖化 高血圧など多くの因子が関与していると 考えられているが,凝固・線溶系異常と共に血/ト板凝集吸 血小坂内イノシトールリン脂質代謝異常も重要な因 子となっている。糖尿病患者では,血小板凝集能が健常者に比べ元進していること,また,トロンビンによる血 /ト坂内イノシトールリン脂質の水解反応の冗進が認められている。それらは,インスリン,スルホニールウレア 剤(SU剤:グリベンクラミド)治療により抑制されることから,これらの薬物が血小板内イノシトールリン脂 質代謝に影響を与えていると推察されている。そこで申請者は,同一糖尿病患者における治療法の変更が,血小 板凝集能,イノシトールリン脂質代乱 タンパク質リン酸化反応に,いかなる影響を与えるのかを経時的に検討 した。 対象 対象は,1991∼1996年に岐阜大学医学部第三内科に入院したインスリン非依存型糖尿病(NIDDM)患者11例 で,食事療法からSU剤治療に変更した5例,SU剤治療からインスリン治療に変更した6例である。治療変更後. 空腹時血糖値から判断し,血糖コントロール状態が安定したと思われる時期に血小板機能検査を施行した。 方法 血小板凝集能は,濃厚血小板血焚を単離し,アグリゴメーターを使用して測定した。イノシトールリン脂質代 謝,蛋白質リン酸化反応の検討は,血小板を単離し,[32P]正リン酸を加え,Tris/NaCl/Glucose buffer (15.4mM Tris.140mMNaCl,5.6mMglucose,pH7.4)中で,90分間インキュベーションした,標識血小板 を使用した。1mMCaC12存在下に1U/mlのトロンビンを添机10.20,30,60秒後にクロロホルム・メタノー ル・塩酸(20:40:1,V/v)を加え反応を停止し,脂質をBligh-Dyerの変法で抽出した。イノシトールリン脂質は.high performance thinlayer chromatography(HPTLC)法で phosphatidic acid(PA), phosphatidyl-inositol(PI).phosphatidylinosito14-mOnOphosphate(PIP),phosphatidylinosito14,5bis-Phosphate(PIP2)に分離した。更に[32P]標識血小板を1U/mlのトロンビン,1FLM12-0.tetradecanoyl Phorbol-13-aCetate(TPA)で刺激後1分,10分SDS電気泳動により47kDaの蛋白質の1)ン酸化を検討した。 結果と考察 1,両群間の血糖コントロール状態 食事療法時とSU剤治療時を比較した5例で,それぞれの治療時での空腹時血糖値,HbAl。を比較検討したが, 有意差を認めなかった。またSU剤治療時とインスリン治療時を比較した6例でも,それぞれの治療時での空腹時 血糖値,HbA.cの比較検討でt 有意差を認めなかった。 2,血小板凝集能
ー53-食事療法時とSU利治療時を比較した5例での血小板凝集能を比較検討した。低濃度ADP(0.75FLM).低濃度 トロンビン(0.25U/ml.0.3U/ml)による最大血小板凝集率は.SU利治療時に有意に低下していたが,高濃 度ADP(3.0〟M),コラーゲン.高濃度トロンビン(0.5U/ml,1.OU/ml)による血小板最大凝集率は両群間 に差は認めなかった。 SU利治療時とインスリン治療時を比較した6例での検討では,ADP,コラーゲン,低濃度トロンビン刺激に よる血小板最大凝集率はt SU剤治療時に比較し,インスリン治療時に有意に低下していた。 3,トロンビン刺激時イノシトールリン脂質代謝 食事療法時とSU剤治療時を比較した5例では,トロンビン刺激後平均PA増加率は各測定時点でSU剤投与時に 低下しており,刺激60秒後では,有意差が認められた。トロンビン刺激後のPI,PIPはPAと逆の傾向を示し, 刺激10秒.刺激60秒後のPI,PIPは.SU剤治療時は食事療法時に比べ,有意に増加していた。PIP2はトロンビン 刺激10秒後に,SU剤治療時では食事療法時に比べ,有意に増加していた。以上より,トロンビン刺激による, イノシトールリン脂質のPLCによる水解反応が,SU剤治療時に抑制されていることが推察された。 SU剤治療時とインスリン治療時を比較した6例の成績では.インスリン治療時はSU剤治療時に比べ,PAの増 加反応は全体的に低下しておりt 刺激60秒後のPAは有意に低下していた。PIは,トロンビン刺激10秒,20秒,3 0秒後はSU利治療時.インスリン治療時で特に差を認めなかったが,インスリン治療時の刺激60秒後のPIはSU 剤治療時に比べ有意に低下していた。また,PIPもトロンビン刺激20秒,60秒後の反応がSU剤治療時に比べ,イ ンスリン治療時に有意に低下していた。PIP2はtトロンビン刺激10秒後の反応がSU剤治療時にインスリン治療 時に比べ低下しており,PIP,の水解反応(一過性のPIP2のbreak down)の抑制傾向が認められたが,有意の差 は得られなかった。以上よりトロンビン刺激による,PIPgのPLCによる水解反応が.インスリン治療時に有意に 抑制され,PIPの水解反応のみが元進していることが推察された。 4,トロンビン,TRA刺激時のタンパク質のリン酸化反応 食事療法時とSU剤治療時での47kDaタンパク質のリン酸化反応には,有意差は認めなかったが,後者で低下 傾向を示した。一方,SU剤治療時とインスリン治療時ではt 両者に有意な差はなかった。 以上の結果より,糖尿病患者に対するSU剤治療,インスリン治療は,血小板イノシトールリン脂質代謝を改 善,血小板凝集能元進を改善し,合併症の進展抑制に有用であると考えられた。 以上より.申請者板谷聡美ほ,同一患者での経時的検討によって,糖尿病治療に繁用されるスルホニールウレア 剤(グリベンクラミド)やインスリンが.血小板内イノシトールリン脂質代謝の抑制を介し,血小板凝集能を抑 制し,糖尿病合併症の進展を抑制する可能性を示した。本研究は,糖尿病性合併症の進展機序の解明や,臨床的 なより良い糖尿病治療の検討に貢献するものと思われる。 [主論文公表誌] 糖尿病治療変更による血小板凝集能およびイノシトールリン脂質代謝への影響に関する検討 糖尿病 41:(3)印刷中