Title
TSHレセプター部分構造合成ペプチドを用いた抗TSHレセ
プター抗体の受容体結合部位に関する検討( 内容の要旨
(Summary) )
Author(s)
松井, 郁雄
Report No.(Doctoral
Degree)
博士(医学)乙 第988号
Issue Date
1995-07-19
Type
博士論文
Version
URL
http://hdl.handle.net/20.500.12099/15282
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氏名(本籍) 学位の種類 学位授与番号 学位授与日付 学位授与の要件 学位論文題目 審 査 委 員 松 井 郁 雄(岐阜県) 博 士(医学) 乙第 988 号 平成 7 年 7 月19 日
学位規則第4条第2項該当
TSHレセプター部分構造合成ペプチドを用いた抗TSHレセプタr抗体の
受容休結合部位に関する検討
(主査)教授 安 田 圭 吾 (副査)教授 岡 野幸
雄 教授 近藤
直 実 論 文 内 容 の 要 旨 バセドゥ病及び一部の特発性甲状腺機能低下症は,いずれもTSHレセプターに対する自己抗体によって発症 することが明らかになっている。しかし,抗TSHレセプター抗体がどのような機序によって甲状腺刺激作用を きたすのか,また同じ抗体が他方でなぜ甲状腺機能を抑制するのか,その機序は不明である。これらの疾患の病 態や抗TSHレセプター抗体の作用機序の解明には,TSHレセプターの分子構造の決定が待たれていた。その後 明らかになったcomplementary DNAから推測されるヒトTSHレセプターの構造は764個のアミノ酸からなり, うちN末端側の約420個のアミノ酸が細胞外ドメインを形成し,その後に膜貫通ドメインが続き,さらにC末端 側の約80偶のアミノ酸から成る細胞内ドメインより構成されると考えられている。 また,TSHレセプターは同じく下垂体糖蛋白ホルモンのレセプターであるLH/CGレセプターと相同性を有 し,FSHレセプターと共に一つのレセプターファミリーを構成していることが明らかにされた。一方, LH/CGレセプターにはないTSHレセプター特異的ともいえるセグメントが細胞外ドメインに二箇所(N末端 近傍に8個,C末端近傍に50個のアミノ酸)存在し,現在この箇所が,TSHが結合し,固有のホルモン作用を 表す部位と考えられている。 そこで申請者は,抗TSHレセプター抗休の受容体結合部位を同定するため,TSHレセプター(TSHR)部分 構造合成ペプチドを合成し,家兎にて各々に対する抗体を作成し,その生物学的活性を検討した。同時に,抗血 清のT,,T.値を測定し,TSHレセプター合成ペプチド免疫家兎の甲状腺機能について検討した。 研究方法 TSHレセプター特異的ともいえる細胞外ドメインのNおよびC末端部分の7個のオーバーラッピングペプチ ド(TSHR12-30,24-44,308-328,324-344,339-364,359-380,375-399)とLH/CGレセプターと 相同性の強い中間部の2個のオーバーラッピングペプチド(TSHR151-175,171-195)を合成した。合成し た9個のオ,パーラッビングペプチドを各々rabbit serum albuminとconjugateさせ,同量のFreund,s COmplete adjuvantで乳化,家兎に免疫し抗合成ペプチド抗体を作成した。採血は,追加免疫を加えながら最大 181日まで経時的に行った。各々の合成ペプチドに対する抗体産生の有無は,l芯Ⅰで標識した合成ペプチドとの 免疫沈降反応で確認した。それぞれ得られた抗血清とTSH受容体との結合の検討はWestern blotを用い行っ た。各々の抗体に対して,ブタ甲状腺細胞あるいはラット甲状腺細胞であるFRTL-5細胞を用い,培養液中のCAMP含量を指標とする生物学的作用(thyroid stimulating antibody:TSAb,thyroid stimulation blocking
antibody:TSBAb)を検討した。TSAbおよびTSBAb抗体価は下記のごとく計算した。それぞれ正
常値は<145%(TSAb),<40%(TSBAb)であった。また,抗血清のTBII(thyrotropin bindinginhibitor
immunoglobulin),甲状腺ホルモン(T3,T.)値を測定した。さらに,免疫家兎甲状腺組織の病理組織学的
検討を行った。 TSAb値; 免疫家兎血清を用いた時の上清cAMP濃度/プールされた正常家兎血清を用いた時の上清cAMP濃度×100 (%) TSBAb値; (1T免疫家兎血清にbovineTSHlOOmU/L添加時の上清cAMP濃度/プールされた正常家兎血清にbovine TSHlOOmU/L添加時の上清cAMP濃度)×100(%) 結果と考察 1)1器Ⅰで標識した各々の合成ペプチドに対する結合率はいずれも有意に上昇しており,各々の合成ペプチド に対する抗体産生が確認された。また,Westernblotにて,ヒトTSHレセプターの分子量に一致する部位との 結合が認められ,これら抗合成ペプチド抗体のTSHレセプターとの特異的結合が示唆された0 2)TSHR12-30,24-44,151-175,17卜195,324-344および359-380で免疫した家兎でTSAb活性 (それぞれ210%.180%,270%,230%,149%および240%)を認めたことより,TSAbの結合部位はTSHレセ プター細胞外ドメインのN末端かその近傍,中間部,C末端かその近傍に存在すると考えられた。 3)TSHR339-364,359-380および375-399で免疫した家兎でTSBAb活性(それぞれ84%,48%および 63%)を認めたことより,TSBAbの結合部位はTSHレセプター細胞外ドメインのC末端かその近傍に存在する と考えられた。 4)TSHR339-364で免疫した家兎のTSBAb値とTBII値には有意な正の相関が認められたことから,この TBII活性は阻害抗体活性を反映していると考えられた。ただし,TBII値はばぼ正常範囲内であったことから, 339-364はTBIIのエピトープのごく一部である可能性もある。 5)免疫家兎の甲状腺機能に変動はあったものの,いずれも甲状腺ホルモン値は正常範囲内であり,甲状腺組 織も正常組織像であった。しかし,TSHR12-30,24-44,308-328および324-344で免疫した家兎のTSAb 値とT,,T.値(それぞれr=0.41,r=0.38,P<0.05)には有意な正の相関が認められ,また,TSHR339-364で免疫した家兎のTSBAb値とT.値には有意な負の相関(r=-0.53,P<0.05)が認められた。抗合成ペ プチド抗体が,甲状腺組織に組織学的変化をきたさない程度ではあるが,弱い甲状腺刺激活性あるいは阻害活性 を有していたものと考えられた。 以上,TSHレセプター部分構造合成ペプチドを用いる方法で,抗TSHレセプター抗体(TSAbおよび TSBAb)の受容体結合部位の少なくとも一部を明らかにした。 論文書査の結果の要旨 申請者 松井郁雄::は,TSHレセプター部分構造合成ペプチドを用い,抗TSHレセプター抗体のエピトープ の一部を同定した。本エピトープの同定は,バセドゥ病をはじめとする自己免疫性甲状腺疾患の病態の解明に少 なからず貢献するものである。 [主論文公表誌] TSHレセプター部分構造合成ペプチドを用いた抗TSHレセプター抗体の受容体結合部位に関する検討 平成7年5月発行 岐阜大医紀 43(3);398∼407 58