「やさしさ
J
に 縛 ら れ る 他 者 と の 関 係 性
ー そ の 陥 葬 か ら 抜 け 出 す た め に
-人間教育専攻
現代教育課題総合コース
甲 斐 健 太 郎
はじめに問題の所在と研究の目的
社会の変化によって、人々の「やさしさjの
形も変化していった。現代の「やさしさjとは、
相手と国間住を保ち、なるべく気持ちに触れない
ことを指す。相手に関わらないことを「やさし
さJと捉えていることは、個人よりも共同体を
生かす社会から、共同体より個人が尊重される
5剖吃となっていったことに起因する。社会の変
化から生じる「やさしさJの変容から起こる問
題点や、個人が抱える「やさしさJの窮屈さに
焦点を当て、現代の「やさしさJについての中
身を見ていくことにした。
第 1章現代に生起する諸問題の源としての
「やさしさ」
「やさしさjの変化の背景として、産業社会
的な日割
t
にあった共同体の形成
f
静 ト 消 費 社
会的な時代に移行することによって、変化した
ことが大きくかかわっている。産業社会的な時
代の共同体は、国や社会の繁栄という明確な目
標を持っていた。国や社会の調腕・維持を共同
体に属する個人が一丸となって、取り組んでい
たつしかし情報・消費社会的なH割
t
に移行する
ことに伴って、集団の意味合いは薄れてしまい
個人が尊重される時代へと変化した。「個のわた
し」が受け入れられるかどうかという一つの基
準として定着することで、共同体においても、
指導教員 金 野 動 古
自己を受け入れてくれる共同体に所属すること
が目標となった。また情報・消費社会的な日割
t
の中で、子ども達や若者達は消費主体として、
生活者として社会的に自立を余儀なくされた。
そして手段としての消費ではなく、目的として
の消費に
f
起集や充実感を求めるようになった要
因として、「等価交換jの発想をするようになっ
たので、ある。
現代の子ども遼や若者の人間関係も同時に変
化した。親患な相手だからこそ、お互いに気を
f
吏い合って相手を傷つけてしまわないように細
心の注意を払うことが「やさしさJであるとい
う。
r
個」が尊重されるからこそ、相手に不快感
を与えることは許されないのである。しかし相
手を傷つけることが許されないため、そこでは
自他ともに自分の素の気持ちは言えない緊張し
た関係となっている。自分の素の気持ちは言え
ないが、傷つくこともなく自分も傷つくことの
ない共同体の中に、個人は相主することとなっ
たのである。今まで述べてきた諸問題は「やさ
しい関係Jと因果関係があることがわかった。
したがって、子ども達そ若者達を取り巻く「や
さしさ」の中身を考察していくことにしt~o
第2章現代の子ども達にとっての「やさしさJ
現代の「やさしさJにおいて、人々がどのよ
うな考えのもとに、人間関係を築いているのか、
53
-ということを探るために、森真 4、大平健、竹
内整一、榎本博明、ステファン@アインホルン、
5
名の論者が考える「やさしさ」を整理した。
そして結果を基に、そこから「やさしさ」の分
析を行うことで¥新しい「やさしさj、古い「や
さしさ」、手Ij己的な「やさしさ」、手Ij他的な「や
さしさ」としづ大きな括りではあるが、 4つの
「やさしさJに分けることができた。この4つ
の「やさしさ」を検討することで、「やさしさj
には古い「やさしさjと新しし¥
r
やさしさ」と
いう経H寺的な視点と、利他的な「やさしさ」と
利己的な「やさしさJとしづ共時的な視点から
考えることができると判明した。そこから現代
に蔓延している「やさしさJは、新しい利己的
な「やさしさ」であることが、現代を生きる人々
が縛られている「やさしさJであると分かつたO
第3章新しし啄Ij己的な「やさしさJの陥穿か
ら抜け出すために
5名の論者の考える「やさしさjから、目指
したい「やさしさJの示唆を得た。現代の fや
さしさJの内実として、個が閉じられており、
そして集団の中で個がバラバラになっている。
その中でお互1;、に干渉することをできるだけ避
けることによって、円滑な人間関係を築いてい
る。この状態では、自己の中に他者の前生は希
薄したままで、いつまでも自他の相主は不明確
なままである。自己の柄生は他者との関わりが
あるから明確となる。他者との関わりは、生き
ていく上で避けることはできない。他者を避け
ることで円滑な人間関係は構築することはでき
ないのである。よって自己を他者と同じように
大切にし、相手の気持ちを慮ることが自己と他
者の関係をお互いに居心地のいいものにしてい
く際に必要なことである。
人には利己的な面と、手
J
I
他的な面が同時に気
持ちの中にある。現代は、個人が強調される社
会の中で手Ij己的な面に人々は流されている。た
だ利他的な面を強調することだけでは、「個Jが
尊重される社会ではうまくし功ミない。したがっ
て、利己的な面と利他的な面が自己の中に両方
前生していることを認識し、相手キ場面によっ
て自然に変化していく必要がある。
親密な関係で自己と他者がつながることで、
自己が所属する共同体のあり方を柔らかくする
ことができる。他者の荷主は共同体を開カれた
ものにすることにも繋がる。そして自己が所属
する以外の共同体ともつながりあうことで、お
互いに相手のためを考えて、お互いに素直な気
持ちを言い合える人間関係を目指していくこと
が、これからの「やさしさ」関係において必要
なことであると考える。「やさしさjとは人間関
係を構築する上での一つの価値である。個人が
それぞれ持つ「やさしさJの形を見つけるため
の一つの指童十として目指したし、「やさしさ」を
考察することができた。
おわりに一今後の展望
目指したい「やさしさjにおける関係性には
親麿さが背景に大きくかかわっている。自己と
他者の関係性で「やさしさjを行使するには、
この親密さの大小によっても変化が生じる。だ
からこそ、まずは身近な人間関係においての「や
さししリ関係性を考察していったので、ある。し
かしそれ以外の自分と関わりのない見知らぬ他
者に対しての「やさししリ関係については言及
しなかったO見知らぬ他者に対して「やさしさJ
がどのように作用するのかということを、今後
の課題として、考察していく必要がある。
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